本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。例えば、以下の実施形態では、デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを製造する場合として説明するがこれに限定されない。デバイスとしては、配線基板、半導体基板等を製造することもできる。
[第1実施形態]
第1実施形態は、基板に露光処理を施す基板処理装置が露光装置である。また、露光装置は、露光後の基板に各種処理を施してデバイスを製造するデバイス製造システムに組み込まれている。先ず、デバイス製造システムについて説明する。
<デバイス製造システム>
図1は、第1実施形態のデバイス製造システムの構成を示す図である。図1に示すデバイス製造システム1は、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイを製造するライン(フレキシブル・ディスプレイ製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば有機ELディスプレイ等がある。このデバイス製造システム1は、可撓性の基板Pをロール状に巻回した供給用ロールFR1から、該基板Pを送り出し、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを可撓性のデバイスとして回収用ロールFR2に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。第1実施形態のデバイス製造システム1では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールFR1から送り出され、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、順次、n台の処理装置U1,U2,U3,U4,U5,…Unを経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。先ず、デバイス製造システム1の処理対象となる基板Pについて説明する。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んでいる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールFR1となり、この供給用ロールFR1が、デバイス製造システム1に装着される。供給用ロールFR1が装着されたデバイス製造システム1は、1個のデバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールFR1から送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板Pは、複数のデバイスが連なった状態となる。つまり、供給用ロールFR1から送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。なお、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングの為の微細な隔壁構造(凹凸構造)をインプリント法(マイクロスタンパー)等で形成したものでも良い。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールFR2として回収される。回収用ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着される。回収用ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個のデバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
次に、図1を参照し、デバイス製造システム1について説明する。図1では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において供給用ロールFR1及び回収用ロールFR2を結ぶ方向であり、図1における左右方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、図1における前後方向である。Y方向は、供給用ロールFR1及び回収用ロールFR2の軸方向となっている。Z方向は、鉛直方向であり、図1における上下方向である。
デバイス製造システム1は、基板Pを供給する基板供給装置2と、基板供給装置2によって供給された基板Pに対して各種処理を施す処理装置U1〜Unと、処理装置U1〜Unによって処理が施された基板Pを回収する基板回収装置4と、デバイス製造システム1の各装置を制御する上位制御装置5とを備える。
基板供給装置2には、供給用ロールFR1が回転可能に装着される。基板供給装置2は、装着された供給用ロールFR1から基板Pを送り出す駆動ローラR1と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC1とを有する。駆動ローラR1は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを供給用ロールFR1から回収用ロールFR2へ向かう搬送方向に送り出すことで、基板Pを処理装置U1〜Unに供給する。このとき、エッジポジションコントローラEPC1は、基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。
基板回収装置4には、回収用ロールFR2が回転可能に装着される。基板回収装置4は、処理後の基板Pを回収用ロールFR2側に引き寄せる駆動ローラR2と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC2とを有する。基板回収装置4は、駆動ローラR2により基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向に引き寄せると共に、回収用ロールFR2を回転させることで、基板Pを巻き上げる。このとき、エッジポジションコントローラEPC2は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、基板Pの幅方向の端部(エッジ)が幅方向においてばらつかないように、基板Pの幅方向における位置を修正する。
処理装置U1は、基板供給装置2から供給された基板Pの表面に感光性機能液を塗布する塗布装置である。感光性機能液としては、例えば、フォトレジスト、感光性シランカップリング材(親撥液性改質材)、感光性メッキ還元材、UV硬化樹脂液等が用いられる。処理装置U1は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、塗布機構Gp1と乾燥機構Gp2とが設けられている。塗布機構Gp1は、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR1と、圧胴ローラDR1に対向する塗布ローラDR2とを有する。塗布機構Gp1は、供給された基板Pを圧胴ローラDR1に巻き付けた状態で、圧胴ローラDR1及び塗布ローラDR2により基板Pを挟持する。そして、塗布機構Gp1は、圧胴ローラDR1及び塗布ローラDR2を回転させることで、基板Pを搬送方向に移動させながら、塗布ローラDR2により感光性機能液を塗布する。乾燥機構Gp2は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアーを吹き付け、感光性機能液に含まれる溶質(溶剤または水)を除去し、感光性機能液が塗布された基板Pを乾燥させることで、基板P上に感光性機能層を形成する。
処理装置U2は、基板Pの表面に形成された感光性機能層を安定にすべく、処理装置U1から搬送された基板Pを所定温度(例えば、数10〜120℃程度)まで加熱する加熱装置である。処理装置U2は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、加熱チャンバHA1と冷却チャンバHA2とが設けられている。加熱チャンバHA1は、その内部に複数のローラ及び複数のエア・ターンバーが設けられており、複数のローラ及び複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を構成している。複数のローラは、基板Pの裏面に転接して設けられ、複数のエア・ターンバーは、基板Pの表面側に非接触状態で設けられる。複数のローラ及び複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。加熱チャンバHA1内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら所定温度まで加熱される。冷却チャンバHA2は、加熱チャンバHA1で加熱された基板Pの温度が、後工程(処理装置U3)の環境温度と揃うようにすべく、基板Pを環境温度まで冷却する。冷却チャンバHA2は、その内部に複数のローラが設けられ、複数のローラは、加熱チャンバHA1と同様に、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。冷却チャンバHA2内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら冷却される。冷却チャンバHA2の搬送方向における下流側には、駆動ローラR3が設けられ、駆動ローラR3は、冷却チャンバHA2を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置U3へ向けて供給する。尚、加熱チャンバHA1による基板Pの加熱は、基板PがPET(ポリエチレン・テレフタレート)やPEN(ポリエチレン・ナフタレート)等の樹脂フィルムの場合、そのガラス転移温度を超えないように設定するのが良い。
処理装置(基板処理装置)U3は、処理装置U2から供給された、表面に感光性機能層が形成された基板(感光基板)Pに対して、ディスプレイ用の回路または配線等のパターンを投影露光する露光装置である。詳細は後述するが、処理装置U3は、反射型のマスクMに照明光束を照明し、照明光束がマスクMにより反射されることで得られる投影光束を基板Pに投影露光する。処理装置U3は、処理装置U2から供給された基板Pを搬送方向の下流側に送る駆動ローラR4と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC3とを有する。駆動ローラR4は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向の下流側に送り出すことで、基板Pを露光位置で支持する基板支持ドラム(回転ドラムと呼ぶこともある)へ向けて供給する。
エッジポジションコントローラEPC3は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、露光位置(基板支持ドラム)における基板Pの幅方向が目標位置となるように、基板Pの幅方向における位置を修正する。また、処理装置U3は、露光後の基板Pにたるみを与えた状態で、基板Pを搬送方向の下流側へ送る2組の駆動ローラR5、R6を有する。駆動ローラR5は先の駆動ローラR4と協働して、基板Pの搬送方向に所定のテンションを付与する。2組の駆動ローラR5、R6は、基板Pの搬送方向に所定の間隔を空けて配置されている。駆動ローラR5は、搬送される基板Pの上流側を挟持して回転し、駆動ローラR6は、搬送される基板Pの下流側を挟持して回転することで、基板Pを処理装置U4へ向けて供給する。このとき、基板Pは、たるみが与えられているため、駆動ローラR6よりも搬送方向の下流側において生ずる搬送速度の変動を吸収でき、搬送速度の変動による基板Pへの露光処理の影響を縁切りすることができる。また、処理装置U3内には、マスクMのマスクパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)する為に、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出するアライメント顕微鏡AM1、AM2が設けられている。
処理装置U4は、処理装置U3から搬送された露光後の基板Pに対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等を行なう湿式処理装置である。処理装置U4は、その内部に、鉛直方向(Z方向)に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3と、基板Pを搬送する複数のローラと、を有する。複数のローラは、3つの処理槽BT1、BT2、BT3の内部を、基板Pが順に通過する搬送経路となるように配置される。処理槽BT3の搬送方向における下流側には、駆動ローラR7が設けられ、駆動ローラR7は、処理槽BT3を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置U5へ向けて供給する。
図示は省略するが、処理装置U5は、処理装置U4から搬送された基板Pを乾燥させる乾燥装置である。処理装置U5は、処理装置U4において湿式処理された基板Pに付着する液滴やミストを除去すると共に、基板Pの水分含有量を、所定の水分含有量に調整する。処理装置U5により乾燥された基板Pは、幾つかの処理装置を経て、処理装置Unに搬送される。そして、処理装置Unで処理された後、基板Pは、基板回収装置4の回収用ロールFR2に巻き上げられる。
上位制御装置5は、基板供給装置2、基板回収装置4及び複数の処理装置U1〜Unを統括制御する。上位制御装置5は、基板供給装置2及び基板回収装置4を制御して、基板Pを基板供給装置2から基板回収装置4へ向けて搬送させる。また、上位制御装置5は、基板Pの搬送に同期させながら、複数の処理装置U1〜Unを制御して、基板Pに対する各種処理を実行させる。
<露光装置(基板処理装置)>
次に、第1実施形態の処理装置U3としての露光装置(基板処理装置)の構成について、図2から図4を参照して説明する。図2は、第1実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。図3は、図2に示す露光装置の照明領域及び投影領域の配置を示す図である。図4は、図2に示す露光装置の照明光学系及び投影光学系の構成を示す図である。以下、処理装置U3を露光装置U3という。
図2に示す露光装置U3は、いわゆる走査露光装置であり、基板Pを搬送方向に搬送しながら、円筒状のマスクMの外周面に形成されたマスクパターンの像を、基板Pの表面に投影露光する。なお、図2では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっており、図1と同様の直交座標系となっている。
先ず、露光装置U3に用いられるマスクMについて説明する。マスクMは、例えば金属製の円筒体を用いた反射型のマスクとなっている。マスクMは、Y方向に延びる第1軸AX1を中心とする曲率半径Rmとなる外周面(円周面)を有する円筒体に形成され、径方向に一定の肉厚を有している。マスクMの円周面は、所定のマスクパターンが形成された面P1となっている。マスクMの面P1は、所定方向に光束を高い効率で反射する高反射部と所定方向に光束を反射しないまたは低い効率で反射する反射抑制部とを含む。マスクパターンは、高反射部及び反射抑制部により形成されている。ここで、反射抑制部は、所定方向に反射する光が少なくなればよい。このため、反射抑制部は、光を吸収しても、透過しても、所定方向以外に反射(例えば乱反射)してもよい。ここで、マスクMは、反射抑制部を、光を吸収する材料や、光を透過する材料で構成することができる。露光装置U3は、上記構成のマスクMとして、金属の円筒体で作成したマスクを用いることができる。このため、露光装置U3は、安価なマスクを用いて露光を行うことができる。
なお、マスクMは、1個の表示デバイスに対応するパネル用パターンの全体または一部が形成されていてもよいし、複数個の表示デバイスに対応するパネル用パターンが形成されていてもよい。また、マスクMは、パネル用パターンが第1軸AX1の周りの周方向に繰り返し複数個形成されていてもよいし、小型のパネル用パターンが第1軸AX1に平行な方向に繰り返し複数形成されてもよい。さらに、マスクMは、第1の表示デバイスのパネル用パターンと、第1の表示デバイスとサイズ等が異なる第2の表示デバイスのパネル用パターンとが形成されていてもよい。また、マスクMは、第1軸AX1を中心とする曲率半径Rmとなる円周面を有していればよく、円筒体の形状に限定されない。例えば、マスクMは、円周面を有する円弧状の板材であってもよい。また、マスクMは、薄板状であってもよく、薄板状のマスクMを湾曲させて、円周面に倣うように円筒部材に貼り付てもよい。
次に、図2に示す露光装置U3について説明する。露光装置U3は、上記した駆動ローラR4〜R6、エッジポジションコントローラEPC3及びアライメント顕微鏡AM1、AM2の他に、マスク保持機構11と、基板支持機構12と、照明光学系ILと、投影光学系PLと、下位制御装置16と、を有する。露光装置U3は、光源装置13から射出された照明光を照明光学系ILと、投影光学系PLと、で案内することで、マスク保持機構11で保持したマスクMのパターンの光束を基板支持機構12で保持した基板Pに投射する。
下位制御装置16は、露光装置U3の各部を制御し、各部に処理を実行させる。下位制御装置16は、デバイス製造システム1の上位制御装置5の一部又は全部であってもよい。また、下位制御装置16は、上位制御装置5に制御され、上位制御装置5とは別の装置であってもよい。下位制御装置16は、例えば、コンピュータを含む。
マスク保持機構11は、マスクMを保持するマスク保持ドラム(マスク保持部材)21と、マスク保持ドラム21を回転させる第1駆動部22とを有している。マスク保持ドラム21は、マスクMの第1軸AX1が回転中心となるようにマスクMを保持する。第1駆動部22は、下位制御装置16に接続され、第1軸AX1を回転中心にマスク保持ドラム21を回転させる。
なお、マスク保持機構11は、円筒体のマスクMをマスク保持ドラム21で保持したが、この構成に限らない。マスク保持機構11は、マスク保持ドラム21の外周面に倣って薄板状のマスクMを巻き付けて保持してもよい。また、マスク保持機構11は、円弧状の板材となるマスクMをマスク保持ドラム21の外周面において保持してもよい。
基板支持機構12は、基板Pを円筒状の外周面で支持して回転可能な基板支持ドラム25と、基板支持ドラム25を回転させる第2駆動部26と、一対のエア・ターンバーATB1、ATB2と、一対のガイドローラ27、28とを有している。基板支持ドラム25は、Y方向に延びる第2軸AX2を中心とする曲率半径Rpとなる外周面(円周面)を有する円筒形状に形成されている。ここで、第1軸AX1と第2軸AX2とは互いに平行になっており、第1軸AX1及び第2軸AX2を通る面を中心面CLとしている。基板支持ドラム25の円周面の一部は、基板Pを支持する支持面P2となっている。つまり、基板支持ドラム25は、その支持面P2に基板Pが巻き付けられることで、基板Pを支持する。第2駆動部26は、下位制御装置16に接続され、第2軸AX2を回転中心に基板支持ドラム25を回転させる。
一対のエア・ターンバーATB1,ATB2は、基板支持ドラム25を挟んで、基板Pの搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。一対のエア・ターンバーATB1,ATB2は、基板Pの表面側に設けられ、鉛直方向(Z方向)において基板支持ドラム25の支持面P2よりも下方側に配置されている。一対のガイドローラ27、28は、一対のエア・ターンバーATB1,ATB2を挟んで、基板Pの搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。一対のガイドローラ27、28は、その一方のガイドローラ27が駆動ローラR4から搬送された基板Pをエア・ターンバーATB1に案内し、その他方のガイドローラ28がエア・ターンバーATB2から搬送された基板Pを駆動ローラR5に案内する。
従って、基板支持機構12は、駆動ローラR4から搬送された基板Pを、ガイドローラ27によりエア・ターンバーATB1に案内し、エア・ターンバーATB1を通過した基板Pを、基板支持ドラム25に導入する。基板支持機構12は、第2駆動部26により基板支持ドラム25を回転させることで、基板支持ドラム25に導入した基板Pを、基板支持ドラム25の支持面P2で支持しながら、エア・ターンバーATB2へ向けて搬送する。基板支持機構12は、エア・ターンバーATB2に搬送された基板Pを、エア・ターンバーATB2によりガイドローラ28に案内し、ガイドローラ28を通過した基板Pを、駆動ローラR5に案内する。
このとき、第1駆動部22及び第2駆動部26に接続された下位制御装置16は、マスク保持ドラム21と基板支持ドラム25とを所定の回転速度比で同期回転させることによって、マスクMの面P1に形成されたマスクパターンの像が、基板支持ドラム25の支持面P2に巻き付けられた基板Pの表面(円周面に倣って湾曲した面)に連続的に繰り返し投影露光される。
光源装置13は、マスクMに照明される照明光束EL1を出射する。光源装置13は、光源31と導光部材32とを有する。光源31は、所定の波長の光を射出する光源である。光源31は、例えば水銀ランプ等のランプ光源、又はレーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等である。光源31が射出する照明光は、例えばランプ光源から射出される輝線(g線、h線、i線)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)等である。ここで、光源31は、i線(365nmの波長)以下の波長を含む照明光束EL1を射出することが好ましい。光源31は、i線以下の波長となる照明光束EL1として、YAGレーザ(第3高調波レーザ)から射出されるレーザ光(355nmの波長)、YAGレーザ(第4高調波レーザ)から射出されるレーザ光(266nmの波長)、またはKrFエキシマレーザから射出されるレーザ光(248nmの波長)等を用いることができる。
導光部材32は、光源31から出射された照明光束EL1を照明光学系ILに導く。導光部材32は、光ファイバ、またはミラーを用いたリレーモジュール等で構成される。また、導光部材32は、照明光学系ILが複数設けられている場合、光源31からの照明光束EL1を複数に分離し、複数の照明光束EL1を複数の照明光学系ILに導く。導光部材32は、光源31から射出された照明光束EL1を所定の偏光状態の光として偏光ビームスプリッタPBSに入射させる。ここで、本実施形態の偏光ビームスプリッタPBSは、S偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。このため、光源装置13は、偏光ビームスプリッタPBSに入射する照明光束EL1が直線偏光(S偏光)の光束となる照明光束EL1を出射する。
光源装置13は、偏光ビームスプリッタPBSに波長及び位相が揃った偏光レーザを出射する。例えば、光源装置13は、光源31から射出される光束が偏光された光である場合、導光部材32として、偏波面保存ファイバを用い、光源装置13から出力されたレーザ光の偏光状態を維持したまま導光する。また、例えば、光源31から出力された光束を光ファイバで案内し、光ファイバから出力された光を偏光板で偏光させてもよい。つまり光源装置13は、ランダム偏光の光束が案内されている場合、ランダム偏光の光束を偏光板で偏光してもよいし、偏光ビームスプリッタPBSを用いてP偏向とS偏向の各光束に分岐させ、その偏光ビームスプリッタPBSを透過した光を一方の系統の照明光学系ILに入射させ、その偏光ビームスプリッタPBSで反射した光を別の系統の照明光学系ILに入射させる光束として用いてもよい。また光源装置13は、レンズ等を用いたリレー光学系により、光源31から出力された光束を案内してもよい。
ここで、図3に示すように、第1実施形態の露光装置U3は、いわゆるマルチレンズ方式を想定した露光装置である。なお、図3には、マスク保持ドラム21に保持されたマスクM上の照明領域IRを−Z側から見た平面図(図3の左図)と、基板支持ドラム25に支持された基板P上の投影領域PAを+Z側から見た平面図(図3の右図)とが図示されている。図3の符号Xsは、マスク保持ドラム21及び基板支持ドラム25の移動方向(回転方向)を示す。マルチレンズ方式の露光装置U3は、マスクM上の複数(第1実施形態では例えば6つ)の照明領域IR1〜IR6に照明光束EL1をそれぞれ照明し、各照明光束EL1が各照明領域IR1〜IR6に反射されることで得られる複数の投影光束EL2を、基板P上の複数(第1実施形態では例えば6つ)の投影領域PA1〜PA6に投影露光する。
先ず、照明光学系ILにより照明される複数の照明領域IR1〜IR6について説明する。図3に示すように、複数の照明領域IR1〜IR6は、中心面CLを挟んで、回転方向の上流側のマスクM上に第1照明領域IR1、第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5が配置され、回転方向の下流側のマスクM上に第2照明領域IR2、第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6が配置される。各照明領域IR1〜IR6は、マスクMの軸方向(Y方向)に延びる平行な短辺及び長辺を有する細長い台形状の領域となっている。このとき、台形状の各照明領域IR1〜IR6は、その短辺が中心面CL側に位置し、その長辺が外側に位置する領域となっている。第1照明領域IR1、第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、第2照明領域IR2、第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2照明領域IR2は、軸方向において、第1照明領域IR1と第3照明領域IR3との間に配置される。同様に、第3照明領域IR3は、軸方向において、第2照明領域IR2と第4照明領域IR4との間に配置される。第4照明領域IR4は、軸方向において、第3照明領域IR3と第5照明領域IR5との間に配置される。第5照明領域IR5は、軸方向において、第4照明領域IR4と第6照明領域IR6との間に配置される。各照明領域IR1〜IR6は、マスクMの周方向からみて、隣り合う台形状の照明領域の斜辺部の三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。なお、第1実施形態において、各照明領域IR1〜IR6は、台形状の領域としたが、長方形状の領域でもあってよい。
また、マスクMは、マスクパターンが形成されるパターン形成領域A3と、マスクパターンが形成されないパターン非形成領域A4とを有する。パターン非形成領域A4は、照明光束EL1を吸収する反射し難い領域であり、パターン形成領域A3を枠状に囲んで配置されている。第1〜第6照明領域IR1〜IR6は、パターン形成領域A3のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
照明光学系ILは、複数の照明領域IR1〜IR6に応じて複数(第1実施形態では例えば6つ)設けられている。複数の照明光学系(分割照明光学系)IL1〜IL6には、光源装置13からの照明光束EL1がそれぞれ入射する。各照明光学系IL1〜IL6は、光源装置13から入射された各照明光束EL1を、各照明領域IR1〜IR6にそれぞれ導く。つまり、第1照明光学系IL1は、照明光束EL1を第1照明領域IR1に導き、同様に、第2〜第6照明光学系IL2〜IL6は、照明光束EL1を第2〜第6照明領域IR2〜IR6に導く。複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んで、第1、第3、第5照明領域IR1、IR3、IR5が配置される側(図2の左側)に、第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5が配置される。第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んで、第2、第4、第6照明領域IR2、IR4、IR6が配置される側(図2の右側)に、第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6が配置される。第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2照明光学系IL2は、軸方向において、第1照明光学系IL1と第3照明光学系IL3との間に配置される。同様に、第3照明光学系IL3、第4照明光学系IL4、第5照明光学系IL5は、軸方向において、第2照明光学系IL2と第4照明光学系IL4との間、第3照明光学系IL3と第5照明光学系IL5との間、第4照明光学系IL4と第6照明光学系IL6との間に配置される。また、第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5と、第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6とは、Y方向からみて対称に配置されている。
次に、図4を参照して、各照明光学系IL1〜IL6の詳細な構成について説明する。なお、各照明光学系IL1〜IL6は、同様の構成となっているため、第1照明光学系IL1(以下、単に照明光学系ILという)を例に説明する。
照明光学系ILは、照明領域IR(第1照明領域IR1)を均一な照度で照明すべく、光源装置13からの照明光束EL1を多数の点光源が面状に集合した面光源像に変換するケーラー照明法を適用している。また、照明光学系ILは、偏光ビームスプリッタPBSを用いた落射照明系となっている。照明光学系ILは、光源装置13からの照明光束EL1の入射側から順に、照明光学モジュールILMと、偏光ビームスプリッタPBSと、1/4波長板41とを有する。
図4に示すように、照明光学モジュールILMは、照明光束EL1の入射側から順に、コリメータレンズ51と、フライアイレンズ52と、複数のコンデンサーレンズ53と、シリンドリカルレンズ54と、照明視野絞り55と、複数のリレーレンズ56とを含んでおり、第1光軸BX1上に設けられている。コリメータレンズ51は、光源装置13の導光部材32の出射側に設けられている。コリメータレンズ51の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。コリメータレンズ51は、フライアイレンズ52の入射側の面全体を照射する。フライアイレンズ52は、コリメータレンズ51の出射側に設けられている。フライアイレンズ52の出射側の面の中心は、第1光軸BX1上に配置される。フライアイレンズ52は、コリメータレンズ51からの照明光束EL1を多数の点光源に分割し、各点光源からの光を重畳させて後述のコンデンサーレンズ53に入射させる。
このとき、点光源像が生成されるフライアイレンズ52の出射側の面は、フライアイレンズ52から照明視野絞り55を介して後述する投影光学系PLの第1凹面鏡72に至る各種レンズによって、第1凹面鏡72の反射面が位置する瞳面と光学的に共役となるように配置される。コンデンサーレンズ53は、フライアイレンズ52の出射側に設けられ、その光軸は、第1光軸BX1上に配置される。コンデンサーレンズ53は、フライアイレンズ52の各点光源からの光(照明光束EL1)を、シリンドリカルレンズ54を介して照明視野絞り55上で重畳するように照射する。シリンドリカルレンズ54が無い場合、照明視野絞り55上の各点に到達する照明光束EL1の主光線は、いずれも第1光軸BX1と平行となる。しかしながら、シリンドリカルレンズ54の作用によって、照明視野絞り55を照射する照明光束EL1の各主光線は、図4中のY方向では互いに平行(第1光軸BX1とも平行)なテレセントリックな状態となり、XZ面内では、像高位置に応じて第1光軸BX1に対する傾きが順次異なる非テレセントリックな状態になる。
シリンドリカルレンズ54は、入射側が平面となり出射側が凸円筒面となる平凸シリンドリカルレンズであり、照明視野絞り55の入射側に隣接して設けられる。シリンドリカルレンズ54の光軸は、第1光軸BX1上に配置され、シリンドリカルレンズ54の出射側の凸円筒面の母線は図4中のY軸と平行になるように設けられる。これによって、シリンドリカルレンズ54を通った直後の照明光束EL1の各主光線は、Y方向に関しては互いに第1光軸BX1と平行となり、XZ面内においては第1光軸BX1上のある点(厳密には、第1光軸BX1と直交するY方向に延びる線)に向けて収れんする。
照明視野絞り55の開口部は、照明領域IRと同様の形状となる台形状(矩形)に形成されており、照明視野絞り55の開口部の中心は、第1光軸BX1上に配置される。このとき、照明視野絞り55は、照明視野絞り55からマスクMの円筒状の面P1の間のリレーレンズ(結像系)56、偏光ビームスプリッタPBS、1/4波長板41等によって、マスクM上の照明領域IRと光学的に共役な面に配置される。リレーレンズ56は、照明視野絞り55の出射側に設けられている。リレーレンズ56の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。リレーレンズ56は、照明視野絞り55の開口部を通った照明光束EL1を、偏光ビームスプリッタPBSと1/4波長板41とを介してマスクMの円筒状の面P1(照明領域IR)に照射する。
偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学モジュールILMと中心面CLとの間に配置されている。偏光ビームスプリッタPBSは、波面分割面でS偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。ここで、偏光ビームスプリッタPBSに入射する照明光束EL1は、S偏光の直線偏光となる光束であり、偏光ビームスプリッタPBSに入射するマスクMからの反射光(投影光束EL2)は、1/4波長板41によってP偏光の直線偏光となる光束である。
これにより、偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学モジュールILMから波面分割面に入射された照明光束EL1を反射する一方で、マスクMで反射され波面分割面に入射された投影光束EL2を透過する。偏光ビームスプリッタPBSは、波面分割面に入射された照明光束EL1の全てを反射することが好ましいが、波面分割面に入射された照明光束EL1の大部分を反射し、一部を波面分割面で透過または吸収してもよい。同様に、偏光ビームスプリッタPBSは、波面分割面に入射された投影光束EL2の全てを透過することが好ましいが、波面分割面に入射された投影光束EL2の大部分を透過し、一部を反射または吸収してもよい。
1/4波長板41は、偏光ビームスプリッタPBSとマスクMとの間に配置され、偏光ビームスプリッタPBSで反射された照明光束EL1を直線偏光(S偏光)から円偏光に変換する。円偏光された照明光束EL1は、マスクMに照射される。1/4波長板41は、マスクMで反射された円偏光の投影光束EL2を直線偏光(P偏光)に変換する。
ここで、照明光学系ILは、マスクMの面P1上の照明領域IRで反射される投影光束EL2の主光線が、Y方向とXZ面内のいずれにおいても、テレセントリックな状態となるように、マスクMの照明領域IRに照明光束EL1を照明する。その状態を、図5を参照して説明する。
図5は、マスクM上の照明領域IRに照射される照明光束EL1と、照明領域IRで反射された投影光束EL2との振る舞いを、XZ面(第1軸AX1と垂直な面)内で誇張して示した図である。図5に示すように、上記した照明光学系ILは、マスクMの照明領域IRで反射される投影光束EL2の主光線がテレセントリック(平行系)となるように、マスクMの照明領域IRに照射される照明光束EL1の主光線を、XZ面では意図的に非テレセントリックな状態にし、Y方向に関してはテレセントリックな状態にする。
照明光束EL1のそのような特性は、図4中に示したシリンドリカルレンズ54によって与えられる。具体的には、マスクMの面P1上の照明領域IRの周方向の中央の点Q1を通って第1軸AX1に向かう線と、マスク面Mの面P1の半径Rmの1/2の円(Rm/2)との交点Q2を設定したとき、照明領域IRを通る照明光束EL1の各主光線が、XZ面では交点Q2に向かうように、シリンドリカルレンズ54の凸円筒面の曲率を設定する。このようにすると、照明領域IR内で反射した投影光束EL2の各主光線は、XZ面内では、第1軸AX1、点Q1、交点Q2を通る直線と平行(テレセントリック)な状態となる。もちろん、マスクMの面P1のY方向に関する曲率は無限大とみなせるので、投影光束EL2の各主光線はY方向に関してもテレセントリックな状態となっている。
次に、投影光学系PLにより投影露光される複数の投影領域(露光領域)PA1〜PA6について説明する。図3に示すように、基板P上の複数の投影領域PA1〜PA6は、マスクM上の複数の照明領域IR1〜IR6と対応させて配置されている。つまり、基板P上の複数の投影領域PA1〜PA6は、中心面CLを挟んで、搬送方向の上流側の基板P上に第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5が配置され、搬送方向の下流側の基板P上に第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6が配置される。各投影領域PA1〜PA6は、基板Pの幅方向(Y方向)に延びる短辺及び長辺を有する細長い台形状の領域となっている。このとき、台形状の各投影領域PA1〜PA6は、その短辺が中心面CL側に位置し、その長辺が外側に位置する領域となっている。第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5は、幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6は、幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2投影領域PA2は、軸方向において、第1投影領域PA1と第3投影領域PA3との間に配置される。同様に、第3投影領域PA3は、軸方向において、第2投影領域PA2と第4投影領域PA4との間に配置される。第4投影領域PA4は、軸方向において、第3投影領域PA3と第5投影領域PA5との間に配置される。第5投影領域PA5は、軸方向において、第4投影領域PA4と第6投影領域PA6との間に配置される。各投影領域PA1〜PA6は、各照明領域IR1〜IR6と同様に、基板Pの搬送方向からみて、隣り合う台形状の投影領域PAの斜辺部の三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。このとき、投影領域PAは、隣り合う投影領域PAの重複する領域での露光量が、重複しない領域での露光量と実質的に同じになるような形状になっている。そして、第1〜第6投影領域PA1〜PA6は、基板P上に露光される露光領域A7のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
ここで、図2において、XZ面内で見たとき、マスクM上の奇数番の照明領域IR1(及びIR3,IR5)の中心点から偶数番の照明領域IR2(及びIR4,IR6)の中心点までの周長距離は、基板支持ドラム25の支持面P2に倣った基板P上の奇数番の投影領域PA1(及びPA3,PA5)の中心点から偶数番の投影領域PA2(及びPA4,PA6)の中心点までの周長距離と、実質的に等しく設定されている。これは、各投影光学系PL1〜PL6の投影倍率を等倍(×1)としたからである。
投影光学系PLは、複数の投影領域PA1〜PA6に応じて複数(第1実施形態では例えば6つ)設けられている。複数の投影光学系(分割投影光学系)PL1〜PL6には、複数の照明領域IR1〜IR6から反射された複数の投影光束EL2がそれぞれ入射する。各投影光学系PL1〜PL6は、マスクMで反射された各投影光束EL2を、各投影領域PA1〜PA6にそれぞれ導く。つまり、第1投影光学系PL1は、第1照明領域IR1からの投影光束EL2を第1投影領域PA1に導き、同様に、第2〜第6投影光学系PL2〜PL6は、第2〜第6照明領域IR2〜IR6からの各投影光束EL2を第2〜第6投影領域PA2〜PA6に導く。複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んで、第1、第3、第5投影領域PA1、PA3、PA5が配置される側(図2の左側)に、第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5が配置される。第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んで、第2、第4、第6投影領域PA2、PA4、PA6が配置される側(図2の右側)に、第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6が配置される。第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2投影光学系PL2は、軸方向において、第1投影光学系PL1と第3投影光学系PL3との間に配置される。同様に、第3投影光学系PL3、第4投影光学系PL4、第5投影光学系PL5は、軸方向において、第2投影光学系PL2と第4投影光学系PL4との間、第3投影光学系PL3と第5投影光学系PL5との間、第4投影光学系PL4と第6投影光学系PL6との間に配置される。また、第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5と、第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6とは、Y方向からみて対称に配置されている。
次に、図4を参照して、各投影光学系PL1〜PL6の詳細な構成について説明する。なお、各投影光学系PL1〜PL6は、同様の構成となっているため、第1投影光学系PL1(以下、単に投影光学系PLという)を例に説明する。
投影光学系PLは、マスクM上の照明領域IR(第1照明領域IR1)におけるマスクパターンの像を、基板P上の投影領域PAに投影する。投影光学系PLは、マスクMからの投影光束EL2の入射側から順に、上記の1/4波長板41と、上記の偏光ビームスプリッタPBSと、投影光学モジュールPLMとを有する。
1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学系ILと兼用となっている。換言すれば、照明光学系IL及び投影光学系PLは、1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSを共有している。
照明領域IRで反射された投影光束EL2は、1/4波長板41により円偏光から直線偏光(P偏光)に変換された後、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、テレセントリックな結像光束となって投影光学系PL(投影光学モジュールPLM)に入射する。
投影光学モジュールPLMは、照明光学モジュールILMに対応して設けられている。つまり、第1投影光学系PL1の投影光学モジュールPLMは、第1照明光学系IL1の照明光学モジュールILMによって照明される第1照明領域IR1のマスクパターンの像を、基板P上の第1投影領域PA1に投影する。同様に、第2〜第6投影光学系PL2〜PL6の投影光学モジュールPLMは、第2〜第6照明光学系IL2〜IL6の照明光学モジュールILMによって照明される第2〜第6照明領域IR2〜IR6のマスクパターンの像を、基板P上の第2〜第6投影領域PA2〜PA6に投影する。
図4に示すように、投影光学モジュールPLMは、照明領域IRにおけるマスクパターンの像を中間像面P7に結像する第1光学系61と、第1光学系61により結像した中間像の少なくとも一部を基板Pの投影領域PAに再結像する第2光学系62と、中間像が形成される中間像面P7に配置された投影視野絞り63とを備える。また、投影光学モジュールPLMは、フォーカス補正光学部材64と、像シフト用光学部材65と、倍率補正用光学部材66と、ローテーション補正機構67と、偏光調整機構(偏光調整手段)68とを備える。
第1光学系61及び第2光学系62は、例えばダイソン系を変形したテレセントリックな反射屈折光学系である。第1光学系61は、その光軸(以下、第2光軸BX2という)が中心面CLに対して実質的に直交する。第1光学系61は、第1偏向部材70と、第1レンズ群71と、第1凹面鏡72とを備える。第1偏向部材70は、第1反射面P3と第2反射面P4とを有する三角プリズムである。第1反射面P3は、偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72に入射させる面となっている。第2反射面P4は、第1凹面鏡72で反射された投影光束EL2が第1レンズ群71を通って入射し、入射した投影光束EL2を投影視野絞り63へ向けて反射する面となっている。第1レンズ群71は、各種レンズを含み、各種レンズの光軸は、第2光軸BX2上に配置されている。第1凹面鏡72は、フライアイレンズ52により生成された多数の点光源が、フライアイレンズ52から照明視野絞り55を介して第1凹面鏡72に至る各種レンズによって結像する瞳面に配置されている。
偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2は、第1偏向部材70の第1反射面P3で反射され、第1レンズ群71の上半分の視野領域を通って第1凹面鏡72に入射する。第1凹面鏡72に入射した投影光束EL2は、第1凹面鏡72で反射され、第1レンズ群71の下半分の視野領域を通って第1偏向部材70の第2反射面P4に入射する。第2反射面P4に入射した投影光束EL2は、第2反射面P4で反射され、フォーカス補正光学部材64及び像シフト用光学部材65を通過し、投影視野絞り63に入射する。
投影視野絞り63は、投影領域PAの形状を規定する開口を有する。すなわち、投影視野絞り63の開口の形状によって投影領域PAの形状を規定することができる。従って、図4に示した照明光学系IL内の照明視野絞り55の開口形状を、投影領域PAの形状(台形)と相似形にできる場合は、投影視野絞り63を省略することができる。また、照明視野絞り55の開口形状を、投影領域PAを包含するような長方形とした場合は、台形状の投影領域PAを規定する投影視野絞り63が必要となる。
第2光学系62は、第1光学系61と同様の構成であり、中間像面P7を挟んで第1光学系61と対称に設けられている。第2光学系62は、その光軸(以下、第3光軸BX3という)が中心面CLに対して実質的に直交し、第2光軸BX2と平行になっている。第2光学系62は、第2偏向部材80と、第2レンズ群81と、第2凹面鏡82とを備える。第2偏向部材80は、第3反射面P5と第4反射面P6とを有する。第3反射面P5は、投影視野絞り63からの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第2レンズ群81を通って第2凹面鏡82に入射させる面となっている。第4反射面P6は、第2凹面鏡82で反射された投影光束EL2が第2レンズ群81を通って入射し、入射した投影光束EL2を投影領域PAへ向けて反射する面となっている。第2レンズ群81は、各種レンズを含み、各種レンズの光軸は、第3光軸BX3上に配置されている。第2凹面鏡82は、第1凹面鏡72において結像した多数の点光源像が、第1凹面鏡72から投影視野絞り63を介して第2凹面鏡82に至る各種レンズによって結像する瞳面に配置されている。
投影視野絞り63からの投影光束EL2は、第2偏向部材80の第3反射面P5で反射され、第2レンズ群81の上半分の視野領域を通って第2凹面鏡82に入射する。第2凹面鏡82に入射した投影光束EL2は、第2凹面鏡82で反射され、第2レンズ群81の下半分の視野領域を通って第2偏向部材80の第4反射面P6に入射する。第4反射面P6に入射した投影光束EL2は、第4反射面P6で反射され、倍率補正用光学部材66を通過し、投影領域PAに投射される。これにより、照明領域IRにおけるマスクパターンの像は、投影領域PAに等倍(×1)で投影される。
フォーカス補正光学部材64は、第1偏向部材70と投影視野絞り63との間に配置されている。フォーカス補正光学部材64は、基板P上に投影されるマスクパターンの像のフォーカス状態を調整する。フォーカス補正光学部材64は、例えば、2枚のクサビ状のプリズムを逆向き(図4ではX方向について逆向き)にして、全体として透明な平行平板になるように重ね合わせたものである。この1対のプリズムを互いに対向する面間の間隔を変えずに斜面方向にスライドさせることにより、平行平板としての厚みを可変にする。これによって第1光学系61の実効的な光路長を微調整し、中間像面P7及び投影領域PAに形成されるマスクパターンの像のピント状態が微調整される。
像シフト用光学部材65は、第1偏向部材70と投影視野絞り63との間に配置されている。像シフト用光学部材65は、基板P上に投影されるマスクパターンの像を像面内において微少移動可能に調整する。像シフト用光学部材65は、図4のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、図4のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとで構成される。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、中間像面P7及び投影領域PAに形成されるマスクパターンの像をX方向やY方向に微少シフトさせることができる。
倍率補正用光学部材66は、第2偏向部材80と基板Pとの間に配置されている。倍率補正用光学部材66は、例えば、凹レンズ、凸レンズ、凹レンズの3枚を所定間隔で同軸に配置し、前後の凹レンズは固定して、間の凸レンズを光軸(主光線)方向に移動させるように構成したものである。これによって、投影領域PAに形成されるマスクパターンの像は、テレセントリックな結像状態を維持しつつ、等方的に微少量だけ拡大または縮小される。なお、倍率補正用光学部材66を構成する3枚のレンズ群の光軸は、投影光束EL2の主光線と平行になるようにXZ面内では傾けられている。
ローテーション補正機構67は、例えば、アクチュエータ(図示略)によって、第1偏向部材70を第2光軸BX2と垂直でZ軸に平行な軸周りに微少回転させるものである。このローテーション補正機構67は、第1偏向部材70を回転させることによって、中間像面P7に形成されるマスクパターンの像を、その中間像面P7内で微少回転させることができる。
偏光調整機構68は、例えば、アクチュエータ(図示略)によって、1/4波長板41を、板面に直交する軸周りに回転させて、偏光方向を調整するものである。偏光調整機構68は、1/4波長板41を回転させることによって、投影領域PAに投射される投影光束EL2の照度を微調整することができる。
このように構成された投影光学系PLにおいて、マスクMからの投影光束EL2は、その各主光線が照明領域IR内のマスクMの面P1からテレセントリックな状態で出射し、1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSを通って第1光学系61に入射する。第1光学系61に入射した投影光束EL2は、第1光学系61の第1偏向部材70の第1反射面(平面鏡)P3で反射され、第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72で反射される。第1凹面鏡72で反射された投影光束EL2は、再び第1レンズ群71を通って第1偏向部材70の第2反射面(平面鏡)P4で反射されて、フォーカス補正光学部材64及び像シフト用光学部材65を透過して、投影視野絞り63に入射する。投影視野絞り63を通った投影光束EL2は、第2光学系62の第2偏向部材80の第3反射面(平面鏡)P5で反射され、第2レンズ群81を通って第2凹面鏡82で反射される。第2凹面鏡82で反射された投影光束EL2は、再び第2レンズ群81を通って第2偏向部材80の第4反射面(平面鏡)P6で反射されて、倍率補正用光学部材66に入射する。倍率補正用光学部材66から出射した投影光束EL2は、基板P上の投影領域PAに入射し、照明領域IR内に現れるマスクパターンの像が投影領域PAに等倍(×1)で投影される。
<マスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係>
次に、第1実施形態の露光装置U3におけるマスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係について、図6A、及び図6Bを参照して説明する。図6Aは、マスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係を示す説明図である。図6Bは、投影領域内に投影されるパターン像のフォーカス位置(デフォーカス量)の変化を概略的に示す説明図である。
露光装置U3は、投影光学系PLによって投影光束EL2が結像されることで、マスクMのパターンの投影像面Smが形成される。投影像面Smは、マスクMのパターンが結像される位置であり、ベストフォーカスとなる位置である。ここで、マスクMは、上述したように曲率半径Rmの曲面(ZX平面において曲線)で配置されている。これにより投影像面Smも曲率半径Rmの曲面となる。また、露光装置U3は、基板Pの表面が露光面Spとなる。ここで、露光面Spとは、基板Pの表面である。基板Pは、上述したように円筒形状の基板支持ドラム25に保持されている。これにより、露光面Spは、曲率半径Rpの曲面(ZX平面において曲線)となる。また、投影像面Smと露光面Spは、走査露光方向に直交する方向が曲面の軸となる。
このため、図6Aに示すように投影像面Smと露光面Spは、走査露光方向(基板支持ドラム25の外周面の周方向)に対して曲がった面となる。従って、投影像面Smは、投影領域PAの走査露光方向における露光幅Aの両端位置と中心位置とで、投影光束EL2の主光線の方向に最大ΔFmの面位置差を伴って湾曲し、露光面Spは、投影領域PAの走査露光方向における露光幅Aの両端位置と中心位置とで、投影光束EL2の主光線の方向に最大ΔFpの面位置差を伴って湾曲している。ここで、露光装置U3は、図6Aのように、投影像面Smに対して、実際の露光時に位置する露光面Sp(基板Pの表面)が実露光面Spaとなるように、マスクMの第1軸AX1と基板支持ドラム25の第2軸AX2とが露光装置本体に軸支される。
実露光面Spaは、走査露光方向において、投影像面Smと異なる2つの位置FC1、FC2で交わる。なお、露光装置U3は、投影光学系PLの各光学部材の位置を調整したり、マスク保持機構11及び基板支持機構12のいずれか一方によりマスクMと基板Pとの間隔を微調整したり、或いはフォーカス補正光学部材64を調整することで、投影像面Smに対する実露光面Spaの法線方向(フォーカス調整方向)の位置を変化させることができる。
投影像面Smと実露光面Spaは、投影領域PAの走査露光方向の露光幅A内において、異なる2つの位置FC1、FC2の各々で交わるように設定される。従って、露光幅A内の位置FC1と位置FC2の各々では、マスクMのパターン像が基板Pの表面にベストフォーカス状態で投影露光される。また、露光幅A内の位置FC1と位置FC2との間の領域では、投影されるパターン像のベストフォーカス面(投影像面Sm)が実露光面Spaよりも後方に位置する後ピント状態となり、位置FC1と位置FC2との間よりも外側の領域では、投影されるパターン像のベストフォーカス面(投影像面Sm)が実露光面Spaよりも前方に位置する前ピント状態となっている。
即ち、実露光面Spaに沿って基板Pの表面が、露光幅Aの一方の端部Asから他方の端部Aeに向かう場合、基板P上のパターン像は、露光開始時の端部Asの位置では所定のデフォーカス量を伴って露光され、その後、時間と共にデフォーカス量が減少し、位置FC1ではベストフォーカス(デフォーカス量がゼロ)で露光される。位置FC1でのベストフォーカス状態を過ぎると、デフォーカス量は逆方向に増加し、露光幅Aの中心位置FC3で最大のデフォーカス量となる。露光幅Aの中心位置FC3を変曲点として、その後はデフォーカス量が減少し、位置FC2で再びベストフォーカス状態でパターン像が基板P上に露光される。位置FC2でのベストフォーカス状態を過ぎると、デフォーカス量が再び増加し、他方の端部Aeでパターン像の露光が終わる。このように、位置FC1と位置FC2の間の領域と、位置FC1と位置FC2の間よりも外側の領域とでは、デフォーカスの方向、即ち、デフォーカスの符合が異なる。
以上のように、基板Pが投影領域PAの露光幅Aの端部Asから端部Aeに渡って一定の周速度で移動している間、基板P上に投影されるパターン像中の各点は、図6Bに示すように、前ピント状態(位置As)で露光が開始され、ベストフォーカス状態(位置FC1)、後ピント状態(位置FC3)、ベストフォーカス状態(位置FC2)、前ピント状態(位置Ae)の順で連続的に変化しながら基板P上に露光される。図6Bの縦軸のフォーカス位置(又はデフォーカス量)のゼロは、投影像面Smの位置と実露光面Spaの位置との差分(Sm−Spa)がゼロとなるベストフォーカス状態である。尚、図6Bの横軸は、露光幅Aの直線的な位置を表すが、基板支持ドラム25の外周面の周長方向の位置としても良い。
露光幅Aの端部As、Aeでの前ピント状態(正方向)でのデフォーカス量、中心位置FC3での後ピント状態(負方向)でのデフォーカス量は、投影光学系PLの結像性能(解像力、焦点深度)、投影領域PAの露光幅A、投影すべきマスクパターンの最小寸法、マスクMの面P1(投影像面Sm)の曲率半径Rm、基板支持ドラム25の外周面(基板P上の露光面Spa)の曲率半径Rpによって好適な範囲が決まる。具体的な数値例は後述するが、このように、露光幅Aに渡る走査露光の間に、フォーカス状態を連続的に変えることにより、マスクパターン中の、特に単独の細い線や離散的なコンタクトホール(ビアホール)等の孤立パターンの見かけ上の焦点深度を拡大することができる。
また、本実施形態では、マスクMの面P1と基板Pの表面を円筒形状にすることで、マスクパターンが基板P側に投影される走査露光方向の投影像面と、露光される基板の露光面とに円筒形状差をつけることができる。そのため、露光装置U3は、マスクMと基板支持ドラム25の回転運動だけで、投影領域PA内の走査露光方向の位置に応じて、フォーカス状態を連続的に変化させることができ、さらに、実質的なフォーカスに対する像コントラスト変化を抑制することができる。また、本実施形態では、投影領域PA内で、走査露光方向の2箇所でベストフォーカスとなるように露光幅Aを設定するので、露光幅A内での平均的なデフォーカス量を小さくしつつ、露光幅Aを大きくすることができる。これにより、投影光束EL2の照度を小さくした場合、或いは、走査露光方向のマスクMや基板Pの走査速度を早くした場合も、適正な露光量を確保することができ、これにより、高い生産効率で基板を処理することができる。また、露光幅に対して平均的なデフォーカス量を小さくできるため、品質も維持することができる。
本実施形態では、露光幅Aの座標位置(周長位置)に応じてフォーカス位置が異なって露光され、結果的に、露光幅Aに渡って異なるフォーカス状態で基板P上に投影されたパターン像の積算された像が、基板Pの露光面上に形成される最終的な像強度分布になる。ここで、積算された像に関して説明するが、簡単のため、まずは、点像強度分布でその概念を説明する。概ね点像強度分布は、そのコントラストと相関関係にある。光軸方向(フォーカス変化方向)にzだけデフォーカスした位置での点像強度分布I(z)は次式となる。ここで、λを照明光束EL1の波長、NAを投影光学系PLの基板側の開口数、I0を理想のベストフォーカス位置での強度分布とし、
ΔDz=(π/2/λ)×NA2×z、
とすると、点像強度分布I(z)は、
I(z)=[sin(ΔDz)/(ΔDz)]2×I0
となる。
このような点像強度分布I(z)を用いると、露光幅A分の積算値(または平均値)を求め、更に、実際の中心位置(図6A中の中心位置FC3)でのデフォーカス量を横軸に取って、各デフォーカス量毎の強度分布をシミュレーションとして求めることができる。これに基づいて、露光装置U3がフォーカス状態(投影像面Smと実露光面Spaの位置関係)を調整することで、露光の際に得られるパターン像の強度分布(像コントラスト)を最適な状態に調整することができる。
また、一般に投影光学系PLの解像力Rと焦点深度DOFは、次式のように表される。
R=k1・λ/NA (0<k1≦1)
DOF=k2・λ/NA2 (0<k2≦1)
ここで、k1、k2は、露光条件や感光材料(フォトレジスト等)、或いは露光後の現像処理や成膜処理によっても変わり得る係数であるが、解像力Rのk1ファクターは、おおよそ0.4≦k1≦0.8の範囲であり、焦点深度DOFのk2ファクターは、おおよそk2≒1と表すことができる。
そのような投影光学系PLの焦点深度DOFの定義に基づき、本実施形態では、近似的に以下の関係式を満たすように調整しておくことが好ましい。
ここで、ΔRm、ΔRpは、投影像面Sm(マスクMの面P1)の曲率半径Rm、基板Pの表面(実露光面Spa)の曲率半径Rp、及び露光幅Aに基づいて、それぞれ以下の式で求められる。
この式から明らかなように、ΔRmとΔRpは、各々、図6Aで示したΔFm、ΔFpを表す。また、上記の関係式1は、さらには、DOF<(ΔRm+ΔRp)を満たすことが好ましい。本実施形態の露光装置U3では、上記の関係式1を満足するように露光幅A、曲率半径Rm、Rpが決定されるが、上記の関係式1を満たすことによって、基板P上に形成される表示パネル用の各種パターンの品質(線幅精度、位置精度、重ね精度等)を維持しつつ、生産性を高めることができる。この点については、第2実施形態で詳細に説明する。
また、本実施形態では、露光幅A内でのデフォーカス量の変化範囲、すなわち、図6Bに示した端部As、Aeでの正方向のデフォーカス量と、露光幅Aの中心位置FC3での負方向のデフォーカス量との差をΔDAとしたとき、投影光学系PLの焦点深度DOFとの関係から、0.5≦(ΔDA/DOF)≦3の関係を満たすように設定することもが好ましく、さらには、1≦(ΔDA/DOF)を満たすことが好ましい。この関係を満たすように露光装置U3を設定することにより、基板P上に形成される表示パネル用の各種パターンの品質(線幅精度、位置精度、重ね精度等)を維持しつつ、生産性を高めることができる。この点についても、第2実施形態で詳細に説明する。
また、露光装置U3は、本実施形態の図6Bのように、マスクMのパターンの投影像面Smと、基板Pの実露光面Spaとの走査露光方向に関する差が、投影領域PAの露光幅Aの中心位置FC3を軸として線対称(図6Bでは左右対称)に変化するように設定されることが好ましい。
また、本実施形態では、図6Bに示すように、投影領域PAの露光幅A内で、デフォーカス量が正となる端部Asから位置FC1までの区間と位置FC2から端部Aeまでの区間とにおいて、正方向のデフォーカス量を積分した値(絶対値)と、デフォーカス量が負となる位置FC1から位置FC2までの区間において、負方向のデフォーカス量を積分した値(絶対値)とを比較し、両者がほぼ等しくなるように、投影像面Smと実露光面Spaの位置関係を設定しても良い。
本実施形態の露光装置U3は、複数の投影光学モジュールPLMを走査露光方向に少なくとも2列で配置し、走査露光方向と直交するY方向においては、隣接する投影光学モジュールPLMの投影領域PAの端部(三角形部分)同士をオーバーラップさせて、マスクMのパターンをY方向に継いで露光するようにした。これにより、Y方向に隣接する2つの投影領域PA間の継ぎ部(オーバーラップ領域)でのパターン像のコントラストや、露光量が異なることによる帯状のムラの発生が抑制される。本実施形態では、それに加えて、実露光面Spa(基板Pの表面)上の投影領域PA内の走査露光方向に関して、ベストフォーカス位置が2箇所(位置FC1、FC2)できるように、投影像面Smと実露光面Spaとの位置関係を設定したので、走査露光中に投影像面Smと実露光面Spaとの位置関係が多少変動する動的なデフォーカスで生じる像コントラストの変化を小さくすることができる。その為、隣接する投影領域PA間のオーバーラップ領域で発生する像コントラストの差も小さくすることができ、継ぎ部が目立たない高品質なフレキシブル表示パネルを製造することができる。
本実施形態のように、複数の投影光学モジュールPLMの各投影領域PAを、走査露光方向(X方向)と直交するY方向に並べる際、各投影領域PAの走査露光方向の幅に渡って基板P上での照度(露光光の強度)を積算した積算値は、走査露光方向に直交するY方向のどの位置においても略一定となることが好ましい。なお、Y方向に隣接する2つの投影領域PAの端部が一部重なる部分(三角形のオーバーラップ領域)でも、一方の三角形の領域での積算値と他方の三角形の領域での積算値との合計が、オーバーラップしない領域での積算値と同じになるように設定される。これによって、走査露光方向に直交する方向において露光量が変化することを抑制することができる。
また、露光装置U3は、投影像面Sm及び露光面Sp(実露光面Spa)を円筒面とすることで、本実施形態のように複数の投影光学モジュールPLMを走査露光方向に複数配置(奇数番と偶数番の2列を配置)しても、それぞれの投影光学モジュールPLMで投影像面Smと露光面Sp(実露光面Spa)との関係が、どれも同じになる為、それらの関係を共に調整することができる。通常のマルチレンズ方式の投影露光装置のように、投影像面及び露光面が平面である場合、例えば、奇数番の投影光学モジュールの投影領域において、焦点深度を広げるべく投影像面に対して露光面(平面基板の表面)を傾斜させると、偶数番の投影光学モジュールの投影領域では、許容し難い大きなデフォーカスが発生してしまう。これに対して、本実施形態のように、投影像面Sm及び露光面Sp(実露光面Spa)を円筒面とすることで、走査露光方向に並んだ2列の投影光学モジュールPLMの各投影領域PAでのフォーカス調整は、円筒状のマスクMの回転中心の第1軸AX1と基板支持ドラム25の回転中心の第1軸AX1とのZ方向の間隔、或いは個々の投影光学モジュールPLM内の倍率補正用光学部材66の調整で簡単に実現可能である。これにより、簡単な装置構成で、デフォーカスに対する像コントラスト変化を抑制することができる。像コントラストの変化を抑制しつつ、走査露光領域における露光幅を大きく出来るため、生産効率も向上させることができる。
[第2実施形態]
次に、図7参照して、第2実施形態の露光装置U3aについて説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付して説明する。図7は、第2実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の露光装置U3は、円筒状の基板支持ドラム25で、投影領域PAを通過する基板Pを保持する構成であったが、第2実施形態の露光装置U3aは、基板Pを平面状に支持して移動可能な基板支持機構12aに保持する構成となっている。
第2実施形態の露光装置U3aにおいて、基板支持機構12aは、平面状に基板Pを保持する基板ステージ102と、基板ステージ102を中心面CLと直交する面内でX方向に沿って走査移動させる移動装置(図示略)とを備える。従って、基板Pはフレキシブルな薄いシート(PET、PEN等の樹脂フィルム、極薄の曲がるガラスシート、薄い金属製のフォイル等)の他に、ほとんど曲がらない枚葉のガラス基板であっても良い。
図7の基板Pの支持面P2は実質的にXY面と平行な平面(曲率半径∞)であるので、マスクMから反射され、各投影光学モジュールPLMを通過し、基板Pに投射される投影光束EL2の主光線は、XY面と垂直になる。
また、第2実施形態においても、先の図2と同様に、XZ面内で見たとき、円筒状のマスクM上の照明領域IR1(及びIR3,IR5)の中心点から照明領域IR2(及びIR4,IR6)の中心点までの周長は、支持面P2に倣った基板P上の投影領域PA1(及びPA3,PA5)の中心点から第2投影領域PA2(及びPA4,PA6)の中心点までのX方向の直線距離と、実質的に等しく設定されている。
図7の露光装置U3aにおいても、下位制御装置16が、基板支持機構12aの移動装置(走査露光用のリニアモータや微動用のアクチュエータ等)を制御し、マスク保持ドラム21の回転と同期して基板ステージ102を駆動する。
次に、第2実施形態の露光装置U3aにおけるマスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係について、図8を参照して説明する。図8は、マスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係を示す説明図である。
露光装置U3aは、投影光学系PLによって投影光束EL2が結像されることで、マスクMのパターンの投影像面Sm1を形成する。投影像面Sm1は、マスクMの円筒状のマスクパターン面がベストフォーカス状態で結像される面であり、円筒面となる。ここで、マスクM上の照明領域IRは、上述したように曲率半径Rm1の曲面(XZ面内では円弧)の一部であるから、投影像面Sm1も曲率半径Rm1の曲面(XZ面内では円弧)の一部となる。また、マスクパターンの像が投影される基板Pの平面状の表面が露光面Sp1(曲率半径∞)となる。このため、図8に示すように、奇数番の投影領域PAの投影像面Sm1(左側)と偶数番の投影領域PAの投影像面Sm1(右側)は、いずれも走査露光方向(X方向)に関して円筒状に湾曲し、先の図6Aで示したのと同様に、投影領域PAの走査露光方向における露光幅A内において、両端のフォーカス位置と露光幅Aの中心でのフォーカス位置との差分である面位置差(フォーカス変化幅)ΔFmを持つ。ここで、走査露光時に、基板Pの表面は実露光面Spa1に配置されるものとする。露光面Sp1及び実露光面Spa1は、平面であるため、投影領域PAの走査露光方向における露光幅A内では、Z方向の面位置の変化量が0となる。実露光面Spa1は、投影像面Sm1上で走査露光方向に離れた異なる2つの位置FC1、FC2で交わるように設定される。すなわち、露光装置U3aは、投影光学系PL内の倍率補正用光学部材66等を調整したり、マスク保持機構11(第1軸AX1)及び基板ステージ102のいずれか一方をZ方向に微動させたりすることで、投影像面Sm1と実露光面Spa1の相対位置関係を所定の状態に設定する。
2つの位置FC1、FC2の各々は、その位置において、投影像面Sm1内のマスクパターン像をベストフォーカス状態で露光する位置である。
これにより、本実施形態においても、円筒状のマスクMの回転運動により、走査露光方向の露光幅A内で、フォーカス状態を所定の範囲内で連続的に変化させる走査露光ができ、さらに、実質的なフォーカス変動に対する像コントラスト変化を抑制することができる。このように、露光面Sp1(実露光面Spa1)が平面であっても、投影像面Sm1を走査露光方向に湾曲した円筒面状にすることにより、基板Pを傾けることなく、基板P上に露光されるマスクパターン像の焦点深度を見かけ上で拡大する効果が得られると共に、像コントラストの変化を抑制することができる。このような作用効果は、通常の平面マスクからのパターン像を円筒面状に支持される基板の表面(露光面)に投影露光する場合でも同様に得られる。
ところで、本実施形態の場合、図8に示した面位置差(フォーカス変化幅)ΔFmは、先の式2のΔRmと同じであるので、
で求められる。そこで、この式2をベースとして、図7の露光装置U3aにおける投影状態や結像特性等の各種シミュレーションを行ってみると、図9〜図17のような結果が得られる。
なお、そのシミュレーションに際して、円筒状のマスクMの面P1(投影像面Sm1)の半径Rmを250mm(直径φで500mm)、露光用の照明光束EL1の波長λをi線(365nm)、投影光学系PLを開口数NAが0.0875の等倍の理想投影系とし、露光面Sp1(実露光面Spa1)は曲率半径が∞の平面とした。プロセスに依存する焦点深度DOFのk2ファクターを1.0とすると、そのような投影光学系PLの焦点深度DOFは、λ/NA2より、幅で約48μm(ベストフォーカス面に対してほぼ±24μmの範囲)となる。尚、以下のシミュレーションでは、便宜上、焦点深度DOFを幅で40μm(ベストフォーカス面に対してほぼ±20μmの範囲)とする場合もある。
さて、図9は、そのような投影光学系PLによる露光幅A内でのデフォーカス特性Cmを示し、横軸は露光幅Aの中心位置を原点としたX方向の座標を表し、縦軸はベストフォーカス位置を原点(ゼロ点)とした投影像面Sm1のデフォーカス量を表す。この図9のグラフは、先の式2において、露光幅Aを20mmとし、その幅Aの座標位置を−10mmから+10mmの間で変化させて得られる面位置差ΔRmをプロットしたものでもある。図9のグラフのように、マスクMの面P1(投影像面Sm1)が走査露光方向に円筒面状に湾曲することに起因して、露光幅A内でのデフォーカス特性Cmは、円弧状に変化する。
図10は、図9に示したデフォーカス特性Cmにおいて、その点像強度が焦点深度DOFの幅の変化に対して、どのように変化するかをシミュレーションしたグラフであり、横軸は、基板Pの表面やマスクパターン面の面精度の誤差、投影光学系PLの像面方向の収差等により発生し得るフォーカス方向のボケ量(デフォーカス特性Cmに対する基板Pの表面のフォーカス方向のズレ)を表し、縦軸は点像強度の値を表す。図10においては、図9中のデフォーカス特性Cmの下で、焦点深度DOFが0×DOFの場合に算出される点像強度分布のうち、露光幅Aの中心(原点)での点像強度を1.0として規格化してある。図11は、露光幅A内で円弧状に変化する図9のデフォーカス特性Cmの変化量と強度差(強度変化量)との関係の一例をシミュレーションしたグラフである。図12は、装置が設定したベストフォーカス時と装置で発生するデフォーカスを24μmとした時の、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmと、ラインアンドスペース(L/S、L&S)パターンのコントラスト変化との関係の一例をシミュレーションしたグラフである。図13は、同様に露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性CmとL/Sパターンのコントラスト比の変化との関係の他の例をシミュレーションしたグラフである。図14は、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性CmとL/SパターンのCD値(クリチカル・ディメンジョン)及びスライスレベルとの関係の一例をシミュレーションしたグラフである。図15は、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmと孤立線(ISOパターン)のコントラスト変化との関係の一例をシミュレーションしたグラフである。図16は、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmと孤立線のコントラスト比の変化との関係の他の例をシミュレーションしたグラフである。図17は、露光幅内Aで円弧状に変化するデフォーカス特性Cmと孤立線のCD値及びスライスレベルとの関係の一例をシミュレーションしたグラフである。
まず、上記条件の下で、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmを、焦点深度DOF単位で振った場合に生じるデフォーカス量に対する点像強度分布I(z)を、図10のように求める。点像強度分布は先に説明した式、
I(z)=[sin(ΔDz)/(ΔDz)]2×I0、
ΔDz=(π/2/λ)×NA2×z
にて求められる。
次に、仮にデフォーカス量の平均をベストフォーカスとなるように基板を調整した場合の点像強度分布を露光幅A内で円弧上に変化するデフォーカス幅を種々の値、例えば、0,1×DOF,2DOF,3×DOF,4×DOFとした場合について、算出する。また、露光幅A内で円弧上に変化するデフォーカス幅が種々の場合について、当該デフォーカス量及びそのスリット幅を基準として、その位置からデフォーカスさせた場合の点像強度分布を算出する。このようにして、算出した露光幅Aで一義的に決まる各露光幅A内で円弧上に変化するデフォーカス幅時の点像強度分布とデフォーカスの関係をまとめた。具体的には、露光装置U3aで露光幅内で円弧上に変化するデフォーカス幅を、0,0.5×DOF,1×DOF,1.5×DOF,2×DOF,2.5×DOF,3×DOF,3.5×DOF,4×DOFとした場合のそれぞれについて、点像強度分布と露光時に想定されるフォーカス誤差、デフォーカスの関係を算出した。
次に、仮にデフォーカス量の平均をベストフォーカスとなるように基板Pを調整した場合の点像強度分布を、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmを種々の値、例えば、0×DOF,1×DOF,2×DOF,3×DOF,4×DOFとした場合について、算出する。また、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmが種々の場合について、当該デフォーカス量及びそのスリット幅を基準として、その位置からデフォーカスさせた場合の点像強度分布を算出する。このようにして、算出した露光幅Aで一義的に決まる各デフォーカス特性Cm時の点像強度分布とデフォーカスの関係をまとめた。具体的には、露光装置U3aとしてシミュレーション上で設定される図9のようなデフォーカス特性Cmを、0×DOF,0.5×DOF,1×DOF,1.5×DOF,2×DOF,2.5×DOF,3×DOF,3.5×DOF,4×DOFとした場合のそれぞれについて、点像強度分布と、露光時に想定されるフォーカス誤差(設定される投影像面Sm1と基板Pの表面との設定すべき位置関係からのズレ)の関係を算出した。これが、図10のグラフに相当する。
図10において、横軸をデフォーカス量[μm]とし、縦軸を規格化した点像強度値とした。なお、露光装置U3aは、円筒状のマスクパターン面、即ち、投影像面Sm1の回転運動を行って、投影光束EL2を基板P上に投射するので、露光時に想定されるフォーカス誤差が2次的な変化をする。そのため、デフォーカスのプラス側とマイナス側で点像の振る舞いが若干異なる。本実施形態では、デフォーカスが+40μmとなる位置の像強度と−40μmとなる位置の像強度とが対称の強度となる位置をベストフォーカスとしている。図10のグラフに示すように、回転による振り幅が大きくなるにしたがって、つまり、露光領域内で、図9のようなデフォーカス特性Cmに沿ってデフォーカス幅が大きくなるにしたがって、ベストフォーカス時の点像強度が低くなり、デフォーカス時の点像強度の変化も小さくなっている。
次に、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmを変えた場合の各々についての点像強度変化、すなわち点像強度の最大値と最小値との差を算出し、さらに露光幅A内でデフォーカス特性Cmが0.5DOFだけ異なる2つの点における点像強度変化の差を算出した。その算出結果を図11に示す。図11の縦軸は、2つの点像強度変化の差分量を表し、横軸は、0.5DOF毎にデフォーカス特性Cmを変化させたときに差分量を求める対象を表す。すなわち、図11の横軸において、例えば、一番左の点像強度差(約0.02)は、デフォーカス特性Cmを0×DOF変化させたときと、0.5×DOF変化させたときとの差分である。この図11のシミュレーション結果によると、点像強度変化の差は、デフォーカス特性Cmが0.5×DOF分変化した状態から1×DOF分変化した状態へ遷移するときと、デフォーカス特性Cmが2.5×DOF分変化した状態から3×DOF分変化した状態に遷移するときに、総じて差が大きい。つまり、0.5×DOFから3×DOFの範囲は、デフォーカス量の変化に対して点像強度変化が緩やかになる効果が高いことになる。したがって、デフォーカス特性Cmに沿ったデフォーカス量は、焦点深度DOFの0.5倍から3倍までの振り幅になるように設定するのが、効果が高いことがわかる。
なお、図10に示すグラフにおいて、基板Pの表面に感光層としてフォトレジストが一定の厚さで塗布されている場合、そのフォトレジスト上に像として形成される点像強度の値は、使用するレジスト等により異なるが、実験によると解像力のk1ファクターが0.5程度の場合、点像強度が概ね0.6以上となれば、像として形成することができる。
ここで、露光装置として見込むフォーカス誤差を、焦点深度DOFの定義式λ/NA2までのデフォーカス幅(本実施形態では、±24μm)とすると、露光領域内でのデフォーカスの振り幅であるデフォーカス幅を2.5×DOFとすることで、像強度の変化が少なく、良好にマスクパターンの像を形成することができる。
次に、投影すべきマスクパターンをL/S(ラインアンドスペース)パターンとした場合について各種演算を行った。ここで、以下では、デフォーカスの考慮対象を焦点深度の定義式の範囲、つまり、本実施形態では、±24μmとする。L/S(ラインアンドスペース)パターンは、線幅2.5μmの線状パターンの複数本が、線幅方向に2.5μm間隔で格子状に配列されたパターンとした。さらに、結像状態は、照明条件によっても異なるため、本実施形態では、照明光学系ILによる照明条件である照明開口数σを0.7とした。
まず、図9に示したデフォーカス特性Cmを種々に変化させた場合、即ち上記と同様に、0×DOF、0.5×DOF、1×DOF、1.5×DOF、2×DOF、2.5×DOF、3×DOF、3.5×DOF、4×DOFと、0.5DOF単位で変化させた場合について、ベストフォーカス状態のL/Sパターン像の光強度分布と、DOF/2のデフォーカス状態、つまり+24μmまたは−24μmでデフォーカスした状態のL/Sパターン像の光強度分布を算出した。
その算出結果に基づいて、ベストフォーカス状態と、DOF/2のデフォーカス状態との各々でコントラストの変化を算出し、それをプロットしたものが図12である。図12の横軸は、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmのデフォーカス幅を表し、縦軸はコントラストを表し、ベストフォーカス状態のコントラスト変化を0μm(BestF)、デフォーカス状態のコントラスト変化を±24μmDefとした。また、図12に示す結果に基づいて、ベストフォーカス状態のコントラスト〔0μm(BestF)〕とDOF/2デフォーカス状態のコントラスト〔±24μmDef〕との比、つまり〔0μm(BestF)〕/〔±24μmDef〕を算出した結果を、図13に示す。図13は、横軸を露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmのデフォーカス幅とし、縦軸をコントラストとした。
また、各露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmのデフォーカス幅におけるCD(Critical Dimension)値[μm]と、フォトレジストを想定したスライスレベル(像の光強度)を算出した。なお、CD値は、デフォーカスが±24μmの場合、スライスレベルは、ベストフォーカスの場合として算出した。その算出結果を図14に示す。図14の横軸は、露光幅A内での円弧状に変化するデフォーカス特性Cm上のデフォーカス幅を表し、縦軸の左側はCD値を表し、右側はスライスレベルの相対光強度を表す。
図14に示すように、投影すべき像がL/Sパターンの場合、露光領域内におけるデフォーカスの振り幅の変化に対して、線幅の変化(CD値の変化)は少ない、先の図12に示したように、コントラストは大きく変化する。しかしながら、図13に示したように、デフォーカスの振り幅が大きくなるにつれて、ベストフォーカス状態でのコントラストと±24μmデフォーカス状態でのコントラストの比は、1に近づくことが判る。このように、円筒面状の投影像面Sm1の周方向に沿って露光幅Aを設定した走査露光方式においては、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmによるデフォーカス幅を大きくすることで、コントラスト比を1に近づけて、ベストフォーカス状態の像コントラストとデフォーカス状態の像コントラストとの差を小さくすることができる。これにより、円筒状のマスクM(円筒状の投影像面Sm1)の場合は、回転運動のみによって、ベストフォーカス時のコントラストとデフォーカス時のコントラストの変化を小さく抑えて、露光されるパターンの線幅の変化を抑制しつつ、投影像面Sm1と基板Pの表面とのフォーカス方向(円筒面の径方向)の変動マージンを大きくした走査露光が可能となる。
次に、マスクのパターンを孤立線パターンとした場合について各種演算を行った。ここで、以下でも、デフォーカスの考慮対象を焦点深度DOFの定義式の範囲、つまり、本実施形態では、±24μmとする。孤立線のパターンは、線幅2.5μmの線状パターンとした。さらに、結像状態は、照明条件によっても異なるため、照明条件としての照明開口数σを0.7とした。
先にシュミレーションしたL/Sパターンの場合と同様に、まず、図9に示したデフォーカス特性Cmを種々に変化させた場合、即ち上記と同様に、0×DOF、0.5×DOF、1×DOF、1.5×DOF、2×DOF、2.5×DOF、3×DOF、3.5×DOF、4×DOFと、0.5DOF単位で変化させた場合について、ベストフォーカス状態の孤立線パターン像の光強度分布と、DOF/2のデフォーカス状態、つまり+24μmまたは−24μmでデフォーカスした状態の孤立線パターン像の光強度分布を算出した。その算出結果に基づいて、図15に示すような0.5DOF毎のデフォーカス幅の変化に対する像コントラストの変化特性が求められる。
図15の横軸は、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmのデフォーカス幅を表し、縦軸は孤立線パターン像のコントラストを表す。また、図15に示す結果に基づいて、先の図13と同様にして、ベストフォーカス状態のコントラスト〔0μm(BestF)〕とDOF/2デフォーカス状態のコントラスト〔±24μmDef〕との比、つまり〔0μm(BestF)〕/〔±24μmDef〕を算出した結果を、図16に示す。図16は、横軸を露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmのデフォーカス幅とし、縦軸をコントラスト比とした。
また、各露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmのデフォーカス幅におけるCD(Critical Dimension)値[μm]と、フォトレジストを想定したスライスレベル(像の光強度)を算出した。なお、CD値は、デフォーカスが±24μmの場合、スライスレベルは、ベストフォーカスの場合として算出した。その算出結果を図17に示す。図17の横軸は、露光幅A内での円弧状に変化するデフォーカス特性Cm上のデフォーカス幅を表し、縦軸の左側はCD値を表し、右側はスライスレベルの相対光強度を表す。図17に示すように、パターンが孤立線の場合、露光領域内におけるデフォーカスの振り幅の変化に対するコントラストの変化は、L/Sパターンの場合よりも小さい。これに対して、パターンが孤立線の場合、デフォーカス量の変化に対して線幅(CD値)の変化が大きいことがわかる。
したがって、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmによるデフォーカス幅を、例えば2.5×DOF、或いは3.0×DOFと大きくすることで、設定したフォーカス位置に変動が生じても、基板Pに露光されるパターンの線幅変化を抑制することが可能となる。すなわち、露光時に種々の理由によって、予め設定される投影像面Sm1と基板Pの表面とのフォーカス方向の相対位置関係が変動しても、そのフォーカス変動に対する線幅の変化を抑制することができ、基板P上に順次製造される表示パネルや電子デバイスの品質を良好に保つことができる。また、ベストフォーカス時の線幅2.5μmの孤立線が、2.5μmとなるスライスレベルは、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmによるデフォーカス幅を大きくするにつれて大きな値となることがわかり、結果的にデフォーカスに対して線幅の変化も小さくなる。
また、先の図14と図17とを用いて、パターンの違いによるスライスレベルの違いを比較すると、露光幅A内で円弧上に変化するデフォーカス特性Cmによるデフォーカス幅を、2.25×DOFとすると、L/Sパターンと孤立線パターンの両者に対するスライスレベル(光強度)がほぼ一致する。したがって、デフォーカス特性Cmによるデフォーカス幅を、2.25×DOFの範囲とすることで、L/Sパターンと孤立線パターンが混在するマスクパターンの場合でも、高い品質の基板が製造できる。これにより、L/Sパターンと孤立線パターンとでスライスレベルが一致しない場合に必要とされている、マスクパターンの線幅修正(OPC、線幅オフセット)等を考慮することなく、両者を共存させることができる。また、線幅修正(OPC、オフセット)のために、マスクの作り直しが発生したり、調整のためにマスクを複数枚製造する必要がなくなったりするため、製造の手間とコストを低減することができる。また、線幅にオフセットを設定し、マスクパターンの一部分の線幅を変えることにより、その部分で逆に焦点深度が狭くなる等の不都合が生じることを抑制することもできる。
[第3実施形態]
次に、図18を参照して、第3実施形態の露光装置U3bについて説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第2実施形態と同様の構成要素については、第2実施形態と同じ符号を付して説明する。図18は、第3実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第2実施形態の露光装置U3aは、マスクを反射した光が投影光束となる反射型マスクを用いる構成であったが、第3実施形態の露光装置U3bは、マスクを透過した光が投影光束となる透過型マスクを用いる構成となっている。
第3実施形態の露光装置U3bにおいて、マスク保持機構11aは、マスクMAを保持するマスク保持ドラム21aと、マスク保持ドラム21aを支持するガイドローラ93と、マスク保持ドラム21aを駆動する駆動ローラ94と、駆動部96と、を備える。
マスク保持ドラム21aは、マスクMA上の照明領域IRが配置されるマスク面を形成する。本実施形態において、マスク面は、線分(母線)をこの線分に平行な軸(円筒形状の中心軸)周りに回転した面(以下、円筒面という)を含む。円筒面は、例えば、円筒の外周面、円柱の外周面等である。マスク保持ドラム21aは、例えばガラスや石英等で構成され、一定の肉厚を有する円筒状であり、その外周面(円筒面)がマスク面を形成する。すなわち、本実施形態において、マスクMA上の照明領域IRは、中心線から一定の曲率半径Rmを持つ円筒面状に湾曲している。マスク保持ドラム21aのうち、マスク保持ドラム21aの径方向から見てマスクMAのパターンと重なる部分、例えばマスク保持ドラム21aのY軸方向の両端側以外の中央部分は、照明光束EL1に対して透光性を有する。
マスクMAは、例えば平坦性の良い短冊状の極薄ガラス板(例えば厚さ100〜500μm)の一方の面にクロム等の遮光層でパターンを形成した透過型の平面状シートマスクとして作成され、それをマスク保持ドラム21aの外周面に倣って湾曲させ、この外周面に巻き付けた(貼り付けた)状態で使用される。マスクMAは、パターンが形成されていないパターン非形成領域を有し、パターン非形成領域においてマスク保持ドラム21aに取付けられている。マスクMAは、マスク保持ドラム21aに対してリリース可能である。マスクMAは、第1実施形態のマスクMと同様に、透明円筒母材によるマスク保持ドラム21aに巻き付ける代わりに、透明円筒母材によるマスク保持ドラム21aの外周面に直接クロム等の遮光層によるマスクパターンを描画形成して一体化してもよい。この場合も、マスク保持ドラム21aがマスクの支持部材として機能する。
ガイドローラ93及び駆動ローラ94は、マスク保持ドラム21aの中心軸に対して平行なY軸方向に延びている。ガイドローラ93及び駆動ローラ94は、中心軸と平行な軸周りに回転可能に設けられている。ガイドローラ93及び駆動ローラ94は、それぞれ、軸方向の端部の外径が他の部分の外形よりも大きくなっており、この端部がマスク保持ドラム21aに外接している。このように、ガイドローラ93及び駆動ローラ94は、マスク保持ドラム21aに保持されているマスクMAに接触しないように、設けられている。駆動ローラ94は、駆動部96と接続されている。駆動ローラ94は、駆動部96から供給されるトルクをマスク保持ドラム21aに伝えることによって、マスク保持ドラム21aを中心軸周りに回転させる。
なお、マスク保持機構11aは、1つのガイドローラ93を備えているが数は限定されず、2以上でもよい。同様にマスク保持機構11aは、1つの駆動ローラ94を備えているが数は限定されず、2以上でもよい。ガイドローラ93と駆動ローラ94のうち少なくとも1つは、マスク保持ドラム21aの内側に配置されており、マスク保持ドラム21aと内接していてもよい。また、マスク保持ドラム21aのうち、マスク保持ドラム21aの径方向から見てマスクMAのパターンと重ならない部分(Y軸方向の両端側)は、照明光束EL1に対して透光性を有していてもよいし、透光性を有していなくてもよい。また、ガイドローラ93及び駆動ローラ94の一方又は双方は、例えば円錐台状であって、その中心軸(回転軸)が中心軸に対して非平行であってもよい。
本実施形態の光源装置13aは、光源(図示略)及び照明光学系ILaを備える。照明光学系ILaは、複数の投影光学系PL1〜PL6の各々に対応してY軸方向に並んだ複数(例えば6つ)の照明光学系ILa1〜ILa6を備える。光源は、上述した各種光源装置13aと同様に各種光源を用いることができる。光源から射出された照明光は、照度分布が均一化されて、例えば光ファイバ等の導光部材を介して、複数の照明光学系ILa1〜ILa6に振り分けられる。
複数の照明光学系ILa1〜ILa6のそれぞれは、レンズ等の複数の光学部材を含む。複数の照明光学系ILa1〜ILa6のそれぞれは、例えばインテグレータ光学系、ロッドレンズ、フライアイレンズ等を含み、均一な照度分布の照明光束EL1によって照明領域IRを照明する。本実施形態において、複数の照明光学系ILa1〜ILa6は、マスク保持ドラム21aの内側に配置されている。複数の照明光学系IL1〜IL6のそれぞれは、マスク保持ドラム21aの内側からマスク保持ドラム21aを通して、マスク保持ドラム21aの外周面に保持されているマスクMA上の各照明領域を照明する。
光源装置13aは、照明光学系ILa1〜ILa6によって光源から射出された光を案内し、案内された照明光束EL1をマスク保持ドラム21a内部からマスクMAに照射する。光源装置13は、マスク保持機構11aに保持されたマスクMAの一部(照明領域IR)を、照明光束EL1によって均一な明るさで照明する。なお、光源は、マスク保持ドラム21aの内側に配置されていてもよいし、マスク保持ドラム21aの外側に配置されていてもよい。また、光源は、露光装置U3bと別の装置(外部装置)であってもよい。
露光装置U3bは、マスクとして透過型マスクを用いた場合も、露光装置U3,U3aと同様に、投影像面と露光面との関係が上述したように露光面にベストフォーカス状態となる位置が2箇所ある関係とすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
次に、図19を参照して、第4実施形態の露光装置U3cについて説明する。なお、重複する記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付して説明する。図19は、第4実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の露光装置U3は、円筒状の反射型のマスクMを、回転可能なマスク保持ドラム21に保持する構成であったが、第4実施形態の露光装置U3cは、平板状の反射型マスクMBを、移動可能なマスク保持機構11bに保持する構成となっている。
第4実施形態の露光装置U3cにおいて、マスク保持機構11bは、平面状のマスクMBを保持するマスクステージ110と、マスクステージ110を中心面CLと直交する面内でX方向に沿って走査移動させる移動装置(図示略)とを備える。
図19のマスクMBの面P1は実質的にXY面と平行な平面であるので、マスクMBから反射された投影光束EL2の主光線は、XY面と垂直になる。このため、マスクMB上の各照明領域IR1〜IR6を照明する照明光学系IL1〜IL6からの照明光束EL1の主光線もXY面に対して垂直になるように配置される。
マスクMBに照明される照明光束EL1の主光線がXY面と垂直になる場合、偏光ビームスプリッタPBSは、1/4波長板41に入射する照明光束EL1の主光線の入射角θ1がブリュースター角θBとなり、1/4波長板41で反射した照明光束EL1の主光線がXY面と垂直になるように配置される。この偏光ビームスプリッタPBSの配置の変更に伴って、照明光学モジュールILMの配置も適宜変更される。
また、マスクMBから反射される投影光束EL2の主光線がXY面と垂直になる場合、投影光学モジュールPLMの第1光学系61に含まれる第1偏向部材70の第1反射面P3は、偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72に入射させる角度にされる。具体的に、第1偏向部材70の第1反射面P3は、第2光軸BX2(XY面)に対して実質的に45°に設定される。
また、第4実施形態においても、先の図2と同様に、XZ面内で見たとき、マスクMB上の照明領域IR1(及びIR3,IR5)の中心点から照明領域IR2(及びIR4,IR6)の中心点までの周長は、支持面P2に倣った基板P上の投影領域PA1(及びPA3,PA5)の中心点から第2投影領域PA2(及びPA4,PA6)の中心点までの周長と、実質的に等しく設定されている。
図19の露光装置U3cにおいても、下位制御装置16が、マスク保持機構11bの移動装置(走査露光用のリニアモータや微動用のアクチュエータ等)を制御し、基板支持ドラム25の回転と同期してマスクステージ110を駆動する。図19の露光装置U3cでは、マスクMBの+X方向への同期移動で走査露光を行なった後、−X方向の初期位置にマスクMBを戻す動作(巻戻し)が必要となる。そのため、基板支持ドラム25を一定速度で連続回転させて基板Pを等速で送り続ける場合、マスクMBの巻戻し動作の間、基板P上にはパターン露光が行なわれず、基板Pの搬送方向に関してパネル用パターンが飛び飛びに(離間して)形成されることになる。しかしながら、実用上、走査露光時の基板Pの速度(ここでは周速)とマスクMBの速度は50〜100mm/sと想定されていることから、マスクMBの巻戻しの際にマスクステージ110を、例えば500mm/sの最高速で駆動すれば、基板P上に形成されるパネル用パターン間の搬送方向に関する余白を狭くすることができる。
次に、第4実施形態の露光装置U3cにおけるマスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係について、図20を参照して説明する。図20は、マスクのパターンの投影像面と基板の露光面との関係を示す説明図である。
露光装置U3cは、投影光学系PLによって投影光束EL2が結像されることで、マスクMBのパターンの投影像面Sm2が形成される。投影像面Sm2は、マスクMBのパターンが結像される位置であり、ベストフォーカスとなる位置である。ここで、マスクMBは、上述したように平面で配置されている。これにより投影像面Sm2も平面(ZX平面において直線)となる。また、露光装置U3cは、基板Pの表面が露光面Spとなる。ここで、露光面Spとは、基板Pの表面である。基板Pは、上述したように円筒形状の基板支持ドラム25に保持されている。これにより、露光面Spは、曲率半径Rpの曲面(ZX平面において曲線)となる。また、露光面Spは、走査露光方向に直交する方向が曲面の軸となる。このため、図20に示すように露光面Spは、走査露光方向に対して曲がった曲線となる。露光面Spは、投影領域PAの走査露光方向における露光幅Aにおける位置の変化量がΔpとなる。投影像面Sm2は、平面である。このため投影像面Sm2は、投影領域PAの走査露光方向における露光幅Aにおける位置の変化量が0となる。ここで、露光装置U3cは、投影像面Sm2に対する露光面Spの位置を実露光面Spaとする。実露光面Spaは、走査露光方向において、投影像面Sm2と異なる2つの位置Pa2、Pb2で交わる。なお、露光装置U3cは、投影光学系PLの各光学部材の位置を調整したり、マスク保持機構11b及び基板支持機構12のいずれか一方によりマスクMBと基板Pとの間隔を調整したりすることで、投影像面Sm2に対する露光面の位置を変化させることができる。
露光装置U3cは、投影像面Sm2と実露光面Spaとが、異なる2つの位置Pa2、Pb2で交わることで、露光幅A内において、実露光面Spa上の位置Pa2でフォーカス状態がベストフォーカスとなり、実露光面Spa上の位置Pb2でフォーカス状態がベストフォーカスとなる。
露光装置U3cは、マスクMbの表面を平面とし、基板Pの表面を円筒形状としても露光装置U3、U3a、U3bと同様に、マスクパターンが基板P側に投影される走査露光方向の投影像面Sm2と、露光される基板Pの露光面Spとに円筒形状差をつけることができる。さらに、露光装置U3cは、投影像面Sm2と実露光面Spaとが、異なる2つの位置Pa2、Pb2で交わり、異なる2つの位置で露光面のフォーカス状態がベストフォーカスとなる。
これにより、露光装置U3cも、マスク保持ドラム21の回転運動により、走査露光方向の露光幅A内で、フォーカス状態を連続的に変化させることができ、さらに、実質的なフォーカスに対する像コントラスト変化を抑制することができる。また、露光装置U3cは、露光装置U3と同様の各種効果を得ることができる。このように、投影像面と露光面(基板Pの表面)との一方のみを曲面とした場合でも、投影像面と露光面との両方を曲面とした場合と同様の効果を得ることができる。
ここで、露光装置U3cは、露光幅A内で円弧上に変化するデフォーカス幅Δを、上述した式の基板Pの走査露光方向の投影像面Sm2の円筒半径r
1を0とした下記式で求めることができる。
Δ=r
2−((r
2 2)−(A/2)
2)
1/2
ここで、露光装置U3cにおいては、マスクパターンの投影像面Sm2の曲率半径が∞であることから、露光幅A内で円弧状に変化するデフォーカス特性Cmは、先の式3のみで求められる。すなわち、露光装置U3cの場合のデフォーカス特性Cm(=ΔRp)は、
で求められる。
なお、本実施形態の露光装置は、マスク保持機構と基板支持機構のうち、曲面で保持する方が第1支持部材となり、曲面または平面で支持する方が第2支持部材となる。
<露光方法>
次に、図21を参照して、露光方法について説明する。図21は、露光方法を示すフローチャートである。
図21に示す露光方法では、まず、基板支持機構で支持面P2に基板Pを支持し(ステップS101)、マスク保持機構で面P1にマスクMを支持する(ステップS102)。これにより、マスクMと基板Pとが対面した状態となる。なお、ステップS101とステップS102の順番は逆でもよい。また、面P1、支持面P2のいずれか一方が第1面となり、他方が第2面となる。第1面は、所定曲率で円筒面状に湾曲した形状である。
ついで、露光面に対するフォーカス位置を調整する(ステップS103)。具体的には、基板Pの表面に設定される投影領域PAの露光幅A内において、ベストフォーカス位置が走査露光方向に2箇所含まれる位置に、フォーカス位置を設定する。
フォーカス位置の調整が完了したら、基板PとマスクMとの走査露光方向の相対移動(回動)を開始させる(ステップS104)。つまり、基板支持機構及びマスク保持機構の少なくとも一方によって、基板PとマスクMの少なくとも一方を走査露光方向に移動させる動作を開始する。
相対移動を開始させたら、投影領域PA内への投影光束の投射を開始させる(ステップS105)。つまり、照明光の照明領域IRに配置されるマスクのパターンからの光束を、基板Pが配置される投影領域PAに投射する。これにより、図21に示す露光方法は、基板Pの露光面において、ベストフォーカス位置が走査露光方向に2箇所含まれる光束を投影領域に投射する。
露光方法は、以上のようにして、フォーカス位置を調整した光束を投射させることで、基板の露光面において、ベストフォーカス位置が走査露光方向に2箇所含まれる光束を投影領域に投射することができる。これにより、上述した各種効果を得ることができる。なお、本実施形態では、フォーカス位置を調整する場合として説明したが、装置の設定によって、ベストフォーカス位置が走査露光方向に2箇所含まれる位置がフォーカス位置となるようにしてもよい。
<デバイス製造方法>
次に、図22を参照して、デバイス製造方法について説明する。図22は、デバイス製造システムによるデバイス製造方法を示すフローチャートである。
図22に示すデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターンや配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。次いで、CAD等で設計された各種レイヤー毎のパターンに基づいて、必要なレイヤー分のマスクMを製作する(ステップS202)。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールFR1を準備しておく(ステップS203)。なお、このステップS203にて用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたもの、でも良い。
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、TFT(薄膜半導体)等によって構成されるバックプレーン層を形成すると共に、そのバックプレーンに積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS204)。このステップS204には、先の各実施形態で説明した露光装置U3、U3a、U3b、U3cのいずれかを用いた露光処理を行う。露光処理には、フォトレジスト層を露光する従来のフォトリソグラフィ工程も含まれるが、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング材を塗布した基板Pをパターン露光して表面に親撥水性によるパターンを形成したり、無電解メッキの為に光感応性の触媒層をパターン露光する工程も含まれる。従来のフォトリソグラフィ工程ではフォトレジストの現像工程が行われ、無電解メッキ法では金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程、或いは、銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等が実施される。
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(対環境バリア層)やカラーフィルターシート等を貼り合せたりして、デバイスを組み立てる(ステップS205)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行なわれる(ステップS206)。以上のようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレイ)を製造することができる。