以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る吊りシステム1S(作業機械用吊りシステム)の吊り装置1を用いてクレーン100(作業機械)のブーム105(起伏体)が組み立てられる様子を示す側面図である。図2は、本実施形態に係る吊り装置1の斜視図である。ここでは、被吊り上げ体として、クレーン100のブーム105のブーム部材が吊り上げられる態様で説明する。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係る吊り装置1(吊りシステム1S)の構造を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係る作業機械用吊りシステムの構造や使用態様などを限定するものではない。また、各図における「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向は、クレーン100の運転席から見た各方向に相当するように示している。
本実施形態に係る吊りシステム1Sは、吊り装置1(図2、図6)と、端末装置50(図7)と、RFタグ60(図8)と、を有している。図1に示すように、吊り装置1は、不図示の補助クレーンの補助クレーンフック110に接続され、クレーン100を構成するブーム105の各ブーム部材(構成部材)を地面から吊り上げる吊り上げ作業を行うために使用される。
図1を参照して、クレーン100は、下部走行体101と、下部走行体101上に旋回可能に支持された上部旋回体102と、ブーム105と、を備える。ブーム105は、上部旋回体102に起伏可能に支持される。ブーム105は、下部ブーム105Aと、中間ブーム105Bと、中間ブーム105Cと、不図示の上部ブームと、を有する(いずれもブーム部材)。
図1に示すように、下部ブーム105Aは、その基端部から先端部に向かって上下方向の高さが拡がった形状を有している。一方、図1において、中間ブーム105B、105Cは、その基端部から先端部に向かって左右方向および上下方向の形状はほぼ同じであることが多いが、中には左右方向における形状が異なるものもある。このように、各ブーム部材は、互いの形状(特に平面視、側面視における形状)が異なる。このため、従来の吊り装置でブーム部材を吊り上げる場合、各ブーム部材の形状に応じてフックの取付位置を調整する必要があった。
なお、ブーム105を構成する各ブーム部材が地上で互いに連結されることで、ブーム105が組み立てられる。図1では、下部走行体101に装着された下部ブーム105Aに中間ブーム105Bが連結され、更に、中間ブーム105Bに中間ブーム105Cが連結される様子を示している。
この場合、補助クレーンフック110に接続された吊り装置1が中間ブーム105Cに接続され、中間ブーム105Cを地面から吊り上げる。そして、中間ブーム105Cを中間ブーム105Bに連結するにあたって、まず、中間ブーム105Cの上側に配置されたコネクタ105C1と、中間ブーム105Bの上側に配置されたコネクタ105B1とを連結するために、図1に示すように中間ブーム105Cが傾斜した姿勢とされる必要がある。
本実施形態では、上記のように、ブーム105を構成する各ブーム部材の形状および寸法や吊り上げ姿勢に応じて、吊り装置1のフックを適切な位置に配置することが可能な吊りシステム1Sが提供される。
図2に示すように、吊り装置1は、ベース部10と、駆動ユニット10Sと、4つの把持部20と、把持部移動部30(保持部移動機構)と、を有する。吊り装置1は、ワイヤ吊り部1Aおよび4本の吊りワイヤ1Bを介して、補助クレーンの補助クレーンフック110(図1)に接続される。
ワイヤ吊り部1Aは、補助クレーンの補助クレーンフック110(図1)に接続され、前記補助クレーンによって吊り上げられる。
ベース部10は、ワイヤ吊り部1Aの下方において水平方向に沿って延びており、本実施形態では、薄い直方体形状を有している。一例として、吊り装置1によってブーム105の各部材を吊り上げる際には、ベース部10の一辺が前後方向に沿って延びるとともに、ベース部10のうち前記一辺と直交する他辺が左右方向に沿って延びるように、ベース部10が配置される。ベース部10は、ワイヤ吊り部1Aおよび吊りワイヤ1Bを介して、補助クレーンによって吊り上げられる。なお、ベース部10の形状は上記に限定されるものではない。
4本の吊りワイヤ1Bは、ワイヤ吊り部1Aが前記補助クレーン(補助クレーンフック110)によって吊り上げられた状態で前記ベース部10が水平な姿勢を維持するようにワイヤ吊り部1Aとベース部10とを互いに接続する。各吊りワイヤ1Bの上端部はワイヤ吊り部1Aに接続され、各吊りワイヤ1Bの下端は、ベース部10の上面部の4つの角部(被吊り部)にそれぞれ固定される。なお、吊りワイヤ1Bの本数は4本に限定されるものではない。
駆動ユニット10Sは、ベース部10上に配置されている。駆動ユニット10Sには、不図示の油圧源や後記のコントロールバルブ43などが収容されている。
本実施形態では、図2に示すように、4つの把持部20は、ベース部10の下方においてそれぞれ垂下されるように、ベース部10に接続されている。なお、後記のとおり、4つの把持部20は、ベース部10に対して相対移動可能とされる。4つの把持部20は、平面視において左右方向(水平な第1方向)および前後方向(前記第1方向と直交する水平な第2方向)にそれぞれ延びる所定の仮想矩形形状の4つの角部に相当する基準位置から下方に垂下されるように把持部移動部30を介して前記ベース部10にそれぞれ接続されている。この場合、4つの把持部20は、左右方向に互いに間隔をおいて配置される第1右保持部および第1左保持部(図2の前側の2つの把持部20)と、前記第1右保持部および前記第1左保持部に対して前後方向に間隔をおいた位置で左右方向において互いに間隔をおいて配置される第2右保持部および第2左保持部(図2の後側の2つの把持部20)とを含む。
4つの把持部20は、それぞれ、フック21(保持部)と、油圧シリンダ22と、を含む。
フック21は、油圧シリンダ22に接続され、ブーム105の各ブーム部材のフレーム部分に係合する。油圧シリンダ22は、シリンダ本体221と、シリンダロッド222と、を有する。油圧シリンダ22は、不図示の油圧源から供給され後記のコントロールバルブ43によってその流量が調整された作動油の供給を受けるとともに作動油を排出することで伸縮する。4つの把持部20の油圧シリンダ22の伸縮動作は、後記の駆動制御部423によって独立して制御される。この結果、図2の4つのフック21が空中でベース部10に対して上下方向に相対移動可能となる。なお、図2に示すように、各油圧シリンダ22は、その上端部に配置された回転中心軸J回りに回動されることで、保管時にベース部10の下方に収容可能とされている。
把持部移動部30は、左右一対のレール310と、4つの移動ユニット311と、前後一対のサブレール312と、4つのサブ移動ユニット313と、を備える。図3は、本実施形態に係る吊り装置1の移動ユニット311(サブ移動ユニット313)の側面図である。図4は、吊り装置1の移動ユニット311(サブ移動ユニット313)の正面図である。
左右一対のレール310は、ベース部10の下面部に左右方向に間隔をおいてそれぞれ固定されている。左右一対のレール310は、それぞれ前後方向に沿って延びている。各レール310は、断面視でI字形状を有している(図3参照)。
4つの移動ユニット311は、それぞれ左右一対のレール310に沿って前後方向に移動可能とされている。
左右一対のサブレール312は、4つの移動ユニット311の下面部に接続されている。具体的に、図2の後側に位置するサブレール312は、4つの移動ユニット311のうちの後側の2つの移動ユニット311の下面部に接続されている。同様に、図2の前側に位置するサブレール312は、4つの移動ユニット311のうちの前側の2つの移動ユニット311の下面部に接続されている。この結果、前後一対のサブレール312がそれぞれ2つの把持部20を保持した状態で、前後に移動可能とされる。
左右一対のサブレール312は、前後方向に間隔をおいてそれぞれ左右方向に沿って延びている。各サブレール312も、断面視でI字形状を有している(図3参照)。
4つのサブ移動ユニット313は、それぞれ、左右一対のサブレール312に沿って左右方向に移動可能とされている。4つのサブ移動ユニット313は、ユニット本体319と、4つの車輪320と、第1モーター321と、をそれぞれ備えている(図3、図4)。
ユニット本体319は、断面視でU字状の部材であり、ユニット本体319の下面部には把持部20の油圧シリンダ22(図2のシリンダ本体221)が固定されている。4つの車輪320は、ユニット本体319の一対側壁の内面部にそれぞれ回転可能に支持されている。第1モーター321は、後記のように所定の指令信号を受けて4つの車輪320のうちの一の車輪320を回転駆動させる。なお、第1モーター321は、他の車輪320にも接続されこれらの車輪を駆動させるものでもよい。第1モーター321への駆動指令信号は、後記の駆動制御部423(図6)から入力される。図3、図4に示すように、4つの車輪320がサブレール312に係合することで、サブ移動ユニット313がサブレール312に沿って移動可能とされる。この結果、4つの把持部20が左右方向に沿って互いに独立してベース部10に対して相対移動することができる。なお、第1モーター321がブレーキ信号を受けると第1モーター321内の回転ギアに不図示の係合突起が係合することで、車輪320の回転がロックされ、把持部20が左右方向の所定の位置に保持される。
なお、図2の移動ユニット311も上記のサブ移動ユニット313と同様の構造を有している。このため、図3、図4では、移動ユニット311に対応する部材の符号をカッコ内に指名している。すなわち、移動ユニット311も、ユニット本体319と、4つの車輪320と、第2モーター322と、を有している。また、移動ユニット311のユニット本体319の下面部には、図3の把持部20に代えて、図2のサブレール312が固定されている。4つの車輪320がレール310に係合することで、移動ユニット311がレール310に沿って移動可能とされる。この結果、4つの把持部20のうち左右2つの把持部20が一体でそれぞれベース部10に対して前後方向に沿って相対移動することができる。なお、第2モーター322内の回転ギアに不図示の係合突起が係合することで、車輪320の回転がロックされ、2つの把持部20が前後方向の所定の位置に保持される。
図5は、本実施形態に係る吊り装置1の把持部20(フック21)の移動方向を示す平面図である。上記のように、4つの把持部20のうち前側の2つの把持部20は、前側のサブレール312によって一体でレール310に沿って前後に移動する。同様に、4つの把持部20のうち後側の2つの把持部20は、後側のサブレール312によって一体でレール310に沿って前後に移動する。一方、各把持部20は、サブレール312に沿って左右に独立して移動可能とされている。
上記のように、本実施形態では、4つのフック21(保持部)が、ベース部10に対して、前後方向、左右方向および上下方向に相対移動可能とされている。ここで、各把持部20を駆動する、油圧シリンダ22、第1モーター321および第2モーター322は、本発明の保持部駆動機構を構成する。
<吊り装置のブロック図>
図6は、本実施形態に係る吊り装置1のブロック図である。吊り装置1は、図2に示される構成に加えて、更に、アンテナ41と、制御部42と、コントロールバルブ43と、フック位置検出部44と、を備える。
アンテナ41は、吊り装置1のベース部10に配置されており、端末装置50(図7)との間で無線通信を行うために機能する。アンテナ41の通信方式として、Wi-Fi, BLE, LPWA, RFIDなどの公知の無線通信形式が採用可能である。後記の各アンテナにおいても送受信間が互いに同じ形式であれば、公知の無線通信形式を採用することができる。
制御部42は、駆動ユニット10Sに内蔵されており、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部42には、前述のアンテナ41、コントロールバルブ43、第1モーター321、第2モーター322およびフック位置検出部44などが電気的に接続されている。
制御部42は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、入力部421(吊り装置受信部)、出力部422、駆動制御部423(移動制御部)、記憶部424および判定部425を備えるように機能する。
入力部421は、アンテナ41を通じて後記の各種情報を受け付ける。入力部421に受け付けられた情報は、駆動制御部423によって参照される、または、記憶部424に格納される。一例として、入力部421は、端末装置50の後記の出力部532および吊り装置用アンテナ52から送信された各フック21のフック移動情報を、アンテナ41を通じて受信することが可能であるとともに、受信したフック移動情報を駆動制御部423に入力する。
出力部422は、アンテナ41を通じて後記の各種情報を出力する。出力部422から出力される情報は、駆動制御部423によって生成される、または、記憶部424に格納されている。
駆動制御部423は、入力部421が受け付けた各種の情報に基づいて、コントロールバルブ43、第1モーター321および第2モーター322に指令信号を出力する。この結果、吊り装置1の4つのフック21が前後、左右および上下方向にそれぞれ移動する。なお、駆動制御部423について換言すれば、駆動制御部423は、後記のフック位置決定部533から出力されたフック移動情報(保持部移動情報)を受け取り、各フック21が所定の目標位置に移動するように、コントロールバルブ43、第1モーター321および第2モーター322に前記フック移動情報に応じた指令信号を出力する。
記憶部424は、フック21の移動制御に関わる各種の情報を記憶する。
判定部425は、吊り装置1の動作において必要とされる各種の判定動作を実行する。
コントロールバルブ43は、不図示の油源と油圧シリンダ22との間に介在し、油圧シリンダ22に流入する作動油の流量および方向を切換える比例電磁弁からなる。コントロールバルブ43は、駆動制御部423から指令信号が入力される一対のソレノイドを含む。
フック位置検出部44は、吊り装置1の4つのフック21のベース部10に対する前後、左右および上下方向における相対位置(保持部位置情報)を検出する。フック位置検出部44は、第1モーター321および第2モーター322の回転軸に備えられたロータリーエンコーダーや油圧シリンダ22のシリンダ本体221に備えられた距離センサなどを含む。フック位置検出部44によって検出された各フック21の位置情報は、駆動制御部423によって参照されるとともに、出力部422およびアンテナ41を介して端末装置50に送信される。
<端末装置について>
図7は、本実施形態に係る端末装置50のブロック図である。本実施形態では、端末装置50は、吊り装置1から離れた位置で作業者によって操作されることが可能な情報端末装置やパーソナルコンピュータなどである。端末装置50は、タグ用アンテナ51(端末受信部)と、吊り装置用アンテナ52と、制御部53と、操作部54(端末入力部)と、表示部55と、を備える。
タグ用アンテナ51は、RFタグ60(図8)との間で無線通信を行うために機能する。同様に、吊り装置用アンテナ52は、吊り装置1のアンテナ41との間で無線通信を行うために機能する。タグ用アンテナ51およびアンテナ61の通信方式として、Wi-Fi, BLE, LPWA, RFIDなどの公知の無線通信形式が採用可能である。また、タグ用アンテナ51およびアンテナ61は、共通(単一)のアンテナからなるものでもよい。なお、前述のタグ用アンテナ51は、後記のRFタグ60のアンテナ61(情報送信部)から送信されたブーム情報を無線通信によって受信することが可能であるとともに、受信したブーム情報を入力部531に入力する。
制御部53は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部53には、タグ用アンテナ51、吊り装置用アンテナ52、操作部54および表示部55などが電気的に接続されている。
制御部53は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、入力部531(情報取得部)、出力部532(端末送信部)、フック位置決定部533(移動情報決定部)、記憶部534および判定部535を備えるように機能する。
入力部531は、作業者によって手入力される、または、RFタグ60から送信されるブーム情報を取得および出力する。前記ブーム情報とは、ブーム105を構成する各ブーム部材に関連づけられた情報であり、ブーム部材の種類、サイズ(寸法)、吊り上げ姿勢における傾斜角度などを含む。
出力部532は、タグ用アンテナ51および吊り装置用アンテナ52を通じて後記の各種情報を出力する。出力部532から出力される情報は、フック位置決定部533によって生成される、または、記憶部534に格納されている。なお、出力部532は、フック位置決定部533から出力されたフック移動情報を吊り装置用アンテナ52を通じて無線通信によって吊り装置1に送信することが可能とされている。
フック位置決定部533は、入力部531から前記ブーム情報を受け取り、前記ブーム情報に対応した各フック21のベース部10に対する相対的な目標位置に各フック21を移動させるための情報であるフック移動情報(保持部移動情報)を決定および出力する。フック移動情報には、フック21の座標、移動距離、移動方向などが含まれる。
記憶部534は、フック21の移動制御に関わる各種の情報を記憶する。
判定部535は、吊り装置1の動作において端末装置50に必要とされる各種の判定動作を実行する。
操作部54は、作業者による操作の入力を受け付ける。操作部54は、情報端末装置のタッチパネルや、パーソナルコンピュータの操作マウス、キーボードなどに相当する。本実施形態では、操作部54は、作業者によるブーム情報(部材情報)の入力を受け付けるとともに、受け付けたブーム情報を入力部531に入力する。
表示部55は、端末装置50が吊り装置1およびRFタグ60との間で送受信する各種情報や、吊り装置1のステータス情報などを表示し、作業者に報知する。
<記憶装置について>
図8は、本実施形態に係るRFタグ60(記憶装置)のブロック図である。RFタグ60は、ブーム105の各ブーム部材にそれぞれ装着されている。RFタグ60には、公知のRFID技術が採用されている。RFタグ60は、アンテナ61と、制御回路62(情報送信部)と、タグ記憶部63(記憶部)と、を有する。なお、RFタグ60は、不揮発性メモリであるため、電源を備えずとも情報を記憶し続けることができる。なお、他の実施形態において、記憶装置は、電源を備えるものでもよい。
タグ記憶部63は、RFタグ60が装着される対象である各ブーム部材の固有のブーム情報を記憶している。当該ブーム情報には、ブーム部材の機種・型式、ブーム部材種(下部ブーム、中間ブーム、上部ブーム)、図2の水平姿勢におけるブーム部材の長さ(側面視および平面視における形状および寸法に関する情報)、ブーム部材の上下方向の高さ(側面視における形状および寸法に関する情報)、ブーム部材の左右方向の幅(平面視における形状および寸法に関する情報)、傾斜モードにおける傾斜角度(ブーム部材の中心線が前後方向に延びる直線となす角度)、各フック21の最適な位置情報などを含む。なお、吊り装置1に吊り上げ限界重量が設定されている場合には、ブーム情報に、ブーム部材の重量が含まれていることが望ましい。
アンテナ61は、タグ用アンテナ51(図7)との間で無線通信を行うために機能する。制御回路62は、アンテナ61を介して、タグ記憶部63に記憶されたブーム情報を無線通信によって送信することが可能であるとともに、端末装置50から各種の指令信号を受信可能とされている。
<ブーム部材の吊り上げ作業について>
次に、本実施形態に係る吊りシステム1Sを用いたブーム部材(構成部材)の吊り上げ作業について説明する。図9は、本実施形態に係る吊りシステム1Sを用いた、ブーム105のブーム部材の吊り上げ作業の工程を示したフローチャートである。図10は、本実施形態に係る吊りシステム1Sを用いた、ブーム部材の傾斜作業の工程を示したフローチャートである。なお、図9および図10では、左側に端末装置50の流れ、右側に吊り装置1の流れがそれぞれ示されている。図11Aは、ブーム部材が地上の台座Hに載置された様子を示す側面図である。図11Bは、ブーム部材が地上から吊り上げられた様子を示す側面図である。図11Cは、ブーム部材が空中で傾斜される様子を示す側面図である。
吊りシステム1Sを用いて、たとえば図1の中間ブーム105Cを吊り上げる場合、吊り装置1が不図示のトレーラによって作業現場に搬入される。また、作業者によって、端末装置50が準備される。なお、中間ブーム105Cには、当該中間ブーム105Cのブーム情報を記憶しているRFタグ60が予め装着されている。下部ブーム105Aおよび中間ブーム105Bなどにも、同様にRFタグ60が装着されている。
次に、作業者が補助クレーン(相判機)の補助クレーンフック110(図1)にワイヤ吊り部1A(図2)を取り付ける。その後、作業者が、端末装置50および吊り装置1の電源を入れる(図9のステップS01)。吊り装置1の電源がONされると、吊り装置1の出力部422(図6)が、記憶部424に記憶されている4つのフック21の位置情報(初期位置)を、アンテナ41を通じて端末装置50に送信する(図9のステップS02)。この結果、端末装置50の入力部531が、吊り装置用アンテナ52を通じて上記の位置情報を受信する(図9のステップS03)。この際、位置情報は記憶部534に記憶される。
次に、作業者が、補助クレーンを操作し、補助クレーンフック110を介して吊り装置1を吊り上げる。この結果、吊り装置1の4つのフック21が地面から離れ空中に配置される。
次に、作業者は端末装置50の操作部54を操作して、中間ブーム105Cの吊り上げ作業に関する初期情報を入力する(図9のステップS04)。当該初期情報には、ブーム105を含むクレーン100の機種・型式に関する情報、中間ブーム105Cの吊り上げモードに関する情報が含まれている。吊り上げモードは、中間ブーム105Cを水平な姿勢で吊り上げる通常吊り上げモード、通常吊り上げモードによって吊り上げられた中間ブーム105Cを空中で傾斜させるための傾斜モード、中間ブーム105Cを傾斜した姿勢で地面から吊り上げる傾斜吊り上げモードなどが含まれる。なお、図9では、通常吊り上げモードの手順が説明される。
ステップS04において、作業者による初期情報の入力が完了すると、表示部55に表示される所定の作業開始ボタンが作業者によって押圧され、吊り上げモードが開始される(図9のステップS05)。この結果、端末装置50の出力部422が、RFタグ60に対して中間ブーム105Cのブーム情報を要求する要求信号をアンテナ41から送信する。RFタグ60のアンテナ61を通じて、前記要求信号を制御回路62が受信すると、制御回路62はタグ記憶部63に格納されているブーム情報を端末装置50に送信する。この結果、端末装置50の入力部531がブーム情報を取得する(ステップS06)。なお、ステップS04において、端末装置50の判定部535は、作業者が入力した機種・型式に関する情報と、RFタグ60のタグ記憶部63に予め格納され端末装置50が受信した機種・型式情報とを比較する。そして、両者が一致しない場合には、出力部532が表示部55にエラー情報を表示させる。この結果、作業者は目前の中間ブーム105Cが適切な吊り上げ対象ではないことを認識することができる。
端末装置50の入力部531は、取得したブーム情報をフック位置決定部533に入力する。この結果、フック位置決定部533は、中間ブーム105Cのブーム情報(平面視における中間ブーム105Cの形状および寸法)にあわせて、吊り装置1の4つのフック21の平面視における配置、すなわち、各フック21の移動目標位置を決定する(ステップS07)。更に、フック位置決定部533は、ステップS03において受信された後、記憶部424に格納されていた各フック21の現状位置と、上記の移動目標位置とから、各フック21の移動方向および移動距離(いずれもフック移動情報)を算出する(ステップS08)。そして、出力部532は、フック移動制御の開始を指示するための指令信号と、フック位置決定部533によって算出された上記のフック移動情報とを吊り装置用アンテナ52から吊り装置1に送信する(ステップS08)。なお、ステップS09とステップS10との間において、端末装置50から吊り装置1にフック21の移動開始を指示する指令信号が発せされ、吊り装置1が当該指令信号を受信してから、フック21の移動が開始されてもよい。
ステップS08において、フック移動制御の開始を指示するための指令信号と、フック位置決定部533によって算出された上記のフック移動情報とが送信されると、吊り装置1の入力部421は、端末装置50から送信された各フック21のフック移動情報を受信し(ステップS09)、当該フック移動情報を駆動制御部423に入力する。駆動制御部423は、図2の4つのサブ移動ユニット313に備えられた第1モーター321に対して、上記のフック移動情報に応じた所定の回転方向および回転時間の回転を指示するための指令信号を入力する。この結果、4つのフック21が左右方向において所定の目標位置に配置される。更に、駆動制御部423は、図2の左側の2つの移動ユニット311に備えられた第2モーター322に、上記のフック移動情報に応じた所定の回転方向および回転時間の回転を指示するための指令信号を入力する。この結果、図2の左側の2つのフック21が前後方向において所定の目標位置に配置される。同様に、駆動制御部423は、図2の右側の2つの移動ユニット311に備えられた第2モーター322に、上記のフック移動情報に応じた所定の回転方向および回転時間の回転を指示するための指令信号を入力する。この結果、図2の右側の2つのフック21が前後方向において所定の目標位置にそれぞれ配置される。このような制御を経て、4つのフック21が水平面上の目標位置に配置される(ステップS10)。ここで、判定部425は、駆動制御部423が受け付けたフック移動情報と、フック位置検出部44が検出する各フック21の位置情報とを比較する。そして、両者の差が所定の誤差範囲に含まれている場合には、出力部422が、端末装置50に対して移動完了情報を送信する(ステップS11)。なお、出力部422は、各フック21の移動中にもフック位置検出部44によって検出される各フック21の最新位置に関する情報を端末装置50に送信することが望ましい。
端末装置50の入力部531は、上記の移動完了情報を受信すると(ステップS12)、各フック21の移動が正常に完了したことを意味するフラグ(たとえばflag=1)を記憶部534の所定領域に記憶させる。出力部532は、上記のフラグを参照して、フック21の移動が正常に完了した情報を表示部55に表示させる。また、入力部531が上記の各フック21の最新位置に関する情報を受信すると、当該情報が記憶部534に記憶される。
作業者は、上記の表示部55の表示情報を確認して、補助クレーンを操作して吊り装置1を下降させ、4つのフック21を中間ブーム105Cの上面部のフレーム部分(パイプ部分)に接続する。その後、作業者は、補助クレーンを操作して、吊りシステム1Sの吊り装置1を介して、中間ブーム105Cを空中に吊り上げる(図11Aおよび図11B参照)。
なお、本実施形態では、中間ブーム105Cは平面視で矩形形状を有している。このため、上記のフック移動情報では、4つのフック21が平面視で矩形形状を形成するように配置される。図2の後側の2つのフック21は、中間ブーム105Cの重心よりも後方において中間ブーム105Cの左右のフレームをそれぞれ把持する。同様に、図2の前側の2つのフック21は、中間ブーム105Cの重心よりも前方において中間ブーム105Cの左右のフレームをそれぞれ把持する。また、通常吊り上げモードでは、中間ブーム105Cの上面部が水平に延びる姿勢(水平姿勢)で中間ブーム105Cが吊り上げられる。このため、フック位置決定部533が決定するフック位置情報では、4つのフック21の上下方向の位置、すなわち、4つの油圧シリンダ22の伸縮量は互いに同じ値に設定されている。
このように、本実施形態では、ブーム情報(部材情報)は、中間ブーム105Cの平面視における形状および寸法の識別を可能とする情報を含む。そして、第1モーター321および第2モーター322は、前記4つのフック21を前後方向および左右方向に沿ってそれぞれ移動させることが可能である。更に、フック位置決定部533は、4つのフック21の目標位置が中間ブーム105Cの平面視における形状および寸法に対応するようにフック移動情報を決定する。このような構成によれば、中間ブーム105Cの平面視における形状に応じて、保持部移動機構が4つのフック21を移動させ、作業者が各フック21を中間ブーム105Cに容易に接続することができる。
また、このような構成によれば、中間ブーム105C(ブーム部材)の前後方向および左右方向における長さに応じて、中間ブーム105Cに対するフック21の接続部分を調整することができる。なお、中間ブーム105Cの前後方向における長さが大きい場合には、4つのフック21の前後方向の間隔を大きく設定することで、ブーム部材を安定して吊り上げることができる。この際、中間ブーム105Cの重心と吊り装置1の重心とが上下方向において略一致し、ベース部10が水平な姿勢を維持するためには、前側のフック21対と後側のフック21対とを前後方向において互いに逆向きに移動させることが望ましく、前後方向において前後のフック21対の中間にワイヤ吊り部1Aが位置するように各フック21の位置が設定されることが望ましい。
なお、吊りシステム1Sによって吊り上げられる対象が下部ブーム105Aの場合には、前述のように、その左右方向の幅が先端部側(前方)に向かって拡がっている。このため、上記のフック移動情報では、4つのフック21が平面視で台形形状を形成するように配置される。図2の後側の2つのフック21は、中間ブーム105Cの重心よりも後方において左右方向に第1の間隔で中間ブーム105Cの左右のフレームをそれぞれ把持する。一方、図2の前側の2つのフック21は、中間ブーム105Cの重心よりも前方において左右方向に前記第1の間隔よりも大きな第2の間隔で中間ブーム105Cの左右のフレームをそれぞれ把持する。このように、対象となるブーム部材(構成部材)の平面視における形状にあわせて、4つのフック21を適切な位置に配置することが可能となる。
また、図9のステップS10では、駆動制御部423が、サブ移動ユニット313に備えられた第1モーター321、および移動ユニット311に備えられた第2モーター322に、フック移動情報に応じた所定の回転方向および回転時間の回転を指示するための指令信号を入力する態様にて説明したが、各モーターや油圧シリンダの制御は他の態様でもよい。一例として、フック位置検出部44が各フック21の移動中の現在位置を検出し、フック位置決定部533が、フック21の目標位置と現在位置との差に基づいて、フック21の残りの移動量を算出する態様でもよい。この場合、図5に矢印で示すように、フック21(把持部20)の前方への移動がプラス方向への移動と定義され、後方への移動がマイナス方向への移動と定義される。同様に、フック21の左方への移動がプラス方向への移動と定義され、右方への移動がマイナス方向への移動と定義される。上記の目標位置と現在位置との差が、正の場合にはフック21が現在位置よりもプラス方向に移動され、負の場合にはフック21が現在位置よりもマイナス方向に移動されればよい。
なお、フック位置検出部44がロータリーエンコーダーの場合には、当該ロータリーエンコーダーから出力されるパルス数がフック21の移動距離に変換される。ここで、フック21の移動距離L(単位mm)は、パルス数P(単位PLS)と、1パルスあたりの移動距離L1(単位MM/PLS)との積によって算出される。L1は、ロータリーエンコーダーの分解能(1パルスあたりの回転数)に相当し、ロータリーエンコーダーが取り付けられているモーターの回転軸の半径をr(単位mm)とすると、L1=2πr/Pによって算出される。したがって、予め設定されたフック21の原点座標をゼロとすると、フック21の残りの移動距離は、目標位置から上記の移動距離Lを差し引くことで算出される。
また、フック位置検出部44が距離センサの場合には、予め設定されたフック21の原点座標をゼロとして、当該原点座標に対するフック21の現在位置(移動距離L)が検出される。したがって、目標位置に対するフック21の残りの移動距離は、目標位置から上記の移動距離Lを差し引くことで算出される。
<ブーム部材の傾斜作業について>
次に、本実施形態に係る吊りシステム1Sを用いたブーム部材(構成部材)の傾斜作業について説明する。
出力部532は、図9のステップS12において、4つのフック21の移動が正常に完了した情報を表示部55に表示させた後、中間ブーム105Cの傾斜モードの実行要否を入力するための操作ボタンを表示部55に表示させる。作業者が、当該ボタンを押すと、図10に示される傾斜モードが開始される(図10のステップS21)。傾斜モードが開始されると、端末装置50の出力部532が吊り装置1に対して傾斜モードの実行指令を送信する。この指令を受けて、吊り装置1のフック位置検出部44が4つのフック21の最新の位置情報を検出し、出力部422がその結果をアンテナ41から端末装置50に送信する(ステップS22)。端末装置50の入力部531が当該フック21の位置情報を受信すると(ステップS23)、フック位置決定部533は、中間ブーム105Cを空中で傾斜させるための4つのフック21の位置を決定する(ステップS24)。一例として、4つのフック21のうちの前側の2つのフック21を後側の2つのフック21に対して上方に移動させることが決定される。更に、フック位置決定部533は、予め取得している中間ブーム105Cのブーム情報に含まれる中間ブーム105Cの傾斜角度を参照し、4つのフック21のうちの前側の2つのフック21を後側の2つのフック21に対して上方に移動させるための移動量(前側の2つの油圧シリンダ22の収縮量)をフック移動情報として算出し、出力部422を通じて吊り装置1に送信する(ステップS25)。
吊り装置1の入力部421は上記のフック移動情報を受信すると(ステップS26)、当該フック移動情報を駆動制御部423に入力する。駆動制御部423は、前側の2つの油圧シリンダ22を所定の量だけ収縮させるための、指令信号をコントロールバルブ43のソレノイドに入力する。この結果、空中で、前側の2つの油圧シリンダ22が収縮し、中間ブーム105Cの前側部分が後側部分よりも上方に位置するように、中間ブーム105Cが空中で傾斜する(図11B、図11C参照)。なお、他の実施形態において、後側の2つの油圧シリンダ22が伸長し、中間ブーム105Cの後側部分が前側部分よりも下方に位置するように、中間ブーム105Cが空中で傾斜する態様でもよい。
判定部425は、駆動制御部423が受け付けたフック移動情報と、フック位置検出部44が検出する各フック21の上下方向における位置情報とを比較し、両者の差が所定の誤差範囲に含まれている場合には、出力部422がアンテナ41から端末装置50に対して移動完了情報を送信する(ステップS28)。
端末装置50の入力部531は、上記の移動完了情報を受信すると(ステップS29)、各フック21の移動、すなわち、中間ブーム105Cの傾斜作業が正常に完了したことを意味するフラグ(たとえばflag=2)を記憶部424の所定領域に記憶させる。出力部532は、上記のフラグを参照して、中間ブーム105Cの傾斜が正常に完了した情報を表示部55に表示させる。
作業者は、上記の表示情報を確認して、図1の補助クレーンを操作して中間ブーム105Cを後方に移動させ、中間ブーム105Cのコネクタ105C1を、中間ブーム105Bのコネクタ105B1に位置合わせする。そして、作業者が、コネクタ105B1およびコネクタ105C1に開口された孔部に不図示の連結ピンを挿入することで、中間ブーム105Bの上側部分と中間ブーム105Cの上側部分とが互いに連結される。その後、補助クレーンによって中間ブーム105Cが下降されると、中間ブーム105Cが前記連結ピン回りに回動し、中間ブーム105Cのコネクタ105C2が中間ブーム105Bのコネクタ105B2に位置合わせされる。そして、作業者が、コネクタ105B2およびコネクタ105C2に開口された孔部に不図示の連結ピンを挿入することで、中間ブーム105Bの下側部分と中間ブーム105Cの下側部分とが互いに連結される。
上記の連結作業を終えると、作業者により吊り装置1のフック21を中間ブーム105Cから取り外す作業が行われる。そして、当該作業者またはこれを見届けた他の作業者は、補助クレーンを操作する作業者に、吊り装置1を上昇させる指示を出す。そして、吊り装置1が中間ブーム105Cから完全に離れたことを確認すると、端末装置50の操作者が、端末装置50に連結作業完了情報を入力する。この結果、端末装置50から吊り装置1に作業完了動作を指示する信号が発せされ、吊り装置1が初期状態に復帰する。この際、たとえば、各油圧シリンダ22が所定の長さに伸縮し、フック21の位置を予め設定された原点に戻す。そして、吊り装置1は、次の作業開始の指示を受けるまで停止した状態を維持する。
なお、上記において、中間ブーム105Cを前記連結ピン回りに下方に回動させる際に、これに先立って吊り装置1の後側の油圧シリンダ22を伸長させて中間ブーム105Cを傾けた場合には、当該後側の油圧シリンダ22を縮めながら吊り装置1自体を下げていくことで、中間ブーム105Cを下方に回動させることができる。一方、吊り装置1の前側の油圧シリンダ22を縮めて中間ブーム105Cを傾けた場合には、当該前側の油圧シリンダ22を伸長させることで、中間ブーム105Cを下方に回動させることができる。なお、上記2つの回動方法が組み合わされてもよい。
このように、本実施形態では、ブーム情報(部材情報)は、中間ブーム105Cが、当該中間ブーム105Cの上面部が前後方向に対して所定の傾斜角度で傾斜した姿勢である傾斜姿勢をとるための前記傾斜角度に関する情報を含む。そして、4つの油圧シリンダ22は、前記第1右保持部および前記第1左保持部からなる第1保持部対、および、前記第2右保持部および前記第2左保持部からなる第2保持部対のうちの一方の保持部対を他方の保持部対に対して相対的に上下方向に移動させることが可能である。更に、フック位置決定部533は、前記一方の保持部対の前記他方の保持部対に対する相対位置が中間ブーム105Cの前記傾斜姿勢に対応するようにブーム移動情報を決定する。この結果、ブーム情報に含まれる中間ブーム105Cの傾斜角度に応じて一方の保持部対を上下移動させることで、中間ブーム105Cを空中で傾斜姿勢とすることができる。
なお、前述の中間ブーム105Cを傾斜した姿勢で地面から吊り上げる傾斜吊り上げモードが選択、実行される場合には、図9のステップS07において決定される4つのフック21の水平方向における移動情報に、図10のステップS24において決定されるフック21の上下方向における移動情報が含まれる。すなわち、予め、4つのフック21の上下方向における位置(油圧シリンダ22の伸縮量)が調整された状態で、フック21が中間ブーム105Cに接続され、補助クレーンによって中間ブーム105Cが吊り上げられる。この結果、中間ブーム105Cが傾斜した姿勢で地切りが行われる。したがって、中間ブーム105Cを傾斜姿勢で吊り上げることが可能となる。
以上、本発明の各実施形態に係る吊り装置1を含む吊りシステム1Sについて説明した。このような吊りシステム1Sによれば、端末装置50の入力部531が中間ブーム105Cのブーム情報を取得すると、フック位置決定部533が4つのフック21を前記ブーム情報に応じた目標位置に移動させるためのフック移動情報を決定し、保持部移動機構が当該フック移動情報に基づいて4つのフック21を目標位置に移動させることができる。このため、作業者が、ブーム部材の形状に応じて、各フック21を移動させる必要が低減するため、ブーム部材の吊り上げ作業における作業性を向上することができる。
また、上記の実施形態では、端末装置50が、RFタグ60に記憶されたブーム情報を受け取ることで、各フック21を中間ブーム105Cに応じた目標位置に移動させることができる。この際、RFタグ60が、吊り上げ対象とされるブーム部材(中間ブーム105C)に装着されているため、端末装置50(入力部531)が各ブーム部材に関連づけられたブーム情報を精度良く取得することができる。
なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明に係る吊りシステム1Sとして、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の実施形態では、作業機械を構成する部材として、クレーン100のブーム105を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る作業機械は、油圧ショベル、掘削機などその他の態様からなるものでもよい。また、構成部材は、ジブ、マスト、カウンタウエイトなどその他の部材であってもよい。
(2)また、上記の実施形態の一部では、吊り装置1の4つのフック21が、前後方向、左右方向および上下方向に沿ってそれぞれ移動される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。4つのフック21は、前後方向、左右方向および上下方向の何れかの方向に沿って移動されるものでもよい。また、本発明の保持部駆動機構は、4つのフック21(保持部)のうち前記第1右保持部、前記第1左保持部、前記第2右保持部および前記第2左保持部のうち前後方向または左右方向において互いに対向する少なくとも2つのフック21をベース部10に対して相対移動させることが可能であればよい。
(3)また、上記の実施形態では、RFタグ60に記憶されたブーム情報が端末装置50の入力部531に入力される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。作業者が端末装置50の操作部54からブーム情報を入力し、操作部54が受け付けたブーム情報を入力部531(端末入力部)に入力する態様でもよい。このような場合には、作業者が端末装置50の操作部54にブーム情報を入力することで、各フック21を中間ブーム105Cに応じた目標位置に移動させることができる。この場合、記憶部534には、予め各種のブームを吊り上げるための情報(吊り位置など)が記憶されており、入力部531に入力されたブーム情報に基づいて、記憶部534に記憶された前記情報から吊り上げ対象とされるブームに対応する情報を特定し、その情報を用いて各フック21を目標位置に移動させる。
(4)また、上記の実施形態では、中間ブーム105Cの平面視における形状に基づいて、フック位置決定部533が4つのフック21の目標位置にあわせてフック移動情報を決定する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
RFタグ60から送信される、または、作業者によって端末装置50に入力されるブーム情報(部材情報)は、ブーム部材の左右方向に沿った側面視における形状および寸法に関する情報を含むものでもよい。一例として、ブーム部材が下部ブーム105Aの場合には、下部ブーム105Aの側面視における上下寸法(高さ)が基端部から先端部にかけて拡がっている。したがって、フック位置決定部533は、4つのフック21の目標位置が下部ブーム105Aの側面視における前記形状および寸法に対応するようにフック移動情報を決定する。この場合、図2の後側の2つのフック21は、図2の前側の2つのフック21よりも下方の位置で、中間ブーム105Cの左右のフレームをそれぞれ把持するように、前後4つの油圧シリンダ22の伸縮量が設定される。この結果、保持部移動機構が下部ブーム105Aの側面視における形状に応じて4つのフック21を移動させ、作業者が各フック21を下部ブーム105Aに容易に接続することができる。そして、ベース部10が水平姿勢を維持しながら、下部ブーム105Aを水平な姿勢で吊り上げることが可能となる。
(5)また、上記の実施形態では、中間ブーム105Cのブーム情報に応じて、フック21のフック移動情報を決定するフック位置決定部533が端末装置50の一部を構成する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。フック位置決定部(533)は、駆動制御部423とともに吊り装置1の一部を構成する態様でもよい。この場合、端末装置50の出力部532は、ブーム情報を吊り装置用アンテナ52から無線通信によって吊り装置1に送信可能な端末送信部として機能する。一方、吊り装置1のアンテナ41および入力部421は、端末装置50の出力部532および吊り装置用アンテナ52から送信されたブーム情報を無線通信によって受信することが可能であるとともに、受信したブーム情報を制御部42のフック位置決定部(533)に入力する吊り装置受信部として機能する。
このような構成によれば、吊り装置1が、ブーム情報からフック移動情報を決定するフック位置決定部(533)と、保持部駆動機構(油圧シリンダ22、第1モーター321および第2モーター322)を制御する駆動制御部423とを備える。このため、フック21を移動させる制御機能を吊り装置1に集約させることが可能となる。一方、作業者が手にする端末装置50には、フック21の位置などを含む吊り装置1の状態を把握するための各種情報が吊り装置1から送信される。このため、作業者は吊り装置1の状態を容易に把握することができる。また、端末装置50の構成を簡略化することができる。
また、上記とは逆に、フック位置決定部533に加え、駆動制御部423(図6)が、前記端末装置50の制御部53の一部を構成する態様でもよい。この場合、端末装置50の出力部532および吊り装置用アンテナ52は、制御部53の駆動制御部(423)から出力された指令信号を無線通信によって送信することが可能な端末送信部として機能する。一方、吊り装置1のアンテナ41および入力部421は、前記端末送信部から送信された前記指令信号を無線通信によって受信することが可能であるとともに、受信した前記指令信号を図6の駆動部(保持部駆動機構)に入力する吊り装置受信部として機能する。なお、この場合、吊り装置1の判定部425の機能を、端末装置50の判定部535が行ってもよい。
このような構成によれば、端末装置50が、ブーム情報からフック移動情報を決定するフック位置決定部533と、保持部駆動機構(油圧シリンダ22、第1モーター321および第2モーター322)を制御する駆動制御部(423)とを備える。このため、フック21を移動させる制御機能を、衝撃を受けやすい吊り装置1から離れた端末装置50に集約させることが可能となる。一方、吊り装置1の制御機能を、保持部駆動機構に指令信号を入出力するための必要最低限の送受信機能に限定することで、上記衝撃などによって吊り装置1の制御系が損傷することが抑止される。また、制御部42の構成を簡略化することができる。
更に、吊りシステム1Sは、端末装置50を備えない態様でもよい。すなわち、図7のフック位置決定部533が、図6の吊り装置1の制御部42の一部を構成し、図6の入力部421が本発明の情報取得部として機能する。更に、吊り装置1のアンテナ41は、RFタグ60の制御回路62およびアンテナ61(情報送信部)から送信されたブーム情報を無線通信によって受信するとともに、受信されたブーム情報を入力部421に入力する吊り装置受信部として機能する。なお、この場合、端末装置50の判定部535の機能を、吊り装置1の判定部425が行う。
このような構成によれば、吊り上げ対象の中間ブーム105Cと吊り装置1とを互いに近接させると、吊り装置1が、RFタグ60に記憶されたブーム情報を直接受け取ることで、各フック21を中間ブーム105Cに応じた目標位置に移動させることができる。したがって、端末装置50を備えずとも、RFタグ60と吊り装置1との間の直接的な情報のやりとりによって、4つのフック21を適切な位置に配置することができる。なお、上記のようにフック21の移動制御に端末装置50が関わることがない場合でも、吊り装置1に対する緊急停止信号などが端末装置50から送信されるものでもよい。
(6)また、本発明に係る4つの保持部は、フック21に限定されるものではなく、ロープの末端が環状に形成されたもののように、ブーム105などの構成部材に接続可能なものであればよい。更に、4つのフック21を移動させる保持部移動機構は、油圧シリンダ22、第1モーター321および第2モーター322に限定されるものではなく、前後、左右および上下方向にフック21を移動させるものであればよい。
(7)なお、図9のフローチャートでは、吊り装置1および端末装置50の電源がONされた後、所定の中間ブーム105Cが吊り上げられる流れを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。吊り装置1および端末装置50の電源がONされた後、吊り装置1によって複数種類のブーム部材を次々に吊り上げる態様でもよい。この場合、一のブーム部材に対して、図9のステップS10〜S12のフック21の移動が完了し、図10の傾斜モードが終了すると、端末装置50から吊り装置1に、次のブーム部材に対する吊り上げ作業開始の指令信号が発せられることで、図9のステップS02、S03が再び開始される。