以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法について説明する。
トンネルTを構築する際には、地山の内壁を支持する支保工Mが構築される。支保工Mには地山の重圧がかかるため、支保工Mが変形しトンネル内周面Sが変位することがある。トンネル内周面Sの変位が大きいときにはロックボルトの打設及び支保工Mの縫返し等によりトンネルTを補強する必要があり、このような理由から、トンネル内周面Sの経時的な変位を計測することが求められる。
トンネル内周面Sの経時的な変位を計測するには、トンネル内周面Sの特徴的な部分の変位を計測することが有効である。特徴的な部分の座標を第1時刻にて取得すると共に第1時刻から所定時間(例えば6時間)経過した第2時刻にて取得し座標の差分を求めることによって、特徴的な部分の変位を計測することができ、トンネル内周面Sの経時的な変位を計測することができる。
トンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法では、トンネル内周面Sの特徴的な部分として、トンネル内周面Sに形成される凹凸を用いる。トンネル内周面Sには凹凸が複数あり、凹凸の各々の凹凸度合は、トンネル内周面Sの形状が全体的に変化してもほとんど変化しないことがわかっている。そのため、第1及び第2時刻における凹凸度合を比較することにより、第1時刻におけるトンネル内周面Sと第2時刻におけるトンネル内周面Sとの間で互いに対応する凹凸を検出することができ、トンネル内周面Sにおける複数箇所での変位を正確に算出することができる。したがって、トンネル内周面Sの変位を正確に計測することができる。また、トンネル内周面Sに、凹凸とは別にアンカー等のターゲットの設置作業を省略することができ、トンネル内周面Sの変位を効率的に計測することができる。
なお、特徴的な部分として用いられるトンネル内周面Sの凹凸は、トンネルTの構築時に意図せずに形成される凹凸であってもよいし、意図的に形成される凹凸であってもよい。
トンネル内周面変位計測装置100は、座標情報を解析するコンピュータ20で構成される。コンピュータ20は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラム等を記憶するROM(Read−Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(random access memory)と、を含む。
コンピュータ20は、トンネルT内に設置される三次元レーザスキャナ10(以下、単に「スキャナ10」と称する)と有線又は無線で接続される。スキャナ10は、トンネル内周面Sの位置を測定すると共に測定した位置の情報を出力する。
スキャナ10は、レーザ光をトンネル内周面Sに照射すると共にトンネル内周面Sで反射したレーザ光を検知することにより、トンネル内周面Sのうちレーザ光が照射された箇所の位置を測定する。レーザ光はトンネル内周面S上で走査可能であり、トンネル内周面S上の複数箇所にレーザ光を照射することにより、トンネル内周面Sにおける複数箇所の位置を測定することができる。
スキャナ10による計測は、第1時刻及び第2時刻にて行われ、スキャナ10の設置位置は、第1時刻及び第2時刻で略同じである。つまり、スキャナ10は、スキャナ10の設置位置を基準として、トンネル内周面Sにおける複数箇所の位置を第1時刻及び第2時刻にて測定する。
測定された位置の情報は、三次元座標系の座標としてコンピュータ20に出力される。三次元座標系は、例えば、トンネル軸方向、トンネル横方向(図1において紙面垂直方向)及び鉛直方向に沿う三直線を座標軸とした直交座標系である。
コンピュータ20は、スキャナ10から出力される座標を用いて、第1及び第2時刻における凹凸の凹凸度合を算出し、凹凸度合を比較することにより第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を検出し、凹凸の変位を算出する。
スキャナ10から出力される座標は三次元座標系の値であるため、スキャナ10から出力される座標をそのまま用いて凹凸度合を算出した場合、凹凸度合は三次元情報となり、凹凸度合の比較には三次元情報の照合が必要となる。そのため、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を検出するのが困難であり、トンネル内周面Sの変位を容易に計測することができない。
トンネル内周面変位計測装置100は、後述する構成により、スキャナ10から出力される座標を用いてトンネル軸方向と直交する所定断面上の凹凸パターンを生成し、凹凸パターン上の所定点での凹凸度合を算出する。そのため、凹凸度合は、二次元情報であり、凹凸度合どうしを二次元情報の照合により比較することができる。したがって、凹凸パターンどうしを容易に比較することができ、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を容易に検出することができる。これにより、トンネル内周面Sの変位を容易に計測することができる。
なお、トンネル内周面Sは、トンネル横方向及び鉛直方向へ主に変位し、トンネル軸方向へはほとんど変位しない。つまり、第1時刻にて所定断面上にある凹凸は、第2時刻においても同一の所定断面上にある。したがって、トンネル軸方向と直交する所定断面上の凹凸パターンどうしの比較であっても、第1時刻におけるトンネル内周面Sと第2時刻におけるトンネル内周面Sとの間で互いに対応する凹凸を検出することができる。また、このように検出された対応する凹凸どうしの差分をトンネル内周面Sの変位としても、計測精度は低下しない。
図2に示すように、コンピュータ20は、三次元レーザスキャナ10から出力される座標を取得する取得部30と、座標を用いて第1及び第2時刻での凹凸パターンを生成する生成部40と、第1及び第2時刻での凹凸パターン上の所定点における凹凸度合を算出する凹凸度合算出部50と、凹凸度合に基づいて、第1及び第2時刻での凹凸パターン上の所定点どうしが対応するか否かを判断する判断部60と、第1及び第2時刻での凹凸パターン上の所定点における座標の差分を算出する差分算出部70と、を備えている。なお、取得部30、生成部40、凹凸度合算出部50、判断部60及び差分算出部70は、トンネル内周面Sの変位を計測するためのコンピュータ20の機能を仮想的なユニットとしたものである。
取得部30は、第1時刻におけるトンネル内周面S上の複数箇所での座標である第1座標群を取得すると共に、第2時刻におけるトンネル内周面S上の複数箇所での座標である第2座標群を取得する。
生成部40は、所定断面上の第1時刻での凹凸パターンである第1凹凸パターンを第1座標群を用いて生成すると共に、同一の所定断面上の第2時刻での凹凸パターンである第2凹凸パターンを第2座標群を用いて生成する。ここでは、所定断面を、図1に示すC−C線に沿う断面(以下、「C−C断面」と称する)とする。
スキャナ10はトンネル内周面Sにおける多数箇所での位置を測定することができるものの、C−C断面での測定箇所の数は限られる。そのため、C−C断面での座標のみを用いて凹凸パターンを生成した場合には、凹凸パターンの精度が低下し、凹凸度合算出部50にて算出される凹凸度合の精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、生成部40は、C−C断面を含むようにトンネル軸方向に沿って設定された所定範囲R内の座標を用いて凹凸パターンを生成する。
図3に示すように、生成部40は、取得部30により取得された複数の座標から所定範囲R内の座標を抽出する抽出部41と、抽出された座標をC−C断面に投影する投影部42と、投影された座標から形成される図形を凹凸パターンとして特定する特定部43と、を備える。
抽出部41は、トンネル軸方向に沿う座標軸の値に基づいて、取得部30により取得された複数の座標から所定範囲R内の座標を抽出する。具体的には、トンネル軸方向に沿う座標軸の値が所定範囲R内の値である座標を抽出し、トンネル軸方向に沿う座標軸の値が所定範囲R外の値である座標を除外する。
所定範囲Rは、予め設定される。所定範囲Rは、作業者によって変更可能であってもよい。所定範囲Rは、特徴的な部分となり得る凹凸の大きさに応じて設定することが好ましく、例えば、C−C断面からトンネル軸方向両側に5mmの範囲で設定される。
投影部42は、抽出された座標におけるトンネル軸方向に沿う座標軸の値を、C−C断面に対応する値に変換することにより、抽出部41により抽出された座標をC−C断面に投影する。投影後の座標は、C−C断面上の座標となる。つまり、抽出部41により抽出された座標は、C−C断面への投影により二次元座標系の座標に変換される。
特定部43は、C−C断面に投影された座標をトンネル周方向に順に結ぶことによって形成される図形を凹凸パターンとして特定する。投影後の座標はC−C断面上の座標であるため、凹凸パターンとして特定される図形は、C−C断面上の平面図形である。そのため、凹凸パターンは、二次元情報となる。
図4には、生成部40の特定部43により特定された凹凸パターンの一例が示されている。第1凹凸パターンは、第1時刻での凹凸パターンであり、第2凹凸パターンは、第2時刻での凹凸パターンである。図4では、説明の便宜上、第1凹凸パターンと第2凹凸パターンの大きさの違いを誇張して描いている。
図4に示すように、第1及び第2凹凸パターンの間で対応する凹凸どうしの曲率は、互いに類似している。そこで、本実施形態では、第1及び第2凹凸パターン上の所定点での曲率を凹凸度合とし、第1及び第2凹凸パターン上の所定点での曲率を比較することにより、第1及び第2凹凸パターン上の所定点どうしが対応するか否かを判断する。各座標での曲率は、凹凸度合算出部50(図2参照)にて算出され、第1及び第2凹凸パターン上の所定点どうしが対応するか否かは、判断部60(図2参照)にて判断される。
曲率を算出する際に、円の方程式を利用してもよいが、この場合には、3つの点を通る円を仮定し3つの円の方程式を解く必要があるため、処理が複雑になるおそれがある。そこで、ここでは、トンネル周方向に隣り合う点を結ぶ線分の長さと、隣り合う点における傾きの差と、を用いて、曲率を算出する。図5を参照して、曲率を求める手順をより詳細に説明する。
図5は、円C上の点Mでの曲率を求める手順を説明するための図である。点Oは、円Cの中心である。点Mにおける接線TMの傾き(接線TMと横軸との間の角度)をα[rad]とし、円C上の点Nにおける接線TNの傾き(接線TNと横軸との間の角度)をβ[rad]とする。
図5において、中心角MONの角度γ[rad]は、
γ=β―α
と表される。つまり、中心角MONの角度γは、接線TNの傾きと接線TMの傾きの差となる。
弧MNの長さLAは、円Cの半径Rcと中心角MONの角度(β―α)を用いて、
LA=Rc×(β―α)
と表される。つまり、半径Rcは、
Rc=LA/(β―α)
と表される。
点Nが点Mの極めて近くにある場合には、弧MNの長さLAを線分MNの長さLSに近似することができるため、半径Rcは、
Rc≒LS/(β−α)
となる。弧MNの曲率Kは、半径Rcの逆数であるため、
K≒(β−α)/LS ・・・・・・・・・・・・・・(1)
となる。
本実施形態において、生成部40は、C−C断面に投影された座標を用いて凹凸パターンを生成するため、凹凸パターンには、座標が既知の点(以下、「座標既知点」と称する)が多数含まれている。つまり、凹凸パターンにおけるトンネル周方向に隣り合う座標既知点どうしは極めて近くに位置するとみなすことができる。したがって、式(1)を用いて、凹凸パターン上の座標既知点における曲率を算出することができる。
凹凸度合算出部50による処理、すなわち凹凸パターン上の座標既知点における曲率を算出する処理を、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、凹凸パターンを概略的に示す拡大図であり、5個の座標既知点Pが示されている。説明の便宜上、5個の座標既知点Pを、図6において反時計回り方向に順に座標既知点Pn−2、Pn−1、Pn、Pn+1、Pn+2とする。
ステップS701では、生成部40により生成された凹凸パターン上で1つの座標既知点Pnを選択する。
ステップS702では、座標既知点Pn,Pn+1の距離Lnを算出する。算出された距離Lnは、図5における線分MNの長さLSに相当する。
ステップS703では、座標既知点Pnにおける接線の傾きSn[rad]を算出する。具体的には、座標既知点Pn,Pn+1を通る直線の傾きを算出し、座標既知点Pn,Pn−1を通る傾きを算出し、これらの傾きの平均を算出し、算出された傾きの平均を、座標既知点Pnにおける接線の傾きSnとする。傾きSnは、図5における接線TMの傾きαに相当する。
ステップS704では、座標既知点Pn+1における接線の傾きSn+1[rad]を算出する。具体的には、座標既知点Pn+1,Pn+2を通る直線の傾きを算出し、座標既知点Pn+1,Pnを通る傾きを算出し、これらの傾きの平均を算出し、算出された傾きの平均を、座標既知点Pn+1における接線の傾きSn+1とする。傾きSn+1は、図5における接線TNの傾きβに相当する。
ステップS705では、距離Ln,傾きSn,Sn+1を用いて、座標既知点Pn+1が座標既知点Pnの極めて近くに位置すると仮定したときの座標既知点Pnにおける曲率を算出する。具体的には、式(1)の長さLS、傾きα,βに、ステップS702,S703,S704にて算出された距離Ln,傾きSn,Sn+1を代入し、曲率を算出する。
ステップS705にて算出された曲率は、座標既知点Pn+1における接線の傾きSn+1を用いているため、座標既知点Pn+1の影響を強く受ける。そこで、凹凸度合算出部50では、座標既知点Pn−1が座標既知点Pnの極めて近くに位置すると仮定したときの座標既知点Pnにおける曲率を算出し、2つの曲率の平均を、座標既知点Pnにおける曲率とする。
具体的には、ステップS706では、座標既知点Pn−1,Pnの距離Ln−1を算出する。ステップS707では、座標既知点Pn−1における接線の傾きSn−1[rad]を算出する。ステップS708では、距離Ln−1,傾きSn,Sn−1を式(1)に代入して、座標既知点Pn−1が座標既知点Pnの極めて近くに位置すると仮定したときの座標既知点Pnにおける曲率を算出する。
ステップS709では、ステップS705にて算出した曲率と、ステップS708にて算出した曲率と、の平均を算出し、算出された平均を、座標既知点Pnにおける曲率とする。
以上により、座標既知点Pnにおける曲率の算出が完了する。
ステップS702〜S709では、座標既知点Pnにおける曲率を算出するために、座標既知点Pnに加え、座標既知点Pn−2,Pn−1,Pn+1,Pn+2を用いている。つまり、トンネル周方向における両端2つずつの座標既知点における曲率半径を算出することができないため、曲率半径を算出可能な座標既知点(以下、「算出対象点」と称する)は、トンネル周方向における両端2つずつ(合計4つ)の座標既知点を除いた凹凸パターン上の座標既知点となる。
ステップS710では、算出対象点の全てに対してステップS702〜S709を実行したか否かを判定する。算出対象点の全てに対してステップS702〜S709を実行していないと判定した場合には、ステップS711に進む。ステップS711では、凹凸パターン上で別の座標既知点を選択し、ステップS702に戻る。ステップS710にて、算出対象点の全てに対してステップS702〜S709を実行したと判定した場合には、ステップS801に進む。
ステップS702〜S709により算出される曲率は、5個の座標既知点から算出されるため、凹凸パターンの局所的な変化しか捉えることができず、また、ノイズデータの影響を受ける可能性がある。このような曲率に基づいて第1及び第2凹凸パターン上で選択された座標既知点どうしが対応するか否かを判断してもよいが、精度が低下するおそれがある。
そこで、凹凸度合算出部50では、図9に示すように、選択された座標既知点Pが中心となりかつ6個以上の座標既知点が含まれるようにトンネル周方向に沿って第1範囲R1を設定し、第1範囲R1内にある座標既知点における曲率の平均を算出する。つまり、第1範囲R1内にある凹凸パターン上の点の座標を用いて第1平均曲率(第1凹凸度合)を算出する。第1平均曲率は、5個の座標既知点から算出される曲率と比較して、凹凸パターンの変化を大きく捉えることができると共に、ノイズデータの影響を低減することができる。したがって、第1及び第2凹凸パターンの第1平均曲率どうしを比較することにより、第1及び第2凹凸パターン上で選択された座標既知点Pどうしが対応するか否かを精度よく判断することができる。
また、凹凸度合算出部50では、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第1範囲R1よりも大きい第2範囲R2を設定し、第2範囲R2内にある座標既知点における曲率の平均を算出する。つまり、第2範囲R2内にある凹凸パターン上の点の座標を用いて第2平均曲率(第2凹凸度合)を算出する。第2平均曲率は、第1平均曲率と比較して、凹凸パターンの変化をより大きく捉えることができる。したがって、凹凸パターンの変化を異なる範囲で捉える第1平均曲率及び第2平均曲率どうしを比較することができるため、第1及び第2凹凸パターンの間で互いに対応する座標既知点を精度よく検出することができる。
更に、凹凸度合算出部50では、選択された座標既知点Pでの第2平均曲率に対する第1平均曲率の比(以下、「平均曲率比」と称する)を第3凹凸度合として算出する。平均曲率比が大きいほど、第1平均曲率が大きく第2平均曲率が小さいため、選択された座標既知点Pがその周囲に対して大きく窪んだ、又は大きく突出した特徴的な部分に含まれていることになる。このような座標既知点を凹凸パターン上での特異点として用い、他の座標既知点を比較対象から除外することにより、第1及び第2凹凸パターンの間で互いに対応する座標既知点を効率的に検出することができる。
凹凸度合算出部50による追加的な処理、すなわち凹凸パターン上の座標既知点における第1平均曲率、第2平均曲率及び平均曲率比を算出する処理を、図8及び図9を参照して説明する。
ステップS801では、生成部40により生成された凹凸パターン上で1つの座標既知点Pを選択する。
ステップS802では、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第1範囲R1を設定し、第1範囲R1内にある座標既知点の曲率の平均を算出する。算出された値が、選択された座標既知点Pにおける第1平均曲率である。
ステップS803では、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第2範囲R2を設定し、第2範囲R2内にある座標既知点の曲率の平均を算出する。算出された値が、選択された座標既知点Pにおける第2平均曲率である。
第1範囲R1の幅及び第2範囲R2の幅は、予め設定される。第1範囲R1の幅及び第2範囲R2の幅は、作業者によって変更可能であってもよい。第1範囲R1の幅は、例えば、トンネル内周面Sのトンネル周方向の長さの10000分の1〜50分の1程度である。第2範囲R2の幅は、例えば、トンネル内周面Sのトンネル周方向の長さの100分の1〜3分の1程度である。
ステップS804では、第1平均曲率を第2平均曲率で除すことにより、選択された座標既知点Pにおける平均曲率比を算出する。
ステップS805では、算出対象点の全てに対してステップS802〜S804を実行したか否かを判定する。算出対象点の全てに対してステップS802〜S804を実行していないと判定した場合には、ステップS806に進む。ステップS806では、凹凸パターン上で別の座標既知点を選択し、ステップS802に戻る。ステップS805にて、算出対象点の全てに対してステップS802〜S804を実行したと判定した場合には、凹凸度合算出部50による処理を終了する。
ステップS701〜S711及びステップS801〜S806は、第1凹凸パターンと第2凹凸パターンとに対してそれぞれ実行され、第1凹凸パターンの各座標既知点における第1平均曲率、第2平均曲率及び平均曲率比と、第2凹凸パターンの各座標既知点における第1平均曲率、第2平均曲率及び平均曲率比が算出される。
算出された第1平均曲率、第2平均曲率及び平均曲率比は、判断部60による処理にて用いられる。図10及び図11を参照して、判断部60による処理、すなわち第1及び第2凹凸パターン上の座標既知点どうしが対応するか否かを判断する処理を説明する。
図10に示すように、ステップS1001では、第1凹凸パターン上で1つの座標既知点を選択する。
ステップS1002では、第1凹凸パターン上で選択された座標既知点における平均曲率比が第1閾値以上であるか否かを判定する。選択された座標既知点における平均曲率比が第1閾値未満である場合には、選択された座標既知点が第1凹凸パターン上の特異点ではないと判定し、ステップS1103に進む。ステップS1103における処理は後述する。ステップS1002にて、第1凹凸パターン上で選択された座標既知点における平均曲率比が第1閾値以上である場合には、選択された座標既知点が第1凹凸パターン上の特異点であると判定し、ステップS1003に進む。
ステップS1003では、第2凹凸パターン上で1つの座標既知点を選択する。
ステップS1004では、第2凹凸パターン上で選択された座標既知点における平均曲率比が第2閾値以上であるか否かを判定する。選択された座標既知点における平均曲率比が第2閾値未満である場合には、選択された座標既知点が第2凹凸パターン上の特異点ではないと判定し、ステップS1101に進む。ステップS1101における処理は後述する。ステップS1004にて、第2凹凸パターン上で選択された座標既知点における平均曲率比が第2閾値以上である場合には、選択された座標既知点が第2凹凸パターン上の特異点であると判定し、ステップS1005に進む。
ステップS1002にて用いられる第1閾値と、ステップS1004にて用いられる第2閾値とは、予め設定される。第1閾値と第2閾値は、作業者によって変更可能であってもよい。第1閾値と第2閾値は、同じ値に設定されていてもよいし、異なる値に設定されていてもよい。
ステップS1005では、第1凹凸パターン上で選択された座標既知点における第2平均曲率と、第2凹凸パターン上で選択された座標既知点における第2平均曲率と、が類似するか否かを判定する。具体的には、第2平均曲率どうしの差分が第3閾値以下の場合には類似すると判定し、第2平均曲率どうしの差分が第3閾値よりも大きい場合には類似しないと判定する。
ステップS1005にて、第2平均曲率どうしが類似しないと判定した場合には、ステップS1103に進む。ステップS1005にて、第2平均曲率どうしが類似すると判定した場合には、ステップS1006に進む。
ステップS1006では、第1凹凸パターン上で選択された座標既知点における第1平均曲率と、第2凹凸パターン上で選択された座標既知点における第1平均曲率と、が類似するか否かを判定する。具体的には、第1平均曲率どうしの差分が第4閾値以下の場合には類似すると判定し、第1平均曲率どうしの差分が第4閾値よりも大きい場合には類似しないと判定する。
ステップS1005にて用いられる第3閾値と、ステップS1006にて用いられる第4閾値とは、予め設定される。第3閾値と第4閾値は、作業者によって変更可能であってもよい。第3閾値と第4閾値は、同じ値に設定されていてもよいし、異なる値に設定されていてもよい。
ステップS1006にて、第1平均曲率どうしが類似しないと判定した場合には、ステップS1101に進む。ステップS1006にて、第1平均曲率どうしが類似すると判定した場合には、ステップS1007に進む。
ステップS1007では、第1凹凸パターン上で選択された座標既知点と第2凹凸パターン上で選択された座標既知点とが対応すると不図示の記憶部に記憶し、ステップS1103に進む。
ステップS1101では、第2凹凸パターン上の算出対象点の全てを選択したか否かを判定する。ステップS1101にて、算出対象点の全てを選択していないと判定した場合には、ステップS1102に進む。ステップS1102では、第2凹凸パターン上で別の座標既知点を選択し、ステップS1003に戻る。ステップS1101にて、算出対象点の全てを選択したと判定した場合には、ステップS1103に進む。
ステップS1103では、第1凹凸パターン上の算出対象点の全てを選択したか否かを判定する。ステップS1103にて、算出対象点の全てを選択していないと判定した場合には、ステップS1104に進む。ステップS1104では、第1凹凸パターン上で別の座標既知点を選択し、ステップS1002に戻る。ステップS1103にて、算出対象点の全てを選択したと判定した場合には、判断部60による処理を終了する。
以上により、第1及び第2凹凸パターンの間で互いに対応する座標既知点の検出が完了する。
差分算出部70(図2参照)では、第1及び第2凹凸パターン上の互いに対応する座標既知点どうしの差分を算出する。算出された差分が、トンネル内周面Sの変位に相当する。以上により変位の計測が完了する。計測された変位は、モニタ80(図1及び図2参照)に表示される。
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
トンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法では、トンネル軸方向と交差するC−C断面上の第1及び第2凹凸パターンを生成し、第1及び第2凹凸パターン上の座標既知点での凹凸度合を算出する。そのため、凹凸度合は、二次元情報であり、凹凸度合どうしを二次元情報の照合により比較することができる。したがって、第1及び第2凹凸パターンを容易に比較することができ、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を容易に検出することができる。これにより、トンネル内周面Sの変位を容易に計測することができる。
トンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法では、取得された座標から、C−C断面を含むようにトンネル軸方向に沿って設定された所定範囲R内にある座標を抽出し、抽出後の座標をC−C断面に投影し、投影後の座標を用いて凹凸パターンを特定する。そのため、凹凸パターンの生成に用いられる座標の数を増加させることができ、凹凸パターンを精度よく生成することができる。これにより、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を精度よく検出することができ、トンネル内周面Sの変位を精度よく計測することができる。
トンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法では、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って設定された第1範囲R1内にある座標既知点での第1平均曲率を算出すると共に、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第1範囲R1よりも広く設定された第2範囲R2内にある座標既知点での第2平均曲率を算出し、第1平均曲率を第2平均曲率で除して平均曲率比を算出する。平均曲率比が大きいほど、第1平均曲率が大きく第2平均曲率が小さいため、選択された座標既知点Pがその周囲に対して大きく窪んだ、又は大きく突出した特徴的な部分の点であるか否かを平均曲率比に基づいて判断することができる。特徴的でない部分の座標既知点を除外して、第1及び第2凹凸パターン上の座標既知点どうしが対応するか否かを判断することにより、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を効率的に検出することができ、トンネル内周面Sの変位を効率的に計測することができる。
トンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法では、座標既知点の凹凸度合が第1閾値又は第2閾値以上のときに当該座標既知点が特異点であると判断し、第1時刻における特異点の凹凸度合と第2時刻における特異点の凹凸度合とが類似するか否かを判断する。特異点どうしの比較により第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を精度よく検出することができるため、トンネル内周面Sの変位を精度よく計測することができる。
トンネル内周面変位計測装置100及びトンネル内周面変位計測方法では、第1時刻における特異点の第2平均曲率と第2時刻における特異点の第2平均曲率とが類似すると判断し、かつ第1時刻における特異点の第1平均曲率と第2時刻における特異点の第2均曲率とが類似すると判断したときに、第1時刻における特異点と第2時刻における特異点とが対応すると判断する。凹凸パターンの変化を異なる範囲で捉えて凹凸パターンどうしを比較することができるため、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を精度よく検出することができる。したがって、トンネル内周面Sの変位を精度よく計測することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記実施形態では、トンネル内周面Sにおける複数箇所の位置の測定に三次元レーザスキャナ10を用いているが、三次元レーザスキャナ10に代えて、ステレオカメラ、プロファイラ及びLiDAR(Light Detection and Ranging)等の測域センサを用いてもよい。また、モアレ縞をトンネル内周面Sに照射してトンネル内周面Sにおける複数箇所の位置を測定してもよいし、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)を用いてトンネル内周面Sにおける複数箇所の位置を測定してもよい。
上記実施形態では、取得された座標から、C−C断面を含むようにトンネル軸方向に沿って設定された所定範囲R内にある座標を抽出し、抽出後の座標をC−C断面に投影し、投影後の座標を用いて凹凸パターンを特定しているが、これに代えて、C−C断面上でのトンネル内周面Sの座標を補間して凹凸パターンを生成してもよい。この場合でも、凹凸パターンの精度を向上させることができ、第1及び第2時刻におけるトンネル内周面Sの間で互いに対応する凹凸を精度よく検出することができる。したがって、トンネル内周面Sの変位を精度よく計測することができる。
上記実施形態では、凹凸度合を、凹凸パターン上で選択された座標既知点Pでの曲率としているが、曲率に代えて、凹凸パターン上で選択された座標既知点Pでの傾き、尖度及び歪度を凹凸度合としてもよい。
座標既知点Pでの傾きは、ステップS703にて算出される。第1平均傾き(第1凹凸度合)は、第1平均曲率と同様に、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第1範囲R1を設定し、第1範囲R1内にある座標既知点における傾きの平均を算出することにより得られる。第2平均傾き(第2凹凸度合)は、第2平均曲率と同様に、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第2範囲R2を設定し、第2範囲R2内にある座標既知点における傾きの平均を算出することにより得られる。平均傾き比(第3凹凸度合)は、平均曲率比と同様に、選択された座標既知点Pでの第2平均傾きに対する第1平均傾きの比を算出することにより得られる。
尖度及び歪度は、凹凸パターン上の点の座標を極座標で表すことにより算出することができる。具体的には、凹凸パターン上の点の座標を、C−C断面でのトンネルTの中心を原点とした極座標にすると、選択された座標既知点Pに対して横軸を極座標の角度成分θ、縦軸を極座標の距離成分r=E(θ)とすることができる。なお、E(θ)は期待値関数である。尖度K及び歪度Sは、距離成分rの平均μ及び標準偏差σを用いて、
と定義されるため、距離成分rの平均μ及び標準偏差σを算出して式(2)及び式(3)に代入することにより、及び歪度を算出することができる。第1平均傾き(第1凹凸度合)は、第1平均曲率と同様に、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第1範囲R1を設定し、第1範囲R1内にある座標既知点における傾きの平均を算出することにより得られる。第2平均傾き(第2凹凸度合)は、第2平均曲率と同様に、選択された座標既知点Pが中心となるようにトンネル周方向に沿って第2範囲R2を設定し、第2範囲R2内にある座標既知点における傾きの平均を算出することにより得られる。平均傾き比(第3凹凸度合)は、平均曲率比と同様に、選択された座標既知点Pでの第2平均傾きに対する第1平均傾きの比を算出することにより得られる。
上記実施形態では、ステップS802にて、第1範囲R1は、選択された座標既知点Pが中心となるに設定されるが、第1範囲R1は、選択された座標既知点Pが含まれるように設定されればよい。同様に、ステップS803にて、第2範囲R2は、選択された座標既知点Pが中心となるに設定されるが、第2範囲R2は、選択された座標既知点Pが含まれるように設定されればよい。
上記実施形態では、1つのC−C断面上の凹凸パターンを生成し凹凸度合を算出しているが、複数の所定断面を設定し、各所定断面の凹凸パターンを生成し凹凸度合を算出してもよい。この場合には、トンネル軸方向に複数箇所でトンネル内周面Sの変位を計測することができる。