以下、本開示に係る流路、測定用テープ、及び測定装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
図14は、アミラーゼの吸光度の変化量とアミラーゼの濃度との対応関係の特定範囲でのばらつきを説明するための図である。グラフg1は、測定されたアミラーゼの吸光度の経時変化を示す。グラフg1では、測定対象の物質(例えばアミラーゼ)毎に、時間経過とともに吸光度が大きくなる様子が示されている。つまり、時間経過とともにアミラーゼの吸光度の変化量が大きくなることを示している。グラフg2は、測定された吸光度の変化量と、実際のアミラーゼの濃度との関係を示す。グラフg2では、アミラーゼの濃度(アミラーゼ活性)の範囲が0〜5000U/Lで示されている。グラフg2では、アミラーゼが採取された被検体におけるビリルビン値の影響を受けて、アミラーゼの吸光度の変化量とアミラーゼの濃度との対応関係にばらつきが生じている(グラフg2内の○印参照)。なお、実施形態では、アミラーゼの濃度とアミラーゼ活性を特に区別なく用いているが、アミラーゼの濃度とアミラーゼ活性とは1対1に対応するものである。
図15は、アミラーゼの吸光度の変化量とアミラーゼの濃度との対応関係のばらつきを示す図である。図15では、アミラーゼの濃度の範囲が0〜70000U/Lの広範囲で示されている。
図14、図15を参照すると、アミラーゼの濃度が0〜2000U/Lの範囲では、アミラーゼの吸光度の変化量とアミラーゼの濃度との間に高い相関関係があり、アミラーゼの濃度が2000U/Lより大きくなると、アミラーゼの吸光度の変化量とアミラーゼの濃度との相関関係が低くなることが理解できる。つまり、アミラーゼの濃度が2000U/Lより大きい場合には、アミラーゼの吸光度の変化量は上限に達しており、この吸光度の変化量に対するアミラーゼの濃度の測定精度が大きく低下することが理解できる。
以下の実施形態では、体液に含まれる測定対象の物質の測定範囲を拡大して、測定対象の物質を高精度に測定できる測定装置、流路、測定用テープ、及び測定方法について説明する。
以下の実施形態では、ドレーン排液の管理システムの一例として、ドレーン排液管理システムを示す。ドレーン排液管理システムは、患者の身体に接続されたドレナージ用のドレーンチューブを流れるドレーン排液に含まれる管理対象成分の特性を測定し、ドレーン排液の特性について種々の観察・評価を行う。
ドレーン排液は、術後に体外に排出される、体内に溜まった血液や滲出液等を含む液体である。消化器系の手術が行われた場合、消化酵素であるアミラーゼや、胆汁色素であるビリルビンが患部から出ることがある。これらの成分は、臓器を傷付けたり、血管を溶解させたりするため、出血が起こり易く、合併症のリスクとなり得る。したがって、ドレーン排液に含まれる管理対象成分の特性を測定することは、医療従事者が次の医療行為を検討する上で、大きな指標となる。ドレーン排液中の管理対象成分として、例えば、アミラーゼ、ビリルビン、血液の特性を測定することが考えられる。
(ドレーン排液管理システムの構成)
図1は実施の形態におけるドレーン排液管理システム5の概略構成を示す図である。ドレーン排液管理システム5は、非接触型のドレーン排液センサ10と、ドレーン排液モニタ20と、ドレーンチューブ30と、ドレーンバッグ40と、を備える。ドレーン排液センサ10は、透明なドレーンチューブ30を流れるドレーン排液中の管理対象成分(例えば、血液、アミラーゼ、ビリルビン)の特性を測定するために使用される。つまり、ドレーン排液センサ10は、測定装置の一例である。管理対象成分として、アミラーゼは、すい臓や唾液腺から分泌される消化酵素である。ビリルビンは、胆汁中に含まれる黄色の色素成分である。血液は、臓器や血管から出血したものである。
ドレーン排液モニタ20は、無線通信や有線通信によってドレーン排液センサ10と接続され、ドレーン排液センサ10による測定結果の記録・表示等を行う。ドレーン排液モニタ20の前面には、各種の情報を表示するディスプレイ21が配置される。
ドレーンチューブ30は、患者の身体から出るドレーン排液を流通し、ドレーンバッグ40に流す。ドレーンチューブ30は、ユーザが目視でドレーン排液を観察できるように、透光性を有する樹脂等の素材で成形される。ドレーンチューブ30の一端は、患者の身体に接続(挿入)され、ドレーンチューブ30の他端は、ドレーンバッグ40に接続される。ドレーンバッグ40は、ドレーンチューブ30から流入したドレーン排液を貯留する。
なお、ドレーンバッグ40に貯留しているドレーン排液は、ドレナージの開始から測定時点までに流入した排出物を含む。したがって、ドレーン排液を用いて、時間の経過と共に変動する、ドレーン排液中の管理対象成分の特性を時間と対応付けて測定することは困難である。
このため、ドレーン排液管理システム5では、患者の身体とドレーンバッグ40との間に接続されたドレーンチューブ30を流れるドレーン排液を用いて、ドレーン排液中の管理対象成分の特性を測定することにした。この方法により、ドレーン排液管理システム5は、患者に対して非侵襲で測定が可能となる。
図2Aはドレーン排液センサ10の内部構成を示す図である。ドレーン排液センサ10は、例えば箱形の筐体10zを有し、筐体10zの内部に、排液サンプリング機構110、及び血球分離・酵素反応機構150を収容する。
排液サンプリング機構110では、筐体10zの内部を貫通するように、メインチューブ130(主流路の一例)が取り付けられる。図2Aでは左右方向にメインチューブ130が設けられている。メインチューブ130の両端は、それぞれ筐体10zの両側面に形成された貫通孔10yから突出し、ドレーンチューブ30の両端に接続されてよい。なお、メインチューブ130が、ドレーンチューブ30の一部であってもよい。
メインチューブ130の略中央には、メインチューブ130から分岐するサブチューブ133(副流路の一例)が接続される。ここで、サブチューブ133の一端が接続されたメインチューブ130の位置を分岐点とも称する。サブチューブ133は、メインチューブ130の管内と連通可能な細長い流路133zを有する。分岐点は、サブチューブ133と流路133zとの接続位置であってよい。サブチューブ133は、弾性を有する材料(ゴム、樹脂等)で成形されてよく、弾性回復する材料でよい。サブチューブ133は、弾性変形する範囲で変形され、塑性変形する範囲で変形されない。細長い流路133zは、通常閉じている。流路133zが通常閉じていることで、メインチューブ130内のドレーン排液Lqがサブチューブ133の流路133zに流入することなく、また、サブチューブ133の流路133z内の液体がメインチューブ130に逆流することもない。また、サブチューブ133のメインチューブ130側とは反対側(図2Aの下側)から気体が流入することもない。
サブチューブ133は、メインチューブ130から見ると、メインチューブ130の途中に突出して形成された突出部とも言える。この突出部に、切り込みが流路133zとして形成されているとも言える。
排液サンプリング機構110は、メインチューブ130及びサブチューブ133の他、一対の制限部材113,114、及び第1押圧部材115を有する。
一対の制限部材113,114は、それぞれ先端が湾曲して形成された仕切板113B,114B、及び加圧ユニット113A,114Aを有する。加圧ユニット113A,114Aによって駆動された仕切板113B,114Bは、それぞれメインチューブ130の分岐点を挟む両側の箇所(例えば2点)を押えるように移動する。一対の制限部材113,114は、サブチューブ133の分岐点を挟む、メインチューブ130の両側の箇所を押圧自在である。一対の制限部材113,114が略同時にメインチューブ130の両側の箇所を押圧することで、メインチューブ130にドレーン排液Lqが制限され、例えば流れなくなる。そのため、分岐点の近傍に位置する、メインチューブ130の管中央部130cでは、ドレーン排液Lqが滞留する。管中央部130cは、例えば、制限部材113,114により押圧される2点の間の領域でよい。
第1押圧部材115は、メインチューブ130の長手方向に沿って面一な平板を有する押圧板115B、及び加圧ユニット115Aを有する。加圧ユニット115Aによって駆動された押圧板115Bがメインチューブ130を押圧するように移動する。第1押圧部材115がメインチューブ130を押圧することによって、一対の制限部材113,114で塞がれた、メインチューブ130の管中央部130cに滞留するドレーン排液Lqの圧力が上昇する。
管中央部130cのドレーン排液Lqの圧力が上昇すると、サブチューブ133の流路133zが開口し、管中央部130cに滞留していたドレーン排液Lqがサブチューブ133の流路133zに流入する。サブチューブ133の流路133zに流入した排液は、流路133zの反対側の端面から押し出されるように流出する。流路133zの反対側の端面から流出したドレーン排液Lqは、サンプリング液sq(図7A参照)として、サブチューブ133と対向するように配置された測定用テープ200の流路210上に、滴下する。
加圧ユニット113A,114A,115A(後述)は、センサユニット180からの駆動信号に従い、それぞれ仕切板113B,114B、押圧板115Bを進退方向に移動させる。例えば、加圧ユニットがモータギア機構で構成される場合、モータを駆動することによって、仕切板113B,114B、押圧板115Bはそれぞれ直進移動する。なお、加圧ユニットは、モータギア機構に限らず、電磁スライド機構、圧電素子、油圧スライド機構等で構成されてもよい。
血球分離・酵素反応機構150は、ドレーン排液Lqに含まれる血球を分離し、酵素と試薬を反応させ、酵素の吸光度を光学的に測定する。血球分離・酵素反応機構150は、酵素以外の管理対象成分(例えば血球、ビリルビン)の吸光度を光学的に測定してよい。血球分離・酵素反応機構150は、テープ巻取り送り機構170及びセンサユニット180を有する。
テープ巻取り送り機構170は、サンプリング液sqが滴下される測定用テープ200、未使用の測定用テープ200が巻かれた送りリール171、及び反応後の測定用テープ200が巻き取られる巻取りリール172を有する。また、テープ巻取り送り機構170は、巻取りリール172を駆動するモータ175、及び、測定用テープ200の移動を案内するローラ177,176を有する。巻取りリール172は、モータ175の駆動によって回転し、反応後の測定用テープ200を巻き取る。送りリール171は、測定用テープ200の移動によって連れ回りする。
なお、ここでは、巻取りリール172が測定用テープを巻き取るように回転したが、巻取りリール172及び送りリール171のそれぞれをモータで駆動し、測定用テープ200の巻取りと送りを同時に行うようにしてもよく、測定用テープ200の移動をより安定化させることができる。また、送りリール171だけをモータで駆動し、巻取りリール172は連れ回りするようにしてもよい。
センサユニット180は、測定用テープ200を挟んで、排液サンプリング機構110と対向するように、配置される。センサユニット180は、テープ巻取り送り機構170によって送り出された測定用テープ200に浸透したサンプリング液sq2(図8C参照)に含まれる酵素の吸光度を光学的に測定する。この測定では、センサユニット180は、所定波長(例えば405nmの波長)をピーク値とする光を測定光として、酵素を多く含むサンプリング液sq2が浸透した測定用テープ200に向けて投射する。センサユニット180は、サンプリング液sq2中の酵素によって吸光されず、散乱した光を受光し、散乱光の受光量を基に、サンプリング液sq2に含まれる酵素の吸光度を測定してよい。
図2Bはセンサユニット180の回路構成を示すブロック図である。センサユニット180は、回路基板188が内部に敷設された筐体180zを有する。センサユニット180は、CPU(Central Processing Unit)181、LED(Light Emitting Diode)182、フォトセンサ(PD)183、無線チップ184、及びバッテリ185を有する。回路基板188には、CPU181、フォトセンサ183、及びLED182が搭載される。
CPU181は、センサユニット180内の各部の動作を制御する。CPU181は、
フォトセンサ183から得られる受光量を基に、吸光度を算出する等、各種の演算処理を行ってよい。CPU181は、加圧ユニット駆動部186及びモータ駆動部187としての機能を含む。加圧ユニット駆動部186は、加圧ユニット113A,114A、115Aに対し、それぞれ駆動信号を出力する。モータ駆動部187は、巻取りリール172を回転させるモータ175に対し、駆動信号を出力する。CPU181は、計時機能を有し、サンプリング時の時刻や測定時の時刻を計測してよい。
CPU181は、吸光度等の測定データを生成する。測定データは、管理対象成分(例えば血液、アミラーゼ、ビリルビン)に関するデータである。測定データは、測定データが計測された時刻と対応付けられて管理されてよい。測定データは、例えば、管理対象成分の吸光度や吸光度の変化量の情報を含んでよい。測定データは、単位時間当たりの管理対象成分の排出量に関する情報を含んでよい。測定データは、管理対象成分の総排出量に関する情報を含んでよい。なお、管理対象成分の排出量は、メインチューブ130を流れる管理対象成分の排出量であってもよいし、サブチューブ133を介してサンプリングされた管理対象成分の排出量(サンプリング量)であってよい。
LED182は、所定波長(例えば405nmの波長)をピーク値とする光を測定光として出射する。フォトセンサ183は、アミラーゼ等の管理対象成分に吸光されずに散乱した光を受光し、受光量に応じた信号を出力する。
また、LED182は、可視光を出射可能なLEDでもよいし、可視光及び非可視光(例えば赤外光、紫外光)を出射可能なLEDでもよい。LED182は、複数のLEDを含んでもよい。例えば、LED182は、可視光を出射するLED182Aと赤外光を出射するLED182Bと、を有してもよい(図7A参照)。
無線チップ184は、ドレーン排液モニタ20と無線通信を行い、センサユニット180で測定された各種データをドレーン排液モニタ20に送信する。無線通信には、近距離無線通信(Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等))や無線LAN(Loacl Area Network)等の通信を用いることができる。バッテリ185は、センサユニット180の各部に電力を供給する。バッテリ185は、充電可能なリチウムイオン電池等の二次電池でもよいし、アルカリ電池等の一次電池であってもよい。
図3はドレーンバッグ40の形状を示す図である。ドレーンバッグ40は、ドレーン排液を貯留する袋である。ドレーンバッグ40には、ドレーン排液が流れる流入チューブ41が取り付けられる。流入チューブ41の先端は、ドレーンチューブ30の一端に接続される。なお、流入チューブ41は、ドレーンチューブ30の一部でもよい。ドレーンバッグ40には、ドレーンチューブ30から流出したドレーン排液が流入し貯留する。また、ドレーンバッグ40の内部は陰圧に保持されるので、流入チューブ41の先端がドレーンチューブ30の一端に接続されても、ドレーンバッグ40内の貯留したドレーン排液はドレーンチューブ30に逆流しない。また、陰圧に保持されることで、ドレーン排液を排出する患者の感染予防にもなる。
ここで、ドレーンチューブ30にはメインチューブ130が接続され、メインチューブ130からはサブチューブ133が分岐する。サブチューブ133には、ドレーン排液Lqをサンプリングして抽出するために、流路133zが形成される。但し、サブチューブ133は、ドレーン排液Lqが通過しない際には、基本的に流路133zが閉鎖される。そのため、サブチューブ133は、流路133zから空気等がメインチューブ130側(ドレーンチューブ30側)へ進入することを抑制できる。したがって、ドレーン排液センサ10は、メインチューブ130及びサブチューブ133を備えても、サブチューブ133から空気等が進入することを抑制し、ドレーンバッグ40の陰圧を維持できる。よって、ドレーンバッグ40内の貯留したドレーン排液が、ドレーンチューブ30に逆流することを抑制できる。なお、ドレーン排液センサ10、ドレーンチューブ30、及びドレーンバッグ40が接続された状態で1週間経過した後であっても、ドレーンバッグ40においてほとんど空気等の気体が混入していないことが確認された。
図4はドレーン排液モニタ20の外観を示す一部破断斜視図である。ドレーン排液モニタ20は、箱形の筐体20zを有する。筐体20zの前面には、ディスプレイ21が配置される。ディスプレイ21には、測定結果を経時的に表すグラフ22、患者の名前などの種々の説明文23、測定結果の現在の値を表すメータ24、及び、患者の状態(正常・異常)を通知するための状態マーカ25等が表示される。
ドレーン排液モニタ20には、ドレーン排液モニタ20の各種制御を行うCPU26、ドレーン排液センサ10の測定データの記録等を行うメモリ27、及び、ドレーン排液センサ10の無線チップ184と無線通信を行う無線チップ28が設けられている。
また、ドレーン排液モニタ20には内部時計(図示省略)が内蔵されており、ドレーン排液センサ10(具体的にはセンサユニット180)によって測定された測定データと、測定データが計測された時刻と、が対応付けられてメモリ27に記録される。測定データは、単位時間当たりの管理対象成分の排出量に関する情報を含んでよい。ドレーン排液Lqの単位時間当たりの管理対象成分の排出量に関する情報は、例えば、単位時間当たりの、管理対象成分(例えば、アミラーゼ、ビリルビン、血液)の吸光度や吸光度の変化量の情報を含んでよい。グラフ22には、メモリ27に記録されている時系列データに基づき、測定結果の経時的変化が表示される。また、測定データは、管理対象成分の総排出量に関する情報であってもよい。
CPU26は、メモリ27に記録された時系列データの一部または全部、及び、グラフ22の表示結果の少なくとも一方を、患者毎の電子カルテに登録(保持)してよい。電子カルテは、メモリ27に保存されてもよいし、ドレーン排液モニタ20とは別のサーバ(図示省略)に保存されてもよい。電子カルテがサーバに保存されている場合、ドレーン排液モニタ20は、無線チップ28によりサーバと相互通信することにより、電子カルテへの登録および電子カルテの閲覧が可能であるように構成され得る。
(排液サンプリング機構の動作)
図5は排液サンプリング機構110の動作を説明する図である。メインチューブ130が押圧されていない無圧状態(状態A)の場合、メインチューブ130の管内には、液体(例えば、ドレーン排液、蒸留水)が流れる。
始めに、制限部材113,114は、略同時にメインチューブ130を押圧し、液体の流れを制限する(状態B)。分岐点を挟むメインチューブ130の両側の管内、つまり管中央部130cは、仕切板113B,114Bによって塞がれる(状態B参照)。これにより、管中央部130cの内外における液体の流通が制限される。なお、完全に塞がれることなく、液体が僅かに流れてもよい。そして、管中央部130cには、制限部材113,114の間の一定量の液体が滞留する。状態Bでは、サブチューブ133の流路133zは閉じており、流路133zは液体を通過させない。
制限部材113,114が略同時にメインチューブ130を押圧し、メインチューブ130の管中央部130cに液体が滞留した状態で、第1押圧部材115が、メインチューブ130の管中央部130cを押圧する(状態C)。管中央部130cが押圧されると、メインチューブ130の管中央部130cに滞留する液体の圧力が上昇する。この液体の圧力の上昇によって、分岐点でメインチューブ130に接続されたサブチューブ133の流路133zが広がる。メインチューブ130の管中央部130cに滞留していた液体は、サブチューブ133の流路133zに流入し、サブチューブ133の反対側の端面から流れ出る。ほぼ全ての液体が流れ出ると、メインチューブ130の管中央部130cは、凹んだ状態になる。これにより、制限部材113,114の間において滞留していた一定量の液体が、サブチューブ133を介して送出され得る。したがって、状態Cでは、サブチューブ133の流路133zは開き、流路133zは液体を通過させる。
第1押圧部材115がメインチューブ130の管中央部130cを押圧した状態で、制限部材113,114は、押圧を停止し、メインチューブ130の分岐点を挟む、両側の箇所(2箇所)を除圧する(状態D)。さらに、第1押圧部材115が管中央部130cの押圧を解除すると、メインチューブ130は、状態Aに戻り、無圧状態となる。なお、状態Dに続いて状態Aとなることで、管中央部130c内の圧力の低下により、サブチューブ133からメインチューブ130へ液体が逆流することを抑制できる。
また、状態Aの次に更に状態Bとなることで、メインチューブ130を流通していた新たな一定量の液体が滞留し、確保され得る。
状態A〜状態Dを繰り返すことで、排液サンプリング動作は、連続動作可能であり、一定量の液体を抽出可能である。なお、排液サンプリング機構110による排液サンプリング動作は、ドレーン排液Lqに限らず、種々な液体に対しても、液体サンプリング機構による液体サンプリング動作として適用可能である。
図6はドレーン排液センサ10による排液サンプリング動作手順を示すフローチャートである。CPU181は、サンプリング時期になるまで待つ(S1)。サンプリング時期は、例えば1時間に1回、適当な時刻に設定される。サンプリング時期になると、CPU181は、加圧ユニット113A,114Aに駆動信号を出力し、制限部材113,114による押圧を開始する(S2)。制限部材113,114によって、分岐点を挟むメインチューブ130の両側の箇所が押圧されると、メインチューブ130の管中央部130cは、仕切板113B,114Bによって塞がれる。メインチューブ130の管中央部130cには、液体が滞留する。
制限部材113,114による押圧を維持した状態で、CPU181は、加圧ユニット115Aに駆動信号を出力し、第1押圧部材115による押圧を開始する(S3)。メインチューブ130の管中央部130cが押圧されると、管中央部130cに滞留する液体の圧力が上昇する。この液体の圧力の上昇によって、サブチューブ133の流路133zが広がる。メインチューブ130の管中央部130cに滞留していた液体は、サブチューブ133の流路133zを通り、流路133zの反対側の端面から流出する。ほぼ全ての液体が流出すると、メインチューブ130の管中央部130cは、凹んだ状態になる。
CPU181は、加圧ユニット115Aに駆動信号を出力し、第1押圧部材115による押圧動作を維持した状態で、加圧ユニット113A,114Aへの駆動信号を停止し、制限部材113,114による除圧を開始する(S4)。制限部材113,114による除圧が行われても、メインチューブ130の管中央部130cが凹んだ状態は、維持される。
CPU181は、加圧ユニット115Aへの駆動信号を停止し、第1押圧部材115による除圧を開始する(S5)。第1押圧部材115による除圧動作が行われると、無圧状態に戻り、メインチューブ130の管中央部130cを介して液体が流れる。液体が流れる方向は、患者側からドレーンバッグ40に向かう方向である。
このような排液サンプリングの動作手順によれば、ドレーン排液管理システム5は、状態A〜状態Dを制御し、容易に状態A〜状態Dの状態を遷移させることができる。これにより、ドレーン排液管理システム5は、定量的且つ連続的にドレーン排液をサンプリングできる。
(サンプリング液の測定)
次に、排液サンプリング機構110によってサンプリングされたドレーン排液すなわちサンプリング液sqに含まれる酵素の量を測定する方法について説明する。
血球分離・酵素反応機構150は、前述したように、ドレーン排液に含まれる血球を分離し、酵素と試薬を反応させ、酵素の量を光学的に測定する。血球分離・酵素反応機構150は、測定用テープ200に含まれる流路210(フローセル)(図7A参照)により、排液サンプリング機構110によってサンプリングされたサンプリング液sqを受け取る。流路210は、受け取ったサンプリング液sqの少なくとも一部を送液し、測定光を用いた液の特性の測定を支援する。
(流路の構造)
図7Aは、測定用テープ200に形成される流路210の一例を示す分解斜視図である。図7Bは、流路210における粘着層240の一例を示す平面図である。図7Cは、流路210の一例を示す断面図である。流路210は、サンプリング液sqを導入し、サンプリング液sqの少なくとも一部を送液する。送液されたサンプリング液sqには、測定光が照射され、サンプリング液sqの特性が測定される。
流路210は、多孔質シート220と、親和性シート230A,230Bと、粘着層240と、を有する。多孔質シート220及び親和性シート230Aは、隣接して配置されてよく、流路210の上面に位置してよい。親和性シート230Bは、流路210の底面に位置してよく、基材となってよい。粘着層240に含まれる粘着剤241は、流路210の側面に位置してよい。
多孔質シート220は、例えばフッ素多孔膜でよく、フッ素以外の材料で形成された多孔膜であってもよい。多孔質シート220は、体液に対して非親和性を有してよい。多孔質シート220は、複数の微細孔221を有する。微細孔221は、流路210内の圧力を大気圧に保つための貫通孔となる。よって、流路210が排気口を備えなくても流路210内が密閉状態とならず、多孔質シート220の微細孔221によって通気が可能となる。多孔質シート220は、測定光(例えば、アミラーゼやビリルビンを測定するための光、405nmの波長がピーク値となる光)に対して透光性を有してよい。
親和性シート230Aは、サンプリング液sqに対して親和性を有する。親和性シート230Aは、親和性PET(ポリエチレンテレフタレート)シートでよく、親和性基材でよい。親和性シート230Aは、測定光に対して透光性を有してよい。親和性シート230Aは、例えば親和性フィルムでよい。また、親和性シート230Aは、貫通孔222を有してよい。貫通孔222には、例えば排液サンプリング機構110からのサンプリング液sqが導入される。
親和性シート230Bは、サンプリング液sqに対して親和性を有する。親和性シート230Bは、親和性PETシートでよく、親和性基材でよい。親和性シート230Bは、測定光に対して透光性を有してよい。親和性シート230Bには、粘着層240と対向する面における少なくとも一部の位置に、第1の試薬231が配置されてよい。
粘着層240は、多孔質シート220及び親和性シート230Aと親和性シート230Bとの間に配置される。粘着層240には、多孔質シート220及び親和性シート230Aと親和性シート230Bとを粘着するための粘着剤241が含まれる。粘着層240における粘着剤241が不在の箇所には、空間242,243,245が画成される。
空間242は、親和性シート230Aの貫通孔222と連通する。空間242には、血球分離膜244が配置される。したがって、サンプリング液sqが滴下されると、空間242に配置された血球分離膜244に到達する。血球分離膜244は、貫通孔222に導入されたサンプリング液sqを受け取り、サンプリング液sqの一部を吸着する。血球分離膜244の吸着力は、管理対象成分毎(例えば、血球、アミラーゼ、ビリルビン)に異なってよい。
空間243には、多孔膜246が配置される。多孔膜246は、サンプリング液sqに対して親和性を有する。多孔膜246は、例えば不織布であり、その他の多孔膜であってもよい。多孔膜246は、繊維を有してよい。多孔膜246の繊維には、第2の試薬247がコーティングされ、更に水溶性ポリマー248がコーティングされる(図7Cの多孔膜周辺の拡大部分参照)。例えば、多孔膜246に第2の試薬247を滴下して乾燥させ、更に水溶性ポリマー248を滴下して乾燥させる。これにより、多孔膜246近傍の構造は、多孔膜246の繊維の外側に第2の試薬247、その外側に水溶性ポリマー248がコーティングされた状態となる。水溶性ポリマー248は、溶解前は固体でよい。水溶性ポリマー248の種類や量は、測定対象の物質(例えばアミラーゼ、ビリルビン)に応じて調整されてよい。
空間242と空間243との間、つまり血球分離膜244と多孔膜246との間には、空間245が画成される。空間245は、空間242に配置された血球分離膜244と空間243に配置された多孔膜246とを繋ぎ、実際に液が移動する空間である。したがって、空間245は、実際に液が流れる流路210の内部である。
血球分離膜244によって吸着されなかったサンプリング液sq2は、空間245へ流出する。サンプリング液sq2は、親和性シート230A,230Bとの親和性に起因する力によって、空間245を経由して空間243に配置された多孔膜246へ送液される。親和性シート230A,230Bとの親和性に起因する力は、例えば、親和性シート230A,230Bの毛細管力や表面張力である。送液されたサンプリング液sq2は、多孔膜246に到達して浸透し、水溶性ポリマー248を溶解する。水溶性ポリマー248が溶解すると、第2の試薬247も溶解する。このようにしてサンプリング液sq2と水溶性ポリマー248と第2の試薬247とが混合し、混合液sq3が生成され、多孔膜246に貯留される。多孔膜246に貯留された混合液sq3は、親和性シート230Bに配置された第1の試薬231と反応してよい(図8D等参照)。
混合液sq3が貯留された多孔膜246には、センサユニット180のLED182(例えばLED182A,182B)から測定光が照射される。混合液sq3は、照射された測定光の少なくとも一部を散乱する。散乱された光(散乱光)は、フォトセンサ183により受光され得る。CPU181(図2A参照)は、フォトセンサ183により受光された光を基に、混合液sq3(例えばアミラーゼ)の特性(例えば吸光度の変化量)を測定する。
次に、空間245のサイズ(幅、すなわち送液方向に沿う長さ)について検討する。
空間245のサイズは、0より大きく、なるべく小さく(短く)することが好ましい。空間245が長い場合、大きな送液力が必要となり、好ましくない。空間245の幅は、例えば、100μm〜3000μm程度であり、好ましくは、500〜1500μm程度である。これにより、流路210は、送液量を一定にし易くなり、混合液sq3の測定結果のばらつきを低減できる。
次に、流路210の各層の部材の位置関係について説明する。
流路210は、最下層、中間層、最上層の3層構造を有する。最下層には、親和性シート230Bが配置される。中間層には、粘着層240が配置される。最上層には、多孔質シート220及び親和性シート230Aが配置される。粘着層240には、空間245及び多孔膜246が存在する。
空間245の上面は、送液方向に沿う全体が親和性シート230Aに対向する。したがって、空間245では、サンプリング液sq2は、親和性シート230Bの親和性に起因する力とともに、親和性シート230Aの親和性に起因する力を受けて送液可能である。また、流路210は、空間245の上面に多孔質シート220が位置しないことで、空間245に到達したサンプリング液sq2の少なくとも一部が多孔質シート220の微細孔221を介して外部に漏出することを抑制できる。
多孔膜246は、多孔質シート220の少なくとも一部と対向する。よって、空間245よりも送液方向の下流側に多孔質シート220の少なくとも一部が存在することとなる。この場合、流路210は、血球分離膜244から空間245を介して多孔膜246へ送液される場合でも、多孔質シート220を介して流路210内の気体が抜けることが可能である。よって、流路210は、空間245より下流側を大気圧に維持し、サンプリング液sq2の送液により下流側の圧力が上昇することを抑制でき、送液が阻害されることを抑制できる。図7C等では、多孔膜246の送液方向に沿う半分程の領域が、多孔質シート220に対向することを例示している。
次に、流路210における各部材の具体的な材料について説明する。
第1の試薬231は、例えば、ニットーボーメディカル株式会社製の「N−アッセイ L AMY G7 ニットーボー」の酵素試薬(R−1)でよい。酵素試薬(R−1)は、α−グルコシダーゼの成分を有する。第2の試薬247は、例えば、ニットーボーメディカル株式会社製の「N−アッセイ L AMY G7 ニットーボー」の基質試薬(R−2)でよい。基質試薬(R−2)は、4,6−エチリデン−4−ニトロフェニルマルトヘプタオシドの成分を有する。
水溶性ポリマー248は、住友精化株式会社製の「アクパーナAP50」、「PEO−1」、「HEC AL−15」、等でよい。水溶性ポリマー248として「HEC AL−15」を用いると、特に安定して混合液sq3を測定できる。これは、水溶性ポリマー248の溶解速度が高速であるためと考えられる。
多孔質シート220として、日東電工社製のPTFE多孔膜1033−N6Tが用いられてよい。
親和性シート230A,230Bとして、東レ株式会社製のルミラータイプS(例えばルミラータイプS10,S15,S105,S56)をスパッタでSiO2化したPETフィルムが用いられてよい。親和性シート230A,230Bとして、スリーエムジャパン株式会社製の親水性処理フィルム #9901P(界面活性剤を使用した親水化PETフィルム)が用いられてよい。いずれの親和性シート230A,230Bも、親水性(サンプリング液sqに対して親和性)を有する。流路210は、親和性シート230A,230Bの親和性により、サンプリング液sqに、血漿等の高タンパク、高粘度の液体が含まれても、送液可能となる。
多孔膜246として、GE社製のろ紙LF1が用いられてよい。
粘着剤241は、以下の粘着剤(1),(2),(3)のいずれかの特性を有してよい。
<粘着剤(1)>
材料:アクリル系粘着剤
厚み:0.2(mm)
粘着剤(1)を用いた場合、アクリル系粘着剤が疎水性(サンプリング液sqに対して非親和性)を有するので、流路210からサンプリング液sq2が漏出する液漏れが発生しない。また、粘着剤(1)の厚さが薄いため、サンプリング液sq2の送液速度が高速である。また、粘着剤(1)は、弾性率が比較的大きいために変形し難く、粘着剤を打ち抜く際に使用される刃に粘着剤が付着し難いので、ハンドリングが良好である。このハンドリングは、上面の多孔質シート220及び親和性シート230Aと底面の親和性シート230Bとの粘着性能に相当する。よって、ハンドリングが良好な場合、この粘着性能が高いことを示す。
<粘着剤(2)>
材料:アクリル系粘着剤
厚み:0.2mm
粘着剤(2)を用いた場合、アクリル系粘着剤が疎水性(サンプリング液sqに対して非親和性)を有するので、流路210からサンプリング液sq2が漏出する液漏れが発生しない。また、粘着剤(2)の厚さが薄いため、サンプリング液sq2の送液速度が高速である。また、粘着剤(2)は、弾性率が比較的小さいために変形し易く、粘着剤を打ち抜く際に使用される刃に粘着剤が付着し易いので、ハンドリングが粘着剤(1)よりもやや劣る。
<粘着剤(3)>
材料:アクリル系粘着剤
厚み:0.4mm
粘着剤(3)を用いた場合、アクリル系粘着剤が疎水性(サンプリング液sqに対して非親和性)を有するので、流路210からサンプリング液sq2が漏出する液漏れが発生しない。また、粘着剤(3)の厚さが粘着剤(1),(2)よりも厚いため、サンプリング液sq2の送液速度が粘着剤(1),(2)よりも低速である。また、粘着剤(3)の厚さが粘着剤(1),(2)よりも厚いため、粘着剤が潰れて流路210の内部が塞がれ得るため、ハンドリングが粘着剤(1),(2)よりも劣る。
なお、比較例の粘着剤として、アクリル系粘着剤であり、厚みが0.1mmである粘着剤が考えられる。比較例の粘着剤を用いると、流路210からサンプリング液sq2が漏出する液漏れが発生する。これは、粘着剤の厚みが不足していることに起因し、粘着剤241と血球分離膜244の間に空間が発生し、この空間から血球(つまりサンプリング液sq1)が漏れることに起因すると考えられる。
なお、粘着剤は、伸縮性を有する方が、多孔質シート220や親和性シート230A,230Bに対する密着性が高く剥離し難い一方、液漏れ等がし易くなり送液性能が低下する。また、粘着剤は、伸縮性を有しない方が、多孔質シート220や親和性シート230A,230Bに対する密着性が低く剥離し易い一方、液漏れ等がし難くなり送液性能が向上する。このように、粘着剤の密着性と送液性能とはトレードオフの関係にある。
次に、流路210におけるサンプリング液sqの移動について説明する。
図8A、図8B及び図8Cは、測定用テープ200を用いて血球分離・酵素反応を行う様子を説明する図である。図8Aは、測定用テープ200の流路210におけるサンプリング液sqの導入例を示す断面図である。図8Bは、流路210における血球分離膜244で分離されたサンプリング液sqの移動例を示す断面図である。図8Cは、流路210における送液先の多孔膜246にサンプリング液sq2が到達したことの一例を示す断面図である。図8Dは、多孔膜246において混合液sq3が生成される工程の一例を示す概念図である。
流路210を含む測定用テープ200は、3層構造を有する。3層構造は、最下層に配置された親和性シート230B、さらにその上に配置された粘着層240、及び最上層に配置された多孔質シート220及び親和性シート230A、を有する。流路210は、測定用テープ200に含まれる。測定用テープ200には、親和性シート230Aの貫通孔222、粘着層240の空間242,243,245、血球分離膜244、多孔膜246、水溶性ポリマー248、第1の試薬231、第2の試薬247等が、測定用テープ200に沿って反復して形成される。つまり、図8Aにおいて示された流路210が、測定用テープ200に沿って複数反復して形成される。
親和性シート230Bは、第1の試薬231を積層し、親和性シート230Bと第1の試薬231とにより酵素反応シートを形成してよい。この場合、第1の試薬231が親和性シート230Bに滴下され、乾燥されて、転着されてよい。第1の試薬231が転着された位置に対向して、多孔膜246が配置される。サンプリング液sq2が多孔膜246に到達して浸透し、水溶性ポリマー248を溶解する。水溶性ポリマー248が溶解すると、第2の試薬247も溶解する。このようにしてサンプリング液sq2と水溶性ポリマー248と第2の試薬247とが混合し、混合液sq3が生成され、多孔膜246に貯留される。そして、多孔膜246の下部(親和性シート230Bとの対向面)に存在する混合液sq3(例えばアミラーゼを含む液)と第1の試薬231が反応する。
血球分離膜244は、ドレーン排液に含まれる管理対象成分(例えば血球、アミラーゼ、ビリルビン)のサイズ、管理対象成分の吸着等を基に、血球と非血球(例えばアミラーゼ)とに分離可能である。
図8Aに示すように、サブチューブ133の流路133zから流出したサンプリング液sqは、親和性シート230Aの貫通孔222を介して導入され、貫通孔222と連通した粘着層240の空間242に配置された血球分離膜244に到達する。
血球分離膜244は、例えばガラス膜で構成される。ガラス膜は、ガラス繊維を束ねてシート状にしたものであり、不織布のように形成されたものである。ガラス膜は、多数のガラス繊維が重なり合って、折り合って、シート状に形成されてよい。
血球分離膜244は、管理対象成分を吸着する。血球分離膜244の吸着力は、管理対象成分毎(例えば、血球、アミラーゼ、ビリルビン)に異なってよい。また、血球分離膜244の吸着力は、血球分離膜244の表面積によって変化してよい。血球分離膜244の表面積の大きさは、血球分離膜244の密度に応じて決定されてよい。ガラス膜は、帯電吸着してよい。具体的には、ガラス繊維が、プラスに帯電し、サンプリング液中で血球(例えば血球のリン脂質)がマイナスに帯電し、両者が電気的に引き合ってよい。一方、ガラス繊維とサンプリング液中における酵素との吸着力は、ガラス繊維と血球との吸着力よりも弱くてよい。この場合、酵素がガラス繊維上を移動し、血球分離膜244の外部に流出し、空間245に進行してよい。
サブチューブ133の流路133zから流出したサンプリング液sqが血球分離膜244に滴下されると、血球分離膜244に血球が吸着する。そのため、血球を多く含むサンプリング液sq1(血球の成分)は、血球分離膜244の滴下位置の近傍に留まる。
一方、酵素(例えばアミラーゼ)を多く含むサンプリング液sq2は、血球分離膜244に滴下されると、血球分離膜244の滴下位置においてすぐには吸着されず、滴下位置から広がって、例えば図8Bに示すように左方向に移動する。そして、サンプリング液sq2の一部が血球分離膜244に留まらずに空間245に浸み出す。したがって、血球分離膜244の滴下位置の近傍には、血球を多く含むサンプリング液sq1が滞留し、血球分離膜244の滴下位置から離れた位置(例えば血球分離膜244の端部や空間245)に、アミラーゼを多く含むサンプリング液sq2が移動する。
このように、血球分離膜244では、サンプリング液sq中の各成分に対する吸着力の差により、サンプリング液sqが分離される。これにより、サンプリング液sq1としての血球が血球分離膜244に留まり、サンプリング液sq2としての非血球(アミラーゼやビリルビン)が血球分離膜244から浸み出す。
図8Bに示すように、血球分離膜244から浸み出したサンプリング液sq2は、空間245に進入する。空間245(流路210内)は、送液方向の下流側に位置する多孔膜246に対向する多孔質シート220の微細孔221により、大気圧と同じ圧力に保たれる。空間245は、空間245の上面に位置する親和性シート230A及び空間245の下面に位置する親和性シート230Bの親和性に起因する力(例えば親和性シート230A,230Bの表面張力)によって、サンプリング液sq2を空間243に向かって送液する。
図8C及び図8Dに示すように、空間245を介して送液されたサンプリング液sq2は、空間243に配置された多孔膜246に到達して(状態A1)、浸透し(状態B1)、水溶性ポリマー248を溶解する(状態C1)。水溶性ポリマー248が溶解すると、多孔膜246の繊維にコーティングされた第2の試薬247も溶解する(状態D1)。このようにしてサンプリング液sq2と水溶性ポリマー248と第2の試薬247とが混合し、混合液sq3が生成され(状態D1)、多孔膜246に貯留される。混合液sq3は、サンプリング液sq2と比較すると、粘性が大きくなる。多孔膜246は、親和性シート230Bに付された(例えば転着された)第1の試薬231に対向して配置されてよい。多孔膜246の近傍で生成された混合液sq3は、第1の試薬231と反応する。酵素がアミラーゼである場合、第1の試薬231は、アミラーゼと反応し、アミラーゼを黄色に変色させる。また、この第1の試薬231と反応したアミラーゼは、測定光の一部を吸光する。
第1の試薬231と反応したアミラーゼは、波長405nmの光を吸光し易い。一方、血球の吸光波長は420nmである。したがって、第1の試薬231と反応したアミラーゼに対して405nmがピーク値である測定光を投射し、測定光に基づく散乱光からアミラーゼの吸光度を測定する場合、血球の吸光波長420nmと一部重なり、正確な測定が難しくなる。このため、血球分離・酵素反応機構150は、血球及び非血球(例えばアミラーゼ、ビリルビン)に分離して、吸光度等を測定する。
したがって、センサユニット180は、テープ巻取り送り機構170によって送り出された測定用テープ200に浸透した混合液sq3に含まれるアミラーゼの吸光度を測定する。アミラーゼの吸光度を測定する際、センサユニット180のLED182は、吸光波長である405nmをピーク値とする測定光を、混合液sq3が浸透した測定用テープ200(具体的には混合液sq3が位置する酵素反応シートやその上部の多孔膜246)に投射する。センサユニット180のフォトセンサ183は、LED182から投射され、混合液sq3中のアミラーゼによって吸光されず、散乱した光を受光する。センサユニット180のCPU181は、フォトセンサ183で受光した散乱光の受光量を基に、混合液sq3に含まれるアミラーゼの吸光度を測定する。CPU181は、アミラーゼの吸光度を基に、アミラーゼの濃度を推定する。アミラーゼの濃度(アミラーゼ活性)は、アミラーゼが第1の試薬231と反応する能力を表し、単位U/Lで表される。CPU181は、アミラーゼの濃度を、例えばアミラーゼの吸光度の変化量ΔAを基に算出する。
ここで、混合液sq3に水溶性ポリマー248が含まれるため、混合液sq3の粘性がサンプリング液sq2よりも高くなる。そのため、混合液sq3と第1の試薬231との酵素反応速度が、サンプリング液sq2と第1の試薬231との酵素反応速度よりも遅くなる。よって、単位時間あたりの吸光度の変化量が小さくなる。また、混合液sq3に水溶性ポリマー248が含まれるため、混合液sq3に含まれるアミラーゼの濃度が相対的に小さくなり(希釈され)、血球分離・酵素反応機構150は、吸光度の変化量の測定可能な上限値に対応するアミラーゼの濃度の値を小さくでき、より高濃度のアミラーゼを導出可能となる。
次に、高濃度アミラーゼの吸光度の変化量に基づくアミラーゼの濃度の導出例について説明する。
図14、図15に示したように、アミラーゼの濃度と吸光度の変化量の関係性は、アミラーゼを直接測定する場合には、アミラーゼの濃度が高い範囲(高濃度アミラーゼ)では、ばらつきが生じる。そこで、例えば低濃度のアミラーゼから高濃度アミラーゼに至るまで、様々な濃度のアミラーゼを用意する。用意される各アミラーゼの濃度は、例えば公知の手法で、測定される。様々な濃度のアミラーゼを得るために、所定のアミラーゼを様々な希釈量で希釈してよい。そして、様々な濃度のアミラーゼの吸光度を測定しておく。
各アミラーゼの濃度と、これに対応する吸光度の変化量と、の対応関係を、サンプル点でプロットする(図9参照)。図9は、アミラーゼの濃度と吸光度の変化量との関係を示す各サンプル点に基づく検量線L11の一例を示す図である。得られた各サンプル点の情報は、血球分離・酵素反応機構150のメモリ(不図示)に保持されていてよい。
CPU181は、メモリに保持された、アミラーゼの濃度と吸光度の変化量との対応関係を示す各サンプル点に基づいて、検量線L11を算出する。検量線L11は、線形な直線で示されてもよいし、非線形な曲線で示されてもよい。CPU181は、検量線L11を用いることで、アミラーゼの吸光度の変化量を測定し、この測定結果を基に、例えば低濃度から高濃度に至るまで、様々な濃度のアミラーゼの濃度を算出可能である。なお、検量線L11の導出は、ドレーン排液センサ10以外の外部装置により実施され、血球分離・酵素反応機構150のメモリに保持されてもよい。
図10は、高濃度アミラーゼの特性を測定する工程の一例を示す概念図である。図10の工程は、上記の検量線L11を導出するために高濃度アミラーゼの特性(例えば吸光度の変化量)を測定する場合と、検量線L11に基づいて流路210を介して送液された高濃度アミラーゼを測定する場合と、のいずれにおいても実施される。なお、図10において、「●」は水溶性ポリマーを用いていない方法で測定された測定点、「■」は水溶性ポリマーを用いた方法で測定された測定点を示している。
検量線L11を導出するための測定では、アミラーゼの濃度が調整されてよい。つまり、高濃度アミラーゼを所定の液で希釈(上記の混合に相当)して、異なる濃度のアミラーゼの液を複数用意する。この所定の液は、例えば水であっても、流路210に用いられる水溶性ポリマー248と同じ材料であっても、その他の材料であってもよい。異なる濃度の各アミラーゼの液には、例えば、第1の試薬231及び第2の試薬247と同じ試薬が滴下される。所定の測定装置が、試薬が滴下された各アミラーゼの液に、実際の測定に用いられる光と同様の測定光を投射し、散乱光の受光量を基に、各アミラーゼの吸光度を測定する。これにより、所定の測定装置は、各アミラーゼの濃度と各吸光度の変化量との対応関係を導出できる。導出された対応関係の情報は、流路210を用いた混合液sq3の測定前に、メモリに記憶される。なお、各アミラーゼの濃度と各吸光度の変化量との対応関係の導出は、CPU181で行われてもよい。所定の測定装置は、ドレーン排液センサ10でもその他の装置でもよい。対応関係は、例えば検量線L11で示されてよい。
検量線L11の情報がメモリに保持された後、血球分離・酵素反応機構150は、検量線L11に基づいて流路210を介して送液された高濃度アミラーゼを測定する。この場合、流路210内の多孔膜246に到達したサンプリング液sq2としての高濃度アミラーゼは、水溶性ポリマー248を溶解し、高濃度アミラーゼと水溶性ポリマー248とが混合する。更に、高濃度アミラーゼと水溶性ポリマー248に第2の試薬247が混合されて、混合液sq3が生成される。混合液sq3の少なくとも一部は、第1の試薬231と反応する。血球分離・酵素反応機構150は、第1の試薬231と反応した混合液sq3に測定光を投射し、散乱光の受光量を基に、混合液sq3の吸光度の変化量を測定する。そして、CPU181は、メモリに保持された検量線L11の情報を参照し、測定された混合液sq3の吸光度の変化量に対応するアミラーゼの濃度を算出する。これにより、血球分離・酵素反応機構150は、光学的な測定を基に、高濃度アミラーゼの濃度を導出できる。
このように、流路210では、血球分離膜244から空間245を介して多孔膜246に送液され、混合液sq3が多孔膜246で貯留される。混合液sq3は、一定の速度で送液方向の下流側に移動する。また、多孔膜246で貯留可能な混合液sq3の量は一定であるので、一定量の混合液sq3が一定の速度で進行し、一定量ずつ混合液sq3が第1の試薬231と反応するので、混合液sq3の量のばらつきに起因する測定ばらつきを抑制できる。
また、流路210は、血球分離膜244と多孔膜246との間に空間245を備えることで、血球分離膜244に貯留された液と多孔膜246に貯留された液とが混ざることを防止し、液量のばらつきを抑制できる。空間245は、所定のサイズで構成される。送液時には、空間245の全体がサンプリング液sq2で満たされ、送液後には空間245にサンプリング液sq2が不在となる。よって、送液後には空間245により血球分離膜244側と多孔膜246側とが分離され、多孔膜246に貯留される液量が一定量となる。
また、血球分離・酵素反応機構150は、多孔膜246に到達したサンプリング液sq2と水溶性ポリマー248を基に、混合液sq3を生成できる。混合液sq3となることで粘性が高くなり、酵素反応時間が長くなる。これは、液体の粘性が高くなったことで、単位時間あたりの分子同士の接触回数が少なくなり、酵素反応時間が遅延するためであると考えられる。アミラーゼの濃度と吸光度の変化量とは、基本的には、アミラーゼの濃度が高くなる程、吸光度の変化量が大きくなるという関係性を有する。したがって、混合液sq3の吸光度の変化量を測定すると、実際のアミラーゼの濃度の吸光度の変化量を測定する場合と比較すると、単位時間あたりの吸光度の変化量が小さくなる。そのため、吸光度の変化量の上限に到達するまでの時間が長くなり、混合液sq3の吸光度の変化量の測定結果として、アミラーゼの濃度を低くしたことと同様の結果が得られる。よって、従来よりも広範囲のアミラーゼの濃度の範囲において、吸光度の変化量とアミラーゼの濃度との高い相関関係を得ることができる。したがって、血球分離・酵素反応機構150は、例えば相関関係を示す検量線を基に、より濃度の高いアミラーゼの濃度の導出精度を向上できる。
また、ドレーン排液センサ10は、水溶性ポリマー248を使ってサンプリングsq3の希釈を模した混合液sq3を生成し、混合液sq3を用いて測定することで、例えば高濃度アミラーゼの特性の測定精度を向上できる。また、ドレーン排液センサ10は、2000U/L以上のアミラーゼの濃度の範囲であっても、測定ばらつきを抑制して安定して測定できる。よって、アミラーゼの濃度を測定するために、医療現場で医師がドレーン排液センサ10を使い易くなる。また、ドレーン排液センサ10は、改良が大変な試薬の改良を行うことなく、ドレーン排液センサ10の多孔膜246及び第1の試薬231の周辺の構成を工夫することで、機構的に測定精度の向上を図ることができる。
図11はドレーン排液管理システム5によるアミラーゼ活性の測定手順を示すフローチャートである。この測定は、排液サンプリング動作と同様、例えば1時間に1回、適当な時刻に設定される。
センサユニット180のCPU181は、モータ駆動部187を介して指令信号を出力し、測定用テープ200を巻取り方向に送るように、モータ175を駆動する(S11)。モータ175が回転すると、巻取りリール172は、回転し、排液サンプリング動作を行うために、サブチューブ133の真下(対向位置)に、滴下箇所となる流路210の貫通孔222が位置するように、測定用テープ200を巻き取り、送りリール171は、測定用テープ200を送り出す。
CPU181は、排液サンプリング動作を行い、測定用テープ200の流路210の貫通孔222にサンプリング液sqを滴下する(S12)。この排液サンプリング動作は、図6のフローチャートで示した手順で行われてよい。
CPU181は、血球分離及びサンプリング液sqの移動を行うために所定時間だけ待機する。この所定時間の待機中、測定用テープ200の貫通孔222を介して血球分離膜244に滴下されたサンプリング液sqが、血球分離膜244により血球成分と非血球成分に分離される(S13)。サンプリング液sqのうち、血球を多く含むサンプリング液sq1は、滴下位置近傍に滞留し、アミラーゼを含むサンプリング液sq2は、滴下位置から離れた箇所に移動し、空間245に進入する(S13)。空間245に進入したサンプリング液sq2は、親和性シート230A,230Bとの間の親和性に起因する力(例えば表面張力)により移動し、多孔膜246に到達する(S13)。そして、サンプリング液sq2は、多孔膜246に浸透し、水溶性ポリマー248を溶解する。水溶性ポリマー248が溶解すると、多孔膜246の繊維にコーティングされた第2の試薬247も溶解する。この結果、混合液sq3が生成され、多孔膜246に貯留される。
CPU181は、混合液sq3内のアミラーゼと第1の試薬231の反応時間だけ待機する。この反応時間において、多孔膜246に貯留された混合液sq3に含まれるアミラーゼは、多孔膜246の対向位置に存在する第1の試薬231と反応し、反応したアミラーゼが黄色に変色する(S14)。
CPU181は、アミラーゼと第1の試薬231の反応箇所に対し、光学的読み取りを行う(S15)。この光学的読み取りでは、CPU181は、LED182(例えばLED182A,182Bの少なくとも一方)を点灯し、反応箇所(酵素反応シート、多孔膜246、混合液sq3)に向けて測定光を投射する。反応箇所では、投射された測定光の一部がアミラーゼによって吸光され、残りの一部が散乱する。CPU181は、フォトセンサ183により散乱された光を受光し、受光した光の受光量を基に吸光度の変化量(ΔA)を算出する。
CPU181は、吸光度の変化量(ΔA)を基に、アミラーゼ活性を算出する(S16)。CPU181は、無線チップ184によりドレーン排液モニタ20と通信を行い、アミラーゼに関する測定データ(例えば、アミラーゼの吸光度の変化量(ΔA)、アミラーゼ活性の値、アミラーゼの濃度の値)を測定時刻の情報と共に送信する。
ドレーン排液モニタ20のCPU26は、無線チップ28を介してドレーン排液センサ10からアミラーゼに関する測定データ及び測定時刻の情報を受信すると、ディスプレイ21を介して各種データ(測定データ、測定時刻、その他のデータ)を表示する(S17)。
このような管理対象成分(例えばアミラーゼ)の測定手順によれば、ドレーン排液管理システム5は、CPU181が血球分離・酵素反応機構150の各部を制御することで、ドレーン排液がサンプリングされたサンプリング液sqの特性を自動的に測定し、測定データを導出できる。また、ドレーン排液管理システム5は、ドレーン排液モニタ20に情報を表示でき、測定データ等の管理対象成分に関する情報を可視化できる。よって、ユーザは、患者の回復傾向を容易に把握できる。
また、ドレーン排液センサ10は、血球分離膜244を用いて血球とアミラーゼとに分離した後、分離したアミラーゼを測定することで、遠心分離機のような大型化の装置を必要とせず、携帯性に優れ、コストダウンを図れる。
図12はドレーン排液モニタ20の表示を示す図である。ドレーン排液モニタ20の前面に配置されたディスプレイ21には、一例として、アミラーゼ活性を表す吸光度の変化量(ΔA)の測定結果を示すグラフ22が表示されてよい。また、ディスプレイ21には、患者の名前などの種々の説明文23、吸光度の変化量(ΔA)を表すメータ24、及び、患者の状態(正常・異常)を通知するための状態マーカ25が併せて表示されてよい。
グラフ22において、破線L1は、正常範囲の上限を示し、破線L2は、正常範囲の下限を示す。術後の患者の状態が正常であれば、患者の身体に接続されたドレーンチューブ30内を流れるドレーン排液中のアミラーゼによる吸光度の変化量は、術後の時間経過に従って次第に減少していく。この例では、それぞれの測定結果の経時的推移が正常範囲内を維持している。このとき、状態マーカ25として「正常」の文字が表示される。一方、それぞれの測定結果の経時的推移が正常範囲外となると、状態マーカ25として「異常」の文字が表示されてよい。
(ビリルビンの測定)
上記では、ドレーン排液Lq中の管理対象成分として、消化酵素であるアミラーゼについて主に説明した。なお、臓器の分泌液の一例として、胆汁および尿などに含まれるビリルビンも、管理対象成分の1つとなり得る。ビリルビンはそれ自体が黄色の色素を有するので、ビリルビンの濃度を非接触で光学的に検出することが可能である。したがって、ビリルビンの濃度を測定する場合、第1の試薬231と反応させることは不要であり、第1の試薬231が不要である。第1の試薬231を含まないこと以外、図7A等で説明した流路210を有する測定用テープ200を用いて、ビリルビンが測定されてよい。つまり、混合液sq3に測定光が照射され、散乱光を基に、ビリルビンの濃度等が測定されてよい。
ビリルビンについても、アミラーゼと同様に、膜分離可能である。つまり、サンプリング液sqに含まれる非血球の一例としてのビリルビンは、血球分離膜244との親和性が血球よりも低く、血球と比較すると血球分離膜244により吸着され難い。そのため、ビリルビンは、例えば毛細管現象により血球分離膜244に沿って移動し、空間245に進入する。ビリルビンは、空間245において親和性シート230A,230Bとの親和性に起因する力(例えば表面張力)により多孔膜246に向かって移動し、多孔膜246に到達して、多孔膜246に浸透し、水溶性ポリマー248を溶解する。水溶性ポリマー248が溶解すると、多孔膜246の繊維にコーティングされた第2の試薬247も溶解する。この結果、ビリルビンを含む混合液sq3が生成され、多孔膜246に貯留される。
膜測定では、血球分離膜244にサンプリング液sqを滴下すると、血球とビリルビンの吸着力の差により、血球が血球分離膜244に優先的に吸着する。つまり、血球分離膜244に対する血球の吸着力が、血球分離膜244に対するビリルビンの吸着力よりも大きい。血球分離膜244において、血球は滴下位置近傍において吸着され、ビリルビンはその少なくとも一部が吸着されず空間245に浸み出す。浸み出したビリルビンは、多孔膜246に到達して浸透し、水溶性ポリマー248を溶解する。水溶性ポリマー248が溶解すると、多孔膜246の繊維にコーティングされた第2の試薬247も溶解する。この結果、ビリルビンを含む混合液sq3が生成され、多孔膜246に貯留される。センサユニット180は、貯留されたビリルビンが存在する多孔膜246に対し、測定光として405nmの波長をピーク値として有する光を用いて測定することで、ビリルビンの吸光度が測定可能である。
したがって、ドレーン排液センサ10は、血球分離膜244を用いて血球とビリルビンとに分離した後、分離したビリルビンを測定することで、分光光度計のような大型化の装置を必要とせず、携帯性に優れ、コストダウンを図れる。
ビリルビンの吸光度等の測定データは、ドレーン排液モニタ20に送られ、ディスプレイ21に表示されてよい。
(測定用テープの変形例)
測定用テープ200は、アミラーゼの測定に使用される第1の試薬231を含む流路210(アミラーゼ測定用の流路210)と、ビリルビンの測定に使用される第1の試薬231を含まない流路210(ビリルビン測定用の流路210)とが、交互に含まれるように構成されてよい。つまり、測定用テープ200は、測定用テープ200の長さ方向において、アミラーゼ測定用の流路210とビリルビン測定用の流路210とを繰り返すように製造されてよい。アミラーゼの特性を測定する場合、ドレーン排液センサ10は、測定用テープ200において、アミラーゼ測定用の流路210を使用する。ビリルビンの特性を測定する場合、ドレーン排液センサ10は、測定用テープ200において、ビリルビン測定用の流路210を使用する。
このように、ドレーン排液センサ10は、アミラーゼ測定用の流路210とビリルビン測定用の流路210とを有する測定用テープ200を用いることで、ドレーン排液センサ10が同時に測定できる物質の種類を増やすことができる。また、複数の異なる管理対象成分の測定において、ドレーン排液センサ10を共用できることから、2つのドレーン排液センサを設ける場合と比べ、コストが低下し、省スペース化が可能である。また、複数の異なる管理対象成分の測定において、測定用テープ200が1つで済むことから、2つの測定用テープ200を用いる場合と比べ、コストが低下し、省スペース化が可能である。
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
上記実施形態では、酵素(例えばアミラーゼ)と反応するための試薬として2つの第1の試薬231及び第2の試薬247を例示したが、1つの試薬でもよいし、3つ以上の試薬でもよい。
上記実施形態では、ポリマーとして水に溶解可能な水溶性ポリマー248を例示したが、他のポリマー(例えば油に溶解可能な油溶性ポリマー)であってもよい。
上記実施形態では、親和性シート230Bと第1の試薬231とにより酵素反応シートが形成されることを例示したが、これに限られない。例えば、親和性シート230Bとは異なるシートに第1の試薬231が付され、このシートが任意の形状に加工されて配置されてもよい。
上記実施形態では、ドレーンチューブ30を介して生体から排出されるドレーン排液をサンプリングや測定の対象とすることを例示したが、ドレーン排液以外の液体がサンプリングや測定の対象とされてよい。例えば、体液誘導管を通じて生体から排出又は生体へ導入される体液が、サンプリングや測定の対象とされてよい。
体液誘導管は、例えば、ドレーン(ドレーンチューブ)、カテーテル(カテーテルのチューブ)、投薬チューブ(投薬に使用されるチューブ)、を含んでよい。体液誘導管には、体液が流れる。
ドレーンは、脳神経用、耳鼻咽喉用、呼吸器用、循環器用、乳腺・内分泌用、上部消化管用、胆肝膵用、泌尿器用、婦人科用、整形外科用等のドレーンを含んでよい。脳神経用のドレーンは、脳室ドレーン、脳槽ドレーン、硬膜外ドレーン、皮下ドレーン、血腫腔ドレーン、腰椎ドレーン、脳内視鏡手術後に用いられるドレーン等を含んでよい。耳鼻咽喉用のドレーンは、頭頸部手術後に用いられるドレーン等を含んでよい。呼吸器用のドレーンは、胸腔ドレーン、縦隔ドレーン等を含んでよい。循環器用のドレーンは、心嚢ドレーン、頭頸部手術後に用いられるドレーン等を含んでよい。乳腺・内分泌用のドレーンは、乳癌手術後に用いられるドレーン、乳腺炎ドレーン、甲状腺手術後に用いられるドレーン等を含んでよい。上部消化管用のドレーンは、胸部・縦隔ドレーン、頸部ドレーン、腹部ドレーン、上腹部腹膜炎ドレーン、腹腔内膿瘍ドレーン、胃手術後に用いられるドレーン等を含んでよい。胆肝膵用のドレーンは、経皮経肝胆嚢ドレーン、経皮経肝胆ドレーン、肝膿瘍ドレーン、内視鏡的胆道ドレーン、急性膵炎に対するドレーン、下部消化管の後腹膜膿瘍ドレーン、直腸癌手術後に用いられるドレーン、肛囲膿瘍ドレーン等を含んでよい。泌尿器用のドレーンは、一般手術後に用いられるドレーン、内視鏡手術後に用いられるドレーン、経皮的・経尿道的アプローチに用いられるドレーン等を含んでよい。婦人科用のドレーンは、開腹手術後に用いられるドレーン、内視鏡手術後に用いられるドレーン等を含んでよい。整形外科用のドレーンは、関節腔ドレーン等を含んでよい。また、その他のドレーンとして、切開排膿ドレーン等が含まれてよい。
カテーテルは、血管造影用カテーテル、バルーンカテーテル、心臓カテーテル、脳血管カテーテル、がんカテーテル治療に用いられるカテーテル、血管留置カテーテル、尿道カテーテル等を含んでよい。
投薬チューブは、投薬装置(投薬システム)に用いられるチューブ等を含んでよい。投薬装置は、血中の薬剤濃度を直接制御する投薬ポンプ(TCI(Target Controlled Infusion)ポンプ)等を含んでよい。TCIポンプは、ポンプの動作を制御して、薬剤の投与速度を調節し、薬剤の血中濃度を目標血中濃度となるように制御する。
図13は、TCIポンプ10Aにより患者PA1へ薬剤や輸液(以下、薬剤等ともいう)を含む体液を導入することを説明する図である。TCIポンプ10Aから患者PA1へ、投薬チューブ30Aを介して薬剤等を含む体液が導入される。また、患者PA1からTCIポンプ10Aへ、投薬チューブ30Aを介して体液が送られる。つまり、TCIポンプ10Aは、患者PA1への薬剤の投与量や投与速度を調整し、患者PA1との間で体液を循環させ、患者PA1の体内での薬剤の濃度を制御する。このようなTCIポンプ10Aにより、例えば、患者PA1の血中の薬剤濃度を直接制御する投薬システムを実現可能である。
TCIポンプ10Aは、患者PA1に投与される薬剤の投与の制御に係る構成以外の構成については、ドレーン排液センサ10と同様の構成を有してよく、例えば図2に示した構成と同様でよい。TCIポンプ10Aは、TCIポンプ10Aから患者PA1へ向かう体液をサンプリングし、管理対象成分を測定してよい。また、TCIポンプ10Aは、患者PA1からTCIポンプ10Aへ向かう体液をサンプリングし、管理対象成分を測定してよい。
上記実施形態では、流路210において、多孔質シート220及び親和性シート230Aと親和性シート230Bとの間に粘着層240が設けられることを例示したが、粘着層240が設けられなくてもよい。例えば、多孔質シート220及び親和性シート230Aと親和性シート230Bとが一体的に形成されてよい。この場合、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により流路210が画成されてよい。
例えば、親和性シート230Bに対応する材料(例えばシート)に、厚さ方向(多孔質シート220及び親和性シート230Aと親和性シート230Bとが並ぶ方向)に、流路210に対応した形状で窪んだ凹部が形成されることで、流路210の内部(例えば空間242,243、空間245)が画成されてよい。そして、画成された流路210の内部が親媒処理され、親和性シート230Bに対応する材料に多孔質シート220に対応する材料(例えば通気膜のシート)及び親和性シート230Aに対応する材料が貼り付けられることで、流路210全体が形成されてよい。親媒処理は、流路210を流れる液に対する親和性を持たせるための処理である。通気膜は、送液される液に対して非親和性を有してよい。
同様に、多孔質シート220及び親和性シート230Aに対応する材料(例えばシート)に、厚さ方向(多孔質シート220及び親和性シート230Aと親和性シート230Bとが並ぶ方向)に、流路210に対応した形状で窪んだ凹部が形成されることで、流路210の内部(例えば空間242,243、245)が画成されてよい。そして、多孔質シート220及び親和性シート230Aに対応する材料に、親和性シート230Bに対応する材料(例えばシート)が貼り付けられることで、流路210全体が形成されてよい。親和性シート230Bにおける流路210の内部と対向する面には親媒処理されてよい。
上記実施形態では、流路210の上面に多孔質シート220が配置され、流路210の下面に親和性シート230Bが配置されることを例示したが、この逆であってもよい。つまり、流路210の下面に多孔質シート220及び親和性シート230Aが配置され、流路210の上面に親和性シート230Bが配置されてもよい。この場合でも、本実施形態と同様の効果が得られると考えらえる。
上記実施形態では、血球分離膜244が、サンプリング液sqを血球成分と非血球成分とに分離することを例示したが、これに限られない。例えば、分離膜が、サンプリング液sq以外の液(例えば化学材料)を、血球成分や非血球成分以外の複数の成分に、分離してもよい。
上記実施形態では、液体のサンプリングに係る例を開示したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、液体の分注、滴下といった、液体を一定の容量ずつ吐出する用途に適用可能である。
上記実施形態では、排液サンプリング機構110によりサンプリングが行われることを例示したが、排液サンプリング機構110が省略されてもよい。この場合、流路210に、直接、液が滴下されてもよい。また、分離膜が設けられず、滴下された液が全て測定対象となってもよい。例えば分離されない(1種類の成分の)液についても測定光を用いて測定可能である。
上記実施形態では、血球分離膜244として、ガラス膜を用いることを主に例示したが、その他の部材を用いてもよい。例えば、血球と帯電吸着可能なプラスに帯電する膜が用いられてもよいし、帯電吸着以外の吸着メカニズムを有する部材が用いられてもよい。
上記実施形態では、サンプリング液sq中の各管理対象成分のデータが時系列に取得されることを例示した。これらの時系列データに加え、ドレーン排液Lqやサンプリング液sqの総排出量の時系列データが取得されてもよい。ドレーン排液Lqの総排出量の時系列データは、例えば、ドレーンバッグの重さを測定するセンサ(例えば歪センサ)の出力値に基づいて取得されてよい。サンプリング液sqの総排出量の時系列データは、例えば、排液サンプリング機構110により、サンプリング液sqの抽出量が毎回測定され、各回分を積算されることで、取得されてよい。また、時系列データは、ドレーン排液Lqやサンプリング液sqの単位時間あたりの排出量のデータを含んでもよい。
上記実施形態では、ドレーン排液センサ10のCPU181は、アミラーゼの吸光度の変化量に基づいて、アミラーゼの濃度を算出してもよい。アミラーゼの濃度のデータは、測定データの一例である。例えば、アミラーゼの吸光度の変化量とアミラーゼの濃度の対応情報をメモリ等に保持しておき、この対応情報に基づいて、アミラーゼの濃度が導出されてよい。ドレーン排液センサ10のCPU181は、ビリルビンの吸光度に基づいて、ビリルビンの濃度を算出してもよい。ビリルビンの濃度のデータは、測定データの一例である。例えば、ビリルビンの吸光度とビリルビンの濃度の対応情報をメモリ等に保持しておき、この対応情報に基づいて、ビリルビンの濃度が導出されてよい。対応情報は、検量線で示されてよい。
上記実施形態では、ドレーン排液センサ10とドレーン排液モニタ20とが別々の装置として構成されるが、ドレーン排液センサ10及びドレーン排液モニタ20は、同じ筐体を有する装置として構成されてもよい。
上記実施形態では、メインチューブ130にドレーンチューブ30が接続されることを例示したが、メインチューブ130はドレーンチューブ30の一部であってもよい。
上記実施形態では、ドレーン排液センサ10の血球分離・酵素反応機構150は、管理対象成分として、サンプリング液sqに含まれる血液濃度を測定してもよい。サンプリング液sq中の血液濃度は、例えば、血球が吸着される血球分離膜244が配置された空間242に測定光を照射し、散乱光を受光することで、測定可能である。なお、血液濃度を測定するための測定光として、例えば、660nmや850nmの波長をピーク値として有する光を用いてよい。つまり、赤外光を出射するLED182Bが用いられてもよい。このような測定において、体液(例えば管理対象成分)に、生体の血球(例えば患者の静脈血)が含まれてよい。ドレーン排液センサ10は、患者の静脈血を測定することで、血液の特性を基にして患者の状態を評価できる。
このように、ドレーン排液管理システム5は、患者の生体から排出されるドレーン排液Lqの採取、分離、分注、分析等を実施し、患者に対する医療の処置を検討するための指標を、ユーザに提供できる。また、ドレーン排液Lqの採取、分離、分注、分析等を、1つのデバイスであるドレーン排液センサ10により実施可能である。
また、患者は、ドレーンチューブ30を例えば1週間程度、患者の体に装着することが想定される。ドレーン排液Lqのサンプリングの頻度は、例えば、1時間に1回程度、1週間に170回程度でよい。
以上のように、測定装置(例えばドレーン排液センサ10)は、体液(例えばサンプリング液sq2)が導入される多孔膜246(第1の多孔膜の一例)と、多孔膜246に固定され、体液に溶解可能なポリマー(例えば水溶性ポリマー248)と、体液と溶解したポリマーとが混合して生成された混合液sq3と反応する試薬と、試薬と反応した混合液sq3の特性を測定する血球分離・酵素反応機構150(測定部の一例)と、を備えてよい。
これにより、測定装置は、体液に溶解可能なポリマー(例えば水溶性ポリマー248)と体液とを混合して混合液sq3を生成できる。これにより、測定対象の体液の粘性が高くなり、酵素反応時間を長くできる。よって、吸光度の変化量を小さくでき、より高い濃度の測定対象の物質を測定範囲に含まれることができる。また、混合液sq3に水溶性ポリマー248が含まれるため、混合液sq3に含まれるアミラーゼの濃度が相対的に小さくなり(希釈され)、測定対象の物質の濃度の測定範囲を拡大できる。このように、測定装置は、体液に含まれる測定対象の物質(例えばアミラーゼ)の測定範囲を拡大して、測定対象の物質を高精度に測定できる。
また、測定装置は、体液と親和性を有し、多孔膜246に対向して配置された親和性シート230B、を備えてよい。試薬は、第1の試薬231と第2の試薬247とを含んでよい。第1の試薬231は、親和性シート230Bに付されて(例えばコーティングされて)よい。第2の試薬247は、多孔膜246に付されて(例えばコーティングされて)よい。
これにより、測定装置は、多孔膜246に導入された体液を、まずは第2の試薬と混合し、その後に第1の試薬と反応して混合液sq3を生成できる。よって、測定装置は、複数の段階で体液と混合や反応を行い、酵素を着色等することができる。
また、第2の試薬247は、多孔膜246とポリマー(例えば水溶性ポリマー248)との間に溶解可能に固定されてよい。
これにより、測定装置は、まずは体液とポリマー(例えば水溶性ポリマー248)とを混合し、その後に第2の試薬と混合して混合液sq3を生成し、その後に第1の試薬231と反応させることができる。よって、測定装置は、体液が希釈された状態を擬制した混合液sq3を、第1の試薬231と反応させることができ、測定対象の物質の測定範囲を拡大できる。
また、測定装置は、CPU181(推定部の一例)を備えてよい。CPU181は、体液の管理対象成分の濃度と吸光度の変化量(特性値の一例)との相関を示す相関情報を取得してよい。CPU181は、相関情報に基づいて、測定された吸光度の変化量を基に、管理対象成分の濃度を推定してよい。
これにより、測定装置は、例えば、予め導出された管理対象成分の濃度と特性値(例えば吸光度の変化量)との相関を示す相関情報を参照できる。相関情報に高い濃度の範囲と吸光度の変化量との相関情報も含めておくことで、測定装置は、相関情報を用いて、吸光度の変化を基に、測定対象の濃度を広範囲で導出できる。
また、相関情報は、管理対象成分の各濃度に対する管理対象成分の特性を示す各値に基づいて導出された検量線で示されてよい。
例えば、任意の測定装置は、管理対象成分の濃度に対する管理対象成分の特性値を示すサンプル点を複数取得して、この複数のサンプル点における一定の相関を導出し、検量線を導出し、測定装置(例えばドレーン排液センサ)に保持させておく。これにより、測定装置は、検量線を用いた簡単な演算により、管理対象成分の特定値に対する濃度を導出できる。
また、血球分離・酵素反応機構150は、試薬と反応した混合液sq3に対して測定光を出射するLED182(光源の一例)と、多孔膜246において測定光が散乱された散乱光を受光するフォトセンサ183(受光部の一例)と、散乱光を基に、混合液sq3の特性を測定するCPU181(測定処理部の一例)を備えてよい。
これにより、測定装置は、混合液sq3の特性を光学的に測定できる。
また、混合液sq3の特性は、混合液sq3の吸光度の変化を含んでよい。
これにより、測定装置は、吸光度の変化により混合液sq3の特性を測定できる。
また、測定装置は、体液から管理対象成分を分離する血球分離膜244(分離膜の一例)を備えてよい。多孔膜246は、血球分離膜244により分離された管理対象成分を導入してよい。
これにより、測定装置は、例えば、空間242に導入された体液を分離膜により分離できる。したがって、測定装置は、測定光を用いて、分離膜により分離された体液の成分を測定できる。よって、測定装置は、異なる成分が混在した体液を測定する場合でも、異なる成分が混在した状態で測定することを防止し、管理対象成分の濃度の測定範囲を高濃度側に拡大して、管理対象成分を精度よく測定できる。
また、管理対象成分は、血液、アミラーゼ又はビリルビンを含んでよい。
これにより、測定装置は、患者が排出する又は患者に導入される様々な濃度の酵素の成分を測定できる。
また、測定装置は、体液を送液するための流路210、を備えてよい。流路210の少なくとも一部は、流路210内の圧力を大気圧に保つための複数の微細孔221(貫通孔の一例)を有する第1領域(多孔質シート220が配置される領域)と、体液と親和性を有する第2領域(例えば親和性シート230A,230Bが配置される領域)と、第1領域と第2領域との間に配置され、体液と親和性を有する多孔膜246と、第1領域と第2領域との間に配置された血球分離膜244(第2の多孔膜の一例)と、を備えてよい。多孔膜246と血球分離膜244との間には、空間245が画成されてよい。体液は、第2領域との親和性に起因する力によって、血球分離膜244から多孔膜246へ送液されてよい。
これにより、測定装置及び流路210は、第2領域の親和性に起因する力(例えば表面張力)によって、体液を送液できる。測定装置及び流路210は、流路210に排気口が存在しなくても、微細孔221を介して空気が通過でき、流路210の内部の圧力を流路の外部である大気の圧力に維持でき、流路210の内部の圧力の上昇を抑制できる。よって、測定装置及び流路210は、親和性に起因する力が比較的弱い力であっても、体液を送液し易くなる。また、測定装置及び流路210は、親和性に起因する力で送液できるので、流路210を加圧することなく送液できる。
また、測定装置及び流路210は、流路内210内に配置された多孔膜246に生ずる毛細管力によって、送液を補助でき、送液力を増大できる。また、測定装置及び流路210は、血球分離膜244と多孔膜246との間に空間245を有することで、空間245を介した体液が多孔膜246へ送液されるため、体液を多孔膜246側と血球分離膜244側とに分離できる。そして、多孔膜246側に到達した体液は多孔膜246内を一定の速度で進行し、多孔膜246側に存在する体液の量を一定の量にできる。したがって、測定装置及び流路210は、流路210内の送液量を一定量に安定化できる。
また、測定装置は、混合液sq3に測定光を照射することで、多孔膜246に貯留された体液の特性を測定できる。この場合、空間243に配置された多孔膜246のサイズが不変であり、多孔膜246の送液量や貯留量は一定であるので、一定の液量に対する測定結果を毎回得ることができ、体液の特性を安定して測定できる。したがって、測定装置は、流路210による送液の安定性を向上でき、測定結果のばらつきを低減できる。
また、測定装置は、流路210は、測定対象を希釈することを擬制した混合液sq3の生成を、1つのデバイス内で実現できる。流路210は、測定対象を希釈することを擬制した混合液sq3の生成を、1つのフローセル内で実現できる。
また、測定用テープ200は、上記の流路210を備えてよい。流路210は、第1領域を構成する多孔質シート220と、多孔質シート220に隣接し、第2領域の一部を構成する親和性シート230A,第2領域の他部を構成する230Bと、を備えてよい。多孔質シート220及び親和性シート230A,230Bは、多孔質シート220及び親和性シート230Bが並ぶ配列方向(例えば流路210の厚み方向)に湾曲可能な柔軟性を有してよい。
これにより、測定用テープ200は、流路210が有する機能や効果を有する。また、測定用テープ200は、柔軟性を有して変形し易くなり、テープ形状にし易くなる。測定用テープ200は、テープ形状とする場合、流路210を複数設けることにより反復して使用できる。また、測定用テープ200は、一度使用した流路210の部分を送り出し、未使用の流路210を使用することで、体液の測定を清潔に行うことができ、前回測定分の液残りに起因する測定精度の低下を抑制できる。
また、本実施形態の測定方法は、多孔膜246に体液を導入する工程と、体液と多孔膜246に溶解可能に固定されたポリマーとが反応して、ポリマーが溶解する工程と、体液と溶解したポリマーとが混合し、混合液sq3が生成される工程と、混合液sq3と第2の試薬247とが反応する工程と、第2の試薬247と反応した混合液sq3の特性を測定する工程と、を含んでよい。
また、ドレーン排液管理システム5は、ドレーン排液に影響を及ぼす管理対象成分をドレーンチューブから外部に抽出できる。また、ドレーン排液管理システム5は、抽出された管理対象成分を測定でき、測定結果に基づく測定データを導出できる。また、ドレーン排液管理システム5が測定データの経時的変化を表す時系列データをディスプレイ21に表示することで、ユーザ(医師・看護師、その他の医療関係者)が、ドレーン排液の特性を評価する際、目視での評価に代えて(又は、目視での評価に加え)、時系列データに基づいて評価できる。よって、ユーザは、目視のみに基づく評価に比べ、より客観的に患者の回復傾向を評価できる。
また、ドレーン排液と同様に、ドレーン排液以外の体液についても、体液に影響を及ぼす管理対象成分がドレーンチューブ30から外部に抽出可能である。また、抽出された管理対象成分が測定可能であり、測定結果に基づく測定データが導出可能である。また、測定データの経時的変化を表す時系列データがディスプレイ21に表示されることで、ユーザが、体液の特性を評価する際、目視での評価に代えて(又は、目視での評価に加え)、時系列データに基づいて評価できる。よって、ユーザは、目視のみに基づく評価に比べ、体液に関するデータを基に、より客観的に患者の回復傾向を評価できる。
また、ドレーン排液管理システム5は、例えば、患者が排出する又は患者に導入される酵素の量、ビリルビンの量、又は血球の量を測定でき、患者の状態を把握し易くなる。
また、ドレーン排液管理システム5は、血球分離膜244との吸着力の差を利用して、血球と非血球とを容易に分離できる。また、ドレーン排液管理システム5は、非血球の吸光度を測定することで、吸光度を基に、例えば吸光度との対応が一意に定まる非血球の濃度を導出(例えば算出)できる。
また、ドレーン排液管理システム5は、血球の成分が滞留する領域(例えば血球分離膜244)と非血球の成分が滞留する領域(例えば多孔膜246)のそれぞれの領域に対して測定光を照射することで、血球及び非血球のそれぞれの特性を区別して検出可能である。
また、ドレーン排液管理システム5は、血球分離膜244により分離された酵素と第1の試薬231とを反応させ、反応した酵素の吸光度を測定することで、無色の酵素が管理対象成分である場合でも、酵素を着色して測定できる。よって、着色された酵素に測定光が照射された場合に、酵素が測定光を散乱でき、フォトセンサ183が散乱光を受光できる。よって、ドレーン排液管理システム5は、無色の酵素が管理対象成分である場合でも、酵素の吸光度を測定でき、吸光度を基に酵素の濃度も導出できる。
また、血球分離膜244は、ガラス繊維を束ねてシート状に成形されたガラス膜でよい。この場合、ドレーン排液管理システム5は、血球分離膜244としてガラス膜を用いることで、孔が小さいために非血球を十分に取得できないモノリス膜と比較して、測定用に必要十分な非血球の量を確保できる。また、ドレーン排液管理システム5は、血球分離膜244としてガラス膜を用いることで、セルロース膜のように孔が存在しないので、血球や非血球の通過が抑制され、ガラス繊維の毛細管現象等により、血球と非血球とを好適に分離できる。また、ドレーン排液管理システム5は、ガラス繊維を束ねてシート状に成形された血球分離膜244を用いることで、血球分離膜244を不織布と同様に容易に取り扱い可能となる。
また、ドレーン排液管理システム5は、簡単な構成でドレーン排液をサンプリングでき、携帯性に優れ、持ち運び容易な排液サンプリング機構110を有する。よって、サンプリング時に患者が定位置に留まる必要がなく、サンプリング時のユーザの自由度が向上する。また、ドレーン排液管理システム5は、メインチューブ130における2点間の距離を測定時に不変にしておくことで、2点間に存在するドレーン排液の液量を安定化できる。このドレーン排液の液量が、1回のサンプリング量となる。また、ドレーン排液管理システム5は、第1押圧部材115による押圧時にドレーン排液を通過させ、第1押圧部材115による非押圧時にドレーン排液を通過させないことで、1回の押圧により1回分のサンプリング量のドレーン排液を出し切ることができる。よって、サブチューブ133内に液残りすることを抑制できる。したがって、ドレーン排液管理システム5は、毎回のサンプリングにおいてドレーン排液が前回分と混在することを抑制でき、サンプリングのタイミングに応じた測定精度の高い測定データを導出できる。