JP2020147807A - アルミニウム合金箔、積層体、アルミニウム合金箔の製造方法、および積層体の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金箔、積層体、アルミニウム合金箔の製造方法、および積層体の製造方法 Download PDF

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【課題】従来のアルミニウム合金箔と同等の耐湿熱性を有しながらも、従来のアルミニウム合金箔と比べて塩水に対する表面の耐食性が高められたアルミニウム合金箔および積層体を提供する。【解決手段】アルミニウム合金箔1は、第1面1Aを有するアルミニウム合金箔である。アルミニウム合金箔1は所定の成分を有し、第1面1A上において、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率が0.1%以下である。電気比抵抗値が3.0μΩcm以上5.0μΩcm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金箔、積層体、アルミニウム合金箔の製造方法、および積層体の製造方法に関する。
近年、環境負荷低減の観点から、移動手段に使用される航空機、鉄道車両または自動車には、更なる軽量化が望まれている。また、取り扱いの観点から、各種機械部品、電気電子関係部材、建材、家庭用途等の分野で使用される部材にも、更なる軽量化が望まれている。
このような背景から、これらの部材に金属材料を使用する場合には、比較的密度の大きい鉄鋼材料や銅ではなく、より密度の小さいアルミニウム及び/又はアルミニウム合金を使用することで、部材の軽量化を図ることが行われている。
一方で、一般的なアルミニウム合金は、水、湿気、塩水等に晒されると腐食しやすい。そこで、国際公開2018/123933号には、水、湿気、塩水等に対して高い耐食性を有するアルミニウム合金箔が提案されている。国際公開2018/123933号に開示されたアルミニウム合金箔では、腐食に伴う重量の減少が抑制されている。
国際公開2018/123933号
アルミニウム合金箔が水、湿気、塩水等に晒される高温環境下で使用される場合、耐湿熱性および塩水に対する表面の耐食性(以下、耐塩水性とよぶ)が特に問題となる。例えば建材では美観の観点から、電気電子関係部材では表面の導電性の観点から、アルミニウム合金箔の表面において腐食した領域の面積率をいかに低減するかが問題となる。
さらに、アルミニウム合金箔の用途によっては、アルミニウム合金箔に高い耐力および高い引張伸び(単位:%)が要求される。
しかしながら、従来、耐湿熱性および耐塩水性のみならず、耐力および引張伸びについても高次元で両立されたアルミニウム合金箔についての知見は、明らかになっていない。本発明者らは、耐湿熱性および耐塩水性、ならびに耐力および引張伸びが高次元で両立されたアルミニウム合金箔および積層体を提供することを目的として、本発明を見出した。
本発明に係るアルミニウム合金箔は、第1面を有するアルミニウム合金箔である。上記アルミニウム合金箔は、アルミニウムと、珪素と、0.4質量%以上1.75質量%以下のマンガンと、0.02質量%以上0.08質量%以下の鉄と、0.00001質量%以上0.03質量%以下の亜鉛と、0.00001質量%以上0.03質量%以下の銅と、0.00001質量%以上0.001質量%以下のマグネシウムとを含む。上記アルミニウム合金箔において、珪素および鉄の含有量の合計が0.1質量%以下である。上記アルミニウム合金箔において、珪素および鉄の合計質量に対するマンガンの質量の比率が7.0以上である。第1面上において、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率が0.1%以下である。電気比抵抗値が3.0μΩcm以上5.0μΩcm以下である。
本発明によれば、上記アルミニウム合金箔よりも、塩水に対する表面の耐食性が高められたアルミニウム合金箔および積層体を提供できる。
本実施の形態に係るアルミニウム箔を説明するための概略断面図である。 本実施の形態に係るアルミニウム箔の製造方法を示すフローチャートである。 本実施の形態に係る積層体を示す概略断面図である。 本実施の形態に係る積層体の製造方法を示すフローチャートである。 本実施の形態に係るアルミニウム箔の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
<アルミニウム合金箔の構成>
はじめに、図1に示されるように、本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1について説明する。アルミニウム合金箔1は、第1面1Aと、第1面1Aの反対側に位置する第2面1Bとを有している。第1面1Aおよび第2面1Bの各々は、たとえば矩形形状を有している。アルミニウム合金箔1の第1面1Aおよび第2面1Bとは、アルミニウム合金箔1の外観において目視、顕微鏡等によって確認され得る表面のうち、最も表面積が大きい面をいう。厳密には、アルミニウム合金箔1の第1面1Aおよび第2面1Bには酸化被膜が形成されており、本発明でいうアルミニウム合金箔1の第1面1Aおよび第2面1Bとは、これらの酸化被膜を含んだアルミニウム合金箔1の主面をいう。
アルミニウム合金箔1は、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、およびマグネシウム(Mg)を含む。アルミニウム合金箔1の残部は、不純物からなる。該不純物は、例えば不可避不純物であるが、不可避不純物の他に、耐塩水性および耐湿熱性に大きく影響しない微量の不純物を含んでいてもよい。上記不純物は、例えばバナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、およびビスマス(Bi)等からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む。アルミニウム合金箔1中のアルミニウムの含有量は、98.0質量%以上である。好ましくは、アルミニウム合金箔1中に上記不純物として含まれる各元素の含有量は、それぞれ0.05質量%以下である。
(1)マンガン(Mn)の含有量
アルミニウム合金箔1は、0.4質量%以上1.75質量%以下のマンガンを含む。アルミニウム合金箔1中のマンガンは、塩水に対する第1面1Aの耐食性(以下、耐塩水性とよぶ)を大きく低下させることなく、アルミニウム合金箔1の強度を向上させる。マンガンの含有量が0.4質量%未満であると、強度および表面硬度が不十分となる。一方で、マンガンの含有量が1.75質量%を超えると、アルミニウム合金箔の強度が強くなりすぎて、引張伸びが不十分となる。
(2)鉄(Fe)の含有量
アルミニウム合金箔1は、0.02質量%以上0.08質量%以下の鉄を含む。アルミニウム合金箔1中の鉄は、高温多湿雰囲気における第1面1Aの耐食性を向上させる。鉄の含有量が0.02質量%未満であると、高温多湿雰囲気における第1面1Aの耐食性(以下、耐湿熱性とよぶ)が不十分となる。一方、鉄の含有量が0.08質量%を超えると、鉄の含有量が0.08質量%以下の場合と比べて、耐塩水性、特に−40〜60℃における耐塩水性が著しく低下する。
(3)亜鉛(Zn)の含有量
アルミニウム合金箔1は、0.00001質量%以上0.03質量%以下の亜鉛を含む。アルミニウム合金箔1中の亜鉛は、第1面1Aの耐塩水性および耐湿熱性を低下させる。亜鉛の含有量が0.03質量%を超えると、亜鉛の含有量が0.03質量%以下の場合と比べて、第1面1Aの耐塩水性および耐湿熱性が低下する。亜鉛の含有量の下限値は特に制限されないが、例えば製造コストの観点から、0.00001質量%である。亜鉛の含有量を0.0001質量%未満にするためには、三層電解法を複数回繰り返し実施する必要があり、その場合製造コストが著しく高くなるためである。好ましくは、亜鉛の含有量は0.0001質量%以上である。
(4)銅(Cu)の含有量
アルミニウム合金箔1は、0.00001質量%以上0.03質量%以下の銅を含む。アルミニウム合金箔1中の銅は、第1面1Aの耐塩水性および耐湿熱性を低下させる。銅の含有量が0.03質量%を超えると、銅の含有量が0.03質量%以下の場合と比べて、第1面1Aの耐塩水性および耐湿熱性が低下するとともに、アルミニウム合金箔1の伸び率が低くなる。銅の含有量の下限値は特に制限されないが、例えば製造コストの観点から、0.00001質量%である。銅の含有量を0.00001質量%未満にするためには、三層電解法に加え分別結晶法を複数回繰り返し実施する必要があり、その場合製造コストが著しく高くなるためである。好ましくは、銅の含有量は0.0001質量%以上である。
(5)マグネシウム(Mg)の含有量
アルミニウム合金箔1は、0.00001質量%以上0.001質量%以下のマグネシウムを含む。アルミニウム合金箔1中のマグネシウムは、第1面1Aの耐食性に著しい悪影響を及ぼさない元素である。しかし、マグネシウムの含有量が0.001質量%を超えると、マグネシウムが第1面1Aに形成された酸化被膜中に濃縮して、酸化被膜に欠陥が生じやすい。アルミニウム合金箔1が第1面1A上に形成された他の層と積層体10を構成している場合、酸化被膜の欠陥は、アルミニウム合金箔1と他の層との接合界面にデラミネーションを引き起こす。マグネシウムの含有量の下限値は特に制限されないが、例えば製造コストの観点から、0.00001質量%である。マグネシウムの含有量を0.00001質量%未満にするためには、三層電解法を複数回繰り返し実施する必要があり、その場合製造コストが著しく高くなるためである。
(6)珪素および鉄の含有量の合計
アルミニウム合金箔1において、珪素および鉄の含有量の合計は0.1質量%以下である。アルミニウム合金箔1中に珪素が含まれている場合、アルミニウム合金箔1中に珪素が含まれていない場合と比べて、第1面1Aの耐湿熱性を向上させる。すなわち、アルミニウム合金箔1中に珪素および鉄は、第1面1Aの耐湿熱性を向上させる。一方で、アルミニウム合金箔1中の珪素の含有量が高いほど、酸性環境下での耐食性が低下し、孔食が発生する。また、アルミニウム合金箔1は珪素、鉄およびマンガンを含むため、珪素および鉄の含有量の合計が大きいほどアルミニウム合金箔1中にAl−Mn−Fe−Si系第二相粒子が多量に生成され、アルミニウム合金箔1の伸び率(破断伸び率)が低下する。珪素による孔食を抑制し、かつ鉄による耐塩水性の低下を抑制し、かつ上記Al−Mn−Fe−Si系第二相粒子によるアルミニウム合金箔1の伸び率の低下を抑制する観点から、珪素および鉄の含有量の合計は0.1質量%以下とする。好ましくは、珪素および鉄の含有量の合計は0.08質量%以下である。
(7)珪素および鉄の合計含有量に対するマンガンの含有量の比率
アルミニウム合金箔1中のマンガンの含有量をM1、珪素の含有量をM2、鉄の含有量をM3とする。アルミニウム合金箔1中の珪素および鉄の合計含有量に対するマンガンの含有量の比率M1/(M2+M3)は、7.0以上である。本発明者らは、アルミニウム合金箔1が上述した組成、含有量、および珪素および鉄の含有量の合計の全てを満足しても、上記比率M1/(M2+M3)が7.0未満の場合には第1面1Aの耐塩水性が不十分であることを確認した(後述する比較例4参照)。この理由は定かではないが、珪素および鉄の含有量の合計に対してマンガンの含有量が少ないと、アルミニウム合金箔1中にAl−Fe系第二相粒子またはAl−Fe−Si系第二相粒子が多量に形成される。Al−Fe系第二相粒子およびAl−Fe−Si系第二相粒子の電食電流値は、Al−Mn−Fe系第二相粒子およびAl−Mn−Fe−Si系第二相粒子の電食電流値よりも高い。そのため、上記比率M1/(M2+M3)が7.0未満の場合、塩水によって第1面1Aに孔食が生じやすく、第1面1Aの耐塩水性は、上記比率M1/(M2+M3)が7.0以上の場合の第1面1Aの耐塩水性と比べて低下すると考えられる。好ましくは、上記比率M1/(M2+M3)が8.0以上である。
アルミニウム合金箔1の上記組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定するものとする。測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製iCAP6500DUO、もしくは株式会社島津製作所製ICPS−8100などが挙げられる。
(8)電気比抵抗値
アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値は、3.0μΩcm以上5.0μΩcm以下である。アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値は、アルミニウム合金箔1に添加された各元素の含有量が少ないほど、低くなる。アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値が3.0μΩcm未満の場合、アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値が3.0μΩcm以上の場合と比べて、アルミニウム合金箔1に添加された各元素の含有量が少なく、アルミニウム合金箔1の強度が低くなる。また、アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値は、各元素のアルミニウム母相中への固溶量が多いほど、高くなる。アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値が5.0μΩcm超えの場合、アルミニウム合金箔1の電気比抵抗値が5.0μΩcm以下の場合と比べて、各元素のアルミニウム母相中への固溶量が多く、アルミニウム合金箔1の伸び率(破断伸び率)が低くなる。上述した組成、含有量、珪素および鉄の含有量の合計、珪素および鉄の合計含有量に対するマンガンの含有量の比率の全てを満足し、かつ電気比抵抗値が3.0μΩcm以上5.0μΩcm以下であるアルミニウム合金箔1は、耐湿熱性、耐塩水性、強度および伸び率が高次元で両立されているため、例えば塩分を含んだ飲料、食品および薬品等を包装する包装材、断熱材および防水シート等の建材、海洋に設置される部材、船舶、航空、自動車および鉄道等の機械部品、電気電子関係部材の防湿用または電磁遮蔽用の被覆材、ならびに装飾材に好適である。特に、アルミニウム合金箔1は、高い成形性が要求される包装材および建材に好適である。また、アルミニウム合金箔1は、曲げられたときにも割れにくいため、ケーブルを被覆して電磁遮蔽効果を奏する被覆材に好適である。
電気比抵抗値は、JIS2525(1999年版)に準拠し、直流4端子法によって測定される。
(9)第二相粒子の面積率
第1面1Aの0.01228mmの矩形視野(128.2μm×95.8μm)において、円相当径が1.5μm以上である上記第二相粒子の面積率は0.1%以下である。本発明者らは、アルミニウム合金箔1が上述した組成、含有量、珪素および鉄の含有量の合計、珪素および鉄の合計含有量に対するマンガンの含有量の比率の全てを満足しても、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率が0.1%超えた場合に、第1面1Aの耐塩水性が十分でない事例を確認した(後述する比較例1,16参照)。この理由は定かではない。しかし、アルミニウム合金箔では、孔食が進行するとともに表面近傍に生成されるアルミニウム水和物が孔食部を覆うほどに成長して孔食の進行を抑制する作用が知られている。円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率が0.1%超えである場合には、上記作用が起こりにくくなり、結果として第1面1Aの耐塩水性が低下すると考えられる。なお、第二相粒子は、上述したAl−Fe系第二相粒子、Al−Fe−Si系第二相粒子、Al−Mn−Fe系第二相粒子、およびAl−Mn−Fe−Si系第二相粒子からなる群より選択される少なくとも一種類の第二相粒子を含む。すなわち、第二相粒子を構成する材料は、珪素、マンガン、および鉄からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む。
(10)第二相粒子の数密度
第1面1Aの0.01228mmの矩形視野(128.2μm×95.8μm)において、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の上記矩形視野あたりの個数(以下、数密度とよぶ)は10個/0.01228mm以下である。すなわち、1つの上記矩形視野において観察される上記第二相粒子の個数は、10個以下である。好ましくは、上記矩形視野において円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の数密度は4個/mm2未満である。本発明者らは、アルミニウム合金箔1が上述した組成、含有量、珪素および鉄の含有量の合計、および珪素および鉄の合計含有量に対するマンガンの含有量の比率の全てを満足しても、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の数密度が10個/0.01228mm超である場合、第1面1Aの耐塩水性が不十分な事例を確認した(後述する比較例17参照)。円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の数密度が10個/0.01228mm超である場合、該第二相粒子の面積率は0.1%超えていた。そのため、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の数密度が10個/0.01228mm超える場合、上述したアルミニウム水和物が孔食の進行を抑制する作用が起こりにくくなり、結果として第1面1Aの耐塩水性が低下すると考えられる。
アルミニウム合金箔1の第二相粒子の数密度および面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、反射電子像の0.01228mmの矩形視野(128.2μm×95.8μm)から測定するものとする。
(11)アルミニウム合金箔の厚み
アルミニウム合金箔1の第1面1Aに交差する方向の厚みは、強度および製造の容易性の観点から5μm以上であるのが好ましく、軽量化の観点から300μm以下であるのが好ましい。より好ましくは、アルミニウム合金箔1の上記厚みは、5μm以上200μm以下である。上記厚みは、鋳造および圧延によって、または鋳造、圧延、および熱処理によって、上記範囲内とされる。
(12)アルミニウム合金箔の耐力および破断伸び
JIS Z 2241(2011年度版)に規定されている引張試験方法に準拠した方法により測定されるアルミニウム合金箔1の0.2%耐力は、100N/mm2以上である。JIS Z 2241(2011年度版)に規定されている引張試験方法に準拠した方法により測定されるアルミニウム合金箔1の破断伸びは、5%以上である。上記引張試験における試験片は、直方体であって、上記厚みが5μm以上300μm以下、圧延方向の長さが200mm、圧延方向に垂直な方向の長さが15mmとする。引張速度は20mm/分とする。標点(例えばチャック部)間の距離は100mmとする。試験装置としては、例えば東洋精機製作所製のSTROGRAPH VES5Dなどが挙げられる。
<アルミニウム合金箔の製造方法>
本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法は、鋳塊を準備する工程(S10)、鋳塊を冷間圧延して冷延材を形成する工程(S20)、および冷延材を焼鈍する工程(S30)を備える。図2は、本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
まず、鋳塊を準備する(工程(S10))。具体的には、所定の組成のアルミニウムの溶湯を調製し、アルミニウムの溶湯を凝固させて鋳造することにより鋳塊が準備される。溶湯は、例えば溶解されたアルミニウム地金に、鉄またはアルミニウム−鉄母合金、およびマンガンまたはアルミニウム−マンガン母合金を添加することにより準備される。鋳造方法は、特に制限されないが、例えば半連続鋳造、連続鋳造、または金型鋳造である。溶湯中の珪素(Si)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、およびマグネシウム(Mg)の各含有量は、アルミニウム合金箔1が上記組成となるように制御されている。
次に、鋳塊を冷間圧延して冷延材を形成する(工程(S20))。本工程では、上記工程(S10)において準備された鋳塊が、均質化熱処理および熱間圧延が行われずに、冷間圧延される。本工程において冷間圧延される鋳塊の表面における上記第二相粒子の面積率と、上記準備する工程(S10)において準備された鋳塊の表面における上記第二相粒子の面積率とは、いずれも0.1%以下である。言い換えると、上記工程(S10)と本工程(S20)との間に鋳塊に加えられる熱量は、均質化熱処理および熱間圧延が行われた場合に鋳塊および熱延材に加えられる熱量の総和未満とされている。
本工程(S20)で形成される冷延材は、第2面を有している。第2面に交差する方向の冷延材の厚みは、第1面1Aに交差するアルミニウム合金箔1の厚みと同等である。言い換えると、本工程(S20)後には、冷間圧延が実施されない。本工程(S20)において、冷間圧延は複数回(例えば2回)行われる。本工程において最後に実施される冷間圧延工程は、本製造方法において最後に実施される冷間圧延工程(以下最終冷間圧延工程とよぶ)である。
本工程(S20)は例えば中間焼鈍工程を備えている。例えば、まず鋳塊を冷間圧延する第1冷間圧延工程(S20A)が実施される。次に、第1冷間圧延工程にて形成された中間冷延材を焼鈍する中間焼鈍工程(S20B)が実施される。中間焼鈍の条件は一般的な操業条件の範囲内であればよいが、例えば焼鈍温度が50℃以上600℃以下、焼鈍時間が1秒以上20時間以下である。好ましくは、焼鈍温度は150℃以上550℃以下である。次に、中間焼鈍が実施された中間冷延材に対し、最終冷間圧延工程(S20C)が実施される。このようにして、上記冷延材が形成される。
次に、上記冷間圧延工程にて形成された冷延材を焼鈍する焼鈍工程(S30B)が実施される。本工程(S30)は、最終冷間圧延工程後に実施される。言い換えると、本工程(S30)で実施される焼鈍は、本製造方法において実施される焼鈍のうち最後に実施される最終焼鈍である。最終焼鈍の条件は、例えば焼鈍温度が200℃以上400℃以下、焼鈍時間が1秒以上100時間以下である。好ましくは、最終焼鈍の焼鈍温度が250℃以上400℃以下、焼鈍時間が1秒以上50時間以下である。本工程により、最終冷間圧延後の冷延材のアルミニウム母相中に固溶していた添加元素が母相から排出されることにより、アルミニウム合金箔1の引張伸びが向上する。さらに、本工程により、最終冷間圧延後の冷延材の表面に残留していた圧延油が除去されることにより、アルミニウム合金箔1の濡れ性が向上する。このようにして、アルミニウム合金箔1が製造される。
<積層体の構成>
次に、図3に示されるように、本実施の形態に係る積層体10について説明する。積層体10は、本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1と、アルミニウム合金箔1の第1面1A上に形成されている第1層11とを備えている。第1層11を構成する材料は、積層体10の用途に応じて任意に選択され得る。
第1層11は、例えば樹脂フィルム層を含む。樹脂フィルム層に使用される樹脂フィルムとしては、公知の樹脂を材料とするフィルムを広く採用することができ、特に限定はない。樹脂フィルム層を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリイミド及び塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1つを含む。樹脂フィルム層の厚みは、積層体の厚みが上記数値範囲内となるように、アルミニウム合金箔の厚み及び後述するコーティング層の厚みも考慮し、適宜設定すればよい。
樹脂フィルム層をアルミニウム合金箔に積層するに際して両者を接着する方法としては、公知の方法を広く採用することができ、特に限定はない。具体的には、ポリエステルウレタン系、ポリエステル系等の2液硬化型接着剤を用いるドライラミネーション法、共押し出し法、押し出しコート法、押し出しラミネート法、ヒートシール法、及びアンカーコート剤を用いるヒートラミネーション法等が挙げられる。
また、第1層11は、コーティング材が第1面1A上に塗布されることにより形成されたコーティング層として構成されていてもよい。コーティング層を構成する材料は、例えばチタン酸化物、シリコン酸化物、ジルコニウム酸化物、及びクロム組成物などの無機物コート、ならびに、アクリル、ポリカーボネート、シリコン樹脂、及びフッ素樹脂などの樹脂コートからなる群から選択される少なくとも1つを含む。その他にも、第1層11は、陽極酸化皮膜層、プラズマ処理などによって形成される表面修飾層、ならびに、酸及び/又はアルカリなどによって形成される変成物層などであってもよい。
このような積層体10は、母材としてのアルミニウム合金箔1が従来のアルミニウム合金箔と比べて耐塩水性と耐湿熱性とを高次元で両立しているため、高い耐塩水性および高い耐湿熱性が要求される部材に好適である。例えば、塩分を含んだ飲料、食品および薬品等を包装する包装材、断熱材および防水シート等の建材、海洋に設置される部材、船舶、航空、自動車および鉄道等の機械部品、電気電子関係部材の防湿用または電磁遮蔽用の被覆材、ならびに装飾材にも好適である。積層体10は、第2面1B上に形成された樹脂層をさらに備えていてもよい。
図4に示されるように、積層体10の製造方法は、上述したアルミニウム合金箔1の製造方法によりアルミニウム合金箔1を製造する工程と、第1層11を形成する工程とを備える。言い換えると、積層体10の製造方法は、鋳塊を準備する工程(S10)、鋳塊を冷間圧延して冷延材を形成する工程(S20)、冷延材を焼鈍する工程(S30)、および第1層11を形成する工程(S40)を備える。第1層11を形成する工程(S40)では、第1層11が任意の方法により第1面1A上に形成される。上述のように、例えば予め成形されたフィルム層が第1面1Aに接着されることにより第1層11が形成されてもよいし、流動性を有する塗布材料が第1面1A上に塗布され硬化されることにより第1層11が形成されてもよい。
<変形例>
図5は、本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法の他の一例を示すフローチャートである。図5に示されるアルミニウム合金箔1の製造方法では、例えば冷間圧延工程(S20)において冷間圧延が中間焼鈍工程を挟まずに複数回行われた後、最終焼鈍工程(S30)が実施される。最終焼鈍の条件は、上述した図2に示されるアルミニウム合金箔1の製造方法のそれと同等である。
本発明者らは、アルミニウム合金箔1が上記組成となるように調整された鋳塊を均質加熱処理および熱間圧延を経ずに冷間圧延を行うことで、耐湿熱性および耐塩水性が高次元で両立されたアルミニウム合金箔1が製造されることを見いだした。さらに、本発明者らは、アルミニウム合金箔1の引張伸びの向上に対する最終焼鈍工程の寄与度が、中間焼鈍工程のそれと比べて高いことを確認した。すなわち、最終焼鈍工程が実施されて製造されたアルミニウム合金箔1では、中間焼鈍工程は実施されたが最終焼鈍工程は施されずに製造されたアルミニウム合金箔1と比べて、アルミニウム合金箔1の耐力および引張伸びが高次元で両立されていることを確認した。最終焼鈍工程は最終冷間圧延工程後の冷延材のアルミニウム母相中に固溶していた添加元素が母相から排出されることを促し、その結果アルミニウム合金箔1の引張伸びが向上すると考えられる。
本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法では、冷延材を焼鈍する工程(S30)において冷間圧延が3回以上行われてもよい。この場合、中間焼鈍が複数行われてもよい。複数回の冷間圧延が連続して実施された後、中間焼鈍工程が実施され、さらにその後1回または複数回の冷間圧延が実施されてもよい。1回の冷間圧延が実施された後、中間焼鈍工程が実施され、さらにその後複数回の冷間圧延が実施されてもよい。
本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法では、アルミニウム合金箔1の製造方法では、冷延材を焼鈍する工程(S30)が中間焼鈍工程としてのみ実施されてもよい。すなわち、要求される引張伸びが最終焼鈍工程を行うことなく実現される場合には、冷延材を焼鈍する工程(S30)が中間焼鈍工程としてのみ実施されてもよい。
本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法は、冷間圧延工程の前に、鋳塊に均質化熱処理を行う工程と、均質化熱処理が施された鋳塊を熱間圧延する工程とをさらに備えていてもよい。この場合、均質化熱処理は、均質化熱処理後の鋳塊の表面における上記第二相粒子の面積率が0.1%以下となる条件で行えばよく、例えば加熱温度を300℃以上500℃以下、加熱時間を1時間以上20時間以下とする条件で行われる。なお、好ましくは、本実施の形態に係るアルミニウム合金箔1の製造方法では、上記均質化熱処理を行う工程および熱間圧延する工程が実施されない。
本実施の形態に係る積層体10は、第2面1B上に形成されている図示しない第2層をさらに備えていてもよい。第2層は、第1層と同等の構成を備えていてもよいし、第1層とは異なる構成を備えていてもよい。
以下に説明するように本実施の形態の実施例と比較例のアルミニウム合金箔の試料を作製し、それらの耐塩水性、耐湿熱性、および表面硬度を評価した。
まず、組成が異なるアルミニウムの鋳塊を用いて、以下に示す製造工程により、表1および表2に示される実施例および比較例のアルミニウム合金箔を作製した。
Figure 2020147807
Figure 2020147807
実施例1〜10および比較例1〜15、19のアルミニウム合金箔は、所定の組成に調整されたアルミニウムの溶湯を鋳造するによってアルミニウム合金板を作製し、アルミニウム合金板に対して冷間圧延を行った後、冷延材を最終焼鈍することによって作製された。比較例16,17のアルミニウム合金箔は、所定の組成に調整されたアルミニウムの溶湯を鋳造するによってアルミニウム合金板を作製し、アルミニウム合金板に対して均質化熱処理を行った後、冷間圧延および最終焼鈍を行うことによって作製された。比較例18のアルミニウム合金箔は、所定の組成に調整されたアルミニウムの溶湯を鋳造するによってアルミニウム合金板を作製し、アルミニウム合金板に対して冷間圧延を行うことによって作製された。
実施例1〜8、10および比較例2〜15、19では、冷却速度が約100℃/秒とされた溶解鋳造により、厚みが6mmのアルミニウム合金板が準備された。次に、アルミニウム合金板に対し冷間圧延が複数回行われた。複数回の冷間圧延は、中間焼鈍処理を挟んで実施された。中間焼鈍は、加熱温度を350℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。次に、冷延材に対し最終焼鈍が行われた。最終焼鈍は、加熱温度を300℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。これにより、表1および表2に示される組成および厚みのアルミニウム合金箔が作成された。すなわち、実施例1〜8は比較例2〜15と同等の製造方法により製造されており、実施例1〜8と比較例2〜15との相違点は組成のみとされた。
実施例9および比較例1では、まず、冷却速度が1℃/秒以上5℃/秒以下とされた溶解鋳造により、厚みが15mmのアルミニウム合金板が準備された。次に、アルミニウム合金板に対し冷間圧延が複数回行われた。複数回の冷間圧延は、中間焼鈍処理を挟んで実施された。中間焼鈍は、加熱温度を350℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。次に、冷延材に対し最終焼鈍が行われた。最終焼鈍は、加熱温度を300℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。これにより、表1および表2に示される組成および厚みのアルミニウム合金箔が作成された。
比較例16では、冷却速度が1℃/秒以上5℃/秒以下とされた溶解鋳造により、厚みが15mmのアルミニウム合金板が準備された。次に、アルミニウム合金板に対し均質加熱処理が施された。均質加熱処理は、加熱温度を550℃、加熱時間を10時間とする条件で行われた。次に、アルミニウム合金板に対し、冷間圧延が複数回行われた。複数回の冷間圧延は、中間焼鈍処理を挟んで実施された。中間焼鈍は、加熱温度を350℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。次に、冷延材に対し最終焼鈍が行われた。最終焼鈍は、加熱温度を300℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。これにより、表2に示される組成および厚みのアルミニウム合金箔が作成された。
比較例17では、冷却速度が約100℃/秒とされた溶解鋳造により、厚みが6mmのアルミニウム合金板が準備された。次に、比較例16と同様に、アルミニウム合金板に対し均質加熱処理が施された。均質加熱処理は、加熱温度を550℃、加熱時間を10時間とする条件で行われた。次に、アルミニウム合金板に対し、冷間圧延が複数回行われた。複数回の冷間圧延は、中間焼鈍処理を挟んで実施された。中間焼鈍は、加熱温度を350℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。次に、冷延材に対し最終焼鈍が行われた。最終焼鈍は、加熱温度を300℃、加熱時間を3時間とする条件で行われた。これにより、表2に示される組成および厚みのアルミニウム合金箔が作成された。
比較例18では、冷却速度が約100℃/秒とされた溶解鋳造により、厚みが6mmのアルミニウム合金板が準備された。次に、アルミニウム合金板に対し、冷間圧延が複数回行われ、表2に示される組成および厚みのアルミニウム合金箔が作成された。比較例18では、最終焼鈍工程が実施されなかった。
実施例1〜10および比較例1〜19において、冷間圧延の条件は、最終的に得られた各アルミニウム合金箔の圧延方向に平行及び垂直な方向における各表面粗さRaが0.2μm以下となるように調整された。表面粗さRaは、JIS B 0601(1982年度版)に規定されている中心線平均粗さRaである。
表1および表2に示される組成は、上記のように作製された各アルミニウム合金箔から測り取られた1.00gの試験片を測定対象とし、誘導結合プラズマ発光分析装置(株式会社島津製作所製ICPS−8100)を用いて測定された。
このようにして作成された各試料を、以下の評価方法により評価した。評価結果は表1〜表4に示される。なお、各試料において評価された表面は、上記中心線平均粗さRaが0.2μm以下とされた表面とした。
<評価方法>
(1)第二相粒子の数密度および面積率
各アルミニウム合金箔の表面での第二相粒子の数密度および面積率の測定には、上記中心線平均粗さRaが0.2μm以下とされた表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られた反射電子像を用いた。具体的には、まず、各試料表面の反射電子像を、無作為に選ばれた5つの矩形視野で観察した。各矩形視野は0.01228mmの矩形視野(128.2μm×95.8μm)とした。各矩形視野の反射電子像を三谷商事(株)製画像処理ソフトWinRoof2018によって2値化処理することにより、円相当径1.5μm以上の第二相粒子を抽出した。反射電子像の観察条件は、短形視野画像内に存在する圧延筋およびオイルピット等の第二相粒子以外の要素が2値化処理前にルックアップテーブル変換の輝度抽出で0以上70〜130以下の範囲に収まるように明るさ、コントラスト及び電子線の電圧電流値を設定した。2値化処理による抽出は具体的には以下の方法で行った。まず得られた短形視野画像内に存在する圧延筋およびオイルピット等の第二相粒子以外の要素を除去するため、ルックアップテーブル変換の輝度抽出を、上限値を255に固定、下限値を70〜130の間で調整しながら行った。次に、単一しきい値による2値化処理をしきい値1.0との条件で行った後、抽出された粒子に対して円相当径1.5μm未満のものを削除した。このようにして抽出された円相当径1.5μm以上の第二相粒子について、面内の数密度および面積率を算出した。
(2)電気比抵抗値
各アルミニウム合金箔の電気比抵抗値は、JIS2525(1999年版)に準拠し、直流4端子法によって測定した。測定器はHIOKI製3541RESISTANCE HITESTERを用い、測定端子はHIOKI製9770を使用した。試験片は直方体であって、上記厚みが5μm以上300μm以下、圧延方向の長さが200mm、圧延方向に垂直な方向の長さが15mmとした。測定端子間距離は115mmとし、測定で得られた抵抗値から電気比抵抗値を算出した。
(3)耐湿熱性評価試験
耐湿熱性評価試験は、各アルミニウム合金箔から切り出された40mm×40mmの試験片を評価対象とし、各試験片を大気圧よりも大きな圧力が印加されることによって温度が120℃かつ湿度が100%とされた高温高湿雰囲気下に12時間静置することにより行われた。試験前の重量に対する試験後の重量の増加量を測定し、高温高湿雰囲気下での表面の酸化腐食による重量増加量から耐湿熱性を評価した。
(4)耐塩水性評価試験
耐塩水性評価試験は、各アルミニウム合金箔から切り出された15mm×10mmの試験片を評価対象とし、JIS Z 2371に規定された中性塩水噴霧試験の試験条件に準じて行われた。噴霧時間は48時間とした。次に、各試料表面の反射電子像を、無作為に選ばれた5つの矩形視野で観察した。各矩形視野は0.01228mmの矩形視野(128.2μm×95.8μm)とした。各矩形視野の反射電子像を三谷商事(株)製画像処理ソフトWinRoof2018によって2値化処理することにより、円相当径1.0μm以上の腐食(孔食)発生部を抽出した。反射電子像の観察条件は、短形視野画像内に存在する圧延筋およびオイルピット等の腐食(孔食)発生部以外の要素が2値化処理前にルックアップテーブル変換の輝度抽出で70〜130以上255以下の範囲に収まるように、明るさ、コントラスト及び電子線の電圧電流値を設定した。2値化処理による抽出は具体的には以下の方法で行った。まず得られた短形視野画像内に存在する圧延筋およびオイルピット等の腐食(孔食)発生部以外の要素を除去するため、ルックアップテーブル変換の輝度抽出を、下限値を0に固定、上限値を70〜130の間で調整しながら行った。次に、単一しきい値による2値化処理をしきい値254の条件で行った後、抽出された腐食(孔食)発生部に対して円相当径1.0μm未満のものを削除した。このようにして抽出された円相当径1.0μm以上の腐食(孔食)発生部の面積率を算出し、5つの短形視野から得た算出結果の平均を評価結果とした。
(5)耐力および引張伸び
各アルミニウム合金箔の0.2%耐力および引張伸びの測定には、東洋精機製作所製のSTROGRAPH VES5Dを用いた。本引張試験は、JIS Z 2241(2011年度版)に規定されている引張試験方法に準拠した方法で実施された。本引張試験における試験片は、直方体であって、上記厚みが5μm以上300μm以下、圧延方向の長さが200mm、圧延方向に垂直な方向の長さが15mmとした。引張速度は20mm/分とした。標点(例えばチャック部)間の距離は100mmとした。試験装置は東洋精機製作所製のSTROGRAPH VES5Dを用いた。
表3,4に各評価結果を示す。
Figure 2020147807
Figure 2020147807
<評価結果>
本発明者らは、国際公開2018/123933号のアルミニウム合金箔に対して上記耐塩水性評価試験を行ったところ、孔食発生部の面積率が1.5%以上となる事例を確認した。本発明者らは、鋭意研究の結果、実施例1〜10のアルミニウム合金箔が、国際公開2018/123933号のアルミニウム合金箔よりも高い耐塩水性を有し、かつ国際公開2018/123933号のアルミニウム合金箔と同等程度の耐湿熱性を有することを見出した。さらに、本発明者らは、実施例1〜10のアルミニウム合金箔の耐力および引張伸びが、上述した各種用途において要求される耐力および引張伸びの各仕様を満足していることを確認した。つまり、実施例1〜10のアルミニウム合金箔では、耐湿熱性、耐塩水性、耐力、および引張伸びが、高次元で両立されていた。
実施例1〜10の各アルミニウム合金箔は、アルミニウムと、珪素と、0.4質量%以上1.75質量%以下のマンガンと、0.02質量%以上0.08質量%以下の鉄と、0.00001質量%以上0.03質量%以下の亜鉛と、0.00001質量%以上0.03質量%以下の銅と、0.00001質量%以上0.001質量%以下のマグネシウムとを含む。さらに、実施例1〜9の各アルミニウム合金箔では、珪素および鉄の含有量の合計が0.1質量%以下であり、かつ珪素および鉄の合計質量に対するマンガンの質量の比率が7.0以上であった。さらに、実施例1〜9の各アルミニウム合金箔では、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率が1%以下であり、第二相粒子の数密度が10個/0.01228mm以下であり、かつ電気比抵抗値が3.0μΩcm以上5.0μΩcm以下であった。実施例1〜9の各アルミニウム合金箔では、耐湿熱性評価試験における重量増加量が0.4g/mm2以下であり、耐塩水性評価試験における孔食発生部の面積率が1.0%以下であり、かつ引張試験における0.2%耐力が100N/mm2以上、引張伸びが5.0%以上であった。
これに対し、比較例1〜19のアルミニウム合金箔では、組成、珪素および鉄の含有量の合計、マンガンの質量に対する珪素および鉄の合計質量の比率、上記第二相粒子の面積率、ならびに電気比抵抗値の少なくともいずれかが、上記数値範囲から外れていた。このような比較例1〜19のアルミニウム合金箔では、耐湿熱性評価試験における重量増加量、耐塩水性評価試験における孔食発生部の面積率、ならびに張試験における0.2%耐力および引張伸びの少なくともいずれかが、実施例1〜10のアルミニウム合金箔と比べて劣っていた。
実施例1〜10と同等の製造方法により製造されたが組成がこれらとは異なる比較例1〜15、19について、例えば比較例3〜6は珪素および鉄の合計質量に対するマンガンの質量の比率が7.0未満であって、かつ耐塩水性評価試験における孔食発生部の面積率が1.0%超えであった。比較例3は、マンガンの含有量が0.4質量%未満であり、珪素および鉄の含有量の合計が0.1質量%超えであった。比較例4は、マンガンの含有量ならびに珪素および鉄の含有量の合計は上述したそれぞれの数値範囲内であった。比較例5,6は、マンガンの含有量は上記数値範囲内であったが、珪素および鉄の含有量の合計が0.1質量%を超えていた。上記比率が7.0未満である比較例3〜6では、上記比率が7.0以上であるアルミニウム合金箔と比べて、Al−Fe系第二相粒子またはAl−Fe−Si系第二相粒子が多量に形成されているため、塩水によって孔食が生じやすくなっていると考えられる。
また、冷間圧延前の鋳塊に均質化熱処理が施された比較例16,17では、第二相粒子の面積率が0.1%超えであって、かつ耐塩水性評価試験における孔食発生部の面積率が1.0%超えであった。比較例16,17では、マンガンの質量に対する珪素および鉄の合計質量の比率が上記数値範囲内であった。比較例16,17では、第二相粒子を成長させる十分な熱量が冷間圧延前に与えられたために、Al−Fe系第二相粒子またはAl−Fe−Si系第二相粒子が多量に形成され、塩水によって孔食が生じやすくなっていると考えられる。
また、冷間圧延後に最終焼鈍工程が実施されなかった点でのみ実施例1と異なる比較例18では、電気比抵抗値および引張伸びのみが実施例1に対して劣っていた。比較例18では、最終焼鈍工程が実施されずアルミニウム母相中に固溶していた添加元素が母相から十分に排出されなかったために、その引張伸びが実施例1と比べて低かったと考えられる。
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
1A 第1面、1B 第2面、10 積層体、11 第1層。

Claims (7)

  1. 第1面を有するアルミニウム合金箔であって、
    前記アルミニウム合金箔は、
    アルミニウムと、
    珪素と、
    0.4質量%以上1.75質量%以下のマンガンと、
    0.02質量%以上0.08質量%以下の鉄と、
    0.00001質量%以上0.03質量%以下の亜鉛と、
    0.00001質量%以上0.03質量%以下の銅と、
    0.00001質量%以上0.001質量%以下のマグネシウムとを含み、
    前記アルミニウム合金箔において、珪素および鉄の質量比の合計が0.1質量%以下であり、
    前記アルミニウム合金箔において、珪素および鉄の合計質量に対するマンガンの質量の比率が7.0以上であり、
    前記第1面において、円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率が0.1%以下であり、
    電気比抵抗値が3.0μΩcm以上5.0μΩcm以下である、アルミニウム合金箔。
  2. 前記第1面において、前記第二相粒子の単位面積当たりの個数が10個/0.01228mm2以下である、請求項1に記載のアルミニウム合金箔。
  3. 前記第二相粒子を構成する材料は、珪素、マンガン、および鉄からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項2に記載のアルミニウム合金箔。
  4. 前記第1面に交差する方向の厚みが5μm以上300μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔と、
    前記アルミニウム合金箔の前記第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面の少なくともいずれかの上に配置された第1層とを備え、
    前記アルミニウム合金箔および前記第1層の前記第1面と交差する方向の厚みの合計値が6μm以上301μm以下である、積層体。
  6. 溶解鋳造によって鋳塊を準備する工程と、
    前記鋳塊を少なくとも1回冷間圧延して冷延材を形成する工程と、
    前記冷延材を焼鈍する最終焼鈍工程とを備え、
    前記鋳塊は、
    アルミニウムと、
    珪素と、
    0.4質量%以上1.75質量%以下のマンガンと、
    0.02質量%以上0.08質量%以下の鉄と、
    0.00001質量%以上0.03質量%以下の亜鉛と、
    0.00001質量%以上0.03質量%以下の銅と、
    0.00001質量%以上0.001質量%以下のマグネシウムとを含み、
    珪素および鉄の質量比の合計が0.1質量%以下であり、
    珪素および鉄の合計質量に対するマンガンの質量の比率が7.0以上であり、
    前記冷延材を形成する工程において冷間圧延される前記鋳塊の表面における円相当径が1.5μm以上である第二相粒子の面積率と、前記準備する工程において準備された前記鋳塊の表面における前記第二相粒子の面積率とは、共に0.1%以下である、アルミニウム合金箔の製造方法。
  7. 請求項6に記載のアルミニウム合金箔の製造方法によって製造された前記アルミニウム合金箔を準備する工程と、
    前記アルミニウム合金箔の第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面の少なくともいずれかの上に第1層を形成する工程とを備える、積層体の製造方法。
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