JP2020158863A - 黒色めっき樹脂部品及びその製造方法 - Google Patents
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樹脂基材と、樹脂基材上に形成された下地めっき層と、下地めっき層上に形成された3価クロムよりなる膜厚0.15μm以上の黒色クロムめっき層とを含む黒色クロムめっき樹脂部品において、
黒色クロムめっき層中のクロムは金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの状態で存在し、黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が−1.7以下であることを特徴とする黒色めっき樹脂部品。
黒色クロムめっき層の膜厚が0.15μm以上であると、下地めっき層を十分に隠して漆黒の黒色を得ることができる。
黒色クロムめっき層中のクロム中に存在する水酸化クロムは青味を発現し黄味を減少させるため、黒色クロムめっき層のb*を−1.7以下とすることができ、最近の市場ニーズにあった青味のある漆黒の黒色となる。
樹脂基材と、樹脂基材上に形成された下地めっき層と、下地めっき層上に形成された3価クロムよりなる黒色クロムめっき層とを含む黒色クロムめっき樹脂部品の製造方法において、
下地めっき層形成後の樹脂基材を、チオシアン酸を含む3価クロムめっき浴中に浸して電解めっきすることにより下地めっき層上に黒色クロムめっき層を形成する工程と、
黒色クロムめっき層形成後の樹脂基材を、30℃以上の温水に所定時間浸漬する工程とを含み、
黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が−1.7以下となるように、前記3価クロムめっき浴中のチオシアン酸の含有量と、前記温水の温度と、前記温水に浸漬する時間とを調整することを特徴とする黒色めっき樹脂部品の製造方法。
チオシアン酸を含む3価クロムめっき浴中で電解めっきすると、黒色クロムめっき層中に水酸化クロム前駆体の析出割合が増える。この黒色クロムめっき層を30℃以上の温水に所定時間浸漬すると、黒色クロムめっき層中の水酸化クロム前駆体が水酸化クロムに構造変化し、該水酸化クロムが青味を発現し黄味を減少させるため、黒色クロムめっき層のb*を−1.7以下とすることができる。
樹脂基材の樹脂は、熱可塑性でも熱硬化性でもよく、特に限定されないが、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PC/ABS樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等を例示できる。ABS樹脂、PC/ABS樹脂が強度、耐久性等の観点から好ましい。
樹脂基材の上には、次の下地めっき層を電解めっきするときに必要な導電層が形成される。導電層としては、特に限定されないが、無電解ニッケルめっき層を例示できる。
下地めっき層は、ニッケルめっき層を含むものが好ましく、銅めっき層とニッケルめっき層とをこの順で含むものがより好ましい。下地めっき層の最上層がニッケルめっき層であり、そのニッケルめっき層上に黒色クロムめっき層が形成されていることが好ましい。銅めっき層は延性に富むため樹脂基材によく追従し、ニッケルめっき層は黒色クロムめっき層を美感保持するとともに電気化学的に防食する。ニッケルめっき層の具体的構成は、特に限定されず、1層でも複数層でもよい。
黒色クロムめっき層の膜厚を上記のとおり0.15μm以上とするのは、下地めっき層を十分に隠して漆黒の黒色を得るためである。黒色クロムめっき層の膜厚の上限は、特に限定されないが、1μmが好ましい。1μmを超えると、膜内部応力が大きくなり、割れやすくなる。
表面領域(表面から深さが少なくとも23nmまで)としては、黒色クロムめっき層の内部(母材)に対して変質した表面変質層の領域である態様、黒色クロムめっき層の全域である態様等を例示できる。表面変質層としては、温水、酸素、水素又は水蒸気により変質した層等を例示できる。
L*a*b*表色系におけるb*が3.0以下であると、黒色の黄味がなくなり、b*が−1.7以下であると、やや青味がかった黒色を呈するようになり、市場のニーズにより合致する。b*の下限値は、特に限定されないが、−10が好ましい。b*が−10未満では青味が強くて用途が限られるからである。
a*は、特に限定されないが、−3〜3が好ましい。a*が−3未満では緑味が強くて用途が限られ、3を越えると赤味が強くて用途が限られるからである。
L*は、特に限定されないが、30〜54が好ましい。L*が30未満では、黒味が強くて金属感が減少し、54を越えると黒味が弱くて漆黒感が減少するからである。
3価クロムめっき浴に使用する3価クロム化合物としては、特に限定されないが、硫酸クロム(Cr2(SO4)3)、クロムミョウバン(CrK(SO4)2)、硝酸クロム(Cr(NO3)3)、塩化クロム(CrCl3)、酢酸クロム(Cr(CH3COO)3)等を例示できる。
温水の温度は、前記のとおり30℃以上とするが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が最も好ましい。温水の温度が高いほど、黒色クロムめっき層中の水酸化クロム前駆体が水酸化クロムに構造変化することを促進するからである。
黒色クロムめっき層の上に耐食性皮膜を備えることが好ましい。耐食性皮膜としては、クロメート皮膜、特許文献1に記載されたリン酸クロム又はリン酸モリブデンよりなる膜等を例示できる。リン酸クロム又はリン酸モリブデンよりなる膜は、膜厚7nm以上が好ましく、20nm以下が好ましい。
車両用加飾部品(ラジエータグリル、フェンダ、ガーニッシュ、ホイールキャップ、バックパネル、エアスポイラー、エンブレム等)、電気製品(携帯電話、スマートホン、携帯情報端末、ゲーム機等)用筐体部品等を例示できる。特に風雨にさらされる車両用加飾部品は、高い耐食性能が求められるため、本発明を適用したときの有効性が高い。
図1に示す黒色めっき樹脂部品として、表1に主に相違点を示す試料1〜13を作製し、黒色クロムめっき層の分析と色測定を行った。
試料1〜13の黒色めっき樹脂部品はいずれも、図1に示すように、ABS樹脂製の樹脂基材(導電層としての無電解ニッケルめっき層付き)と、樹脂基材上に形成された銅めっき層、半光沢ニッケルめっき層、光沢ニッケルめっき層、及びマイクロポーラスーニッケルめっき層をこの順で含む下地めっき層と、ニッケルめっき層の上に形成された3価クロムよりなる黒色クロムめっき層とを備えたものである。黒色クロムめっき層の上に耐食性皮膜を形成することが好ましいが、試料1〜13では耐食性皮膜を形成していない。
和光純薬工業製ホウ酸 63g/L
アトテック社製トライクロムアジチブ 400g/L
アトテック社製トライクロムスタビライザー 100ml/L
アトテック社製トライクロムレギュレーター 3ml/L
アトテック社製トライクロムコレクター 2ml/L
アトテック社製トライクロムグラファイトメイキャップ 100ml/L
アトテック社製トライクロムグラファイトメンテナンス 所定の配合
(1)上記黒色クロムめっき処理において、アトテック社製トライクロムグラファイトメンテナンス(以下「M剤」という。)の配合を、試料1〜4では20ml/Lとし、試料5〜13では30ml/Lとした。
この電流密度の相違により、黒色クロムめっき層の膜厚は、試料9,12では0.53μm、試料8,11では0.252μm、試料1〜7,10,13では1.10μmとなった。
黒色クロムめっき層の硬X線光電子分光法(HAXPES)分析を、次の機器で行った。
・ビームライン:大型放射光施設SPring−8 BL16XU(Photon energy:7947.58eV)
・アナライザ:VG Scienta社のR4000(Take−off angle:85°)
・黒色クロムめっき層中のクロムは、金属クロム(Cr)と酸化クロム(Cr2O3)と水酸化クロム(Cr(OH)3)の状態で存在すること。
・金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの組成比は、黒色クロムめっき層の内部と表面領域とで相違し、その表面領域は黒色クロムめっき層の表面から深さが約10〜数十nmまでの領域であり、表面変質層と考えられること(めっき直後の試料8〜10でも表面変質層と考えられる)。
以上により側定された表面変質層の膜厚と、金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの組成比を表1に示す。また、金属クロムをa、酸化クロムをb、水酸化クロムをcとしたときの、(b+c)/aと、c/bを表1に示す。
黒色クロムめっき層の色調(L*a*b*表色系)を、表面領域側から、分光測色計(コニカミノルタ社製 CM−700d)によって測定した。測定条件は、測定モードSCI、観察条件10°視野、観察光源D65、測定径/照明径=φ3/φ6とした。測定したL*a*b*表色系における各値を表1に示す。
(1)M剤の添加量が多いほど、表面変質層の膜厚が大きくなる。
(2)電流密度が高いほど、表面変質層の膜厚が大きくなる。
(3)黒色クロムめっき処理後の状態が真空保存→大気中放置→加速試験となるにつれ、表面変質層の膜厚が大きくなり、金属クロムaが減少し、酸化クロムと水酸化クロムの和(b+c)が増加する。
(4)試料1〜13の表面変質層の膜厚とa*及びb*とを図4にプロットした。図4から、表面変質層の膜厚とb*との強い相関が見られ、表面変質層の膜厚が20〜25nmの範囲でb*は急に小さくなる。
図1に示す黒色めっき樹脂部品として、表2に主に相違点を示す試料14〜21を作製し、黒色クロムめっき層の色測定を行った。
和光純薬工業製ホウ酸 10g/L
アトテック社製トライクロムアジチブ 400g/L
アトテック社製トライクロムスタビライザー 90ml/L
アトテック社製トライクロムレギュレーター 1.0ml/L
アトテック社製トライクロムコレクター 4.5ml/L
アトテック社製トライクロムグラファイトメイキャップ 110ml/L
市販試薬のチオシアン酸 所定の配合(下記)
そこで、試料14〜21では、トライクロムグラファイトメンテナンスを配合しない代わりに、市販試薬のチオシアン酸を配合することとし、3価クロムめっき浴中の(トライクロムグラファイトメイキャップと市販試薬のチオシアン酸とによる)全チオシアン酸が、表2に示すとおりの試料14〜21別の含有量となるように、市販試薬のチオシアン酸の配合を調製した。
(1)試料14〜21のb*と温水浸漬時間との関係を、めっき時のチオシアン酸含有量ごとに、図3にプロットした。温水浸漬時間が長くなるほど、b*が小さくなる。また、めっき時のチオシアン酸含有量が多いほど、短い温水浸漬時間でb*が小さくなる。
(2)いずれの試料14〜21においても、温水浸漬処理によってb*が3.0以下になり、さらに温水浸漬時間を制御すると、表2に太線で囲んだように、b*を−1.7以下(本発明の範囲)にすることができ、青味のある黒色が得られる。
樹脂基材と、樹脂基材上に形成された下地めっき層と、下地めっき層上に形成された3価クロムよりなる膜厚0.15μm以上の黒色クロムめっき層とを含む黒色めっき樹脂部品において、
黒色クロムめっき層中のクロムは金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの状態で存在し、黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が−1.7以下であることを特徴とする黒色めっき樹脂部品。
樹脂基材と、樹脂基材上に形成された下地めっき層と、下地めっき層上に形成された3価クロムよりなる黒色クロムめっき層とを含む黒色めっき樹脂部品の製造方法において、
下地めっき層形成後の樹脂基材を、チオシアン酸を含む3価クロムめっき浴中に浸して電解めっきすることにより下地めっき層上に黒色クロムめっき層を形成する工程と、
黒色クロムめっき層形成後の樹脂基材を、30℃以上の温水に所定時間浸漬する工程とを含み、
黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が−1.7以下となるように、前記3価クロムめっき浴中のチオシアン酸の含有量と、前記温水の温度と、前記温水に浸漬する時間とを調整することを特徴とする黒色めっき樹脂部品の製造方法。
黒色クロムめっき層の上に耐食性皮膜を備えることが好ましい。耐食性皮膜としては、クロメート皮膜、特許文献1に記載されたリン酸クロム又はリン酸モリブデンよりなる膜等を例示できる。リン酸クロム又はリン酸モリブデンよりなる膜は、膜厚7nm以上が好ましく、20nm以下が好ましい。
車両用加飾部品(ラジエータグリル、フェンダ、ガーニッシュ、ホイールキャップ、バックパネル、エアスポイラー、エンブレム等)、電気製品(携帯電話、スマートホン、携帯情報端末、ゲーム機等)用筐体部品等を例示できる。特に風雨にさらされる車両用加飾部品は、高い耐食性能が求められるため、本発明を適用したときの有効性が高い。
(1)M剤の添加量が多いほど、表面変質層の膜厚が大きくなる。
(2)電流密度が高いほど、表面変質層の膜厚が大きくなる。
(3)黒色クロムめっき処理後の状態が真空保存→大気中放置→加速試験となるにつれ、表面変質層の膜厚が大きくなり、金属クロムaが減少し、酸化クロムと水酸化クロムの和(b+c)が増加する。
(4)試料1〜13の表面変質層の膜厚とa*及びb*とを図2にプロットした。図2から、表面変質層の膜厚とb*との強い相関が見られ、表面変質層の膜厚が20〜25nmの範囲でb*は急に小さくなる。
Claims (2)
- 樹脂基材と、樹脂基材上に形成された下地めっき層と、下地めっき層上に形成された3価クロムよりなる膜厚0.15μm以上の黒色クロムめっき層とを含む黒色クロムめっき樹脂部品において、
黒色クロムめっき層中のクロムは金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの状態で存在し、黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が−1.7以下であることを特徴とする黒色めっき樹脂部品。 - 樹脂基材と、樹脂基材上に形成された下地めっき層と、下地めっき層上に形成された3価クロムよりなる膜厚0.15μm以上の黒色クロムめっき層とを含む黒色クロムめっき樹脂部品の製造方法において、
下地めっき層形成後の樹脂基材を、チオシアン酸を含む3価クロムめっき浴中に浸して電解めっきすることにより下地めっき層上に黒色クロムめっき層を形成するめっき工程と、
黒色クロムめっき層形成後の樹脂基材を、30℃以上の温水に所定時間浸漬する工程とを含み、
黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が−1.7以下となるように、前記3価クロムめっき浴中のチオシアン酸の含有量と、前記温水の温度と、前記温水に浸漬する時間とを調整することを特徴とする黒色めっき樹脂部品の製造方法。
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