JP2020162421A - 海苔養殖用支柱、及びその製造方法 - Google Patents

海苔養殖用支柱、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】手作業での取扱い性に優れ、軽量性と高剛性を両立でき、比較的安価で実用性に富む、FRP製の海苔養殖用支柱の提供。【解決手段】熱可塑性樹脂からなる中芯層と、その外周に形成されたFRP層と、FRP層の外周に形成された被覆層とを有する密着一体化した複合構造の海苔養殖用支柱であって、中芯層は、FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成され、該FRP層は、中芯層の長手方向の外周にガラス繊維と炭素繊維を含む長繊維の強化繊維が縦添い状に結着され、炭素繊維は該FRP層の外周側に配置され、FRP層の横断面におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比が60:40〜95:5であり、被覆層は、前記マトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成される海苔養殖用支柱である。【選択図】なし

Description

本発明は、海苔養殖用支柱、及びその製造方法に関する。
海苔養殖は海中に竹などを支柱として、等間隔に配置し、支柱間に網を設置してその網の上で養殖を行う。近年、竹材が入手しにくいことや、太さや長さが不均一であること、耐久性の問題などから、太さの均一化が可能な繊維強化合成樹脂(以下、「FRP」と称する。)製の支柱が使用されるようになった。
海苔養殖用のFRP製支柱の製造方法としては、強化繊維に未硬化状の熱硬化性樹脂組成物を含浸して、加熱された円環状の金型でパイプ状に引抜きながら硬化させつつ連続的に引取る、いわゆる引抜き成形法(1)によるものや、パイプの内径に相当する外径の長尺状マンドレルに、未硬化状の熱硬化性樹脂組成物を含浸した強化繊維をトラバースしながら所定の巻角にて卷回してパイプ層を形成しつつ硬化してパイプ状の支柱を形成する方法(2)などが知られている。
さらに、強化繊維に合成樹脂としてエポキシ樹脂を用いたシート状の繊維強化樹脂材料を、支柱形成用のマンドレルに卷回積層して形成した繊維強化樹脂層を有する構成のFRP製支柱が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記の金型による引抜き成形法(1)では、金型から硬化ないし半硬化したFRP製支柱を引取るには、金型との摩擦抵抗力の存在により高い引取り力を要し、装置が大型化し、消費エネルギー及び設備コストの増大を余儀なくされる。
一方、特許文献1に記載のFRP製支柱の製造方法では、支柱形成用のマンドレルにシート状の繊維強化樹脂材料を卷回積層して形成するため、マンドレルの長さの制約等から、全長が6m程度のものが最大長となる。しかし、海苔養殖の漁場の水深としては、12m程度のところもあり、連続的に長い支柱を得る製造方法としては採用できない。
また、海苔養殖用FRP製支柱は、取り扱い時にFRP層の一部が剥離して手指に突き刺ってけがをすることの防止や、海水中に立設して使用する際のFRP層の加水分解の防止、FRP層の耐候劣化の防止等を目的に、FRP層の外表面は、熱可塑性樹脂等で被覆されていることが好ましい。また、FRP層の内表面も、海水中に立設して使用する際のFRP層の加水分解の防止の観点から被覆されていることが望ましい。
本出願人は、このような機能を備える、熱可塑性樹脂による中芯層、その外周に長繊維状のガラス繊維をマトリックス樹脂で結着したFRP層、FRP層の外周に熱可塑性樹脂被覆層を備えた、熱可塑性樹脂中芯層/FRP層/熱可塑性樹脂被覆層の三層構造を有し、外径が35〜57mmのFRP製支柱を商品名:「コンポーズ、登録商標」として海苔養殖用支柱として上市し、取り扱い性、耐久性、竹に比較した利点などに富むことから、海苔養殖業者に実用上の高い評価を得ている。
特開2007−259838号公報
しかしながら、前記三層構造のFRP製の海苔養殖用支柱でも以下の様な課題が挙げられている。
(i)海苔養殖用支柱の設置は人の手作業で実施されるため、重量が重いと作業がし辛い。
(ii) 海苔養殖用支柱を手でつかむときに太いとつかみにくく作業がし辛く、一方、支柱を単純に細くすると、通常のFRPでは剛性が低下して海中で自立し辛く、網が流されやすくなる。
(iii)養殖場まで通常は船で養殖用支柱などの機材を運搬するが、支柱が嵩高いと運搬の頻度が増加して作業により多くの時間を要する。
(iv)上記課題を解決するためにFRP材料として炭素繊維の利用が考えられるが、炭素繊維のみでFRP製支柱を作製した場合には非常にコスト高となり実用性に乏しい。
そこで、本発明者らは、手作業での取扱い性に優れ、軽量性と高剛性を両立でき、比較的安価で実用性に富む、FRP製の海苔養殖用支柱について鋭意検討して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔4〕の発明を提供する。
〔1〕熱可塑性樹脂からなる中芯層と、該中芯層の外周に形成されたFRP層と、該FRP層の外周に形成された被覆層とを有する密着一体化した複合構造の海苔養殖用支柱であって、該中芯層は、少なくともその外周面が該FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成され、該FRP層は、該中芯層の長手方向の外周に少なくともガラス繊維と炭素繊維を含む長繊維の強化繊維が縦添い状に結着され、該炭素繊維は該FRP層の外周側に配置され、該FRP層の横断面における該ガラス繊維と炭素繊維の断面積比が60:40〜95:5であり、該被覆層は、少なくともその内周面が該FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成されることを特徴とする海苔養殖用支柱。
〔2〕前記FRP層におけるガラス繊維と炭素繊維との断面積比が80:20〜95:5である前記〔1〕に記載の海苔養殖用支柱。
〔3〕前記FRP層におけるガラス繊維と炭素繊維との断面積比が90:10〜95:5であり、該FRP層の長手方向に直交する断面において、炭素繊維の束が該FRP層の外周面側に互いに略同一の中心角で配置されてなる前記〔1〕に記載の海苔養殖用支柱。
〔4〕下記の(i)〜(vii)の工程を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の海苔養殖用支柱の製造方法。
(i)長繊維状の強化繊維として所要本数のガラス繊維束及び炭素繊維束を準備し、集合ガイドの所定のガイド孔に、ガラス繊維束及び炭素繊維束のそれぞれを挿通し、さらに、これらを平行に配列させて含浸槽の含浸操作ガイド、中芯層の外周に所定配置で縦添いさせるための絞りダイス、被覆層用押出機及び製造ラインを通して強化繊維束を引取り可能に準備する工程、
(ii)含浸層に熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む液状の硬化性樹脂組成物を注入する工程、
(iii)中芯層を形成する熱可塑性樹脂を溶融押出機から所定寸法の円管状に連続的に押出し、製造ラインを経て連続的に引取る中芯層製造工程、
(iv)前記(i)で準備された強化繊維束を引取りつつ、含浸槽に含浸操作ガイドを下降させて、強化繊維束に硬化性樹脂組成物を含浸し、これを絞りダイスの孔部の中央を走行する中芯層の外周に縦添いして、余剰の樹脂を絞りダイスにより段階的に絞り、中芯層に強化繊維束が縦添された未硬化状管状物とする工程、
(v)該未硬化状管状物を、溶融押出機のクロスヘッドに通して、被覆層用の熱可塑性樹脂により円環状に押出被覆し、該被覆層を冷却する溶融被覆工程、
(vi)被覆された未硬化状管状物を、硬化槽に導いて内部の未硬化状熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し、密着一体化した複合構造の管状物を引取る工程、及び
(vii)引取られた管状物を海苔養殖用支柱としての所定の長さに切断する工程。
本発明の海苔養殖用支柱は、ガラス繊維のみで構成していた従来のFRP層よりも同外径では高剛性で軽量にできる。また、従来と同程度の剛性としたいのであれば、外径をより細径にすることができ、軽量化と、細径化による取扱い性の向上を図ることができる。
また、本発明の海苔養殖用支柱の製造方法は、手作業での取扱い性に優れ、軽量性と高剛性を両立でき、比較的安価で実用性に富む、本発明の海苔養殖用支柱を、再現性よく安定して、且つ経済的に製造することができる。
本発明の実施例4による海苔養殖用支柱の模式断面図である。 本発明の海苔養殖用支柱の製造方法に用いられる製造ラインの一例の説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明に係わる代表的な実施形態の一例を説明するための図面であり、寸法などは実体に適合したものでなく、これらの図面により本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明の海苔養殖用支柱は、熱可塑性樹脂からなる中芯層と、該中芯層の外周に形成されたFRP層と、該FRP層の外周に形成された被覆層とを有する密着一体化した複合構造の海苔養殖用支柱であって、該中芯層は、少なくともその外周面が該FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成され、該FRP層は、該中芯層の長手方向の外周に少なくともガラス繊維と炭素繊維を含む長繊維の強化繊維が縦添い状に結着され、該炭素繊維は該FRP層の外周側に配置され、該FRP層の横断面における該ガラス繊維と炭素繊維の断面積比が60:40〜95:5であり、該被覆層は、少なくとも内周面が該FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成されることを特徴としている。
本発明の海苔養殖用支柱10は、長手方向に直交する断面の層構成の一例を図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる中芯層1、強化繊維として所定断面積比率のガラス繊維2aと炭素繊維2bをマトリックス成分としての熱硬化性樹脂硬化物2cで結着したFRP層2、及びFRP層2の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層3から形成されている。
本発明の海苔養殖用支柱10は、海苔網を支持し、海中に立設して使用される際の波浪に耐えるに必要な剛性等から、外径が概ね35mm〜60mmであって、この外径のものを海底に立設する主体部とする。海底側の先端には円錐状の先端部があり、海面側には、接手を介して、外径が10〜20mm、長さが1m〜2.0mのアンテナと称し、満潮時に網綱の保持を確保するための先端部が接続されている。本発明は、上記の海苔養殖用支柱の主体部に係る発明であり、その長さは、漁場の海深との関係から、概ね4〜15mである。
(中芯層の熱可塑性樹脂)
本発明の海苔養殖用支柱の製造方法との関連において、中芯層は熱可塑性樹脂を溶融押出して製造される。そして、当該中芯層は、少なくともその外周面がFRP層の最内層の界面と化学的親和性によって密着(接着)していることを要する。そのため、中芯層に用いられる熱可塑性樹脂は、FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から選択され、たとえばABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン樹脂)、AS(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、AAS(アクリロニトリル−アクリル−スチレン樹脂)、PS(ポリスチレン樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)、PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンとポリスチレンとのグラフト共重合体)、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
中芯層の内径は概ね30.5〜50.5mm、層厚みが概ね1.5〜3.0mmである。中芯層は、少なくとも外周面がFRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有していればよく、外周面のみにマトリックス成分と相溶性を有する上記の熱可塑性樹脂や、接着性向上のために変性された熱可塑性樹脂共重合体等を複層押出して形成してもよい。
〔FRP層〕
本発明の海苔養殖用支柱のFRP層は、中芯層の長手方向の外周に少なくともガラス繊維と炭素繊維を含む長繊維の強化繊維が縦添い状にマトリックス成分により結着され、該炭素繊維は該FRP層の外周側に配置され、該FRP層断面における該ガラス繊維と炭素繊維の断面積比が60:40〜95:5である。
本発明の海苔養殖用支柱の製造方法との関連において、FRP層は、先ず、連続して押出成形される中芯層の外周に、(iv)強化繊維として所定の断面積比率で集合された長尺状のガラス繊維束及び炭素繊維束に硬化性樹脂組成物を含浸して縦添いして、余剰の樹脂を絞りダイスにより段階的に絞り、中芯層に強化繊維が縦添された未硬化状管状物とする工程を経て、次工程に移行する。
次いで、(v)該未硬化状管状物を、溶融押出機のクロスヘッドに通して、被覆層用の熱可塑性樹脂により円環状に押出被覆し、該被覆層を冷却する溶融被覆工程を経て、(vi)被覆された未硬化状管状物を、硬化槽に導いて内部の未硬化状熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し、密着一体化した複合構造の管状物を引取る工程により形成される。
(強化繊維及びFRP層における断面積比率)
本発明において使用できる強化繊維は、平均直径5〜10μmである強化繊維の単繊維を1,000〜50,000本束ねた繊維束状のものを利用できる。強化繊維の比強度は1,000kN・m/kg以上、比弾性率は20,000kN・m/kg以上が好ましい。
本発明の海苔養殖用支柱のFRP層に用いられる長繊維の強化繊維には、少なくともガラス繊維と炭素繊維が併用される。海苔養殖用支柱の長手方向のFRP層断面におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比は、60:40〜95:5であり、より好ましくは、80:20〜95:5であり、さらに好ましくは、90:10〜95:5である。FRP層断面におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比が60:40、すなわち炭素繊維が面積比で40%以下であれば、炭素繊維による原料コストの増加を許容できる安価で、高剛性、軽量性、作業性の向上効果を発現できる海苔養殖用支柱を提供することができ、95:5、すなわち炭素繊維が面積比で5%以上であれば、炭素繊維による高剛性、軽量性、作業性の向上効果が発現できる。
FRP層断面におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比を80:20〜95:5とすれば、より安価な海苔養殖用支柱を提供できる。
なお、FRP層断面における強化繊維の断面積比は、FRP層に使用するガラス繊維及び炭素繊維の断面積を、それぞれの使用本数、繊度、密度から計算して求めることができる。
さらに、添加する炭素繊維の効果を最大限に利用した構成とし、炭素繊維の使用量を抑えるには前記FRP層におけるガラス繊維と炭素繊維との断面積比が90:10〜95:5である場合に、以下の2要件を満足させることで、より好適なものを提供することができる。
(A)FRP層において炭素繊維(束)をガラス繊維より外周側に配置していること。
(B)支柱の中心に対して炭素繊維(束)をFRP層の外周側に略同一の中心角θで対称に配置していること。
炭素繊維(束)がFRP層の外周側に配置され、且つ、支柱の中心に対して炭素繊維が略同一の中心角θで対称に配置されていると、高弾性率の炭素繊維が外周側にあるので、支柱の長手方向に曲げられた際に、中立軸からより距離のある炭素繊維(束)が曲げに抗するので、高剛性の支柱を得ることができる。
また、支柱の中心に対して炭素繊維(束)がFRP層の外周側に略同一の中心角θで対称に配置していると、長手方向の断面において炭素繊維(束)が均等に配置されるので、支柱が長手方向に偏奇したり、使用時に異方性が生じたりする弊害を生じることなく、実用上必要な程度の真直性や真直回復性が保たれる。
なお、炭素繊維量の軽減、並びに強度保持の観点からは、炭素繊維束の扁平率は、0.33〜0.83が好ましく、アスペクト比は3:2〜6:1が好ましい。
本発明の海苔養殖用支柱のFRP層の強化繊維として使用できるガラス繊維としては、例えば、Eガラス繊維(電気用)、Cガラス繊維(耐食用)、Sガラス繊維、Tガラス繊維などが挙げられる。繊維の形態としては、ガラス繊維(フィラメント)を束ねたガラスロービングが、FRP層の使用に適している。使用できるガラス繊維としては例えば、日東紡績株式会社製の品名:RS110QL−533AH、RS220RL−510AH、RS440RR−531AHや、セントラル硝子株式会社製の品名:ERS2200−820/LX、ERS4400−820/LX、重慶国際複合材料有限公司(CPIC社)製の品名:ER469−4400、ER469−2200、及び巨石集団有限公司製の品名:EDR17−1150−386T、巨石集団有限公司 EDR22−2200−312T、などが挙げられる。
本発明の海苔養殖用支柱のFRP層の強化繊維として使用できる炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系炭素繊維、炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが挙げられる。これら炭素繊維のうち、強度と弾性率のバランスに優れる点で、PAN系炭素繊維が好ましく用いられる。入手して使用できる炭素繊維としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製、品名:TRW40 50L 3750tex、及びZoltek Companies, Inc.製、品名:PX35(50K)などが挙げられる。
(マトリックス成分)
本発明の海苔養殖用支柱のFRP層のマトリックス成分は熱硬化性樹脂組成物を硬化して形成される。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和物カルボン酸変性ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらのうち、熱硬化性であり、汎用性、経済性等の観点から不飽和ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
また、不飽和ポリエステル樹脂はモノマー成分としてスチレンを含み、中芯層及び被覆層の熱可塑性樹脂に化学的親和性を有するものを選択でき、熱硬化後において、これらの三層を密着一体化したものを用いることもできる。
熱硬化性樹脂は、熱硬化触媒(硬化剤)、粘度調整のための炭酸カルシウムなど、必要に応じて超微粒子シリカであるアエロジル(商品名)などの揺変剤を添加混合した熱硬化性樹脂組成物として準備され、強化繊維に含浸されて、最終的に熱硬化されてマトリックス成分を構成する。
(被覆層)
本発明の海苔養殖用支柱の被覆層は、被覆層の少なくとも内周面を構成する熱可塑性樹脂が、スチレンを成分として含む熱可塑性樹脂から選択され、前記FRP層のマトリックス成分を構成する熱硬化性樹脂がスチレンモノマーを単量体成分として含む不飽和ポリエステル樹脂との未硬化状での接触によって、化学的親和性により熱硬化性樹脂の硬化後に、FRP層/被覆層が相互に接着一体化してなる、構成とすることもできる。
〔海苔養殖用支柱の製造方法〕
本発明の海苔養殖用支柱の製造方法は、下記の(i)〜(vii)の工程を含むことを特徴とする。以下、各工程について順次説明する。
(i)強化繊維の準備工程
図2に示すように繊維状の強化繊維として所要本数のガラス繊維束2a及び炭素繊維束2bを準備し、FRP層での配置を考慮して、表面層側に炭素繊維を配置する場合は、2つの含浸槽14及び16を準備しそれぞれの集合ガイド(目板)(図示省略)の所定のガイド孔(図示省略)に、ガラス繊維束及び炭素繊維束のそれぞれを挿通し、さらに、これらを平行に配列させて含浸槽の含浸操作ガイド(図示省略)、定常走行時に中芯層1の外周に所定配置で縦添いさせ、余剰の熱硬化性樹脂を絞るための絞りダイス、被覆層用押出機及びそれ以降(下流側)の製造ラインを通して引取り可能に準備する工程である。なお、この強化繊維の準備工程の段階では、中芯層の押出、熱硬化性樹脂含浸槽での強化繊維束への樹脂含浸操作、絞り成形、被覆押出機での被覆は、行わず、定常運転時の製造ラインに強化繊維の配置を可能に準備する工程である。
(ii)硬化性樹脂組成物の準備工程
含浸槽14、16に熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む液状の硬化性樹脂組成物を注入する工程である。熱硬化性樹脂としては、前記のものから選択して使用され、熱硬化性樹脂は、所定量の熱硬化触媒(硬化剤)、粘度調整のための炭酸カルシウムなど、及び要すれば超微粒子シリカであるアエロジル(商品名)などの揺変剤を添加して攪拌混合したものを熱硬化性樹脂組成物として攪拌混合して含浸槽14、16に注入される。攪拌混合は事前に行ってもよいし、定常生産状態に移行した後には、熱硬化性樹脂組成物を構成する物質につきそれぞれ所定量を計量して、ミキシング装置で混合しながら、熱硬化性樹脂組成物の消費量に対応して連続的に含浸槽に注入してもよい。
(iii)中芯層製造工程
中芯層1を形成する熱可塑性樹脂を溶融押出機11から内径をマンドレルで、若しくは、外径を型で規制しながら所定寸法の円管状に連続的に押出し、製造ラインを経て連続的に引取る中芯層製造工程によって、事後において長繊維の強化繊維に含浸された未硬化状樹脂組成物を所定の外径に絞り成形し、被覆押出機18で被覆可能とする工程である。
(iv)未硬化状管状部の製造工程
前記(i)で準備された強化繊維を引取りつつ、含浸槽14、16に向けて、含浸操作ガイド(図示省略)を下降させて、強化繊維束に硬化性樹脂組成物を含浸し、これを絞りダイス17の孔部の中央を走行する中芯層1の外周に縦添いして、余剰の樹脂を絞りダイスにより段階的に絞り、中芯層に強化繊維が縦添された未硬化状管状物4とする工程である。
(v)未硬化状管状物の溶融被覆、冷却工程
前記未硬化状管状物4を、溶融押出機18のクロスヘッドに通して、被覆層用の熱可塑性樹脂により円環状に押出被覆し、直ちに該被覆層を冷却槽19で冷却固化して被覆層付未硬化状管状物5を得る溶融被覆、冷却工程である。
(vi)未硬化状熱硬化性樹脂組成物の熱硬化、及び引取工程
被覆層付き未硬化状管状物5を、硬化槽20に導いて内部の未硬化状熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し、中芯層1、FRP層2、被覆層3の三層が密着一体化した複合構造の管状物(複合管状物)6をゴムベルト式、或いはキャタピラー式引取機(図示省略)等で引取る工程である。
(vii)複合管状物を所定の長さに切断する工程
引取られた複合管状物6は高剛性でありドラム等に巻取ることは困難なので、使用時の長さに応じて所定の長さに切断される。
(その他の工程)
本発明の主要部ではないので、詳細な記載は割愛するが、上記のようにして得られた切断された複合管状物は、海苔養殖用支柱の主体部として使用され、一端側には海底への突き刺用円錐状先端部材(図示省略)、他端側には接続部材を介して細径の所定長さの複合管状物が先端部材(いわゆる「アンテナ」)として接続されて、海苔養殖用支柱として供される。これらの部材の接続は、切断工程に連続したラインで行われることが効率的である。
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、図面も参照して説明する。
実施例1
以下に示す材料を使用して海苔養殖用支柱の主体部の複合管を作製した。
〔材料構成〕
(中芯層用熱可塑性樹脂)
・ABS樹脂:東レ株式会社製、トヨラック(登録商標)600-309N
(熱硬化性樹脂組成物)
・不飽和ポリエステル樹脂100質量部:日本ユピカ株式会社製、ユピカ(登録商標)3464
・炭酸カルシウム10質量部:日東粉化工業株式会社製、NS#200
・有機過酸化物-1 4質量部:化薬アクゾ株式会社製、カヤエステル(登録商標)O-50E
・有機過酸化物-2 1質量部:化薬アクゾ株式会社製、トリゴノックス(登録商標)117
(強化繊維)
・ガラス繊維ロービング 168本:日東紡績株式会社製、RS220RL−510AH(2200tex)
・炭素繊維トウ 12本:三菱ケミカル株式会社製、PYROFIL(登録商標)、 TRW40 50
(被覆用熱可塑性樹脂)
・ABS樹脂:東レ株式会社製、トヨラック(登録商標)600-309N、FB−1682(黒色着色マスターバッチ)
(未硬化状熱硬化性樹脂の調合、準備)
FRP層を構成する強化繊維に含浸させる未硬化状の熱硬化性樹脂組成物として、上記の不飽和ポリエステル樹脂、有機過酸化物、及び充てん剤としての炭酸カルシウムをそれぞれ所定量計量し、攪拌装置を備える調合タンクで攪拌混合し、含浸槽14及び16に注入した。
図2に示すように中芯用溶融押出機11より上記ABS樹脂を外径35.6mm、内径31.8mmのパイプ状に中芯層1として連続状に押出した。
その外周にクリール13(詳細な図示省略)に配置されたガラス繊維ロービング2aを集束して含浸槽14の熱硬化性樹脂組成物を含浸させて、内径が段階的に最終的にFRP層の外径41.5mmに収斂する複数の絞りダイスを備える絞りダイス装置17に導いた。
一方、炭素繊維は、クリール15(詳細な図示省略)に配置された炭素繊維を集束して、含浸槽16の熱硬化性樹脂組成物を含浸させてFRP層において外周側に配置されるように、絞りダイス装置17の下流側(被覆層用押出機側)の絞りダイスから導いた。なお、FRP層の断面において炭素繊維12本を外周側に長手方向の中心軸に対して対称に配列するため、360/12=30°毎に案内孔を有する目板(図示省略)を導入する絞りダイスの前に配置した。
中芯層の外周にガラス繊維2aとそれに含浸された硬化性樹脂組成物により形成された層とその外周に中心角30°で配置された炭素繊維とそれに含浸された硬化性樹脂組成物とを縦添いして最終の絞りダイスで成形し、外径41.5mmの未硬化状管状物4とし、引き続いて、被覆層用溶融押出機18のクロスヘッド部に導いて、着色用ブラック樹脂を含む上記ABS樹脂により被覆し、直ちに冷却水槽19に導いて、被覆層付未硬化状管状物5を得た。
次いで、被覆層付き未硬化状管状物5を熱媒として熱湯を用いた熱硬化槽20に導いて、内部未硬化状FRP層を熱硬化し、冷却水槽(図示省略)で冷却して、三層構造の複合管状物6を得、切断装置(図示省略)で10mの長さに切断した。得られた支柱(複合管状物)の外径は、42.8mmであった。得られた支柱のガラス繊維/炭素繊維の断面積比、単位重量、曲げ弾性率、性能評価の結果等まとめて、表1に示す。
実施例2
実施例1において外径が37.6mm、内径が33.8mmの中芯層を押出して、ガラス繊維ロービング96本、炭素繊維トウ26本に変更した以外は実施例1と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は42.8mmであった。
実施例3
実施例1において、外径が41.0mm、内径が37.0mmの中芯をパイプ状に押出して、ガラス繊維ロービング171本、炭素繊維トウ4本に変更した以外は実施例1と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。得られた支柱の外径は46.2mmであった。
実施例4
実施例3においてガラス繊維ロービング162本、炭素繊維トウ8本に変更した以外は実施例3と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
実施例5
実施例3においてガラス繊維ロービング144本、炭素繊維トウ15本に変更した以外は実施例3と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
実施例6
実施例3においてガラス繊維ロービング126本、炭素繊維トウ23本に変更した以外は実施例3と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
実施例7
実施例3においてガラス繊維ロービングを日東紡績株式会社製、RS440RR−531AH(4400tex)60本、炭素繊維トウ46本に変更した以外は実施例3と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
実施例8
実施例1において、外径が44.3mm、内径が41.0mmの中芯層をパイプ状に押出して、ガラス繊維ロービング、RS440RR−531AH82本、炭素繊維トウ18本に変更した以外は実施例1と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。得られた支柱の外径は50.0mmであった。
比較例1
実施例2において、ガラス繊維ロービングを150本に変更し、炭素繊維トウを使用しなかったこと以外は実施例2と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は42.8mmであった。
比較例2
実施例1において、クリール13に炭素繊維トウ12本、クリール15にガラス繊維ロービング166本を準備し、これらに硬化性樹脂組成物を含浸して中芯層の長手方向に縦添いする順番を、実施例1とは逆にした以外は同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は42.8mmであった。
比較例3
実施例3において、ガラス繊維ロービングを171本から180本に変更し、炭素繊維トウを使用なかったこと以外は実施例3と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
比較例4
実施例4において、炭素繊維の配置を長手方向の中心軸に対して半円側を60°とし、もう一方の半円側を36°の位置で非対称にした以外は実施例4と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
比較例5
実施例3において、ガラス繊維ロービング171本と炭素繊維トウ4本の中芯層の長手方向に添わせる順番を逆にした以外は実施例3と同様の方法により、長さ10mのサンプルを得た。外径は46.2mmであった。
比較例6
中芯用押出機より実施例1と同じABS樹脂を用いて外径44.3mm、内径41.0mmのパイプ状に中芯層を押出した。中芯層の外周に実施例1と同じ熱硬化性樹脂組成物を含浸させたガラス繊維ロービングRS440RR−531AH132本を長手方向に添わせ、絞り工程で余剰樹脂を除去し、外径50.5mmの未硬化状物とした。
これを、さらに被覆用押出機より実施例1と同じABS樹脂を用いて溶融被覆し、以下実施例1と同様にして長さ10mのサンプルを得た。得られた支柱の外径は52.0mmであった。
実施例及び比較例により得られた海苔養殖用支柱サンプルの評価
(重量)
物性測定用サンプルとして採取した0.5mの重量をデジタル秤にて計量し単位重量(g/m)に換算した。
(反り)
長さ4mの海苔支柱サンプルを、直線が表示された水平な床面に置いて、該直線に両端を添わせて静置し、直線からの距離が最大となる点を反り量として金尺により計測し、2cm以下を「〇」、2cm超を「×」とした。
(支柱サンプル断面の寸法)
長手方向に直交して丸鋸型チップソーカッターにより切断し、断面における中芯層の内径、外径、FRP層の外径、被覆層の外径をノギス((株)Mitutoyo製、CD−20CPX)により測定した。測定個数nを5点としその平均で表した。
(FRP層の強化繊維の体積含有率、及びFRP層横断面におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比)
上記断面寸法からFRP層の断面積Sfを計算する。各実施例、比較例におけるガラス繊維ロービング、及び炭素繊維トウについて使用本数及び、それぞれの繊度、密度からガラス繊維の断面積Sg、炭素繊維の断面積Scを算出して,〔(Sg+Sc)/Sf〕×100により計算した。
また、FRP層断面におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比は、上記ガラス繊維の断面積Sgと、炭素繊維の断面積Scを用いて表記した。
なお、ガラス繊維ロービング(日東紡績株式会社製、RS220RL−510AH、及びRS440RR−531AH:Eガラス)の密度を2.54g/cm、炭素繊維炭素繊維トウ(三菱ケミカル株式会社製、PYROFIL(登録商標)、TRW40 50)の密度を1.81g/cmとして計算した。
(曲げ剛性)
JIS K 7074:1988を参考として、3点曲げ試験(n=5)で以下の条件で測定した。
・曲げ方向:繊維強化樹脂管状体の長手方向に対し、垂直方向かつ繊維強化樹脂管状体の径がもっとも短くなる方向(平行部に直交する方向)に曲げた。
・試験片の径D:圧子直下における、荷重方向の繊維強化樹脂管状体の幅をノギスにより測定(n=1)・支点の半径:2.0mm・圧子の半径 :5.0mm・支点間距離Lm:(40±8)×D mm (JISでは中実の厚みHで算出しているところを試験片の径Dで算出した)
・試験片長さlm :Lm+20 mm
・試験速度:20mm/min (JISでは0.01Lm /6H)
・曲げ強度:破壊時の荷重、支点間距離、試験片の断面二次モーメント、重心距離より次式により求めた。
曲げ強度σmax、破壊時の荷重Pm、支点間距離Lm、試験片の断面二次モーメントI、重心距離dとして、
σmax=FLmd/8I で算出した。
・曲げ弾性率(E):荷重−たわみ曲線の直線部勾配、支点間距離、試験片の断面二次モーメントより求めた。
すなわち、曲げ弾性率E、荷重―たわみ曲線の直線部の勾配Pm/δ、支点間距離Lm、試験片の断面二次モーメントIとすると
E=(Lm /48I)× Pm/δ
・曲げ剛性(EI):荷重−たわみ曲線の直線部の勾配Pm/δ及び支点間距離Lmより次式で求めた。
EI=(Lm /48)× Pm/δ
(握り易さ)
海苔養殖用支柱の立て付け作業性を考慮すると、支柱の外径をΦ50mm以下にすることが好ましい。これは、一般財団法人 人間生活工学研究センターの高齢者対応基盤整備データーベースにおける“握りやすい太さ”の調査結果からも読み取れるが、「これ以上太くなると握りにくくなる太さ」として示されているのは、性別や年齢、握り方などによって違いがあるものの、おおよそΦ45〜50mmの間にある。このため、Φ45mmに近い外径の支柱は握り易く作業しやすいが、Φ50mmに近くなる若しくは、以上である場合は握りにくく作業性が悪化するものと考えられる。そこで、海苔養殖用支柱の外径が50mmを超えるものの評価を「×」とした。
各実施例、比較例の海苔養殖用支柱サンプルの断面寸法形状、炭素繊維束の配置部位、ガラス繊維/炭素繊維の断面体積比、及び性能評価としての曲げ剛性、単位重量、長手方向の反り、並びに握り易さについてまとめて表1に示す。
表1に示すように、従来のガラス繊維のみからなる強化繊維を用いた支柱外径42.8mmの比較例1では曲げ剛性が2,060(N・m)、重量754(g/m)であるが、FRP層厚みが2.0で同じ実施例2では、FRP層のガラス繊維/炭素繊維の断面積比を60.7:39.3と炭素繊維を最大の比率にしたので、重量は723g/m、剛性は3,354(N・m)となり、約4%の軽量化と、1.61倍の剛性増加が達成できる。これは、比較例1は、剛性が低いため、水深が浅く、若しくは潮流が弱い環境での使用など使用場所の制限があったのに対し、実施例2は、握り易くて軽い支柱外径42.8mmを海苔養殖用支柱として広範囲の使用場所に展開できることを示す。さらに、前述の如く高剛性であるため広範囲に使用可能な汎用性の高い海苔養殖用支柱として利用でき、従来において汎用されている外径46.2mmの比較例3の支柱に対して約14%の軽量化ができ作業負荷の低減が期待できる。
実施例3〜7は、中芯層の内径/外径が37.0mm/41.0mm、FRP層外径が45.1mm、FRP層厚みが2.1mmで、支柱外径を46.2mmとして、FRP層におけるガラス繊維と炭素繊維の断面積比を変更している。
炭素繊維断面積の増加に伴い、曲げ剛性は、3,124〜5,192(N・m)に増加し、重量は、833〜756(g/m)に減少している。一方、比較例3として示す、同一寸法でガラス繊維のみからFRPを構成した場合は、重量が838(g/m)で剛性は、2,890(N・m)であり、所望とされる剛性、或いは重量に合わせて、炭素繊維の断面積比率を調整することによって、海苔養殖用支柱を製造することができる。
また、海深15m程度の深場で使用する場合、剛性の観点から、従来においては、比較例6に示す外径52mmで、剛性が5,169(N・m)、重量1,187(g/m)のものが要求されるが、剛性を満足するには、実施例7の、重量756(g/m)で外径46.2mmの支柱や、重量911(g/m)で外径50mmの支柱を選択できる。
なお、炭素繊維のFRP層での配置は、実施例1と比較例2の対比から、より高い剛性を得るためには、FRP層の外側に配置することを要することが確認された。
また、炭素繊維に関する中心軸対称性に関しては、実施例4と、比較例4の対比から、非対称の比較例4では反りが発生し、剛性も劣っていることから、炭素繊維はFRP層の外周面側に互いに略同一の中心角で配置することが好ましいことが確認された。
本発明の海苔養殖用支柱は、従来においてガラス繊維のみで構成していたFRP層よりも同外径では高剛性で軽量な海苔養殖用支柱として利用できる。また、従来と同程度の剛性としたいのであれば、外径をより細径にすることができ、軽量化と、細径化による取扱い性の向上を図ることができる海苔養殖用支柱として利用できる。
また、本発明の海苔養殖用支柱の製造方法は、手作業での取扱い性に優れ、軽量性と高剛性を両立でき、比較的安価で実用性に富む、本発明の海苔養殖用支柱を、再現性よく安定して、且つ経済的に製造する方法として利用することができる。
1 中芯層
2 FRP層
2a ガラス繊維
2b 炭素繊維
2c マトリックス成分
3 熱可塑性樹脂被覆層
4 未硬化状管状物
5 被覆層付き未硬化状管状物
6 複合管状物
10 海苔養殖用支柱
11 中芯層用溶融押出機
12 冷却槽
13 ガラス繊維ロービング用クリール
14 熱硬化性樹脂含浸槽
15 炭素繊維トウ用クリール
16 熱硬化性樹脂含浸槽
2a’、2b’未硬化状熱硬化性樹脂組成物含浸繊維
17 絞りダイス装置
18 被覆層用溶融押出機
19 冷却水槽
20 熱硬化槽

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂からなる中芯層と、該中芯層の外周に形成されたFRP層と、該FRP層の外周に形成された被覆層とを有する密着一体化した複合構造の海苔養殖用支柱であって、
    該中芯層は、少なくともその外周面が該FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成され、
    該FRP層は、該中芯層の長手方向の外周に少なくともガラス繊維と炭素繊維を含む長繊維の強化繊維が縦添い状に結着され、該炭素繊維は該FRP層の外周側に配置され、該FRP層の横断面における該ガラス繊維と炭素繊維の断面積比が60:40〜95:5であり、
    該被覆層は、少なくともその内周面が該FRP層を構成するマトリックス成分である熱硬化性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から構成されることを特徴とする海苔養殖用支柱。
  2. 前記FRP層におけるガラス繊維と炭素繊維との断面積比が80:20〜95:5である請求項1に記載の海苔養殖用支柱。
  3. 前記FRP層におけるガラス繊維と炭素繊維との断面積比が90:10〜95:5であり、該FRP層の長手方向に直交する断面において、炭素繊維の束が該FRP層の外周面側に互いに略同一の中心角で配置されてなる請求項1に記載の海苔養殖用支柱。
  4. 下記の(i)〜(vii)の工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の海苔養殖用支柱の製造方法。
    (i)長繊維状の強化繊維として所要本数のガラス繊維束及び炭素繊維束を準備し、集合ガイドの所定のガイド孔に、ガラス繊維束及び炭素繊維束のそれぞれを挿通し、さらに、これらを平行に配列させて含浸槽の含浸操作ガイド、中芯層の外周に所定配置で縦添いさせるための絞りダイス、被覆層用押出機及び製造ラインを通して強化繊維束を引取り可能に準備する工程、
    (ii)含浸層に熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む液状の硬化性樹脂組成物を注入する工程、
    (iii)中芯層を形成する熱可塑性樹脂を溶融押出機から所定寸法の円管状に連続的に押出し、製造ラインを経て連続的に引取る中芯層製造工程、
    (iv)前記(i)で準備された強化繊維束を引取りつつ、含浸槽に含浸操作ガイドを下降させて、強化繊維束に硬化性樹脂組成物を含浸し、これを絞りダイスの孔部の中央を走行する中芯層の外周に縦添いして、余剰の樹脂を絞りダイスにより段階的に絞り、中芯層に強化繊維束が縦添された未硬化状管状物とする工程、
    (v)該未硬化状管状物を、溶融押出機のクロスヘッドに通して、被覆層用の熱可塑性樹脂により円環状に押出被覆し、該被覆層を冷却する溶融被覆工程、
    (vi)被覆された未硬化状管状物を、硬化槽に導いて内部の未硬化状熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し、密着一体化した複合構造の管状物を引取る工程、及び
    (vii)引取られた管状物を海苔養殖用支柱としての所定の長さに切断する工程。
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