JP2020148294A - 差動装置 - Google Patents

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Akuto Sekiguchi
亜久人 関口
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Abstract

【課題】ピニオンシャフトの少なくとも一部が、正規の取付位置にあるピニオンシャフトと直交する投影面で見てリングギヤと重なる差動装置において、ピニオンシャフト支持部となるデフケースの孔を、ピニオンシャフトの組付け時にリングギヤとの干渉回避のために拡大する必要をなくし、リングギヤ等の形状の制約を減らす。【解決手段】デフケース8が、ピニオンシャフト支持部81,82から離間し且つピニオンシャフト21が通過可能なシャフト挿入孔8bhを有し、シャフト挿入孔は、ピニオンシャフトをデフケース外から所定の挿入終了位置21Eまで、リングギヤ9と干渉せずにデフケース内のピニオンギヤ22に挿入するのを許容する位置に在り、デフケース内面は、挿入終了位置21Eまで挿入したピニオンシャフトの両端部を受入れ可能であり且つその受入れ位置からピニオンシャフト支持部までの、両端部の移動を許容するシャフト移動溝41を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、差動装置、特に所定軸線回りに回転可能なデフケースと、デフケース内に前記所定軸線回りに回転可能に収容される一対のサイドギヤと、デフケース内に収容されて一対のサイドギヤに噛合する一対のピニオンギヤと、前記所定軸線と直交する方向に延びてピニオンギヤを回転自在に嵌合、支持するピニオンシャフトと、デフケースに同心状に固定されるリングギヤとを備え、デフケースが、ピニオンシャフトの両端部をデフケースからの駆動力を受け得るよう支持する一対のピニオンシャフト支持部と、ピニオンギヤ及びサイドギヤのデフケース内への装入を許容する作業窓とを有してなる差動装置に関する。
上記差動装置において、ピニオンシャフトの少なくとも一部が、正規の取付位置にあるピニオンシャフトと直交する投影面で見てリングギヤと重なるものは、例えば特許文献1に示されるように従来より知られている。
特開2018−54043号公報
上記差動装置では、デフケースに固定のリングギヤの歯部をデフケースの回転中心(所定軸線)と同心上に精度よく機械加工した後で、洗浄したデフケース内に差動ギヤ機構を組み付ける手順を取る場合があり、この場合に、ピニオンシャフトを正規の取付位置の延長線上からデフケース内に挿入しようとすると、リングギヤが邪魔となってしまう。
そこで特許文献1の差動装置では、上記ピニオンシャフト支持部としてデフケースに貫通形成されるシャフト挿入孔を通して、ピニオンシャフトを、それの正規の取付位置に対し傾かせた傾斜姿勢でデフケース内のピニオンギヤに挿入することにより、挿入途中でピニオンシャフトとリングギヤとの相互干渉を回避できるようにしている。
ところが特許文献1の装置では、ピニオンシャフトを上記傾斜姿勢でデフケース内のピニオンギヤに挿入可能とすべく、一方のピニオンシャフト支持部を構成するシャフト挿入孔(貫通孔)を特別に拡大しており、そのため、ピニオンシャフト支持部やリングギヤの形状およびレイアウトに関し制約が増え、設計自由度が低下する等の問題がある。
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、簡単な構造で従来装置の上記問題を解決可能とした差動装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、所定軸線回りに回転可能なデフケースと、前記デフケース内に前記所定軸線回りに回転可能に収容される一対のサイドギヤと、前記デフケース内に収容されて前記一対のサイドギヤに噛合する一対のピニオンギヤと、前記所定軸線と直交する方向に延びて前記ピニオンギヤを回転自在に嵌合、支持するピニオンシャフトと、前記デフケースに同心状に固定されるリングギヤとを備え、前記デフケースが、前記ピニオンシャフトの両端部を前記デフケースからの駆動力を受け得るよう支持する一対のピニオンシャフト支持部と、前記ピニオンギヤ及び前記サイドギヤの前記デフケース内への装入を許容する作業窓とを有し、前記ピニオンシャフトの少なくとも一部が、正規の取付位置にある該ピニオンシャフトと直交する投影面で見て前記リングギヤと重なる差動装置において、前記デフケースは、前記一対のピニオンシャフト支持部から離間していて前記ピニオンシャフトが通過可能なシャフト挿入孔を有しており、前記シャフト挿入孔は、該シャフト挿入孔を通して前記ピニオンシャフトを前記デフケースの外から前記正規の取付位置とは異なる所定の挿入終了位置まで、前記リングギヤと干渉せずに前記デフケース内の前記ピニオンギヤに挿入するのを許容する位置に在り、前記デフケースは、前記ピニオンギヤに対し前記挿入終了位置まで挿入された前記ピニオンシャフトの前記両端部を受入れ可能であり且つその受入れ位置から前記一対のピニオンシャフト支持部までの、該両端部の各移動を許容するシャフト移動溝を有することを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記デフケースは、前記一対のサイドギヤにそれぞれ連動回転する軸部材を嵌挿可能な円筒状ボスを一体に有し、前記円筒状ボスの中心孔は、前記ピニオンシャフトが通過可能な大きさに形成されていて、前記シャフト挿入孔に兼用されることを第2の特徴とする。
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記シャフト移動溝は、前記所定軸線及び前記ピニオンシャフトの軸線と直交する特定軸線回りに前記ピニオンシャフトを前記挿入終了位置から前記正規の取付位置まで回動させたときの前記両端部の移動軌跡にそれぞれ対応するように前記デフケースに設けた溝部分を少なくとも含み、前記溝部分は、前記正規の取付位置にある前記ピニオンシャフトの前記両端部をそれぞれ支持する特定溝部分を有していて、該特定溝部分が前記一対のピニオンシャフト支持部を構成することを第3の特徴とする。
また本発明は、第3の特徴に加えて、前記デフケースの内面は、前記所定軸線及び前記特定軸線の交点を中心とした球面状に形成され、前記溝部分は、前記特定軸線を中心とした同一円環状に延びることを第4の特徴とする。
また本発明は、第1〜第4の何れかの特徴に加えて、前記サイドギヤ又は前記ピニオンギヤのうちの少なくとも一方の背面は、該背面を支持する前記デフケースの内面よりもデフケースの外方側に張出す張出部を有し、前記デフケースの内面は、該デフケース内で互いに噛合状態にある前記サイドギヤ及び前記ピニオンギヤが、前記挿入終了位置から前記正規の取付位置まで回動する前記ピニオンシャフトと共に回動する際に該張出部との干渉を回避可能なギヤ逃げ溝を有することを第5の特徴とする。
また本発明は、第5の特徴に加えて、前記サイドギヤの背面には、前記張出部となる円筒状の張出ボス部が突設され、前記ギヤ逃げ溝は、前記サイドギヤの前記ピニオンシャフト回りの回動を規制するように前記張出ボス部と係合可能な形状に形成されることを第6の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記作業窓は、前記ピニオンシャフトが通過可能な大きさに形成されていて、前記シャフト挿入孔を兼ねることを第7の特徴とする。
本発明の第1の特徴によれば、デフケースのピニオンシャフト支持部から離間したシャフト挿入孔を通して、ピニオンシャフトをデフケース外から所定の挿入終了位置までリングギヤと干渉せずにピニオンギヤに挿入することができる。そして、挿入終了位置に達したピニオンシャフトは、これの両端部をデフケースのシャフト移動溝に案内されて正規の取付位置へと移動可能であるため、ピニオンシャフトを、リングギヤやデフケースと干渉することなく正規の取付位置に容易且つ的確に組付けることができる。これにより、ピニオンシャフト支持部となるデフケースの孔を、ピニオンシャフトの組付け過程でのリングギヤとの干渉回避のために特別に拡大する必要はなくなり、ピニオンシャフト支持部やリングギヤの形状及びレイアウトの制約が少なくなり、設計自由度が高くなる。
また第2の特徴によれば、デフケースが、一対のサイドギヤにそれぞれ連動回転する軸部材を嵌挿可能な円筒状ボスを一体に有し、その円筒状ボスの中心孔が、ピニオンシャフトが通過可能な大きさに形成されていて、シャフト挿入孔に兼用されるので、デフケースに専用のシャフト挿入孔を特設する必要はなくなり、それだけデフケースの構造簡素化に寄与することができる。
また第3の特徴によれば、シャフト移動溝は、所定軸線及びピニオンシャフトの軸線と直交する特定軸線回りにピニオンシャフトを挿入終了位置から正規の取付位置まで回動させたときの両端部の移動軌跡に対応するようにデフケースに設けた溝部分を含み、その溝部分は、正規の取付位置にあるピニオンシャフトの両端部を各々支持する特定溝部分を有し、その特定溝部分が一対のピニオンシャフト支持部を構成するので、特定溝部分の両内側面が、デフケースからピニオンシャフトへのトルク伝達面を兼ねることとなり、簡単な構造でトルク伝達が確実になされる。しかもシャフト移動溝の両内側面が、これと略直交する回転方向のトルクをピニオンシャフト端部に伝達するため、その伝達トルクを受けたピニオンシャフトがシャフト移動溝に沿う方向の移動力を受けにくくなり、ピニオンシャフトが正規の取付位置からずれ動くのを防止する上で有利な構造となる。
また第4の特徴によれば、上記溝部分は、特定軸線を中心とした同一円環状に延びるので、溝部分を旋削可能となり、これを、デフケースの球面状をなす内面と同時に旋削加工することで加工効率を高めることができる。
また第5の特徴によれば、デフケースの内面は、デフケース内でサイドギヤ及びピニオンギヤが、挿入終了位置から正規の取付位置まで回動するピニオンシャフトと共に回動する際に、サイドギヤ又はピニオンギヤの背面の張出部との干渉を回避可能なギヤ逃げ溝を有するので、サイドギヤ又はピニオンギヤの背面に張出部が突設される場合でも、デフケース内でピニオンギヤ及びサイドギヤを噛合させたギヤセットと一緒にピニオンシャフトを挿入終了位置から正規の取付位置まで支障なく回動させることができる。
また第6の特徴によれば、ギヤ逃げ溝は、サイドギヤのピニオンシャフト回りの回動を規制するようにサイドギヤ背面の張出ボス部と係合可能な形状に形成されるので、サイドギヤは、これがデフケース内に組み入れられて張出ボス部とギヤ逃げ溝とが係合状態になると、ピニオンシャフト回りに妄りに回動することなくピニオンシャフトと共に正規の取付位置まで回動可能となる。そして、サイドギヤは、ピニオンシャフトが挿入されたピニオンギヤと噛合っているので、ピニオンシャフトが正規の取付位置にあれば、デフケースに対するサイドギヤのギヤ逃げ溝に沿う方向の回動がピニオンギヤ及びピニオンシャフトにより規制される。これにより、ピニオンシャフトが正規の取付位置に達して固定されたときに、サイドギヤもデフケース内で常に正しい向きに(即ち所定軸線上に)配向可能となり、差動装置の組立作業性が更に向上する。
また第7の特徴によれば、作業窓が、ピニオンシャフトが通過可能な大きさに形成されていて、シャフト挿入孔を兼ねるので、デフケースに専用のシャフト挿入孔を特設する必要はなくなり、それだけデフケースの構造簡素化に寄与することができる。
本発明の第1実施形態に係る差動装置を示す全体縦断面図 図1の2−2線断面図 デフギヤ機構を組み付ける前のデフケース単体を示すものであって、(a)は縦断面図(図1対応図)、(b)は、図3(a)のb−b線断面図 デフケース内へのデフギヤ機構の組付け手順の前半過程を説明するための組立工程図 デフケース内へのデフギヤ機構の組付け手順の後半過程を説明するための組立工程図 図3(b)の断面図をベースとして、デフギヤ機構とデフケース内面(溝)との関係構造を示す説明図であって、特に境界線Zより上側部分は、ピニオンシャフト及びピニオンギヤとデフケース内面との関係(ピニオンギヤが正規の取付位置)を示し、また境界線Zより下側部分は、サイドギヤとデフケース内面との関係(サイドギヤが正規の取付位置より90度ずれた位置)を示す 第2実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図6対応図、(b)は図7(a)のb−b線断面図、(c)は図7(a)のc−c線断面図 第3実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図7(a)対応図、(b)は図7(b)対応図、(c)は図7(c)対応図 第4実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図5(c)対応図、(b)は図9(a)のb−b線断面図、(c)は図9(a)のc−c線断面図、(d)は図9(a)のd−d線断面図 第5実施形態に係る差動装置の要部を示す図3(b)対応図 第6実施形態に係る差動装置の要部を示す図10対応図 第7実施形態に係る差動装置の加工プロセスを簡略的に示すものであって、(a)は、シャフト移動溝の溝加工前のデフケースを示す図3(b)対応図、(b)は、溝加工後のデフケースを示す図12(a)対応図 第8実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図10対応図、(b)は図13(a)のb−b線断面図、(c)はピニオンシャフト要部の斜視図 第9実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図10対応図、(b)は図14(a)のb−b線断面図、(c)はピニオンシャフト要部の斜視図 第10実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図10対応図、(b)は図15(a)のb−b線断面図、(c)は図15(a)のc−c線断面図、(c′)は図15(c)の状態よりピニオンシャフトの位相が90度ずれた状態を示す図15(c)対応図、(d)はピニオンシャフト要部の斜視図 第11実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図10対応図、(b)は図16(a)のb−b線断面図、(c)は、図16(a)のc−c線断面図 第12実施形態に係る差動装置のデフケースを示す図3(a)対応図 第12実施形態におけるデフケース内へのデフギヤ機構の組付け手順の前半過程を説明するための組立工程図 第12実施形態におけるデフケース内へのデフギヤ機構の組付け手順の後半過程を説明するための組立工程図 第13実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図1対応図、(b)は図20(a)のb−b線断面図 第13実施形態におけるデフケース及びサブアッセンブリを分離状態で示す図3(a)対応図、(b)は、図20(a)のb−b線断面図 第13実施形態におけるデフケース内へのデフギヤ機構の組付け手順を説明するための組立工程図 第14実施形態に係る差動装置の要部を示すもので、(a)は図20(a)対応図、(b)は図20(b)対応図 第14実施形態におけるデフケース及びサブアッセンブリケースを各々単体で示す図21(a)対応図、(b)は、図21(b)対応図、(c)は図24(a)及び(d)のc−c線断面図、(d)は図24(b)のd−d線断面図 第15実施形態に係る差動装置の要部を示す、図24(d)対応図
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
図1〜図6には第1実施形態が示される。図1において、車両、例えば自動車のミッションケースMC内には、図示しない動力源(例えば車載のエンジン)からの動力を左右の車軸11,12に分配して伝達する差動装置10が収容される。差動装置10は、一体型のデフケース8と、デフケース8に内蔵されるデフギヤ機構20とを備える。
デフケース8は、概略球体状に形成されて内部にデフギヤ機構20を収納した中空のケース本体8cと、ケース本体8cの右側部及び左側部に一体に連設されて第1軸線X1上に並ぶ第1,第2軸受ボス8b1,8b2と、ケース本体8cの外周部に径方向外向きに一体に形成される環状のフランジ部8fとを備える。
第1軸線X1は、本発明の所定軸線に相当するものであって、ケース本体8cの中心Oを通る。ケース本体8cの内面8iは、ケース本体8cの中心Oと中心が一致する球面状に形成される。また第1,第2軸受ボス8b1,8b2は、それらボス8b1,8b2の外周側において軸受13,14を介してミッションケースMCに第1軸線X1回りに回転自在に支持される。
また第1,第2軸受ボス8b1,8b2の内周面には、左右の車軸(ドライブ軸)11,12がそれぞれ回転自在に嵌合されると共に、潤滑油引込み用の螺旋溝15,16(図4参照)が設けられる。螺旋溝15,16は、各軸受ボス8b1,8b2と各車軸11,12との相対回転に伴いミッションケースMC内の潤滑油をデフケース8内に送り込むねじポンプ作用を発揮可能である。
また、フランジ部8fは、ケース本体8cの中心Oに対し、第1軸線X1に沿う方向で一方側(実施形態では第1軸受ボス8b1の側)にオフセット配置される。そして、このフランジ部8fには、デフケース8のトルク入力部となるリングギヤ9が同心状に固定される。
リングギヤ9は、ヘリカルギヤ状の歯部9agを外周に有する円筒状のリム9aと、このリム9aの内周面から径方向内方に一体に突出するリング板状のスポーク9bとを備えている。スポーク9bは、それの内周端部がフランジ部8fの外周端部に同心嵌合されており、その嵌合部が溶接(例えばレーザ溶接、電子ビーム溶接等)により固定される。尚、フランジ部8fとリングギヤ9との結合手段は、溶接以外の種々の固着手段(例えばボルト結合、カシメ等)を実施可能である。
リングギヤ9の歯部9agは、エンジンに連なる変速装置の出力部となる駆動ギヤ31と噛合しており、これにより、デフケース8には駆動ギヤ31からリングギヤ9を経て回転駆動力が入力される。尚、図1において、歯部9agは、表示を簡略化するために、歯筋に沿う断面表示とした。
デフギヤ機構20は、ケース本体8cの中心Oで第1軸線X1と直交する第2軸線X2上に配置されてケース本体8cに固定、支持される直線棒状のピニオンシャフト21と、このピニオンシャフト21に回転自在に支持される一対のピニオンギヤ22,22と、各ピニオンギヤ22と噛合すると共に第1軸線X1回りに回転可能な左右のサイドギヤ23,23とを備える。ピニオンギヤ22及びサイドギヤ23は、本実施形態ではベベルギヤで構成される。
尚、ピニオンシャフト21の両端面は、図示例のようにケース本体8cの内面8iと略同一の曲率の球面で形成してもよいし、或いは、第2軸線X2と直交する平面(図示せず)で形成してもよい。或いはまた上記平面の外周部に面取りを形成してもよい。
デフケース8は、第2軸線X2に沿う方向でケース本体8cの一端部及び他端部に、後述する第1,第2ピニオンシャフト支持部81,82をそれぞれ有する。そして、第1,第2ピニオンシャフト支持部81,82は、正規の取付位置21S(図1,2参照)にあるピニオンシャフト21の第1,第2端部21a,21bをデフケース8からの回転駆動力を受け得るように(即ちトルク伝達可能に)連結、支持する。
左右のサイドギヤ23,23は、デフギヤ機構20の出力ギヤとして機能するものであり、それらサイドギヤ23,23の内周面には、左右の車軸11,12の内端部外周がそれぞれスプライン嵌合される。車軸11,12は、円筒状ボスとしての軸受ボス8b1,8b2に嵌挿されてサイドギヤ23,23に連動回転する軸部材の一例である。
而して、駆動ギヤ31からリングギヤ9を経てデフケース8に伝達された回転駆動力は、デフギヤ機構20を介して左右の車軸11,12に対し差動回転を許容されつつ分配伝達されるが、このデフギヤ機構20の動力分配機能は従来周知であるので、これ以上の説明を省略する。
ところでリングギヤ9が固定されるフランジ部8fは、前述のようにケース本体8cの中心Oに対し軸方向一方側にオフセット配置されるが、そのオフセット方向と反対方向にリングギヤ9のリム9aがフランジ部8fから少なからず(即ちピニオンシャフト21に対応する位置まで)オーバハングしている。そのため、正規の取付位置21Sにあるピニオンシャフト21と直交する投影面で見て、ピニオンシャフト21は、リングギヤ9と少なくとも一部がオーバラップする配置となる。従って、後述するように、ピニオンシャフト21をデフケース8に対し第2軸線X2上で抜差することは、リングギヤ9が障害となるため、困難である。
そこで本発明では、リングギヤ9に邪魔されずにピニオンシャフト21をデフケース8内の正規の取付位置21Sに組み込めるように、デフケース8に特別な構造が付加されている。次に、その構造の具体例を説明する。
デフケース8は、前記した第1,第2ピニオンシャフト支持部81,82から離間していてピニオンシャフト21が組付け時に通過可能なシャフト挿入孔を有しており、このシャフト挿入孔として本実施形態では、第1,第2軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bhが兼用される。即ち、中心孔8bhは、これを通してピニオンシャフト21をデフケース8の外から、正規の取付位置21Sとは位相の異なる所定の挿入終了位置21E(図5(c)参照)まで、リングギヤ9と干渉せずにデフケース8内のピニオンギヤ22に挿入するのを許容する位置に在る。
而して、ピニオンシャフト21を中心孔8bhを通してデフケース8内に挿入する際に、リングギヤ9との干渉を容易に回避可能となる。しかも中心孔8bhの内径は、ピニオンシャフト21の外径よりも十分大きいので、中心孔8bhにピニオンシャフト21を無理なく通過させることができる。 またデフケース8の球面状の内面8iには、上記挿入終了位置21Eに挿入されたピニオンシャフト21の第1,第2端部21a,21bを受入れ可能であり且つその受入れ位置から第1,第2ピニオンシャフト支持部81,82までの、第1,第2端部21a,21bの各移動を許容するシャフト移動溝41が形成される。
即ち、シャフト移動溝41は、第3軸線X3回りにピニオンシャフト21を挿入終了位置21E(図5(c)の位置)から正規の取付位置21S(図5(d)の位置)まで回動させたときのピニオンシャフト21の第1,第2端部21a,21bの移動軌跡にそれぞれ対応するようにデフケース8の内面8iに凹設した第1,第2溝部分41a,41bで構成される。
第1,第2溝部分41a,41bの両内側面は、図3(b)にも明示されるように、第1,第2軸線X1,X2を含む仮想平面Yと平行な平面で各々構成される。そして、そのピニオンシャフト21の上記回動の間、第1,第2端部21a,21bがそれぞれ第1,第2溝部分41a,41bに受容、案内されて第1,第2溝部分41a,41bに沿って移動可能である。
シャフト移動溝41は、本実施形態では第3軸線X3を中心とした同一円環状に延びる浅い環状溝で構成されており、この環状溝の、特に第1軸線X1を挟んで第1端部21a側の略半周部分が第1溝部分41aとなり、また第2端部21b側の略半周部分が第2溝部分41bとなる。
また第1,第2溝部分41a,41bは、正規の取付位置21Sにあるピニオンシャフト21の第1,第2端部21a,21bをそれぞれ係合、支持する周方向中央溝部分41as,41bsを各々含む。この周方向中央溝部分41as,41bsは、特定溝部分の一例である。
そして、ピニオンシャフト21は、これが正規の取付位置21Sにあるとき(従って第1,第2端部21a,21bがそれぞれ周方向中央溝部分41as,41bsに係合しているとき)に、例えばケース本体8c周壁の貫通孔46を通して第2端部21bに螺挿されるボルト35によりケース本体8cに固定される。而してボルト35は、ピニオンシャフト21の少なくとも一端部21bをケース本体8cに対し回り止め、固定するシャフト固定部材の一例である。
尚、シャフト固定部材は、1個のボルト35に限定されず、複数のボルトであってもよく、或いはボルト以外の種々のシャフト固定部材(例えば、ケース本体8cの貫通孔46に圧入、カシメ又は接着により固定され或いはサークリップ等の止め輪により固定された係止ピン等の係止部材)を使用可能である。
上記したボルト35は、これが1個だけでもピニオンシャフト21をデフケース8に対し第3軸線X3回りに確実に回り止めできるため、ピニオンシャフト21がデフケース8に固定可能となる。またシャフト挿入溝41における第1,第2溝部分41a,41bの周方向中央溝部分41as,41bsは、これらの両内側壁でピニオンシャフト21の第1,第2端部21a,21bを係合、挟持することで、デフケース8とピニオンシャフト21間のトルク伝達が確実に行われ、これにより、デフケース8にピニオンシャフト21が第1軸線X1回りに一体的に回転可能である。
而して、シャフト挿入溝41における第1溝部分41aの特に周方向中央溝部分41asが前記第1ピニオンシャフト支持部81を構成する。また第2溝部分41bの特に周方向中央溝部分41bsが、ボルト35と協働して前記第2ピニオンシャフト支持部82を構成する。
ところでサイドギヤ23の背面23fには、これを回転摺動可能に支持するデフケース8の内面8iよりもデフケース8の径方向外方側に張出す張出部としての短円筒状の張出ボス部23bが一体に突設される。そして、デフケース8の内面8iは、張出ボス部23bに対応してギヤ逃げ溝42を有する。
このギヤ逃げ溝42は、デフケース8内で互いに噛合状態にあるサイドギヤ23及びピニオンギヤ22が、挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで第3軸線X3回りに回動するピニオンシャフト21と共に回動する際に、張出ボス部23bとの干渉を回避可能な環状溝状に形成される。ここで「張出ボス部23bとの干渉」とは、サイドギヤ23の第3軸線X3回りの回動を阻害するような、張出ボス部23bとの機械的係合を意味する。
而して、ギヤ逃げ溝42は、本実施形態ではシャフト移動溝41と同様、第3軸線X3を中心とした同一円環状に延びる浅い環状溝で構成されており、この環状溝の、特に第1軸線X1を挟んで第1端部21a側の略半周部分が第1溝部分42aとなり、また第2端部21b側の略半周部分が第2溝部分42bとなる。
本実施形態のギヤ逃げ溝42は、シャフト移動溝41と平行に延び且つそれよりも溝幅が広く形成される。そして、シャフト移動溝41の両側に位置するギヤ逃げ溝42の底面は、球面状に形成されており、そこにピニオンギヤ22の背面22fがピニオンギヤワッシャ32を介して回転摺動可能に支持される。
またギヤ逃げ溝42は、デフケース8内でサイドギヤ23のピニオンシャフト21回りの回動を規制するように張出ボス部23bと係合可能な形状に形成される。ギヤ逃げ溝42の、第3軸線X3に沿う方向の溝幅は、張出ボス部23bの外径と略同一に設定され、またギヤ逃げ溝42の両内側面は、第1,第2軸線X1,X2を含む仮想平面Yと平行な平面に形成される。
そして、サイドギヤ23が第3軸線X3回りに回動する際に、張出ボス部23bがギヤ逃げ溝42に摺動可能に係合されることで、サイドギヤ23のピニオンシャフト21回りの回動が阻止される。これにより、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sに到達したときもサイドギヤ23は、第1,第2軸受ボス8b1,8b2と同軸に並ぶ正しい向きに在り、この位置から妄りにずれ動く虞れはない。
更にデフケース8のケース本体8cは、ピニオンギヤ22及びサイドギヤ23のデフケース8内への装入を許容する作業窓8wを有する。この作業窓8wは、ピニオンシャフト21を組み付ける前のケース本体8cの内部に、作業窓8wを通して各一対のサイドギヤ23及びピニオンギヤ22を組み込んでギヤセット状態とすることを許容する形状・位置に形成される。
次に第1実施形態の作用を説明する。
デフケース8は、その全体が金属材料(例えばアルミ、アルミ合金、鉄系合金等)で一体成形(例えば鋳造成形)され、その一体成形後に適宜、デフケース8の各部に対し機械加工が施される。
次いで、デフケース8のケース本体8cのフランジ部8fに、歯部9agを研削する前の状態のリングギヤ9のハブ9bが溶接固定され、しかる後にリングギヤ9のリム9aに対し歯部9agの研削加工が行われる。これにより、歯部9agを含むリングギヤ9をデフケース8に精度よく同心状に固定可能となり、その後で、デフケース8及びリングギヤ9の結合体を洗浄する。その洗浄により、前記結合体に歯部9agの研削で付着した削り滓等の異物が除去される。
しかる後に、以下に説明する手順(図4,図5を参照)により、デフケース8内にデフギヤ機構20の各ギヤ22,23を先組みし、次いでピニオンシャフト21を組み付けるようにする。
即ち、先ず、図4(a)→(b)に示すように、デフケース8のケース本体8c内に作業窓8wを通して各一対のサイドギヤ23、ピニオンギヤワッシャ32及びピニオンギヤ22を装入してケース本体8c内に収める。この場合、例えば、先に両サイドギヤ23を、それらの張出ボス部23bがギヤ逃げ溝40に係合するようにしてケース本体8c内に組み入れ、次いで両サイドギヤ23の相対向面間で、両ピニオンギヤワッシャ32をギヤ逃げ溝40内に組み入れ、しかる後に、ケース本体8c内に各ピニオンギヤ22を適宜、姿勢変化させつつ組み入れて、ケース本体8c内でピニオンギヤ22とサイドギヤ23相互が噛合したギヤセット状態に組立てる。そして、このギヤセットを第3軸線X3回りに適宜回動させることで、ピニオンギヤ22の中心孔が軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bhを指向する図4(b)のセット位置に置く。
しかる後、図4(b)→図5(c)に示すように、デフケース8外のピニオンシャフト21を第2軸受ボス8b2の中心孔8bhを通してデフケース8内のピニオンギヤ22に挿入し、その挿入を終えた位置が本発明の挿入終了位置21Eとなる。この場合、ピニオンシャフト21は、第1軸線X1上に沿う挿入姿勢で挿入されるため、挿入途中でリングギヤ9と干渉する虞れはない。尚、ピニオンシャフト21は、第1軸受ボス8b1を通してデフケース8内に挿入してもよい。
次いで、挿入終了位置21Eにあるピニオンシャフト21を第3軸線X3回りに回動させると、ピニオンシャフト21の第1,第2端部21a,21bが、シャフト挿入孔41の第1,第2溝部分41a,41bに受容されて同溝部分41a,41bに沿って回動する。かくして、ピニオンシャフト21を、図5(d)に示すように正規の取付位置21Sまで回動させるが、その回動過程でピニオンシャフト21の回動は、シャフト移動溝41により摺動案内される。また、そのとき張出ボス部23bは、ギヤ逃げ溝42に摺動可能に受容されるため、サイドギヤ23の第3軸線X3回りの回動の障害とはならない。
そして、図5(d)に示すようにピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sに達すると、ボルト35をケース本体8cの貫通孔46を通してピニオンシャフト21の端部21bに螺挿することで同シャフト21が固定され、かくして、差動装置10の組立作業が終了する。その組立終了状態で、左右のサイドギヤ23は、これらの張出ボス部23bとギヤ逃げ溝42との係合により、第1,第2軸受ボス8b1,8b2と同一軸線上に並ぶ正しい配向状態に保持される。
そして、デフケース8の第1,第2軸受ボス8b1,8b2を軸受13,14を介してミッションケースMCに回転自在に支持させ、更に左右の車軸11,12の内端部を第1,第2軸受ボス8b1,8b2に嵌挿させ且つ左右のサイドギヤ23,23の内周にスプライン嵌合させることで、差動装置10の自動車への組付けが終了する。
以上説明した第1実施形態によれば、デフケース8内にサイドギヤ23及びピニオンギヤ22を先に組み入れた状態で、デフケース8の第1,第2ピニオンシャフト支持部81,82から離間したシャフト挿入孔(即ち軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bh)を通してピニオンシャフト21を、デフケース8外から所定の挿入終了位置21Eまでリングギヤ9と干渉せずにピニオンギヤ22に挿入することができる。
そして、挿入終了位置21Eに達したピニオンシャフト21は、これの両端部21a,21bをデフケース8の内面8iのシャフト移動溝41に案内されて正規の取付位置21Sへと移動(より具体的には第3軸線X3回りに回動)可能であるため、ピニオンシャフト21を、リングギヤ9やデフケース8の内面8iと干渉することなく正規の取付位置21Sに容易且つ的確に組付け可能となる。
これにより、ピニオンシャフト支持部81,82となるデフケース8の孔(実施形態ではシャフト移動溝41の特定溝部分41as,41bs)を、ピニオンシャフト21の組付け過程でのリングギヤ9との干渉回避のために特別に大きくしたり貫通孔にする必要はなくなり、デフケース8の剛性強度が十分に確保される。それに関連して、ピニオンシャフト支持部81,82やリングギヤ9の形状及びレイアウトの制約も少なくなり、それだけ設計自由度が高くなる。
その上、本実施形態のピニオンシャフト支持部81,82は、デフケース8の内面8iに凹設した有底の溝状であって、デフケース8の外面に開口した貫通孔ではないため、ピニオンシャフト21が万一破断した場合でもデフケース8外に放出される事態は回避可能である。
またピニオンシャフト21をデフケース8内に差し込んだときにデフケース8内のギヤセットのピニオンギヤ22に同時に挿入可能であるばかりか、その挿入状態のままギヤセットと一緒にピニオンシャフト21を正規の取付位置21Sまでデフケース8内で回動させることができる。即ち、デフケース8内には、ピニオンシャフト21よりも先にサイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットを先組み可能なため、その先組み過程でピニオンシャフト21が邪魔になる心配はなく、組立作業性が頗る良好である。
また、本実施形態では、デフケース8の円筒状ボス、特に第1,第2軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bhがシャフト挿入孔に兼用されるため、デフケース8に専用のシャフト挿入孔を特設する必要はなくなり、それだけデフケース8の構造簡素化が図られる。
また本実施形態のシャフト移動溝41は、第3軸線X3回りにピニオンシャフト21を挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで回動させたときの第1,第2端部21a,21bの移動軌跡に対応するようにデフケース8の内面8iに凹設した第1,第2溝部分41a,41bを含み、その溝部分41a,41bは、正規の取付位置21Sにあるピニオンシャフト21の両端部21a,21bを各々係合、支持する特定溝部分(周方向中央溝部分41as,41bs)を有し、その特定溝部分41as,41bsがピニオンシャフト支持部81,82を構成する。
これにより、シャフト移動溝41(具体的には周方向中央溝部分41as,41bs)の両内側面が、デフケース8からピニオンシャフト21側へのトルク伝達面を兼ねることとなり、簡単な構造でトルク伝達が確実になされる。またシャフト移動溝41は、その全周に亘って同幅に形成されるため、ピニオンシャフト支持部81,82となる周方向中央溝部分41as,41bsと、その両側に連なる第1,第2溝部分41a,41bとの間の境界に段差が無く、組立過程でピニオンシャフト21の端部21a,21bが引っ掛かったり操作抵抗を受けたりする虞れはなく、組立作業性が良好である。
しかも、このシャフト移動溝41の両内側面が、これと略直交する回転方向のトルクをピニオンシャフト21の端部21a,21bに伝達するため、その伝達トルクを受けたピニオンシャフト21がシャフト移動溝41に沿う方向の移動力を受けにくくなり、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sからずれ動くのを防止する上で有利な構造となる。従って、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sにあるときに、ピニオンシャフト21の少なくとも一端部21bをボルト35等の固定手段で単に回り止めするだけで、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sより逸脱するのを容易に防止でき、しかもその固定手段は、荷重負担が小さいことから、構造簡素化が図られる。
更にシャフト移動溝41の第1,第2溝部分41a,41bは、第3軸線X3を中心とした同一円環状に延びている。これにより、これら溝部分41a,41bを旋盤等の旋削装置で旋削可能となり、これをデフケース8の球状内面8iと同時に旋削加工すれば全体として加工効率を高めることができる。
その上、シャフト移動溝41は、第1,第2軸線X1,X2と直交する第3軸線X3回りに延びる円環状の溝のみで構成されるため、溝構成が簡単でコスト節減に寄与し得るばかりか、このシャフト移動溝41に摺動案内されるピニオンシャフト21を挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで最短距離で移動させることができる。
また本実施形態のサイドギヤ23の背面23fには円筒状の張出ボス部23bが突設されているが、デフケース8内でピニオンギヤ22及びサイドギヤ23よりなるギヤセットと一緒にピニオンシャフト21を挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで第3軸線X3回りに回動させる際に、張出ボス部23bの外端部がデフケース8の内面8iのギヤ逃げ溝42に受容されるため、張出ボス部23bがサイドギヤ23の第3軸線X3回りのスムーズな回動を妨害することはない。
その上、ギヤ逃げ溝42は、ピニオンシャフト21が挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで第3軸線X3回りに回動するときにサイドギヤ23のピニオンシャフト21回りの回動を規制するように、張出ボス部23bと係合可能な形状に形成される。これにより、サイドギヤ23は、これがデフケース8内に組み入れられて張出ボス部23bとギヤ逃げ溝42とが係合状態になると、ピニオンシャフト21回りに妄りに回動することなくピニオンシャフト21と共に正規の取付位置21Sまで回動可能となる。尚、サイドギヤ23はそれぞれピニオンギヤ22と噛合っており、ピニオンギヤ22にはピニオンシャフト21が挿入されているので、正規の取付位置21Sに達したピニオンシャフト21がデフケース8にボルト35で固定された状態では、デフケース8に対するサイドギヤ23の第3軸線X3回りの回動が、サイドギヤ23とデフケース8間に介在するピニオンギヤ22及びピニオンシャフト21により規制される。
従って、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sに達したときに、サイドギヤ23もデフケース8内で常に正しい向きに(即ち第1軸線X1上に)配向可能となるため、軸受ボス8b1,8b2内に嵌挿させる車軸11,12の内端部を左右のサイドギヤ23に支障なくスムーズに挿入(スプライン嵌合)させることができる。
またギヤ逃げ溝42は、シャフト移動溝41とは別の溝として、シャフト移動溝41よりも広幅の溝に形成されているため、サイドギヤ23の張出ボス部23bの幅のサイズに関係なくサイドギヤ23の移動(実施形態では第3軸線X3回りの回動)が可能となり、サイドギヤ23の設計自由度が高くなる。
しかも実施形態のギヤ逃げ溝42は、これの幅広の底面でピニオンギヤ22の背面22fを支持するので、それだけピニオンギヤ22の支持面積を増やし同ギヤ22の支持を安定させることができる。即ち、ピニオンギヤ22の背面22fを、仮にギヤ逃げ溝42を跨ぐようにしてデフケース8の内面8iに支持させた場合には、その背面22fがギヤ逃げ溝42の開口縁部に掛かって互いに応力集中が生じ易くなるため、背面22f又はギヤ逃げ溝42の強度を強化する必要があり、また背面22fにピニオンギヤワッシャを当接させる場合にはワッシャの剛性も高くする必要があるが、このような不都合は、ギヤ逃げ溝4の底面でピニオンギヤ22の背面22fを支持させることで解消される。 更にギヤ逃げ溝42は、第3軸線X3を中心とした同一円環状に延びている。これにより、ギヤ逃げ溝42もまた、前記したシャフト移動溝41と同様、旋盤等の旋削装置で旋削可能となり、これをデフケース8の球状内面8iと同時に旋削加工すれば全体として加工効率を高めることができる。
次に図7を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、ピニオンギヤ22及びサイドギヤ23の各背面22f,23fをデフケース8の内面8iに直接、回転摺動可能に支持したものを示したが、第2実施形態では、ピニオンギヤ22及びサイドギヤ23の各背面22f,23fをピニオンギヤワッシャ32及びサイドギヤワッシャ33をそれぞれ介してデフケース8の内面8i(より具体的にはギヤ逃げ溝42の底面)に回転摺動可能に支持させている。
そして、特にサイドギヤワッシャ33の外周部には、デフケース8の中心Oから見て前記仮想平面Yと各々平行に延びる一対のカット面33cが二面取り加工されており、その両カット面33cがギヤ逃げ溝42の両内側面にそれぞれ係合(換言すれば、小判形のサイドギヤワッシャ33がカット面33cでギヤ逃げ溝42に嵌合)することで、サイドギヤワッシャ33の自転を防止できるばかりか、サイドギヤ23の張出ボス部23bをサイドギヤワッシャ33を介してギヤ逃げ溝42の両内側面に係合させてサイドギヤ23のピニオンシャフト21回りの回動を防止することができる。
第2実施形態の他の構造は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第2実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図8を参照して、第3実施形態について説明する。第2実施形態では、サイドギヤワッシャ33の外周部にのみ自転防止用のカット面33cを形成したが、第3実施形態では、ピニオンギヤワッシャ32の外周部にも、ギヤ逃げ溝42の両内側面に係合する一対のカット面32cが二面取り加工されている。従って、その両カット面32cがギヤ逃げ溝42の両内側面にそれぞれ係合(換言すれば、小判形のピニオンギヤワッシャ32がカット面32cでギヤ逃げ溝42に嵌合)することで、ピニオンギヤワッシャ32の自転を防止できるようになっている。
更に第3実施形態では、ピニオンシャフト21の外径がシャフト移動溝41の溝幅よりも小さく設定されており、ピニオンシャフト21がデフケース8と直接当接して伝達トルクを受ける構造ではない。即ち、デフケース8に入力された第1軸線X1回りの回転駆動力は、ギヤ逃げ溝42に嵌合するピニオンギヤワッシャ32を介してピニオンシャフト21に伝達される。
そして、第3実施形態の他の構造は、第2実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第3実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
ところでピニオンシャフト21をデフケース8に直接当接させる場合に、その当接面積を増大させて接触面圧を低減することでデフケース8の荷重負担を軽減するためには、ピニオンシャフト21を長くして当接面積をデフケース8の径方向に拡大するか、或いはピニオンシャフト21を大径化して当接面積を周方向に拡大することが考えられる。しかし前者の場合には、ピニオンシャフト21を長くすることでデフケース8が径方向に大型化し、また後者の場合には、ピニオンシャフト21を大径化することでピニオンギヤ22も大径化する不都合がある。
これに対して、第3実施形態では、ピニオンシャフト21に比べ外径の設定自由度が大きいピニオンギヤワッシャ32を介して、ピニオンシャフト21をデフケース8に当接させている。そのため、大径のピニオンギヤワッシャ32を用いることで、上記不都合を回避しつつデフケース8のピニオンシャフト21に対する実質的な接触面積を拡大することができ、これにより、デフケース8の面圧低減が図られてデフケース8の荷重負担が軽減可能となる。
次に図9を参照して、第4実施形態について説明する。第1〜第3実施形態では、サイドギヤ23の背面23fに、デフケース8内へのギヤセット組込み状態でサイドギヤ23がピニオンシャフト21回りに回動するのを防止する目的のために円筒状の張出ボス部23bが突設されるものを示したが、第4実施形態では、同様の目的のために、シャフト移動溝41を嵌合可能な一対の円弧状係合凸部23b′がサイドギヤ23の背面23fに、サイドギヤ23の回転軸線を挟んで一方側と他方側に配設される。
デフケース8には、サイドギヤ23が正規の取付位置にある状態で第1軸線X1回りに自転する時、デフケース8の内面8iとの干渉を回避して自転を許容する環状凹部44が、各軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bhの内方開口端を同心状に囲繞するよう設けられる。而して、環状凹部44は、円弧状係合凸部23b′をガタのほぼ無い状態で嵌合可能なサイズに形成されていて、サイドギヤ23の第1軸線X1回りの自転の際に円弧状係合凸部23b′がデフケース8の内面8iと干渉するのを回避可能である。また環状凹部44の内径は、ピニオンギヤ22の背面22fの外径よりも小さく設定されていて、その背面22fが環状凹部44に嵌まり込むのを防止可能である。
この第4実施形態では、デフケース8内に、ピニオンシャフト21よりも先にギヤセットを組込む際に、図9に示すように、サイドギヤ23の背面23fの一対の円弧状係合凸部23b′をシャフト移動溝41内に嵌合させるようにして両サイドギヤ23を先組みし、次いでデフケース8内にピニオンギヤ22を組み入れるようにする。その後、ピニオンシャフト21をデフケース8外から一方の軸受ボス8b2の中心孔8bhを通してピニオンギヤ22に挿入することで図9に示すセット状態となる。
しかる後に、ピニオンシャフト21を第3軸線X3回りに正規の取付位置21Sまで回動させるが、その回動過程で円弧状係合凸部23b′はシャフト移動溝41内をその長手方向に沿って摺動可能である。そして、ピニオンシャフト21が、サイドギヤ23と共に正規の取付位置S21に達したとき、円弧状係合凸部23b′は環状凹部44にガタがほぼ無い状態で第1軸線X1回りに相対回動可能に嵌合した状態となり、その状態(即ち正規の取付位置)でサイドギヤ23は、自転を制限されることなく、ピニオンシャフト21回りの回動が規制される。
而して、第4実施形態では、シャフト移動溝41が、第1〜第3実施形態と同様、ピニオンシャフト21の端部21a,21bを受容してピニオンシャフト21の第3軸線X3回りの回動を許容する本来的機能を発揮することに加えて、そのピニオンシャフト21の回動過程で円弧状係合凸部23b′を摺動可能に受容するギヤ逃げ溝の機能も兼備する。このようにシャフト移動溝41がギヤ逃げ溝の機能も兼ねることで、デフケース8の内面8iには、第1〜第3実施形態のようなシャフト移動溝41とは別個の専用ギヤ逃げ溝42を併設して二段溝とする必要はなくなる。これにより、デフケース8のケース本体8cの肉厚が二段溝のために薄くなることが抑制され、即ち、デフケース8の肉厚確保を図る上で有利となる。
尚、円弧状係合凸部23b′は、図示例のような円弧状に限定されず、シャフト移動溝41内を摺動可能で、且つ環状凹部44にガタがほぼ無い状態で嵌合する形状であれば種々の形状を選定可能であり、例えば一対のピン状の凸部であっても良い。
そして、第4実施形態の他の構造は、第2実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第4実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図10を参照して、第5実施形態について説明する。第1〜第4実施形態では、シャフト移動溝41を全周に亘り同幅で機械加工(具体的には旋削加工)するものを示したが、第5実施形態では、シャフト移動溝41の、ピニオンシャフト支持部81,82となる特定溝部分(即ち第1,第2溝部分41a,41bの周方向中央溝部分41as,41bs)だけを機械加工、例えば切削加工する一方で、シャフト移動溝41のその他の溝部分41a,41bは、上記特定溝部分よりも幅広の溝に形成され、その溝内面は鋳造後に機械加工しない鋳放し面とされる。そして、その境界付近におけるシャフト移動溝41の両内側面は、溝幅がピニオンシャフト支持部81,82(即ち周方向中央溝部分41as,41bs)に近づくにつれて漸減する傾斜面となるよう鋳造形成され、その傾斜面により、シャフト移動溝41内を摺動するピニオンシャフト21の端部21a,21bの引っ掛かりが生じにくくなっている。
そして、第5実施形態の他の構造は、第2実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第5実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
更に第5実施形態では、シャフト移動溝41のうち、鋳放し面となる溝部分41a,41bは、ピニオンシャフト支持部81,82となる特定溝部分(即ち周方向中央溝部分41as,41bs)よりも多少幅広に鋳造成形されるため、鋳放し面の寸法公差が大きくても特段の問題は生じない。またシャフト移動溝41のうち高い寸法精度が要求されるピニオンシャフト支持部81,82(即ち周方向中央溝部分41as,41bs)だけが機械加工されるため、切削加工量を減らして、コスト節減が図られる。
次に図11を参照して、第6実施形態について説明する。第1〜第4実施形態では、両内側面が前記仮想平面Yと平行なシャフト移動溝41及びギヤ逃げ溝42を各々、全周に亘り同幅で機械加工(具体的には旋削加工)するものを示したが、第6実施形態では、シャフト移動溝41及びギヤ逃げ溝42の各々の両内側面が、溝底面から溝開口端に近づくにつれて徐々に幅広となる傾斜面に機械加工される。
即ち、被加工物であるデフケース8を第3軸線X3回りに回転させて内面8iを旋削加工する際に、被加工面が第3軸線X3と直交する平面であると、旋削工具Tの刃部を第3軸線X3と直交する方向に送りづらく、加工上の制約が増える不利点があるが、第6実施形態では、シャフト移動溝41及びギヤ逃げ溝42の両内側面を上記のような傾斜面としたことにより、旋削工具Tの刃部の送りに関する上記不利点が解消される。
そして、第6実施形態の他の構造は、第2実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第6実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図12を参照して、第7実施形態について説明する。第1〜第6実施形態ではシャフト移動溝41を全周に亘り旋削加工するものを示したが、第7実施形態では、デフケース8の球面状の内面8iのうちシャフト移動溝41だけは溝加工専用工具T′で切削加工する。例えば、図12(a)に示すようにデフケース8の内面8iを、幅広のギヤ逃げ溝42をも含めて先に旋削加工しておき、次いで図12(b)に示すように幅狭のシャフト移動溝41だけを溝加工専用工具T′で切削加工する。 そして、第7実施形態の他の構造は、第2実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第7実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
更に第7実施形態では、溝加工専用工具T′が高い加工自由度を以て溝加工可能であるため、加工対象となるシャフト移動溝41の溝幅が狭くても、或いはシャフト移動溝41の両内側面が溝底面に対し垂直であっても、シャフト移動溝41を無理なく加工可能となり、溝形状の選定自由度が高くなる。
次に図13を参照して、第8実施形態について説明する。第1〜第7実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bが中間部と同様、一様等径の円柱状(従ってシャフト移動溝41の両内側面に対し線接触状態)であるものを示したが、第8実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bの外周面に、シャフト軸線を挟んで平行する一対のカット面21cが二面取り加工されており、その両カット面21cの相互間隔とシャフト移動溝41の溝幅が、シャフト移動溝41の全域に亘り略同一に設定される。従って、ピニオンシャフト21をデフケース8内にセットした状態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bは、カット面21cでシャフト移動溝41に摺動可能に嵌合していて、シャフト移動溝41の両内側面と面接触状態にある。
このため、正規の取付位置21Sにあるピニオンシャフト21の両端部21a,21bとシャフト移動溝41との間での、トルク伝達面となる接触面の面積が増えて、接触面圧の低減が図られるため、デフケース8のピニオンシャフト21に対する支持強度が高くなる。しかも二面取り加工により、ピニオンシャフト21の自転が確実に阻止される。
そして、第8実施形態の他の構造は、第2実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第8実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図14を参照して、第9実施形態について説明する。第8実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bの外周面に、シャフト軸線を挟んで平行する一対のカット面21cが二面取り加工されるものを示したが、第9実施形態では、第8実施形態をベースとして、更にピニオンシャフト21の両端部21a,21bの端面に、一対のカット面21cに挟まれてカット面21cと平行に延びる幅広溝21mが形成される。この溝21mの深さは、カット面21cの高さと略同じに設定される。
一方、シャフト移動溝41の底面には、上記した幅広溝21mに嵌合する幅広突起41mが形成される。即ち、シャフト移動溝41は、幅広突起41mを挟んで平行する一対の小シャフト移動溝411,412に分割構成される。従って、第9実施形態では、デフケース8の正転時及び逆転時の何れの場合でも、デフケース8からピニオンシャフト21側へのトルク伝達面が第8実施形態と比べて広く確保可能となり、それだけ接触面積が広くなって接触面での面圧低減が図られる。
そして、第9実施形態の他の構造は、第8実施形態と同様であるので、各構成要素には、第8実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第9実施形態でも、第8実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図15を参照して、第10実施形態について説明する。第8実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bの外周面に一対のカット面21cが二面取り加工されており、シャフト移動溝41の溝幅が溝全域に亘って両カット面21cの相互間隔と略同一に設定されるが、第10実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bに第8実施形態と同様の二面取り加工がなされる一方で、シャフト移動溝41の、ピニオンシャフト支持部81,82となる特定溝部分(前述の周方向中央溝部分41as,41bs)の両内側面は円弧状に凹曲形成される。その凹曲部41rは、ピニオンシャフト21のカット面21cに挟まれた円弧状外周面21rを相対回転可能に嵌合、保持できる円弧面に形成される。ここで、両端部21a,21bの断面形状から明らかなように、円弧状外周面21rに垂直な方向の断面二次モーメントは、カット面21cに垂直な方向の断面二次モーメントより大きくなる。
従って、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sまでシャフト移動溝41を回動してきたときに、ピニオンシャフト21を90度自転させることにより、シャフト端部21a,21の円弧状外周面21rがシャフト移動溝41の両内側面の上記凹曲部41rに嵌合するようになり、その嵌合により、ピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sに保持される。このようにピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sにあるときに、それの両端部21a,21bは、特に円弧状外周面21rがトルク伝達面となり、その両端部21a,21bの断面二次モーメントの大きい部分でトルクを受けるので、応力が低く抑えられ、シャフトの曲げ剛性アップが図られる。
尚、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bを円筒面状として、その外径とシャフト移動溝41の幅を略同一にした場合でも、断面二次モーメントが大きいピニオンシャフト21の円筒面で伝達トルクを受けられるが、その場合は、シャフト移動溝41の両内側面に両端部21a,21bの円筒面が線接触するため、接触面積が減って接触面圧が大きくなってしまう。これに対し、第10実施形態では、円弧状外周面21rと凹曲部41rが面接触して面圧低減が図られるので、デフケース8のピニオンシャフト21に対する支持強度を高める上で更に有利である。
また第10実施形態では、ピニオンシャフト21を正規の取付位置21Sに保持するための1個のボルト35が、ピニオンシャフト21の中心軸線に対しオフセット配置されてピニオンシャフト21に螺挿される。これにより、ボルト35が1個だけでもピニオンシャフト21が正規の取付位置21Sで妄りに自転する虞れはなくなり、ピニオンシャフト21は正規の取付位置21Sに確実に回り止め固定される。
そして、第10実施形態の他の構造は、第8実施形態と同様であるので、各構成要素には、第8実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第10実施形態でも、第8実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図16を参照して、第11実施形態について説明する。第1〜第7実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bが中間部と同様、一様等径の円柱状(従ってシャフト移動溝41の両内側面に対し線接触状態)であるものを示したが、第11実施形態では、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bの外周面に、シャフト軸線を挟んで平行する一対のカット面21fが、シャフト軸線方向に広範囲に二面取り加工される。これにより、カット面21fとピニオンギヤ22の内周面との間には、ピニオンシャフト21の長手方向に延びる扁平な潤滑油通路が確保され、ピニオンギヤ22の被潤滑部への潤滑油供給を効率よく行うことができる。
この第11実施形態においてカット面21fは、シャフト移動溝41の両内側面に係合、対面しない位置に配置されるが、仮にピニオンシャフト21が自転してシャフト移動溝41の両内側面に対面した位置にカット面21fが来てしまうと、ピニオンシャフト21をシャフト移動溝41の両内側面にガタなく的確に当接させることが難しくなる。そこで第11実施形態では、ピニオンシャフト21を正規の取付位置21Sに保持するための1個のボルト35を、第10実施形態と同様に、ピニオンシャフト21の中心軸線に対しオフセット配置してピニオンシャフト21に螺挿することで、ピニオンシャフト21が妄りに自転しないようにしている。
そして、第11実施形態の他の構造は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第11実施形態でも、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図17〜図19を参照して、第12実施形態について説明する。先の実施形態では、シャフト挿入孔として第1,第2軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bhを用い、且つデフケース8の内面8iに凹設されるシャフト移動溝41を第3軸線X3回りに延びる円環状の溝部分(即ち第1,第2溝部分41a,41b)のみで構成して、ピニオンシャフト21を挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで最短距離で移動させるようにしたものを示した。これに対して第12実施形態では、シャフト挿入孔として作業窓8wを用い、且つシャフト移動溝41が、第3軸線X3回りに延びる円環状の溝部分(即ち第1,第2溝部分41a,41b)と、作業窓8wを通してデフケース8内のピニオンギヤ22に挿入されたピニオンシャフト21の両端部21a,21bを第1,第2溝部分41a,41bに誘導案内するピニオンシャフト用接続溝41jとで、途中が屈曲した溝状に構成される。
ピニオンシャフト用接続溝41jは、第3軸線X3と直交する投影面(図17参照)で見てデフケース8の中心Oで第1軸線X1と斜交する第4軸線X4回りに円環状に延びていて、シャフト移動溝41の第1,第2溝部分41a,41bの各々の途中部分と直接連通している。またピニオンシャフト用接続溝41jの中間部は、作業窓8wにより途切れている。
また第12実施形態では、作業窓8wを通して挿入されたピニオンシャフト21と共にピニオンギヤ22が第4軸線X4回りに回動する過程でピニオンギヤ22の背面22fを逃げながらギヤ逃げ溝42に誘導案内するピニオンギヤ用接続溝42jがデフケース8の内面8iに凹設される。このピニオンギヤ用接続溝42jは、ピニオンシャフト用接続溝41jと平行に延び且つそれよりも広幅で浅く形成される。
而して、ピニオンギヤ用接続溝42jは、第4軸線X4回りに円環状に延びており、ギヤ逃げ溝42の第1,第2溝部分42a,42bの各々の途中部分と直接連通している。またピニオンギヤ用接続溝42jの中間部は、作業窓8wにより途切れている。
第12実施形態の差動装置10の組立に際しては、第1実施形態の図4(a)(b)の手順と同様の要領で、先ず、図18(a)→(b)に示すようにデフケース8内に作業窓8wを通して各一対のサイドギヤ23及びピニオンギヤ22を順次装入してケース本体8c内に収める。この場合、ケース本体8c内でギヤセットは、両サイドギヤ23が張出ボス部23bをギヤ逃げ溝42に係合させつつサイドギヤ軸線を第4軸線X4上に位置させ、且つ一方のピニオンギヤ22がそれの中心孔を作業窓8w内に臨ませるような図18(b)のセット位置に置く。
しかる後、デフケース8外のピニオンシャフト21を、図18(b)に示すように作業窓8wを通してデフケース8内のピニオンギヤ22に挿入し、その挿入を終えた位置が図18(b)の二点鎖線で示す挿入終了位置21Eとなる。この場合、ピニオンシャフト21は、リングギヤ9側方での傾斜挿入姿勢でデフケース8内に挿入されるため、挿入途中でリングギヤ9と干渉する虞れはない。
次いで、ピニオンシャフト21を、ギヤセットと一緒に挿入終了位置21Eから第4軸線X4回りに所定角度を回動させることにより、ピニオンシャフト21の両端部21a,21bはピニオンシャフト用接続溝41jを摺動、通過して、図19(c)に示すようにシャフト移動溝41の第1,第2溝部分41a,41bにそれぞれ到達する。またその回動過程で、ピニオンギヤ22の背面22fがピニオンギヤ用接続溝42j内を摺動、通過してギヤ逃げ溝42内に移動するので、ギヤセットを第4軸線X4回りに無理なく回動させることができる。
次いで、図19(d)に示すように、ギヤセットを第3軸線X3回りに回動させてピニオンシャフト21を正規の取付位置21Sまで移動させ、そこでボルト35によりピニオンシャフト21がデフケース8に固定される。尚、このギヤセットの回動過程で張出ボス部23bは、ギヤ逃げ溝42に摺動可能に受容されるため、サイドギヤ23の第3軸線X3回りの回動の障害とはならない。
かくして、第12実施形態によれば、シャフト移動溝41が途中屈曲することで、ピニオンシャフト21を挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sまで回動させるための移動経路が先の実施形態よりも複雑化するものの、作業窓8wがピニオンシャフト21の通過可能な大きさに形成されていて、シャフト挿入孔に兼用可能となる。これにより、先の実施形態と同様、デフケース8に専用のシャフト挿入孔を特設する必要はなくなり、それだけデフケース8の構造簡素化が図られる。
次に図20〜図22を参照して、第13実施形態について説明する。先の実施形態では、デフギヤ機構20をデフケース8に組み付けるに当たり、サイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットをデフケース8に予め直接組み入れてからピニオンシャフト21をギヤセットのピニオンギヤ22に挿入するものを示したが、第13実施形態では、デフケース8のケース本体8cに着脱可能なサブケースUに、サイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットを一纏めにセットしておき、これをケース本体8cに一挙に組付けできるようにしている。
ケース本体8cには、第3軸線X3を中心軸線とした円筒孔状の結合孔8chが貫通形成されており、サブケースUは、これが結合孔8chに対し第3軸線X3の方向から抜差可能に嵌合できるよう円筒状に形成される。
サブケースUは、ピニオンギヤワッシャ及びサイドギヤワッシャを一体化した所謂一体型ワッシャの機能を兼備するものであり、サブケースUの内面Uiは球面状に形成され、その内面Uiでピニオンギヤ22及びサイドギヤ23の各背面22f,23fをそれぞれ回転摺動可能に支持する。またサブケースUの、第3軸線X3に沿う方向の両端は開口しており、その開口部を通してサブケースU内にサイドギヤ23及びピニオンギヤ22が順次に装入可能である。
更にサブケースUには、ピニオンシャフト21を抜差可能に嵌挿させる一対のシャフト嵌合孔Uh1が第2軸線X2上に形成され、またサイドギヤ23の背面22fの張出ボス部23bを回転自在に嵌合させる一対のボス嵌合孔Uh2が第1軸線X1上に形成される。そして、両ボス嵌合孔Uh2には、軸部材としての車軸11,12が抜差可能に嵌挿される。
またケース本体8cの結合孔8chの、第3軸線X3に沿う方向の両端は、円形に開口しており、その開口部が本発明の作業窓8wとして機能する。即ち、ケース本体8cの結合孔8chにサブケースU(従ってサブケースU内にセットされたサイドギヤ23及びピニオンギヤ22)が装入可能である。また結合孔8chの内周面には、ピニオンシャフト21が第3軸線X3回りに回動する際にそれの両端部21a,21bを受容可能なシャフト移動溝41が、第3軸線X3回りに円環状に凹設される。而して、第13実施形態においても、シャフト移動溝41の機能は先の実施形態と同様である。 第13実施形態の差動装置10の組立に際しては、先ず、サブケースU内に、サイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットを組込んでサブアッセンブリSAを予め先組みする。この先組み過程では、例えば一対のサイドギヤ23を、張出ボス部23bをボス嵌合孔Uh1に嵌合させるようにして先にサブケースUにセットし、次いでピニオンギヤ22をサイドギヤ23と噛合させつつサブケースUにセットする。
更にそのサブアッセンブリSAを、図22(a)に示す如くデフケース8のケース本体8cとリングギヤ9の張出部との間の後組み用スペース100に移動させ、そこから、図22(b)に示す如く第3軸線X3に沿う方向に移動させてケース本体8cの結合孔8ch内に嵌挿する。この場合、サブケースU内の両ピニオンギヤ22は、これらの軸線が第1軸線X1と平行するよう予めセットしておくことが望ましい。
次いで、デフケース8の一方の軸受ボス8b2の中心孔8bhを通してピニオンシャフト21をデフケース8内に差込んでギヤセットのピニオンギヤ22に挿入する。その挿入を終えた位置が、図22(c)に示す挿入終了位置21Eとなり、この位置からピニオンシャフト21の両端部21a,21bがシャフト移動溝41内に受入れ可能となる。しかる後、サブケースUをケース本体8cに対し第3軸線X3回りに90度回動させると、これと一体的にサブケースU内のギヤセットも回動し、これにより、ピニオンシャフト21がシャフト移動溝41に摺動案内されて第2軸線2上の正規の取付位置21Sに到達し、またサイドギヤ23が第1軸線X1上の正規の取付位置に到達する。
そこでボルト35を、ケース本体8cの貫通孔46を通してピニオンシャフト21の端部21bに螺挿すれば、図20に示すようにケース本体8cにサブケースU及びピニオンシャフト21が固定される。尚、その固定手段は、ボルト35に限定されず、例えば、貫通孔46に嵌挿されてピニオンシャフト21に係止される係止ピンを圧入、カシメ、溶接等でケース本体8cに固定してもよい。尚また、本実施形態では、共通の固定手段(ボルト35)でサブケースUをピニオンシャフト21と共にケース本体8cに固定しているが、サブケースU及びピニオンシャフト21を別々の固定手段でケース本体8cに個別に固定してもよい。
かくして、第13実施形態によれば、サブケースU内にサイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットを先組みしておき、そのサブケースUをデフケース8内に組み込んだ後、ピニオンシャフト21を、リングギヤ9と干渉しない位置からデフケース8内に差し込んで先組みのピニオンギヤ22に挿入でき、その挿入後にピニオンシャフト21を正規の取付位置21Sまで回動させてデフケース8に固定可能である。即ち、先の実施形態と同様、デフケース8に固定のリングギヤ9と干渉することなくピニオンシャフト21のデフケース8内への挿入が可能となる。
しかもサブケースU内にサイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットを先組みして一纏めにしたものを、サブアッセンブリSAとして取り扱い可能であり、これをデフケース8に一挙に組み付けることができて組立作業性が良好である。また一体型ワッシャとして機能するサブケースUは、それの球面状をなす内面Uiの、サイドギヤワッシャとして機能する領域と、ピニオンギヤワッシャとして機能する領域とを旋盤で精度よく一挙に旋削加工できるため、サイドギヤワッシャ及びピニオンギヤワッシャを個別に設ける場合と比べ加工精度のバラツキが無くなる。そして、ケース本体8cに本組みする前のサブアッセンブリSAの段階で、サイドギヤ23及びピニオンギヤ22相互のバックラッシュ調整を容易に行うことができる。
その上、デフケース8に入力された回転トルクが、ケース本体8cのシャフト移動溝41を経てピニオンシャフト21に伝達されるだけでなく、ケース本体8cに嵌装されるサブケースUを経てもピニオンシャフト21に伝達されるため、トルク伝達に伴うケース本体8cの荷重負担が軽減され、ケース本体8cの薄肉軽量化が達成可能となる。
そして、第13実施形態の他の構造は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。而して、第13実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図23,図24を参照して、第14実施形態について説明する。第14実施形態は、第13実施形態の変形例に相当する。即ち、第14実施形態も第13実施形態と同様、デフケース8のケース本体8cに着脱可能なサブケースU′に、サイドギヤ23及びピニオンギヤ22よりなるギヤセットを一纏めにセットしておき、これをケース本体8cに一挙に組付けできるようにしている。但し、第14実施形態では、サブケースU′が、内周面のみならず外周面も球面状に形成された筒状体で構成されており、これに対応してデフケース8の結合孔8chの内周面も球面状に形成される。
第14実施形態の組立手順は、第13実施形態と基本的に同様であるが、第13実施形態の図22(a)に対応した、サブアッセンブリSA′のケース本体8cへの組付け過程では、図24(c)(d)に示すようにサブアッセンブリSA′のサイドギヤ23を、サイドギヤ軸線が第3軸線X3の方向を向くように配向される。そして、ケース本体8cの結合孔8chに対し上記配向のサブアッセンブリSA′が第3軸線X3の方向に嵌挿できるように、ケース本体8cの一側壁(図24(c)で右側壁)にはサブアッセンブリSA′の、第3軸線X3と直交する投影面での外形と略合致する形状(図24(d)に明示)の作業窓8wが形成される。
即ち、作業窓8wの長手方向両端縁部は、サブケースU′の対応する球面状の両外端部が第3軸線X3方向に通過できるように、第3軸線X3を中心軸線とする第1円筒面51に形成され、また同作業窓8wの長辺部中間は、サイドギヤ23の、サブケースU′の開口より外側に食み出した円弧部分23aが第3軸線X3方向に通過できるように、第3軸線X3を中心軸線とし且つ第1円筒面51よりも小径の第2円筒面52に形成される。
ところで第13実施形態では、サブアッセンブリSAを作業窓8wを通してケース本体8cに嵌装した後、直ちにピニオンシャフト21をサブアッセンブリSA内のピニオンギヤ22に挿入可能であり、その挿入後は、サブケースUをピニオンシャフト21と共に第3軸線X3回りに単に90度回動させるだけで、ギヤセットの全てを正規の取付位置に移動させることができた。
これに対し、第14実施形態では、サブアッセンブリSA′を、図24(c)(d)に示す組込み姿勢でケース本体8cの結合孔8chに作業窓8wを通して第3軸線X3の方向に嵌装し、且つその後で第3軸線X3回りに90度回動させることで、初めてデフケース8の一方の軸受ボス8b2の中心孔8bhを通してピニオンシャフト21がピニオンギヤ22に挿入可能となる。その挿入後、サブアッセンブリSA′をピニオンシャフト21と共に第3軸線X3回りに90度、反転回動させることでピニオンシャフト21(従ってピニオンギヤ22)が第2軸線X2上の正規の取付位置21Sとなり、その位置を保持すべくピニオンシャフト21をボルト35でデフケース8(具体的にはケース本体8c)に固定する。
次いでサブケースU′をピニオンシャフト21回りに90度、回動させると、サイドギヤ23が第1軸線X1上の正規の取付位置に置かれ、組立作業が終了する。
第14実施形態のその他の構成は、第13実施形態と基本的に同様であるので、第14実施形態の各構成要素には、第13実施形態の対応する構成要素の参照を付すに止め、それ以上の構造説明は省略する。而して、第14実施形態でも、第13実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
次に図25を参照して、第15実施形態について説明する。第15実施形態は、第14実施形態の変形例に相当する。即ち、第15実施形態では、第14実施形態と同様、サブアッセンブリSA′がケース本体8c内に嵌挿できるようにケース本体8cの一側壁に、サブアッセンブリSA′の投影面に対応した形状の作業窓8wが形成されるが、この作業窓8wの向きが、第14実施形態の作業窓8wに対し第3軸線X3回りに90度位相をずらした向き(より具体的には作業窓8wの正面視で窓の長軸が第1軸線X1と重なる向き)に設定される。
而して、第15実施形態の組立手順は、第14実施形態と基本的に同じであるが、特にサブアッセンブリSA′を、図25に示す組込み姿勢でケース本体8cに作業窓8wを通して嵌装した状態で、直ぐにデフケース8の一方の軸受ボス8b2の中心孔8bhを通してピニオンシャフト21をギヤセットのピニオンギヤ22に挿入可能となる点のみが第14実施形態と異なる。そして、そのピニオンシャフト21の挿入後の組立手順は、第14実施形態と同様である。
第15実施形態のその他の構成は、第14実施形態と基本的に同様であるので、第15実施形態の各構成要素には、第14実施形態の対応する構成要素の参照を付すに止め、それ以上の構造説明は省略する。而して、第15実施形態でも、第14実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、差動装置10を車両用、例えば自動車用の差動装置に実施したものを示したが、本発明では、差動装置10を車両以外の種々の機械装置に実施してもよい。
また前記実施形態では、ピニオンシャフト21をリングギヤ9と干渉しないでデフケース8内に挿入可能なシャフト挿入孔として、軸受ボス8b1,8b2の中心孔8bh、或いは作業窓8wを兼用した実施形態を示したが、本発明では、デフケース8に、ピニオンシャフト支持部81,82から離間して専用のシャフト挿入孔を形成してもよい。
また前記実施形態では、ピニオンシャフト21の挿入終了位置21Eが、正規の取付位置21Sにあるピニオンシャフト21を、第1,第2軸線X1,X2と直交する第3軸線X3回りに所定角度、角変位させた位置に設定されていて、ピニオンシャフト21を挿入終了位置21Eから正規の取付位置21Sに向かって最短の回動経路で回動させるものを示したが、ピニオンシャフト21の回動経路は、前記実施形態に限定されない。例えば、挿入終了位置21Eにあるピニオンシャフト21を、第3軸線X3とは異なる軸線回りに回動させて正規の取付位置21Sに向かって回動させるようにしてもよく、この場合、シャフト移動溝41を、例えば第2軸線X2を含み且つ仮想平面Yに対し多少傾斜した別の仮想平面に沿って延びるよう形成してもよい。
また前記実施形態のうち第4,第12実施形態では、サイドギヤ23及びピニオンギヤ22の各背面をデフケース8の内面8iに直接、回転摺動可能に当接させるものを示したが、これら実施形態において、サイドギヤ23又は/及びピニオンギヤ22の背面とデフケース8の内面8iとの間に、サイドギヤワッシャ又は/及びピニオンギヤワッシャを介装してもよい。
また前記実施形態では、リングギヤ9の歯部9agをヘリカルギヤ状としたものを示したが、本発明のリングギヤは、実施形態に限定されず、例えばベベルギヤ、ハイポイドギヤ、スパーギヤ等でもよい。
X1・・・・・所定軸線としての第1軸線
X2・・・・・ピニオンシャフトの軸線としての第2軸線
X3・・・・・特定軸線としての第3軸線
8・・・・・・デフケース
8b1,8b2・・円筒状ボスとしての軸受ボス
8bh・・・・シャフト挿入孔としての、軸受ボスの中心孔
8i・・・・・デフケースの内面
8f・・・・・フランジ部
8w・・・・・シャフト挿入孔としての作業窓
9・・・・・・リングギヤ
10・・・・・差動装置
21・・・・・ピニオンシャフト
21a,21b・・ピニオンシャフトの端部としての第1,第2端部
21E・・・・ピニオンシャフトの所定の挿入終了位置
21S・・・・ピニオンシャフトの正規の取付位置
22・・・・・ピニオンギヤ
23・・・・・サイドギヤ
23b・・・・張出部としての張出ボス部
41・・・・・シャフト移動溝
41a,41b・・シャフト移動溝の溝部分としての第1,第2溝部分
41as,41bs・・特定溝部分としての周方向中央溝部分
42・・・・・ギヤ逃げ溝
81,82・・ピニオンシャフト支持部

Claims (7)

  1. 所定軸線(X1)回りに回転可能なデフケース(8)と、前記デフケース(8)内に前記所定軸線(X1)回りに回転可能に収容される一対のサイドギヤ(23)と、前記デフケース(8)内に収容されて前記一対のサイドギヤ(23)に噛合する一対のピニオンギヤ(22)と、前記所定軸線(X1)と直交する方向に延びて前記ピニオンギヤ(22)を回転自在に嵌合、支持するピニオンシャフト(21)と、前記デフケース(8)に同心状に固定されるリングギヤ(9)とを備え、
    前記デフケース(8)が、前記ピニオンシャフト(21)の両端部(21a,21b)を前記デフケース(8)からの駆動力を受け得るよう支持する一対のピニオンシャフト支持部(81,82)と、前記ピニオンギヤ(22)及び前記サイドギヤ(23)の前記デフケース(8)内への装入を許容する作業窓(8w)とを有し、
    前記ピニオンシャフト(21)の少なくとも一部が、正規の取付位置(21S)にある該ピニオンシャフト(21)と直交する投影面で見て前記リングギヤ(9)と重なる差動装置において、
    前記デフケース(8)は、前記一対のピニオンシャフト支持部(81,82)から離間していて前記ピニオンシャフト(21)が通過可能なシャフト挿入孔(8bh,8w)を有しており、
    前記シャフト挿入孔(8bh,8w)は、該シャフト挿入孔を通して前記ピニオンシャフト(21)を前記デフケース(8)の外から前記正規の取付位置(21S)とは異なる所定の挿入終了位置(21E)まで、前記リングギヤ(9)と干渉せずに前記デフケース(8)内の前記ピニオンギヤ(22)に挿入するのを許容する位置に在り、
    前記デフケース(8)は、前記ピニオンギヤ(22)に対し前記挿入終了位置(21E)まで挿入された前記ピニオンシャフト(21)の前記両端部(21a,21b)を受入れ可能であり且つその受入れ位置から前記一対のピニオンシャフト支持部(81,82)までの、該両端部(21a,21b)の各移動を許容するシャフト移動溝(41)を有することを特徴とする差動装置。
  2. 前記デフケース(8)は、前記一対のサイドギヤ(23)にそれぞれ連動回転する軸部材(11,12)を嵌挿可能な円筒状ボス(8b1,8b2)を一体に有し、
    前記円筒状ボス(8b1,8b2)の中心孔(8bh)は、前記ピニオンシャフト(21)が通過可能な大きさに形成されていて、前記シャフト挿入孔に兼用されることを特徴とする、請求項1に記載の差動装置。
  3. 前記シャフト移動溝(41)は、前記所定軸線(X1)及び前記ピニオンシャフト(21)の軸線(X2)と直交する特定軸線(X3)回りに前記ピニオンシャフト(21)を前記挿入終了位置(21E)から前記正規の取付位置(21S)まで回動させたときの前記両端部(21a,21b)の移動軌跡にそれぞれ対応するように前記デフケース(8)に設けた溝部分(41a,41b)を少なくとも含み、
    前記溝部分(41a,41b)は、前記正規の取付位置(21S)にある前記ピニオンシャフト(21)の前記両端部(21a,21b)をそれぞれ支持する特定溝部分(41as,41bs)を有していて、該特定溝部分(41as,41bs)が前記一対のピニオンシャフト支持部(81,82)を構成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の差動装置。
  4. 前記デフケース(8)の内面(8i)は、前記所定軸線(X1)及び前記特定軸線(X3)の交点を中心とした球面状に形成され、
    前記溝部分(41a,41b)は、前記特定軸線(X3)を中心とした同一円環状に延びることを特徴とする、請求項3に記載の差動装置。
  5. 前記サイドギヤ(23)又は前記ピニオンギヤ(22)のうちの少なくとも一方の背面は、該背面を支持する前記デフケース(8)の内面(8i)よりもデフケース(8)の外方側に張出す張出部(23b)を有し、
    前記デフケース(8)の内面(8i)は、該デフケース(8)内で互いに噛合状態にある前記サイドギヤ(23)及び前記ピニオンギヤ(22)が、前記挿入終了位置(21E)から前記正規の取付位置(21S)まで回動する前記ピニオンシャフト(21)と共に回動する際に該張出部(23b)との干渉を回避可能なギヤ逃げ溝(42)を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の差動装置。
  6. 前記サイドギヤ(23)の背面には、前記張出部となる円筒状の張出ボス部(23b)が突設され、
    前記ギヤ逃げ溝(42)は、前記サイドギヤ(23)の前記ピニオンシャフト(21)回りの回動を規制するように前記張出ボス部(23b)と係合可能な形状に形成されることを特徴とする、請求項5に記載の差動装置。
  7. 前記作業窓(8w)は、前記ピニオンシャフト(21)が通過可能な大きさに形成されていて、前記シャフト挿入孔を兼ねることを特徴とする、請求項1に記載の差動装置。
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