JP2020164633A - 繊維強化熱可塑性樹脂成形品および繊維強化熱可塑性樹脂成形材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】衝撃特性および外観品位に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品を提供すること。【解決手段】 炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜94重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品における炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が、0.3mm以上1.5mm以下であり、かつ、有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が、2mm以上10mm以下である、繊維強化熱可塑性樹脂成形品。【数1】【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂、炭素繊維、特定の色彩を有する有機繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品および繊維強化熱可塑性樹脂成形材料に関する。
強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形品は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途などに広く用いられている。これらの成形品に使用される強化繊維としては、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、シリコンカーバイド繊維、炭素繊維などの炭素繊維、アラミド繊維やポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維などが挙げられる。
また、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形品は、優れた軽量性と力学特性を有することから、自動車部材をはじめ、最近では電子機器筐体や家電用途の外装部品などの分野でも用いられている。特に、電子機器筐体や家電用途の外装部品などは、カラーバリエーションでの展開が要求される。より具体的には、炭素繊維を含む成形品においては、炭素繊維の黒色だけでなく、塗装色が反映されやすいよう、黒色以外の成形品が要求される。 加えて、特に電子機器筐体や家電用途の外装部品などにおいては、内部にモーターなどを内蔵するが、近年の発生音量規制規格の強化や、ユーザーの静かさを求める傾向等に伴い、機器の静音化の必要性が高まってきている。
力学特性を高める手段として、炭素繊維、有機繊維および熱可塑性樹脂を含み、炭素繊維の平均繊維長と平均繊維端部間距離、有機繊維の平均繊維長と平均繊維端部間距離が特定の範囲にある繊維強化熱可塑性樹脂成形品(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、成形品の着色に関する技術としては、成形品に硫化亜鉛を含有する繊維強化ポリオレフィン樹脂(例えば、特許文献2参照)や、ガラス繊維、LDS添加剤および酸化チタンを含有する繊維強化熱可塑性樹脂成形品(例えば、特許文献3)が提案されている。
特許文献1の技術により得られる成形品は、衝撃強度の改善のため、炭素繊維に加えて有機繊維を加えることが記載されている。また、特許文献2および3には、熱可塑性樹脂に着色剤や着色繊維を加えることで、成形品を着色することが記載されている。
しかしながら、特許文献1の技術により得られる成形品は、有機繊維を併用するため、成形品の外観は有機繊維の色調に左右されやすい。特許文献1および2には、成形品の外観品位については言及されておらず、所望する成形品外観への手法については言及されていない。また、特許文献2および3の技術により得られる成形品は、着色剤を含むため、機械強度の改善が不十分であり、衝撃強度に優れた成形品を得ることが困難であると推測される。加えて特許文献1〜3のいずれの文献にも静音性に関する記載はない。
このように、従来技術では、熱可塑性樹脂をマトリックスとした繊維強化熱可塑性樹脂成形品において、高い力学特性(優れた耐衝撃特性)、成形品の外観品位(黒色以外)に優れ、さらに静音性に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品は得られておらず、かかる繊維強化熱可塑性樹脂成形品の開発が望まれていた。
本発明は、従来技術の有する上記課題に鑑み、力学特性(耐衝撃特性)に優れ、かつ外観品位、および静音性に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品と、かかる成形品を得ることのできる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成からなる。
(1) 炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜94重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品における炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が、0.3mm以上1.5mm以下であり、かつ、有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が、2mm以上10mm以下である、繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(1) 炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜94重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品における炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が、0.3mm以上1.5mm以下であり、かつ、有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が、2mm以上10mm以下である、繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(2) 炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)、および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、
炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜93重量部、および成分(D)1〜20重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が、軸心方向にほぼ平行に配列されており、かつ炭素繊維(A)および有機繊維(B)の長さが、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さと実質的に同じであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長手方向の長さが2〜10mmである、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜93重量部、および成分(D)1〜20重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が、軸心方向にほぼ平行に配列されており、かつ炭素繊維(A)および有機繊維(B)の長さが、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さと実質的に同じであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長手方向の長さが2〜10mmである、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、炭素繊維、有機繊維、熱可塑性樹脂を含むため、補強効果が高く、衝撃特性に優れる。さらに、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、特定の色調を有する有機繊維を含むため、成形品の外観品位および静音性にも優れる。かかる成形品は、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を用いることにより得ることができる。
そして、かかる成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、筐体および自動車の部品などに極めて有用であり、特にモーター等を内蔵する電子機器筐体および家電用途の外装部品に好適に用いられる。成形品として具体的には、インストルメントパネル、などの自動車部品や、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、冷蔵庫、エアコン、掃除機などの家庭・事務電気製品部品、さらには、パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用される筐体やパーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持するキーボード支持体に代表される電気・電子機器用部材などが挙げられる。
本発明は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜94重量部を含み、繊維強化熱可塑性樹脂成形品における炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が、0.3mm以上1.5mm以下であり、かつ、有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が、2mm以上10mm以下である、繊維強化熱可塑性樹脂成形品である。また、かかる成形品を得るために用い得る、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)、および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜93重量部、および成分(D)1〜20重量部を含み、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が、軸心方向にほぼ平行に配列されており、かつ該成分(A)および(B)の長さが、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さと実質的に同じであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長手方向の長さが2mm〜10mmである、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料も、本発明に包含される。このように、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品(「成形品」という場合がある)および繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(「成形材料」という場合がある)は、いずれも、少なくとも炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)を含む。
なお、本発明における有機繊維(B)は、CIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上である。
<成形品>
まず、本発明の成形品について詳細に説明する。
まず、本発明の成形品について詳細に説明する。
<炭素繊維(A)>
本発明における炭素繊維(A)は、熱可塑性樹脂(C)に対する繊維補強効果により、成形品としての力学特性を向上し得るものである。さらに、炭素繊維(A)が導電性や熱伝導性など固有の特性を有する場合、熱可塑性樹脂(C)単体では為し得ない、それらの性質も成形品に付与することができる。また、導電性を付与する目的においては、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維も好ましく用いられる。
本発明における炭素繊維(A)は、熱可塑性樹脂(C)に対する繊維補強効果により、成形品としての力学特性を向上し得るものである。さらに、炭素繊維(A)が導電性や熱伝導性など固有の特性を有する場合、熱可塑性樹脂(C)単体では為し得ない、それらの性質も成形品に付与することができる。また、導電性を付与する目的においては、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維も好ましく用いられる。
炭素繊維としては、特に制限はないが、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが例示される。
さらに、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が、0.05〜0.5であるものが好ましい。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面に十分な官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂(C)とより強固な接着性を得ることができることから、成形品の曲げ強度および引張強度がより向上する。表面酸素濃度比は、0.1以上がより好ましい。また、表面酸素濃度比の上限は、炭素繊維の取り扱い性、生産性のバランスから、0.3以下がより好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、炭素繊維表面にサイジング剤などが付着している場合には、溶剤でそのサイジング剤などを除去する。炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比[O/C]は、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
炭素繊維と熱可塑性樹脂(C)の接着性を向上する等の目的で、炭素繊維は表面処理されたものであってもかまわない。表面処理の方法としては、例えば、電解処理、オゾン処理、紫外線処理等を挙げることができる。
炭素繊維の毛羽立ちを防止したり、炭素繊維と熱可塑性樹脂(C)との接着性を向上する等の目的で、炭素繊維はサイジング剤が付与されたものであってもかまわない。サイジング剤を付与することにより、炭素繊維表面の官能基等の表面特性を向上させ、接着性および成形品の力学特性(特に衝撃強度)を向上させることができる。 サイジング剤としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。サイジング剤は、水溶性もしくは水分散性であることが好ましい。炭素繊維との濡れ性に優れるエポキシ樹脂が好ましく、多官能エポキシ樹脂がより好ましい。
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂(C)との接着性を発揮しやすい脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。また、脂肪族エポキシ樹脂は、炭素繊維/熱可塑性樹脂間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度をより向上させることができる。
多官能の脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。ジグリシジルエーテル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
上記脂肪族エポキシ樹脂の中でも、3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂が好ましく、反応性の高いグリシジル基を3個以上有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物がより好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、熱可塑性樹脂(C)との相溶性のバランスがよく、接着性をより向上させることができる。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類がさらに好ましい。
サイジング剤の付着量は、サイジング剤と炭素繊維の合計100重量%中、0.01〜10重量%が好ましい。サイジング剤付着量が0.01重量%以上であれば、熱可塑性樹脂(C)との接着性をより向上させることができる。サイジング剤付着量は、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。一方、サイジング剤付着量が10重量%以下であれば、熱可塑性樹脂(C)の物性をより高いレベルで維持することができる。サイジング剤付着量は、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。
<有機繊維(B)>
本発明の成形品は、前述した炭素繊維(A)に加えて、有機繊維(B)を含有する。炭素繊維(A)などの炭素繊維は剛直で脆いため、絡まりにくく折れやすい。そのため、炭素繊維だけからなる繊維束は、成形品の製造中に切れ易かったり、成形品から脱落しやすいという課題がある。一方で、有機繊維(B)は、柔軟性を有するため、成形時に折れにくく、成形品中に長い繊維長を保ったまま残存しやすい。そのため、柔軟で折れにくい有機繊維(B)を含むことにより、成形品の衝撃特性を大幅に向上させることができる。
本発明の成形品は、前述した炭素繊維(A)に加えて、有機繊維(B)を含有する。炭素繊維(A)などの炭素繊維は剛直で脆いため、絡まりにくく折れやすい。そのため、炭素繊維だけからなる繊維束は、成形品の製造中に切れ易かったり、成形品から脱落しやすいという課題がある。一方で、有機繊維(B)は、柔軟性を有するため、成形時に折れにくく、成形品中に長い繊維長を保ったまま残存しやすい。そのため、柔軟で折れにくい有機繊維(B)を含むことにより、成形品の衝撃特性を大幅に向上させることができる。
具体的に、成形品中における有機繊維(B)の残存繊維長(言い換えると、成形品中の重量平均繊維長(Lwb))を、2mm以上、10mm以下にすることで、該成形品により高い衝撃特性を付与することができる。
また、本発明の成形品に含まれる有機繊維(B)は、CIELab色空間において、L*が70以上である。有機繊維(B)の色調を前述した範囲にすることで、成形品を所望する外観品位にすることができる。
CIELab色空間とは、色の表示方法の一つであり、国際照明委員会(CIE)が策定したものである。L*a*b*は、色立体において三次元の座標軸を示すものであり、L*は明度を表し、L*=0がもっとも暗く(黒色)、L*=100がもっとも明るい状態(白色)を表現している。a*b*に関しては、tanθ(b*/a*)が色相を表し、それぞれ+と−の領域を持っている。即ち、原点0に垂直方向にL*軸が立っており、あるL*の値で縦軸と横軸にa*とb*が直交しており、a*が+なら赤、−なら補色の緑、b*が+なら黄色、そして−なら補色の青色を示す。本発明においては、L*が表す明度に着目し、有機繊維(B)のL*を特定の範囲にすることで、該有機繊維を含む成形品の外観品位をコントロールできることを見出した。
本発明における外観品位についてより具体的に説明すると、電子機器および家電機器の外装部品に繊維強化熱可塑性樹脂成形品を適用した場合、その繊維の色味が成形品の外観に反映される。特に炭素繊維を含む成形品の場合、含有する炭素繊維に由来して黒色の外観になることが多い。そのため、成形品のカラーバリエーション展開を行う際の塗装工程において、塗料の色が反映されないことが多く、黒色を抑制した外観が求められることが多い。高級感を出すために黒色をベースとした外観が求められることが多い。成形品を白くするために着色剤などを併用する場合は、熱可塑性樹脂(C)の靱性を低下させることや着色剤の硬度が高い場合、炭素繊維が損傷を受けてしまい、得られる成形品の機械強度、特に衝撃強度が損なわれることがある。しかし、L*が上記範囲の有機繊維(B)を用いれば、炭素繊維を含有した成形品であっても、明度を高めることができ、黒色を抑制した成形品を得ることができ、且つ衝撃強度の高い成形品を得ることができる。
有機繊維(B)のL*は、70よりも大きい。L*が100に近いほうが白色になるため、L*が100に近い有機繊維を用いれば、炭素繊維と併用した場合であっても、得られる成形品は黒色を抑制した外観になると推測される。成形品の外観品位と、衝撃強度の両立には、有機繊維(B)のL*を前述した範囲にする必要がある。L*は、75以上がさらに好ましい。
前述の通り、成形品の黒色を抑制にする際には、有機繊維(B)のL*を好ましい範囲にすることで可能となるが、有機繊維のa値は−1〜+4が好ましく、b値は−1〜+4であることが好ましい。有機繊維のa値およびb値を前記好ましい範囲にすることで、有機繊維に色味をなくすことが可能となり、所望の外観に調整することが可能となる。
前記Lab色空間の測定方法は、日本工業規格JIS Z 8781−4:2013に規定されており、当該測定方法に準拠した測定装置である分光色彩計を用いて測定することができる。
有機繊維(B)は、成形品の力学特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレン・プロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマーなどのフッ素樹脂、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどの液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド、等の樹脂を紡糸して得られる繊維を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機繊維(B)の中から、や熱可塑性樹脂(C)との組み合わせにより適宜選択して用いることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂(C)の成形温度(溶融温度)に対して、有機繊維(B)の溶融温度が30℃〜150℃高いことが好ましく、50〜100℃高いことがより好ましい。あるいは、熱可塑性樹脂(C)と非相溶性である樹脂を用いてなる有機繊維(B)は、成形品内に繊維状態を保ったまま存在するため、成形品の衝撃特性をより向上できるため好ましい。また、静音性に優れる。溶融温度の高い有機繊維(B)として、ポリエステル繊維、ポリ絵フェニレンサルファイド繊維などが挙げられる。本発明における有機繊維(B)としては、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を用いることが好ましい。
上記例示した有機繊維(B)の中でも、ポリエステル繊維またはポリフェニレンサルファイド繊維を用いる場合、透過損失が高まることが明らかとなり、特に成形品の静音性に優れることが明らかとなった。
本発明における静音性についてより具体的に説明すると、電子機器筐体および家電用途の外装部品に繊維強化熱可塑性樹脂成形品を適用した場合、成形品の剛性が高まることで、内部の音が響きやすくなる、すなわち外部への音が漏れやすい状態にある。作動音の音漏れは、使用者への不快感に繋がるため、成形品の外装部品による透過損失(音源からの音を界壁を隔てて聞いたとき、とのくらい音が小さくなったかを表す指標)の向上が要求されている。特に、内部にモーターなどを内蔵する電子機器筐体および家電用途の外装部品においては、その要求が高い。
本発明においては、上記例示した有機繊維(B)の中でも、特定のポリエステル繊維またはポリフェニレンサルファイド繊維を用いる場合、透過損失が高まることが明らかとなり、特に成形品の静音性に優れることが明らかとなった。その理由は定かではないが、前記有機繊維(B)のエネルギー伝播速度が高いためと推測している。ここで、エネルギー伝播速度の算出は、繊維の初期弾性率と繊維密度から次の式を用いて算出できる。
エネルギー伝播速度が高いことは、繊維に与えられたエネルギーがより広範囲に伝播しやすいことを表している。すなわち、エネルギー伝播速度に優れる有機繊維(B)を含むことで、成形品に与えられたエネルギーをより早く成形品中全体に拡散することができる。拡散されたエネルギーは、次第に減少していくため、結果として、成形品内でエネルギーの遮蔽が可能となり、透過損失が高くなる。本願目的としている音についても同様の作用が起きていると考えられるため、エネルギー伝播速度の高い繊維を用いることで、透過損失が高くなり高い静音性が発現していると考えている。前述したポリエステル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維は、前述した式から得られる、エネルギー伝播速度に優れるため、静音性に優れる特性を発現できていると推測している。さらに、前述した有機繊維(B)が成形品内に長く残っている場合、エネルギーは繊維内を伝播していくため、より効率的にエネルギーを拡散でき、透過損失を高めることができるため、静音効果はより高まると考えている。静音性が改善することで、外装部品として使用した際の静音性が改善できる。本発明における有機繊維(B)のエネルギー伝播速度は、2.0km/s以上である。
なお、エネルギー伝播速度2.0km/s以上を有する有機繊維としては、“テトロン(登録商標)”1670T−108−705C、““トルコン(登録商標)”440T−100−190(いずれも東レ(株)製)が挙げられる。
透過損失の測定は、透過型音響室を用いた垂直入射透過損失計測にて測定できる。具体的には、音響室内に規定のサイズに加工した丸形成形品をセットし、成形品の片面側にマイクロホンを設置、成形品を挟んだもう片面にスピーカーを設置する。その後、スピーカーからある一定音圧を発生させ、その音が成形品を通った後、マイクロホンに入ってくる音圧量を計測する。音の測定周波数帯については、特に限定はなく、一般的な周波数帯500Hz〜7000Hzで測定を行う。
有機繊維(B)の単繊維繊度は、0.1〜50dtexが好ましい。3dtex以上が好ましく、6dtex以上がより好ましい。単繊維繊度を前述した範囲にすることで、成形時の繊維剪断に対して強いため、成形品内の繊維長が長く残存しやすく、成形品の衝撃強度を高めることができるため好ましい。
有機繊維(B)の繊維強度は、公知の単糸引張試験により求めることができる。ここで、有機繊維(B)の繊維強度は、標準状態(20℃,65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の荷重を単繊維繊度で除すことで算出することができる。ここで、単繊維繊度とは、10,000mの長さで1gの重さを示す糸の太さを表しており、本発明で用いる有機繊維(B)の単繊維繊度は、公知の繊維繊度測定(例えば、JIS L 1013:2010)により求めることができる。
繊維強度は、4cN/dtex以上である。4cN/dtex未満の場合、特に成形品の衝撃特性が低下する。4cN/dtexを超えることが好ましい。また、前述の繊維強度で得られた応力歪み曲線図における、初期勾配から繊維初期弾性率を算出した。有機繊維(B)の密度は、公知の密度測定(例えば、JIS L 1015:2010)により求めることができる。
<熱可塑性樹脂(C)>
本発明において熱可塑性樹脂(C)は、成形品および成形材料を構成するマトリックス樹脂である。熱可塑性樹脂(C)としては、成形温度(溶融温度)が200〜450℃であるものが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリーレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いることもできる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
本発明において熱可塑性樹脂(C)は、成形品および成形材料を構成するマトリックス樹脂である。熱可塑性樹脂(C)としては、成形温度(溶融温度)が200〜450℃であるものが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリーレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いることもできる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
前記熱可塑性樹脂(C)の中でも、軽量、かつ、力学特性や成形性のバランスに優れるポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、汎用性に優れることから、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂がさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂は、無変性のものであっても、変性されたものであってもよい。
無変性のポリプロピレン樹脂としては、具体的には、プロピレンの単独重合体や、プロピレンとα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンおよび他の熱可塑性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体との共重合体などが挙げられる。プロピレンの単独重合体は、成形品の剛性を向上させる観点から好ましい。プロピレンとα−オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体とのランダムまたはブロック共重合体は、成形品の衝撃特性をより向上させる観点から好ましい。
また、変性ポリプロピレン樹脂としては、酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはカルボン酸塩基を有する、酸変性ポリプロピレン樹脂がより好ましい。上記酸変性ポリプロピレン樹脂は、種々の方法で得ることができる。例えば、無変性のポリプロピレン樹脂に、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体を、グラフト重合することにより得ることができる。
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、エチレン系不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。
これらを2種以上用いることもできる。これらの中でも、エチレン系不飽和カルボン酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させるためには、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂を共に用いることが好ましい。特に、難燃性と、曲げ強度および引張強度とのバランスの観点から、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂の重量比が95/5〜75/25となるように用いることが好ましい。より好ましくは95/5〜80/20、さらに好ましくは90/10〜80/20である。
ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とする樹脂である。
耐熱性や強度に優れるという点から、200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂が特に有用である。その具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリラウリルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン12T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン66がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂とは、二価フェノール類とカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。2種以上の二価フェノール類または2種以上のカーボネート前駆体を用いて得られる共重合体であってもよい。反応方法の一例として、界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。かかるポリカーボネート樹脂はそれ自体公知であり、例えば、特開2002−129027号公報に記載のポリカーボネート樹脂を使用できる。
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”(登録商標)、“ノバレックス”(登録商標)、帝人化成(株)製“パンライト”(登録商標)、出光石油化学(株)製“タフロン”(登録商標)などとして上市されているものを用いることもできる。
ポリアリーレンサルファイド樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンサルファイドスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイドケトン樹脂、これらのランダムまたはブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でもポリフェニレンサルファイド樹脂が特に好ましく使用される。
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法など、任意の方法によって製造することができる。
ポリアリーレンサルファイド樹脂として、東レ(株)製“トレリナ”(登録商標)、DIC(株)製“DIC.PPS”(登録商標)、ポリプラスチックス(株)製“ジュラファイド”(登録商標)などとして上市されているものを用いることもできる。
<各成分の含有量>
本発明の成形品は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5〜45重量部含む。炭素繊維(A)の含有量が5重量部未満であると、成形品の衝撃特性が低下する。炭素繊維(A)の含有量は、7重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。一方、炭素繊維(A)の含有量が45重量部を超えると、繊維の分散性が低下するため、繊維同士の絡み合いが増加する。その結果、繊維折損が起きるため、繊維長が短くなり、衝撃特性が低下する。炭素繊維(A)の含有量は30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。
本発明の成形品は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5〜45重量部含む。炭素繊維(A)の含有量が5重量部未満であると、成形品の衝撃特性が低下する。炭素繊維(A)の含有量は、7重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。一方、炭素繊維(A)の含有量が45重量部を超えると、繊維の分散性が低下するため、繊維同士の絡み合いが増加する。その結果、繊維折損が起きるため、繊維長が短くなり、衝撃特性が低下する。炭素繊維(A)の含有量は30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。
本発明の成形品における有機繊維(B)の含有量は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、1〜45重量部である。有機繊維(B)の含有量が1重量部未満である場合、成形品の衝撃特性が低下し、成形品の透過損失にも劣る。有機繊維(B)の含有量は3重量部以上が好ましい。一方、有機繊維(B)の含有量が45重量部を超える場合、繊維同士の絡み合いが増加し、成形品中における有機繊維(B)の分散性が低下し、成形品の衝撃特性の低下を引き起こすことが多い。有機繊維(B)の含有量は20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
本発明の成形品における熱可塑性樹脂(C)の含有量は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、10〜94重量部である。熱可塑性樹脂(C)の含有量が10重量部未満の場合、成形品における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の繊維分散性が低下し、衝撃特性が低下する。熱可塑性樹脂(C)の含有量は30重量部以上が好ましい。一方、熱可塑性樹脂(C)の含有量が94重量部を超える場合、相対的に炭素繊維(A)、有機繊維(B)の含有量が少なくなるため、繊維による補強効果が低くなり、衝撃特性が低下する。熱可塑性樹脂(C)の含有量は85重量部以下が好ましく、75重量部以下がより好ましい。
<成形品の色調>
次に、本発明において、成形品の色調は、L*が20よりも大きいことが好ましい。L*が20以上にすることで、成形品の表面は黒色が抑制されているため、外観品位が良く、塗装性の良い外観とすることができる。かかる成形品を得るための手段としては、後述する成形材料を用いる方法が挙げられる。なお、所望する外観品位発現のために、後述する成形材料を用いずに、着色剤を添加する手法もある。しかしながら、そのような手法を用いた場合は、外観品位が改善する一方で、マトリックス樹脂の靱性低下、繊維の損傷を招き、機械強度が低下するため、外観品位と機械強度の両立が不可能となる。
次に、本発明において、成形品の色調は、L*が20よりも大きいことが好ましい。L*が20以上にすることで、成形品の表面は黒色が抑制されているため、外観品位が良く、塗装性の良い外観とすることができる。かかる成形品を得るための手段としては、後述する成形材料を用いる方法が挙げられる。なお、所望する外観品位発現のために、後述する成形材料を用いずに、着色剤を添加する手法もある。しかしながら、そのような手法を用いた場合は、外観品位が改善する一方で、マトリックス樹脂の靱性低下、繊維の損傷を招き、機械強度が低下するため、外観品位と機械強度の両立が不可能となる。
成形品のL*の測定は、射出成形によって得られた80mm×80mm×3mm厚の試験片について、分光色彩計(日本電飾工業株式会社性SD7000)を使用し、成形品表面の外観におけるL*を測定することができる。
<その他成分>
本発明の成形品は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(A)〜(C)に加えて他の成分を含んでもよい。他の成分の例としては、熱硬化性樹脂、難燃剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤などが挙げられる。また、例えば後述する成形材料に用いられる成分(D)を含んでいてもよい。
本発明の成形品は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(A)〜(C)に加えて他の成分を含んでもよい。他の成分の例としては、熱硬化性樹脂、難燃剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤などが挙げられる。また、例えば後述する成形材料に用いられる成分(D)を含んでいてもよい。
<重量平均繊維長>
本発明の成形品は、成形品中における前記炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が0.3mm以上1.5mm以下である。炭素繊維(A)の平均繊維長(Lwa)が0.3mm未満の場合、成形品の曲げ強度および衝撃特性向上効果が奏しにくい。Lwaは0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、0.7mm以上が最も好ましい。一方、重量平均繊維長(Lwa)が1.5mmを超える場合、炭素繊維(A)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくくなり、分散性が向上しにくいため、成形品の曲げ強度向上効果が奏しにくい。Lwaは1.3mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
本発明の成形品は、成形品中における前記炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が0.3mm以上1.5mm以下である。炭素繊維(A)の平均繊維長(Lwa)が0.3mm未満の場合、成形品の曲げ強度および衝撃特性向上効果が奏しにくい。Lwaは0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、0.7mm以上が最も好ましい。一方、重量平均繊維長(Lwa)が1.5mmを超える場合、炭素繊維(A)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくくなり、分散性が向上しにくいため、成形品の曲げ強度向上効果が奏しにくい。Lwaは1.3mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
また、本発明の成形品は、成形品中における前記有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が2mm以上10mm以下である。有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が2mm未満の場合、成形品における有機繊維(B)の補強効果が奏しにくく、衝撃特性に劣り、さらに透過損失が低くなり、静音性に劣る。Lwbは3mm以上が好ましい。一方で、平均繊維長(Lwb)が10mmを超える場合、有機繊維(B)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくく分散性が向上しにくいため、成形品の衝撃特性に劣る。Lwbは8mm以下がより好ましく、7mm以下がさらに好ましい。有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)を前述した範囲にすることで、有機繊維の単糸同士の絡み合いが抑制され、有機繊維(B)が湾曲しつつも繊維が分散した状態で存在する。その結果、成形品が破壊される際のクラック進展が一方向ではなくなり、より多くの衝撃エネルギーを吸収できるようになるため、成形品の衝撃強度が向上する。また、透過損失についても同様であり、同様に有機繊維(B)のLwbを前述の範囲にすることで、成形品内部を通ろうとする音の波を遮断する範囲が広くなるため、成形品の静音性が向上する。
ここで、本発明における「重量平均繊維長」とは、単純に数平均を取るのではなく、重量平均分子量の算出方法を繊維長の算出に適用し、繊維長の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長を指す。ただし、下記の式は、炭素繊維(A)や有機繊維(B)の繊維径および密度が一定の場合に適用される。
重量平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの強化繊維の個数。
重量平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの強化繊維の個数。
上記重量平均繊維長の測定は、次の方法により行うことができる。ISO型ダンベル試験片を200〜300℃に設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させる。繊維が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(A)および有機繊維(B)の繊維長を計測して、上記式から炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)および有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)を算出する。
なお、成形品中における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の重量平均繊維長は、例えば、成形条件などにより調整することができる。かかる成形条件としては、例えば、射出成形の場合、背圧や保圧力などの圧力条件、射出時間や保圧時間などの時間条件、シリンダー温度や金型温度などの温度条件などが挙げられる。具体的には、有機繊維(B)が炭素繊維(A)に比べて柔軟で折損しにくいことを利用して、背圧などの圧力条件を適度に増加させることでシリンダー内での剪断力を適度に高め、炭素繊維(A)の平均繊維長を有機繊維(B)に比べて短くする。また、射出時間を適度に短くすることで射出時の剪断力を適度に高くし、炭素繊維(A)の平均繊維長を有機繊維(B)に比べて短くしてもよい。さらにシリンダー温度や金型温度などの温度を適度に下げれば、流動する樹脂の粘度が上がり、剪断力を高めることができるため、このような方法により炭素繊維(A)の平均繊維長を有機繊維(B)に比べて短くすることもできる。本発明においては、上記のように条件を適宜変更することにより、成形品中における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の平均繊維長を所望の範囲とすることができる。中でも、特に背圧条件や射出時間の制御で剪断力を調整することが特に有効である。ただし、繊維に作用する剪断力を必要以上に高めすぎると、炭素繊維(A)のみならず有機繊維(B)の平均繊維長も短くなるので、注意が必要である。
<成形材料>
また本発明においては、後述する成形材料を用いることにより、炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)および有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)を上記範囲にすることもできる。
また本発明においては、後述する成形材料を用いることにより、炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)および有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)を上記範囲にすることもできる。
次に、本発明の成形材料の形態について説明する。なお、本発明において「成形材料」とは、成形品を射出成形などで成形する際に用いる原材料を意味する。
本発明においては、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)、および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)、および成分(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5〜45重量部、有機繊維(B)を1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10〜93重量部、および成分(D)を1〜20重量部含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を、本発明の成形品を得るための成形材料として好適に用いることができる。かかる成形材料の具体的な形状は、後述するが、例えば図1〜図4に示すような断面を有する柱状体を例示できる。図1〜図3は炭素繊維(A)と有機繊維(B)とからなる繊維束の周囲に、成分Dを含む熱可塑性樹脂(C)が配された態様(成分Dと熱可塑性樹脂(C)とに明確な境界が存在しない態様)、そして図4は、炭素繊維(A)と有機繊維(B)とからなる繊維束の周囲に成分(D)が配され、さらにその外周に熱可塑性樹脂(C)が配された態様を示している。
成形材料における、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)としては、本発明の成形品について先に説明した(A)〜(C)を用いることができ、本発明の成形品について他の成分として例示したものを含有することもできる。また、それらの効果も先に説明したとおりである。ただし、炭素繊維(A)および有機繊維(B)は、それぞれ、成形前の段階である成形材料において束になっていてもよく、また、後述するように、その繊維を含む成形材料としての長さと実質的に同じ長さであることが好ましい。
200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)は、低分子量である場合が多く、常温においては通常比較的脆く破砕しやすい固体であったり、液体であることが多い。成分(D)は低分子量であるため、高流動性であり、炭素繊維(A)と有機繊維(B)の熱可塑性樹脂(C)内への分散効果を高めることができる。成分(D)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、環状ポリアリーレンサルファイド樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。成分(D)としては、熱可塑性樹脂(C)との親和性の高いものが好ましい。熱可塑性樹脂(C)との親和性の高い成分(D)を選択することにより、成形材料の製造時や成形時に、熱可塑性樹脂(C)と効率良く相溶するため、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。
成分(D)は、熱可塑性樹脂(C)との組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、成形温度が150℃〜270℃の範囲であれば、テルペン樹脂が好適に用いられる。成形温度が270℃〜320℃の範囲であれば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、環状ポリアリーレンサルファイド樹脂が好適に用いられる。具体的に、熱可塑性樹脂(C)がポリプロピレン樹脂である場合は、成分(D)はテルペン樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(C)がポリカーボネート樹脂やポリアリーレンサルファイド樹脂である場合は、成分(D)はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、環状ポリアリーレンサルファイド樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(C)がポリアミド樹脂である場合は、成分(D)はテルペンフェノール樹脂が好ましい。
成分(D)の200℃における溶融粘度は、0.01〜10Pa・sが好ましい。200℃における溶融粘度が0.01Pa・s以上であれば、成分(D)を起点とする破壊をより抑制し、成形品の衝撃特性をより向上させることができる。溶融粘度は、0.05Pa・s以上がより好ましく、0.1Pa・s以上がさらに好ましい。一方、200℃における溶融粘度が10Pa・s以下であれば、成分(D)を炭素繊維(A)および有機繊維(B)の内部まで含浸させやすい。このため、本発明の成形材料を成形する際、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。溶融粘度は、5Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以下がより好ましい。ここで、熱可塑性樹脂(C)および成分(D)の200℃における溶融粘度は、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により測定することができる。
なお、後述のとおり、本発明の成形材料を製造するにあたっては、炭素繊維(A)および有機繊維(B)に成分(D)を付着させて一旦複合繊維束(E)を得ることが好ましいが、成分(D)を供給する際の溶融温度(溶融バス内の温度)は100〜300℃が好ましい。そこで、成分(D)の炭素繊維(A)および有機繊維(B)への含浸性の指標として、成分(D)の200℃における溶融粘度に着目した。200℃における溶融粘度が上記の好ましい範囲であれば、かかる好ましい溶融温度範囲において、炭素繊維(A)および有機繊維(B)への含浸性に優れるため、成形品における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させ、成形品の力学特性、特に衝撃特性をより向上させることができる。
成分(D)の数平均分子量は、200〜50,000が好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の力学特性、特に衝撃特性をより向上させることができる。数平均分子量は1,000以上がより好ましい。また、数平均分子量が50,000以下であれば、成分(D)の粘度が適度に低いことから、成形品中に含まれる炭素繊維(A)および有機繊維(B)への含浸性に優れ、成形品中における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。数平均分子量は3,000以下がより好ましい。なお、かかる化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
成分(D)は、成形温度における10℃/分昇温(空気中)における加熱減量が5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは3重量%以下である。かかる加熱減量が5重量%以下の場合、炭素繊維(A)および有機繊維(B)へ含浸した際に分解ガスの発生を抑制することができ、成形した際にボイドの発生を抑制することができる。また、特に高温における成形において、ガスの発生を抑制することができる。
なお、本発明における加熱減量とは、加熱前の成分(D)の重量を100%とし、前記加熱条件における加熱前後での成分(D)の重量減量率を表し、下記式により求めることができる。加熱前後の重量は、白金サンプルパンを用いて、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件にて、成形温度における重量を熱重量分析(TGA)により測定することにより求めることができる。
加熱減量[重量%]={(加熱前重量−加熱後重量)/加熱前重量}×100。
加熱減量[重量%]={(加熱前重量−加熱後重量)/加熱前重量}×100。
また、成分(D)の200℃における2時間加熱後の溶融粘度変化率は、2%以下であることが好ましい。溶融粘度変化率を2%以下にすることで、長時間にわたり複合繊維束(E)を製造する場合においても、付着ムラなどを抑制し、複合繊維束(E)を安定して製造することができる。溶融粘度変化率は、1.5%以下がより好ましく、1.3%以下がさらに好ましい。
ここで、成分(D)の溶融粘度変化率は、次の方法により求めることができる。まず、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定する。また、成分(D)を200℃の熱風乾燥機に2時間静置した後、同様に200℃における溶融粘度を測定し、下記式により粘度変化率を算出する。
溶融粘度変化率[%]={|(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度−200℃にて2時間加熱後の200℃における溶融粘度)|/(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度)}×100。
溶融粘度変化率[%]={|(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度−200℃にて2時間加熱後の200℃における溶融粘度)|/(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度)}×100。
本発明において、成分(D)として好ましく用いられるエポキシ樹脂とは、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、実質的に硬化剤が含まれておらず、加熱しても、いわゆる三次元架橋による硬化をしないものをいう。エポキシ樹脂は、エポキシ基を有することにより、炭素繊維(A)および有機繊維(B)と相互作用しやすくなる。そのため含浸時に複合繊維束(E)を構成する炭素繊維(A)および有機繊維(B)と馴染みやすく、また、成形加工時の炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性がより向上する。
ここで、成分(D)として好ましく用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
中でも、粘度と耐熱性のバランスに優れるため、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
また、成分(D)として用いられるエポキシ樹脂の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が200以上であれば、成形品の力学特性をより向上させることができる。800以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。一方、エポキシ樹脂の数平均分子量が5000以下であれば、複合繊維束(E)を構成する炭素繊維(A)および有機繊維(B)への含浸性に優れ、成形品における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。数平均分子量は、4000以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。なお、エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
また、テルペン樹脂としては、例えば、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体を、必要に応じて芳香族単量体等と重合して得られる重合体または共重合体などが挙げられる。
特に、テルペン単量体としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネンが熱可塑性樹脂(C)との相溶性に優れるため好ましく、さらに、これらのテルペン単量体の単独重合体がより好ましい。
また、これらテルペン樹脂を水素添加処理して得られる水素化テルペン樹脂や、テルペン単量体とフェノール類を、触媒存在下で反応させて得られるテルペンフェノール樹脂を用いることもできる。ここで、フェノール類としては、フェノールのベンゼン環上に、アルキル基、ハロゲン原子および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられる。これらの中でも、フェノールおよびクレゾールが好ましい。これらの中でも、水素化テルペン樹脂が、熱可塑性樹脂(C)、特にポリプロピレン樹脂との相溶性により優れるため好ましい。
また、テルペン樹脂のガラス転移温度は、特に限定しないが、30〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以上であると、成形加工時に成分(D)の取扱性に優れる。また、ガラス転移温度が100℃以下であると、成形加工時の成分(D)の流動性を適度に抑制し、成形性を向上させることができる。
また、テルペン樹脂の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の力学特性、特に衝撃特性をより向上させることができる。また、数平均分子量が5000以下であれば、テルペン樹脂の粘度が適度に低いことから炭素繊維(A)および有機繊維(B)への含浸性に優れ、成形品中における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性をより向上させることができる。なお、テルペン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本発明の成形材料における成分(D)の含有量は、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、1〜20重量部が好ましい。成分(D)の含有量が1重量部未満の場合、成形品製造時における炭素繊維(A)および有機繊維(B)の流動性が低下し、分散性が低下する。成分(D)の含有量は、2重量部以上が好ましく、4重量部以上が好ましい。一方、成分(D)の含有量が20重量部を超える場合、成形品の曲げ強度、引張強度および衝撃特性が低下する。15重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
本発明の成形材料としては、具体的な形状として図1〜図4に示すような断面を有する柱状体を例示できる。かかる柱状体においては、炭素繊維(A)、有機繊維(B)が、柱状体の軸心方向にほぼ平行に整列されており、かつ炭素繊維(A)、有機繊維(B)の長さと成形材料の長さとが実質的に同じであることが好ましい。繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることにより、それを用いて製造する成形品における炭素繊維(A)と有機繊維(B)の繊維長を、制御しやすく、また、比較的長くすることができるため、より優れた力学特性の成形品を得ることができる。なお、「ほぼ平行に配列されて」いるとは、炭素繊維(A)および有機繊維(B)を含む繊維束の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を示し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。成形材料の長さとは、成形材料中の繊維束配向方向の長さであり、上記したような柱状体の場合はその柱状体の長軸方向の長さである。また、「実質的に同じ長さ」とは、成形材料内部で繊維束が意図的に切断されていたり、成形材料全長よりも有意に短い繊維束が実質的に含まれたりしないことである。特に、成形材料全長よりも短い繊維束の量について限定するわけではないが、成形材料全長の50%以下の長さの繊維束の含有量が、全繊維束中30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。より好ましくは成形材料全長の85%以上の長さの繊維束の含有量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
成形材料は、ほぼ同一の断面形状を長手方向に一定長連続して有していることが好ましい。成形材料の長さは、2mm〜10mmの範囲である。2mm未満の場合は繊維の補強効果が乏しい。言い換えると、2mm未満の成形材料を用いて成形する場合、得られる成形品における有機繊維の重量平均繊維長を十分に長くすることができないため、衝撃特性に劣る。成形材料は3mm以上であることが好ましく、5mm以上がより好ましく、7mm以上がさらに好ましい。一方、成形材料が10mmを超える場合は射出成形時の成形性が低下する。言い換えると、成形材料の長さが10mmを超える場合は、成形材料が長いために、射出成形機内に成形材料が噛みこまない。そのため成形性が低下する。成形材料は9mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましい。
また、上記したような構成の本発明の成形材料は、背圧力3MPa、射出速度30mm/sの条件下で成形品を射出成形したとき、該成形品における有機繊維(B)の重量平均繊維長Lwbが、出発物質である成形材料長さの60%以上となりやすい。Lwbが成形材料長さの60%以上である場合、成形品内における有機繊維(B)における繊維補強効果が発揮されやすく、成形品の衝撃特性が向上する。Lwbが70%以上であることがより好ましい。なお、後述する実施例においては、ISO型ダンベル試験片におけるLwbを測定するが、成形品はこれに限るものではない前記成形品における有機繊維(B)のLwbの測定方法は、成形品中における有機繊維のLwbの測定方法と同一である。
本発明の成形材料は、熱可塑性樹脂(C)内に、連続繊維束である炭素繊維(A)および有機繊維(B)を含む繊維束を有することが好ましい。言い換えると、繊維束の外側に熱可塑性樹脂(C)を配した構成を有することが好ましい。熱可塑性樹脂(C)には、成分(D)が含まれていてもよく、また前記繊維束の各単繊維間に成分(D)を満たした複合繊維束(E)を構成し、その外側に熱可塑性樹脂(C)を配してもよい。複合繊維束(E)は、繊維束に成分(D)を含浸させてなり、成分(D)の海に、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が島のように分散している状態である。
本発明の成形材料は、前記繊維束または複合繊維束(E)が、前記熱可塑性樹脂(C)によって被覆された、芯鞘構造を有することが好ましい。鞘構造となる、熱可塑性樹脂(C)は必要により更に他の成分を含有して熱可塑性樹脂組成物としてもよい。ここで、「被覆された構造」とは、前記熱可塑性樹脂(C)を含有する組成物(以下、組成物の場合も単に「熱可塑性樹脂(C)」と称する場合がある)が、繊維束または複合繊維束(E)の表面に配置されて接着している構造を指す。
本発明の成形材料に含まれる成分(D)は低分子量である場合が多く、常温においては通常比較的脆く破砕しやすい固体であったり、液体であることが多い。複合繊維束(E)の外側に、熱可塑性樹脂(C)を含む構成とすることにより、高分子量の熱可塑性樹脂(C)が複合繊維束(E)を保護し、成形材料の運搬や取り扱い時の衝撃、擦過などによる成分(D)の破砕、飛散などを抑制し、成形材料の形状を保持することができる。本発明の成形材料は、取り扱い性の観点から、成形に供されるまで前述の形状を保持することが好ましい。
複合繊維束(E)と熱可塑性樹脂(C)は、境界付近で部分的に熱可塑性樹脂(C)が複合繊維束(E)の一部に入り込み、相溶しているような状態であってもよいし、複合繊維束(E)に熱可塑性樹脂(C)が含浸しているような状態になっていてもよい。
本発明の成形材料は、繊維束断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在することが好ましい。ここで、繊維束断面とは、繊維束の繊維長手方向に対して垂直な断面を指す。繊維束断面において、炭素繊維(A)と有機繊維(B)が偏在することにより、成形時の炭素繊維(A)および有機繊維(B)の絡み合いを抑制し、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が均一に分散した成形品を得ることができる。このため、成形品の衝撃特性をより向上させることができる。ここで、本発明において「偏在」とは、繊維束断面において、炭素繊維(A)と有機繊維(B)がそれぞれ全ての領域において均等に存在するのではなく、部分的に偏って存在することを言う。例えば、図1に示すような、繊維束断面において、炭素繊維(A)1が有機繊維(B)2を内包している形態や、図2に示すような、有機繊維(B)2が炭素繊維(A)1を内包している形態などのいわゆる芯鞘型構造や、図3に示すような、繊維束断面において、炭素繊維(A)1の束と有機繊維(B)2の束がある境界部によって分けられた状態でそれぞれ存在している構造などが、本発明における「偏在」の態様として挙げられる。なお、本発明において「内包」とは、炭素繊維(A)を芯部、有機繊維(B)を鞘部に配する態様や、有機繊維(B)を芯部、炭素繊維(A)を鞘部に配する態様などを指す。図3に示す態様の場合、繊維束断面において炭素繊維(A)と有機繊維(B)のそれぞれ少なくとも一部が外層の熱可塑性樹脂(C)3に接している。このとき、炭素繊維(A)または有機繊維(B)が熱可塑性樹脂(C)3に接している態様には、図4に示すように、炭素繊維(A)または有機繊維(B)が成分(D)を介して熱可塑性樹脂(C)3に接している態様も含むものとする。
なお、本発明において、繊維束中において炭素繊維(A)、有機繊維(B)が偏在していることを確認する方法としては、例えば、成形材料の繊維長手方向に対して垂直な断面を倍率300倍に設定した光学顕微鏡にて観察し、得られた顕微鏡像の画像処理を行い解析する手法が挙げられる。
繊維束の断面において炭素繊維(A)、有機繊維(B)を偏在させる方法としては、炭素繊維(A)の束と有機繊維(B)の束とを引き揃えて上記成形材料を作製する方法が挙げられる。それぞれの束同士を引き揃えて成形材料を作製することで、炭素繊維(A)と有機繊維(B)とが独立した繊維束として存在することになり、偏在させることができる。使用する炭素繊維(A)の束と有機繊維(B)の束の単繊維数を多くすると束を大きくでき、単繊維数を少なくすると束を小さくでき、束の大きさを変えて偏在させることが可能である。
炭素繊維(A)としては、特に制限はないが、炭素繊維の本数が100〜350,000本の繊維束を用いることが好ましく、生産性の観点から、20,000〜100,000本の繊維束を用いることがより好ましい。一方、有機繊維(B)としてポリエステル繊維、または液晶ポリエステル繊維を使用する場合、特に制限はないが、1〜2,000本の繊維束を用いることが好ましく、生産性および成形品内での繊維同士の絡まり合いを抑制できる観点から、10〜1,000本の繊維束を用いることがより好ましく、さらには、30〜700本の繊維束を用いることが好ましい。
上記成形材料を用いて成形することにより、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性に優れ、曲げ強度、衝撃特性、外観品位、静音性に優れる成形品を得ることができる。
続いて、上記成形材料の製造方法について説明する。本発明の成形材料は、例えば、次の方法により得ることができる。
まず、炭素繊維(A)のロービングおよび有機繊維(B)のロービングを繊維長手方向に対して並列に合糸し、炭素繊維(A)と有機繊維(B)を有する繊維束を作製する。次いで、溶融させた成分(D)を該繊維束に含浸させて複合繊維束(E)を作製する。さらに、溶融した熱可塑性樹脂(C)を含む組成物で満たした含浸ダイに複合繊維束(E)を導き、熱可塑性樹脂(C)を複合繊維束(E)の外側に被覆させ、ノズルを通して引き抜く。冷却固化後に所定の長さにペレタイズして、成形材料を得る方法が挙げられる(形態I)。熱可塑性樹脂(C)は、少なくとも複合繊維束(E)の外側に配されていれば、繊維束中に含浸されていてもよい。
前記方法により作製した、複合繊維束(E)を熱可塑性樹脂(C)で被覆した成形材料と、熱可塑性樹脂(C)を含むペレット(炭素繊維(A)や有機繊維(B)を含まない)とをペレットブレンドして、成形材料混合物を得てもよい。これにより、成形品中における炭素繊維(A)、有機繊維(B)の含有量を容易に調整することができる。なお、ペレットブレンドとは、溶融混練とは異なり、複数の材料を樹脂成分が溶融しない温度で撹拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを指し、主に射出成形や押出成形など、ペレット形状の成形材料を用いる場合に好ましく用いられる。
また、本発明は、炭素繊維(A)を熱可塑性樹脂(C)で被覆したペレットと、有機繊維(B)を先のペレットと同一または別の熱可塑性樹脂(C)で被覆したペレットとを、ペレットブレンドすることにより得られる成形材料も包含する。この態様において、成分(D)は少なくとも炭素繊維(A)に含浸させることがより好ましい。具体的には、例えば、少なくとも炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)、および成分(D)を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)(「炭素繊維強化成形材料(X)」という場合がある)と、少なくとも有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(F)、および、成分(G)を含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)(「有機繊維強化成形材料(Y)」という場合がある)とに分けて準備し、これらをペレットブレンドすることが好ましい。
炭素繊維強化成形材料(X)は、炭素繊維(A)に成分(D)を含浸させてなる複合繊維束(H)を含み、複合繊維束(H)の外側に熱可塑性樹脂(C)を含む構成を有することが好ましい。炭素繊維(A)は、炭素繊維強化成形材料(X)の軸心方向にほぼ平行に配列されていることが好ましく、また、炭素繊維強化成形材料(X)の長さが2〜10mmであることが好ましい。同時に炭素繊維(A)の長さと炭素繊維強化成形材料(X)の長さが実質的に同じであることが好ましい。
有機繊維強化成形材料(Y)は、有機繊維(B)に成分(G)を含浸させてなる複合繊維束(I)を含み、複合繊維束(I)の外側に熱可塑性樹脂(F)を含む構成を有することが好ましい。なお、成分(G)には、先に説明した成分(D)において例示した化合物を用いることもでき、その場合、成分(D)と成分(G)は同一の化合物であっても、異なる化合物であってもよい。熱可塑性樹脂(F)は、先に説明した熱可塑性樹脂(C)において例示した樹脂を用いることができ、熱可塑性樹脂(C)と熱可塑性樹脂(F)は同一の化合物であっても、異なる化合物であってもよい。
有機繊維(B)は、有機繊維強化成形材料(Y)の軸心方向にほぼ平行に配列されていることが好ましく、また、有機繊維強化成形材料(Y)の長さが2〜10mmであることが好ましい。同時に有機繊維(B)の長さと有機繊維強化成形材料(Y)の長さが実質的に同じであることが好ましい。
ここで、「ほぼ平行に配列されて」いるとは、炭素繊維強化成形材料(X)および有機繊維強化成形材料(Y)それぞれにおいて、繊維束の長軸の軸線と、それらを含む成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態をいい、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下であることをいう。また、「実質的に同じ長さ」とは、炭素繊維強化成形材料(X)および有機繊維強化成形材料(Y)それぞれにおいて、その成形材料の全長の50%以下の長さの繊維束の含有量が、全繊維束中30質量%以下であることをいい、20質量%以下であることがより好ましい。より好ましくは全長の85%以上の長さの繊維束の含有量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
炭素繊維強化成形材料(X)は、炭素繊維(A)、熱可塑性樹脂(C)、および、成分(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)を5〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10〜94重量部、成分(D)を1〜20重量部含むことが好ましい。有機繊維強化成形材料(Y)は、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(F)および成分(G)の合計100重量部に対し、有機繊維(B)を1〜45重量部、熱可塑性樹脂(F)を10〜98重量部、成分(G)を1〜20重量部含むことが好ましい。
そして、炭素繊維強化成形材料(X)と有機繊維強化成形材料(Y)の合計100重量部に対して、炭素繊維強化成形材料(X)を50〜80重量部、有機繊維強化成形材料(Y)を20〜50重量部配合することが好ましい。さらに、炭素繊維強化成形材料(X)と有機繊維強化成形材料(Y)をペレットブレンド(混合物)とする場合は、混合物全体として、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)、ならびに、成分(D)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)が5〜45重量部、有機繊維(B)が1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)を10〜93重量部、ならびに、成分(D)を1〜20重量部となるように調製することが好ましい。なお、かかる比率を算出するにあたっては、熱可塑性樹脂(F)として用いる熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂(C)として参入し、成分(G)として成分(D)に該当するものを用いる場合はその成分(G)を成分(D)として算入する。
次に本発明の成形品の製造方法について説明する。
前述の本発明の成形材料を用いて成形することにより、炭素繊維(A)および有機繊維(B)の分散性に優れ、曲げ強度、衝撃特性および外観品位(黒色)に優れる成形品を得ることができる。成形方法としては、金型を用いた成形方法が好ましく、射出成形、押出成形、プレス成形など、種々の成形方法を用いることができる。特に射出成形機を用いた成形方法により、連続的に安定した成形品を得ることができる。射出成形の条件としては、特に規定はないが、例えば、射出時間は0.5秒〜10秒が好ましく、より好ましくは2秒〜10秒である。背圧は0.1MPa以上が好ましく、より好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは2MPa以上、最も好ましくは3MPa以上である。また上限は、50MPa以下が好ましく、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下、最も好ましくは10MPa以下である。射出速度は1mm/s〜200mm/sが好ましく、より好ましくは10mm/s〜150mm/s、さらに好ましくは20mm/s〜100mm/sである。スクリュー回転数は10rpm〜200rpmが好ましく、より好ましくは30rpm〜150rpm、さらに好ましくは50rpm〜100rpmである。保圧力は、1MPa〜50MPaが好ましく、より好ましくは1MPa〜30MPaである。保圧時間は1秒〜20秒が好ましく、より好ましくは5秒〜20秒である。シリンダー温度は200℃〜320℃、金型温度は20℃〜100℃の条件が好ましい。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。これらの条件、特に射出時間、背圧および金型温度を適宜選択することにより、成形品中の炭素繊維などの炭素繊維および有機繊維の繊維長を容易に調整することができる。
以上のようにして得られる本発明の成形品は、力学特性、特に曲げ強度や衝撃特性および外観品位に優れる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。まず、本実施例で用いる各種特性の評価方法について説明する。
(1)溶融粘度測定
各実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂(C)、成分(D)について、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定した。
各実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂(C)、成分(D)について、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定した。
(2)重量平均繊維長の測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片を、200〜300℃に設定したホットステージの上でガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして繊維を均一分散させた。炭素繊維(A)および有機繊維(B)が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察した。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(A)と、同様に無作為に選んだ1000本の有機繊維(B)について、それぞれ繊維長を計測して、下記式から重量平均繊維長を算出した。
平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの繊維の個数。
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片を、200〜300℃に設定したホットステージの上でガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして繊維を均一分散させた。炭素繊維(A)および有機繊維(B)が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察した。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(A)と、同様に無作為に選んだ1000本の有機繊維(B)について、それぞれ繊維長を計測して、下記式から重量平均繊維長を算出した。
平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの繊維の個数。
(3)繊維強度および初期弾性率測定
有機繊維(B)の繊維強度は、単糸引張試験により求めた。標準状態(20℃,65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の荷重を単繊維繊度で除すことで算出した。(ただし、チャック近傍で切断した場合はチャック切れとしてデータから除く)。また、その際に得られた応力−歪み曲線における初期勾配から繊維初期弾性率を算出した。
有機繊維(B)の繊維強度は、単糸引張試験により求めた。標準状態(20℃,65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の荷重を単繊維繊度で除すことで算出した。(ただし、チャック近傍で切断した場合はチャック切れとしてデータから除く)。また、その際に得られた応力−歪み曲線における初期勾配から繊維初期弾性率を算出した。
(4)繊維繊度測定
各実施例および比較例で用いる有機繊維(B)の単繊維繊度は、有機繊維(B)の単糸を用い、JIS L 1013:2010)により求めた。
各実施例および比較例で用いる有機繊維(B)の単繊維繊度は、有機繊維(B)の単糸を用い、JIS L 1013:2010)により求めた。
(5)繊維密度測定
各実施例および比較例で用いる有機繊維(B)の密度は、JIS L 1015:2010)により求めた。
各実施例および比較例で用いる有機繊維(B)の密度は、JIS L 1015:2010)により求めた。
(6)成形品の曲げ強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片について、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。測定は3回行い、その平均値を各実施例および比較例の曲げ強度として算出した。
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片について、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。測定は3回行い、その平均値を各実施例および比較例の曲げ強度として算出した。
(7)成形品のシャルピー衝撃強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1−4−01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した。測定は5回行い、その平均値を各実施例および比較例の衝撃強度(kJ/m2)として算出した。
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1−4−01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した。測定は5回行い、その平均値を各実施例および比較例の衝撃強度(kJ/m2)として算出した。
(8)成形品の繊維分散性評価
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、表裏それぞれの面に存在する未分散炭素繊維束(CF束)の個数を目視でカウントした。評価は50枚の成形品について行い、その合計個数について繊維分散性の判定を以下の基準で行い、AおよびBを合格とした。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上
C:未分散CF束が3個以上。
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、表裏それぞれの面に存在する未分散炭素繊維束(CF束)の個数を目視でカウントした。評価は50枚の成形品について行い、その合計個数について繊維分散性の判定を以下の基準で行い、AおよびBを合格とした。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上
C:未分散CF束が3個以上。
(9)有機繊維(B)および成形品の色調評価
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、分光色彩計(日本電飾工業株式会社性 SD7000)を使用し、成形品表面の外観におけるL*の測定を行った。測定は3回行い、その平均値を各実施例および比較例の評価に使用した。また、有機繊維(B)については、ストランド束の状態で測定器にセットし、有機繊維(B)表面における、L*a*b*の測定を行った。同様に3回の測定を行い、その平均値を各実施例および比較例の評価に使用した。
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、分光色彩計(日本電飾工業株式会社性 SD7000)を使用し、成形品表面の外観におけるL*の測定を行った。測定は3回行い、その平均値を各実施例および比較例の評価に使用した。また、有機繊維(B)については、ストランド束の状態で測定器にセットし、有機繊維(B)表面における、L*a*b*の測定を行った。同様に3回の測定を行い、その平均値を各実施例および比較例の評価に使用した。
(10)成形品の透過損失評価
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、各試験片をφ100の形状に加工した。得られた成形品を透過型音響室(Bruel&Kjaer社製 4206−T型+UA−1630)を使用し、50Hz〜6500Hzの周波数帯を測定域に設定し、測定を行った。測定は全周波数帯で行い、6000Hzにおける測定値を各実施例および比較例の透過損失として算出した。
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、各試験片をφ100の形状に加工した。得られた成形品を透過型音響室(Bruel&Kjaer社製 4206−T型+UA−1630)を使用し、50Hz〜6500Hzの周波数帯を測定域に設定し、測定を行った。測定は全周波数帯で行い、6000Hzにおける測定値を各実施例および比較例の透過損失として算出した。
(11)成形品内における有機繊維(B)の重量平均繊維長Lwbの割合得られた長繊維ペレットを、後述する実施例等の射出成形条件から成形時の背圧を3MPaに変更した条件で射出成形することにより、同様にISO型ダンベル試験片(タイプA1)を作製した。得られた試験片(成形品)に対して、(2)と同様に有機繊維(B)の重量平均繊維長Lwbを算出した。その後、各実施例で用いた長繊維ペレットを無作為に50個選び、各実施例で用いた成形品から算出したLwbとの長さの割合を次の式より算出した。
成形品中の有機繊維(B)の重量平均繊維長割合=(有機繊維(B)の重量平均繊維長Lwb)/(長繊維ペレットのペレット長)×100。
成形品中の有機繊維(B)の重量平均繊維長割合=(有機繊維(B)の重量平均繊維長Lwb)/(長繊維ペレットのペレット長)×100。
<炭素繊維(A)の作製>
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
<有機繊維(B)>
(B−1)
白色ポリエステル繊維(東レ(株)製、“テトロン(登録商標)”1670T−108−705C、強度:7.8cN/dtex、融点:260℃、エネルギー伝播速度:3.2km/s)を用いた。
(B−2)
ポリフェニレンサルファイド繊維(東レ(株)製、“トルコン(登録商標)”440T−100−190、強度:4.5cN/dex、融点:260℃、エネルギー伝播速度:2.2km/s)を用いた。
(B−3)
PAN系耐炎化繊維(東邦テナックス(株)製、「“パイロメックス”(登録商標)CPX−1.6d」、強度:2.0cN/dtex、融点:なし(不溶)、エネルギー伝播速度:1.8km/s)を用いた。
(B−4)
ポリアミド繊維(東レ(株)製、“アミラン(登録商標)”1870T−192−720、強度:6.5cN/dtex、融点:215℃、エネルギー伝播速度:1.8km/s)を用いた。
(B−1)
白色ポリエステル繊維(東レ(株)製、“テトロン(登録商標)”1670T−108−705C、強度:7.8cN/dtex、融点:260℃、エネルギー伝播速度:3.2km/s)を用いた。
(B−2)
ポリフェニレンサルファイド繊維(東レ(株)製、“トルコン(登録商標)”440T−100−190、強度:4.5cN/dex、融点:260℃、エネルギー伝播速度:2.2km/s)を用いた。
(B−3)
PAN系耐炎化繊維(東邦テナックス(株)製、「“パイロメックス”(登録商標)CPX−1.6d」、強度:2.0cN/dtex、融点:なし(不溶)、エネルギー伝播速度:1.8km/s)を用いた。
(B−4)
ポリアミド繊維(東レ(株)製、“アミラン(登録商標)”1870T−192−720、強度:6.5cN/dtex、融点:215℃、エネルギー伝播速度:1.8km/s)を用いた。
<熱可塑性樹脂(C)>
(C−1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137G)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、50Pa・sであった。
(C−1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137G)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、50Pa・sであった。
<成分(D)>
(D−1)
固体の水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製“クリアロン”(登録商標)P125、軟化点125℃)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであり、また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.2%であった。
(D−1)
固体の水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製“クリアロン”(登録商標)P125、軟化点125℃)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであり、また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.2%であった。
(J−1)
酸化チタン(石原産業(株)製、「“CR−63”)を用いた。
酸化チタン(石原産業(株)製、「“CR−63”)を用いた。
(実施例1)
(株)日本製鋼所製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を220℃に設定し、上記に示した熱可塑性樹脂(C−1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。200℃にて加熱溶融させた成分(D−1)を、(A)〜(C)の合計100重量部に対し8.7重量部((A)〜(D)の合計100重量部に対し8.0重量部)となるように吐出量を調整し、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)からなる繊維束に付与して複合繊維束(E)とした後、該複合繊維束(E)を、溶融した熱可塑性樹脂(C−1)を含む組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)の周囲が熱可塑性樹脂(C−1)を含む組成物で連続的に被覆されるようにした。この時の複合繊維束(E)の内部断面は、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)が偏在していた。偏在状態は、図3に示すように、炭素繊維(A)、有機繊維(B−1)のそれぞれ少なくとも一部が、熱可塑性樹脂(C−1)を含む組成物に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)〜(C)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が20重量部、有機繊維(B−1)が5重量部となるように、引取速度を調整した。得られた長繊維ペレットの炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)の長さと、ペレット長さは実質的に同じであった。
(株)日本製鋼所製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を220℃に設定し、上記に示した熱可塑性樹脂(C−1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。200℃にて加熱溶融させた成分(D−1)を、(A)〜(C)の合計100重量部に対し8.7重量部((A)〜(D)の合計100重量部に対し8.0重量部)となるように吐出量を調整し、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)からなる繊維束に付与して複合繊維束(E)とした後、該複合繊維束(E)を、溶融した熱可塑性樹脂(C−1)を含む組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)の周囲が熱可塑性樹脂(C−1)を含む組成物で連続的に被覆されるようにした。この時の複合繊維束(E)の内部断面は、炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)が偏在していた。偏在状態は、図3に示すように、炭素繊維(A)、有機繊維(B−1)のそれぞれ少なくとも一部が、熱可塑性樹脂(C−1)を含む組成物に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)〜(C)の合計100重量部に対し、炭素繊維(A)が20重量部、有機繊維(B−1)が5重量部となるように、引取速度を調整した。得られた長繊維ペレットの炭素繊維(A)および有機繊維(B−1)の長さと、ペレット長さは実質的に同じであった。
こうして得られた長繊維ペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、射出時間:2秒、背圧5MPa、保圧力:20MPa、保圧時間:10秒、射出速度30mm/s、スクリュー回転数80rpm、シリンダー温度:230℃、金型温度:60℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片(タイプA1)および80mm×80mm×3mmの試験片を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置後に特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例2〜4)
組成比または用いる繊維種を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
組成比または用いる繊維種を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(比較例1〜4)
組成を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
組成を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
実施例1〜6いずれの材料も、炭素繊維(A)、有機繊維(B)および成分(D)が成形品内に存在しており、高い曲げ強度や衝撃特性および優れた透過損失を示し、有機繊維(B)の色調が規定されているため、成形品のL*が高く、黒色を抑制できる結果であった。一方、PAN系耐炎化糸を用いた比較例1では、有機繊維(B)のL*が低く、繊維強度が低いため、衝撃特性が低い結果となった。ため、成形品の外観品位に劣る結果となった。また、比較例2では、有機繊維(B)を含まなかったため、繊維補強効果が弱く、衝撃特性が低く、透過損失が低い結果となった。比較例3では、酸化チタンのみを含むため、成形品が脆くなり、衝撃特性および透過損失が低い結果となった。比較例4では、有機繊維(B)のエネルギー伝播速度が低いため、透過損失が低い結果となった。
1 炭素繊維(A)
2 有機繊維(B)
3 熱可塑性樹脂(C)
4 200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)
2 有機繊維(B)
3 熱可塑性樹脂(C)
4 200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)
Claims (6)
- 炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、炭素繊維(A)、有機繊維(B)、および熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜94重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、繊維強化熱可塑性樹脂成形品における炭素繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa)が、0.3mm以上1.5mm以下であり、かつ、有機繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が、2mm以上10mm以下である、繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
- 前記有機繊維(B)がポリエステル繊維またはポリフェニレンサルファイド繊維より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
- 熱可塑性樹脂(C)が、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
- 炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)、および200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(C)より低い成分(D)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、
炭素繊維(A)、有機繊維(B)、熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対して、炭素繊維(A)5〜45重量部、有機繊維(B)1〜45重量部、熱可塑性樹脂(C)10〜93重量部、および成分(D)1〜20重量部を含み、有機繊維(B)のCIELab色空間において、L*が70より大きく、繊維強度が4cN/detx以上であり、且つ式(1)で示す、エネルギー伝播速度が2.0km/s以上であり、炭素繊維(A)および有機繊維(B)が、軸心方向にほぼ平行に配列されており、かつ炭素繊維(A)および有機繊維(B)の長さが、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長さと実質的に同じであり、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の長手方向の長さが2〜10mmである、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
- 前記有機繊維(B)がポリエステル繊維またはポリフェニレンサルファイド繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
- 熱可塑性樹脂(C)が、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4または5のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。
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