JP2020163497A - 刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体 - Google Patents
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Abstract
【課題】切削インサートの芯出しのための軸部を円柱状としても、切削インサートの誤装着を防止する。【解決手段】軸線O回りに回転されるドリル本体1の先端部に形成されたインサート取付座6に切削インサートが着脱可能に取り付けられ、インサート取付座6に形成されたスラスト受け面6aからドリル本体1の後端側に凹む軸線Oと平行な中心線Cを中心とした断面円形の孔部7が形成され、切削インサートにはドリル本体1の後端側を向いてスラスト受け面6aに着座させられる着座面から後端側に突出して孔部7に嵌め入れられる軸線Oと平行な中心線を中心とした円柱状の軸部が形成され、孔部7および軸部の中心線Cは軸線Oから偏心している。【選択図】図6
Description
本発明は、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式ドリルであって、特に切削インサートを誤った向きでインサート取付座に取り付ける誤装着を防止した刃先交換式ドリル、このような刃先交換式ドリルの切削インサート、およびドリル本体に関するものである。
このような誤装着を防止した刃先交換式ドリルとして、例えば特許文献1には、前端および後端を有する基体(ドリル本体)であって、前端および後端の間で第1の中心軸が延び、第1の中心軸の回りで所定の回転方向に回転する基体と、前端および後端を有するルーズトップ(切削インサート)であって、前端および後端の間で第2の中心軸が延びるルーズトップとを備えたものが記載されている。
上記基体の前端は、二つの突出部と底面とにより範囲を定められ、ルーズトップの一部分を受け入れる谷部と、ルーズトップから軸方向後方に突出し、谷部の底面に開口する軸方向の中心孔に挿入される芯出しピンとを備え、基体には芯出しピンと協働するねじのためのねじ孔が開口している。
上記中心孔は基体の第1の中心軸と同心である筒状の第1の面部分を含み、第1の面部分に対してルーズトップの芯出しピンがねじによって押され、ルーズトップの芯出しピンが、軸方向と周方向にそれぞれ延長し、直径方向に対向する二つの外側の面を含み、第1の面が中心孔の第1の面部分に対して押されるとともに軸方向に延びる二つの境界点の間を接線方向に延びる接触面を形成する。
これら二つの境界点はルーズトップの第2の中心軸と一致する中心を有する仮想的な外接円に沿って配置され、二つの境界点の間で円弧角が180゜より小さく、第2の面は、芯出しピンの断面積が中心孔の断面積より小さいために、中心孔の内側と接触しない逃げ面を形成する。
さらに上記外接円は、中心孔の筒状の第1の面部分に沿う内接円の半径と等しい大きさの半径を有し、ルーズトップの第2の中心軸と芯出しピンの逃げ面としての後面上の点との間の半径方向の距離が、外接円の半径より大きく、基体の第1の中心軸と中心孔の第1の面部分に対向する逃げ面との間の対応する半径より小さく、所定の向き以外の他の向きで芯出しピンを中心孔に挿入できなくする。
しかしながら、この特許文献1に記載された刃先交換式ドリルでは、切削インサートの芯出しピンが円柱状ではないために、切削インサートを精度よく成形することが困難となる。このため、切削インサートをドリル本体と正確に同軸に取り付けることができなくなって、加工精度が損なわれるおそれがある。
本発明は、このような背景の下になされたもので、切削インサートの芯出しのための軸部を円柱状としても、切削インサートの誤装着を防止することが可能で、優れた加工精度を得ることができる刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体を提供することを目的としている。
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の刃先交換式ドリルは、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式ドリルであって、上記ドリル本体の先端部外周には、該ドリル本体の先端面に開口して後端側に延びる本体切屑排出溝が形成されるとともに、上記切削インサートには、該切削インサートの先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に凹む上記軸線と平行な中心線を中心とした断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記軸線に垂直に延びて上記孔部に開口するネジ孔とが形成されるとともに、上記切削インサートには、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記切削インサートの後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる上記軸線と平行な中心線を中心とした円柱状の軸部と、この軸部に設けられる切欠部とが形成され、上記切削インサートは、上記ネジ孔にねじ込まれるクランプネジが上記切欠部に当接することによって上記インサート取付座に取り付けられるとともに、上記孔部および上記軸部の中心線は、上記軸線から偏心していることを特徴とする。
また、本発明の切削インサートは、このような刃先交換式ドリルにおける上記ドリル本体の上記インサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、インサート本体の先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、上記インサート本体には、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記インサート本体の後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部と、この軸部に設けられる切欠部とが形成されるとともに、上記軸部の中心線は、上記軸線から偏心していることを特徴とする。
さらに、本発明のドリル本体は、上述のような刃先交換式ドリルにおけるドリル本体であって、先端部に上記インサート取付座が形成されるとともに、先端部外周には先端面に開口して後端側に延びる上記本体切屑排出溝が形成され、上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記凹部に開口するネジ孔とが形成されるとともに、上記孔部の中心線は、上記軸線から偏心していることを特徴とする。
このような刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体においては、切削インサートの芯出しを行うドリル本体の孔部が軸線を中心とした断面円形であるとともに、この孔部に嵌め入れられるインサート本体の軸部が円柱状であるので、切削インサートを精度よく成形することができてドリル本体と正確に同軸に取り付けることが可能となり、高い加工精度を確保することができる。
そして、これら孔部および軸部の中心線は、ドリル本体の軸線から偏心しているので、上記構成の刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体では、切削インサートの当接面をインサート取付座のトルク受け面に当接させた状態では、孔部に軸部が嵌まり込む姿勢でしか切削インサートをインサート取付座に取り付けることができない。
このため、誤って切欠部以外の軸部の外周面がネジ孔に面するように切削インサートが装着されて、そのままクランプネジがねじ込まれることにより、穴明け加工中に切削インサートにがたつきが生じて加工精度が損なわれたり、切削インサートが脱落してしまったりする事態が生じるのを防ぐことが可能となる。
ここで、上記ドリル本体と上記切削インサートには、2条ずつの上記本体切屑排出溝と上記インサート切屑排出溝とが上記軸線に関して180°回転対称形状に形成されている場合には、上記軸線に垂直で上記ネジ孔の中心線に沿った断面において、上記孔部および上記軸部の中心線と上記軸線とを結ぶ直線が、2条の上記本体切屑排出溝と上記ドリル本体の外周面との交点と上記軸線とを結ぶ直線に対して、上記軸線を中心として上記本体切屑排出溝から離れる側に10°〜80°の角度の範囲内に延びていることが望ましい。
これにより、軸線から偏心した孔部と本体切屑排出溝との間にドリル本体の肉厚を確保して孔部の周辺の強度を維持することができるので、穴明け加工時に切刃から切削インサートに大きな切削負荷が作用した場合でも、ドリル本体に損傷が生じるような事態を防止することが可能となる。
また、上記孔部および上記軸部の中心線は、上記切刃の直径の0.3%〜5.0%の範囲内の間隔をあけて上記軸線から偏心していることが望ましい。孔部および軸部の中心線と軸線との間隔が切刃の直径の0.3%未満であると、孔部と軸部の直径や嵌め入れ公差によっては切削インサートが誤装着されてしまうおそれがある。また、孔部および軸部の中心線と軸線との間隔が切刃の直径の5.0%よりも大きいと、中心線が軸線から離れすぎてしまい、孔部や軸部の製造誤差によっては切削インサートの当接面をインサート取付座のトルク受け面に当接させた状態で孔部に軸部を嵌め入れることができなくなるおそれが生じる。
以上説明したように、本発明によれば、切削インサートをドリル本体に正確に同軸に取り付けることができるとともに、切削インサートの誤装着を防ぐことができ、高い加工精度を得ることができるのに併せて、切削加工中の切削インサートのがたつきや脱落を防止することが可能となる。
図1および図2は、本発明の刃先交換式ドリルの一実施形態を示すものであり、図3および図4は、この実施形態の刃先交換式ドリルの分解図を示すものである。また、図5〜図7は、本発明のドリル本体の一実施形態を示すものであり、図8は、この実施形態のドリル本体に着脱可能に取り付けられる本発明の切削インサートの一実施形態を示すものである。
ドリル本体1は、鋼材等の金属材料によって軸線Oを中心とした多段の円柱状に形成されており、その後端部(図1、図3〜図5において右側部分)は大径のシャンク部2とされるとともに、先端部(図1、図3〜図5において左側部分)はシャンク部2よりも小径で切削インサートが着脱可能に取り付けられる切刃部3とされている。また、シャンク部2と切刃部3との間には、直径がシャンク部2の直径から一段僅かに縮径した後、先端側に向かうに従い漸次縮径して切刃部3の手前でさらに僅かに一段縮径する円錐台状の首部4が形成されている。
このような刃先交換式ドリルは、ドリル本体1のシャンク部2が工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りにドリル回転方向Tに回転されつつ該軸線O方向先端側に送り出されることにより、切削インサートの切刃によって被削材に穴明け加工を行う。なお、シャンク部2の外周面には、シャンク部2の先端と後端の間に間隔をあけて軸線Oに平行に延びる平坦面2aが形成されている。
切刃部3の先端から首部4の後端の手前にかけてドリル本体1の外周部には、複数の本体切屑排出溝が周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、2条の本体切屑排出溝5a、5bが周方向に等間隔に形成されており、これらの本体切屑排出溝5a、5bはドリル本体1の後端側に向かうに従い軸線O回りにドリル回転方向Tとは反対側に緩やかに捩れる螺旋状とされている。
切刃部3の先端部には、インサート取付座6が形成されている。このインサート取付座6は、切刃部3の先端部を、2つの本体切屑排出溝5a、5bのドリル回転方向Tを向く壁面からドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面に亙って、軸線Oに対する径方向に切り欠くようにして形成されている。
このインサート取付座6は、軸線Oに垂直な方向に延びてドリル本体1の先端側を向く底面であるスラスト受け面6aと、このスラスト受け面6aの両側部から、スラスト受け面6aに対して垂直で軸線Oに平行に延びるとともに互いにも平行に延び、軸線Oを間にして対向する2つの壁面6bと、やはりスラスト受け面6aに対して垂直で軸線Oに平行に延びるとともに互いにも平行に延び、2つの壁面6bのドリル回転方向T側の縁部に鈍角に交差してドリル本体1の外周側に延びるドリル回転方向Tを向く2つのトルク受け面6cとを備えている。
さらに、スラスト受け面6aには、ドリル本体1の後端側に凹む孔部7が形成されている。この孔部7は、軸線Oに直交する断面が軸線Oに平行な中心線Cを中心とする円形とされていて、一定の断面形状のまま後端側に延び、ドリル本体1の先端側を向く底面を有する止まり孔状に形成されている。
さらにまた、2つの本体切屑排出溝5a、5bのうち一方の本体切屑排出溝5aのドリル回転方向T側に隣接する切刃部3の外周面には、軸線Oに垂直に内周側に延びる1つのネジ孔8が形成されており、このネジ孔8は孔部7の先端側に開口している。このネジ孔8を除いて、インサート取付座6を含めた切刃部3は軸線Oに関して180°回転対称形状に形成されている。
このようなインサート取付座6に着脱可能に取り付けられる切削インサートは、ドリル本体1よりも硬度の高い超硬合金等の硬質材料によって形成されたインサート本体11を備えている。このインサート本体11は、後述する軸部を除いて、図8に示すように概略ホームベース形の5角形の板状に形成されており、この5角形状の部分は軸線Oに関して180°回転対称形状とされている。
このインサート本体11には、インサート取付座6に取り付けられた状態において、ドリル本体1の先端側を向く先端逃げ面12と、この先端逃げ面12に開口して2条の本体切屑排出溝5a、5bにそれぞれ連通する2条のインサート切屑排出溝13a、13bが形成されており、これらのインサート切屑排出溝13a、13bのドリル回転方向Tを向く壁面と先端逃げ面12との交差稜線部に切刃14が形成されている。先端逃げ面12には、ドリル回転方向Tとは反対側とドリル本体1の外周側に向かうに従いドリル本体1の後端側に向かうように傾斜が与えられており、これによって切刃14には逃げ角と先端角が与えられる。
また、同じくインサート取付座6に取り付けられた状態において、インサート本体11の後端面は軸線Oに垂直な平面とされて、ドリル本体1の後端側を向いてインサート取付座6の上記スラスト受け面6aに着座させられる軸線Oに垂直な方向に延びる着座面15aとされている。
さらに、インサート本体11の5角形状面は、2つのインサート切屑排出溝13a、13bのドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面からドリル回転方向T側に向けて、着座面15aに対して垂直で軸線Oに平行に延びるとともに互いにも平行に延び、軸線Oを間にして互いに反対側を向く2つの側面15bと、これら2つの側面15bのドリル回転方向T側の縁部に鈍角に交差してインサート本体11の外周側に延びるとともに、着座面15aに対して垂直で、互いに平行かつ軸線Oにも平行なドリル回転方向Tとは反対側を向く2つの当接面15cとを備えている。
上記2つの側面15b間の間隔は、これら2つの側面15bがインサート取付座6の2つの壁面6bに摺接可能な間隔とされており、また当接面15cが側面15bに対してなす角度は、インサート取付座6の壁面6bに対してトルク受け面6cがなす角度と等しくされていて、このように2つの側面15bを2つの壁面6bに摺接させてインサート本体11をインサート取付座6に挿入することにより、2つの当接面15cは2つのトルク受け面6cにドリル回転方向Tとは反対側に向けて当接可能とされている。
また、インサート本体11の着座面15aには、円柱状の軸部16が、孔部7の中心線Cと同軸となる中心線Cを軸線Oに平行にして突出するように形成されている。従って、この軸部16の外径はインサート取付座6のスラスト受け面6aに形成された上記孔部7に嵌め入れ可能な大きさとされている。
さらにまた、この軸部16には、上述のように2つの側面15bを2つの壁面6bに摺接させるとともに、2つの当接面15cを2つのトルク受け面6cに当接させてインサート本体11をインサート取付座6に挿入し、着座面15aをスラスト受け面6aに密着させた状態で、上記ネジ孔8の開口部に臨むように切欠部17が形成されている。この切欠部17は、ドリル本体1の先端側に形成された部分が軸線Oに対して急角度で傾斜するとともに、後端側に形成された部分はこれよりも軸線Oに対して緩やかな角度で傾斜するV字状とされている。
このような切削インサートのインサート本体11は、上述のように軸部16を孔部7に嵌め入れつつ、2つの側面15bを2つの壁面6bに摺接させるとともに、2つの当接面15cを2つのトルク受け面6cに当接させてインサート取付座6に挿入され、着座面15aをスラスト受け面6aに密着させた上で、ネジ孔8にねじ込まれたクランプネジ18の先端部が切欠部17に当接することにより、インサート取付座6に着脱可能に取り付けられる。クランプネジ18の先端部は円錐台状とされている。
そして、さらにドリル本体1における孔部7と切削インサートのインサート本体11における軸部16との互いに同軸とされた中心線Cは、ドリル本体1の軸線Oから偏心している。ここで、本実施形態では、孔部7および軸部16の中心線Cは、切刃14の直径(切刃14の外周端が軸線O回りになす円の直径)Dに対して0.3%〜5.0%の範囲内の間隔dをあけて軸線Oから偏心しており、具体的には0.1mm〜0.5mmの間隔dをあけていて、特に本実施形態では0.3mmの間隔dをあけている。
また、本実施形態では、図7に示すように軸線Oに垂直でネジ孔8の中心線Lに沿った断面において、孔部7および軸部16の中心線Cと軸線Oとを結ぶ直線Mは、2条の本体切屑排出溝5a、5bとドリル本体1の外周面とのすべての交点と軸線Oとを結ぶ直線に対して、軸線Oを中心として本体切屑排出溝5a、5bから離れる側に10°〜80°の範囲内の角度θで延びている。
具体的に、本実施形態においては、図7に示すように、ネジ孔8があけられたドリル本体1の切刃部3における外周面のドリル回転方向Tとは反対側に位置する上記一方の本体切屑排出溝5aのドリル回転方向T側を向く壁面とドリル本体1の外周面との交点Pと軸線Oとを結ぶ直線Nに対して、孔部7および軸部16の中心線Cと軸線Oとを結ぶ直線Mは、軸線Oを中心にドリル回転方向Tとは反対側に45°の角度θをなすようにして延びている。
このように構成された刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体1においては、切削インサートの芯出しを行うドリル本体1の孔部7が断面円形であるとともに、この孔部7に嵌め入れられるインサート本体11の軸部16も円柱状であるので、インサート本体11の軸部16とドリル本体1の孔部7とを精度よく成形することができる。このため、切削インサートをドリル本体1と正確に軸線Oに関して同軸に取り付けることが可能となるので、高い加工精度を確保することができる。
そして、上記構成の刃先交換式ドリル、切削インサート、およびドリル本体では、これら孔部7および軸部16の中心線Cは、ドリル本体1の軸線Oから偏心しているので、例えば軸部16が孔部7に嵌まり込んだ状態からインサート本体11を軸線O回りに180°回転(半回転)させた姿勢では、軸部16がインサート取付座6のスラスト受け面6aに当接してしまうので、これら孔部7に軸部16が嵌まり込む姿勢でしか切削インサートをインサート取付座6に取り付けることができなくなる。
このため、誤って切欠部17とは反対側の軸部16の外周面がネジ孔8に面するように切削インサートが装着されて、そのままクランプネジ18がねじ込まれることにより、切削インサートが誤装着されてしまうのを防ぐことができる。従って、このような誤装着によって穴明け加工中に切削インサートにがたつきが生じて加工精度が損なわれたり、切削インサートが脱落してしまったりするのを防ぐことが可能となり、一層高い加工精度を得ることができるとともに、安定した穴明け加工を行うことができる。また、本実施形態では、インサート本体11の5角形板状の部分は軸線Oに関して180°回転対称形状とされているので、2つのインサート切屑排出溝13a、13bや側面15b、当接面15cを形成するのに、同一の工具を用いて同一の加工で形成することができ、製造が容易である。
さらに、本実施形態では、ドリル本体1と切削インサートに、2条ずつの本体切屑排出溝5a、5bとインサート切屑排出溝13a、13bとが軸線Oに関して180°回転対称形状に形成されており、軸線Oに垂直でネジ孔8の中心線Lに沿った断面において、孔部7および軸部16の中心線Cと軸線Oとを結ぶ直線Mが、2条の本体切屑排出溝5a、5bとドリル本体1の切刃部3の外周面との交点と軸線Oとを結ぶ直線に対して、軸線Oを中心として本体切屑排出溝5a、5bから離れる側に10°〜80°の範囲内の角度θで延びている。
このため、ドリル本体1において軸線Oから偏心した孔部7と本体切屑排出溝5a、5bとの間に肉厚を確保することができ、孔部7の周辺のドリル本体1の強度を維持することができる。従って、穴明け加工時に切刃14から切削インサートに大きな切削負荷が作用した場合でも、軸部16がドリル本体1を突き破って損傷が生じるような事態を防止することが可能となる。
また、本実施形態では、孔部7および軸部16の中心線Cは、切刃14の直径Dの0.3%〜5.0%の範囲内の間隔dをあけて軸線Oから偏心している。このため、切削インサートの誤装着を一層確実に防止することができるとともに、孔部7や軸部16に多少の製造誤差があっても、切削インサートの当接面15cをインサート取付座6のトルク受け面6cに当接させた状態で孔部7に軸部16を嵌め入れて、正しい姿勢で切削インサートを取り付けることができる。
すなわち、孔部7および軸部16の中心線Cと軸線Oとの間隔dが切刃14の直径Dの0.3%未満であると、中心線Cが軸線Oに近づきすぎてしまい、孔部7と軸部16の直径や嵌め入れ公差によっては中心線Cが軸線Oから偏心していても切削インサートが誤装着されてしまうおそれがある。
また、逆に、孔部7および軸部16の中心線Cと軸線Oとの間隔dが切刃14の直径Dの5.0%よりも大きいと、中心線Cが軸線Oから離れすぎてしまい、孔部7や軸部16の製造誤差によっては正しい姿勢で切削インサートの当接面15cをインサート取付座6のトルク受け面6cに当接させても、孔部7に軸部16を嵌め入れることができなくなるおそれが生じる。
1 ドリル本体
5a、5b 本体切屑排出溝
6 インサート取付座
6a スラスト受け面
6c トルク受け面
7 孔部
8 ネジ孔
11 インサート本体
12 先端逃げ面
13a、13b インサート切屑排出溝
14 切刃
15a 着座面
15c 当接面
16 軸部
17 切欠部
18 クランプネジ
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向
C 孔部7と軸部16の中心線
D 切刃14の直径
L ネジ孔8の中心線
M 中心線Cと軸線Oとを結ぶ直線
P 軸線Oに垂直でネジ孔8の中心線Lに沿った断面における一方の本体切屑排出溝5aのドリル回転方向T側を向く壁面とドリル本体1の外周面との交点
N 交点Pと軸線Oとを結ぶ直線
θ 直線Nと直線Mとの角度
d 中心線Cと軸線Oとの間隔
5a、5b 本体切屑排出溝
6 インサート取付座
6a スラスト受け面
6c トルク受け面
7 孔部
8 ネジ孔
11 インサート本体
12 先端逃げ面
13a、13b インサート切屑排出溝
14 切刃
15a 着座面
15c 当接面
16 軸部
17 切欠部
18 クランプネジ
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向
C 孔部7と軸部16の中心線
D 切刃14の直径
L ネジ孔8の中心線
M 中心線Cと軸線Oとを結ぶ直線
P 軸線Oに垂直でネジ孔8の中心線Lに沿った断面における一方の本体切屑排出溝5aのドリル回転方向T側を向く壁面とドリル本体1の外周面との交点
N 交点Pと軸線Oとを結ぶ直線
θ 直線Nと直線Mとの角度
d 中心線Cと軸線Oとの間隔
Claims (5)
- 軸線回りに回転されるドリル本体の先端部にインサート取付座が形成され、このインサート取付座に切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式ドリルであって、
上記ドリル本体の先端部外周には、該ドリル本体の先端面に開口して後端側に延びる本体切屑排出溝が形成されるとともに、
上記切削インサートには、該切削インサートの先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、
このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、
上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に凹む上記軸線と平行な中心線を中心とした断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記軸線に垂直に延びて上記孔部に開口するネジ孔とが形成されるとともに、
上記切削インサートには、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記切削インサートの後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる上記軸線と平行な中心線を中心とした円柱状の軸部と、この軸部に設けられる切欠部とが形成され、
上記切削インサートは、上記ネジ孔にねじ込まれるクランプネジが上記切欠部に当接することによって上記インサート取付座に取り付けられるとともに、
上記孔部および上記軸部の中心線は、上記軸線から偏心していることを特徴とする刃先交換式ドリル。 - 上記ドリル本体と上記切削インサートには、2条ずつの上記本体切屑排出溝と上記インサート切屑排出溝とが上記軸線に関して180°回転対称形状に形成されており、
上記軸線に垂直で上記ネジ孔の中心線に沿った断面において、上記孔部および上記軸部の中心線と上記軸線とを結ぶ直線は、2条の上記本体切屑排出溝と上記ドリル本体の外周面との交点と上記軸線とを結ぶ直線に対して、上記軸線を中心として上記本体切屑排出溝から離れる側に10°〜80°の範囲内の角度で延びていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式ドリル。 - 上記孔部および上記軸部の中心線は、上記切刃の直径の0.3%〜5.0%の範囲内の間隔をあけて上記軸線から偏心していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式ドリル。
- 請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の刃先交換式ドリルにおける上記ドリル本体の上記インサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、
インサート本体の先端逃げ面に開口して上記本体切屑排出溝に連通するインサート切屑排出溝が形成されており、
このインサート切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成され、
上記インサート本体には、上記ドリル本体の後端側を向いて上記スラスト受け面に着座させられる着座面と、ドリル回転方向とは反対側を向いてドリル回転方向から上記トルク受け面に当接させられる当接面と、上記着座面から上記インサート本体の後端側に突出して上記孔部に嵌め入れられる円柱状の軸部と、この軸部に設けられる切欠部とが形成されるとともに、
上記軸部の中心線は、上記軸線から偏心していることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1から請求項3うちいずれか一項に記載の刃先交換式ドリルにおけるドリル本体であって、
先端部に上記インサート取付座が形成されるとともに、先端部外周には先端面に開口して後端側に延びる上記本体切屑排出溝が形成され、
上記インサート取付座には、上記ドリル本体の先端側を向くスラスト受け面と、このスラスト受け面に対して上記ドリル本体の先端側に延びてドリル回転方向を向くトルク受け面と、上記スラスト受け面から上記ドリル本体の後端側に断面円形の孔部と、上記ドリル本体の外周面から上記孔部に開口するネジ孔とが形成されるとともに、
上記孔部の中心線は、上記軸線から偏心していることを特徴とするドリル本体。
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