JP2020163496A - 刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体 - Google Patents
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Abstract
【課題】切削インサートの芯出しのための軸部を円柱状としても、切削インサートの誤装着を防止する。【解決手段】ドリル本体1の先端部に形成されたインサート取付座に切削インサートが取り付けられ、ドリル本体1には本体切屑排出溝5a、5bが形成され、インサート取付座にはスラスト受け面から後端側に凹むとともに本体切屑排出溝5aに開口する凹部7と、凹部7の底面から後端側に凹む軸線Oを中心とした円形の孔部とが形成され、切削インサートには着座面と、着座面から後端側に突出して凹部7に嵌め入れられる凸部16と、凸部16の後端面から後端側に突出して孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部とが形成され、凹部7と凸部16は軸線Oに直交する断面において非対称に形成される。【選択図】図3
Description
本発明は、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式ドリルであって、特に切削インサートを誤った向きでインサート取付座に取り付ける誤装着を防止した刃先交換式ドリル、このような刃先交換式ドリルの切削インサート、およびドリル本体に関するものである。
このような誤装着を防止した刃先交換式ドリルとして、例えば特許文献1には、前端および後端を有する基体(ドリル本体)であって、前端および後端の間で第1の中心軸が延び、第1の中心軸の回りで所定の回転方向に回転する基体と、前端および後端を有するルーズトップ(切削インサート)であって、前端および後端の間で第2の中心軸が延びるルーズトップとを備えたものが記載されている。
上記基体の前端は、二つの突出部と底面とにより範囲を定められ、ルーズトップの一部分を受け入れる谷部と、ルーズトップから軸方向後方に突出し、谷部の底面に開口する軸方向の中心孔に挿入される芯出しピンとを備え、基体には芯出しピンと協働するねじのためのねじ孔が開口している。
上記中心孔は基体の第1の中心軸と同心である筒状の第1の面部分を含み、第1の面部分に対してルーズトップの芯出しピンがねじによって押され、ルーズトップの芯出しピンが、軸方向と周方向にそれぞれ延長し、直径方向に対向する二つの外側の面を含み、第1の面が中心孔の第1の面部分に対して押されるとともに軸方向に延びる二つの境界点の間を接線方向に延びる接触面を形成する。
これら二つの境界点はルーズトップの第2の中心軸と一致する中心を有する仮想的な外接円に沿って配置され、二つの境界点の間で円弧角が180゜より小さく、第2の面は、芯出しピンの断面積が中心孔の断面積より小さいために、中心孔の内側と接触しない逃げ面を形成する。
さらに上記外接円は、中心孔の筒状の第1の面部分に沿う内接円の半径と等しい大きさの半径を有し、ルーズトップの第2の中心軸と芯出しピンの逃げ面としての後面上の点との間の半径方向の距離が、外接円の半径より大きく、基体の第1の中心軸と中心孔の第1の面部分に対向する逃げ面との間の対応する半径より小さく、所定の向き以外の他の向きで芯出しピンを中心孔に挿入できなくする。
しかしながら、この特許文献1に記載された刃先交換式ドリルでは、切削インサートの芯出しピンが円柱状ではないために、切削インサートを精度よく成形することが困難となる。このため、切削インサートをドリル本体と正確に同軸に取り付けることができなくなって、加工精度が損なわれるおそれがある。
本発明は、このような背景の下になされたもので、切削インサートの芯出しのための軸部を円柱状としても、切削インサートの誤装着を防止することが可能で、優れた加工精度を得ることができる刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体を提供することを目的としている。
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の刃先交換式ドリルは、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式ドリルであって、上記ドリル本体の先端部外周には、該ドリル本体の先端面に開口して後端側に延びる本体切屑排出溝が形成されるとともに、上記切削インサートには、該切削インサートの先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に凹むとともに上記本体切屑排出溝に開口する凹部と、この凹部の底面からさらに上記ドリル本体の後端側に凹む上記軸線を中心とした断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記凹部と上記孔部とのうち少なくとも一方に開口するネジ孔とが形成されるとともに、上記切削インサートには、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記切削インサートの後端側に突出して上記凹部に嵌め入れられる凸部と、この凸部の後端面からさらに上記切削インサートの後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部と、この軸部と上記凸部とのうち少なくとも一方に設けられる切欠部が形成され、上記切削インサートは、上記ネジ孔にねじ込まれるクランプネジが上記切欠部に当接することによって上記インサート取付座に取り付けられるとともに、上記凹部と上記凸部とは、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の切削インサートは、このような刃先交換式ドリルにおける上記ドリル本体の上記インサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、インサート本体の先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、上記インサート本体には、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記インサート本体の後端側に突出して上記凹部に嵌め入れられる凸部と、この凸部の後端面からさらに上記インサート本体の後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部と、この軸部と上記凸部とのうち少なくとも一方に設けられる切欠部が形成され、上記凸部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明のドリル本体は、上述のような刃先交換式ドリルにおけるドリル本体であって、先端部に上記インサート取付座が形成されるとともに、先端部外周には先端面に開口して後端側に延びる上記本体切屑排出溝が形成され、上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に凹むとともに上記本体切屑排出溝に開口する凹部と、この凹部の底面からさらに上記ドリル本体の後端側に凹む上記軸線を中心とした断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記凹部と上記孔部とのうち少なくとも一方に開口するネジ孔とが形成されるとともに、上記凹部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されていることを特徴とする。
このような刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体においては、切削インサートの芯出しを行うドリル本体の孔部が軸線を中心とした断面円形であるとともに、この孔部に嵌め入れられるインサート本体の軸部が円柱状であるので、切削インサートを精度よく成形することができてドリル本体と正確に同軸に取り付けることが可能となり、高い加工精度を確保することができる。
そして、この孔部とインサート取付座との間に形成される凹部と、軸部とインサート本体の着座面との間に形成される凸部とが、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されている。このため、これら凹部に凸部が嵌まり込む姿勢でしか切削インサートをインサート取付座に取り付けることができず、誤って切欠部以外の軸部の外周面がネジ孔に面するように切削インサートが装着されて、そのままクランプネジがねじ込まれることにより、穴明け加工中に切削インサートにがたつきが生じて加工精度が損なわれたり、切削インサートが脱落してしまったりする事態が生じるのを防ぐことが可能となる。なお、凹部と凸部とが、上記軸線に直交する断面において、この軸線に関して非対称な形状に形成されているとは、凸部を凹部に対して軸線回りに回転させたときには、360°回転(1回転)させなければ再び凹部に嵌め入れることができない形状であることを意味する。
ここで、上記凹部は、上記本体切屑排出溝への開口部側に向かうに従い互いの間隔が小さくなる壁面を備えていることが望ましい。このように凹部の壁面が本体切屑排出溝への開口部側に向かうに従い互いの間隔が小さくなる壁面を備えている場合には、本体切屑排出溝への開口部に向けて壁面の間隔が一定であったり、逆に間隔が大きくなっていたりする場合に比べ、開口部近傍におけるドリル本体の肉厚を確保することができて強度を向上させることができる。
さらに、上記ドリル本体と上記切削インサートに、2条ずつの上記本体切屑排出溝と上記インサート切屑排出溝とが形成されている場合には、上記凹部は上記2条の上記本体切屑排出溝に開口していてもよい。この場合には、凹部が2条の本体排出溝に開口しているので、この凹部に嵌め入れられるインサート本体の凸部の断面積および凸部に連なる軸部の直径を大きくすることができ、切刃の直径が小径の刃先交換式ドリルにおいても軸部の強度を確保することができる。
以上説明したように、本発明によれば、切削インサートをドリル本体に正確に同軸に取り付けることができるとともに、切削インサートの誤装着を防ぐことができ、高い加工精度を得ることができるのに併せて、切削加工中の切削インサートのがたつきや脱落を防止することが可能となる。
図1〜図3は、本発明の刃先交換式ドリルの第1の実施形態を示すものであり、図4および図5は、この第1の実施形態の刃先交換式ドリルの分解図を示すものである。また、図6は、本発明のドリル本体の一実施形態を示すものであり、図7は、このドリル本体に着脱可能に取り付けられる本発明の切削インサートの一実施形態を示すものである。
ドリル本体1は、鋼材等の金属材料によって軸線Oを中心とした多段の円柱状に形成されており、その後端部(図1、図4〜図6において右側部分)は大径のシャンク部2とされるとともに、先端部(図1、図4〜図6において左側部分)はシャンク部2よりも小径で切削インサートのインサート本体11が着脱可能に取り付けられる切刃部3とされている。また、シャンク部2と切刃部3との間には、直径がシャンク部2の直径から一段僅かに縮径した後、先端側に向かうに従い漸次縮径して切刃部3の手前でさらに僅かに一段縮径する円錐台状の首部4が形成されている。
このような刃先交換式ドリルは、ドリル本体1のシャンク部2が工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りにドリル回転方向Tに回転されつつ該軸線O方向先端側に送り出されることにより、切削インサートの切刃によって被削材に穴明け加工を行う。なお、シャンク部2の外周面には、シャンク部2の先端と後端の間に間隔をあけて軸線Oに平行に延びる平坦面2aが形成されている。
切刃部3の先端から首部4の後端の手前にかけてドリル本体1の外周部には、複数の本体切屑排出溝が周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、2条の本体切屑排出溝5a、5bが周方向に等間隔に形成されており、これらの本体切屑排出溝5a、5bはドリル本体1の後端側に向かうに従い軸線O回りにドリル回転方向Tとは反対側に緩やかに捩れる螺旋状とされている。
切刃部3の先端部には、インサート取付座6が形成されている。このインサート取付座6は、切刃部3の先端部を、2つの本体切屑排出溝5a、5bのドリル回転方向Tを向く壁面からドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面に亙って、軸線Oに対する径方向に切り欠くようにして形成されている。
このインサート取付座6は、軸線Oに垂直な方向に延びてドリル本体1の先端側を向く底面であるスラスト受け面6aと、このスラスト受け面6aの両側部から、スラスト受け面6aに対して垂直で軸線Oに平行に延びるとともに互いにも平行に延び、軸線Oを間にして対向する2つの壁面6bと、やはりスラスト受け面6aに対して垂直で軸線Oに平行に延びるとともに互いにも平行に延び、2つの壁面6bのドリル回転方向T側の縁部に鈍角に交差してドリル本体1の外周側に延びるドリル回転方向Tを向く2つのトルク受け面6cとを備えている。
さらに、スラスト受け面6aには、凹部7が形成されている。この凹部7は、本実施形態では、2条の本体切屑排出溝5a、5bのうち一方の本体切屑排出溝(図3において右下側の本体切屑排出溝)5aに開口していて、この一方の本体切屑排出溝5aへの開口部とは反対側の凹部7の壁面(内周面)は、軸線Oに直交する断面において図3に示すように、軸線Oを中心とする半円弧状の第1の円弧状部7aとされている。
また、この第1の円弧状部7aから上記一方の本体切屑排出溝5aへの開口部に延びる部分の凹部7の壁面(内周面)は、本実施形態では軸線Oに直交する断面において図3に示すように、第1の円弧状部7aよりも曲率半径の大きな円弧状をなして上記一方の本体切屑排出溝5aの内面に連なる第2の円弧状部7bとされていて、本体切屑排出溝5aへの開口部側に向かうに従い互いの間隔が小さくなるように形成されている。すなわち、本実施形態における凹部7は、軸線Oに直交する断面が、上記一方の本体切屑排出溝5aに開口する部分を除いて概略卵形とされている。
さらに、この凹部7の底面には孔部8が形成されている。この孔部8は、軸線Oに直交する断面が、凹部7の第1の円弧状部7aの半径よりも小さな半径の円形とされていて、一定の断面形状のまま後端側に延びる止まり孔とされている。さらにまた、凹部7が開口した上記一方の本体切屑排出溝5aのドリル回転方向T側に隣接する切刃部3の外周面には、軸線Oに垂直に内周側に延びる1つのネジ孔9が形成されており、このネジ孔9は凹部7の後端部と孔部8の先端部との間に跨がって開口している。このネジ孔9と凹部7を除いて、インサート取付座6を含めた切刃部3は軸線Oに関して180°回転対称形状に形成されている。
このようなインサート取付座6に着脱可能に取り付けられる切削インサートは、ドリル本体1よりも硬度の高い超硬合金等の硬質材料によって形成されたインサート本体11を備えている。このインサート本体11は、後述する凸部と軸部を除いて、図6に示すように概略ホームベース形の5角形の板状に形成されており、この5角形状の部分は軸線Oに関して180°回転対称形状とされている。
このインサート本体11には、インサート取付座6に取り付けられた状態において、ドリル本体1の先端側を向く先端逃げ面12と、この先端逃げ面12に開口して2つの本体切屑排出溝5a、5bにそれぞれ連通するインサート切屑排出溝13a、13bが形成されており、これらのインサート切屑排出溝13a、13bのドリル回転方向Tを向く壁面と先端逃げ面12との交差稜線部に切刃14が形成されている。先端逃げ面12には、ドリル回転方向Tとは反対側とドリル本体1の外周側に向かうに従いドリル本体1の後端側に向かうように傾斜が与えられており、これによって切刃14には逃げ角と先端角が与えられる。
また、同じくインサート取付座6に取り付けられた状態において、インサート本体11の後端面は軸線Oに垂直な平面とされて、ドリル本体1の後端側を向いてインサート取付座6の上記スラスト受け面6aに着座させられる軸線Oに垂直な方向に延びる着座面15aとされている。
さらに、インサート本体11の5角形状面は、2つのインサート切屑排出溝13a、13bのドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面からドリル回転方向T側に向けて、着座面15aに対して垂直で軸線Oに平行に延びるとともに互いにも平行に延び、軸線Oを間にして互いに反対側を向く2つの側面15bと、これら2つの側面15bのドリル回転方向T側の縁部に鈍角に交差してインサート本体11の外周側に延びるとともに、互いに平行かつ軸線Oにも平行なドリル回転方向Tとは反対側を向く着座面15aに対して垂直な2つの当接面15cとを備えている。
上記2つの側面15b間の間隔は、これら2つの側面15bがインサート取付座6の2つの壁面6bに摺接可能な間隔とされており、また当接面15cが側面15bに対してなす角度は、インサート取付座6の壁面6bに対してトルク受け面6cがなす角度と等しくされていて、このように2つの側面15bを2つの壁面6bに摺接させてインサート本体11をインサート取付座6に挿入することにより、2つの当接面15cは2つのトルク受け面6cにドリル回転方向Tとは反対側に向けて当接可能とされている。
また、インサート本体11の着座面15aには、インサート取付座6の上記凹部7に嵌め入れられる凸部16が形成されている。従って、この凸部16は、軸線Oに直交する断面において図3に示すように、上記一方の本体切屑排出溝5aに連通する一方のインサート切屑排出溝13aとは反対側の外周面が、軸線Oを中心とした断面半円弧状の第1の円弧状部16aとされる。
さらに、この第1の円弧状部16aから上記一方のインサート切屑排出溝13a側に延びる部分の外周面は、第1の円弧状部16aよりも曲率半径の大きな円弧状をなして延びる第2の円弧状部16bとされて、一方のインサート切屑排出溝13a側に向かうに従い互いの間隔が小さくなるように形成されている。また、第1の円弧状部16aとは反対側の第2の円弧状部16bの突端は、さらに円弧によって丸められている。すなわち、本実施形態における凸部16は、軸線Oに直交する断面が概略卵形に形成されている。
さらにまた、この凸部16の後端面からさらに後端側には、軸線Oを中心とする円柱状の軸部17が突出するように形成されていて、この軸部17の外径はインサート取付座6の上記孔部8に嵌め入れ可能な大きさとされている。ここで、この軸部17と孔部8との嵌め入れ公差は、凸部16と凹部7との嵌め入れ公差よりも小さい。
さらにまた、この軸部17と凸部16との間には、上述のように2つの側面15bを2つの壁面6bに摺接させるとともに、2つの当接面15cを2つのトルク受け面6cに当接させてインサート本体11をインサート取付座6に挿入し、着座面15aをスラスト受け面6aに密着させた状態で、上記ネジ孔9の開口部に臨むように切欠部18が形成されている。この切欠部18は、凸部16側に形成された部分が軸線Oに対して急角度で傾斜するとともに、軸部17側に形成された部分はこれよりも軸線Oに対して緩やかな角度で傾斜するV字状とされている。
このような切削インサートのインサート本体11は、上述のように軸部17を孔部8に嵌め入れるとともに、凸部16を凹部7に嵌め入れつつ、2つの側面15bを2つの壁面6bに摺接させるとともに、2つの当接面15cを2つのトルク受け面6cに当接させてインサート取付座6に挿入され、着座面15aをスラスト受け面6aに密着させた上で、ネジ孔9にねじ込まれたクランプネジ19の先端部が切欠部18に当接することにより、インサート取付座6に着脱可能に取り付けられる。クランプネジ19の先端部は円錐台状とされている。
このように構成された刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体1においては、切削インサートの芯出しを行うドリル本体1の孔部8が軸線Oを中心とした断面円形であるとともに、この孔部8に嵌め入れられるインサート本体11の軸部17も軸線Oを中心とした円柱状であるので、インサート本体11の軸部17とドリル本体1の孔部8とを精度よく成形することができる。このため、切削インサートをドリル本体1と正確に軸線Oに関して同軸に取り付けることが可能となるので、高い加工精度を確保することができる。
そして、上記構成の刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体では、この孔部8とインサート取付座6のスラスト受け面6aとの間に形成される凹部7と、軸部17とインサート本体11の着座面15aとの間に形成される凸部16とが、軸線Oに直交する断面において、軸線Oに関して非対称な形状に形成されている。なお、凹部7と凸部16とが、軸線Oに直交する断面において、この軸線Oに関して非対称な形状に形成されているとは、凸部16を凹部7に対して軸線O回りに回転させたときには、360°回転(1回転)させなければ再び凹部7に嵌め入れることができない形状であることを意味する。
このため、本実施形態では、例えば凸部16が凹部7に嵌まり込んだ状態からインサート本体11を180°回転(半回転)させて凸部16の第2の円弧状部16bが凹部7の第1の円弧状部7aに位置するような姿勢では、切削インサートの着座面15aとインサート取付座6のスラスト受け面6aとの間に隙間があいてしまうので、これら凹部7に凸部16が嵌まり込む姿勢でしか切削インサートをインサート取付座6に取り付けることができなくなる。
このため、誤って切欠部18とは反対側の軸部17の外周面がネジ孔9に面するように切削インサートが装着されて、そのままクランプネジ19がねじ込まれることにより、切削インサートが誤装着されてしまうのを防ぐことができる。従って、このような誤装着によって穴明け加工中に切削インサートにがたつきが生じて加工精度が損なわれたり、切削インサートが脱落してしまったりするのを防ぐことが可能となり、一層高い加工精度を得ることができるとともに、安定した穴明け加工を行うことができる。凸部16と凹部7との嵌め入れ公差は、軸部17と孔部8との嵌め入れ公差よりも大きくてよいので、切削インサートとドリル本体1の製造が容易である。
また、本実施形態では、上記凹部7と凸部16とが、軸線Oに直交する断面において、軸線Oを中心とする第1の円弧状部7a、16aと、この第1の円弧状部7a、16aよりも曲率半径の大きな円弧状をなして上記一方の本体切屑排出溝5aと上記一方のインサート切屑排出溝13aに連なる第2の円弧状部7b、16bとを備えていて、このうち第2の円弧状部7bよりなる凹部7の壁面は、一方の本体切屑排出溝5aへの開口部側に向かうに従い互いの間隔が小さくなるように形成される。
従って、例えばこれらの壁面が間隔一定のまま一方の本体切屑排出溝5aに開口していたり、逆に間隔が大きくなるようにして一方の本体切屑排出溝5aに開口していたりする場合に比べ、この一方の本体切屑排出溝5aへの開口部近傍におけるドリル本体1の肉厚を大きく確保することができ、ドリル本体1の強度を向上させることができる。また、本実施形態では、上述のように凸部16を軸線Oに直交する断面が概略卵形に形成することができるので、凸部16に欠け等が生じるのを防ぐことができる。
ただし、こうして凹部7と凸部16に、第1の円弧状部7a、16aよりも曲率半径の大きな円弧状をなして上記一方の本体切屑排出溝5aと上記一方のインサート切屑排出溝13aに連なる第2の円弧状部7b、16bとを備えるのに代えて、図1におけるZZ断面図に相当する断面図を図8に示す本発明の第2の実施形態のように、上記凹部7と凸部16とは、軸線Oに直交する断面において、第1の実施形態と同じく軸線Oを中心とする第1の円弧状部7a、16aよりなる壁面と、この第1の円弧状部7a、16aに接する直線状をなして一方の本体切屑排出溝5aと一方のインサート切屑排出溝13aに連なるに連なる2つの直線状部7c、16cよりなる壁面とを備えていてもよい。
ここで、図8に示す第2の実施形態では、2つの直線状部7c、16cが、軸線Oに直交する断面において、第1の円弧状部7a、16aから離れるに従い鋭角に交差する方向に延びており、従ってこれら2つの直線状部7cよりなる壁面も、一方の本体切屑排出溝5aへの凹部7の開口部側に向けて互いの間隔が小さくなるように形成される。また、一方の本体切屑排出溝5aに露出することになる凸部16の2つの直線状部16cの間の側面16dは、一方の本体切屑排出溝5aの底面に合わせて凹曲面状に形成されている。
また、第1の実施形態のように、ドリル本体1と切削インサートに、2条ずつの本体切屑排出溝5a、5bとインサート切屑排出溝13a、13bが形成されている場合には、図1におけるZZ断面図に相当する断面図を図9に示す本発明の第3の実施形態のように、凹部7はこれら2条の本体切屑排出溝5a、5bに開口していてもよい。なお、この第3の実施形態では、凸部16の2つの側面16dが2条のインサート切屑排出溝13a、13bの底面に連なっていて、凹部7の2条の本体切屑排出溝5a、5bへの開口幅と凸部16の2つの側面16dの幅とが互いに異なる大きさとされている。
また、この第3の実施形態でも、第2の実施形態と同様に凹部7の第1の円弧状部7aから離れるに従い鋭角に交差する方向に延びる2つの直線状部7cが一方の本体切屑排出溝5aへの開口部に連なっているとともに、第1の円弧状部7aが他方の本体切屑排出溝5bに開口して連なっていて、インサート本体11の凸部16における第1の円弧状部16aにも側面16dが形成されている。これらの側面16dも、2条の本体切屑排出溝5a、5bの底面に合わせて凹曲面状に形成されている。
このような第2、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に凹部7と凸部16とが、軸線Oに直交する断面において、軸線Oに関して非対称な形状に形成されることになるので、切削インサートのインサート取付座6への誤装着を防止して、穴明け加工中の切削インサートのがたつきや脱落を防ぐことができる。
また、第2、第3の実施形態でも、凹部7の2つの直線状部7cよりなる壁面が、一方の本体切屑排出溝5aへの開口部側に向けて互いの間隔が小さくなるように形成されているとともに、第3の実施形態では、他方の本体切屑排出溝5bに開口する第1の円弧状部7aも、この開口部に向けて互いの間隔が小さくなるように形成されているので、本体切屑排出溝5a、5bへの開口部近傍におけるドリル本体1の肉厚を大きく確保することができて強度を向上させることができる。
また、第3の実施形態では、凹部7が2条の本体切屑排出溝5a、5bに開口しているので、この凹部7に嵌め入れられるインサート本体11の凸部16の断面積とこの凸部16に連なる軸部17の直径とを大きくすることができ、切刃14の直径が小径の刃先交換式ドリルにおいても軸部17の強度を確保することができる。
さらに、これら第1〜第3の実施形態では、インサート本体11の5角形状の部分は軸線Oに関して180°回転対称形状とされているので、2つのインサート切屑排出溝13a、13bや側面15b、当接面15cを形成するのに、同一の工具を用いて同一の加工で形成することができ、製造が容易である。
1 ドリル本体
5a、5b 本体切屑排出溝
6 インサート取付座
6a スラスト受け面
6c トルク受け面
7 凹部
7a 凹部7の第1の円弧状部
7b 凹部7の第2の円弧状部
7c 凹部7の直線状部
8 孔部
9 ネジ孔
11 インサート本体
12 先端逃げ面
13a、13b インサート切屑排出溝
14 切刃
15a 着座面
15c 当接面
16 凸部
16a 凸部16の第1の円弧状部
16b 凸部16の第2の円弧状部
16c 凸部16の直線状部
16d 凸部16の側面
17 軸部
18 切欠部
19 クランプネジ
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向
5a、5b 本体切屑排出溝
6 インサート取付座
6a スラスト受け面
6c トルク受け面
7 凹部
7a 凹部7の第1の円弧状部
7b 凹部7の第2の円弧状部
7c 凹部7の直線状部
8 孔部
9 ネジ孔
11 インサート本体
12 先端逃げ面
13a、13b インサート切屑排出溝
14 切刃
15a 着座面
15c 当接面
16 凸部
16a 凸部16の第1の円弧状部
16b 凸部16の第2の円弧状部
16c 凸部16の直線状部
16d 凸部16の側面
17 軸部
18 切欠部
19 クランプネジ
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向
Claims (5)
- 軸線回りに回転されるドリル本体の先端部にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式ドリルであって、
上記ドリル本体の先端部外周には、該ドリル本体の先端面に開口して後端側に延びる本体切屑排出溝が形成されるとともに、
上記切削インサートには、該切削インサートの先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、
このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、
上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に凹むとともに上記本体切屑排出溝に開口する凹部と、この凹部の底面からさらに上記ドリル本体の後端側に凹む上記軸線を中心とした断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記凹部と上記孔部とのうち少なくとも一方に開口するネジ孔とが形成されるとともに、
上記切削インサートには、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記切削インサートの後端側に突出して上記凹部に嵌め入れられる凸部と、この凸部の後端面からさらに上記切削インサートの後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部と、この軸部と上記凸部とのうち少なくとも一方に設けられる切欠部が形成され、
上記切削インサートは、上記ネジ孔にねじ込まれるクランプネジが上記切欠部に当接することによって上記インサート取付座に取り付けられるとともに、
上記凹部と上記凸部とは、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されていることを特徴とする刃先交換式ドリル。 - 上記凹部は、上記本体切屑排出溝への開口部側に向かうに従い互いの間隔が小さくなる壁部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式ドリル。
- 上記ドリル本体と上記切削インサートには、2条ずつの上記本体切屑排出溝と上記インサート切屑排出溝とが形成されており、上記凹部は上記2条の上記本体切屑排出溝に開口していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式ドリル。
- 請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の刃先交換式ドリルにおける上記ドリル本体の上記インサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、
インサート本体の先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、
このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、
上記インサート本体には、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記インサート本体の後端側に突出して上記凹部に嵌め入れられる凸部と、この凸部の後端面からさらに上記インサート本体の後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部と、この軸部と上記凸部とのうち少なくとも一方に設けられる切欠部が形成され、
上記凸部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の刃先交換式ドリルにおけるドリル本体であって、
先端部に上記インサート取付座が形成されるとともに、先端部外周には先端面に開口して後端側に延びる上記本体切屑排出溝が形成され、
上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に凹むとともに上記本体切屑排出溝に開口する凹部と、この凹部の底面からさらに上記ドリル本体の後端側に凹む上記軸線を中心とした断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記凹部と上記孔部とのうち少なくとも一方に開口するネジ孔とが形成されるとともに、
上記凹部は、上記軸線に直交する断面において、該軸線に関して非対称な形状に形成されていることを特徴とするドリル本体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019064611A JP2020163496A (ja) | 2019-03-28 | 2019-03-28 | 刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019064611A JP2020163496A (ja) | 2019-03-28 | 2019-03-28 | 刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020163496A true JP2020163496A (ja) | 2020-10-08 |
Family
ID=72715091
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019064611A Pending JP2020163496A (ja) | 2019-03-28 | 2019-03-28 | 刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020163496A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2023075983A (ja) * | 2021-11-22 | 2023-06-01 | ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社 | ヘッド交換式ドリル |
-
2019
- 2019-03-28 JP JP2019064611A patent/JP2020163496A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2023075983A (ja) * | 2021-11-22 | 2023-06-01 | ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社 | ヘッド交換式ドリル |
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