JP7227338B2 - 黒色めっき樹脂部品の黄味がかり抑制方法 - Google Patents
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Description
[1]樹脂部品に、クロムが金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムとの状態で存在する黒色クロムめっき層を設け、
黒色クロムめっき層の表面領域側から測定した黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が3.0以下となるように、黒色クロムめっき層の表面から深さが少なくとも23nmまでの表面領域を、酸素、水素又は水蒸気により変質させて、前記水酸化クロムの存在比率が黒色クロムめっき層の内部に対して増加した表面変質層とすることにより、黒色クロムめっきの黄味がかりを抑制することを特徴とする黒色めっき樹脂部品の黄味がかり抑制方法。
表面領域側から測定した黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が3.0以下であることにより、黒色クロムめっき層の黄味がかりがなくなる。そのメカニズムは、未だ明確には判明していないが、特に水酸化クロムが多いことが黄味を減少させる主要因と推定される。
1.樹脂基材
樹脂基材の樹脂は、熱可塑性でも熱硬化性でもよく、特に限定されないが、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PC/ABS樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等を例示できる。ABS樹脂、PC/ABS樹脂が強度、耐久性等の観点から好ましい。
樹脂基材の上には、次の下地めっき層を電解めっきするときに必要な導電層が形成される。導電層としては、特に限定されないが、無電解ニッケルめっき層を例示できる。
下地めっき層は、銅めっき層とニッケルめっき層とをこの順で含むものが好ましい。下地めっき層の最上層がニッケルめっき層であり、そのニッケルめっき層上に黒色クロムめっき層が形成されていることが好ましい。銅めっき層は延性に富むため樹脂基材によく追従し、ニッケルめっき層は黒色クロムめっき層を美感保持するとともに電気化学的に防食する。ニッケルめっき層の具体的構成は、特に限定されず、1層でも複数層でもよい。
黒色クロムめっき層の膜厚を上記のとおり0.15μm以上とするのは、下地めっき層を十分に隠して漆黒の黒色を得るためである。黒色クロムめっき層の膜厚の上限は、特に限定されないが、1μmが好ましい。1μmを超えると、膜内部応力が大きくなり、割れやすくなる。
表面領域(表面から深さが少なくとも23nmまで)としては、黒色クロムめっき層の内部(母材)に対して変質した表面変質層の領域である態様、黒色クロムめっき層の全域である態様等を例示できる。表面変質層としては、酸素、水素又は水蒸気により変質した層等を例示できる。
L*a*b*表色系におけるb*が上記のとおり3以下であるのは、黒色の黄味がかりをなくすためである。b*は1以下であることがより好ましい。やや青味がかった黒色を呈するようになり、市場のニーズにより合致するからである。b*の下限値は、特に限定されないが、-10が好ましい。b*が-10未満では青味が強くて用途が限られるからである。
a*は、特に限定されないが、-3~3が好ましい。a*が-3未満では緑味が強くて用途が限られ、3を越えると赤味が強くて用途が限られるからである。
L*は、特に限定されないが、30~54が好ましい。L*が30未満では、黒味が強くて金属感が減少し、54を越えると黒味が弱くて漆黒感が減少するからである。
3価クロムめっき浴に使用する3価クロム化合物としては、特に限定されないが、硫酸クロム(Cr2(SO4)3)、クロムミョウバン(CrK(SO4)2)、硝酸クロム(Cr(NO3)3)、塩化クロム(CrCl3)、酢酸クロム(Cr(CH3COO)3)等を例示できる。
黒色クロムめっき層の上に耐食性皮膜を備えることが好ましい。耐食性皮膜としては、クロメート皮膜、特許文献1に記載されたリン酸クロム又はリン酸モリブデンよりなる膜等を例示できる。リン酸クロム又はリン酸モリブデンよりなる膜は、膜厚7nm以上が好ましく、20nm以下が好ましい。
車両用加飾部品(ラジエータグリル、フェンダ、ガーニッシュ、ホイールキャップ、バックパネル、エアスポイラー、エンブレム等)、電気製品(携帯電話、スマートホン、携帯情報端末、ゲーム機等)用筐体部品等を例示できる。特に風雨にさらされる車両用加飾部品は、高い耐食性能が求められるため、本発明を適用したときの有効性が高い。
試料1~13の黒色めっき樹脂部品はいずれも、図1に示すように、ABS樹脂製の樹脂基材(導電層としての無電解ニッケルめっき層付き)と、樹脂基材上に形成された銅めっき層、半光沢ニッケルめっき層、光沢ニッケルめっき層、及びマイクロポーラスーニッケルめっき層をこの順で含む下地めっき層と、ニッケルめっき層の上に形成された3価クロムよりなる黒色クロムめっき層とを備えたものである。黒色クロムめっき層の上に耐食性皮膜を形成することが好ましいが、試料1~13では耐食性皮膜を形成していない。
和光純薬工業製ホウ酸 63g/L
アトテック社製トライクロムアジチブ 400g/L
アトテック社製トライクロムスタビライザー 100ml/L
アトテック社製トライクロムレギュレーター 3ml/L
アトテック社製トライクロムコレクター 2ml/L
アトテック社製トライクロムグラファイトメイキャップ 100ml/L
アトテック社製トライクロムグラファイトメンテナンス 所定の配合
(1)上記黒色クロムめっき処理において、アトテック社製トライクロムグラファイトメンテナンス(以下「M剤」という。)の配合を、試料1~4では20ml/Lとし、試料5~13では30ml/Lとした。
この電流密度の相違により、黒色クロムめっき層の膜厚は、試料9,12では0.53μm、試料8,11では0.252μm、試料1~7,10,13では1.10μmとなった。
黒色クロムめっき層の硬X線光電子分光法(HAXPES)分析を、次の機器で行った。
・ビームライン:大型放射光施設SPring-8 BL16XU(Photon energy:7947.58eV)
・アナライザ:VG Scienta社のR4000(Take-off angle:85°)
・黒色クロムめっき層中のクロムは、金属クロム(Cr)と酸化クロム(Cr2O3)と水酸化クロム(Cr(OH)3)の状態で存在すること。
・金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの組成比は、黒色クロムめっき層の内部と表面領域とで相違し、その表面領域は黒色クロムめっき層の表面から深さが約10~数十nmまでの領域であり、表面変質層と考えられること(めっき直後の試料8~10でも表面変質層と考えられる)。
以上により側定された表面変質層の膜厚と、金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムの組成比を表1に示す。また、金属クロムをa、酸化クロムをb、水酸化クロムをcとしたときの、(b+c)/aと、c/bを表1に示す。
黒色クロムめっき層の色調(L*a*b*表色系)を、表面領域側から、分光測色計(コニカミノルタ社製 CM-700d)によって測定した。測定条件は、測定モードSCI、観察条件10°視野、観察光源D65、測定径/照明径=φ3/φ6とした。測定したL*a*b*表色系における各値を表1に示す。
(1)M剤の添加量が多いほど、表面変質層の膜厚が大きくなる。
(2)電流密度が高いほど、表面変質層の膜厚が大きくなる。
(3)黒色クロムめっき処理後の状態が真空保存→大気中放置→加速試験となるにつれ、表面変質層の膜厚が大きくなり、金属クロムaが減少し、酸化クロムと水酸化クロムの和(b+c)が増加する。
(4)試料1~13の表面変質層の膜厚とa*及びb*とを図2にプロットした。図2から、表面変質層の膜厚とb*との強い相関が見られ、表面変質層の膜厚が20~25nmの範囲でb*は急に小さくなる。
Claims (1)
- 樹脂部品に、クロムが金属クロムと酸化クロムと水酸化クロムとの状態で存在する黒色クロムめっき層を設け、
黒色クロムめっき層の表面領域側から測定した黒色クロムめっき層のL*a*b*表色系におけるb*が3.0以下となるように、黒色クロムめっき層の表面から深さが少なくとも23nmまでの表面領域を、酸素、水素又は水蒸気により変質させて、前記水酸化クロムの存在比率が黒色クロムめっき層の内部に対して増加した表面変質層とすることにより、黒色クロムめっきの黄味がかりを抑制することを特徴とする黒色めっき樹脂部品の黄味がかり抑制方法。
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