JP2020155763A - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

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倫太郎 石井
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Abstract

【課題】RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いHkを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供する。【解決手段】本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、R:28.5質量%以上33.0質量%以下(Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、B:0.85質量%以上0.91質量%以下、Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、T:61.5質量%以上70.0質量%以下、を含み、14[B]/10.8<[T]/55.85([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)の関係を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、原料合金の溶湯を1520℃以上1650℃以下の温度で、回転する冷却ロールに供給して急冷し、厚さ0.4mm以下の急冷合金を作製する工程を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、R−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも一種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む、TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)は、R14B型結晶構造を有する化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されており、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られている。
このため、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車(EV、HV、PHV)用モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品など多種多様な用途に用いられている。
このように用途が広がるにつれ、例えば電気自動車用モータで用いられた場合は、100℃〜160℃のような高温下に曝される場合があり、高温下においても安定した動作が要求されている。
しかし、従来のR−T−B系焼結磁石は、高温になると保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)が低下し、不可逆熱減磁が起こるという問題がある。電気自動車用モータにR−T−B系焼結磁石が使用される場合、高温下での使用によりHcJが低下し、モータの安定した動作が得られない恐れがある。そのため、室温において高いHcJを有し、かつ高温においても高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石が求められている。
室温におけるHcJ向上のために、従来、R−T−B系焼結磁石に重希土類元素RH(主としてDy)を添加していたが、残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)が低下するという問題があった。さらに、Dyは、産出地が限定されている等の理由から、供給が不安定であり、また価格が大きく変動することがあるなどの問題を有している。そのため、Dyなどの重希土類元素RHをできるだけ使用せずにR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させる技術が求められている。
このような技術として、例えば特許文献1は、通常のR−T−B系合金よりもB量を低くするとともに、Al、GaおよびCuのうちから選ばれる1種以上である金属元素Mを含有させることによりR17相を生成させ、当該R17相を原料として生成させた遷移金属リッチ相(R−T−Ga相)の体積率を充分に確保することにより、Dyの含有量を抑制しつつ、保磁力の高いR−T−B系焼結磁石が得られることを開示している。
また、上述の通りR−T−B系焼結磁石が最も利用される用途はモータであり、特に電気自動車用モータなどの用途で高温安定性を確保するためにHcJの向上は大変有効であるが、それらの特性とともに角形比Hk/HcJ(以下、単にHk/HcJという場合がある)も高くなければならない。Hk/HcJが低いと減磁しやすくなるという問題を引き起こす。そのため、高いHcJを有するとともに、高いHk/HcJを有するR−T−B系焼結磁石が求められている。なお、R−T−B系焼結磁石の分野においては、一般に、Hk/HcJを求めるために測定するパラメータであるHkは、J(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、Jが0.9×J(Jは残留磁化、J=B)の値になる位置のH軸の読み値が用いられている。このHkを減磁曲線のHcJで除した値(Hk/HcJ=Hk(kA/m)/HcJ(kA/m)×100(%))が角形比として定義される。
国際公開第2013/008756号公報
特許文献1に記載されているR−T−B系希土類磁石では、Dyの含有量を低減しつつ高いHcJが得られるものの、一般的なR−T−B系焼結磁石(R14B型化合物の化学量論比よりもB量が多い)と比べてHk/HcJが低下するという問題点があった。具体的には、一般的なR−T−B系焼結磁石では、Hkは、HcJの90%以上の値(つまりHk/HcJは90%以上)となる。これに対し、特許文献1に記載されているR−T−B系希土類磁石では、高いHcJが得られるため、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもHkの値は高くなるものの、一般的なR−T−B系焼結磁石と比べて、HcJの値に対するHの値が相対的に低下し、Hk/HcJが90%未満となる場合があるという問題があった。
そこで本開示は、RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いHkを有するR−T−B系焼結磁石を製造するための方法を提供する。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、例示的な実施形態において、R:28.5質量%以上33.0質量%以下(Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、B:0.85質量%以上0.91質量%以下、Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、
Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)、を含み、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)原料合金の溶湯を1520℃以上1650℃以下の温度で、回転する冷却ロールに供給して急冷し、厚さ0.4mm以下の急冷合金を作製する工程と、前記合金から合金粉末を作製する工程と、前記合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、を含む。
ある実施形態において、前記急冷合金を作製する工程において、前記冷却ロールに単位時間に供給する前記溶湯の量、および、前記冷却ロールの回転周速度を調整して、厚さ0.15mm以上0.35mm以下の急冷合金を作製する。
ある実施形態において、前記原料合金の溶湯を1550℃以上1600℃以下の温度で回転する冷却ロールに供給して急冷する。
ある実施形態において、前記急冷合金を作製する工程において、直径が200〜400mmの範囲にある銅製ロールを前記冷却ロールとして用い、前記冷却ロールに単位時間に供給する前記溶湯の量を50〜250g/秒の範囲内にし、前記冷却ロールの回転周速度を500〜2000mm/秒の範囲内にする。
本開示の実施形態によれば、RHの含有量を低減しつつ、高いHcJと高いHkを有するR−T−B系焼結磁石を製造するための方法を提供することができる。
図1は、本開示の実施形態で使用されるストリップキャスト装置100の構成例を模式的に示す図である。
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのR−T−B系焼結磁石の製造方法を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。
特許文献1に記載されているように一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なく(R14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なく)し、Ga等を添加することにより、遷移金属リッチ相(R−T−Ga相)を生成させてHcJを向上させることができる。
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、原料合金の溶湯から形成される急冷合金の組織構造が従来のストリップキャスト法では十分に均一微細化されず、Hkの向上が不十分になる場合のあることがわかった。原料合金の組成、微量元素の添加などの方法を試みたが、必ずしも十分な効果が得られなかった。しかし、合金溶湯の急冷前の温度を従来の値よりも例えば50℃程度またそれ以上に高い温度に調整することにより、高いHcJと高いHkを有するR−T−B系焼結磁石が得られることを見出した。これは、急冷後に均一微細化された組織構造が実現しているからだと考えられる。このような効果は、通常のR−T−B系合金よりもB量を低くするとともに、Gaを添加した場合に奏することもわかった。
以下に本開示の実施形態に係る製造方法について詳述する。
[R−T−B系焼結磁石]
まず、本開示の実施形態に係る製造方法により得られるR−T−B系焼結磁石について説明する。
[R−T−B系焼結磁石の組成]
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の組成は、
R:28.5質量%以上33.0質量%以下(Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.85質量%以上0.91質量%以下、
Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、
Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、
T:61.5質量%以上70.0質量%以下、を含み、下記式(1)を満足する。
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
上記組成により、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なくするとともに、Ga等を含有させているので、二粒子粒界にR−T−Ga相が生成して、高いHcJを有することができる。ここで、R−T−Ga相とは、代表的にはNdFe13Ga化合物である。R13Ga化合物は、LaCo11Ga型結晶構造を有する。また、R13Ga化合物は、その状態によっては、R13−δGa1+δ化合物(δは典型的には2以下)になっている場合がある。例えば、R−T−B系焼結磁石中に比較的多くCu、Alが含有される場合、R13−δ(Ga1−x−yCuAl1+δになっている場合がある。
以下に、各組成について詳述する。
(R:28.5〜33.0質量%)
Rは、希土類元素のうち少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む。Rの含有量は、28.5〜33.0質量%である。Rが28.5質量%未満であると焼結時の緻密化が困難となるおそれがあり、33.0質量%を超えると主相比率が低下して高いBを得られないおそれがある。Rの含有量は、好ましくは29.5〜32.5質量%である。Rがこのような範囲であれば、より高いBを得ることができる。
(B:0.85〜0.91質量%)
Bの含有量は、0.85〜0.91質量%である。Bが0.85質量%未満であるとR17相が生成されて高いHcJが得られないおそれがあり、0.91質量%を超えるとR−T−Ga相の生成量が少なすぎて高いHcJが得られないおそれがある。Bの一部はCと置換することができる。
Bの含有量は下記式(1)を満たす。
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
式(1)を満足することにより、Bの含有量が一般的なR−T−B系焼結磁石よりも少なくなる。一般的なR−T−B系焼結磁石は、主相であるR14B相以外に軟磁性相であるR17相が生成しないように、[T]/55.85(Feの原子量)は14[B]/10.8(Bの原子量)よりも少ない組成となっている([T]は、質量%で示すTの含有量である)。本発明のR−T−B系焼結磁石は、一般的なR−T−B系焼結磁石と異なり、[T]/55.85が14[B]/10.8よりも多くなるように式(1)で規定している。なお、本発明のR−T−B系焼結磁石におけるTの主成分はFeであるため、Feの原子量を用いた。
(Ga:0.2〜1.0質量%)
Gaの含有量は、0.2〜1.0質量%である。Gaが0.2質量%未満であると、R−T−Ga相の生成量が少なすぎて、R17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができないおそれがあり、1.0質量%を超えると不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBが低下するおそれがある。
(Cu:0.05〜0.50質量%)
Cuの含有量は、0.05〜0.50質量%である。Cuが0.05質量%未満であると高いHcJを得ることができないおそれがあり、0.50質量%を超えると焼結性が悪化して高いHcJが得られないおそれがある。
(Al:0.0〜0.50質量%)
Alの含有量は、0.0〜0.50質量%である。Alを含有することによりHcJを向上させることができる。Alは通常、製造工程で不可避的不純物として例えば0.02質量%以上含有されるが、不可避的不純物で含有される量と意図的に添加した量の合計で0.50質量%以下含有してもよい。
(T:61.5質量%〜70.0質量%))
Tは、TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである。Coを含有することにより耐食性を向上させることができるが、Coの置換量がFeの10質量%を超えると、高いBが得られないおそれがある。Tの含有量は、61.5質量%以上70.0質量%以下であり、且つ、上述した式(1)を満足する。Tの含有量が61.5質量%未満であると、大幅にBが低下する恐れがある。好ましくは、Tが残部である。
さらに、本開示のR−T−B系焼結磁石は、ジジム合金(Nd−Pr)、電解鉄、フェロボロンなどに通常含有される不可避的不純物としてCr、Mn、Si、La、Ce、Sm、Ca、Mgなどを含有することができる。さらに、製造工程中の不可避的不純物として、O(酸素)、N(窒素)およびC(炭素)などを例示できる。また、本開示のR−T−B系焼結磁石は、1種以上の他の元素(不可避的不純物以外の意図的に加えた元素)を含んでもよい。例えば、このような元素として、少量(各々0.1質量%程度)のAg、Zn、In、Sn、Ti、Ge、Y、H、F、P、S、V、Ni、Mo、Hf、Ta、W、Nb、Zrなどを含有してもよい。また、上述した不可避的不純物として挙げた元素を意図的に加えてもよい。このような元素は、合計で例えば1.0質量%程度含まれてもよい。この程度であれば、高いHcJと高いHkを有するR−T−B系焼結磁石を得ることが十分に可能である。
上述した本実施形態に係る組成を有するR−T−B系焼結磁石は、急冷合金を作製する工程、前記合金から合金粉末を作製する工程、前記合金粉末を成形して成形体を得る成形工程、成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程、焼結体に熱処理を施す熱処理工程を含んで製造される。
以下に、本開示の実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法の詳細を説明する。
1.急冷合金を作製する工程
本開示の実施形態では、上述したR−T−B系焼結磁石の組成となるように原料を秤量し準備して、急冷合金を作製する。急冷合金は、ストリップキャスト法により作製する。ストリップキャスト法は、冷却ロールを用いて合金溶湯を急冷する鋳造法である。冷却レートが相対的に低い鋳型鋳造に比べると、ストリップキャスト法によって得られる急冷凝固合金では、結晶組織が均一かつ微細になる。なお、ストリップキャスト法によって得られる急冷凝固合金を解砕して急冷合金を作製してもよい。
図1は、本実施形態で使用されるストリップキャスト装置100の構成例を模式的に示す図である。図示される装置100は、不図示のモータによって所定の周速度で回転する冷却ロール10と、傾動可能に支持された坩堝20とを備えている。冷却ロール10は、好ましくは熱伝導性に優れた銅製のチルロールである。冷却ロールとして銅製ロールを用いることが好ましい。銅製ロールとは、熱伝導性に優れた銅を主成分とする冷却ロールのことである。坩堝20には、原料合金を溶融するための高周波コイル22が取り付けられている。坩堝20の内部に投入された固体の原料合金は、高周波コイル22を流れる高周波電流が引き起こす誘導加熱によって昇温し、溶融する。溶融した原料合金の溶湯24は、坩堝20の内部で所定の温度で保持される。
本実施形態では、原料合金の溶湯(合金溶湯)24の温度を、従来における温度(典型的には1450℃)よりも充分に高い1520℃以上1650℃以下の範囲内に調整する。そして、その温度の合金溶湯24を、坩堝20から冷却ロール10に供給する。図1の例では、合金溶湯24がタンディッシュ30を介して冷却ロール10に供給される。溶湯の温度は、坩堝内(坩堝内の底面近くを測定することが好ましい)における温度である。なお、合金溶湯24の温度は、例えばB熱電対によって誤差±0.005℃以内の正確度で測定され得る。回転する冷却ロール10の表面に接触した合金溶湯24は、急速に抜熱され、冷却ロール10の回転周速度方向に沿って延びる薄帯状に凝固して急冷合金40が作製される。単位時間に冷却ロール10に供給する合金溶湯24の量(供給レート)、および、冷却ロール10の回転周速度を調整することにより、薄帯状の急冷合金40の厚さを調整することができる。急冷合金40の冷却速度は、急冷合金40の厚さに応じて異なると言えるため、急冷合金40の厚さは、冷却速度の指標として重要な要素である。本実施形態では、厚さ0.4mm以下の急冷合金40を作製する。
本開示の実施形態では、合金溶湯24の温度を1520℃以上1650℃以下に設定し、かつ、急冷合金40の厚さが0.4mm以下になるようにストリップキャスト条件を制御することにより、α−FeおよびR17相の生成が抑制されて高いHkが得られることがわかった。このような効果を顕著に達成するという観点などから、合金溶湯24の温度は、1550℃以上1600℃以下の温度であることが望ましい。
ある好ましい実施形態では、急冷合金を作製する工程において、冷却ロールに単位時間に供給する溶湯の量、および、冷却ロールの回転周速度を調整して、厚さ0.15mm以上0.35mm以下の急冷合金を作製する。このような厚さ範囲の急冷合金を形成する場合、冷却速度が高くなるため、R17相の生成がさらに抑制される。
なお、本開示の急冷合金における厚さとは、急冷合金(ストリップキャスト法により作製した鋳片)を任意に100枚抜き取り、その厚さ方向を測定した平均値である。
ある好ましい実施形態では、急冷合金を作製する工程において、直径が200〜400mmの範囲にある銅製ロールを冷却ロールとして用いる。そして、冷却ロールに単位時間に供給する溶湯の量を50〜250g/秒の範囲内にし、冷却ロールの回転周速度を500〜2000mm/秒の範囲内にする。
こうして急冷合金を得た後、この急冷合金から合金粉末を作製する工程と、合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、焼結体に熱処理を施す熱処理工程を、順次、実行する。以下、これらの工程を説明する。
2.合金粉末を作製する工程
次に、原料合金を例えば、水素粉砕等によって粗粉砕し、平均粒度が1.0mm以下の粗粉砕粉末を準備する。次に、粗粉砕粉末を不活性ガス中でジェットミル等により微粉砕し、例えば粒径D50が3〜5μmの微粉砕粉末(原料合金粉末)を得る。ジェットミル粉砕前の粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として既知の潤滑剤を添加してもよい。
3.成形工程
得られた原料合金粉末を用いて磁界中成形を行い、成形体を得る。磁界中成形は、金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入し、磁界を印加しながら成形する乾式成形法、金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながら成形する湿式成形法を含む既知の任意の磁界中成形方法を用いてよい。
4.焼結工程
成形体を焼結することにより焼結体(焼結磁石)を得る。成形体の焼結は既知の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中または不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
5.熱処理工程
得られた焼結磁石に対し、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などは既知の条件を用いることができる。例えば、比較的低い温度(400℃以上600℃以下)のみでの熱処理(一段熱処理)をしてもよく、あるいは比較的高い温度(700℃以上焼結温度以下(例えば1050℃以下))で熱処理を行った後、比較的低い温度(400℃以上600℃以下)で熱処理(二段熱処理)をしてもよい。好ましい条件は、730℃以上1020℃以下で5分から500分程度の熱処理を施し、冷却後(室温まで冷却後、または440℃以上550℃以下まで冷却後)、さらに440℃以上550℃以下で5分から500分程度熱処理をすることが挙げられる。熱処理雰囲気は、真空雰囲気あるいは不活性ガス(ヘリウムやアルゴンなど)で行うことが好ましい。
最終的な製品形状にするなどの目的で、得られた焼結磁石に研削などの機械加工を施してもよい。その場合、熱処理は機械加工前でも機械加工後でもよい。さらに、得られた焼結磁石に、表面処理を施してもよい。表面処理は、既知の表面処理であってもよく、例えばAl蒸着や電気Niめっきや樹脂塗料などの表面処理を行うことができる。
本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はそれらに限定されるものではない。
(急冷合金を作製する工程)
R−T−B系焼結磁石の組成がおよそ表1のNo.1〜No.23の組成になるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により鋳造して、急冷合金を作製した。急冷合金を作製する工程は、図1に示すストリップキャスト装置100を用いた。なお、ストリップキャスト装置100における冷却ロール10は、直径240mmの銅製であり、坩堝20の湯口幅は40mmである。また、この時、表2に示すA〜Fの作製条件にて急冷合金を作製した。原料合金の溶湯温度、溶湯の供給速度、ロール周速度を表2に示す。なお、AおよびCの条件は、No.1〜No23のすべてについて、急冷合金を製造する条件に使用し、B及D〜Fの条件は、No.12について、急冷合金を製造する条件に使用した。また、A〜Fの条件で作製した急冷合金の厚さをそれぞれ測定(No.1〜No.23の組成を有する急冷合金をそれぞれ任意に100枚抜き取りその平均厚さを測定)した結果を表2に示す。なお、表2に示すように急冷合金の厚さは、A〜Fの条件によって変化する場合があるものの、R−T−B系焼結磁石の組成(No.1〜No.23)間では差がほとんど見られなかったため、A〜Fの条件ごとに急冷合金の厚さを記載している。また、原料合金の溶湯温度は、坩堝内の底面近くをB熱電対により測定した。
(前記合金から合金粉末を作製する工程)
得られた急冷合金に水素加圧雰囲気で水素脆化させた後、550Cまで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、粗粉砕粉100質量%に対して、潤滑剤として0.04質量%のステアリン酸亜鉛を添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粒径D50(メジアン径)が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。
(成形体を成形して成形体を得る成形工程)
得られた合金粉末を分散媒と混合しスラリーを作製した。溶媒にはノルマルドデカンを用い、潤滑剤としてカプリル酸メチルを混合した。スラリーの濃度は合金粉末70質量%、分散媒30質量%とし、潤滑剤は合金粉末100質量%に対して0.16質量%とした。前記スラリーを磁界中で成形して成形体を得た。成形時の磁界は0.8MA/mの静磁界で、加圧力は5MPaとした。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
(成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程)
得られた成形体を、真空中、1000℃以上1050℃以下(サンプル毎に焼結による緻密化が十分起こる温度を選定)で4時間焼結した後急冷し焼結体を得た。得られた焼結体の密度は7.5Mg/m以上であった。
(焼結体に熱処理を施す熱処理工程)
得られた焼結体に対し真空中、800℃で2時間保持した後室温まで急冷し、次いで真空中で430℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施しR−T−B系焼結磁石を得た。
得られたR−T−B系焼結磁石の成分を表1に示す。なお、表1における各成分(O、NおよびC以外)は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素)含有量は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素)含有量は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素)含有量は、燃焼−赤外線吸収法によるガス分析装置を使用して測定した。
式(1)の充足性を表1に示した。ここで「○」は式(1)を満たしていることを意味し、「×」は式(1)を満たしていないことを意味している。
熱処理後のR−T−B系焼結磁石(No.1〜No.23)にそれぞれ機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−Hトレーサによって室温下(20℃±10℃)で各試料の磁気特性(B、HcJ、H、H/HcJ)を測定した。測定結果を表3および表4に示す。なお、Hk/HcJ(角形比)において、HはI(磁化の大きさ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、Iが0.9×J(Jは残留磁化、J=B)の値になる位置のHの値である。また、同じR−T−B系焼結磁石の組成(同じNo)におけるA条件とC条件のHkの差分を表3に示す。
Figure 2020155763
Figure 2020155763
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表3に示すように、本開示の条件を満たしているNo.1〜12のC条件(太線と下線で示した値)は、高いHcJと高いHkを有するR−T−B系焼結磁石が得られている。これに対し、同じ磁石組成(No.1〜12)であっても、原料合金の溶湯温度が本開示の範囲外であるA条件では、Hが低下しており、そのためH/HcJも低下している。表3に示すように本開示の条件にすることにより、Hの差分が80kA/m以上とHkが大幅に向上している。また、本開示の磁石組成から外れているNo.13〜23では、いずれも(AおよびCの条件)高いHcJが得られていない。また、表3のHk差分に示すように、No.13〜23は条件Aと条件Cとを比べてもほとんどHkは向上していない。このことは、本開示のR−T−B系焼結磁石の組成範囲においてHが向上することを示している。
また、表3および表4に示すように、原料合金の溶湯温度は、1550℃(条件C)〜1640℃(条件E)が好ましく、もっとも好ましくは1550℃(条件C)〜1600℃(条件D)である。さらに、表4に示すように本開示の原料合金の溶湯温度の範囲内であっても、急冷合金の厚さがはずれる(条件F)とHcJおよびHが大きく低下している。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、高温下においても安定した動作が実現するR−T−B系焼結磁石を提供する。このようなR−T−B系焼結磁石は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車(EV、HV、PHV)用モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品など多種多様な用途に利用される。
10・・・冷却ロール
20・・・坩堝
22・・・高周波コイル
24・・・原料合金の溶湯
30・・・タンディシュ
40・・・急冷合金

Claims (4)

  1. R:28.5質量%以上33.0質量%以下(Rは、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
    B:0.85質量%以上0.91質量%以下、
    Ga:0.2質量%以上1.0質量%以下、
    Cu:0.05質量%以上0.50質量%以下、
    T:61.5質量%以上70.0質量%以下(TはFe又はFeとCoであり、Tの90質量%以上がFeである)、を含み、
    下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
    14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
    ([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
    原料合金の溶湯を1520℃以上1650℃以下の温度で、回転する冷却ロールに供給して急冷し、厚さ0.4mm以下の急冷合金を作製する工程と、
    前記合金から合金粉末を作製する工程と、
    前記合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
    前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
    を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記急冷合金を作製する工程において、前記冷却ロールに単位時間に供給する前記溶湯の量、および、前記冷却ロールの回転周速度を調整して、厚さ0.15mm以上0.35mm以下の急冷合金を作製する、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記原料合金の溶湯を1550℃以上1600℃以下の温度で回転する冷却ロールに供給して急冷する、請求項1または2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記急冷合金を作製する工程において、直径が200〜400mmの範囲にある銅製ロールを前記冷却ロールとして用い、前記冷却ロールに単位時間に供給する前記溶湯の量を50〜250g/秒の範囲内にし、前記冷却ロールの回転周速度を500〜2000mm/秒の範囲内にする、請求項2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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