(従来のバイアススイッチング方式フラックスゲート磁界センサの構造)
これから図面を参照して、本願発明の説明を行う。まず、本願発明の前提となる、特許文献1に示されるような、従来のバイアススイッチング方式のフラックスゲート磁界センサの基本原理について説明する。図1は、従来のフラックスゲート磁界センサ100の概略回路図である。この回路では、典型的な検波方法として同期検波を用いている。また検出した磁界を打ち消すような電流をピックアップコイルに流すことにより、磁性体の特性の良好な領域でセンサを動作させるクローズドループの構成を採用している。
フラックスゲート磁界センサ100は、直流重畳交流励磁部101、励磁極性スイッチング部102、センサ部103、ボルテージフォロア104、増幅器105、同期検波器106、ローパスフィルタ107、積分器108、フィードバック抵抗109、出力端子110から構成される。交流源は周波数fHzの交流電流を発生させるが、それと所定の位相関係で同期検波をさせるための参照信号(図示せず)も出力することが通常である。
直流重畳交流励磁部101は、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた励磁電流を提供する回路である。直流重畳交流励磁部101は、後段の励磁極性スイッチング部102とともにバイアススイッチング方式の励磁回路を構成する。
励磁極性スイッチング部102は、センサ部103に流す励磁電流の極性を周期的に切り替える回路である。これにより、直流バイアス電流成分は周期的に極性が切り替えられ、バイアススイッチング方式による励磁電流がセンサ部103の磁性コアに供給される。励磁極性スイッチング部102は、極性の切り替えの周期を決定する、周波数がfbsHzのクロックを有しており、それによって発生させられるスイッチング信号で極性を切り替える半導体スイッチ素子が駆動され、励磁電流は周期的に極性が切り替えられる。周波数fbsHzのクロックは典型的には励磁電流の交流成分の周波数を整数分の一で分周して使用される。図1に示すように励磁極性スイッチング部102が直流重畳交流励磁部101からの出力をスイッチングする場合、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して(同じタイミングで)交流電流の位相も周期的に反転させられることになり、これにより、励磁電流(直流バイアス電流)の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われる。
なお、励磁電流とは、直流バイアス電流を交流電流に重畳させたものである。直流バイアス電流成分について言及するときは、文脈に応じて、直流バイアス電流、励磁電流の直流成分、直流励磁電流などの他の表現を用いることがあり、また、交流電流成分について言及するときは、文脈に応じて、交流励磁電流、励磁電流の交流成分などの他の表現を用いることがある。
センサ部103は、測定対象の外部の磁界を検出するセンサ素子であり、検出される磁界が印加される細長い磁性体からなる磁性コアと、その磁性コアに巻回されたピックアップコイルを有する。
ボルテージフォロア104は、センサ部103からのピックアップ信号を、インピーダンスを変換することにより、後段に正確に伝達するための構成要素である。増幅器105は、ボルテージフォロア104からの出力を適切なレベルに増幅する構成要素である。図1においては、ボルテージフォロア104からの出力は、キャパシタを通過させて交流成分のみを取りだし、後段の増幅器105に送られる。なお、ボルテージフォロア104、増幅器105、およびそれらの間のキャパシタは、ピックアップ信号を適切なレベルで正確に伝達させるための付加的な構成であり、必ずしも必須ではない。
同期検波器106は、増幅器105から出力された、センサ部103からのピックアップ信号に対して、同期検波を行う構成要素である。同期検波器106は、センサ部103のピックアップコイルに誘起される誘起電圧であるピックアップ信号を、励磁電流における交流電流と周波数が同期した参照信号を参照して同期検波することにより、センサ出力を定めることになる検波信号を生成する。同期検波器106は、センサ部103からのピックアップ信号に対して直流重畳交流励磁部101の励磁電流の交流成分と同一の周波数を持つ参照信号との位相関係に応じて、検波を行うものである。
ここで、同期検波は、検波される信号に、信号が正弦波で搬送される場合は、その正弦波を乗算することで行うことができる。励磁電流の交流成分により外部磁界を変調しているため、励磁電流の交流成分である正弦波をピックアップ信号に乗算することによって同期検波を行うことができるが、通常は、アナログスイッチなどで同期検波回路が簡単に構成できる、正弦波ではなく方形波が乗算に使用される。すなわち、方形波は振幅が1,-1であるため、それとの乗算結果は、方形波の振幅が1の時にピックアップ信号を同じ極性で通過させ、方形波の振幅が-1の時にピックアップ信号を極性を反転させて通過させることにより、同期検波を行うことができる。ここでは、参照信号の符号によってゲートコントロール(通過させるピックアップ信号の極性を反転させるか否かの制御)を行わせるために、参照信号として励磁電流の交流成分に周波数及び位相が同期した方形波を使用している。
同期検波器106には、励磁電流の交流成分と同一の周波数の信号が参照信号として入力されており、それによって、検波するピックアップ信号との位相関係が決定される例えば、参照信号の半周期(例えば、参照信号を方形波として振幅が1の時)はピックアップ信号を同じ極性で通過させ、参照信号の残りの半周期(例えば、参照信号を方形波として振幅が-1の時)はピックアップ信号の極性を反転させることによって、直流重畳交流励磁部101が発生する交流成分に同期させた検波を行う。
ローパスフィルタ107は、同期検波器106からの出力である検波信号を平均化する回路の構成要素である。これにより、検波信号から、検出する磁界の大きさを表す磁界検出信号を取り出す。この例では、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられており、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われるため、検波信号を加算(平均化により実現)することにより、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号が求められる。
積分器108は、クローズドループ構成でシステムを動作させる場合において、ローパスフィルタ107から出力される磁界検出信号を積分する回路の構成要素である。積分器108の出力は、後述するフィードバック抵抗109を経て、センサ部103のピックアップコイルを通じて、センサ部103の磁性コアに対して磁界による負帰還のフィードバックをかける。結果的に積分器108の入力となる磁界検出信号は、このフィードバックの偏差を表わし、積分器108は磁界検出信号をゼロに近づける制御を行うことになる。
フィードバック抵抗109は、積分器108から出力されたフィードバック信号を負帰還させてセンサ部103のピックアップコイルに入力させる際の、フィードバック信号が通過する抵抗である。負帰還により、センサ部103のピックアップコイルには、測定対象の外部磁界を打ち消すような磁界が発生させられる。フィードバック信号によって流れる電流が、測定対象の外部磁界に対応するものであり、その電流値をフィードバック抵抗109で電圧として検出したものが、測定対象の外部磁界の大きさを表わすセンサ出力となる。
出力端子110は、フィードバック抵抗109を流れる電流を、外部磁界の大きさを表わす電圧に変換したセンサ出力を外部に出力させるノードである。
(従来のフラックスゲート磁界センサの動作)
次に、本願発明の前提となる、従来のフラックスゲート磁界センサ100の動作について説明する。図5は、フラックスゲート磁界センサの概略構造を示す図である。図5の(a)には、センサ部103の模式図が示されている。アモルファス磁性ワイヤが上下方向に伸びており、それにピックアップコイルが巻回されている。アモルファス磁性ワイヤの円周方向をx方向、長手方向をz方向とする。検出される外部磁界は、z方向でアモルファス磁性ワイヤに流入する。励磁電流が図で下から上に流れると、その励磁電流による磁界はx方向であり、検出される外部磁界の方向と直交する。図5の(b)には、直流重畳交流励磁部101から出力される、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた波形が示されている。励磁極性のスイッチングはまだ行われていないため、片バイアスの状態である。アモルファス磁性ワイヤ内には一軸性の異方性Kuがあり、励磁磁界、異方性、外部磁界のエネルギーが最小化する位置で磁化Jsが振動することとなる。この振動のz軸射影がピックアップコイルに電圧を誘導し、それをピックアップ信号として取り出すことができる。この電圧には外部磁界の影響が変調されており、同期検波により出力を取り出すことができる。外部磁界がない時も異方性の影響でオフセット成分が発生するが、直流バイアス電流の極性を反転させることによって励磁極性の極性を反転すれば、一軸性の対称性により、オフセット成分の大きさを保ったまま、オフセットの極性も反転することとなる。この性質を利用し、周期的に励磁極性を反転して出力を加算(平均化)することで、センサ出力に現れる出力オフセットを抑制することが可能である。図5の(c)には、そのような反転をさせるための、励磁極性スイッチング部102から出力される、周期的に極性が切り替えられた、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた励磁電流の波形が示されている。
次に、センサ部103においてピックアップコイルからピックアップされる信号の波形(ピックアップ信号の波形)や磁化のベクトル図を示して、波形の説明を行う。以下において、単に「正極性」と言えば直流バイアス電流が正極性の場合を、単に「負極性」と言えば直流バイアス電流が負極性の場合をいう。図6は、正極性におけるフラックスゲート磁界センサのセンサ部の磁化の説明図である。図6の(a)には、ピックアップ信号の波形が示されている。励磁電流による磁化のz軸射影をJs・sin(θ(t))としたとき、それの時間微分がピックアップコイルに誘導される。誘導されたピックアップ信号の波形は、アモルファス磁性ワイヤの一軸性の異方性Kuによって生じるオフセット成分を含んでいる。図6の(b)には、外部磁界Hex、アモルファス磁性ワイヤの一軸性の異方性Ku、励磁磁界H(t)に対するアモルファス磁性ワイヤの磁化Jsの方向を示す図が示されている。外部磁界Hexは、クローズドループ制御のため、ゼロと見なすことができる。x軸には、励磁磁界H(t)=Hac・sin(2πft)+Hdc(Hacは交流励磁磁界、Hdcは直流バイアス磁界)が印加されており、また、z軸成分も有する異方性Kuが存在している。これらの外部磁界Hex、異方性Ku、励磁磁界H(t)により、アモルファス磁性ワイヤの磁化Jsが生じる。磁化Jsの円周方向からの角度を角度θ0とすると、励磁磁界H(t)が交流成分によって振動することにより、角度θ0はそれと同じ周波数で振動する。図6の(c)には、励磁磁界H(t)が示されている。励磁磁界H(t)が正のピークのときに、それに影響されて角度θ0は小さくなり、励磁磁界H(t)が負のピークのときに、それの影響が小さくなることにより角度θ0は大きくなる。すなわち、励磁磁界H(t)が(1)で正のピークの時に磁化Jsは励磁磁界H(t)の方向に最も引き寄せられ、励磁磁界H(t)が(2)で負のピークのときに磁化Jsは励磁磁界H(t)の方向から最も離れる。そして、磁化のz軸成分であるJs・sin(θ0)の成分がピックアップコイルと鎖交する磁束を発生させて、ピックアップコイルにピックアップ信号を発生させる。
次に、直流バイアス電流の極性を反転させた場合の説明をする。図7は、負極性におけるフラックスゲート磁界センサのセンサ部の磁化の説明図である。この例は、直流バイアス電流の極性を反転させると共に、それが重畳される交流電流の位相も反転させている。図7は、図6と同様に、図7の(a)にピックアップ信号の波形、図7の(b)にアモルファス磁性ワイヤの磁化Jsの方向、図7の(c)に励磁磁界H(t)が示されている。図7の(c)においては、図6の(c)とは反対に、励磁磁界H(t)が正のピークのときに、それの影響が小さくなることにより角度θ0は大きくなり、励磁磁界H(t)が負のピークのときに、それに影響されて角度θ0は小さくなる。すなわち、励磁磁界H(t)が(1)で負のピークの時に磁化Jsは励磁磁界H(t)の方向に最も引き寄せられ、励磁磁界H(t)が(2)で正のピークのときに励磁磁界H(t)の方向から最も離れる。
このように、直流バイアス磁界Hdcの方向が反転すると、角度θ0も反転し、ピックアップコイルと鎖交する磁束も反転する。このとき、異方性Kuにアンバランスが存在しない理想的な状態を想定すると、異方性Kuによって生じるオフセット成分は、励磁電流が正極性の場合とは逆極性で現れるが、正極性と同じ量だけ存在することとなる。そのため、励磁電流の極性の切り替えを行うと、最終的に回路上でこれらのオフセット成分を平均化することによって、センサ出力に現れる出力オフセットを0とすることができる。なお、「出力オフセット」とは、バイアスが正極性の場合のオフセットとバイアスが負極性の場合のオフセットとの和(平均化)をとった後に出力に残留しているオフセットのことを意味するものとする。また、異方性Kuが温度によって変化し、これに起因するオフセットが変化したとしても、理想的な状態では、その変化は常に対称的に現れるため、その平均は変化せず、出力に現れる出力オフセット成分は0のままである。しかし、実際には、異方性Kuにはアンバランスが存在しているため、出力オフセットは0にならないことが通常である。
感度やオフセット成分の大きさと極性に関しては、磁化Jsの時間変化によってピックアップ信号がピックアップコイルに誘起され、このピックアップ信号に外部磁界Hexやオフセット成分の情報が含まれている。従って、上述のように、励磁電流による励磁磁界H(t)、異方性Ku、外部磁界Hexのそれぞれのファクターに応じて、どのように磁化Jsが動くのかということによって、外部磁界に対する感度の大きさと極性及び異方性Kuに起因するオフセット成分の大きさと極性が決定される。
(従来の検出回路を一時的に切断することによる雑音の抑制方法)
次に、従来の雑音を低下させる方法を用いたバイアススイッチング方式のフラックスゲート磁界センサについて説明する。図2には、特許文献2に示されている、バイアスを切り替えた瞬間に検出回路を完全に切断してオープン状態とすることによって過渡信号を遮断する方法を採用したフラックスゲート磁界センサ200の概略回路図が示されている。図2は、特許文献2の図4の下側の図に対応しており、それの符号を付け替えたものである。
フラックスゲート磁界センサ200は、基本的なバイアススイッチング方式のフラックスゲート磁界センサ100と同様に、直流重畳交流励磁部201、励磁極性スイッチング部202、センサ部203、バッファ回路(ボルテージフォロア)204、増幅器205、同期検波器206、ローパスフィルタ207、エラーアンプ(積分器)208、帰還抵抗(フィードバック抵抗)209、出力端子210から構成される。それに加えて、フラックスゲート磁界センサ200は、直流重畳交流励磁部201が2つの位相シフタを切り替える構成を有しており、また、周期的切断手段211、電圧調整部212という追加的な構成を有している。特許文献2においては、直流重畳交流励磁部201が2つの位相シフタを切り替える構成を「第3のスイッチ11c(請求項2の第3切替手段)」と、周期的切断手段211を「第4のスイッチ20(請求項4の第4切替手段)」と、電圧調整部212を「第2のスイッチ23c(請求項1の第2切替手段)」と表現している。
直流重畳交流励磁部201が2つの位相シフタを切り替える構成(特許文献2の第3のスイッチ11c)は、双方のバイアス励磁区間で得られる信号に対してフィードバック条件を最適化することを可能とする構成であり、それにより、容易に誘起電圧の変化に追従する補償をおこなうことができるとされている。また、電圧調整部212(特許文献2の第2のスイッチ23c)は、励磁極性スイッチング部202の切り替え極性に対応して、正極性の場合に出力信号に加算される電流を調整する正極用電源と負極性の場合に出力信号に加算される電流を調整する負極用電源との接続を切り替える構成であり、それぞれの極性を独立した別処理として行うことが可能となり、正極性と負極性との間の遷移で生じるフィードバックループの不安定化をなくすことができるとされている。
周期的切断手段211(特許文献2の第4のスイッチ20)は、雑音を低下させるための構成であり、励磁極性スイッチング部202のスイッチング周期より早い周期で回路を切断する構成である。周期的切断手段211は、バイアスを切り替えた瞬間に回路の信号を一時的に遮断するためのものであり、スイッチングの2倍の周波数で動作させることで、バイアス切り替えの瞬間から、バイアスが同じ極性を保持しているスイッチング周期の半周期の2分の1の期間が経過するまで検出回路を切断して信号を遮断し、半周期の残りの2分の1の期間では検出回路を接続して信号をフィードバック回路にもどす一種のサンプル回路である。周期的切断手段211は、極性の切り替え時に発生するノイズを、極性の切り替えが発生した瞬間に検出回路を所定期間切断することで除去することが可能になるという効果を奏するものとされている。しかし、特許文献2において、周期的切断手段211に対応する第4切替手段は請求項4に記載されているが、それは、第2切替手段を特徴とする請求項1や第3切替手段を特徴とする請求項2の従属請求項である。このように、周期的切断手段211(特許文献2の第4のスイッチ20)は、直流重畳交流励磁部201が2つの位相シフタを切り替える構成(特許文献2の第3のスイッチ11c)や電圧調整部212(特許文献2の第2のスイッチ23c)を前提とするものであるため、それのみで十分な効果を奏するものではないものと認められる。実際に、検出回路を一時的に切断して回路をオープン状態にすると、条件によってはフィードパックループが不安定化して出力が乱れてセンサの動作不良を招くことがあると考えられる。
(本発明の雑音の低減方法の基本的構成)
本発明は、直流バイアス電流の極性のそれぞれのスイッチングと同時に開始され前記スイッチングの次のスイッチングより前に終了する所定の期間である安定化期間の間に、回路を切断すると共に、回路の下流側の切断箇所で、検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号に置換することによって、雑音を低下させてセンサ出力の安定化を図るものである。検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号に置換する方法としては、検波器の直後からローパスフィルタや積分器などの出力回路の直前の間で検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号で置換することによって検波器の出力を直接的に安定化するか、ピックアップコイルの直後から検波器に入るまでのピックアップ信号を、ピックアップ信号に由来しない信号で置換することによって検波器の出力を安定化するか、のいずれかの手法が考えられる。検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号で置換することは、適切な置換箇所に制御信号で制御されるスイッチを設けることによって行なわれる。そのスイッチは、単極双投型の接続を提供する半導体スイッチ素子であり、検波器の出力が流れる方向であるスイッチの下流の回路を、スイッチの上流の回路に接続するか、ピックアップ信号に由来しない信号の信号源に接続するかを切り替える。従って、スイッチがその下流の回路をピックアップ信号に由来しない信号の信号源に接続しているときは、スイッチの上流の回路はそこで切断されることとなり、ピックアップ信号に基づくセンサの回路はスイッチのところで切断されることとなる。ピックアップ信号に由来しない信号の信号源としては、接地や、所定の電圧の電圧源を使用することができる。なお、検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号で置換することは、ピックアップ信号に由来しない信号の信号源を回路の置換箇所に接続すると共に、その置換箇所の直前で回路を切断することも行なうものとする。すなわち、回路の切断箇所の直後にピックアップ信号に由来しない信号の信号源が接続されることになる。これにより、その置換箇所(切断箇所)の下流にはピックアップ信号に由来しない信号が流れることになる。
検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号を使用して直接的に安定化する手法としては、まず、検波器の出力を接地することが考えられる。検波器の出力の接地への置換は、検波器の直後から、後段のローパスフィルタ(フィードバック系(クローズドループ)でローパスフィルタを省略する場合は積分器)などを含む出力回路の直前の間で行なわれる。この場合、スイッチングと同時に開始され前記スイッチングの次のスイッチングより前に終了する安定化期間の間の検波器の出力はゼロ(接地電位)となり、バイアススイッチングによる過渡信号が除去されるとともに、その間の検波器の出力はゼロという、センサ出力に影響を与えない出力となる。そして、安定化期間以外の過渡信号を含まないピックアップ信号に基づいた安定した出力が検波器から出力されることとなる。
また、検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号を使用して直接的に安定化する手法として、検波器の出力を所定の電圧の電圧源に接続することも考えられる。検波器の出力の所定の電圧の電圧源への接続は、検波器の直後から、後段のローパスフィルタ(フィードバック系(クローズドループ)でローパスフィルタを省略する場合は積分器)などを含む出力回路の直前の間で行なわれる。この場合、スイッチングと同時に開始され前記スイッチングの次のスイッチングより前に終了する安定化期間の間の検波器の出力は所定の電圧となり、バイアススイッチングによる過渡信号が除去されるとともに、その間の検波器の出力は所定の電圧という、センサ出力の直流レベルのみに影響を与える出力となる。この所定の電圧は、バイアススイッチングによっても除去できなかった出力オフセットをキャンセルするような電圧とすると好適である。そして、安定化期間以外の過渡信号を含まないピックアップ信号に基づいた安定した出力が検波器から出力されることとなる。
次に、検波器に入るまでのピックアップ信号をそれに由来しない信号を使用して安定化する手法としては、ピックアップコイルの直後から検波器の直前までの間の任意の箇所で、ピックアップ信号を接地することが考えられる。この場合、スイッチングと同時に開始され前記スイッチングの次のスイッチングより前に終了する安定化期間の間の検波器の出力は、レベルがゼロのピックアップ信号に基づくほぼゼロの値となり、バイアススイッチングによる過渡信号が除去されるとともに、その間の検波器の出力はほぼゼロの値という、センサ出力に影響を与えない出力とされる。そして、安定化期間以外の過渡信号を含まないピックアップ信号に基づいた安定した出力が検波器から出力されることとなる。
なお、ピックアップコイルの直後から検波器の直前までの間の任意の箇所においては、ピックアップ信号を(接地ではなく)所定の電圧の電圧源に接続することによっても安定化することが可能であるが、ピックアップ信号を所定の電圧で置換して直流成分を印加したとしても、検波器によって、センサ出力からそのような直流成分の影響が排除されるため、センサ出力は、ピックアップ信号を接地した場合と同じである。すなわち、この場合は、出力オフセットをキャンセルすることができない。
このように、検波器の出力からバイアススイッチングによる過渡信号の影響を除去して安定化するためには、安定化期間の間に、検波器の直後などの、ピックアップコイルの直後から出力回路の直前までのいずれかの箇所で回路を切断してその切断箇所の直後を接地すること、安定化期間の間に検波器の直後などの、検波器の直後から出力回路の直前までのいずれかの箇所で回路を切断してその切断箇所の直後を所定の電圧の電圧源に接続すること、の少なくとも2つの手法がある。以下、第1の実施形態として、安定化期間の間に回路のそれらのいずれかの箇所を接地する形態を説明し、そして、第2の実施形態として、安定化期間の間に検波器の出力を所定の電圧の電圧源に接続する形態を説明する。
(第1の実施形態のフラックスゲート磁界センサの構造)
第1の実施形態に係るフラックスゲート磁界センサ300の構造について説明する。フラックスゲート磁界センサ300は、直流バイアス電流の極性のそれぞれのスイッチングと同時に開始され前記スイッチングの次のスイッチングより前に終了する所定の期間である安定化期間の間に、ピックアップコイルの直後から出力回路の直前までの回路のいずれかの箇所で回路を切断して、その切断箇所の直後を接地することで検波器の出力をピックアップ信号に由来しない信号に置換するものである
図3は、フラックスゲート磁界センサ300の概略回路図である。この回路では、典型的な検波方法として同期検波を用いている。また検出した磁界を打ち消すような電流をフィードバックによりピックアップコイルに流すことにより、磁性体の特性の良好な領域でセンサを動作させるクローズドループの構成を採用している。なお、代替的に、検出される磁界を打ち消すためにピックアップコイルを兼用させずに専用のコイルを別途設けたクローズドループ構成や、フィードバックを行わないオープンループの構成を採用することも可能である。
フラックスゲート磁界センサ300は、従来の基本的なフラックスゲート磁界センサ100と同様の構成を含んでおり、直流重畳交流励磁部301、励磁極性スイッチング部302、センサ部303、ボルテージフォロア304、増幅器305、同期検波器306、ローパスフィルタ307、積分器308、フィードバック抵抗309、出力端子310を含んでいる。フラックスゲート磁界センサ300は、さらに接地型周期的安定化回路311を有している。
直流重畳交流励磁部301は、交流電流に直流バイアス電流を重畳させた励磁電流を提供する回路である。直流重畳交流励磁部301は、典型的には、公知の電源回路である。また例示した方法以外にも交流源と直流源を直列に接続する構成や、オペアンプ等による加算器を用いて交流源と直流源を加算する構成とすることもできる。直流重畳交流励磁部301は、交流電流をセンサ部303に流すことで外部の磁界を変調させ、直流バイアス電流を重畳させることにより、後段の励磁極性スイッチング部302とともにバイアススイッチング方式の励磁回路を構成する。この場合、直流バイアス電流が重畳される交流電流は、直流バイアス電流の極性の切り替えに合わせて極性が切り替えられることになる。
バイアススイッチングにおいては、直流バイアス電流の極性を周期的にスイッチングする必要がある。ここで、直流バイアス電流が重畳される交流電流を、直流バイアス電流の極性の切り替えに合わせて極性を切り替える構成と、切り替えない構成の両方が可能である。上述の例は、交流電流と直流バイアス電流の両方の極性を切り替えるものであり、この場合、同期検波後において加算処理(平均化処理)を行えば、検出される磁界に対応しない信号を除去してセンサ出力を得ることができる。
代替的に、交流電流の極性を直流バイアス電流の極性と共に切り替えない構成とするため、直流重畳交流励磁部301は、極性を周期的に切り替えた直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を提供する構成とすることもできる。この場合、後述の励磁極性スイッチング部302は不要となる。また、磁界検出信号を得るためには、同期検波後において、直流バイアス電流のそれぞれの極性における検波号の差を取る必要がある。そのためには、例えば、一方の直流バイアス電流の極性における検波信号の極性を反転させた後に加算処理(平均化処理)を行うとよい。
励磁極性スイッチング部302は、センサ部303に流す励磁電流の極性を周期的に切り替える回路である。これにより、直流バイアス電流成分は周期的に極性が切り替えられ、バイアススイッチング方式による励磁電流がセンサ部303の磁性コアに供給される。励磁極性スイッチング部302は、極性の切り替えの周期を決定する、周波数がfbsHzのクロックを有しており、それによって発生させられるスイッチング信号で極性を切り替えるスイッチが駆動され、励磁電流は周期的に極性が切り替えられる。周波数fbsHzのクロックは典型的には励磁電流の交流成分の周波数を整数分の一で分周して使用される。図3に示すように励磁極性スイッチング部302が直流重畳交流励磁部301からの出力をスイッチングする場合、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられることになり、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われる。クロックの周波数は、直流重畳交流励磁部301が発生する交流電流の周波数より小さいものとされる。またクロックには、典型的には直流重畳交流励磁部301が発生する交流励磁電流に対して周波数が整数分の一で分周され、必要に応じて任意に移相されたタイミング信号が使用される。例えば、直流重畳交流励磁部301からの励磁電流の交流成分の周波数を80kHzとしたときに、励磁極性スイッチング部302のスイッチング周波数fbsを5kHz程度として、正弦波16個程度で直流バイアス電流の極性のスイッチングを繰り返す構成とすることができる。
バイアススイッチング方式においては、直流バイアス電流成分の極性を周期的に切り替えることが重要であり、その際に、交流成分の位相を同時に反転させる構成と反転させない構成の両方が可能である。励磁極性スイッチング部302を使用すると、直流バイアス電流が重畳された交流電流である励磁電流全体の極性を切り替えるため、直流バイアス電流成分の極性の切り替えに同期して交流電流成分の位相も反転させられることになる。この場合、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われる。
なお、代替的に、直流バイアス電流成分の極性のみを周期的に切り替え、交流成分の位相を同時に反転させない場合は、励磁極性スイッチング部302は不要である。この場合は、直流重畳交流励磁部301が、極性を周期的に切り替えた直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を提供する構成となる。直流バイアス電流成分の極性の切り替えにかかわらず、交流電流成分の位相が反転させられない場合、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は同極性で現われ、磁界の感度成分は逆極性で現われる。
センサ部303は、測定対象の外部の磁界を検出するセンサ素子であり、検出される磁界が印加される細長い磁性体からなる磁性コアと、その細長い磁性体に巻回されたピックアップコイルを有する。センサ部303は、典型的には、U字型に曲げたアモルファス磁性ワイヤにピックアップコイルを巻いた構造である。アモルファス磁性ワイヤは、磁気異方性が生じにくい無磁わい組成のものである。なお、アモルファス磁性ワイヤの形状は、U字型には限られず、先端を導線等でショートさせたII型などとすることができる。アモルファス磁性ワイヤに生じた、外部の磁界による磁化の影響を含む、アモルファス磁性ワイヤに流される励磁電流によって発生する変化する磁束をピックアップコイルで検出した検出電圧(ピックアップ信号)によって、外部の磁界の大きさを測定する。アモルファス磁性ワイヤは、単線のI型の形状でも動作するが、磁性体が2本であって高い感度が得られるU型やII型より、感度は低くなる。また、感度を高めるためにU型、II型、I型等の形状をそれぞれ複数本組み合わせて使用することもできる。センサ部303は、アモルファス磁性ワイヤに励磁電流を直接流す直交フラックスゲートの構成を有するものであるが、直流を重畳した交流を励磁電流とすることでコア内の磁化を一方向とし、磁化反転に伴う磁性体の磁気ノイズを低減することで低雑音が図られるものである。
ボルテージフォロア304は、センサ部303からのピックアップ信号を、インピーダンスを変換することにより、後段に正確に伝達するための構成要素である。ピックアップコイルに誘起される電圧からは十分な電流を取り出すことができないため、後段のインピーダンスによっては電圧降下が生じてして感度が下がる可能性がある。ボルテージフォロア304は、そのような感度低下を防止するものである。ボルテージフォロア304は、典型的には、オペアンプで構成された増幅率が1の増幅回路である。増幅器305は、ボルテージフォロア304からの出力を適切なレベルに増幅する構成要素である。
なお、図3においては、ボルテージフォロア304からの出力は、キャパシタを通過させて交流成分のみを取りだし、後段の増幅器305に送られる。これにより、ピックアップ電圧に含まれる(フィードバック信号による電圧などの)不要な直流成分が除去される。なお、ボルテージフォロア304、およびキャパシタは、ピックアップ信号を適切なレベルで正確に伝達させるための付加的な構成であり、本発明においては必ずしも必須ではない。
同期検波器306は、増幅器305から出力された、センサ部303からのピックアップ信号に対して、同期検波を行う構成要素である。同期検波器306は、センサ部303のピックアップコイルに誘起される誘起電圧であるピックアップ信号を、励起電流における交流電流と周波数が同期した参照信号の位相を参照して同期検波することにより、センサ出力を定めることになる検波信号を生成する。同期検波器306から出力された検波信号は、後段の接地型周期的安定化回路311に伝達される。同期検波器306は、センサ部303からのピックアップ信号に対して直流重畳交流励磁部301の励磁電流の交流成分と同一の周波数を持つ参照信号との位相関係に応じて、検波を行うものである。同期検波器306には、直流重畳交流励磁部301の交流電流と同一の周波数の信号が参照信号として入力されており、それによって、検波するピックアップ信号との位相関係が決定される。典型的には、参照信号を直流重畳交流励磁部301における励磁電流の交流成分と同期した方形波のゲートコントロール信号とした場合、これによって内部のスイッチを駆動して、ゲートコントロール信号が負(LOW)の時のタイミングでピックアップ信号の極性を反転させて折り返す。これによって、参照信号に同期した成分からなる意味のある出力を得ることができる。同期検波器306は、典型的には、アナログスイッチなどの素子で構成されている。なお、ピックアップ信号からセンサ出力を定める検波信号を得るためには、同期検波によらなくとも、尖頭値検波などの他の手段を使用することもできる。
ローパスフィルタ307は、同期検波器306の直後に配置された接地型周期的安定化回路311からの出力である安定化された検波信号を平均化する回路の構成要素である。これにより、検波信号から検出する磁界の大きさを表す磁界検出信号を取り出す。この例では、直流バイアス電流の極性の切り替えに同期して交流電流の位相も反転させられており、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因するオフセット成分は逆極性で現われ、磁界の感度成分は同極性で現われるため、検波信号を加算(平均化により実現)することにより、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号を得ることができる。具体的には、ローパスフィルタ307により、検波信号から、脈流である磁界の大きさを表わす信号の波形を平滑化して直流にし、極性が切り替えられる直流バイアス電流に起因するオフセットを加算により除去する。なお、クローズドループ構成でシステムを動作させる場合は、ローパスフィルタ307を省略することも可能である。
なお、代替的に直流バイアス電流成分の極性のみを周期的に切り替え、交流成分の位相を同時に反転させない場合、すなわち励磁極性スイッチング部302を使用することなく、直流重畳交流励磁部301が極性を周期的に切り替えた直流バイアス電流を交流電流に重畳させた励磁電流を提供する場合は、直流バイアス電流成分の極性の切り替えにかかわらず、交流電流成分の位相が反転させられない。この場合、ピックアップ信号において、直流バイアス電流の各極性に対して、磁気異方性に起因したオフセット成分は同極性で現われ、磁界の感度成分は逆極性で現われる。そのため、磁界検出信号を得るためには、直流バイアス電流の各極性毎の検波信号の差を求める必要がある。具体的には、直流バイアス電流の一方の極性における検波信号を反転(-1倍)させた後に、直流バイアス電流の他方の極性における検波信号と共に加算処理(平均化処理)を実行するとよい。これによって、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号を得ることができる。
積分器308は、クローズドループ構成でシステムを動作させる場合において、ローパスフィルタ307から出力されたステップ波形を積分する回路の構成要素である。なお、ローパスフィルタ307を省略した場合は、積分器308は、同期検波器306の出力を積分することになる。積分器308の出力は、後述するフィードバック抵抗309を経て、センサ部303のピックアップコイルを通じて、センサ部303の磁性コアに対して磁界による負帰還のフィードバックをかける。結果的に積分器308の入力となる磁界検出信号は、このフィードバックの偏差を表わし、積分器308は磁界検出信号をゼロに近づける制御を行うことになる。
フィードバック抵抗309は、積分器308から出力されたフィードバック信号を負帰還させてセンサ部303に入力させる際の、フィードバック信号が通過する抵抗である。負帰還のために、磁界検出信号を積分したフィードバック信号は、ピックアップコイルに磁界検出信号を打ち消す極性で入力させる。負帰還により、センサ部303のピックアップコイルには、測定対象の外部磁界を打ち消すような磁界が発生させられる。フィードバック信号によって流れる電流が、測定対象の外部磁界に対応するものであり、その電流値をフィードバック抵抗309で電圧として検出したものが、測定対象の外部磁界の大きさを表わすセンサ出力となる。
上述の例は、クローズドループ構成であるため、磁気コアに流入した検出される外部磁界を打ち消す磁界を発生させるフィードバック信号をピックアップコイルに入力し、そのフィードバック信号の大きさをセンサ出力とするものである。従って、ローパスフィルタ307、積分器308、フィードバック抵抗309によって、検波信号から検出される磁界に対応しない信号を除去した磁界検出信号に基づいてセンサ出力を生成する出力回路が構成される。
なお、オープンループ構成の場合は、ローパスフィルタ307の出力が測定対象の外部磁界を表わすものであるため、積分器308、フィードバック抵抗309は不要である。そして、ローパスフィルタ307の出力からセンサ出力を得ることができる。
出力端子310は、フィードバック抵抗309を流れる電流を、外部磁界の大きさを表わす電圧に変換したセンサ出力を外部に出力させるノードである。これにより、測定対象の外部磁界を打ち消す磁界を発生させる電流の大きさを、測定対象の外部磁界を表わす測定量として出力する。
接地型周期的安定化回路311は、スイッチングと同時に開始され、当該スイッチングの次のスイッチングより前(スイッチング周期の半周期の期間より前)に終了する所定の期間である安定化期間の間、同期検波器306の出力の検波信号を接地電位で置換することによって安定化する構成である。安定化された検波信号は、後段のローパスフィルタ307(ローパスフィルタ307を使用しない構成の場合は積分器308)に出力される。接地型周期的安定化回路311は、図3の例では、同期検波器306の後段に接続されている。接地型周期的安定化回路311は、典型的には制御信号によって動作する半導体スイッチ素子を含み、その半導体スイッチ素子は制御信号による制御を受けて同期検波器306の直後で回路を切断し、切断箇所の直後を接地することによって、同期検波器306の出力を接地電位の信号で置換する。
安定化期間は、スイッチングによる直流バイアス電流の極性の切り替えと同時に開始され、次のスイッチングによる直流バイアス電流の極性の逆極性への切り替えより前に(直流バイアス電流がいずれかの極性を保持しているスイッチング周期の半周期の期間の経過より前に)終了する所定の期間とすることができる。安定化期間を、バイアススイッチングに伴いピックアップ信号に過渡信号が混入する期間を含むものとすることによって、その間の検波器の出力を接地することとなり、出力への過渡信号の影響を排除することができる。安定化期間をあまり短くすると過渡信号を完全には除去できないことがあり、また、安定化期間をあまり長くすると本来のピックアップ信号の通過する量が小さくなるため、S/N比が悪化する場合もあるので、そのようにならないような適切な期間とすると好適である。このように、安定化期間は、直流バイアス電流が同じ極性を保持している、あるバイアススイッチングから次のバイアススイッチングまでのスイッチング周期の半周期より小さい適当な期間とすることができるが、例えば、あるスイッチングから開始され、前記スイッチングの前記次のスイッチングまでの期間(スイッチング周期の半周期)の2分の1の期間に終了するようにすることができる。この場合、安定化期間は、スイッチング周期の2分の1の周期で反復されることとなる。具体的には、直流バイアス電流がいずれかの極性にスイッチングされると同時に安定化期間が開始され、そのスイッチングの次のスイッチング(直流バイアス電流が同じ極性を保持しているスイッチング周期の半周期)までの期間の2分の1の期間が経過すると同時に安定化期間が終了することとなる。安定化期間をそのようなタイミングに制御するための制御信号は、バイアススイッチングのためのスイッチング信号と同期しており、スイッチング信号のそれぞれの極性切替えのタイミング、及びそれぞれの極性切替えのタイミングの中間点で極性切替えが行なわれるような、周波数がスイッチング信号の2倍である方形波とすることができる。この場合、制御信号の発振回路の出力を2分周することによってスイッチング信号を発生させることができ、全体的な回路を簡略化することができる。
接地の箇所は、図3に示した接地型周期的安定化回路311のように、同期検波器306の直後(すぐ下流)とすると好適であるが、同期検波器306の直前(すぐ上流)、すなわち増幅器305の直後としてピックアップ信号を接地するようにしても、ほぼ同じ動作が行なわれる。さらには、センサ部303(ピックアップコイル)の直後からローパスフィルタ307(ローパスフィルタ307を省略した場合は積分器308)の直前までの任意の箇所を接地することによって、ピックアップ信号あるいは検波信号を接地電位で置換するようにすることもできる。すなわち、接地型周期的安定化回路311は、センサ部303の直後からローパスフィルタ307(ローパスフィルタ307を省略した場合は積分器308)の直前までの任意の箇所に配置することができる。
(第1の実施形態のフラックスゲート磁界センサの動作)
これから、フラックスゲート磁界センサ300が、安定化期間において同期検波器306の出力を接地する動作について、時間の経過に伴う検波信号の波形を示しながら説明する。図8は、検波信号の波形図である。図8においては、第1の実施形態に係るフラックスゲート磁界センサ300において接地型周期的安定化回路311をスイッチング信号の周期の2分の1の周期(2倍の周波数)で動作させて同期検波器306の出力(検波信号)を接地して過渡信号を除去した場合の同期検波器306の出力の波形を黒色で示している。このとき、接地型周期的安定化回路311を制御する制御信号は、励磁極性スイッチング部302のスイッチング信号のゼロ点に制御信号のゼロ点が来るような位相関係の状態で、周波数をスイッチング信号の2倍とした信号となる。図8においては、比較のために、検波信号を接地せずに過渡信号を除去しない場合の同期検波器306の出力の波形をグレーで示している。ここでは、励磁電流中の交流電流の8周期毎に、直流バイアス電流の極性をバイアススイッチングにより切り替えているため、交流電流に対応するピックアップ信号の8周期毎に出力波形が正側と負側とで切り替わっている。そして、交流電流に対応するピックアップ信号の4周期毎に接地型周期的安定化回路311による同期検波器306の出力(検波信号)の接地と非接地とを切り替えている。接地では検波信号がほぼ0にされ、非接地では検波信号はそのまま出力へと通過する。図においてグレーで示した非接地のまま場合の検波信号の波形においては、スイッチングの瞬間に大きい振幅の過渡信号の波形が現われ、それから交流電流に対応するピックアップ信号の3周期ほどは検波信号に過渡信号の影響が残っており、レベルがやや高くなっている。一方、黒色で示した周期的に検波信号の接地を行なっている場合の検波信号の波形においては、スイッチングの瞬間から次のスイッチングまでの期間の2分の1の期間まで検波信号を接地することによって、過渡信号及びその影響を受けた3周期ほどの交流電流に対応するピックアップ信号に対応する信号が出力から除去されていることが確認できる。そして、その後から次のスイッチングまでの残りの2分の1の期間は、検波信号を非接地とすることにより、過渡信号の影響を受けていない4周期の交流電流に対応するピックアップ信号に対応する信号が出力されている。
なお、このような構成により過渡信号の影響は排除されているが、検波信号の半分の波形のレベルがゼロとなっているため、最終的なセンサ出力は、検波信号を周期的に接地しない場合と比較すると、2分の1の電圧となる。このように、元の信号のレベルが低下することは雑音特性にやや不利に作用するが、過渡信号の除去による雑音の低減の効果の方がはるかに高いため、全体として雑音は大きく低減される。さらに、励磁電流を小さくしても雑音特性を良好に保つことができるため、消費電力を小さくすることができる。
過渡信号を除去することによる雑音の低減の効果を説明する。図9は、3種類の励磁電流における、過渡信号を除去しない場合の検波信号の雑音密度の実測値のグラフである。グラフから、励磁電流を減少させた場合、雑音が大幅に増加することが観察される。これは励磁電流中の交流電流の振幅が小さくなったことにより、センサ感度が低下すること、また励磁電流の反転に伴う磁化の反転が発生する際の磁化の飽和状態の違いがもたらす雑音成分の違いに起因するものである。図10は、3種類の励磁電流における、過渡信号を除去した場合の検波信号の雑音密度の実測値のグラフである。この場合、雑音源となる過渡信号が除去されるため、励磁電流に依存せず、常に雑音特性を良好かつ等価に保つことが可能となる。また、雑音性能を変えずに励磁電流を小さくできることで、センサの消費電力を約5分の1に低減することが可能となる。これは、電力リソースの限られたアプリケーションでは非常に大きいメリットである。
次に、励磁電流のバイアススイッチングのタイミング(位相)を変化させることによって過渡信号の大きさ(すなわち雑音の大きさ)を変化させる評価実験用の構成を使用することによって、フラックスゲート磁界センサ300の雑音を除去する性能や出力オフセットのロバスト性が向上することを確認した。図11は、バイアススイッチングのタイミング(位相)を変化させた場合の励磁電流の波形図である。図11の(A)、(B)、(C)、(D)に、それぞれ、バイアススイッチングの位相を0度、96度、160度、256度とした場合の出力電流の波形が示されている。このようにバイアススイッチングのタイミングを変化させると、それによって励磁電流の交流電流がスイッチングされるタイミングが変化する。そして、それによって、過渡信号を除去する前のセンサ雑音が変化する。
図12の(A)には、過渡信号を除去する前のセンサのバイアススイッチングを行うタイミング(位相)を変化させた場合のセンサ雑音量の実測値のグラフを示している。グラフの横軸は、バイアススイッチング位相であり、図11の(A)の状態から、(B)、(C)、(D)、そして再び(A)の状態へと適当な角度ステップで切り替え位相を変化させている。そして、その各バイアススイッチング位相でのセンサ雑音を測定し,1Hzにおける雑音密度を縦軸にプロットしたものをグラフに示している。グラフより、10~75pT/Hz1/2程度の範囲の雑音が発生しているが、バイアススイッチングの位相が256度の場合の雑音は75pT/Hz1/2程度であり、非常に大きいことが理解される。
図12の(B)には、過渡信号を除去する前のセンサの出力オフセットの実測値のグラフを示している。図12の(B)は、図12の(A)に示す位相のステップよりさらに細かいステップでバイアススイッチングの位相を時間とともに段階的に変化させ、それぞれの状態で10秒程度出力を記録したものである。横軸は時間であるが、時間とともに一定のステップでバイアススイッチングの位相を変化させているため、横軸にはバイアススイッチングの位相も対応している。この測定は外部磁場が無視できる環境で行っているため、このセンサ出力は、出力オフセットに相当するものとなる。グラフより、-8.5~3nT程度の範囲の出力オフセットがあることが確認できる。このように、図12の(B)には、励磁電流のバイアススイッチングの位相を変化させることによって、出力オフセットが10nT以上も変動することが示されている。なお、バイアスイッチングの位相が250度付近の出力オフセットのグラフの線の幅が広くなっているが、これは雑音が大きいため、出力オフセットの細かい変動が多く、幅が太く見えているものである。センサの回路部の温度・経時ドリフトによりバイアススイッチングの位相がずれると、雑音の増加や出力オフセットの大きな変化を発生させることになる。また、それは、回路動作条件の調整上の制約となり得る。
図12に示した過渡信号を除去する前のセンサの出力には大きな雑音が含まれているが、そのセンサに対し、接地型周期的安定化回路311による検波信号の周期的な接地を行なって過渡信号を除去することによって、雑音や出力オフセットなどの性能を安定化させることができる。図13は、バイアススイッチングの位相を変化させた場合のセンサ雑音量の、過渡信号を除去しない場合と除去した場合の実測値のグラフである。接地型周期的安定化回路311による検波信号の周期的な接地により過渡信号の影響が排除され、バイアススイッチングの切り替えの位相によらずに雑音が極めて小さく、またその変動も極めて小さいことが確認できる。
図14には、過渡信号を除去した場合の出力オフセットの実測値のグラフを示している。横軸は時間であるが、時間とともに一定のステップでバイアススイッチングの位相を変化させているため、横軸にはバイアススイッチングの位相も対応している。ただし、位相調整のステップは、図13の横軸とはスケールが完全には一致していない。グラフより、バイアススイッチングの位相を変化させても、出力オフセットの変動は2nT以内であり、極めて安定していることが理解できる。また、グラフの線の幅が広い箇所がなく、雑音が極めて小さいことも理解できる。このように、センサの回路の温度・経時ドリフトに対するロバスト性が大きく向上している。またセンサに最適な動作条件を見つける調整を行う際の自由度も大きくすることができる。
このように、直流バイアス電流の極性のそれぞれのスイッチングと同時に開始され前記スイッチングの次のスイッチングより前に終了する所定の期間である安定化期間の間、検波信号の過渡雑音部分をピックアップ信号に由来しない信号に置換して安定化するという構成により、バイアススイッチングに伴う過渡雑音を、ピックアップ信号に由来しない別の安定した信号源の信号で置換することができる。この場合、過渡雑音を除去する際にフィードバックループが切断されたままになることがなく、過渡雑音の部分は常に一定の電圧で置換されることになる。またサンプル&ホールドスイッチを使用した場合に存在する信号のホールドに起因するジッタなどがセンサ出力に存在することがない。このように、本発明では、非常にロバストに、バイアススイッチングに起因する過渡雑音を除去することが可能である。
さらに、安定化期間の間、検波信号の過渡雑音部分を置換するピックアップ信号を接地電位とすることができる。この場合、安定化された検波信号は、バイアススイッチング方式のプロセスに従って平均化(加減算処理)されてセンサ出力となる。ここで、接地電位は回路の基準電位であるため、出力オフセットを考慮しない場合、その平均化の結果は0となって、過渡雑音はセンサ出力に影響を与えないこととなる。したがって本来の信号成分のみの平均化結果がセンサ出力に現れることになり、雑音をより低減したバイアススイッチング方式によるセンサを提供することが可能となる。
(第2の実施形態のフラックスゲート磁界センサの構造)
次に、第2の実施形態に係るフラックスゲート磁界センサ400の構造について説明する。図4は、フラックスゲート磁界センサ400の概略回路図である。フラックスゲート磁界センサ400は、第1の実施形態に係るフラックスゲート磁界センサ300と同様の構成を含んでおり、直流重畳交流励磁部401、励磁極性スイッチング部402、センサ部403、ボルテージフォロア404、増幅器405、同期検波器406、ローパスフィルタ407、積分器408、フィードバック抵抗409、出力端子410を含んでいる。フラックスゲート磁界センサ400は、フラックスゲート磁界センサ300における接地型周期的安定化回路311に代えて、定電圧型周期的安定化回路411を有している。
定電圧型周期的安定化回路411は、バイアススイッチングと同時に開始され、前記バイアススイッチングの次のバイアススイッチングまで(スイッチング周期の半周期の期間まで)に終了する所定の期間である安定化期間の間、同期検波器406の出力の検波信号を所定の電圧の電圧源で置換することによって安定化する構成である。定電圧型周期的安定化回路411は、それの出力を、周期的に(接地ではなく)定電圧源に接続する点で接地型周期的安定化回路311とは異なるが、その他の点は接地型周期的安定化回路311と同様の構成である。定電圧型周期的安定化回路411は、同期検波器406の後段に接続されている。定電圧型周期的安定化回路411は、典型的には制御信号によって動作する半導体スイッチ素子を含み、その半導体スイッチ素子は制御信号による制御を受けて同期検波器406の直後で回路を切断し、切断箇所の直後を定電圧源に接続することによって、同期検波器406の出力を所定の電圧の信号で置換する。定電圧源としては、電源を抵抗で分圧した構成や、専用のICを使用した定電圧回路などを使用することができる。
定電圧型周期的安定化回路411の安定化期間も、接地型周期的安定化回路311と同様に定めることができる。すなわち、安定化期間は、スイッチングによる直流バイアス電流の極性の切り替えと同時に開始され、次のスイッチングによる直流バイアス電流の極性の逆極性への切り替えより前に(直流バイアス電流がいずれかの極性を保持しているスイッチング周期の半周期の期間の経過より前に)終了する所定の期間とすることができる。安定化期間を、バイアススイッチングに伴いピックアップ信号に過渡信号が混入する期間を含むものとすることによって、その間の検波器の出力は定電圧源からの所定の電圧となり、出力への過渡信号の影響を排除することができる。定電圧源への接続の箇所は、図4に示した定電圧型周期的安定化回路411のように、同期検波器406の直後とすると好適であるが、同期検波器406の直後からローパスフィルタ407(ローパスフィルタ407を省略した場合は積分器408)の直前まで間の任意の箇所とすることできる。定電圧型周期的安定化回路411は、接地型周期的安定化回路311のように、センサ部から検波器までの間の任意の箇所に配置し、そこでピックアップ信号を周期的に定電圧源に接続するようにすることも可能ではある。この場合、過渡信号を除去することにより雑音特性は改善するが、後述する、出力オフセットの除去を行なうことはできない。
(第2の実施形態のフラックスゲート磁界センサの動作)
これから、フラックスゲート磁界センサ400が、安定化期間において同期検波器306の出力を定電圧源に接続する動作について、時間の経過に伴う検波信号の波形を示しながら説明する。図15は、検波信号を周期的に定電圧源に接続した場合の波形である。図15においては、第2の実施形態に係るフラックスゲート磁界センサ400において定電圧型周期的安定化回路411をスイッチング信号の周期の2分の1の周期で動作させて同期検波器406の出力(検波信号)を定電圧源で置換して過渡信号を除去した場合の同期検波器406の出力の波形を黒色で示している。図15においては、比較のために、検波信号を定電圧源の信号で周期的に置換せずに過渡信号を除去しない場合の同期検波器406の出力の波形をグレーで示している。図15においては、まず、接続する定電圧源として電圧がゼロの場合(すなわち、接地した場合と同様)の波形が示されており、さらに、定電圧源の電圧を調整電圧1501とした場合の波形の変化が、矢印で示した破線で示されている。検波信号を調整電圧1501の定電圧源の信号で周期的に置換した場合、安定化期間の間、検波信号のレベルは調整電圧1501でクランプされる。これによって、まず、第1の実施形態と同様に、過渡信号がセンサ出力から除去されることになる。ここで、好適には、調整電圧1501は、出力オフセットが最小になるように定められる。そのためには、調整電圧1501を、出力オフセットがほぼゼロとなるようにセンサ出力を測定しながら調整するとよい。これにより、センサ出力から出力オフセットをほぼ除去することができる。
なお、調整電圧1501の設定は以下のような手順で行なうことができる。図16は、定電圧源の電圧を変化させたときの出力オフセットの実測値のグラフである。図16には、定電圧型周期的安定化回路411のスイッチに接続した定電圧源の電圧を0.5mVステップで0~2mVの範囲で変化させたときのセンサ出力が示されている。横軸は測定開始からの時間である。グラフの0~20秒では電圧源の電圧は0mVであるため、これは検波出力を接地した場合と等価であり、このときの出力オフセット(約8nT)が、このセンサにおける、磁性体や回路の非対称性により必然的に発生する出力オフセットである。グラフの0~250秒の範囲では、定電圧源の電圧を0から2mVに増加させ、次に2mVから-2mVまで減少させ、次に0mVに戻している。このように、調整電圧1501を与える定電圧源の電圧に比例してセンサの出力オフセットを調整することができる。グラフの320秒後においては、定電圧源の電圧を微調整することによって、センサの出力オフセットをほぼ0にしている。このように、周期的に検波信号に接続する定電圧源の電圧を適切に調節することにより、過渡信号の除去のみならず、出力オフセットをほぼ0にまで減少させることが可能となる。
上述のように、直流バイアス電流の極性のそれぞれのスイッチングと同時に開始され、そのスイッチングの次のスイッチングより前に終了する所定の期間である安定化期間の間に、検波信号を置換するピックアップ信号に由来しない信号を、所定の電圧とすることができる。この場合、過渡雑音部分を置換する当該所定の電圧は、直流バイアス電流の極性によらずに同じ信号となるため、平均化(加減算処理)によって相殺されることがなく、そのままセンサ出力に現われることになる。過渡雑音を置換した信号が接地電位の場合は、その接地電位で置換した信号の部分を平均化したセンサ出力は、オフセットを考慮しない場合は0である。そして、過渡雑音を所定の調整電圧で置換することで、この調整所定の電圧を本来の信号成分の出力に加えて出力に重畳させることが可能となる。ここで、接地電位で置換した信号の部分を平均化したセンサ出力は、オフセットを考慮した場合は0ではなくなる。そして、オフセットを考慮した場合、当該所定の調整電圧を調整することで、正負各極性の励磁電流で得られる各誘起信号の不均衡によって生じる出力オフセットを補正する電圧を重畳させることが可能となる。その所定の調整電圧を出力オフセットをキャンセルするような電圧に調整すると、出力オフセットをほぼ0にすることができる。