特許文献1のコネクタカバーは、嵌合突起をキャビティに挿入するだけで取り付けられる構成であるため、コネクタカバーを安定して保持することが困難となる可能性がある。一方、特許文献2のコネクタカバーには、分割体同士を連結するためのロック部と、コネクタハウジングに取り付けるためのロック片と、を形成する必要がある。従って、コネクタカバーの構造が複雑になる可能性がある。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成でコネクタに安定的に保持されるコネクタカバーを含むコネクタ構造を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の構成のコネクタ構造が提供される。即ち、このコネクタ構造は、複数の電線を一括して他の導体に接続するための構造であり、第1コネクタと、第2コネクタと、コネクタカバーと、を備える。前記第2コネクタは、前記第1コネクタに接続される。前記コネクタカバーは、前記第1コネクタと前記第2コネクタに挟まれるように配置され、前記第1コネクタと前記第2コネクタの少なくとも一方に対してスライド方向にスライド可能であり、前記第1コネクタ又は前記第2コネクタに接続される前記電線の少なくとも一部を覆う。
これにより、コネクタカバーが第1コネクタ及び第2コネクタに挟まれるため、簡単な構造でコネクタカバーを安定的に保持できる。また、コネクタカバーは、一方のコネクタに対してスライドできるため、コネクタカバーの取付作業も容易となる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1コネクタは、前記第2コネクタの挿入口に挿入されるオスコネクタである。前記第2コネクタは、前記挿入口が形成されるメスコネクタであり、前記第1コネクタに対してスライド可能である。前記第1コネクタには、前記スライド方向に延びるスライド凸部が形成されている。前記第2コネクタには、前記スライド方向に延びるとともに前記スライド凸部に対応する形状のスライド凹部が形成されている。
これにより、スライド凸部とスライド凹部とが形成されるため、第1コネクタを第2コネクタに挿入する作業が容易となる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記コネクタカバーは前記第1コネクタを挿入可能な環状部を有し、当該第1コネクタに対してスライド可能である。前記環状部の内周側には、前記スライド凸部に対応する形状のカバー側スライド凹部が形成されている。
これにより、コネクタの接続用のスライド凸部を用いてコネクタカバーをスライドさせることができる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1コネクタの外表面のうち前記スライド凸部が形成されている面には、ストッパが形成されている。前記コネクタカバーには、第1接触部と、第2接触部と、が形成されている。前記第1接触部は、前記第1コネクタの前記ストッパと接触する。前記第2接触部は、前記第2コネクタの前記挿入口の縁部に接触する。
これにより、ストッパが形成されることで、コネクタカバーを第1コネクタに挿入する際に、コネクタカバーが第1コネクタから外れにくくなる。また、コネクタカバーが第1コネクタと第2コネクタの両方に直接接触するため、コネクタカバーを更に安定的に保持できる。
前記のコネクタ構造においては、前記第1コネクタの前記スライド凸部と前記ストッパとは連続するように形成されていることが好ましい。
これにより、第1コネクタの強度(特にスライド凸部及びストッパの強度)を向上させることができる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1コネクタには、第1嵌合部が形成されている。前記第2コネクタには、前記第1嵌合部と嵌合可能な第2嵌合部が形成されている。前記第1コネクタと前記第2コネクタを嵌合した状態において、前記第1コネクタのうち、前記第2コネクタから前記スライド方向に突出する部分である突出部分の少なくとも一部が、前記コネクタカバーによって覆われる。
これにより、嵌合部を用いた着脱を行うために必要な突出部分にコネクタカバーを配置できる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1コネクタの外表面には、前記スライド方向に垂直な方向で前記第1嵌合部を挟むように2つの前記ストッパが形成されている。前記コネクタカバーには、2つの前記ストッパにそれぞれ接触する2つの前記第1接触部が形成されている。
これにより、コネクタカバーと第1コネクタが少なくとも2箇所で接触するため、コネクタカバーを一層安定させることができる。
前記のコネクタ構造においては、前記コネクタカバーには、2つの前記第1接触部同士を接続する補強部が形成されていることが好ましい。
これにより、コネクタカバーの強度(特にストッパに接触する第1接触部の強度)を向上させることができる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1コネクタには、前記第2コネクタとの嵌合を解除する操作を行うための解除操作部が形成されている。前記コネクタカバーには、前記スライド方向に凹んだ露出凹部が形成されており、当該露出凹部により、前記第1コネクタの前記解除操作部が露出している。
これにより、第1嵌合部の操作性を損なうことなく、コネクタカバーを配置できる。
前記のコネクタ構造においては、前記コネクタカバーには、前記電線の一部を露出させる開放部が形成されていることが好ましい。
これにより、電線の挿入具合を確認できる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このコネクタ構造は、前記コネクタカバーに取り付け可能な閉鎖カバーを備える。前記閉鎖カバーは、前記コネクタカバーに取り付けられることで、前記開放部により露出される前記電線の一部を覆う。
これにより、電線を保護することができる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記閉鎖カバーは、前記コネクタカバーに嵌合可能である。前記閉鎖カバーが前記コネクタカバーに嵌合した状態において、前記閉鎖カバーと前記コネクタカバーで前記第1コネクタの一部が挟まれている。
これにより、閉鎖カバーを取り付けることで、第2コネクタを取り付ける前においても、第1コネクタ、コネクタカバー、及び閉鎖カバーが連結される。従って、例えば第1コネクタを第2コネクタに取り付ける作業が容易になる。
前記のコネクタ構造においては、前記コネクタカバーには、前記開放部により露出される前記電線の一部を覆うことが可能な閉鎖部が形成されていることが好ましい。
これにより、部品点数を増やすことなく、電線の挿入具合を確認したり、電線を保護したりすることができる。
前記のコネクタ構造においては、前記コネクタカバーには、前記電線をガイドする電線ガイド部が形成されていることが好ましい。
これにより、部品点数を増やすことなく、電線をガイドできる。
前記のコネクタ構造においては、前記電線ガイド部は、前記電線が前記スライド方向に沿う方向、又は、当該スライド方向に直交する方向に、前記電線をガイドすることが好ましい。
これにより、必要な方向に電線をガイドできる。
前記のコネクタ構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1コネクタには、リテーナが挿入されている。前記コネクタカバーを前記第1コネクタに対してスライドさせる際の軌跡上に、前記リテーナを挿入するためのリテーナ挿入口が形成されている。
これにより、第1コネクタへのリテーナの挿入が完了していない場合は、リテーナとコネクタカバーが干渉することで第1コネクタに対してコネクタカバーをスライドさせることが規制される。また、第1コネクタへのリテーナの挿入が完了した場合は、当該リテーナと前記コネクタカバーが干渉しなくなり第1コネクタに対してコネクタカバーをスライドさせることが可能になる。このように、コネクタカバーの取付時にリテーナが問題なく挿入されているかを確認できる。従って、リテーナの取付ミスを防止できる。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1及び図2を参照して、コネクタ構造1の概要について説明する。
コネクタ構造1は、例えば車両に配置される。車両には多数の導体(電線、バスバー等)が配置される。これらの導体は、電力を供給したり、電気通信用の信号を伝達したりする用途に用いられる。図1及び図2に示すように、コネクタ構造1は、オスコネクタ(第1コネクタ)10と、メスコネクタ(第2コネクタ)20と、コネクタカバー30と、閉鎖カバー40と、を備えている。
オスコネクタ10には、複数の電線70が接続されている。図1には、複数本がテープ等で束ねられた状態の電線70しか図示されていないが、図7には、束ねる前と束ねた後の電線70が示されている。電線70は、図略の端子(メス端子)を含んでいる。また、メスコネクタ20にも図略の複数の導体が接続されている。メスコネクタ20に接続される導体は、端子(オス端子)を含んでいる。また、オスコネクタ10がメスコネクタ20に挿入されることで、オスコネクタ10とメスコネクタ20が嵌合される。これにより、オスコネクタ10に接続された複数の電線70のメス端子と、メスコネクタ20に接続された複数の導体のオス端子と、が嵌合して両者が電気的に接続される。また、コネクタカバー30及び閉鎖カバー40は、例えばオスコネクタ10に接続される電線70の少なくとも一部を保護するために設けられている。また、コネクタカバー30及び閉鎖カバー40は、これらの電線70の少なくとも一部が外部から見えないように隠すこともできる。
以下、オスコネクタ10、メスコネクタ20、コネクタカバー30、及び閉鎖カバー40の詳細な構成について説明する。初めに、主として図3を参照して、オスコネクタ10について説明する。
オスコネクタ10は、例えば樹脂等の弾性変形が可能な材料で構成されている。オスコネクタ10は、略直方体形状である。図3に示すように、オスコネクタ10には、キャビティ11と、スライド凸部12と、ストッパ13と、第1嵌合部14と、解除操作部15と、ストッパ接続部16と、延設部17と、が形成されている。
キャビティ11は、電線70を挿入するための孔である。キャビティ11は、所定の方向に並べて複数形成されている。なお、以下の説明では、電線70を挿入する方向を単に挿入方向と称する。また、特に、挿入方向の下流側のことを先端側と称することがあり、挿入方向の反対側のことを根元側と称することもある。
スライド凸部12は、オスコネクタ10の外表面から垂直に突出する部分である。スライド凸部12は、挿入方向に延びるように(長手方向が挿入方向となるように)形成されている。また、スライド凸部12は、オスコネクタ10の外表面において、挿入方向と垂直な方向で第1嵌合部14を挟むように一対で形成されている。2つのスライド凸部12は、長手方向が平行となるように形成されている。スライド凸部12は、メスコネクタ20及びコネクタカバー30をスライドさせる際のガイドとして用いられる。
ストッパ13は、スライド凸部12の端部(詳細には電線70の挿入方向の根元側の端部)に接続されている。ストッパ13はスライド凸部12と同様に、第1嵌合部14を挟むように2つ形成されている。2つのストッパ13は、2つのスライド凸部12のそれぞれと連続するように形成されている。ストッパ13は、オスコネクタ10の外表面からの突出長さがスライド凸部12よりも大きくなるように形成されている。また、ストッパ13は平面を含んでいる。この構成により、コネクタカバー30をスライド凸部12に沿ってスライドさせた際に、コネクタカバー30がストッパ13に当たることで、コネクタカバー30が抜け落ちることを防止できる。
第1嵌合部14は、オスコネクタ10の外表面(詳細にはスライド凸部12及びストッパ13が形成される面と同じ面)に形成されている。第1嵌合部14は、メスコネクタ20と嵌合可能に構成される部分である。オスコネクタ10をメスコネクタ20に挿入することで、第1嵌合部14又はメスコネクタ20の後述の第2嵌合部24が弾性変形して、オスコネクタ10とメスコネクタ20が嵌合される。
解除操作部15は、第1嵌合部14よりも挿入方向の根元側に形成されている。解除操作部15は第1嵌合部14と接続されている。解除操作部15を操作することで、第1嵌合部14による嵌合を解除できる。これにより、メスコネクタ20に嵌合したオスコネクタ10を取り外すことができる。
ストッパ接続部16は、一対で形成されるストッパ13を接続する。また、2つのストッパ接続部16の間には、第1嵌合部14、解除操作部15、又はそれらを接続する部分が形成されている。従って、ストッパ接続部16は、オスコネクタ10の外表面から離れるようにしてそれらを避けて、2つのストッパ13を接続する。また、作業者による解除操作部15の操作を容易にするため、ストッパ接続部16は、解除操作部15よりも挿入方向の先端側に延びる部分(長手方向の向きが変わる部分)を含む。言い換えれば、図2に示すように、平面視(ストッパ13が形成される外表面に垂直な方向で見たとき)において、ストッパ接続部16は、解除操作部15と重ならないように設けられている。
ストッパ接続部16を設けることで、スライド凸部12及びストッパ13を補強できる。また、上述のようにストッパ接続部16は、解除操作部15の周囲に設けられるので、解除操作部15を保護できる。更に言えば、ストッパ13も解除操作部15を保護する機能を有している。
延設部17は、キャビティ11が形成される部分を挿入方向に垂直な方向に延設した部分である。
本実施形態のオスコネクタ10の形状は一例であり、適宜変更可能である。例えば、スライド凸部12は、1つ又は3つ以上であってもよい。また、スライド凸部12とストッパ13は接続されていなくてもよい。また、第1嵌合部14は、スライド凸部12等とは異なる面に形成されていてもよい。また、ストッパ接続部16及び延設部17を省略することもできる。
次に、主として図4を参照して、メスコネクタ20について説明する。
メスコネクタ20は、例えば樹脂等の弾性変形が可能な材料で構成されている。メスコネクタ20は、略直方体形状である。図4に示すように、メスコネクタ20には、挿入口21と、スライド凹部22と、嵌合用凹部23と、第2嵌合部24と、が形成されている。
挿入口21は、オスコネクタ10を挿入するために開口した部分である。このように、本実施形態では、挿入口21が形成される側のコネクタがメスコネクタ20であり、挿入口21に挿入される側のコネクタがオスコネクタ10である。挿入口21の周囲には、挿入縁部21aが形成されている。言い換えれば、メスコネクタ20の挿入方向の根元側の面のうち、挿入口21が形成されていない部分が挿入縁部21aである。挿入縁部21aは、コネクタカバー30の当て面として機能する。つまり、コネクタカバー30は、上述のストッパ13と挿入縁部21aとの間に挟み込まれる。
スライド凹部22は、挿入口21の内面に形成された溝状の部分である。スライド凹部22は、挿入方向に延びるように(長手方向が挿入方向となるように)形成されている。また、スライド凹部22は、嵌合用凹部23を挟むように一対で形成されている。2つのスライド凹部22は、長手方向が平行となるように形成されている。スライド凹部22は、スライド凸部12に対応する形状であり、スライド凸部12をスライドさせる際のガイドとして用いられる。
嵌合用凹部23は、挿入口21の内面に形成された溝状の部分である。嵌合用凹部23は、第1嵌合部14を挿入させるための凹部である。
第2嵌合部24は、嵌合用凹部23内に形成されている。第2嵌合部24は、第1嵌合部14と嵌合可能である。第2嵌合部24は、例えば第1嵌合部14に引っ掛かることが可能な突起又は溝である。
また、オスコネクタ10をメスコネクタ20の挿入口21に挿入して嵌合した際において、オスコネクタ10の全体がメスコネクタ20の内部に入り込む訳ではなく、図2に示すように、オスコネクタ10の一部はメスコネクタ20の外部に位置する。本実施形態では、オスコネクタ10のうち、嵌合後にメスコネクタ20の内部に位置する部分を本体部分10aと称し、メスコネクタ20から外部に突出している部分(挿入方向において突出している部分)を突出部分10bと称する。突出部分10bは、オスコネクタ10をメスコネクタ20から取り外す際に作業者が保持する部分でもある。
本実施形態のメスコネクタ20の形状は一例であり、適宜変更可能である。例えば第1嵌合部14の形状によっては、嵌合用凹部23を省略できる。また、第2嵌合部24は、突起及び溝に限られず、貫通孔であってもよい。
次に、主として図5及び図6を参照して、コネクタカバー30について説明する。
コネクタカバー30は、例えば樹脂等の弾性変形が可能な材料で構成されている。コネクタカバー30は、電線70を保護したり、外部から電線70を見えにくくしたり、電線70をガイドしたりする。また、コネクタカバー30は、上述したように、オスコネクタ10とメスコネクタ20に挟まれるようにして保持されている。なお、コネクタカバー30は、オスコネクタ10の突出部分10bの少なくとも一部を覆うようにして配置される。
図5に示すように、コネクタカバー30は、ベース面30aと、2つの側面30bと、環状部30cと、を含んで構成されている。2つの側面30bは互いに対面している。また、2つの側面30bは、ベース面30aの所定方向の一端と他端から同じ方向に延びる形状である。なお、ベース面30aに対面する部材は設けられていない。言い換えれば、本実施形態のコネクタカバー30には、ベース面30aに対面する部分において電線70を露出させる開放部30dが形成されている。環状部30cは、挿入方向の先端側に形成されている。なお、本実施形態の「環状」とは実質的に環状であることを示し、略環状を含む。言い換えれば、環状部30cの一部が僅かに離間していても、「環状」に相当する。環状部30cには、オスコネクタ10が挿入される。また、環状部30cは、オスコネクタ10のリテーナ60が挿入される面に接する形状である。
また、コネクタカバー30には、スライド凹部(カバー側スライド凹部)31と、第1接触部32と、第2接触部33と、補強部34と、固定孔35と、が形成されている。
スライド凹部31は、図5及び図6に示すように、環状部30cの内周側に形成されている。スライド凹部31は、スライド凹部22と同様に、スライド凸部12と対応する形状であり、スライド凸部12をスライドさせる際のガイドとして用いられる。従って、スライド凹部31は、スライド凸部12と同様に2つ形成されている。
第1接触部32は、環状部30cの内周側であって、スライド凹部31に隣接する位置に2つ形成されている。具体的には、第1接触部32は、スライド凹部31の輪郭(縁部)を構成する部分を含んでいる。第1接触部32は、平面を含んでおり、環状部30cにオスコネクタ10を挿入した際に、第1接触部32とストッパ13がそれぞれ接触(干渉)する。これにより、コネクタカバー30の過剰なスライドが抑制され、コネクタカバー30が抜け落ちることを防止できる。また、コネクタカバー30がオスコネクタ10とメスコネクタ20に挟まれた状態においても、第1接触部32とストッパ13は接触する。これにより、コネクタカバー30を安定的に保持できる。
第2接触部33は、挿入方向の先端側の端面である。言い換えれば、環状部30cの縁部を構成する面である。第2接触部33は、平面を含んでいる。コネクタカバー30がオスコネクタ10とメスコネクタ20に挟まれた状態において、第2接触部33と挿入縁部21aが接触する。特に、第2接触部33と挿入縁部21aはともに挿入口21を囲むような枠形状である。そのため、第2接触部33と挿入縁部21aは広い範囲において接触可能である。これにより、コネクタカバー30を一層安定的に保持できる。
補強部34は、一対で配置される第1接触部32同士を接続する部分である。即ち、補強部34が設けられることにより、環状部30cが構成される。また、補強部34には、露出凹部34aが形成されている。露出凹部34aは、補強部34を挿入方向の先端側に凹ませた形状である。図1及び図2に示すように、露出凹部34aが形成されることで、解除操作部15を露出させることができる。また、ストッパ接続部16と同様、補強部34も解除操作部15を保護する機能も有している。
固定孔35は、閉鎖カバー40を取り付けるための部分である。
本実施形態のコネクタカバー30の形状は一例であり、適宜変更可能である。例えば、コネクタカバー30は、環状部30cに代えて離間した形状(補強部34を省略した形状)を有していてもよい。また、第1接触部32がストッパ13と僅かに離れて対面しており、外力が掛かった場合に接触する構成であってもよい。第2接触部33についても同様である。
次に、主として図1及び図2を参照して、閉鎖カバー40について説明する。
閉鎖カバー40は、例えば樹脂等の弾性変形が可能な材料で構成されている。閉鎖カバー40は、箱形状であり、内部に空間が形成されている。この空間には、オスコネクタ10に取り付けられた電線70が位置する。また、閉鎖カバー40は、主としてコネクタカバー30の開放部30dを覆うことで、開放部30dから露出している電線70を保護したり、外部から電線70を見えにくくする。
閉鎖カバー40には、固定突起41と、スライド規制部42と、傾斜面43と、電線通過孔44と、が形成されている。
固定突起41は、固定孔35に対応する位置に形成されている。固定突起41は、固定孔35と嵌合可能である。固定突起41が固定孔35に嵌合することで、コネクタカバー30と閉鎖カバー40が一体的に移動するようになる。
スライド規制部42は、閉鎖カバー40の挿入方向の先端側に形成された面である。図1及び図2に示すように、スライド規制部42はストッパ13に接触又は対面している。この構成により、閉鎖カバー40(及び一体的に移動するコネクタカバー30)が挿入方向にスライドすることが規制される。スライド規制部42によるスライドの規制は、後述の図8に示すように、オスコネクタ10、コネクタカバー30、及び閉鎖カバー40を組み付けた状態で取り回す際に特に有効である。
傾斜面43は、挿入方向の先端側であって、解除操作部15に対応する位置に形成されている。傾斜面43が形成されることにより空間が形成されており、この空間により、作業者は解除操作部15を操作し易くなる。
電線通過孔44は、キャビティ11に接続された電線70を通過させる孔である。電線通過孔44は、挿入方向に沿う方向、又は、挿入方向に直交する方向に設けることで、必要な方向に電線70をガイドできる。
本実施形態の閉鎖カバー40の形状は一例であり、適宜変更可能である。例えば、スライド規制部42はストッパ13以外の箇所においてオスコネクタ10と接触又は対面する構成であってもよい。また、傾斜面43を省略してもよいし、傾斜面43に代えて切欠きを形成してもよい。
次に、オスコネクタ10、メスコネクタ20、コネクタカバー30、及び閉鎖カバー40を組み付ける工程について説明する。
作業者は、初めにオスコネクタ10のキャビティ11に電線70を挿入する。その後、図6の上側に示すように、リテーナ60をオスコネクタ10に挿入する。オスコネクタ10にはリテーナ60を挿入するためのリテーナ挿入口19が形成されており、そこにリテーナ60が挿入される。リテーナ60は、電線70の端子を保持する等して、キャビティ11から電線70を抜けにくくするための部材である。リテーナ60の構成は公知であり、例えば特許文献2等に示されているため、詳細な構造の説明は省略する。
次に、作業者は、図6に示すように、オスコネクタ10にコネクタカバー30を取り付ける。具体的には、オスコネクタ10のスライド凸部12と、コネクタカバー30のスライド凹部31の位置を併せ、電線70の挿入方向とは反対方向にコネクタカバー30をスライドさせる。なお、上述したように、所定状スライドさせた段階で第1接触部32がストッパ13に接触するため、コネクタカバー30がオスコネクタ10を通り過ぎて外れることはない。
ここで、上述したリテーナ60の挿入が不十分である場合、リテーナ60がオスコネクタ10の外表面から突出する。また、リテーナ挿入口19は、コネクタカバー30をオスコネクタ10に対してスライドさせる際の軌跡上に形成されている。そのため、リテーナ60の挿入が不十分である場合、コネクタカバー30(ベース面30a)とリテーナ60が接触(干渉)するため、コネクタカバー30をオスコネクタ10に取り付けることができない。つまり、オスコネクタ10にコネクタカバー30を取り付ける工程を行うだけで、リテーナ60が適切に取り付けられているか否かを確認できる。
図7には、コネクタカバー30をオスコネクタ10に取り付けた後の状態が示されている。コネクタカバー30の挿入方向の反対側(根元側)へのスライドはストッパ13により規制されている。一方、コネクタカバー30の挿入方向側(先端側)へのスライドは規制されていない。
次に、固定孔35を固定突起41に入れることで、コネクタカバー30に閉鎖カバー40が取り付けられる。これにより、コネクタカバー30と閉鎖カバー40は一体的に移動する。
また、閉鎖カバー40が取り付けられることで、上述のようにスライド規制部42が機能するため、コネクタカバー30の挿入方向のスライドも規制される。つまり、閉鎖カバー40が取り付けられることで、オスコネクタ10(ストッパ13)が、コネクタカバー30(第1接触部32)と閉鎖カバー40(スライド規制部42)で挟まれるため、コネクタカバー30は挿入方向の両側へのスライドが規制される。そのため、図8に示すように、例えばオスコネクタ10、コネクタカバー30、及び閉鎖カバー40を事前に組み付けておき、後からオスコネクタ10をメスコネクタ20に嵌合するような状況において、コネクタカバー30がオスコネクタ10から外れることがないため、取回しを良好にすることができる。
また、仮にオスコネクタ10に対してコネクタカバー30が十分に挿入されていない場合、閉鎖カバー40の取付時において、スライド規制部42がストッパ13と接触(干渉)するため、閉鎖カバー40をコネクタカバー30に取り付けることができない。つまり、閉鎖カバー40をコネクタカバー30に取り付ける工程を行うだけで、オスコネクタ10に対してコネクタカバー30が適切な位置にあるか否かを確認できる。
その後、オスコネクタ10をメスコネクタ20に嵌合する作業を行うことで、オスコネクタ10に接続された複数の電線70が、メスコネクタ20に接続された複数の導体と電気的に接続される。
次に、図9を参照して、上記実施形態の第1変形例を説明する。なお、以後の変形例においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
上記実施形態では、コネクタカバー30と閉鎖カバー40は別体である。これに対して、第1変形例は、コネクタカバー30が閉鎖カバー40の機能の一部を有する。第1変形例のコネクタカバー30には、開閉部50と、閉鎖部51と、固定突起52と、電線通過孔53と、が更に形成されている。
開閉部50は、例えば薄肉状に形成されたヒンジであり、閉鎖部51が開放部30dを覆う状態と、開放部30dを覆わずに開放させる状態(電線70を露出させる状態)と、を切り替えることができる。閉鎖部51は、開放部30dを覆うことが可能な部分である。固定突起52は、固定突起41と同様に固定孔35と嵌合可能な部分である。電線通過孔53は、電線通過孔44と同様に、電線70を通過させる孔である。電線通過孔53は、挿入方向に沿う方向、又は、挿入方向に直交する方向に設けることで、必要な方向に電線70をガイドできる。
次に、図10を参照して、第2変形例について説明する。
第2変形例のコネクタカバー30は、開放部30dを閉鎖する部材が存在しない点と、テープ固定片(電線ガイド部)39が形成されている点において、上記実施形態とは異なる。テープ固定片39は、上記実施形態の側面30bを挿入方向の反対側へ延設した構成である。第2変形例ではテープ固定片39は一対で設けられている。
テープ固定片39を用いて電線70を固定する方法は大きく分けて2つある。1つ目は、テープ固定片39の何れか一方に電線70を寄せて、当該一方のテープ固定片39と電線70にまとめてテープを巻き付ける方法である。2つ目は、2つのテープ固定片39と電線70にまとめてテープを巻き付ける方法である。
また、第2変形例のテープ固定片39は、電線70を挿入方向に沿うようにガイドする。なお、電線70のレイアウトに応じて、挿入方向に直交するテープ固定片39を設けることで、挿入方向に直交する方向に電線70をガイドすることもできる。なお、電線70をガイドする方法はテープ固定片39に限られず、上述したように、例えば所望の位置及び向きに電線通過孔を形成するだけでも、電線70をガイドする方向を調整できる。
以上に説明したように、上記実施形態のコネクタ構造1は、オスコネクタ10と、メスコネクタ20と、コネクタカバー30と、を備える。メスコネクタ20は、オスコネクタ10に接続される。コネクタカバー30は、オスコネクタ10とメスコネクタ20に挟まれるように配置され、オスコネクタ10とメスコネクタ20の少なくとも一方に対してスライド方向にスライド可能であり、オスコネクタ10又はメスコネクタ20に接続される電線70の少なくとも一部を覆う。
これにより、コネクタカバー30がオスコネクタ10及びメスコネクタ20に挟まれるため、簡単な構造でコネクタカバー30を安定的に保持できる。また、コネクタカバー30は、一方のコネクタに対してスライドできるため、コネクタカバー30の取付作業も容易となる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10は、メスコネクタ20の挿入口21に挿入される。メスコネクタ20は、挿入口21が形成され、オスコネクタ10に対してスライド可能である。オスコネクタ10には、スライド方向に延びるスライド凸部12が形成されている。メスコネクタ20には、スライド方向に延びるとともにスライド凸部12に対応する形状のスライド凹部22が形成されている。
これにより、スライド凸部12とスライド凹部22とが形成されるため、オスコネクタ10をメスコネクタ20に挿入する作業が容易となる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、コネクタカバー30はオスコネクタ10を挿入可能な環状部30cを有し、当該オスコネクタ10に対してスライド可能である。環状部30cの内周側には、スライド凸部12に対応する形状のスライド凹部31が形成されている。
これにより、コネクタの接続用のスライド凸部12を用いてコネクタカバー30をスライドさせることができる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10の外表面のうちスライド凸部12が形成されている面には、ストッパ13が形成されている。コネクタカバー30には、第1接触部32と、第2接触部33と、が形成されている。第1接触部32は、オスコネクタ10のストッパ13と接触する。第2接触部33は、メスコネクタ20の挿入縁部21aに接触する。
これにより、ストッパ13が形成されることで、コネクタカバー30をオスコネクタ10に挿入する際に、コネクタカバー30がオスコネクタ10から外れにくくなる。また、コネクタカバー30がオスコネクタ10とメスコネクタ20の両方に直接接触するため、コネクタカバー30を更に安定的に保持できる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10のスライド凸部12とストッパ13とは連続するように形成されている。
これにより、オスコネクタ10の強度(特にスライド凸部12及びストッパ13の強度)を向上させることができる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10には、第1嵌合部14が形成されている。メスコネクタ20には、第1嵌合部14と嵌合可能な第2嵌合部24が形成されている。オスコネクタ10とメスコネクタ20を嵌合した状態において、オスコネクタ10のうち、メスコネクタ20からスライド方向に突出する部分である突出部分10bの少なくとも一部が、コネクタカバー30によって覆われる。
これにより、嵌合部を用いた着脱を行う際に作業者が掴む部分である突出部分10bにコネクタカバー30を配置できる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10の外表面には、スライド方向に垂直な方向で第1嵌合部14を挟むように2つのストッパ13が形成されている。コネクタカバー30には、2つのストッパ13にそれぞれ接触する2つの第1接触部32が形成されている。
これにより、コネクタカバー30とオスコネクタ10が少なくとも2箇所で接触するため、コネクタカバー30を一層安定させることができる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、コネクタカバー30には、2つの第1接触部32同士を接続する補強部34が形成されている。
これにより、コネクタカバー30の強度(特に第1接触部32の強度)を向上させることができる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10には、メスコネクタ20との嵌合を解除する操作を行うための解除操作部15が形成されている。コネクタカバー30には、スライド方向に凹んだ露出凹部34aが形成されており、当該露出凹部34aにより、オスコネクタ10の解除操作部15が露出している。
これにより、第1嵌合部14の操作性を損なうことなく、コネクタカバー30を配置できる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、コネクタカバー30には、電線70の一部を露出させる開放部30dが形成されている。
これにより、電線70の挿入具合を確認できる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、このコネクタ構造1は、コネクタカバー30に取り付け可能な閉鎖カバー40を備える。閉鎖カバー40は、コネクタカバー30に取り付けられることで、開放部30dにより露出される電線70の一部を覆う。
これにより、電線70を保護することができる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、閉鎖カバー40は、コネクタカバー30に嵌合可能である。閉鎖カバー40がコネクタカバー30に嵌合した状態において、閉鎖カバー40とコネクタカバー30でオスコネクタ10の一部が挟まれている。
これにより、閉鎖カバー40を取り付けることで、メスコネクタ20を取り付ける前においても、オスコネクタ10、コネクタカバー30、及び閉鎖カバー40が連結される。従って、例えばオスコネクタ10をメスコネクタ20に取り付ける作業が容易になる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、コネクタカバー30には、開放部30dにより露出される電線70の一部を覆うことが可能な閉鎖部51が形成されている。
これにより、部品点数を増やすことなく、電線70の挿入具合を確認したり、電線70を保護したりすることができる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、コネクタカバー30には、電線70をガイドするテープ固定片39が形成されている。
これにより、部品点数を増やすことなく、電線70をガイドできる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、テープ固定片39は、電線70がスライド方向に沿う方向、又は、当該スライド方向に直交する方向に、電線70をガイドする。
これにより、必要な方向に電線70をガイドできる。
また、上記実施形態のコネクタ構造1において、オスコネクタ10には、リテーナ60が挿入されている。コネクタカバー30をオスコネクタ10に対してスライドさせる際の軌跡上に、リテーナ60を挿入するためのリテーナ挿入口19が形成されている。
これにより、オスコネクタ10へのリテーナ60の挿入が完了していない場合は、リテーナ60とコネクタカバー30が干渉することでオスコネクタ10に対してコネクタカバー30をスライドさせることが規制される。また、オスコネクタ10へのリテーナ60の挿入が完了した場合は、当該リテーナ60とコネクタカバー30が干渉しなくなりオスコネクタ10に対してコネクタカバー30をスライドさせることが可能になる。このように、コネクタカバー30の取付時にリテーナ60が問題なく挿入されているかを確認できる。従って、リテーナ60の取付ミスを防止できる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、オスコネクタ10に電線70が接続され、この電線70をコネクタカバー30が覆う。これに代えて、メスコネクタ20に電線70が接続され、この電線70をコネクタカバー30が覆ってもよい。
上記実施形態のコネクタ構造1は車両用であるが、それ以外の乗物用であってもよい。また、電線等の導体を一括して接続することが望まれる場所であれば、乗物以外の用途にもコネクタ構造1を用いることができる。