JP2020156817A - ゴルフクラブ用シャフト - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、ジュニアゴルファーは、プレー人口が少なかったこともあり、ジュニアゴルファー向けに最適設計されたゴルフクラブ用シャフトは殆どなく、ジュニア向けに販売されているのは、主に安価で柔らかい材料を用いたゴルフクラブ用シャフトである。そのため、ジュニアゴルファーは、大人向けのゴルフクラブ用シャフトを身長に合わせて切断して使用したり、安価な材料を用いた軽量なゴルフクラブ用シャフトを用いたりしているのが実情である。
(2) チップ端側からの距離がシャフト全長の25%以上65%以下の範囲における曲げ剛性値の傾きが2.0kgf・m以上5.5kgf・m以下である
(1)に記載のゴルフクラブ用シャフト。
(3) 細径端から300mmの範囲での曲げ剛性値の最大値と、太径端側から300mmの範囲での曲げ剛性値の最大値の差が1.0kgf・m2以上3.5kgf・m2以下である
(1)または(2)に記載のゴルフクラブ用シャフト。
(4) 全長が800mm以上1100mm以下である
(1)〜(3)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
(5) 重量が25g以上45g以下である
(1)〜(4)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
(6) 強化繊維を含む樹脂層である繊維強化樹脂層、を複数有するゴルフクラブ用シャフトであって、前記繊維強化樹脂層の少なくとも一層に、前記強化繊維として弾性率が280GPa以上500GPa以下、かつ引張強度が5500MPa以上8500MPa以下である強化繊維を含む繊維強化樹脂層、を含む
(1)〜(5)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
(7) 強化繊維を含む樹脂層である繊維強化樹脂層、を複数有するゴルフクラブ用シャフトであって、
前記ゴルフクラブ用シャフトの長手方向に対して強化繊維が−5°〜+5°で配向された繊維強化樹脂層の少なくとも一層に、
前記強化繊維として弾性率が280GPa以上500GPa以下、かつ引張強度が5500MPa以上8500MPa以下である強化繊維を含む繊維強化樹脂層、を含む
(1)〜(6)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
(8) 前記ゴルフクラブ用シャフトの長手方向に対して強化繊維が−5°〜+5°で配向された繊維強化樹脂層が前記ゴルフクラブ用シャフトの全長に亘って配置されている
(7)に記載のゴルフクラブ用シャフト。
(9) 身長140cm〜150cmの低身長者用である
(1)〜(8)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
(10) ジュニアゴルファー用である(1)〜(9)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフトを含むゴルフクラブ。
ゴルフクラブは、ゴルフヘッドと、ゴルフクラブ用シャフトと、グリップによって構成されている。
ゴルフクラブは、通常、シャフトのチップ端にヘッドを取り付け、バット端にグリップを取り付けて組み上げる。ゴルフクラブは、通常、クラブ長を考慮して、シャフトの両端をカットしてからヘッドを取り付けて組み上げる。
本発明のゴルフクラブは、総重量が200g以上400g以下が好ましく、220g以上370g以下がより好ましく、250g以上350g以下が更に好ましい。前記下限値以上であれば、飛距離増大の効果がある。前記上限値以下であれば、オーバースイングを防ぎ、身体の負担を軽減する効果がある。
本発明のゴルフクラブは、長さが30インチ以上45インチ以下が好ましく、32インチ以上43インチ以下がより好ましく、34インチ以上41インチ以下が更に好ましい。前記下限値以上であれば、飛距離増大の効果がある。前記上限値以下であれば、正しいアドレスの姿勢がキープでき、効率の良いスイングができる。
ゴルフクラブ用シャフトとは、ゴルフクラブに組む前のシャフト(ゴルフクラブの部品)と、ゴルフクラブの各部品をゴルフクラブに組み立てた際の、前記ゴルフクラブにおけるシャフト部分の両方を意味する。
ゴルフクラブに組む前のシャフトは、製造直後のカットしていない状態と、ゴルフクラブに組み立てる直前の、カットした状態の両方を示す。
なお、ゴルフクラブにおけるシャフト部分の方がより本願発明の効果を発現する。
本実施形態のシャフトは、ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ、アイアン、パターなどの、いずれの種類のゴルフクラブ用シャフトでも良い。
素管は、意匠性付与層を有しないシャフトのことである。
素管の物性がゴルフクラブ用シャフトの物性を実質的に決定する。
素管は、複数の繊維強化樹脂層を有する。繊維強化樹脂層の枚数は、後述するように、ゴルフクラブ用シャフトの機能を分担して発現するため、2枚以上であることが好ましい。
素管は、繊維強化樹脂層以外に、樹脂層、タングステンなどの金属粉末を含む樹脂層である重量調整層、金属や強化繊維以外のフィラーを含む樹脂層、樹脂粉末などを含んでいてもよい。
シャフトは、表面に意匠性付与層を有していても良い。意匠性付与層は、素管の外面に付与され、模様やブランド名などを表示する加飾の役割を担う。意匠性付与層を有することで、デザイン性を向上させ、消費者の購買意欲を高めることができる。意匠性付与層を有している場合、意匠性付与層を含めたシャフトを、本発明のシャフトとする。
意匠性付与層は、シャフト全長に亘って形成しても良く、シャフトの一部に形成しても良い。
意匠性付与層中の加飾層の材料としては、金属箔、インク、スプレーなど、美観を向上させ得るものであればいずれの材料を用いても良い。加飾の後に付与されるオーバーコート層や、下塗り層、中塗り層用の材料としては、加飾部分や素管など、隣接する層との密着性が高く、保護被膜の用途に使用され得るものであれば、いずれの種類のものであっても良い。
繊維強化樹脂層は、強化繊維及び硬化又は固化された樹脂組成物を含む繊維強化樹脂からなる。
以下、樹脂組成物及び強化繊維について説明する。
本発明の繊維強化樹脂を構成する樹脂組成物は、マトリックス樹脂と、必要に応じて硬化剤、消泡剤、脱泡剤、着色剤その他の成分を含む。前記樹脂組成物に含まれるマトリックス樹脂には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができるが、硬化後の物性が高いため、好ましくは熱硬化性樹脂が用いられる。
(強化繊維の種類)
本発明の繊維強化樹脂を構成する繊維は、金属繊維、ボロン繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、その他の高強力合成繊維などを使用することができる。無機繊維は軽量、かつ高強力であることから好ましく使用される。これらの中でも、比強度、比剛性に優れるため、炭素繊維が最も好ましい。
これらの繊維は、1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
強化繊維径は3〜100μmであることが好ましい。なお、本発明における「強化繊維径」とは、それぞれの強化繊維(フィラメント)の断面の等面積円相当直径のことである。
強化繊維径を前記上限値以下とすることにより、引張強度や引張弾性率を高くすることができる。また、強化繊維の太さを前記下限値以上とすることにより、強化繊維の生産性を高くすることができ、製造コストを安くすることができる。
強化繊維の強度は、使用するシャフトの部位にもよるが、炭素繊維の場合、好ましくはJIS R 7608(2007)に準拠したストランド強度が1000MPa以上で、引張弾性率が45GPa以上であることが好ましい。
前記弾性率が280GPa以上500GPa以下、かつ引張強度が5500MPa以上8500MPa以下である強化繊維を有する繊維強化樹脂層は、前記ゴルフクラブ用シャフトの長手方向に対して強化繊維が−5°〜+5°で配向された繊維強化樹脂層であることが好ましく、前記強化繊維が−5°〜+5°で配向された繊維強化樹脂層が全長に亘って配置されていることが更に好ましい。
強化繊維の弾性率及び引張強度が前記範囲内である繊維強化樹脂層を有することで、軽量でありながら、剛性分布に優れたシャフトとすることができる。そのため、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、非力なゴルファーであっても、扱いやすく打感が良好になる。
特に、ジュニアゴルファーに関しては、適度な強度と弾性率を有する材料を用いていることで、力任せにスイングすることなく、飛距離を稼ぐことができる。
また、長繊維、短繊維及びこれらの混合繊維など、どのような長さの繊維を用いてもよく、2種以上の繊維を混合して使用しても良い。
強度の観点で、長繊維を用いることが好ましい。
また、これらの繊維は、一方向材(繊維を一方向に引き揃えたもの)として使用しても、強化繊維を製織して織物としたクロス材として使用しても良い。
一方向材であれば、繊維軸方向の強度や弾性率などの物性を十分に活用でき、また、強化繊維に直交する方向のドレープ性に優れているため、シートラップ法で素管を製造する場合は、マンドレルに巻き付けやすく、取扱い性が良好である。
クロス材は、主に素管の最外面に意匠性を付与するために利用する。クロス材の織り方は、すだれ織などの一方向性織物、平織、朱子織、綾織などの二方向性織物、三軸織物、ノンクリンプ織物、などのいずれの織組織のクロス材であってもよいが、二方向性織物や三軸織物が、意匠性の観点で好ましい。三軸織物の場合、耐久性の観点で好ましい。
繊維強化樹脂層の繊維体積含有率は、素管の剛性をより高くできることから、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。また、繊維強化樹脂層の繊維体積含有率は、マトリックス樹脂と強化繊維とを充分に密着させるためには、ある程度の樹脂量が必要であることから、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
繊維強化樹脂層の繊維目付は特に限定しないが、各層に必要な厚さ、巻き径から適宜選択できる。
本実施形態の素管を構成する繊維強化樹脂層としては、例えば、素管の長手方向に対して一方向材の強化繊維の配向角度を−5°〜+5°に配向したストレート層、素管の長手方向に対して一方向材の強化繊維の配向角度を85〜95°に配向したフープ層、素管の長手方向に対して一方向材の強化繊維の配向角度を+20〜+70°又は−20〜−70°に配向したアングル層が挙げられる。なお、アングル層は、素管軸方向に対する強化繊維の配向角度が正である1枚と、強化繊維の配向角度が負である1枚の合計2枚を一組として、バイアス層として使用する。
ストレート層は、繊維強化樹脂層であり、素管の長手軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する。強化繊維が素管の長手軸方向に略平行に配向していることで、曲げ剛性や曲げ強度を高くすることができる。略平行の範囲は、素管の長手軸方向に対して−5°以上+5°以下である。
フープ層には、主に潰し剛性や潰し強度を高める効果がある。フープ層の配向角度がシャフトの長手軸方向に対して+85〜+95°又は、−85〜−95°、すなわち配向角度の絶対値が85°以上95°以下であれば、シャフトの潰し剛性や潰し強度の両方が十分になる。フープ層を形成する繊維の引張弾性率は240GPa以上、400GPa以下が好ましい。繊維の引張弾性率が240GPa以上であると、潰し剛性が十分に
確保され、潰し変形によるスイングリズムの乱れが起こりにくい。一方、繊維の引張弾性率が400GPa以下であると、潰し剛性と潰し強度を十分に確保できる。
バイアス層には、主にねじり剛性やねじり強度を高める効果がある。
バイアス層は、繊維強化樹脂層であり、素管の長手軸方向に対して正の配向角度+α°で配向した強化繊維(+α層)を含有するアングル層と、素管の長手軸方向に対して負の配向角度−α°で配向した強化繊維を含有するアングル層(−α層)とを含有する。ここで、α°は、20°〜70°、好ましくは30°〜60°、更に好ましくは35°〜55°である。通常、正の配向角度および負の配向角度の絶対値は、製造上不可避な誤差はあるが、同一になるよう設計する。
α°を前記範囲内とすることで、素管のねじり剛性、曲げ剛性、及び潰し剛性が十分になる。
(シャフトの長さ)
本実施形態のシャフトは、全長が800mm以上1100mm以下である。
本実施形態のシャフトの長さは、ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ、アイアンなど、種類によって異なるが、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、ジュニアゴルファーの場合は、シャフトの全長Lsは、ドライバーであれば990mm〜1100mm、フェアウェイウッドであれば980mm〜1000mm、ユーティリティであれば940mm〜990mm、アイアンであれば800mm〜950mmが好ましい。 前記範囲内であることで、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、ジュニアゴルファーであっても、アドレス時に上半身が直立することなく、股関節から上半身が前傾した理想的な姿勢をとることができ、ボールを確実に捕らえられる。その結果、スイングエネルギーを効率よくボールに伝え、飛距離を伸ばすことができる。また、スイングウェイトが軽くなるため、ダウンスイング中にクラブに振り回されるのを防ぐために、身体が起き上がることがない。
特に、ジュニアゴルファーに関しては、前記範囲内であることで、理想的なフォームを修得することが早期に可能になる。
本実施形態のシャフトは、重量が25g以上45g以下である。好ましくは30g以上40g以下であり、さらに好ましくは35g以上45g以下である。
前記範囲内であることで、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、非力なゴルファーであっても、クラブに振り回されることなくスムーズなスイングを行える。また、バックスイングで正しいコックを使うことができたり、体の芯がずれたオーバースイングになり、その反動で、ダウンスイングで体が反ったフォームになることを防げたりする。
特に、ジュニアゴルファーに関しては、身体が発達途上で、体幹が弱いため、前記範囲内であることで、スイングウェイトが軽くなり、力みのない自然なスイングを行うことができ、再現性の高いフォームを早期に身に着けられ、スランプに陥った場合にも、早期に癖を修正することができる。
本発明のシャフトは、曲げ剛性値が特定の範囲内にある。曲げ剛性分布は、下記の方法で測定する。
<曲げ剛性分布の測定方法>
曲げ剛性値は、断面二次モーメントI[m4]と、材料のヤング率E[kgf/m2]との積であるEI[kgf・m2]で表される。
曲げ剛性値(EI値)[kgf・m2]は、三点曲げ試験を行って、下記式(1)により求められる。
EI値=(1/48)×(e・d3/δ)…式(1)
d:支点間距離[m]
P:荷重[kgf]
δ:曲げたわみ量[m]
通常は、支点間距離を0.3m、荷重を20kgfとする。
測定位置をシャフト全体にわたって変えながら測定することで、曲げ剛性値のシャフト軸方向に沿った複数の測定点の集合であるシャフトの曲げ剛性分布が得られる。測定可能位置は、理論上はチップ側端部150mmの位置からとなるが、支持部を設ける必要性から、細径端部から170mmの位置から開始し、50mm間隔で、太径端部から170mmの位置を超えない、最も細径端部から遠い位置まで測定する。
前記範囲内であることで、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、非力なゴルファーに関しては、力むことなく自然なスイングを行える。
特に、ジュニアゴルファーに関しては、身体が発達途上で、体幹が弱いため、前記範囲内であることで、身体に過剰な負荷をかけることがない。
シャフトの細径端部から170mmの位置から、太径端部から170mmの位置までの曲げ剛性値は、前記の曲げ剛性分布の測定方法で測定した測定点における曲げ剛性値から求める。曲げ剛性値の測定点は、細径端部から170mmの位置から開始し、50mm間隔で、太径端部から170mmを超えない、最も細径端部から遠い位置まで測定する。従って、太径端部から170mmの位置の剛性値としては、前記の測定点のうち、太径端部から170mmを超えない、最も細径端部から遠い位置の剛性値を採用する。
シャフトの細径端から300mmの範囲での曲げ剛性値の最大値と、太径端側の曲げ剛性値の差は、1.0kgf・m2以上3.5kgf・m2以下であることが好ましく、1.0kgf・m2以上3.0kgf・m2以下であることがよりましく、1.0kgf・m2以上2.5kgf・m2以下であることが更に好ましい。
前記範囲内であることで、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、非力なゴルファーに関しては、無理な力を使わなくても、スイング時にシャフトをしならせることができるため、スイングリズムが良くなったり、フォームが良くなったりする。
特に、ジュニアゴルファーに関しては、前記範囲内であることで、身体の発達に適合した硬さになり、身体に過度な負荷をかけることがないため、故障をおこしたり、発達を妨げたりすることがない。
本発明のシャフトは、チップ端側からの距離がシャフト全長の25%以上65%以下の範囲における曲げ剛性値の傾きが特定の範囲内にある。
曲げ剛性値の傾きは2.0kgf・mであることが好ましく、2.5kgf・m以上であることがより好ましく、3.0kgf・m以上であることが更に好ましい。曲げ剛性値の傾きは、5.5kgf・m以下であることが好ましく、5.0kgf・m以下であることがより好ましく、4.5kgf・m以下であることが更に好ましい。
前記範囲内であることで、身長140cm〜150cmの低身長のゴルファーや、非力なゴルファーであっても、スイング時にシャフトのしなり分布が適切になるため、スイングのタイミングを取り易い。そのため、特に、しなりが重要なドライバーに関しては、飛距離を増大させられる。
特に、ジュニアゴルファーに関しては、前記範囲内であることで、理想的なスイングリズムを修得することが早期に可能になる。
Einc = 1000×(EL−ES)/(LLS)…(2)
Einc:曲げ剛性値の傾き[kgf・m]
EL:細径端部からシャフト全長の65%以下の範囲内で最もバット端に近い点の曲げ剛性値[kgf・m2]
ES:細径端部からシャフト全長の25%以上の範囲内で最もチップ端に近い点の曲げ剛性値[kgf・m2]
LLS:細径端部からシャフト全長の25%以上65%以下の長さの範囲内に存在する、最も遠い2点間の距離[mm]
本発明のシャフトの素管の製造方法としては、本発明の素管を製造できれば特に制限されず、公知の製造方法を適用できるが、繊維を一方向に引き揃えてなるシート状の強化繊維に、樹脂組成物を含浸させた繊維強化樹脂層(プリプレグ)を、マンドレルに複数枚巻きつけて、これを加熱後に冷却し、マンドレルを抜き取ることで成形するシートラッピング法が一例として挙げられる。
シートラッピング法では、プリプレグとして、面積や含有する強化繊維の配向角度が異なる複数種のものを用意し、これらを1枚ずつ順次マンドレルに巻回し、多層構造のシャフトを製造することが一般的である。プリプレグの枚数は、8〜14枚程度が一般的である。
また、本発明のシャフトを構成する繊維強化樹脂層は、前記樹脂組成物に含まれるマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、硬化が完了しているものを示す。
男性の場合は、8歳から15歳の間に95%がこの範囲の身長に達する。女性の場合は、8歳から18歳の間に95%がこの範囲の身長に達する。
女性の場合は、成人になっても身長が150cmに達せず、小柄で非力である場合もあり、本発明のシャフトはそのようなゴルファーにも好適に使用される。
特に、身長が140cm以上150cm以下の女児を対象とする場合、9−18歳であり、男児の場合は9−15歳である。
本発明のシャフトは、特に、ジュニアゴルファー用に最適化している。
本発明のゴルフクラブに用いるグリップは、本発明のシャフトに装着できればどのようなものでも良いが、低身長者やジュニアゴルファーは手が小さい傾向にあるため、手が小さくてもグリップしやすい、外径が細い(グリップ内径0.56〜0.58インチ)ものが好ましい。
本発明のゴルフクラブに用いるヘッドは、ウッドの場合、重量が180〜200gで、ロフト角が12〜17度、ライ角が55〜60度のものが、ヘッドスピードが遅い傾向にある低身長者やジュニアでも飛距離が稼げるため好ましい。フェアウェイウッドの場合、重量が180〜210gで、ロフト角が20〜30度、ライ角が55〜65度のもの、アイアンの場合、重量が210〜300gで、ロフト角が25〜50度、ライ角が58〜65度のものが飛距離と方向性の観点で好ましい。
(固有振動数の測定方法)
シャフトの固有振動数は図8で示す方法で測定した。藤倉ゴム株式会社製ゴルフクラブタイミングハーモナイザーを用い、シャフト1の細径端部に、ヘッドを模擬した質量196gの錘4を取り付ける。太径端部から固定治具5Aまでの距離を180mm、細径端部から固定治具5Aまでの距離を988mmとして、シャフトの固有振動数を測定した。
シャフトのバランスポイントの模式図を図9に示す。シャフトの細径端部から、シャフトの重心までの距離LGを、シャフトの全長Lsに対する比率で示した。すなわち、
バランスポイント(%)=(LG/LS)×100・・・(式3)
で求められる。
キックポイントは、フォーティーン社製シャフトキックポイントゲージ「FG−105RM」を用いて、図10に示す方法で測定した。
シャフトの両端を回転可能な固定治具5B、5Cで固定し、一方の治具を移動させることにより、固定治具同士を互いに近づけることでシャフトを圧縮して、両端の距離を短縮させることで湾曲させた。このとき、シャフトの周方向に最も突出した点と、細径端部の距離LK、湾曲時のシャフトの両端を直線で結んだ距離をLBとし、上記LKとLBの比率をキックポイントの値とした。両端から加える圧縮荷重Pは、シャフトの曲げ剛性によって異なるが、両端の直線距離が圧縮前のシャフト長の98.5〜99.5%になるようにかけるものとする。すなわち、
キックポイント(%)=(LK/LB)×100・・・(式4)
LK:前記シャフトの両端同士に、前記シャフトの両端の直線距離がシャフト長の98.5〜99.5%となるように圧縮荷重をかけることで湾曲させた際の、シャフトの両端同士を結ぶ直線に、前記湾曲の頂点から垂線を引いた際の交点とシャフトの細径端部との距離
LB:前記シャフトの両端同士に、前記シャフトの両端の直線距離がシャフト長の98.5〜99.5%となるように圧縮荷重をかけることで湾曲させた際の、前記シャフトの両端同士の直線距離
で求めた。
(曲げ剛性値の測定方法)
<曲げ剛性分布の測定方法>の項に従い、測定を行った。
測定開始点は細径端部から170mmの位置とし、50mm間隔で、太径端部から170mmの位置まで測定を行った。
図11に示したとおり、シャフトの細径端部から1035mmの位置を固定し、細径端部から45mmの位置に捻り荷重を与える。捻り荷重の大きさは、シャフト軸線上から120mm離れた位置に1.152kgfの大きさの荷重を与えることで定義される。このときのシャフト細径側端部の捩れ角度をトルクと定義する。
実施例1〜5、及び比較例1のそれぞれのゴルフクラブを、ジュニアゴルファー3名が3球ずつ試打することで、打感を評価した。結果を表9に示す。ジュニアゴルファーは、言語による表現能力や、定量化能力が低いため、点数化による評価はできなかった。
図6に示す形状の鉄製のマンドレルを用意した。このマンドレルにおける各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
P1の外径=4.30mm、P2の外径=6.10mm、P3の外径=7.65mm、P4およびP5の外径=12.70mm、P1〜P2の距離(L1)=200mm、P2〜P3の距離(L2)=80mm、P3〜P4の距離(L3)=570mm、P4〜P5の距離(L4)=550mm、P1〜P2のテーパー度=9.000/1000、P2〜P3のテーパー度=19.375/1000、P3〜P4のテーパー度=8.860/1000
まず、配向角度+45°の強化繊維を含有するプリプレグと配向角度−45°の強化繊維を含有するプリプレグを1枚ずつ用意し、図1のパターン2左側(細径端部)において、2枚の巻き始め端部(プリプレグの図中上端)が9mmずれるように重ね、図1右側端部(太径端部)において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ね、アイロンを用いて180℃で貼り合わせ、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ(パターン2)を得た。同様に、配向角度90°の強化繊維を含有するプリプレグと配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグを1枚ずつ用意して重ねあわせて、アイロンを用いて180℃で貼り合わせ、貼り合わせプリプレグ(パターン3)を得た。
次いで、このマンドレルに図1に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。それぞれのパターンに用いたプリプレグの物性の詳細を表1に、サイズを表6に示す。なお、パターン2とパターン5は、弾性率が290GPaで引張強度が5680MPaである炭素繊維を含むプリプレグを使用した。
使用したプリプレグの種類を表2、サイズを表6に示したように変更し、図2に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を用いた以外は、実施例1と同様にシャフトを製造し、物性を評価した。結果を表7に示す。
使用したプリプレグの種類を表3、サイズを表6に示したように変更し、図3に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を用い、貼り合わせプリプレグをパターン2と4とした以外は、実施例1と同様にシャフトを製造し、物性を評価した。結果を表7に示す。
使用したプリプレグの種類を表4、サイズを表7に示したように変更し、図4に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を用いた以外は、実施例3と同様にシャフトを製造し、物性を評価した。結果を表7に示す。
(実施例5)
使用したプリプレグの種類を表5、サイズを表7に示したように変更し、図5に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を用いた以外は、実施例1と同様にシャフトを製造し、物性を評価した。結果を表7に示す。なお、実施例5のクラブに関する値は想定値である。
三菱ケミカル(株)社製Bassara P43Rのバット端を101mmカットして、1067mmのシャフトを得た。物性の評価結果を表7に示す。
実施例1〜5、及び比較例1で製造した塗装後のシャフトの細径側に市販のヘッドを、太径側に市販のグリップを装着し、表7に示す長さの試験用のゴルフクラブを製作した。
ゴルフクラブを組み立てる際には、クラブバランスを測定する。クラブバランスは、クラブのスイング方向の慣性モーメントを近似的に測定できるものである。クラブのスイング方向の慣性モーメントは、スイング時に感じる「重さ」であるため、クラブバランスが同じならばスイング時に感じる重さは同一とみなされる。クラブバランスはKenneth Smith社製クラブバランス計「Golf Club Scale」を用いて測定した。
実施例1〜5、及び比較例1のそれぞれのゴルフクラブを、身長140cm〜150cmのジュニアゴルファーが3球ずつ試打し、弾道を計測した。計測にはTrackMan社製弾道計測装置「TrackMan Pro2」を用いた。測定結果を表9に示す。
なお、ミスショットでデータが取得できなかったものは、2球のデータの平均値を示す。
表8で評価が高かったシャフトに関し、各ジュニアゴルファーのキャリーを比較した。表9に示したように、ジュニアゴルファーA及びBでは、実施例2のシャフトを使用した場合、比較例1のシャフトを使用した場合と比較して、9.3yds、4.2ydsのキャリー向上、7.3yds、5.0ydsのトータル飛距離向上が見られた。ジュニアゴルファーCでは、実施例1のシャフトを用いた場合、比較例1のシャフトを使用した場合と比較して、7.1ydsのキャリー向上、6.4ydsのトータル飛距離向上が見られた。比較例1のシャフトは硬く振りにくかったため、ミスショットが多発した。
なお、キャリーとは、ゴルフボールをヒットした地点から、ボールが地面に落ちた地点までの距離であり、トータル飛距離とは、ゴルフボールが地面に落ちた後、さらに転がる(ラン)距離を含めたゴルフボールの移動距離のことを示す。
1C 圧縮して湾曲したシャフト
11 細径端部
12 太径端部
2 シャフトの重心位置
3 シャフトのキックポイント位置
4 ヘッドを模擬した質量196gの錘
5A、5B、5C、5D、5E 固定治具
6 曲げ剛性値の測定点
LS シャフトの全長
LG、LK、LB、LD 長さ
P 荷重
Claims (11)
- 細径端部から170mmの位置から、太径端部から170mmの位置までの曲げ剛性値が0.5kgf・m2以上5.0kgf・m2以下の範囲内であるゴルフクラブ用シャフト。
- チップ端側からの距離がシャフト全長の25%以上65%以下の範囲における曲げ剛性値の傾きが2.0kgf・m以上5.5kgf・m以下である
請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 細径端から300mmの範囲での曲げ剛性値の最大値と、太径端側から300mmの範囲での曲げ剛性値の最大値の差が1.0kgf・m2以上3.5kgf・m2以下である
請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 全長が800mm以上1100mm以下である
請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 重量が25g以上45g以下である
請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 強化繊維を含む樹脂層である繊維強化樹脂層、を複数有するゴルフクラブ用シャフトであって、
前記繊維強化樹脂層の少なくとも一層に、
前記強化繊維として弾性率が280GPa以上500GPa以下、かつ引張強度が5500MPa以上8500MPa以下である強化繊維を含む繊維強化樹脂層、を含む
請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 強化繊維を含む樹脂層である繊維強化樹脂層、を複数有するゴルフクラブ用シャフトであって、
前記ゴルフクラブ用シャフトの長手方向に対して強化繊維が−5°〜+5°で配向された繊維強化樹脂層の少なくとも一層に、
前記強化繊維として弾性率が280GPa以上500GPa以下、かつ引張強度が5500MPa以上8500MPa以下である強化繊維を含む繊維強化樹脂層、を含む
請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 前記ゴルフクラブ用シャフトの長手方向に対して強化繊維が−5°〜+5°で配向された繊維強化樹脂層が前記ゴルフクラブ用シャフトの全長に亘って配置されている
請求項7に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 身長140cm〜150cmの低身長者用である
請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - ジュニアゴルファー用である
請求項1〜9のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフト。 - 請求項1〜10のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用シャフトを含むゴルフクラブ。
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