図1は、本実施形態に係る積層体10を示す断面模式図である。図2は、図1に示す積層体10を示す平面模式図である。図1および図2に示すように、積層体10は、第1樹脂層6と、第1樹脂層6上に設けられた第2樹脂層8と、第1樹脂層6と第2樹脂層8の間に設けられた中間層2と、を備えている。中間層2は、繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維(以下、微細繊維状セルロースとも呼ぶ)を含んでいる。また、第1樹脂層6と第2樹脂層8は、一部が互いに接している。
上述のように、樹脂層と繊維層を含む積層体においては、その層間における密着性を向上させることが求められていた。本実施形態によれば、第1樹脂層と第2樹脂層の間に微細なセルロース繊維を含む中間層を設けつつ、樹脂層同士を互いに接触させることによって全体として層間密着性の高い積層構造を実現することができる。したがって、樹脂層と、セルロース繊維を含む層とを有する積層体において、その層間における密着性を向上させることができる。
以下、本実施形態に係る積層体10について詳述する。
(積層体)
本実施形態に係る積層体10は、上述のとおり、第1樹脂層6と、第1樹脂層6上に設けられた第2樹脂層8と、第1樹脂層6と第2樹脂層8の間に設けられた中間層2と、を備えている。また、積層体10は、第1樹脂層6、第2樹脂層8および中間層2以外の他の層を有していてもよい。この場合、上記他の層は、たとえば第1樹脂層6のうちの中間層2と対向する一面と反対の他面側、および第2樹脂層8のうちの中間層2と対向する一面と反対の他面側のうちのいずれか一方または両方に設けられる。上記他の層としては、たとえば無機層や有機層が挙げられる。また、上記他の層として、さらに中間層2と樹脂層の積層構造が一または二以上形成されていてもよい。
また、積層体10においては、上述のとおり、第1樹脂層6と第2樹脂層8はそれぞれの一部が互いに接している。本実施形態においては、たとえば第1樹脂層6と第2樹脂層8の互いに接するそれぞれの一部が、互いに融着していることが好ましい。これにより、積層体10の層間における密着性をより効果的に向上させることができる。
本実施形態において、積層体10の全体厚みは、特に制限されるものではないが、たとえば50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。また、積層体10の全体厚みは、特に限定されるものではないが、たとえば20mm以下であることが好ましい。積層体の厚みは用途に応じて適宜調整することが好ましい。
中間層2の厚みは、たとえば5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、中間層2の厚みは、たとえば500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。ここで、中間層2の厚さは、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体10の断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡、拡大鏡又は目視で観察して、測定される値である。中間層2が複数の繊維層により構成される場合は、合計の繊維層の厚みを上記中間層2の厚みとして、上記範囲を満たすことが好ましい。
また、第1樹脂層6の厚みは、たとえば10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることがよりさらに好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。また、第1樹脂層6の厚みは、たとえば15000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。
また、第2樹脂層8の厚みは、たとえば10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることがよりさらに好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。また、第2樹脂層8の厚みは、たとえば15000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。ここで、第1樹脂層6の厚みおよび第2樹脂層8の厚みは、たとえばウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体10の断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡、拡大鏡又は目視で観察して、測定される値とすることができる。なお、第1樹脂層6の厚さと第2樹脂層8の厚さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。
本実施形態に係る積層体10において、第1樹脂層6の厚みおよび第2樹脂層8の厚みは、たとえばそれぞれ中間層2の厚みの30%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。
積層体10の全光線透過率は、たとえば60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、85%以上が特に好ましい。積層体10の全光線透過率を上記範囲とすることにより、従来は透明なガラスが適用されていた用途に本発明の積層体10を適用することが容易になる。ここで、全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
積層体10のヘーズは、たとえば20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。ヘーズが低いほど、従来は透明なガラスが適用されていた用途に本発明の積層体10を適用することが容易になる。ここで、ヘーズは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
積層体10の23℃、相対湿度50%における引張弾性率は、たとえば2.5GPa以上であることが好ましく、5.0GPa以上であることがより好ましく、10GPa以上であることがさらに好ましい。また、積層体10の23℃、相対湿度50%における引張弾性率は、たとえば30GPa以下であることが好ましく、25GPa以下であることがより好ましく、20GPa以下であることがさらに好ましい。積層体10の引張弾性率は、JIS P 8113に準拠して測定される値である。
本実施形態では、平面視における第1樹脂層6と第2樹脂層8が接触する面積をA1とし中間層2の面積をA2とした場合、A2/A1は、とくに限定されないが、たとえば0.01以上100以下とすることができる。これにより、積層体10において、層間密着性と強度のバランスをより効果的に向上させることができる。
(樹脂層)
第1樹脂層6および第2樹脂層8は、それぞれ天然樹脂や合成樹脂等の樹脂を主成分として含む。ここで、主成分とは、全体に対して50質量%以上含まれている成分を指す。
第1樹脂層6における樹脂の含有量は、たとえば第1樹脂層6の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。一方で、第1樹脂層6における樹脂の含有量は、第2樹脂層8の全質量に対して100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
また、第2樹脂層8における樹脂の含有量は、たとえば第2樹脂層8の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。一方で、第2樹脂層8における樹脂の含有量は、第2樹脂層8の全質量に対して100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂は、ポリアクリロニトリル及びポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくともいずれか1種であることが好ましい。
第1樹脂層6および第2樹脂層8を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの具体的なポリカーボネート系樹脂は公知であり、例えば特開2010−023275号公報に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
第1樹脂層6および第2樹脂層8には合成樹脂以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、フィラー、顔料、染料、紫外線防御剤等の樹脂フィルム分野で使用される公知成分が挙げられる。
なお、第1樹脂層6を構成する成分と第2樹脂層8を構成する成分は、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。積層体10の層間密着性をより効果的に向上させる観点からは、第1樹脂層6と第2樹脂層8が互いに同じ樹脂材料を含むことがより好ましく、互いに同じ組成を有していることがとくに好ましい。
(中間層)
中間層2は、セルロース繊維を含む層(以下、繊維層とも呼ぶ)により構成されている。また、中間層2は、上記セルロース繊維として、繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含む。図1においては、中間層2が一の繊維層により構成される場合が例示されている。一方で、中間層2は、二以上の繊維層が積層されて構成されていてもよい。
図2においては、中間層2が、第1樹脂層6と第2樹脂層8の間に配置された複数のシート20により構成される場合が例示されている。この場合、各シート20は、セルロース繊維を含んでいる。また、複数のシート20のうちの一部または全てが、繊維幅が1000nm以下である微細繊維状セルロースを含む。図2においては、複数のシート20の全てが互いに重ならないように配置される場合が例示されている。一方で、複数のシート20の少なくとも一部は、互いに重なりあうように配置されていてもよい。
複数のシート20は、互いに同じ形状であってもよく、互いに異なる形状であってもよい。本実施形態において、シート20の形状は、とくに限定されず、たとえば矩形状などの多角形状、円状、および楕円状から選択することができる。なお、本実施形態において、各シート20は、たとえば微細繊維状セルロースを含む一の繊維層を断片化することにより作成することができる。
図2に示す例においては、第1樹脂層6の一面のうちの一部がシート20によって覆われており、他部がシート20によって覆われていない。このように、第1樹脂層6の一面のうちのシート20によって覆われていない部分が、第2樹脂層8と接触することとなる。これにより、層間の密着性が高い積層体10を実現することが可能となる。
図3は、本実施形態に係る積層体10の第1変形例を示す平面模式図である。図3に示す例においては、中間層2に一つまたは二つ以上の孔22が設けられている。すなわち、第1樹脂層6の一面のうちの孔22と重なる部分は、中間層2によって覆われないこととなる。このように、第1樹脂層6の一面のうちの中間層2によって覆われていない部分が、第2樹脂層8と接触することとなる。孔22の形状は、とくに限定されず、たとえば矩形状などの多角形状、円状、および楕円状から選択することができる。また、孔22の大きさは、とくに限定されないが、たとえば内径の最大値を10μm以上100mm以下とすることができ、1mm以上10mm以下とすることが補強効果と密着性のバランスを向上させる観点から好ましい態様の一例としてあげられる。
図4は、本実施形態に係る積層体10の第2変形例を示す平面模式図である。図4に示す例においては、中間層2の外縁24の少なくとも一部が、平面視において第1樹脂層6の外縁64および第2樹脂層8の外縁の内側に位置する。すなわち、第1樹脂層6および第2樹脂層8の外周部の少なくとも一部は、中間層2を介さずに互いに接触することとなる。本実施形態においては、中間層2の外縁24の全体が、平面視において第1樹脂層6の外縁64および第2樹脂層8の外縁の内側に位置することが、積層体10の層間の密着性を向上させる観点からとくに好ましい。
中間層2に含まれる繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維の含有量は、中間層2の全質量に対して、たとえば60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。一方で、中間層2に含まれる繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維の含有量は、中間層2の全質量に対して、100質量%とすることができ、95質量%以下であってもよい。
中間層2の密度は、たとえば1.0g/cm3以上であることが好ましく、1.2g/cm3以上であることがより好ましく、1.4g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、中間層2の密度は、たとえば1.7g/cm3以下であることが好ましく、1.65g/cm3以下であることがより好ましく、1.6g/cm3以下であることがさらに好ましい。中間層2の密度を上記範囲とすることにより、積層体10の強度や透明性をより効果的に向上させることが可能となる。
なお、中間層2の密度は、中間層2の坪量と厚さから、JIS P 8118に準拠して算出される。中間層2の坪量は、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体の中間層2のみが残るように切削し、JIS P 8124に準拠し、算出することができる。中間層2が微細繊維状セルロース以外の任意成分を含む場合は、中間層2の密度は、微細繊維状セルロース以外の任意成分を含む密度である。
本実施形態においては、中間層2は非多孔性の層である点にも特徴がある。ここで、中間層2が非多孔性であるとは、中間層2全体の密度が1.0g/cm3以上であることを意味する。中間層2全体の密度が1.0g/cm3以上であれば、中間層2に含まれる空隙率が、所定値以下に抑えられていることを意味し、多孔性のシートや層とは区別される。
また、中間層2が非多孔性であることは、空隙率が15体積%以下であることからも特徴付けられる。ここでいう中間層2の空隙率は簡易的に下記式(a)により求めるものである。
式(a):空隙率(体積%)=[1−B/(M×A×t)]×100
ここで、Aは中間層2の面積(cm2)、tは中間層2の厚み(cm)、Bは中間層2の質量(g)、Mはセルロースの密度である。
また、中間層2には、セルロース繊維以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、親水性高分子や有機イオン等が挙げられる。親水性高分子は、親水性の含酸素有機化合物(但し、上記セルロース繊維は除く)であることが好ましい。含酸素有機化合物は非繊維状であることが好ましい。
含酸素有機化合物は、親水性の有機化合物であることが好ましい。親水性の含酸素有機化合物は、積層体10の強度、密度及び化学的耐性などを向上させることができる。親水性の含酸素有機化合物は、たとえばSP値が9.0以上であることが好ましい。また、親水性の含酸素有機化合物は、たとえば100mlのイオン交換水に含酸素有機化合物が1g以上溶解するものであることが好ましい。
含酸素有機化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等の親水性高分子;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール等の親水性低分子が挙げられる。これらの中でも、繊維層の強度、密度、化学的耐性などを向上させる観点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、グリセリン、ソルビトールが好ましく、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレングリコールであることがさらに好ましい。
含酸素有機化合物は、たとえば分子量が5万以上800万以下の有機化合物高分子であることが好ましい。含酸素有機化合物の分子量は、たとえば10万以上500万以下であることも好ましいが、例えば分子量が1000未満の低分子であってもよい。
中間層2に含まれる含酸素有機化合物の含有量は、中間層2に含まれる微細繊維状セルロース100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。含酸素有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、高い透明性と強度を有する積層体10を形成することができる。
有機イオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオンやテトラアルキルホスホニウムイオンを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。また、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオンとして、それぞれテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンなども挙げることができる。
中間層2は、親水性高分子、有機イオン以外の任意成分を含んでいてもよい。中間層2は、上記任意成分として、たとえばペクチンなどに例示される糖類、カップリング剤、無機層状化合物、無機層状鉱物以外の無機化合物、レベリング剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤から選択される一種または二種以上を含むことができる。
中間層2は、無機層状化合物などの無機化合物をさらに含んでいてもよい。これにより、積層体10のガスバリア性をより効果的に向上させることができる。無機層状化合物としては、たとえばモンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、テトラシリシックマイカなどのマイカ族粘土鉱物、およびカオリナイトなどに例示される粘土鉱物、ならびにハイドロタルサイトなどに例示される層状複水酸化物などが挙げられる。また、無機層状化合物としては、たとえば層状の形状を有する金属酸化物やグラファイトなどを用いることもできる。なお、中間層2は、これらの無機層状化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
中間層2は、無機層状化合物以外の無機化合物をさらに含んでいてもよい。これにより、積層体10の鉛筆硬度を効果的に向上させることができる。無機層状化合物以外の無機化合物としては、たとえばシリカ、炭酸カルシウムなどの鉱物、銀、金などの金属、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの金属酸化物などが挙げられる。また、層状以外の形状を有するスメクタイト族粘土鉱物、マイカ族粘土鉱物、およびカオリナイトなどに例示される粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどに例示される複水酸化物、ならびにグラファイトなどを用いることもできる。なお、中間層2は、これらの無機層状化合物以外の無機化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
無機層状化合物以外の無機化合物の粒子径は、特に限定されないが、たとえば100μm以下とすることができ、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが透明性の観点からさらに好ましい。一方で、無機層状化合物以外の無機化合物の粒子径は、特に限定されないが、たとえば5nm以上とすることができる。
中間層2は、有機架橋剤などの架橋剤をさらに含んでいてもよい。有機架橋剤としては、例えばアミノ基、エポキシ基、リン酸基、水酸基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基などの反応性官能基を有する化合物などが挙げられる。上記反応性官能基を有する化合物は、微細繊維状セルロースの水酸基、後述のカルボキシル基、スルホン基、リン酸基と反応することで、積層体10の加熱黄変を効果的に抑制することができ、さらに積層体10の耐水性、耐湿性を効果的に向上させることができる。
(微細繊維状セルロース)
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有する繊維層は高強度が得られる傾向がある。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。
微細繊維状セルロースが含有する結晶部分の比率は、本発明においては特に限定されないが、X線回折法によって求められる結晶化度が60%以上であるセルロースを使用することが好ましい。結晶化度は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上であり、この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、置換基を有するものであることが好ましく、置換基はアニオン基であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基で及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO3H2で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本実施形態では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下であることが好ましく、0.14mmol/g以上2.5mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下がさらに好ましく、0.2mmol/g以上1.8mmol/g以下よりさらに好ましく、0.4mmol/g以上1.8mmol/g以下が特に好ましく、最も好ましくは0.6mmol/g以上1.8mmol/g以下である。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのスラリーの粘度を適切な範囲に調整することができる。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図5に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図5に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程と、後述する解繊処理工程の間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みリン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理>
リン酸基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本実施形態では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
上述した方法で得られたリン酸基を有する微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロース含有スラリーであり、所望の濃度となるように、水で希釈して用いてもよい。
(無機膜積層体)
本実施形態に係る積層体10は、さらに無機膜(以下、無機層ともいう)を有していてもよい。無機層は、たとえば第1樹脂層6のうちの中間層2と対向する一面と反対の他面側、および第2樹脂層8のうちの中間層2と対向する一面と反対の他面側のうちのいずれか一方または両方に設けられる。
無機層は、たとえばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、およびチタン、ならびにこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、および炭素の同素体からなるダイヤモンド状炭素から選択される一種または二種以上を含むことができる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、およびこれらの混合物を含むことが好ましい。また、高い耐傷付性が付与できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド状炭素、およびこれらの混合物を含むことが好ましい。また、無機層はアルキル基やアリル基、フェニル基などに代表される有機成分を含有してもよい。また、無機層は各種顔料や染料等の、着色を目的とした成分を含有してもよく、各種紫外線防御剤やラジカル捕捉剤等の、第1樹脂層6、第2樹脂層8および中間層2などの紫外線による劣化を防止する成分を含有してもよい。
無機層は、各種の紫外線防御剤を含有してもよい。ここで、紫外線防御剤は、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系の有機化合物に代表される有機系紫外線防御剤であってもよく、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される無機系紫外線防御剤であってもよい。また、紫外線防御剤は、その効果を高めるため、ヒンダートフェノール系の有機化合物に代表される酸化防止剤と併せて含有されてもよい。
無機層の形成方法は、特に限定されない。一般に、薄膜を形成する方法は大別して、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)と物理成膜法(Physical Vapor Deposition、PVD)とがあるが、いずれの方法を採用してもよい。CVD法としては、具体的には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。PVD法としては、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
また、無機層の形成方法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD)を採用することもできる。ALD法は、形成しようとする膜を構成する各元素の原料ガスを、層を形成する面に交互に供給することにより、原子層単位で薄膜を形成する方法である。プラズマCVD法以上に、複雑な形状の面でもきれいに覆うことができ、欠陥の少ない薄膜を成膜することが可能であるという利点がある。また、ALD法には、膜厚をナノオーダーで制御することができ、広い面を覆うことが比較的容易である等の利点がある。さらにALD法は、プラズマを用いることにより、反応速度の向上、低温プロセス化、未反応ガスの減少が期待できる。
また、無機層の形成方法としては、ウェットコーティング法を採用することもできる。ウェットコーティング法は、任意の溶媒中に溶解させた、形成しようとする膜の前駆体を、層を形成する面に塗布し、加熱や放射線照射により硬化させ、膜を形成する方法である。ウェットコーティング法は、数マイクロメートルの厚い膜を形成できる利点や、大気圧プロセスで膜が形成できるため生産性が高い等の利点がある。
無機層の厚みは、特に限定されないが、例えば、防湿性能の発現を目的とする場合は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。無機層の厚みは、透明性、フレキシブル性の観点からは、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることがさらに好ましい。
(有機膜積層体)
本実施形態に係る積層体10は、さらに有機膜(以下、有機層ともいう)を有していてもよい。有機層は、たとえば第1樹脂層6のうちの中間層2と対向する一面と反対の他面側、および第2樹脂層8のうちの中間層2と対向する一面と反対の他面側のうちのいずれか一方または両方に設けられる。
上記有機層は、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、シルセスキオキサン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、シルセスキオキサン樹脂、およびジアリルフタレート樹脂などに例示される樹脂材料などから選択される一種または二種以上を含むことができる。低吸水性の積層体を得るためには、樹脂は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミノ基などの親水性の官能基が少ないことが好ましい。また、高い耐傷付性が付与できるとの観点からは、有機層はアクリル樹脂を含むことが好ましい。また、有機層は各種顔料や染料等の、着色を目的とした成分を含有してもよく、各種紫外線防御剤やラジカル捕捉剤等の、第1樹脂層6、第2樹脂層8および中間層2などの紫外線による劣化を防止する成分を含有してもよい。有機層は、他の成分として、たとえばポリビニルアルコールなどに例示される水溶性高分子、ペクチンなどに例示される糖類、カップリング剤、無機化合物、レベリング剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤から選択される一種または二種以上を含むことができる。
有機層は、各種の紫外線防御剤を含有してもよい。ここで、紫外線防御剤は、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系の有機化合物に代表される有機系紫外線防御剤であってもよく、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される無機系紫外線防御剤であってもよい。また、紫外線防御剤は、その効果を高めるため、ヒンダートフェノール系の有機化合物に代表される酸化防止剤と併せて含有されてもよい。
(積層体の製造方法)
本実施形態に係る積層体10の製造方法は、たとえば第1樹脂層6の一面上に中間層2を設ける工程と、前記第1樹脂層6の一面上に中間層2を介して第2樹脂層8を設ける工程と、を含む。この場合、中間層2を設ける工程は、第1樹脂層6の一面のうち、一部が中間層2により覆われ、他部が中間層2により覆われないように行われる。
中間層2は、たとえば微細繊維状を含むスラリーを塗工および乾燥すること、または微細繊維状セルロースを含むスラリーを抄紙することにより形成される。中でも、非多孔性の中間層2を得る観点からは、中間層2は、微細繊維状セルロース含有スラリーを基材上に塗工する工程により形成されることが好ましい。
図2に示す例においては、たとえば次のようにして第1樹脂層6上に中間層2を設けることができる。まず、第1樹脂層6とは異なる他の基材上に、微細繊維状セルロースを含むスラリーを塗工し、これを乾燥して一の繊維シートを得る。次いで、上記他の基材から剥離した上記繊維シートを断片化して、複数のシート20を作成する。次いで、第1樹脂層6上に複数のシート20を配して、複数のシート20により構成される中間層2を得る。なお、上記他の基材は、とくに限定されないが、たとえば樹脂板または金属板を用いることができる。
また、図3および図4に示す例においては、たとえば第1樹脂層6の一面に微細繊維状セルロースを含むスラリーを所望の形状に塗工し、これを乾燥することにより、第1樹脂層6上に中間層2を得ることができる。また、上記スラリーを第1樹脂層6とは異なる他の基材上に塗工、乾燥する方法、または上記スラリーを抄紙する方法により作成した繊維シートを第1樹脂層6の一面上に積層することにより、中間層2が設けられていてもよい。なお、上記他の基材は、とくに限定されないが、たとえば樹脂板または金属板を用いることができる。
さらに、たとえば次のようにして第2樹脂層8を設けることができる。まず、第1樹脂層6の一面上に中間層2を介して第2樹脂層8を配する。この際、第1樹脂層8の一面のうち中間層2により覆われていない部分は、中間層2を介さずに第2樹脂層8と対向することとなる。また、第2樹脂層8のうちの前記第1樹脂層6と対向する一面の一部が中間層2に接しないこととなる。次いで、任意の方法で第1樹脂層6、および第2樹脂層8を中間層2側に圧力を付与しながら加熱することで、第1樹脂層6と第2樹脂層8の中間層2を介さずに互いに対向している部分を熱融着させる。
(用途)
本実施形態に係る積層体10は、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
[リン酸化]
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙社製のパルプ(固形分93%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素200質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入した。このときのリン酸基の導入量は、0.98mmol/gであった。
なお、リン酸基の導入量は、セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024:コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図2に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
[アルカリ処理及び洗浄]
次いで、リン酸基を導入したセルロースに5000mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上13以下になるまで少しずつ添加して、パルプ分散液を得た。その後、このパルプ分散液を脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。
[機械処理]
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、固形分濃度が1.0質量%のパルプ分散液とした。このパルプ分散液を、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製、Panda Plus 2000)を用いて処理し、セルロース分散液を得た。高圧ホモジナイザーを用いた処理においては、操作圧力1200barにてホモジナイジングチャンバーを5回通過させた。さらに、このセルロース分散液を湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて処理し、微細繊維状セルロース分散液(A)を得た。湿式微粒化装置を用いた処理においては、245MPaの圧力にて処理チャンバーを5回通過させた。微細繊維状セルロース分散液(A)に含まれる微細繊維状セルロースの平均繊維幅は4nmであった。
[繊維シートの製造]
上記微細繊維状セルロース分散液(A)の固形分濃度が0.5質量%となるよう濃度調整を行った。その後、微細繊維状セルロース分散液(A)100質量部に対して、ポリエチレンオキサイド(住友精化社製、PEO−18)の0.5質量%水溶液を20質量部添加し、微細繊維状セルロース分散液(B)を得た。次いで、繊維シート(微細繊維状セルロース分散液(B)の固形分から構成される層)の仕上がり坪量が50g/m2になるように微細繊維状セルロース分散液(B)を計量して、市販のアクリル板に塗工し、35℃、相対湿度15%の恒温恒湿器にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が180mm×180mmの金枠)を配置した。上記の手順により、繊維シートを得た。
[積層体の製造]
上記繊維シートをアクリル板からはく離した後、カッターで裁断し、寸法12mm×8mmの繊維シートの断片を作製した。次いで、厚み2mmの市販のポリカーボネート板を寸法60mm×60mmに切出したものを2枚用意し、その間に上記繊維シートの断片を22枚挿入した。この際、繊維シートの断片どうしが重なり合わないようにした。さらに、厚み2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟み、常温に設定したミニテストプレス(東洋精機工業社製、MP−WCH)に挿入した。上記ミニテストプレスを1MPaのプレス圧力下、3分かけて180℃まで昇温し、この状態で30秒間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。なお、ステンレス板としては、離型剤(オーデック社製、テフリリーズ)を挟持面に塗布したものを使用した。上記の手順により、2層の樹脂層の一部が繊維シートを介さずに積層された、樹脂層と繊維シートの積層体を得た。
<実施例2>
[積層体の製造]
実施例1で得た繊維シートをアクリル板からはく離した後、カッターで裁断し、寸法60mm×60mmとした。次いで、穴あけポンチを使用して、繊維シートの厚み方向に直径5mmの貫通孔を20個穿孔した。この際、貫通孔が繊維シートの面内で均等に配置されるよう穿孔した。次いで、厚み2mmの市販のポリカーボネート板を寸法60mm×60mmに切出したものを2枚用意し、その間に上記繊維シートを挿入した。さらに、厚み2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟み、常温に設定したミニテストプレス(東洋精機工業社製、MP−WCH)に挿入した。上記ミニテストプレスを1MPaのプレス圧力下、3分かけて180℃まで昇温し、この状態で30秒間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。なお、ステンレス板としては、離型剤(オーデック社製、テフリリーズ)を挟持面に塗布したものを使用した。上記の手順により、2層の樹脂層の一部が繊維シートを介さずに積層された、樹脂層と繊維シートの積層体を得た。
<実施例3>
[繊維シートの製造]
寸法60mm×60mmに切出した厚み2mmの市販のポリカーボネート板の上に、内寸が50mm×50mmの金枠を配置した。次いで、実施例1で得た微細繊維状セルロース分散液(B)を、繊維シート(微細繊維状セルロース分散液(B)の固形分から構成される層)の仕上がり坪量が50g/m2になるように計量して、上記金枠の内側に塗工し、35℃、相対湿度15%の恒温恒湿器にて乾燥した。乾燥の後、ポリカーボネート板から金枠を除去した。上記の手順により、一面状に繊維シートが形成された、成形用積層体を得た。
[積層体の製造]
上記成形用積層体の繊維シートが形成された側の面に、寸法60mm×60mmに切出した厚み2mmの市販のポリカーボネート板を重ね、さらに厚み2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟み、常温に設定したミニテストプレス(東洋精機工業社製、MP−WCH)に挿入した。上記ミニテストプレスを1MPaのプレス圧力下、3分かけて180℃まで昇温し、この状態で30秒間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。なお、ステンレス板としては、離型剤(オーデック社製、テフリリーズ)を挟持面に塗布したものを使用した。上記の手順により、2層の樹脂層の一部が繊維シートを介さずに積層された、樹脂層と繊維シートの積層体を得た。
<比較例1>
実施例2において、繊維シートに貫通孔を穿孔しなかった。その他の手順は実施例2と同様にし、2層の樹脂層の全部が繊維シートを介して積層された、樹脂層と繊維シートの積層体を得た。
<評価>
実施例1〜3、および比較例1で得た樹脂層と繊維シートの積層体の密着性を、以下の手順で評価した。樹脂層と繊維シートの積層体を、曲げ試験機(テンシロンRTC−1250A)の三点曲げ治具上に静置した。三点曲げ冶具のスパン長を300mm、試験速度を5mm/分に設定し、曲げ応力を付与した。曲げ破壊に至った後に樹脂層と繊維シートの積層体を観察し、以下の基準に従って評価を行った。
○:層間に剥離が認められず、積層構成を維持している。
△:層間の一部に剥離が認められるものの、層の分離には至らず、積層構成を維持している。
×:層間の全部に剥離が認められ、層が分離しており、積層構成が維持されていない。
2層の樹脂層の一部が繊維シートを介さずに積層された実施例1〜3は、2層の樹脂層の全部が繊維シートを介して積層された比較例1に対し、密着性に優れることが確認された。