JP2020168221A5 - - Google Patents

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本発明は、鼠径部のフィット性を向上させた使い捨て着用物品に関するものである。
パンツタイプ使い捨て着用物品は、前身頃及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に対して取り付けられた、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃の外装体の両側部と後身頃の外装体の両側部とが接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
このようなパンツタイプ使い捨て着用物品では、身体へのフィット性を向上させるために、外装体に伸縮構造を設けることが一般的となっている。例えば、サイドシール部と対応する前後方向範囲として定まる胴周り領域や、前後の胴周り領域の間に位置する中間領域に、伸縮構造を設けたものは身体に対するフィット性が比較的に高いものとなっている(例えば特許文献1~5参照)。
パンツタイプ使い捨て着用物品の伸縮構造の代表的なものは、重なり合う第1シート層及び第2シート層の間に、伸縮方向に沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた細長状の弾性部材を備えるものである。第1シート層及び第2シート層は面状の伸縮領域を形成するとともに、弾性部材を被覆、隠蔽する役割を担い、第1シート層及び第2シート層間に内蔵される弾性部材は、弾性伸縮のための力を生み出す役割を担うものである。弾性部材は、伸縮方向に伸長された状態で、少なくとも伸縮領域の両端部に位置する部分が第1シート層及び第2シート層に固定される。この固定により、弾性部材と第1シート層及び第2シート層とが一体化され、第1シート層及び第2シート層は弾性部材の収縮力により収縮して襞(皺状のものも含む。自然長状態だけでなく、弾性部材が伸長した状態でも形成される。以下、単に襞ともいう。)が形成され、またこの収縮状態から弾性部材の収縮力に抗して伸長されると、襞が展開される。通常、第1シート層及び第2シート層は弾性伸長限界では襞が無い展開状態となり、弾性部材の収縮に伴って襞が寄り、自然長状態では最も密に襞が寄る。
このような伸縮構造では、第1シート層及び第2シート層が互いに自由であると、一方の不織布層が他方の不織布層に対して部分的又は全体的に浮いて不必要な襞や膨らみを生じるおそれがあり、装着時のフィット性の悪化やずれの原因ともなるため、第1シート層及び第2シート層はそのほぼ全体にわたり直接的又は間接的に接合されている必要がある。また、弾性部材により伸縮性を生み出すため、弾性部材は伸縮領域の伸縮方向の全体にわたり延在され、かつ少なくとも伸縮領域の伸縮方向の両端部に位置する部分は第1シート層及び第2シート層に対して固定され、自然長状態では弾性部材の収縮に伴い第1シート層及び第2シート層も収縮されている必要がある。つまり、第1シート層及び第2シート層間の接合と、第1シート層及び第2シート層に対する弾性部材の固定とが必要となる。
現在では、弾性部材を第1シート層及び第2シート層に固定する手段としては、ほとんどの場合、ホットメルト接着剤が選択されている。一方、第1シート層及び第2シート層間の接合は、ホットメルト接着剤の使用量を低減するために、超音波溶着等の溶着により行うことも多くなってきているが、ホットメルト接着剤により行う構造も根強く利用されている。特に、弾性部材の位置でホットメルト接着剤を介して第1シート層及び第2シート層を接合することにより、第1シート層及び第2シート層の接合と、第1シート層及び第2シート層に対する弾性部材の固定とを兼ねる兼用構造は、最も代表的なものとして知られている。
他方、胴周り領域や中間領域は、吸収体を有する前後方向範囲と重なるとともに、当該範囲に内装体と外装体とを接合する内外接合部がある。よって、この吸収体を有する前後方向範囲を横切るように弾性部材を設けても、その伸縮機能は吸収体の剛性により制限される。また、吸収体が幅方向に収縮して、装着感や見栄えを悪化させたり、吸収体のヨレや割れが発生し、吸収性能が低下したりするおそれもある。
このため、従来は、外装体に幅方向に沿って連続的に弾性部材を取り付けるとともに、吸収体と重なる部分において弾性部材により発生する伸縮性を殺すことにより、外装体に伸縮性のない非伸縮領域を形成することが行われている(例えば特許文献1~6参照)。前述の兼用構造のように、ホットメルト接着剤による弾性部材の固定及び第1シート層及び第2シート層の接合を行う場合、伸縮性を殺す方法は2種類に大別される。
すなわち、第1の方法は、弾性部材における非伸縮領域に位置する部分を細かく切断する方法である。第2の方法は、弾性部材における非伸縮領域に位置する部分に、第1シート層及び第2シート層に非固定又はホットメルト接着剤により弱く固定した独立収縮部分を形成するとともに、独立収縮部分の幅方向中間の1か所で切断し、独立収縮部分を第1シート層及び第2シート層を伴わずに自然長又はそれに近い状態まで収縮させる方法である。第2の方法は、第1の方法と比較して切断個所が1か所と少ないという利点がある。
しかし、従来のパンツタイプ使い捨て着用物品では、着用者の鼠径部の窪みに対するフィット性に改善の余地があった。
特表2015-512296号公報 特許5779738号公報 特開2015-58061号公報 特開2010-029693号公報 特開2008-194160号公報 特開2012-029806号公報
そこで、本発明の主たる課題は、着用者の鼠径部の窪みに対するフィット性を改善すること等にある。
上記課題を解決したパンツタイプ使い捨て着用物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、
前身頃から後身頃にわたるように前記外装体に取り付けられた、吸収体を含む内装体と、
前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、
ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備え、
前記外装体は、前記サイドシール部及び前記吸収体を有する前後方向範囲に、幅方向中央部に設けられた非伸縮領域と、この非伸縮領域によって幅方向両側に分割されたウエスト下方伸縮領域とを有しており、
前記ウエスト下方伸縮領域はウエスト下方弾性部材を内蔵するとともに、前記ウエスト下方弾性部材とともに幅方向に収縮しており、かつ前記ウエスト下方弾性部材とともに幅方向に伸長可能であり、
前記内装体の両側部に、起き上がりギャザーがそれぞれ設けられており、
前記起き上がりギャザーは、前記内装体の両側部に取り付けられた付根部分と、この付根部分から前記内装体の表面の両側部上に延びる本体部分と、この本体部分における前端部及び後端部が倒伏状態で前記内装体の表面に固定されて形成された倒伏部分と、前後の倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、この起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って設けられたギャザー弾性部材とを有し、
前記起き上がり部分は、前記ギャザー弾性部材とともに前後方向に収縮して前記内装体の表面から起き上っており、かつ前記ギャザー弾性部材とともに前後方向に伸長可能である、
パンツタイプ使い捨て着用物品において;
前記前身頃のウエスト下方伸縮領域における少なくとも股間側の端部は、前記起き上がりギャザーよりも幅方向中央側に延びた高伸長領域となっており、
前記起き上がり部分及び前記ギャザー弾性部材は、前記前身頃の前記高伸長領域内までウエスト開口側に延びており、
前記内装体と前記外装体とを接合する内外接合部は、前記ウエスト下方伸縮領域を有する前後方向範囲では、一方のウエスト下方伸縮領域の前記非伸縮領域側の端部から、他方のウエスト下方伸縮領域の前記非伸縮領域側の端部までの範囲にしか設けられていない、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
(作用効果)
本パンツタイプ使い捨て着用物品では、ウエスト下方伸縮領域の高伸長領域が着用者の鼠径部の窪みを横切るように存在するため、外装体が鼠径部の溝の拡縮に追従してしっかりと内装体を押し付けることができる。しかし、高伸長領域が鼠径部の窪みに入り込むものではないから、単に高伸長領域を設けただけでは、鼠径部の窪みに対するフィット性の向上は不十分であり、隙間が発生するおそれがある。そこで、本パンツタイプ使い捨て着用物品では、この高伸長領域により押さえ付けられる部分まで、起き上がりギャザーの起き上がり部分及びギャザー弾性部材が延びている。このため、起き上がり部分のうちギャザー弾性部材を有する部分が、鼠径部に対してしっかりと押し付けられる高伸長領域を土台として、鼠径部の窪みに入るように起き上がることができる。よって、本パンツタイプ使い捨て着用物品では、鼠径部に対するフィット性が顕著に向上する。
なお、内外接合部の幅を非伸縮領域の幅と同程度に制限すると、吸収体の不必要な収縮を抑制できるため好ましい。ここで、単に内外接合部の幅が狭くなると、内装体が横に動きやすくなり、鼠径部のフィット性が低下しやすくなる。しかし、本パンツタイプ使い捨て着用物品では、前述の高伸長領域の形成、及び高伸長領域と起き上がりギャザーとの位置関係により、鼠径部に対するフィット性に優れるものであるため、鼠径部に対するフィット性の向上及び吸収体の不必要な収縮の抑制という、相反する作用が両立するものである。
<第2の態様>
前記高伸長領域を有する前後方向範囲における、前記非伸縮領域の幅方向の寸法は、前記吸収体の幅方向の寸法の1/2未満であり、
両側の前記起き上がりギャザーの間隔は、前記吸収体の幅方向の寸法の1/2~1倍である、
第1の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
(作用効果)
各部の寸法は適宜定めることができるが、通常の場合、上記範囲内であると高伸長領域と起き上がりギャザーとの位置関係が適切となり、鼠径部に対するフィット性が特に良好となるため好ましい。
<第3の態様>
前記前身頃のウエスト下方伸縮領域の前記非伸縮領域側の縁は、ウエスト開口側から股間側に向かうにつれて、段階的又は連続的に、幅方向中央側に位置するように延びており、
前記高伸長領域は、前記前身頃のウエスト下方伸縮領域における股間側にのみ設けられている、
第1又は2の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
(作用効果)
鼠径部の窪みは股間側で顕著であり、ウエスト側ではほとんど発生しない。よって、高伸長領域を、鼠径部の窪みが深くなりやすい部分のみに設けることにより、鼠径部に対するフィット性を向上しつつ、それ以外の部分における吸収体の収縮を防止するのは好ましい。
<第4の態様>
前記外装体は、前身頃及び後身頃に別々に設けられ、
前身頃の外装体及び後身頃の外装体が股間側で前後方向に離間しており、
前記内装体は、前記前身頃の外装体から後身頃の外装体にかけて前後方向に延在し、かつ前記前身頃の外装体及び後身頃の外装体にそれぞれ接合され、
前記サイドシール部は、前身頃の外装体の両側部と後身頃の外装体の両側部とがそれぞれ接合された部分である、
第1~3のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
(作用効果)
パンツタイプ使い捨て着用物品として、本態様のように、前外装体と後外装体とが股間側で連続せずに前後方向に離間しているものが知られている。このような外装二分割タイプのものは、脚開口を形成するために外装体を切除しなくて済む、又は切除するとしても小面積で済むといった利点がある。すなわち、切離し片(トリム)は廃棄処分されるため、その資材の無駄(トリムロス)を抑えることができるという利点を有している。
しかし、このような外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て着用物品では、脚周りに対するフィット性が低下せざるを得ず、特に鼠径部のフィット性は低下しやすい。すなわち、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て着用物品は、装着時に内装体の股下部にあたる位置から外装体との交差位置までの距離が長いため、交差位置を支点として内装体が左右に振られやすいことにより、前身頃から後身頃まで連続する一体的な外装体を備えるタイプと比較して内装体が横方向に動きやすい。また、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て着用物品は、外装体の股間側の縁が幅方向に沿う直線状又はそれに近い形状となっており、内装体の側縁と直角又はそれに近い角度で交差する。これらは、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て着用物品では鼠径部に対するフィット性が不足しがちであることを意味する。
したがって、前述の高伸長領域の形成、及び高伸長領域と起き上がりギャザーとの位置関係は、このような外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て着用物品に適用した場合に、特に技術的意義が大きいものとなる。
<第5の態様>
前記内装体の両側部には、前記起き上がりギャザーよりも側方に延び出たサイドフラップが、前記前外装体から前記後外装体まで前後方向に延びており、
前記サイドフラップは、前後方向に弾性伸縮するサイド伸縮領域を有しており、
前記サイド伸縮領域は、サイド弾性部材を内蔵するとともに、前記サイド弾性部材とともに前後方向に収縮しており、かつ前記サイド弾性部材とともに前後方向に伸長可能であり、
前記サイド伸縮領域は、前記前身頃の前記高伸長領域内までウエスト開口側に延びている、
第4の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
(作用効果)
前述のように、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨て着用物品は、内装体が横方向に動きやすいだけでなく、内装体の側縁と直角又はそれに近い角度で交差するため、鼠径部をカバーする面積が小さくならざるをえない。これに対して、本態様のようなサイドフラップ及びサイド伸縮領域を有すると、サイド伸縮領域が内装体の横移動を弾性的に支えること、及びサイド伸縮領域が内装体の横をカバーすることにより、内装体の横に隙間が生じにくくなる。
本発明によれば、着用者の鼠径部の窪みに対するフィット性が改善する、等の利点がもたらされる。
展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、平面図である。 展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。 図1の2-2断面図である。 図1の3-3断面図である。 (a)図1の4-4断面図、及び(b)図1の5-5断面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。 展開状態の内装体の外面を外装体の輪郭とともに示す、平面図である。 図1の4-4断面に相当する他の例の断面図である。 図1の2-2断面に相当する他の例の断面図である。 図1の3-3断面に相当する他の例の断面図である。 図3の要部拡大図である。 図9の要部拡大図である。 前外装体の拡大平面図である。 後外装体の拡大平面図である。 前外装体の拡大平面図である。 後外装体の拡大平面図である。 前外装体の拡大平面図である。 後外装体の拡大平面図である。 切断装置の斜視図である。 非伸縮領域部分の拡大平面図である。
以下、パンツタイプ使い捨て着用物品の一例として、パンツタイプ使い捨ておむつについて、添付図面を参照しつつ詳説する。断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
図1~図6は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する長方形の前外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する長方形の後外装体12Bと、前外装体12Fから股間部を経て後外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bの内側に設けられた内装体200とを備えている。前外装体12Fの両側部と後外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されており、これにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなっている。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
本パンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側に延び出たウエスト延出部分12Eがウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15~40mm、ウエスト下方部Uは65~120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが装着者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体として略砂時計形状をなしている。
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示例では長方形である。内装体200は、図3~図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の脚周りに接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5~20mm程度が適当である。
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
吸収体56は長方形形状でも良いが、図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と起き上がりギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
また、吸収体56の寸法は排尿口位置の前後左右にわたる限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
包装シート58の包装構造は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻付け、かつその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合するのが好ましい。
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、内装体200の側部から起き上がる起き上がり部分68を有しており、この起き上がり部分68が、装着者の鼠径部から脚周りを経て臀部までの範囲に接して横漏れを防止するものである。図示例の起き上がりギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、全体として幅方向中央側に起立するもの等、適宜の変更が可能である。
より詳細に説明すると、図示例の起き上がりギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。起き上がりギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200における液不透過性シート11より裏側の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の起き上がり部分68とされ、この起き上がり部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力により起き上がり部分68が図3に矢印で示すように肌に当接するように起き上がる。特に、付根部分65が内装体200の裏側に位置していると、股間部及びその近傍において起き上がり部分68が幅方向外側に開くように起立するため、起き上がりギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。付根部分65は内装体200の表側、例えばトップシート30の両側部の表面に固定することもできる。
図示例の起き上がりギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲構造では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは好ましい。
ギャザーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができる。この場合の不織布の繊維目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470~1240dtexが好ましく、620~940dtexがより好ましい。ギャザー弾性部材63の取付け状態での伸長率は、150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。ギャザー弾性部材63の本数は2~6本が好ましく、3~5本がより好ましい。ギャザー弾性部材63の配置間隔は3~10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。
起き上がりギャザー60の起き上がり部分68では、ギャザーシート62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザーシート62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザーシート62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザーシート62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザーシート62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
同様に、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
(サイドフラップ)
内装体200の両側部には、吸収体56の側方に延び出たサイドフラップ70が設けられており、このサイドフラップ70に前後方向に伸縮するサイド伸縮領域SGが形成されていると好ましい。図示例のサイドフラップ70は、前後方向LDに沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた一本又は複数本の細長状のサイド弾性部材73と、サイド弾性部材73の外側に面する第1シート層71と、サイド弾性部材73の内側に面する第2シート層72とを有する。
第1シート層71及び第2シート層72をなすシート材は特に限定されず、前述の起き上がりギャザー60や前述の外装体12F,12Bで利用可能な不織布等、適宜の不織布を選択することができる。図3、図4及び図11に示す例では、後述するように起き上がりギャザー60のギャザーシート62を延長して第1シート層71及び第2シート層72を形成している。図9、図10及び図12に示すように、起き上がりギャザー60とは別の専用シート材79を追加し、サイドフラップ70を構築してもよい。前者の場合、サイドフラップ70の前後端は起き上がりギャザー60の前後端(つまりこの場合内装体200の前後端)に一致するが、後者の場合にはサイドフラップ70の前後端は起き上がりギャザー60の前後端より前後方方向の中央側に位置していてもよい。
サイド弾性部材73も特に限定されず、前述のギャザー弾性部材63と同様の細長状の弾性部材を使用することができる。サイド弾性部材73の取付け状態での伸長率は、150~350%が好ましく、200~270%がより好ましい。サイド弾性部材73の本数は2~16本が好ましく、6~10本がより好ましい。サイド弾性部材73の配置間隔は5~10mmが適当である。
サイド弾性部材73は、第1シート層71及び第2シート層72に固定されている。第1シート層71及び第2シート層72の貼り合わせや、その間に挟まれるサイド弾性部材73の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤HMや、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段を用いることができる。第1シート層71及び第2シート層72の接合面積が大きいと柔軟性を損ねるため、サイド弾性部材73の接着部以外の部分は接合しないか、又は弱く接合するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりサイド弾性部材73の外周面にのみホットメルト接着剤HMを塗布して第1シート層71及び第2シート層72の間に挟むことにより、当該サイド弾性部材73の外周面に塗布したホットメルト接着剤HMのみで、第1シート層71及び第2シート層72へのサイド弾性部材73の固定と、第1シート層71及び第2シート層72間の固定とを行う構造となっている。
前後方向におけるサイド弾性部材73の取付け範囲、すなわち、サイド伸縮領域SGが形成される前後方向の範囲は適宜定めることができるが、後述する非接合部77の前後方向の範囲と同じか、又はより広い範囲となっていることが好ましい。また、サイド伸縮領域SGの前後方向の範囲は、起き上がりギャザーのギャザー弾性部材による収縮部分と同じか、それよりも前後両側に延びているのも好ましい。
サイドフラップ70は、第1シート層71及び第2シート層72を含めて三層以上のシート層を有する。つまり、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75の他に、それらの間に位置する内部シート層76を少なくとも1層有する。これらの一部又は全部のシート層は、それぞれ別体のシート材で形成されていてもよいし、一枚のシート材が一回又は複数回折り返されて形成されていてもよい。内部シート層76は、前述のギャザーシート62や、液不透過性シート11、又は後述する外装体12F,12Bと同様の不織布の中から適宜選択することができるほか、前述のギャザーシート62や、液不透過性シート11を適宜延長や折り返しする等により形成することができる。
サイドフラップ70は、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75の少なくとも一方とその裏に重なる内部シート層76とが接合されていない非接合部77を有していると好ましい。また、非接合部77は、最も側方に位置するサイド弾性部材73とサイドフラップ70の側縁との間の領域を含む幅方向WDの範囲で前後方向LDに連続的又は間欠的に続く部分である。つまり、非接合部77は、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75いずれか一方とその裏に重なる内部シート層76とが非接合である限り、それ以外の一部又は全部の層間が接合されていてもよいし、厚み方向のすべてのシート層が非接合であってもよい。例えば、図3、図4及び図11に示す例の非接合部77では、最も内側のシート層74とその裏に重なる内部シート層76とが非接合の部分は、側縁から最も側方のサイド弾性部材の固定位置までであり、最も外側のシート層75とその裏に重なる内部シート層76とが非接合の部分は、それよりも幅方向の中央側まで続いている。図9、図10及び図12に示す例の非接合部77では、最も内側のシート層74とその裏に重なる内部シート層76とが非接合の部分、並びに最も外側のシート層75とその裏に重なる内部シート層76とが非接合の部分は、側縁から最も側方のサイド弾性部材の固定位置よりも幅方向の中央側まで続いているが、前者の方がより幅方向の中央側まで続いている。
非接合部77の幅方向WDの寸法は適宜定めることができるが、2~15mmであることが好ましく、特に5~10mmであることが好ましい。また、非接合部77の前後方向LDの寸法は、製品全長Yの30%以上、特に40%以上であることが好ましい。また、図示例のような前外装体12F及び後外装体12Bが離間したパンツタイプ使い捨て着用物品の場合、非接合部77は、前外装体12F及び後外装体12Bとそれぞれ重なる位置まで延びていることが好ましい。この場合、非接合部77は、内装体200の前後方向LD全体にわたり延びているのは好ましい。また、非接合部77は、内装体200の前後縁の位置と、前外装体12F及び後外装体12Bの最も脚開口LO側の弾性部材16,19との間の位置までしか延びていないのも好ましい。さらに、非接合部77は、前外装体12F及び後外装体12Bにおける最も脚開口LO側の弾性部材16,19と脚開口LOの縁(前外装体12Fの後縁及び後外装体12Bの前縁)との間の位置までしか延びていなくてもよい。
また、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75の少なくとも一方とその裏に重なる内部シート層76との隙間は、非接合部77の幅方向WD両側で閉じられている。図示例のように、非接合部77の隙間の一方側は、最も内側のシート層74又は最も外側のシート層75をなすシート材をサイドフラップ70の側縁で折り返すことにより閉じ、他方側はホットメルト接着剤HMや溶着手段等を用いて、厚み方向に隣接するシート層を適宜の箇所で接合することにより閉じることができる。もちろん、非接合部77の隙間の両側を、同じ方法、例えばシート材の折り返し又はホットメルト接着剤HMにより閉じることもできる。
本パンツタイプ使い捨ておむつでは、サイドフラップ70がサイド弾性部材73の収縮に伴い前後方向LDに収縮し、図6に示すように、サイドフラップ70における非接合部77を含む部分にサイド伸縮領域SGが形成される。つまり、サイドフラップ70における非接合部77を含む部分にサイド伸縮領域SGの襞が前後方向LDに並んで形成される。ここで、非接合部77は、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75の少なくとも一方とその裏に重なる内部シート層76とが接合されていない部分であり、そのシート層間の隙間は、非接合部77の幅方向WD両側で閉じられている。また、非接合部77は、最も側方に位置するサイド弾性部材73と中間領域Lの側縁との間の領域を含む幅方向WD範囲(当該領域と同じか又はそれ以上の幅方向WDの範囲)で前後方向LDに続いている。つまり、非接合部77にはシート層により囲まれた中空部分が前後方向LDに続くことになる。その結果、非接合部77に形成される襞は、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75の少なくとも一方が大きく膨らむことにより形成され、大きく柔らか(つまりクッション性に富む)なものとなる。したがって、この大きく柔らかな襞が、サイドフラップ70の側縁を含む範囲の内側、外側、内外両側、又は厚み方向の全体に形成されるため、脚開口LOの端部の肌触りが良好となる。
サイド弾性部材73は、サイドフラップ70の側縁近傍に位置していてもよいが、サイドフラップ70における、側縁から幅方向WDの中央側に2~15mm(特に5~10mm)までの部分は、サイド弾性部材73を含まず、かつ非接合部77の一部又は全部を含むことが好ましい。このように、サイド弾性部材73がサイドフラップ70の側縁から十分に離間しており、その離間部分に非接合部77の一部又は全部を含むと、装着や購入に際して商品を手で持ったとき又は装着中において肌に押し付けられる部分(つまりサイド弾性部材73を有する部分)の側方の厚み方向の全体に、柔軟性やクッションに富む大きな襞が形成されるため、脚開口LOの端部の肌触りを改善する上で特に好ましい。
非接合部77とサイド弾性部材73との位置関係は適宜定めることができるが、図示例のように、非接合部77と厚み方向に重なる位置に、少なくとも一本のサイド弾性部材73を有すると、サイド弾性部材73の収縮力が直接的に非接合部77に加わり、非接合部77における襞の形状維持性が高いものとなるため好ましい。
非接合部77では、最も内側のシート層74又は最も外側のシート層75の裏に重なる内部シート層76は、図12に示すように反対側に隣接するシート層に対して固定されていてもよい(図示例の第1シート層71及び第2シート層72は互いにホットメルト接着剤HMで接着されている)が、図11に示すように内部シート層76が厚み方向の両側に隣接するシート層に対して非固定とされていると特に好ましい。これにより、サイド弾性部材73の収縮力により内部シート層76にも独立的に襞が形成される。つまり、サイドフラップ70に形成される大きく膨らんだ襞は、その内側に独立的に形成される内部シート層76の襞により支えられるため、より優れたクッション性を有する襞がサイドフラップ70に形成されるようになる。
図示例のように、サイドフラップ70は、サイドフラップ70の側縁で折り返された折り返しシート層を有しており、サイドフラップ70の最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75の少なくとも一方は、折り返しシート層の折り位置を挟んで一方側の部分であると、折り返しに対する復元力により、非接合部77に形成される襞のクッション性が特に向上するため好ましい。折り返しシート層は、シート材の折り返しにより形成される一対の層を意味する。
一つの好ましい例は、図11に示す構造である。このサイドフラップ70は、その側縁で折り返された折り返しシート層を二重に有している。そして、非接合部77の最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75は、それぞれ外部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで内側の部分及び外側の部分となっており、内部シート層76は、内部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで内側の部分及び外側の部分を含んでいる。また、第1シート層71及び第2シート層72は、それぞれ内部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで内側の部分、及び外部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで側の部分を含んでいる。さらに、非接合部77は、外部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで外側の部分と、内部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで外側の部分とが接合されていない部分を含んでいる。この構造では、二重の折り返しシート層を配置することにより、第1シート層71及び第2シート層72以外のシート層を二層形成することができ、しかもそのそれぞれが折り返しに対する復元力を有するため、より少ないシート材で、より優れたクッション性を有する襞がサイドフラップ70に形成されるようになる。
他の好ましい例は、図12に示す構造である。このサイドフラップ70は、その側縁で折り返された折り返しシート層を二重に有しており、第1シート層71及び第2シート層72は、それぞれ内部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで一方側の部分及び他方側の部分を含んでいる(つまり、第1シート層71及び第2シート層72はいずれも内部シート層76である)。また、非接合部77における最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75は、それぞれ外部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで一方側の部分及び他方側の部分となっている。そして、非接合部77は、最も内側のシート層74とその裏に重なる第1シート層71とが接合されていない部分、及び最も外側のシート層75とその裏に重なる第2シート層72とが接合されていない部分となっている。この構造では、非接合部77に形成される襞は、中間領域Lの側縁を含む範囲の少なくとも内外両側には形成されるため、脚開口LOの端部の内外両面で肌触りが良好となる。また、最も内側のシート層74及び最も外側のシート層75は、外部に位置する折り返しシート層の折り位置を挟んで一方側の部分及び他方側の部分であるため、折り返しに対する復元力により、非接合部77に形成される襞のクッション性が特に高いものとなる。
これらの例のように、非接合部77を4層構造とする場合、図11に示す例のように、起き上がりギャザー60のシートを利用してサイドフラップ70を構築すると好ましい。すなわち、前述のサイドフラップ70の折り返しシート層は、起き上がりギャザー60のシートの二層構造が、起き上がりギャザー60の起点からサイドフラップ70の側縁まで延びて形成された第1部分P1と、起き上がりギャザー60のシートの二層構造がサイドフラップ70の側縁で折り返されて幅方向WDの中央側に延びる第2部分P2とにより形成することができる。
(外装体)
外装体12F,12Bは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である長方形の前外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である長方形の後外装体12Bとからなり、前外装体12F及び後外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっている(外装二分割タイプ)。この前後方向の離間距離は例えば全長Yの40~60%程度とすることができる。図示例では、前外装体12F及び後外装体12Bの下縁は幅方向WDに沿う直線状となっているが、前外装体12F及び後外装体12Bの少なくとも一方の下縁が脚周りに沿うような曲線状となっていてもよい。また、図8に示すように、外装体12が、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続する一体的なものとすることもできる(外装一体タイプ)。
外装体12F,12Bは、胴周り領域Tと対応する前後方向範囲である胴周り部を有する。また、本例では、前外装体12Fよりも後外装体12Bの方が前後方向寸法が長くなっており、前外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有していないが、後外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有している。図示しないが、前外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けたり、鼠径カバー部は設けるものの臀部カバー部は設けない構造としたり、前外装体12F及び後外装体12Bの両方に中間領域Lと対応する部分を設けなくても良い。
外装体12F,12Bは、図4及び図5に示されるように、内側シート層12H及び外側シート層12Sと、これらの間に設けられた弾性部材15~19とを有する。各シート層は、共通の一枚のシート材とする他、個別のシート材とすることもできる。すなわち、前者の場合、外装体の一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁や脚開口LO側の縁等の適宜の位置で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分の間に弾性部材15~19を設けることができる。図示例では、ウエスト部Wに、それぞれシート材の折り返しを含む部分を有している。例えば、ウエスト部Wでは、外側シート層12Sを形成するシート材はウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、内側シート層12Hを形成するシート材は、第2シート層を形成するシート材のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されている。また、この折り返し部分は、内装体200のウエスト開口WO側の端部と重なる位置まで、外装体の幅方向全体にわたり延在する内装カバー層12rとなっている。内装カバー層12rは、内側シート層12Hを形成するシート材を折り返して形成せずに、専用のシート材を貼り付けてもよい。
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、弾性部材15~19が内蔵され、弾性部材の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、外装体12F,12Bは、自然長の状態では弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材の長手方向に伸長すると、皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15~19としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15~19としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
図示例の弾性部材15~19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wには、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性部材17としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、2~12mmの間隔、特に3~7mmの間隔で、2~15本程度、特に4~10本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150~400%、特に220~320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDのすべてに同じ太さのウエスト弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部で弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uには、細長状の弾性部材からなるウエスト下方弾性部材15,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられていると好ましい。ウエスト下方弾性部材15,19としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、1~15mm、特に3~8mmの間隔で5~30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200~350%、特に240~300%程度であるのが好ましい。
また、後外装体12Bの臀部カバー部Cには、細長状の弾性部材からなるカバー部弾性部材16が取り付けられていると好ましい。臀部カバー部Cはカバー部弾性部材16により幅方向WD中央側に収縮している。カバー部弾性部材16としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを設けるのが好ましく、これによる臀部カバー部Cの幅方向WDの伸長率は150~300%、特に180~260%であるのが好ましい。
他方、前外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には、臀部カバー部Cと同様にカバー部弾性部材を設けることができる。
図示例のウエスト下方部Uや臀部カバー部Cのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材15,16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされていると好ましい。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。伸縮領域A2のうち、サイドシール部12Aを有する前後方向LD範囲に位置する部分がウエスト下方伸縮領域A3となる。
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層12Hと外側シート層12Sとの間に、弾性部材15~17,19を供給し、弾性部材15,16,19を伸縮領域A2に位置する部分のみホットメルト接着剤により固定した後、吸収体56を有する領域において、弾性部材15,16,19を幅方向中間の1か所で加圧及び加熱により切断するか、又は弾性部材15,16,19のほぼ全体を加圧及び加熱により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。
図19(a)は、弾性部材15,16,19を幅方向中間の1か所で切断する場合を示しており、周方向の1か所に切断凸部172を有する加圧部171を外周面に備え、切断凸部172が所望の温度に加熱されるシールロール170と、これに対向配置された表面平滑なアンビルロール180とにより、内側シート層12H及び外側シート層12S間に弾性部材15~17,19を取り付けた切断対象を、内側シート層12Hがシールロール側となるように挟み、切断凸部172とアンビルロール180の外周面との間に挟まれる部位のみ弾性部材15,16,19を加圧及び加熱して切断するものである。このような加工を施した製品では、図20(a)に示すように、外側シート層12S及び内側シート層12H間には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部のみが不要弾性部材18として単独で自然長まで収縮した状態で残ることになる。
また、図19(b)は、弾性部材15,16,19のほぼ全体を細かく切断する場合を示しており、多数の切断凸部173を有する加圧部171を外周面に備え、切断凸部172が所望の温度に加熱されるシールロール170と、これに対向配置された表面平滑なアンビルロール180とにより、内側シート層12H及び外側シート層12S間に弾性部材15~17,19を取り付けた切断対象を、内側シート層12Hがシールロール側となるように挟み、切断凸部173とアンビルロール180の外周面との間に挟まれる部位のみ弾性部材15,16,19を加圧及び加熱して切断するものである。このような加工を施した製品では、図20(b)に示すように、外側シート層12S及び内側シート層12H間には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部、及び両方の伸縮領域A2の弾性部材15,16,19と連続しない弾性部材の切断片が不要弾性部材18として単独で自然長まで収縮した状態で残ることになる。
内側シート層12H及び外側シート層12Sを形成するシート材としては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましい。不織布を用いる場合、1枚あたりの目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。
弾性部材15~19は種々の塗布方法によるホットメルト接着剤HMにより外装体12F,12Bに固定される。内側シート層12H及び外側シート層12Sは、それぞれ弾性部材15~19を有する部分では、弾性部材15~19を固定するためのホットメルト接着剤HMにより接合することが好ましく、弾性部材15~19を有しない部分では、ホットメルト接着剤HMにより接合しても、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着により接合してもよく、また一部又は全部を接着しなくてもよい。図示例の外装体12F,12Bにおける弾性部材15~19を有する部分では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材15~19の外周面にのみホットメルト接着剤HMを塗布してシート層間に挟むことにより、当該弾性部材15~19の外周面に塗布したホットメルト接着剤HMのみで、両シート層への弾性部材15~19の固定と、両シート層間の固定とを行っている。弾性部材15~19は伸縮領域A2における伸縮方向の両端部のみ、両シート層に固定してもよい。
(高伸長領域)
図13に示すように、前身頃Fのウエスト下方伸縮領域A3における少なくとも股間側の端部は、起き上がりギャザー60よりも幅方向中央側に延びた高伸長領域A4となっており、起き上がり部分68及びギャザー弾性部材63は、前身頃Fの高伸長領域A4内までウエスト開口WO側に延びていると好ましい。これにより、ウエスト下方伸縮領域A3の高伸長領域A4が着用者の鼠径部の窪みを横切るように存在するため、外装体12F,12Bが鼠径部の溝の拡縮に追従してしっかりと内装体200を押し付けることができる。さらに、この高伸長領域A4により押さえ付けられる部分まで、起き上がりギャザー60の起き上がり部分68及びギャザー弾性部材63が延びていると、起き上がり部分68のうちギャザー弾性部材63を有する部分が、鼠径部に対してしっかりと押し付けられる高伸長領域A4を土台として、鼠径部の窪みに入るように起き上がることができる。よって、本パンツタイプ使い捨て着用物品では、鼠径部に対するフィット性が顕著に向上する。
特に、図1~図7に示すような外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、脚周りに対するフィット性が低下せざるを得ず、特に鼠径部のフィット性は低下しやすい。すなわち、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつは、装着時に内装体200の股下部にあたる位置から外装体12F,12Bとの交差位置までの距離が長いため、交差位置を支点として内装体200が左右に振られやすいことにより、前身頃Fから後身頃Bまで連続する一体的な外装体12を備えるタイプと比較して内装体200が横方向に動きやすい。また、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつは、外装体12F,12Bの股間側の縁が幅方向WDに沿う直線状又はそれに近い形状となっており、内装体200の側縁と直角又はそれに近い角度で交差する。これらは、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは鼠径部に対するフィット性が不足しがちであることを意味する。したがって、前述の高伸長領域A4の形成、及び高伸長領域A4と起き上がりギャザー60との位置関係は、このような外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつに適用した場合に、特に技術的意義が大きいものとなる。さらに、図示例のようなサイドフラップ70及びサイド伸縮領域SGを有すると、サイド伸縮領域SGが内装体200の横移動を弾性的に支えること、及びサイド伸縮領域SGが内装体200の横をカバーすることにより、内装体200の横に隙間が生じにくくなるため好ましい。
高伸長領域A4と起き上がりギャザー60との位置関係は適宜定めることができるが、通常の場合、高伸長領域A4を有する前後方向LDの範囲における、非伸縮領域A1の幅方向WDの寸法は、吸収体56の幅方向WDの寸法56Xの1/2未満(特に1/3~1/2倍)であり、両側の起き上がりギャザー60の間隔D1(展開状態における幅方向WD中央側の縁の間隔)が、吸収体56の幅方向WDの寸法56Xの1/2~1倍(特に2/3~3/4倍)であると、高伸長領域A4と起き上がりギャザー60との位置関係が適切となり、鼠径部に対するフィット性が特に良好となるため好ましい。
起き上がりギャザー60の起き上がり部分68及びギャザー弾性部材63は、高伸長領域A4のウエスト側の端まで延びていることが好ましいが、高伸長領域A4の前後方向の中間までしか延びていなくてもよい。また、高伸長領域A4と、起き上がりギャザー60の起き上り部分及びギャザー弾性部材63との重なり部分の前後方向LDの寸法は、内装体200と前身頃Fとが重なる領域の前後方向LDの寸法の10~90%程度、特に10~50%程度であることが好ましい。
高伸長領域は、図13に示す例のように、ウエスト下方伸縮領域の前後方向の全体にわたり設けられていてもよいが、図17に示す例のように、一部のみとしてもよい。
例えば、図17に示すように、ウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の縁は、ウエスト開口WO側から股間側に向かうにつれて、段階的又は連続的に、幅方向WD中央側に位置するように延びており、高伸長領域A4は、ウエスト下方伸縮領域A3における股間側にのみ設けられているとよい。鼠径部の窪みは股間側で顕著であり、ウエスト側ではほとんど発生しない。よって、高伸長領域A4を、鼠径部の窪みが深くなりやすい部分のみに設けることにより、鼠径部に対するフィット性を向上しつつ、それ以外の部分における吸収体56の収縮を防止するのは好ましい。この場合、高伸長領域A4の前後方向LDの寸法は、内装体200と前身頃Fとが重なる領域の前後方向LDの寸法の10~50%程度、特に10~30%程度であることが好ましい。また、高伸長領域A4に内蔵されるウエスト下方弾性部材19が細長状の弾性部材である場合には、高伸長領域A4は複数本のウエスト下方弾性部材19を含むことが好ましい。さらに、ウエスト下方伸縮領域A3のうち高伸長領域A4以外の部分の非伸縮領域A1側の縁は、図示例のように、吸収体56の幅方向WDの端部まで延びていることが好ましいが、吸収体56の両側縁よりも側方に位置していてもよい。後者の場合、ウエスト下方伸縮領域A3のうち高伸長領域A4以外の部分の非伸縮領域A1側の縁は、サイドフラップ70上に位置していても、サイドフラップ70の側縁よりも側方に位置していてもよい。
この例からも分かるように、ウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の縁、高伸長領域A4の非伸縮領域A1側の縁、及び高伸長領域A4以外の領域の非伸縮領域A1側の縁は、それぞれ曲線状であっても、階段状であっても、前後方向LDに沿う直線状であってもよい。
前後の伸縮バランスを保つため、図14、図16及び図18に示すように、後身頃Bのウエスト下方伸縮領域A3にも高伸長領域A4を設けることができる。この場合、図13及び図14に示される組み合わせ例、図15及び図16に示される組み合わせ例、図17及び図18に示される組み合わせ例からも分かるように、前身頃F及び後身頃Bの高伸長領域A4の縦方向の位置が一致していると特に好ましい。後身頃Bのウエスト下方伸縮領域A3に高伸長領域A4を設ける場合、起き上がり部分68及びギャザー弾性部材63は、図示例のように後身頃Bの高伸長領域A4内まで達していなくてもよいが、前身頃Fと同様に達していてもよい。また、図示しないが、前身頃Fのウエスト下方伸縮領域A3にのみ高伸長領域A4を設け、後身頃Bのウエスト下方伸縮領域A3には高伸長領域A4を設けなくてもよい。
(内外接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び起き上がりギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200と外装体12F,12Bとを固定する内外接合部201,202は、図13及び図14に示すように、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
また、図17及び図18に示す例のように、内外接合部201,202は、ウエスト下方伸縮領域A3を有する前後方向LDの範囲では、一方のウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の端部から、他方のウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の端部までの範囲にしか設けられていないのも好ましい。このように、内外接合部201,202の幅を非伸縮領域A1の幅と同程度に制限すると、吸収体56の不必要な収縮を抑制できるため好ましい。ここで、単に内外接合部201,202の幅が狭くなると、内装体200が横に動きやすくなり、鼠径部のフィット性が低下しやすくなる。しかし、本パンツタイプ使い捨ておむつでは、前述の高伸長領域A4の形成、及び高伸長領域A4と起き上がりギャザー60との位置関係により、鼠径部に対するフィット性に優れるものであるため、鼠径部に対するフィット性の向上及び吸収体56の不必要な収縮の抑制という、相反する作用が両立するものである。特に、前述のサイド伸縮領域SGを有すると、鼠径部のフィット性の低下をさらに補うことができるため好ましい。
内外接合部201,202は、非伸縮領域A1内にのみ位置していてもよいが、一方のウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の端部から、他方のウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の端部にわたり設けられていると好ましい。後者の場合、例えば、図示例のように、ウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の縁は、ウエスト開口WO側から股間側に向かうにつれて、段階的又は連続的に、幅方向WDの中央側に位置するように延びている場合には、内外接合部201,202の側縁も、同様にウエスト開口WO側から股間側に向かうにつれて幅方向WDの位置が変化することとなる。
内外接合部201,202の幅方向WDの寸法は適宜定めることができるが、通常の場合、非伸縮領域A1の幅方向WDの寸法の90~120%程度、特に100~110%程度とすることができる。
図15及び図16に示す例のように、内外接合部201,202は、ウエスト下方伸縮領域A3の非伸縮領域A1側の側縁の位置と関係なく、適宜の形状とすることもできる。したがって、例えば図示例の前身頃Fのように、内外接合部201,202は、前後方向LDの両端部の幅よりも中間部の幅が狭い括れ形状とすることができる。この場合、展開状態で、起き上がりギャザーにおける起き上がり部分と倒伏部分との境界が、内外接合部の括れ部分の前後方向の中間に位置していると、起き上がり部分の前後方向の端部の位置で内装体と外装体とが接合されていないため、起き上がり部分がより起き上がりやすくなるとともに、身体表面に対する起き上がり部分の追従性も良好となる。また、図示例の後身頃Bのように、内外接合部201,202は、ウエスト開口WO側の幅よりも股間部側の幅が狭いT字形状とすることもできる。
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前外装体12F及び後外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、内装体200の裏面には、前外装体12Fと内装体200との間から、後外装体12Bと内装体200との間にわたるカバー不織布13を備えていることが好ましい。カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着することができる。カバー不織布13に用いる不織布は、例えば外装体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができる。
(不織布)
上記説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となったものを含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの他、ショーツタイプ生理用ナプキン等の、パンツタイプ使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
11…液不透過性シート、12A…サイドシール部、12B…後外装体、12E…ウエスト延出部分、12F…前外装体、12F,12B…外装体、12H…内側シート層、12S…外側シート層、13…カバー不織布、15,19…ウエスト下方弾性部材、16…カバー部弾性部材、17…ウエスト弾性部材、18…不要弾性部材、200…内装体、201,202…内外接合部、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60A…先端側部分、60B…付け根側部分、62…ギャザーシート、63…ギャザー弾性部材、67…倒伏部分、68…起き上がり部分、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、A3…ウエスト下方伸縮領域、C…臀部カバー部、L…中間領域、LD…前後方向、SG…サイド伸縮領域、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口、LO…脚開口、P1…第1部分、P2…第2部分、HM…ホットメルト接着剤、70…サイドフラップ、71…第1シート層、72…第2シート層、73…サイド弾性部材、74…最も内側のシート層、75…最も外側のシート層、76…内部シート層、77…非接合部、79…専用シート材、F…前身頃、A4…高伸長領域、B…後身頃。
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