JP2020159738A - フラックスゲート磁界センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】極めて良好な温度特性を有する直交フラックスゲート磁界センサを提供する。【解決手段】本発明の直交フラックスゲート磁界センサは、極性が周期的に反転させられる直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流が流される、検出される磁界が印加される細長い磁性体に巻回されたコイルに誘起されるピックアップ信号を検波することによりセンサ出力を求めるものであり、そのピックアップ信号は、センサ出力の温度係数が実質的に最小となるように直流バイアス電流のそれぞれの極性に対応する増幅率で増幅される。【選択図】図2

Description

本発明は、フラックスゲート磁界センサに関し、より詳しくは、ピックアップ電圧を独立した増幅率で増幅することによって極めて良好な温度特性を有するフラックスゲート磁界センサ、及びそのための調節方法に関する。
磁界センサの一種である基本波型直交フラックスゲートセンサは、磁性コアの励磁磁界と測定対象の磁界が互いに直交関係にある小型のフラックスゲートセンサである。これは、励磁磁界を発生させる励磁電流として交流電流に直流バイアス電流を重畳させることで、低雑音化、高感度化、基本波信号での磁界検出等を実現したものである(特許文献1)。基本波型直交フラックスゲートでは、磁性コアの磁気異方性等により出力に大きなオフセットが発生しうるため、これを抑制するバイアススイッチングと呼ばれる方法が提案されている(特許文献2)。そのバイアススイッチングでは、上述の励磁電流における直流バイアス電流の極性を(及び場合によっては直流バイアス電流の極性と同時に交流電流の位相も)所定の周期で交番に切り替えたうえで、励磁電流の各極性下で検出された信号を減算処理(直流バイアス電流の極性のみを切り替えた場合)もしくは加算・平均化処理(直流バイアス電流の極性に加えて交流電流の位相も切り替えた場合)することで、オフセットおよびそのドリフトを相殺し安定化を図っている。
基本波型直交フラックスゲートセンサにおいて、センサ部周辺で温度変化があると、センサの機械的変形を引き起こすほかに、磁性コア内の異方性を変化させる。そして、これらの影響が検出信号中に現れることで、オフセットが温度に依存してドリフトする。上述のとおり、既存のバイアススイッチングは励磁電流の極性を反転させて得られる検出信号を加減算することでオフセットとなる成分を相殺する。基本波型直交フラックスゲートセンサにおいては、磁性コアとして典型的にはアモルファス磁性ワイヤにピックアップコイルを巻いた構造のセンサ部が使用され、これによって外部磁界量を変調したピックアップ信号が取得される。このようなセンサ部は、ワイヤ物性の異方性の影響を直に受けて出力に現われるオフセットレベルが大きく、その温度安定性が極めて悪い(数十nT/℃程度)ところ、励磁電流の極性を周期的に反転させて検波波形を平均化することで、そのようなオフセットレベルの変動をキャンセルすることができ、0.1nT/℃〜1nT/℃程度の温度安定性が得られる。しかしながら、磁性コアの物性や、励磁電流の極性反転を実現する回路等の影響により、励磁電流の極性に応じて得られるピックアップ信号のうち、オフセットの成分は実際には真に等価とはならず、アンバランスが存在する。そのため加減算では相殺できずに残留するオフセット由来の信号成分が存在し、これにより従来技術では、出力に現われるオフセットの温度ドリフトの抑制には、限界やバラつきがあった。すなわち、従来技術のバイアススイッチングにおいては、センサ部の温度変化に対する出力の変動割合である温度係数を向上させることは困難であった。しかし、そのような温度による出力変動は、一般に小さければ小さいほど望ましい。特に、激しい温度変化にさらされる宇宙機用等の用途で使用するためには、更なる改善が必要である。この問題に対する解決法として、ピックアップ信号を直接デジタル値として計算機に取り込み、後処理でアンバランスを調整する手法が提案されている(非特許文献1)。しかし、後述するように、この手法にも問題がある。
特許第4565072号 特許第4209114号
M. Butta、I. Coroli、「Low offset drift-low-noise orthogonal fluxgate with synchronized polarity flipping」、Article. Sequence No.(論文番号)4001406、IEEE Transactions on Magnetics, voI.53, no.4、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)、2016年12月9日
上述のように、センサ部周辺で温度変化があると、オフセットが温度に依存してドリフトする。これに対して、バイアススイッチングにより励磁電流の極性を反転させて得られるピックアップ信号を加減算することでオフセットとなる成分を相殺するようにしても、それらの間に存在するアンバランスのために加減算では完全にはオフセット成分を相殺できず、残留するオフセット由来の信号成分が存在する。このように、オフセットの温度ドリフトの抑制には限界があった。
従来のバイアススイッチングでは励磁電流の極性を反転させて得られる2通りのピックアップ信号を、センサ雑音や感度が最適となるよう検波を行う単一の検出回路を通して出力を得ていた。そして、この状態で得られる温度係数が磁性コア物性や回路上の限界として永らく改善はなされなかった。これは、温度変化が激しい宇宙機用等の用途では特に問題であり、本センサの実用を妨げているものの、適切な改善策は見つかっていなかった。また、この問題に対する技術として、上述したピックアップ信号を直接デジタル値として計算機に取り込む手法も提案されているが、この手法ではセンサのリアルタイム検出性が失われるのみならず、フィードバックをかけないオープンループ構成のみでしか実現できないため、センサの入出力線形性はコアとして用いる磁性体の特性に大きく依存して悪化し、実用性が極めて乏しいものである。
上記の課題は以下のような特徴をもつ本願発明によって解決される。すなわち、本発明は、極性が正極性と負極性の間で周期的に切り替えられる直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流が流される、検出される磁界が印加される細長い磁性体からなる磁性コアに巻回されたピックアップコイルからのピックアップ信号を増幅器で増幅し、増幅されたピックアップ信号を検波することにより検波信号を出力し、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去してセンサ出力を生成するフラックスゲート磁界センサにおいて、増幅器は、直流バイアス電流の正極性と負極性のそれぞれに対応するピックアップ信号をそれぞれ独立した増幅率で増幅するものであることを特徴とする。本発明は、交流電流は、直流バイアス電流と同じ周期で極性が周期的に反転させられるように構成してもよい。本発明は、増幅器は、センサ出力の温度係数が実質的に最小となるようにそれぞれの増幅率が独立して調節されているように構成できる。本発明は、増幅器が、センサ部周辺の温度を変化させた場合に直流バイアス電流が正極性と負極性のときのそれぞれの検波信号あるいはピックアップ信号に含まれるオフセット成分の絶対値がお互いに等しいままとなるように、それぞれの増幅率が独立して調節されているように構成できる。また本発明は、出力回路が、磁界検出信号を積分したフィートバック信号をピックアップコイルに磁界検出信号を打ち消す極性で入力し、フィードバック信号からセンサ出力を生成するようなクローズドループ構成としても構成できる。
本発明は、バイアススイッチングの回路中に励磁電流の直流バイアス成分の各極性に応じたピックアップ信号の間の相対的な感度関係を調節可能とする機構を設けたことにより、励磁電流の直流バイアス成分の各極性に応じたピックアップ信号のうち、オフセットとなる成分の割合を回路上で調節することが可能となる。これによって、リアルタイムに、かつオープンループ構成かフィードバック構成かにかかわらず、従来はピックアップ信号の加減算時に残留していたオフセットのアンバランスを最小化し、温度係数を低減することが可能となる。また、検波に同期検波を使用した場合は、同期検波における参照信号とピックアップ信号の位相関係を位相器によって調節することにより間接的にアンバランスを変化させることが可能である。しかし、本発明は、そのような位相関係を調節する手法は用いず、励磁電流の直流バイアス成分の極性に応じたピックアップ信号の相対感度関係を直接的に調整することによって、単一の移相器が何らかの理由で調整に適さない場合(位相を変化させると雑音特性が著しく悪化する場合等)や単一の移相器では十分な温度特性の改善が行えない場合であっても、温度特性の改善を行うことができるという効果を有する。本発明の構成により、リアルタイムで基本波型直交フラックスゲートセンサにおける温度係数を、従来技術と比較して1/4以下とすることが可能となる。
従来のフラックスゲート磁界センサの概略回路図である。 本発明のフラックスゲート磁界センサの概略回路図である。 極性毎に独立した増幅率を設定可能な増幅器の一例の具体的な回路図である。 フラックスゲート磁界センサの概略構造を示す図である。 正極性におけるフラックスゲート磁界センサの磁性コアの磁化の説明図である。 負極性におけるフラックスゲート磁界センサの磁性コアの磁化の説明図である。 理想状態における、同期検波を説明する図である。 理想状態における、温度が変化した場合の同期検波を説明する図である。 正負オフセットにアンバランスがある場合の同期検波を説明する図である。 正負オフセットにアンバランスがある場合の、正負オフセット変動が極小となるように極性毎の増幅率を設定した場合の同期検波を説明する図である。 正負オフセットにアンバランスがある場合の、正負オフセット変動が極小となるように極性毎の増幅率を設定した場合の、温度が変化したときの同期検波を説明する図である。 従来技術と本発明に係るフラックスゲート磁界センサの、温度ドリフトと温度係数の実測値のグラフである。 直流励磁電流の極性に応じた増幅割合のパラメータに対する温度係数の実測値のグラフである。
(従来のフラックスゲート磁界センサの構造)
本発明は、従来の磁界センサと同様に、検波においてセンサの感度や雑音が良好となるように調整したままとする一方、励磁電流の直流バイアス成分の極性に応じたピックアップ信号の振幅をそれぞれ独立した増幅率で増幅させる増幅器を回路中に設けるものである。これから図面を参照して、本願発明の説明を行う。まず、本願発明の前提となる、従来のフラックスゲート磁界センサ100の構造について説明する。図1は、従来のフラックスゲート磁界センサ100の概略回路図である。この回路では、典型的な検波方法として同期検波を用いている。また検出した磁界を打ち消すような電流をピックアップコイルに流すことにより、磁性体の特性の良好な領域でセンサを動作させるクローズドループの構成を採用している。
フラックスゲート磁界センサ100は、直流重畳交流励磁部101、移相器102、励磁極性スイッチング部103、センサ部104、ボルテージフォロア105、増幅器106、同期検波器107、ローパスフィルタ108、積分器109、フィードバック抵抗110、出力端子111から構成される。この例では、移相器102は、直流重畳交流励磁部101内の交流源の直後に配置されている。交流源は周波数fHzの交流電流を発生させるが、それと所定の位相関係で同期検波をさせるための参照信号も出力することが通常である。参照信号は方形波とすることが多いため、図1において交流源のシンボルは、正弦波と方形波の両方を表わすものとして記載している。
直流重畳交流励磁部101は、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた励磁電流を提供する回路である。直流重畳交流励磁部101は、後段の励磁極性スイッチング部103とともにバイアススイッチング方式の励磁回路を構成する。
移相器102は、直流重畳交流励磁部101の励磁電流の交流成分の位相を調節する回路である。移相器102は、信号の位相をある調節量(移相量)だけずらすことによって調節する。図1の例では、移相器102は直流重畳交流励磁部101内に備えられ、励磁電流の交流成分のみの位相を調節している。従来技術においては、励磁電流の位相(そして、同期検波における励磁電流との位相関係)は、フラックスゲート磁界センサ100の感度が最大(クローズドループ構成においては雑音が最小)となるように調節される。センサ部104からの出力であるピックアップ信号は、同期検波器107によって、それが参照する参照信号との位相関係に応じて同期検波されるが、移相器102は、その位相関係を調節するものであり、センサ部104からの出力に対して最大の検波感度が得られるように位相関係を調節するものである。移相器102は、位相を動的に調節するものではなく、一旦、最適な位相の移動量を移相量として設定すると、それを保持して、その移相量だけ位相をずらす。移相器102は、典型的には、オペアンプで構成された遅延回路である。
励磁極性スイッチング部103は、センサ部104に流す励磁電流の極性を周期的に切り替える回路である。これにより、直流バイアス電流成分は周期的に極性が切り替えられ、バイアススイッチング方式による励磁電流がセンサ部104の磁性コアに供給される。励磁極性スイッチング部103は、極性の切り替えの周期を決定する、周波数がfbsHzのクロックを有しており、それによって極性を切り替えるスイッチが駆動され、励磁電流は周期的に極性が切り替えられる。周波数fbsのクロックは典型的には励磁電流の交流成分の周波数を整数分の一で分周して使用される。図1に示すように励磁極性スイッチング部103が直流重畳交流励磁部101からの出力をスイッチングする場合、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられることになり、励磁電流(直流バイアス電流)の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われる。
なお、励磁電流とは、直流バイアス電流を交流電流に重畳させたものである。直流バイアス電流成分について言及するときは、文脈に応じて、直流バイアス電流、励磁電流の直流成分、直流励磁電流などの他の表現を用いることがあり、また、交流電流成分について言及するときは、文脈に応じて、交流励磁電流、励磁電流の交流成分などの他の表現を用いることがある。
センサ部104は、測定対象の外部の磁界を検出するセンサ素子であり、検出される磁界が印加される細長い磁性体からなる磁性コアと、その磁性コアに巻回されたピックアップコイルを有する。
ボルテージフォロア105は、センサ部104からのピックアップ信号を、インピーダンスを変換することにより、後段に正確に伝達するための構成要素である。増幅器106は、ボルテージフォロア105からの出力を適切なレベルに増幅する構成要素である。図1においては、ボルテージフォロア105からの出力は、キャパシタを通過させて交流成分のみを取りだし、後段の増幅器106に送られる。なお、ボルテージフォロア105、増幅器106、およびそれらの間のキャパシタは、ピックアップ信号を適切なレベルで正確に伝達させるための付加的な構成であり、本発明においては必ずしも必要ない。
同期検波器107は、増幅器106から出力された、センサ部104からのピックアップ信号に対して、同期検波を行う回路の構成要素である。同期検波器107は、センサ部104のピックアップコイルに誘起される誘起電圧であるピックアップ信号を、励磁電流における交流電流と周波数が同期した参照信号を参照して同期検波することにより、センサ出力を定めることになる検波信号とする。同期検波器107は、センサ部104からのピックアップ信号に対して直流重畳交流励磁部101の励磁電流の交流成分と同一の周波数を持つ参照信号との位相関係に応じて、検波を行うものである。
ここで、同期検波は、検波される信号に、信号が正弦波で搬送される場合は、その正弦波を乗算することで行うことができる。励磁電流の交流成分により外部磁界を変調しているため、励磁電流の交流成分である正弦波をピックアップ信号に乗算することによって同期検波を行うことができるが、通常は、アナログスイッチなどで同期検波回路が簡単に構成できる、正弦波ではなく方形波が乗算に使用される。すなわち、方形波は振幅が1,−1であるため、それとの乗算結果は、方形波の振幅が1の時にピックアップ信号を同じ極性で通過させ、方形波の振幅が−1の時にピックアップ信号を極性を反転させて通過させることにより、同期検波を行うことができる。ここでは、参照信号の符号によってゲートコントロール(通過させるピックアップ信号の極性を反転させるか否かの制御)を行わせるために、参照信号として励磁電流の交流成分に周波数及び位相が同期した方形波を使用している。
同期検波器107には、励磁電流の交流成分と同一の周波数の信号が参照信号として入力されており、それによって、検波するピックアップ信号との位相関係が決定される。図1においては、参照信号の伝達経路は、直流重畳交流励磁部101内の周波数fHzの交流源から同期検波器107に向けた破線で示されている。これにより、例えば、参照信号の半周期(例えば振幅が1の時)はピックアップ信号を同じ極性で通過させ、参照信号の残りの半周期(例えば振幅が−1の時)はピックアップ信号の極性を反転させることによって、直流重畳交流励磁部101が発生する交流成分に同期させた検波を行う。
ローパスフィルタ108は、同期検波器107からの出力である検波信号を平均化する回路の構成要素である。これにより、検波信号から、検出する磁界の大きさを表す磁界検出信号を取り出す。この例では、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられており、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われるため、検波信号を加算(平均化により実現)することにより、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号が求められる。
積分器109は、クローズドループ構成でシステムを動作させる場合において、ローパスフィルタ108から出力される磁界検出信号を積分する回路の構成要素である。積分器109の出力は、後述するフィードバック抵抗110を経て、センサ部104のピックアップコイルを通じて、センサ部104の磁性コアに対して磁界による負帰還のフィードバックをかける。結果的に積分器109の入力となる磁界検出信号は、このフィードバックの偏差を表わし、積分器109は磁界検出信号をゼロに近づける制御を行うことになる。
フィードバック抵抗110は、積分器109から出力されたフィードバック信号を負帰還させてセンサ部104のピックアップコイルに入力させる際の、フィードバック信号が通過する抵抗である。負帰還により、センサ部104のピックアップコイルには、測定対象の外部磁界を打ち消すような磁界が発生させられる。フィードバック信号によって流れる電流が、測定対象の外部磁界に対応するものであり、その電流値をフィードバック抵抗110で電圧として検出したものが、測定対象の外部磁界の大きさを表わすセンサ出力となる。
出力端子111は、フィードバック抵抗110を流れる電流を、外部磁界の大きさを表わす電圧に変換したセンサ出力を外部に出力させるノードである。
(従来のフラックスゲート磁界センサの動作)
次に、本願発明の前提となる、従来のフラックスゲート磁界センサ100の動作について説明する。図4は、フラックスゲート磁界センサの概略構造を示す図である。図4の(a)には、センサ部104の模式図が示されている。アモルファス磁性ワイヤが上下方向に伸びており、それにピックアップコイルが巻回されている。アモルファス磁性ワイヤの円周方向をx方向、長手方向をz方向とする。検出される外部磁界は、z方向でアモルファス磁性ワイヤに流入する。励磁電流が図で下から上に流れると、その励磁電流による磁界はx方向であり、検出される外部磁界の方向と直交する。図4の(b)には、直流重畳交流励磁部101から出力される、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた波形が示されている。励磁極性のスイッチングはまだ行われていないため、片バイアスの状態である。アモルファス磁性ワイヤ内には一軸性の異方性Kuがあり、励磁磁界、異方性、外部磁界のエネルギーが最小化する位置で磁化Jsが振動することとなる。この振動のz軸射影がピックアップコイルに電圧を誘導し、それをピックアップ信号として取り出すことができる。この電圧には外部磁界の影響が変調されており、同期検波により出力を取り出すことができる。外部磁界がない時も異方性の影響でオフセット成分が発生するが、直流バイアス電流の極性を反転させることによって励磁極性の極性を反転すれば、一軸性の対称性により、オフセット成分の大きさを保ったまま、オフセットの極性も反転することとなる。この性質を利用し、周期的に励磁極性を反転して出力を加算(平均化)することで、出力に現れるオフセット成分を抑制することが可能である。図4の(c)には、そのような反転をさせるための、励磁極性スイッチング部103から出力される、周期的に極性が切り替えられた、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた励磁電流の波形が示されている。
次に、センサ部104においてピックアップコイルからピックアップされる信号の波形(ピックアップ信号の波形)や磁化のベクトル図を示して、波形の説明を行う。以下において、単に「正極性」と言えば直流バイアス電流が正極性の場合を、単に「負極性」と言えば直流バイアス電流が負極性の場合をいう。図5は、正極性におけるフラックスゲート磁界センサのセンサ部の磁化の説明図である。図5の(a)には、ピックアップ信号の波形が示されている。励磁電流による磁化のz軸射影をJs・sin(θ(t))としたとき、それの時間微分がピックアップコイルに誘導される。誘導されたピックアップ信号の波形は、アモルファス磁性ワイヤの一軸性の異方性Kuによって生じるオフセット成分を含んでいる。図5の(b)には、外部磁界Hex、アモルファス磁性ワイヤの一軸性の異方性Ku、励磁磁界H(t)に対するアモルファス磁性ワイヤの磁化Jsの方向を示す図が示されている。外部磁界Hexは、クローズドループ制御のため、ゼロと見なすことができる。x軸には、励磁磁界H(t)=Hac・sin(2πft)+Hdc(Hacは交流励磁磁界、Hdcは直流バイアス磁界)が印加されており、また、z軸成分も有する異方性Kuが存在している。これらの外部磁界Hex、異方性Ku、励磁磁界H(t)により、アモルファス磁性ワイヤの磁化Jsが生じる。磁化Jsの円周方向からの角度を角度θ0とすると、励磁磁界H(t)が交流成分によって振動することにより、角度θ0はそれと同じ周波数で振動する。図5の(c)には、励磁磁界H(t)が示されている。励磁磁界H(t)が正のピークのときに、それに影響されて角度θ0は小さくなり、励磁磁界H(t)が負のピークのときに、それの影響が小さくなることにより角度θ0は大きくなる。すなわち、励磁磁界H(t)が(1)で正のピークの時に磁化Jsは励磁磁界H(t)の方向に最も引き寄せられ、励磁磁界H(t)が(2)で負のピークのときに磁化Jsは励磁磁界H(t)の方向から最も離れる。そして、磁化のz軸成分であるJs・sin(θ0)の成分がピックアップコイルと鎖交する磁束を発生させて、ピックアップコイルにピックアップ信号を発生させる。
次に、直流バイアス電流の極性を反転させた場合の説明をする。図6は、負極性におけるフラックスゲート磁界センサのセンサ部の磁化の説明図である。この例は、直流バイアス電流の極性を反転させると共に、それが重畳される交流電流の位相も反転させている。図6は、図5と同様に、図6の(a)にピックアップ信号の波形、図6の(b)にアモルファス磁性ワイヤの磁化Jsの方向、図6の(c)に励磁磁界H(t)が示されている。図6の(c)においては、図5の(c)とは反対に、励磁磁界H(t)が正のピークのときに、それの影響が小さくなることにより角度θ0は大きくなり、励磁磁界H(t)が負のピークのときに、それに影響されて角度θ0は小さくなる。すなわち、励磁磁界H(t)が(1)で負のピークの時に磁化Jsは励磁磁界H(t)の方向に最も引き寄せられ、励磁磁界H(t)が(2)で正のピークのときに励磁磁界H(t)の方向から最も離れる。
このように、直流バイアス磁界Hdcの方向が反転すると、角度θ0も反転し、ピックアップコイルと鎖交する磁束も反転する。このとき、異方性Kuにアンバランスが存在しない理想的な場合を想定すると、異方性Kuによって生じるオフセット成分は、励磁電流が正極性の場合とは逆極性で現れるが、正極性と同じ量だけ存在することとなる。そのため、励磁電流の極性の切り替えを行うと、最終的に回路上でこれらのオフセット成分を平均化することによって、出力に現れるオフセットを0とすることができる。また、異方性Kuが温度によって変化し、これに起因するオフセットが変化したとしても、その変化は常に対称的に現れるため、その平均は安定しており、出力に現れるオフセット成分は0のままである。
感度やオフセット成分の大きさと極性に関しては、磁化Jsの時間変化によってピックアップ信号がピックアップコイルに誘起され、このピックアップ信号に外部磁界Hexやオフセット成分の情報が含まれている。従って、上述のように、励磁電流による励磁磁界H(t)、異方性Ku、外部磁界Hexのそれぞれのファクターに応じて、どのように磁化Jsが動くのかということによって、外部磁界に対する感度の大きさと極性及び異方性Kuに起因するオフセット成分の大きさと極性が決定される。
(本発明のフラックスゲート磁界センサの構造)
次に、本発明に係るフラックスゲート磁界センサ200の構造について説明する。フラックスゲート磁界センサ200は、直流バイアス電流の正極性と負極性のそれぞれに対応するピックアップ信号をそれぞれ独立した増幅率で増幅するものである。従来のフラックスゲート磁界センサ100においては、同期検波における参照信号との位相関係は、通常、磁界センサとして感度を最大化したり、雑音を最適化するように調節されている。本発明に係るフラックスゲート磁界センサ200では、一般的なフラックスゲート磁界センサにおいて、バイアススイッチングを適用した際に、励磁電流の直流バイアス成分の極性に応じたピックアップ信号間に存在するアンバランスが実質的に打ち消されるように、直流バイアス成分の極性に対応した独立した増幅率でピックアップ信号を増幅する。このように、アンバランスを打ち消すように直流バイアス成分の極性に応じた増幅率とすることで、温度係数の最小化を実現することができる。フラックスゲート磁界センサ200は、このような原理で、優れた温度特性を実現したものである。
図2は、フラックスゲート磁界センサ200の概略回路図である。この回路では、典型的な検波方法として同期検波を用いている。また検出した磁界を打ち消すような電流をフィードバックによりピックアップコイルに流すことにより、磁性体の特性の良好な領域でセンサを動作させるクローズドループの構成を採用している。なお、代替的に、検出される磁界を打ち消すためにピックアップコイルを兼用させずに専用のコイルを別途設けたクローズドループ構成や、フィードバックを行わないオープンループの構成を採用することも可能である。
フラックスゲート磁界センサ200は、従来のフラックスゲート磁界センサ100と同様の構成を有しており、直流重畳交流励磁部201、移相器202(図示せず)、励磁極性スイッチング部203、センサ部204、ボルテージフォロア205、増幅器206、同期検波器207、ローパスフィルタ208、積分器209、フィードバック抵抗210、出力端子211から構成される。なお、移相器202は、同期検波器207での同期検波における励磁電流の交流成分との位相関係を感度が実質的に最大となるように調節するものであるが、そのように位相関係を調節することができるような、励磁電流、ピックアップ信号、参照信号などが伝達される経路中の任意の位置に配置することが可能である。このため、図2には、移相器202を特定の位置に記載していない。
直流重畳交流励磁部201は、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた励磁電流を提供する回路である。直流重畳交流励磁部201は、典型的には、公知の電源回路である。交流電流をセンサ部204に流すことで外部の磁界を変調させ、直流バイアス電流を重畳させることにより、後段の励磁極性スイッチング部203とともにバイアススイッチング方式の励磁回路を構成する。この場合、直流バイアス電流が重畳される交流電流は、直流バイアス電流の極性の切り替えに合わせて極性が切り替えられることになる。
バイアススイッチングにおいては、直流バイアス電流の極性を周期的に切り替える必要がある。ここで、直流バイアス電流が重畳される交流電流を、直流バイアス電流の極性の切り替えに合わせて極性を切り替える構成と、切り替えない構成の両方が可能である。上述の例は、交流電流と直流バイアス電流の両方の極性を切り替えるものであり、この場合、同期検波後において加算処理(平均化処理)を行えば、検出される磁界に対応しない信号を除去してセンサ出力を得ることができる。
代替的に、交流電流の極性を直流バイアス電流の極性と共に切り替えない構成とするため、直流重畳交流励磁部201は、極性を周期的に切り替えた直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を提供する構成とすることもできる。この場合、後述の励磁極性スイッチング部203は不要となる。また、磁界検出信号を得るためには、同期検波後において、直流バイアス電流のそれぞれの極性における検波号の差を取る必要がある。そのためには、例えば、一方の直流バイアス電流の極性における検波信号の極性を反転させた後に加算処理(平均化処理)を行うとよい。
図示していないが、移相器202は、同期検波における直流重畳交流励磁部201内の交流源からの交流励磁電流との位相関係を、従来のフラックスゲート磁界センサ100と同様に、通常、その感度が最大(クローズドループ構成では雑音が最小)となるように調節するものである。なお、実質的に最小とは、数学的に厳密に正確な最小という意味ではなく、実際的に調節可能な正確性の範囲での最小という意味である。センサ部204からの出力は、同期検波器207によって交流電流と周波数が同期した参照信号の位相を参照して同期検波されるが、移相器202は、それとの位相関係を調節することができるような任意の位置に配置することが可能である。
励磁極性スイッチング部203は、センサ部204に流す励磁電流の極性を周期的に切り替える回路である。これにより、直流バイアス電流成分は周期的に極性が切り替えられ、バイアススイッチング方式による励磁電流がセンサ部204の磁性コアに供給される。励磁極性スイッチング部203は、極性の切り替えの周期を決定する、周波数がfbsHzのクロックを有しており、それによって極性を切り替えるスイッチが駆動され、励磁電流は周期的に極性が切り替えられる。周波数fbsのクロックは典型的には励磁電流の交流成分の周波数を整数分の一で分周して使用される。図2に示すように励磁極性スイッチング部203が直流重畳交流励磁部201からの出力をスイッチングする場合、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられることになり、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分 は同極性で現われる。クロックの周波数は、直流重畳交流励磁部201が発生する交流電流の周波数より小さいものとされる。またクロックには、典型的には直流重畳交流励磁部201が発生する交流励磁電流に対して周波数が整数分の一で分周され、必要に応じて任意に移相されたタイミング信号が使用される。例えば、直流重畳交流励磁部201からの励磁電流の交流成分の周波数を80kHzとしたときに、励磁極性スイッチング部203の切り替え周波数fbsHzを5kHz程度として、正弦波16個程度で直流バイアス電流の極性のスイッチングを繰り返す構成とすることができる。
バイアススイッチング方式においては、直流バイアス電流成分の極性を周期的に切り替えることが重要であり、その際に、交流成分の位相を同時に反転させる構成と反転させない構成の両方が可能である。励磁極性スイッチング部203を使用すると、直流バイアス電流が重畳された交流電流である励磁電流全体の極性を切り替えるため、直流バイアス電流成分の極性の切り替えに同期して交流電流成分の位相も反転させられることになる。この場合、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われる。
なお、代替的に、直流バイアス電流成分の極性のみを周期的に切り替え、交流成分の位相を同時に反転させない場合は、励磁極性スイッチング部203は不要である。この場合は、直流重畳交流励磁部201が、極性を周期的に切り替えた直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を提供する構成となる。直流バイアス電流成分の極性の切り替えにかかわらず、交流電流成分の位相が反転させられない場合、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は同極性で現われ、磁界の感度成分は逆極性で現われる。
センサ部204は、測定対象の外部の磁界を検出するセンサ素子であり、検出される磁界が印加される細長い磁性体からなる磁性コアと、その細長い磁性体に巻回されたピックアップコイルを有する。センサ部204は、典型的には、U字型に曲げたアモルファス磁性ワイヤにピックアップコイルを巻いた構造である。アモルファス磁性ワイヤは、磁気異方性が生じにくい無磁わい組成のものである。センサ部204は、典型的には、U字型に曲げたアモルファス磁性ワイヤにピックアップコイルを巻いた構造である。なお、アモルファス磁性ワイヤの形状は、U字型には限られず、先端を導線等でショートさせたII型などとすることができる。アモルファス磁性ワイヤに生じた、外部の磁界による磁化の影響を含む、アモルファス磁性ワイヤに流される励磁電流によって発生する変化する磁束をピックアップコイルで検出した検出電圧(ピックアップ信号)によって、外部の磁界の大きさを測定する。アモルファス磁性ワイヤは、単線のI型の形状でも動作するが、磁性体が2本であって高い感度が得られるU型やII型より、感度は低くなる。また、感度を高めるためにU型、II型、I型等の形状をそれぞれ複数本組み合わせて使用することもできる。センサ部204は、ワイヤに励磁電流を直接流す直交フラックスゲートの構成を有するものであるが、直流を重畳した交流を励磁電流とすることでコア内の磁化を一方向とし、磁化反転に伴う磁性体の磁気ノイズを低減することで低雑音が図られるものである。
ボルテージフォロア205は、センサ部204からのピックアップ信号を、インピーダンスを変換することにより、後段に正確に伝達するための構成要素である。ピックアップコイルに誘起される電圧からは十分な電流を取り出すことができないため、後段のインピーダンスによっては電圧降下が生じてして感度が下がる可能性がある。ボルテージフォロア205は、そのような感度低下を防止するものである。ボルテージフォロア205は、典型的には、オペアンプで構成された増幅率が1の増幅回路である。
増幅器206は、ボルテージフォロア205からの出力を適切なレベルに増幅する構成要素である。増幅器206は、周波数がfbsHzの直流バイアス電流の極性の切り替えに応じて、正極性、負極性のそれぞれの極性に対して独立した増幅率で増幅できるように構成されている。このようにすることによって、それぞれの極性毎にピックアップ信号の振幅を調節することができる。そして好適には、増幅器206は、それぞれの極性に応じたピックアップ信号間に存在するアンバランスが実質的に打ち消されるように、直流バイアス成分の極性に応じた独立した増幅率で増幅する。図3に、極性毎に独立した増幅率を設定可能な増幅器206の一例の具体的な回路図を示す。周波数がfbsHzの直流バイアス電流の極性の切り替えに応じて、増幅率を定める抵抗が、可変抵抗252Aと可変抵抗252Bとの間で切り替えられ、増幅回路251の増幅率が切り替えられる。
なお、図2においては、ボルテージフォロア205からの出力は、キャパシタを通過させて交流成分のみを取りだし、後段の増幅器206に送られる。これにより、ピックアップ電圧に含まれる(フィードバック信号による電圧などの)不要な直流成分が除去される。なお、ボルテージフォロア205、およびキャパシタは、ピックアップ信号を適切なレベルで正確に伝達させるための付加的な構成であり、本発明においては必ずしも必要ない。
同期検波器207は、増幅器206から出力された、センサ部204からのピックアップ信号に対して、同期検波を行う回路の構成要素である。同期検波器207は、センサ部204のピックアップコイルに誘起される誘起電圧であるピックアップ信号を、励起電流における交流電流と周波数が同期した参照信号の位相を参照して同期検波することにより、センサ出力を定めることになる検波信号とする。同期検波器207は、センサ部204からのピックアップ信号に対して直流重畳交流励磁部201の励磁電流の交流成分と同一の周波数を持つ参照信号との位相関係に応じて、検波を行うものである。同期検波器207には、直流重畳交流励磁部201の交流電流と同一の周波数の信号が参照信号として入力されており、それによって、検波するピックアップ信号との位相関係が決定される。典型的には、参照信号を直流重畳交流励磁部201における励磁電流の交流成分と同期した方形波のゲートコントロール信号とした場合、これによって内部のスイッチを駆動して、ゲートコントロール信号が負(LOW)の時のタイミングでピックアップ信号の極性を反転させて折り返す。これによって、参照信号に同期した成分からなる意味のある出力を得ることができる。同期検波器207は、典型的には、アナログスイッチなどの素子で構成されている。なお、ピックアップ信号からセンサ出力を定める検波信号を得るためには、同期検波によらなくとも、尖頭値検波などの他の手段を使用することもできる。
ローパスフィルタ208は、同期検波器207からの出力である検波信号を平均化する回路の構成要素である。これにより、検波信号から検出する磁界の大きさを表す磁界検出信号を取り出す。この例では、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられており、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われるため、検波信号を加算(平均化により実現)することにより、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号を得ることができる。具体的には、ローパスフィルタ208により、検波信号から、脈流である磁界の大きさを表わす信号の波形を平滑化して直流にし、極性が切り替えられる直流バイアス電流に起因するオフセットを加算により除去する。
なお、代替的に直流バイアス電流成分の極性のみを周期的に切り替え、交流成分の位相を同時に反転させない場合、すなわち励磁極性スイッチング部203を使用することなく、直流重畳交流励磁部201が極性を周期的に切り替えた直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を提供する場合は、直流バイアス電流成分の極性の切り替えにかかわらず、交流電流成分の位相が反転させられない。この場合、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因したオフセット成分は同極性で現われ、磁界の感度成分は逆極性で現われる。そのため、磁界検出信号を得るためには、直流バイアス電流の各極性毎の検波信号の差を求める必要がある。具体的には、直流バイアス電流の一方の極性における検波信号を反転(−1倍)させた後に、直流バイアス電流の他方の極性における検波信号と共に加算処理(平均化処理)を実行するとよい。これによって、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号を得ることができる。
積分器209は、クローズドループ構成でシステムを動作させる場合において、ローパスフィルタ208から出力されたステップ波形を積分する回路の構成要素である。積分器209の出力は、後述するフィードバック抵抗210を経て、センサ部204のピックアップコイルを通じて、センサ部204の磁性コアに対して磁界による負帰還のフィードバックをかける。結果的に積分器209の入力となる磁界検出信号は、このフィードバックの偏差を表わし、積分器209は磁界検出信号をゼロに近づける制御を行うことになる。
フィードバック抵抗210は、積分器209から出力されたフィードバック信号を負帰還させてセンサ部204に入力させる際の、フィードバック信号が通過する抵抗である。負帰還のために、磁界検出信号を積分したフィートバック信号は、ピックアップコイルに磁界検出信号を打ち消す極性で入力させる。負帰還により、センサ部204のピックアップコイルには、測定対象の外部磁界を打ち消すような磁界が発生させられる。フィードバック信号によって流れる電流が、測定対象の外部磁界に対応するものであり、その電流値をフィードバック抵抗210で電圧として検出したものが、測定対象の外部磁界の大きさを表わすセンサ出力となる。
上述の例は、クローズドループ構成であるため、磁気コアに流入した検出される外部磁界を打ち消す磁界を発生させるフィードバック信号をピックアップコイルに入力し、そのフィードバック信号の大きさをセンサ出力とするものである。従って、ローパスフィルタ208、積分器209、フィードバック抵抗210によって、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号に基づいてセンサ出力を生成する出力回路が構成される。
なお、オープンループ構成の場合は、ローパスフィルタ208の出力が測定対象の外部磁界を表わすものであるため、積分器209、フィードバック抵抗210は不要である。そして、ローパスフィルタ208の出力からセンサ出力を得ることができる。
出力端子211は、フィードバック抵抗210を流れる電流を、外部磁界の大きさを表わす電圧に変換したセンサ出力を外部に出力させるノードである。これにより、測定対象の外部磁界を打ち消す磁界を発生させる電流の大きさを、測定対象の外部磁界を表わす測定量として出力する。
(理想状態における同期検波)
これから、理想状態、すなわち、直流バイアスを切り替えた際のオフセットのアンバランスがない回路における同期検波の動作について各ポイントの信号波形を示しながら説明する。説明のため、センサ部204は、磁気シールド内などの外部磁場が十分に小さい空間に置かれているものとする。図7は、理想状態における、同期検波を説明する図である。図7の(a)には、励磁極性スイッチング部103の直後における、励磁極性スイッチング時の励磁電流波形が示されている。その波形は、直流バイアス成分が重畳された交流の極性を周期的に切り替えた波形である。図で、前半は直流バイアス成分が正極性、後半は直流バイアス成分が負極性である。正極性から負極性に切り替わる際の電圧が不連続となっている。図7の(b)には、増幅器106の直後における励磁極性スイッチング時のピックアップ信号の波形(増幅後)が示されている。前半は、正極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であり、後半は負極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号である。その波形は、励磁電流により磁性コア内に励磁される磁化のz軸射影成分の時間微分に相当する交流波形である。図7の(c)には、同期検波器107の直後における検波信号の波形が示されている。その波形は、直流重畳交流励磁部101内の交流源から交流電流と同一の周波数を持つ方形波の参照信号として生成される同期検波器107のゲートコントロール信号が負(LOW)の時のタイミングで信号の波形を、同期検波器107が極性を反転させて折り返すことによって、検波したものである。検波によって、ピックアップ信号の図で点線の波形の部分が反転させられて実線の波形の部分となり、ゲートコントロール信号が正(HIGH)の部分のピックアップ信号と正負が揃って波形に含まれる情報が出力となる。検波で極性を反転させるタイミングはピックアップ信号の瞬時値がゼロとなる点であるため、検波出力(すなわち感度)は最大となっている。なお、ゲートコントロール信号のタイミングは、フラックスゲート磁界センサ100の感度が最大となる位置で固定される。これは、具体的には、同期検波器107のゲートコントロール信号とピックアップ信号との位相関係を定める移相器102による移相量を、フラックスゲート磁界センサ100の感度が最大となる位置で固定することによって行うことができる。図7の(d)の左側には、ローパスフィルタ108においてなされる平均化における、正極性時に現れるオフセットと、負極性時に現れるオフセットとを示している。図7の(d)の右側には、ローパスフィルタ108において得られる最終的な全体平均値が示されている。全体平均値は、理想状態であってオフセットのアンバランスが存在しないため、常にゼロとなる。
(温度が変化した場合の理想状態における同期検波)
次に、直流バイアスを切り替えた際のオフセットのアンバランスがない理想状態で、センサ部104の温度が変化してオフセットが変化した回路における同期検波の動作について各ポイントの信号波形を示しながら説明する。図8は、理想状態における、温度が変化した場合の同期検波を説明する図である。図8の(a)には、励磁極性スイッチング部103の直後における、励磁極性スイッチング時の励磁電流波形が示されている。その波形は、図7の(a)の場合と同じく、直流バイアス成分が重畳された交流の極性を周期的に切り替えた波形である。図8の(b)には、センサ部104の温度が変化した場合の、増幅器106の直後における励磁極性スイッチング時のピックアップ信号の波形(増幅後)が示されている。前半は、正極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であり、図7の(b)の場合と比べると、温度変化により異方性に起因するオフセット成分の量が変動しており、振幅が大きくなっている。後半は、負極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であり、図7の(b)の場合と比べると、温度変化により異方性に起因するオフセット成分の量が変動しており、振幅が大きくなっている。ただし、前半と後半を比較すると、いずれも振幅が大きくなっているが、両方の波形は対称的に変化している。図8の(c)には、同期検波器107の直後における検波信号の波形が示されている。その波形は、図7の(c)の場合と比べると、振幅が大きくなっているが、正負オフセットの比率は変化していない。図8の(d)の左側には、ローパスフィルタ108においてなされる平均化における、正極性時に現れるオフセットと、負極性時に現れるオフセットとを示している。図8の(d)の右側には、ローパスフィルタ108において得られる最終的な全体平均値が示されている。検波した波形の振幅は大きくなっているが、正負極性のそれぞれのオフセット変動が同じ割合(1:1)であれば、温度変化にかかわらず正負オフセットの和に変動は無いため、全体平均値は常にゼロのままとなる。そのため、温度変化によって出力が変動することはない。
(正負オフセットにアンバランスがある場合の同期検波)
上述の図7、図8を引用した説明は、温度変化にかかわらず正負オフセットにアンバランスがない理想的な状態に基づくものである。しかし実際には、正負オフセットにはアンバランスがあるのが通常である。そのような場合について、以下に説明する。図9は、正負オフセットにアンバランスがある場合の同期検波を説明する図である。図9の(a)には、励磁極性スイッチング部103の直後における、励磁極性スイッチング時の励磁電流波形が示されている。その波形は、図7の(a)の場合と同じく、直流バイアス成分が重畳された交流の極性を周期的に切り替えた波形である。図9の(b)には、センサ部104の温度が常温から変化したの場合の、増幅器106の直後における励磁極性スイッチング時のピックアップ信号の波形(増幅後)が示されている。ここでは典型例として、正負オフセットのアンバランスとして波形に歪みが存在する場合が示されている。オフセットのアンバランスとして、前半の正極性時に比べて後半の負極性時の波形が歪む場合を考える。ここで、温度変化によるオフセット変動で振幅が大きくなるとともに正負オフセットのアンバランスも拡大される。具体的には、前半は正極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であり、図7の(b)の場合と同等である。後半は、負極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であるが、図7の(b)の場合と比べると、温度変化により振幅と共に歪みも増大している。図9の(c)には、同期検波器107の直後における検波信号の波形が示されている。その波形も図7の(c)の場合と比べると、後半の歪みを含んだままである。ただし、前半、後半とも、検波で極性を反転させるタイミングはピックアップ信号の瞬時値がゼロとなる点であるため、検波出力(すなわち感度)は最大となっている。図9の(d)の左側には、ローパスフィルタ108においてなされる平均化における、正極性時に現れるオフセットと、負極性時に現れるオフセットとが示されている。図9の(d)の右側には、ローパスフィルタ108において得られる最終的な全体平均値が示されている。図9の(d)の右側に示す全体平均値は、歪みを含んだ後半の影響を受けてゼロから負側にずれている。なお、そのずれの量は温度に応じて変化することとなる。このように、正負オフセットにアンバランスがある場合は、温度変化により、全体平均値に波形の歪みに起因するアンバランスによる変動が発生する。そのため、温度変化のためにセンサ出力はゼロとはならない。
(正負オフセットにアンバランスがある場合の、極性に対応する独立した増幅率で増幅したときの同期検波)
これから、本発明に係る、温度による正負オフセット変動にアンバランスがある場合において、直流バイアス電流の極性に対応する独立した増幅率で増幅することによって、最終的な出力に温度による変化を生じさせないようにする手法について説明する。図10は、正負オフセット変動にアンバランスがある場合の、温度を変化させた場合の直流バイアス電流のそれぞれの極性における検波信号(あるいは、その基となるピックアップ信号)内のオフセット成分の絶対値が実質的にお互いに等しいままなるように、それぞれの極性に対応するピックアップ信号を独立した増幅率で増幅することによって、正負オフセットの和が極小となるように増幅割合を調節した場合の同期検波を説明する図である。ここでのセンサ部204の温度は常温である。図10の(a)には、励磁極性スイッチング部203の直後における、励磁極性スイッチング時の励磁電流波形が示されている。その波形は、図7の(a)の場合と同じく、直流バイアス成分が重畳された交流の極性を周期的に切り替えた波形である。図10の(b)には、センサ部204の磁性コアの温度が常温の場合の、増幅器206の直後における励磁極性スイッチング時のピックアップ信号の波形(増幅後)が示されている。正負オフセット(励磁電流の直流バイアス成分が正極性の時のオフセット成分と負極性の時のオフセット成分)のアンバランス(対称的でないこと)により、前半の正極性時のピックアップ波形に対して、後半の負極性時のピックアップ波形は歪みを含んだ状態である。図10の(c)には、同期検波器207の直後における検波信号の波形が示されており、後半は歪みを含んでいる。なお、前半、後半とも、検波で極性を反転させるタイミングはピックアップ信号の瞬時値がゼロとなる点であるため、検波出力(すなわち感度)は最大となっている。
増幅器206は、正極性、負極性のそれぞれの極性に対して独立した増幅率で増幅できる。ここで増幅器206は、センサ出力の温度係数が実質的に最小となるようにそれぞれの増幅率が独立して調節される。具体的には、そのそれぞれの増幅率(増幅割合)は、それぞれの極性に応じたピックアップ信号間に存在するオフセット成分のアンバランスが実質的に打ち消されるように、一定割合で定められる。すなわち、(外部磁場無しまたは一定に保った状態で)センサ部204周辺の温度を変化させた場合の最終的なセンサ出力値が実質的に等しいままとなるように定められる。図10の(d)の左側には、ローパスフィルタ208においてなされる平均化における、正極性時に現れるオフセットと、負極性時に現れるオフセットとが示されている。そして、それらのオフセットの絶対値は温度が変化してもお互いに等しいままになるように増幅器206の正極性、負極性の増幅率が独立して調節されている。このように調節すると、センサ部204周辺の温度が変化しても、それぞれの極性における異方性Kuに起因する、検波信号(あるいは、その基となるピックアップ信号)に含まれるオフセット成分の絶対値がお互いに等しいままとなり、センサ部204周辺の温度が変化してもオフセット成分の変動によるアンバランスを排除することができる。図10の(d)の右側には、ローパスフィルタ108において得られる最終的な全体平均値が示されている。正極性時に現れる正のオフセットと、負極性時に現れる負のオフセットの絶対値は温度が変化してもお互いに等しいままになるように調節されているため、それらの全体平均値はゼロとなる。このように、オフセットのアンバランスがキャンセルされるように、正極性、負極性のそれぞれの極性のピックアップ信号に対して独立した増幅率によってピックアップ信号が増幅されているため、全体平均値は変動せずに、常にゼロとなる。
(正負オフセットにアンバランスがある場合の、極性に対応する独立した増幅率で増幅したときの温度が変化した場合の同期検波)
次に、正負オフセットにアンバランスがある場合において、極性に対応する独立した増幅率で増幅したときの温度が常温から変化した場合について説明する。図11には、図10の場合と同様の正負オフセットにアンバランスがある場合において、温度が常温から変化したときの同期検波を説明する図が示されている。図11の(a)には、励磁極性スイッチング部203の直後における、励磁極性スイッチング時の励磁電流波形が示されている。その波形は、図7の(a)の場合と同じく、直流バイアス成分が重畳された交流の極性を周期的に切り替えた波形である。図11の(b)には、センサ部204の温度が常温から変化した場合の、増幅器206の直後における励磁極性スイッチング時のピックアップ信号の波形(増幅後)が示されている。ここでは典型例として、図10の場合と同様の正負オフセットのアンバランスとして負極性のときの波形に歪みが存在する場合が示されている。ただし、温度が常温から変化したことにより振幅が大きくなるとともに正負オフセットのアンバランスも拡大される。具体的には、前半は正極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であり、図10の(b)の場合と比べると、振幅が増大したものとなっている。後半は、負極性時に現れるオフセットに対応するピックアップ信号であるが、図10の(b)の場合と比べると、振幅とともに歪みも増大している。図11の(c)には、同期検波器207の直後における検波信号の波形が示されている。その波形も図10の(c)の場合と比べると、後半の歪みを含んだままである。ただし、前半、後半とも、検波で極性を反転させるタイミングはピックアップ信号の瞬時値がゼロとなる点であるため、検波出力(すなわち感度)は最大のままである。図11の(d)の左側には、ローパスフィルタ108においてなされる平均化における、正極性時に現れるオフセットと、負極性時に現れるオフセットとが示されている。図10の場合と比較すると、オフセットが大きくなっているが、増幅器206の増幅率は、正負それぞれの極性に応じたピックアップ信号間に存在するオフセット成分のアンバランスが実質的に打ち消されるように、一定割合で調節されているため、温度が変化しても正極性、負極性のオフセットの絶対値は同じである。図11の(d)の右側には、ローパスフィルタ108において得られる最終的な全体平均値が示されている。正極性時に現れる正のオフセットと、負極性時に現れる負のオフセットの絶対値は温度が変化してもお互いに等しいままとなるように調節されているため、温度が常温から変化してオフセットの絶対値が大きくなったとしてもそれらの全体平均値はゼロとなる。このように、温度が変化してもオフセットのアンバランスがキャンセルされるように、正極性、負極性のそれぞれの極性のピックアップ信号に対して独立した増幅率によってピックアップ信号が増幅されているため、温度が常温から変化しても、全体平均値は変動せずに、常にゼロとなる。このように、温度変化による出力の変動は極小となる。
次に、本発明によって温度係数がどの程度向上させることができたのかを説明する。従来の、感度や雑音の特性が最良となるように同期検波のタイミングが調節されたフラックスゲート磁界センサ100と、本発明の、さらに温度特性が最良となるように極性に対応する独立した増幅率で増幅したフラックスゲート磁界センサ200とを、それぞれセンサ部の温度を変化させる環境におき、そのときの温度係数を測定した。このとき、センサ部204を外部磁場が極めて小さく安定な磁気シールドボックス内に設置し、測定される出力変化を出力オフセット変化そのものと見なすことができるようにした。図12は、従来技術と本発明に係るフラックスゲート磁界センサの、温度変化と温度係数の実測値のグラフである。図12の(a)は、それらのセンサに与えた温度変化である。実線が本発明のフラックスゲート磁界センサ200のグラフであり、一点鎖線のグラフが従来のフラックスゲート磁界センサ100のグラフである。温度変化としては、最初に−30度程度に急冷した後、3時間以上かけて、徐々に室温近くに戻すような低温側温度サイクルを与えた。両方のセンサの実際の温度変化には、許容できる程度の若干の差があった。図12の(b)には、そのような温度変化を与えた時のオフセットが示されている。オフセットの温度係数は、実線で示される本発明のフラックスゲート磁界センサ200では、0.026nT/℃であるが、一点鎖線で示される従来のフラックスゲート磁界センサ100では、0.12nT/℃である。このように、本発明のフラックスゲート磁界センサ200では、従来技術のセンサと比較すると温度係数が4〜5倍低減しており、顕著な効果を奏するものであることが確認された。
(直流励磁電流の極性に応じた増幅割合のパラメータ)
次に、正負オフセット変動が極小となるように、直流励磁電流の極性毎の増幅率(増幅割合)をどのように設定するかについて説明する。図13には、直流励磁電流の極性に応じた増幅割合に対する温度係数の実測例のグラフが示されている。図の横軸は正規化した増幅割合のパラメータであり、増幅率を設定する可変抵抗252A及び252Bにより、(可変抵抗252Aの値−可変抵抗252Bの値)/可変抵抗252Aの値で示される値である。そして、縦軸に温度係数が示されている。ある増幅割合における温度係数は、可変抵抗252A及び252Bによってその増幅割合に設定した状態で、環境の温度を変化させながらセンサ出力を実測することによって測定した。図13から理解されるように、増幅割合のパラメータを低い値から高い値に徐々に変化させると、温度係数は高い値から低くなるが、あるところで極小値をとり、次に反転して高くなる。図13の例では、増幅割合のパラメータが−0.2のときに温度係数が最小となっている。従って、負極性時の可変抵抗値を正極性時の可変抵抗値より20%程度高くしたときに、正負オフセット変動が極小となり、温度係数が最小となるものであることが理解される。なお、実際の増幅率は可変抵抗252A及び252Bを切り替えるアナログスイッチのON抵抗の差が加味されるため、増幅割合のパラメータが0の場合が従来の増幅器106を使用した場合に直接は対応しない。このように、極小値となる増幅割合のパラメータが適切な値になるように直流励磁電流の極性毎の増幅率を設定することで、温度係数を最小にすることができる。なお、上述の例は、直流励磁電流の極性に応じた増幅率の増幅器によって温度係数を最小にするものであるが、そのために必要な構成は、直流励磁電流の極性に応じてピックアップ信号のレベルを独立して調節するための構成である。従って、増幅以外の方法で、極性に応じてピックアップ信号のレベルを調節することによっても、温度係数が最小になるように調節することが可能である。例えば、直流励磁電流の極性に応じた独立した減衰率を有する減衰器によっても、同様に温度係数を最小にすることが可能である。この場合、それぞれの極性のピックアップ信号を同じ増幅率で増幅した後に、それぞれの極性に対応する減衰率で減衰させることなどができる。また、ピックアップ信号のレベルに対応する他の信号、例えば、検波信号などに対して、直流励磁電流の極性に応じてそれのレベルを独立して調節する増幅器などの構成を用いることも可能である。
本発明は、フラックスゲート磁界センサの温度係数を極めて良好な値にすることができ、宇宙機用のみならず、温度変化にさらされる環境で使用される磁界センサに好適に適用することができる。
100 :フラックスゲート磁界センサ
101 :直流重畳交流励磁部
102 :移相器
103 :励磁極性スイッチング部
104 :センサ部
105 :ボルテージフォロア
106 :増幅器
107 :同期検波器
108 :ローパスフィルタ
109 :積分器
110 :フィードバック抵抗
111 :出力端子
200 :フラックスゲート磁界センサ
200A :フラックスゲート磁界センサ
200B :フラックスゲート磁界センサ
201 :直流重畳交流励磁部
202 :移相器
203 :励磁極性スイッチング部
204 :センサ部
205 :ボルテージフォロア
206 :増幅器
207 :同期検波器
208 :ローパスフィルタ
209 :積分器
210 :フィードバック抵抗
211 :出力端子
251 :増幅回路
252A :可変抵抗
252B :可変抵抗
H :励磁磁界
dc :直流バイアス磁界
ex :外部磁界
s :磁化
u :異方性
bs :切り替え周波数

Claims (6)

  1. 検出される磁界が印加される細長い磁性体からなる磁性コアと、
    前記磁性コアに巻回されたピックアップコイルと、
    極性が正極性と負極性の間で周期的に切り替えられる直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を前記磁性コアに供給する直流重畳交流励磁部と、
    前記ピックアップコイルからのピックアップ信号を増幅する増幅器と、
    増幅された前記ピックアップ信号を検波することにより検波信号を出力する検波器と、
    前記検波信号から前記検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号に基づいてセンサ出力を生成する出力回路と、を含むフラックスゲート磁界センサにおいて、
    前記増幅器は、前記直流バイアス電流の前記正極性と前記負極性のそれぞれに対応する前記ピックアップ信号をそれぞれ独立した増幅率で増幅することを特徴とするフラックスゲート磁界センサ。
  2. 前記検波器は、増幅された前記ピックアップ信号を前記直流重畳交流励磁部からの交流電流と周波数が同期した参照信号を参照して同期検波するものである、請求項1に記載のフラックスゲート磁界センサ。
  3. 前記交流電流は、前記直流バイアス電流と同じ周期で極性が周期的に反転させられる、請求項1又は2に記載のフラックスゲート磁界センサ。
  4. 前記増幅器は、前記センサ出力の温度係数が実質的に最小となるようにそれぞれの前記増幅率が独立して調節されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のフラックスゲート磁界センサ。
  5. 前記増幅器は、センサ周辺の温度を変化させた場合に、前記直流バイアス電流が前記正極性と前記負極性のときのそれぞれの前記検波信号に含まれるオフセット成分の絶対値がお互いに等しいままであるように、それぞれの前記増幅率が独立して調節されている、請求項4に記載のフラックスゲート磁界センサ。
  6. 前記出力回路は、前記磁界検出信号を積分したフィートバック信号を前記ピックアップコイルに前記磁界検出信号を打ち消す極性で入力し、前記フィードバック信号から前記センサ出力を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載のフラックスゲート磁界センサ。
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