JP2020147487A - リン酸ホウ素リチウム化合物、リチウム二次電池用添加剤、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、及びリチウム二次電池 - Google Patents
リン酸ホウ素リチウム化合物、リチウム二次電池用添加剤、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、及びリチウム二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
Description
リン酸リチウム化合物、例えば、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方を添加剤として含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ホウ酸リチウム化合物も添加剤として用いられ、例えば、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムを含むリチウムイオン電池用電解液が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、例えば、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムを含むリチウムイオン電池用電解液も知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、リン酸ホウ素リチウム化合物も添加剤として用いられ、例えば、LiBF3(PO2F2)等の化合物を含むリチウムイオン電池用電解液が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、本開示の別の一態様の課題は、高温環境下における、電池抵抗、及びガスの発生による電池膨れ(「ガス膨れ」ともいう。)を低減できるリチウム二次電池用非水電解液、並びに、上記リチウム二次電池用非水電解液を含むリチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池、及び前記リチウム二次電池前駆体を用いるリチウム二次電池の製造方法を提供することである。
<1>
下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物。
数平均分子量(Mn)が150〜100000である<1>に記載のリン酸ホウ素リチウム化合物。
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が1.0以上3.0以下である<1>又は<2>に記載のリン酸ホウ素リチウム化合物。
<1>〜<3>のいずれか1つに記載のリン酸ホウ素リチウム化合物を含むリチウム二次電池用添加剤。
<5>
フッ素を含むリチウム塩である電解質と、非水溶媒と、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のリン酸ホウ素リチウム化合物と、を含有するリチウム二次電池用非水電解液。
<6>
前記リン酸ホウ素リチウム化合物の含有量が、リチウム二次電池用非水電解液の全量に対し、0.1質量%〜5.0質量%である<5>に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
<7>
更に、ビニレンカーボネートを含有する<5>又は<6>に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
<8>
ケースと、前記ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、を備え、前記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、前記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、前記電解液が、<5>〜<7>のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用非水電解液であるリチウム二次電池前駆体。
<9>
前記正極が、正極活物質として、下記一般式(C1)で表されるリチウム含有複合酸化物を含む請求項8に記載のリチウム二次電池前駆体。
LiNiaCobMncO2 … 一般式(C1)
〔一般式(C1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、かつ、a、b及びcの合計は、0.99〜1.00である。〕
<10>
<8>又は<9>に記載のリチウム二次電池前駆体を準備する工程と、前記リチウム二次電池前駆体に対してエージング処理を施すことにより、リチウム二次電池を得る工程と、を含み、前記エージング処理は、前記リチウム二次電池前駆体に対し、30℃〜70℃の環境下で、充電及び放電を施すことを含むリチウム二次電池の製造方法。
<11>
ケースと、前記ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、を備え、前記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、前記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、前記電解液が、フッ素を含むリチウム塩である電解質と非水溶媒とを含有する非水電解液であり、前記負極の表面の少なくとも一部に、下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物及び前記電解質に由来する成分を含有する負極被膜が形成されており、前記正極の表面の少なくとも一部に、下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物及び前記電解質に由来する成分を含有する正極被膜が形成されているリチウム二次電池。
〔式(I)中、nは1以上の整数を示す。〕
また、本開示の別の一態様によれば、高温環境下における、電池抵抗、及びガスの発生による電池膨れ(「ガス膨れ」ともいう。)を低減できるリチウム二次電池用非水電解液、並びに、上記リチウム二次電池用非水電解液を含むリチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池、及び前記リチウム二次電池前駆体を用いるリチウム二次電池の製造方法が提供される。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示のリン酸ホウ素リチウム化合物は、下記式(I)で表される繰り返し構造「(以下、「繰り返し構造(I)」ともいう。)」を含む、新規なリン酸ホウ素リチウム化合物である。
なお、本開示のリン酸ホウ素リチウム化合物には、n(繰り返し数)が異なる複数種の構造を含んでいてもよい。
以下、本開示のリン酸ホウ素リチウム化合物の製造方法の一例(「製法X」とも称す。)を示す。但し、本開示のリン酸ホウ素リチウム化合物の製造方法は、製法Xには限定されない。
反応工程における反応は、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)の生成を阻害する成分(例えば水分)の混入を防ぐ観点から、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、等)で行うことが好ましい。
反応温度が60℃以上であると、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)の生成が促進されやすい。
反応温度が150℃以下であると、生成したリン酸ホウ素リチウム化合物(X)の分解が抑制され、生成率が向上しやすい。
例えば、反応工程により、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が、目的とする成分(即ち、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)自体)のみの固体として得られた場合には、その固体を特段の処理なく取り出すことができる。
また、反応工程により、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が溶媒に分散されたスラリーが得られた場合には、スラリーから溶媒を分離し、乾燥させることにより、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を取り出すことができる。
また、反応工程により、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が溶媒に溶解された溶液が得られた場合には、加熱濃縮等によって溶液から溶媒を留去することによってリン酸ホウ素リチウム化合物(X)を取り出すことができる。
また、反応工程により、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が溶媒に溶解された溶液が得られた場合には、溶液に対し、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が溶解しない溶媒を加えることによってリン酸ホウ素リチウム化合物(X)を析出させ、次いで溶液から溶媒を分離し、乾燥させることにより、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を取り出すこともできる。
取り出されたリン酸ホウ素リチウム化合物(X)を乾燥する際の温度は、20℃〜150℃であることが好ましく、50℃〜140℃であることがより好ましく、80℃〜130℃であることがさらに好ましい。
温度が20℃以上であると乾燥効率に優れる。温度が150℃以下であると、生成したリン酸ホウ素リチウム化合物(X)の分解が抑制され、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を安定して取り出しやすい。
本開示の二次電池用添加剤は、上述したリン酸ホウ素リチウム化合物(X)を含む。本開示の二次電池用添加剤は、特にリチウム二次電池の非水電解液用の添加剤として好適である。
本開示の一実施形態に係るリチウム二次電池用非水電解液(以下、単に「本実施形態の非水電解液」ともいう)は、フッ素を含むリチウム塩である電解質と、非水溶媒と、
上述したリン酸ホウ素リチウム化合物(X)と、を含有する。
本開示の非水電解液は、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を含有することにより、高温環境下における、電池抵抗の増加及びガス膨れを抑制できる。
このため、リチウム二次電池を保存する場合における、リチウム二次電池の保存期間に対するリチウム二次電池の電池抵抗の増加率が低減されると考えられる。
本開示の非水電解液は、上記リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を電池用添加剤として含んでもよいし、電解質の供給源として含んでもよい。
非水電解液の全量に対するリン酸ホウ素リチウム化合物(X)の含有量が0.1質量%以上である場合には、本開示の非水電解液による効果がより効果的に奏される。非水電解液の全量に対するリン酸ホウ素リチウム化合物(X)の含有量は、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上である。
非水電解液の全量に対するリン酸ホウ素リチウム化合物(X)の含有量が5.0質量%以下である場合には、非水電解液の化学的安定性がより向上する。
非水電解液の全量に対するリン酸ホウ素リチウム化合物(X)の含有量は、より好ましくは3.0質量%以下であり、更に好ましくは2.0質量%以下であり、更に好ましくは1.0質量%以下である。
また、非水電解液から上記リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が検出できない場合であっても、非水電解液中や電極の被膜中に、上記リン酸ホウ素リチウム化合物(X)の分解物由来の化合物が検出される場合も、本開示の非水電解液の範囲に含まれるとみなされる。
これらの取り扱いは、非水電解液に含有され得る上記リン酸ホウ素リチウム化合物(X)以外の化合物についても同様である。
本実施形態の非水電解液は、フッ素を含むリチウム塩(以下、「含フッ素リチウム塩」ともいう)である電解質を少なくとも1種含有する。
含フッ素リチウム塩としては、例えば;
六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF6)、等の無機酸陰イオン塩;
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF3SO2)2N)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(C2F5SO2)2N)等の有機酸陰イオン塩;
等が挙げられる。
含フッ素リチウム塩としては、LiPF6が特に好ましい。
フッ素を含まないリチウム塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li2B10Cl10)等が挙げられる。
本実施形態の非水電解液は、非水溶媒を少なくとも1種含有する。
非水溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、含フッ素鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、含フッ素脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、含フッ素γ−ラクトン類、環状エーテル類、含フッ素環状エーテル類、鎖状エーテル類、含フッ素鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類、ラクタム類、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド燐酸、等が挙げられる。
含フッ素環状カーボネート類としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、等が挙げられる。
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酪酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、トリメチル酪酸エチル、等が挙げられる。
γ−ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、等が挙げられる
環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、等が挙げられる
鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、等が挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、等が挙げられる。
ラクタム類としては、例えば、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノン、等が挙げられる。
この場合、非水溶媒中に占める、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類の合計の割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは60質量%〜100質量%であり、更に好ましくは80質量%〜100質量%である。
この場合、非水溶媒中に占める、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類の合計の割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは60質量%〜100質量%であり、更に好ましくは80質量%〜100質量%である。
本実施形態の非水電解液中に占める非水溶媒の割合の上限は、他の成分(リン酸ホウ素リチウム化合物(X)、電解質、等)の含有量にもよるが、上限は、例えば99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
本実施形態の非水電解液は、非水電解液の化学的安定性をより向上させる観点から、不飽和結合を有する環状炭酸エステルの少なくとも1種を含有していてもよい。
一般的には、非水電解液が不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有する場合には、電池の内部抵抗が上昇しやすい傾向がある。
しかし、本実施形態の非水電解液は、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を含有するため、更に、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有する場合においても、電池の内部抵抗を低減させることができる。
むしろ、本実施形態の非水電解液が不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有する場合には、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)の添加による内部抵抗低減の改善幅が広いという利点がある。
含有質量比〔リン酸ホウ素リチウム化合物(X)/ビニレンカーボネート〕が0.1以上である場合には、保存後のリチウム二次電池の内部抵抗の上昇をより抑制できる。
本実施形態の非水電解液は、上述した成分以外のその他の成分を少なくとも1種含有していてもよい。
その他の成分としては、スルトン(即ち、環状スルホン酸エステル)、酸無水物、等が挙げられる。
本実施形態の非水電解液を製造する方法には特に限定はない。本実施形態の非水電解液は、各成分を混合して製造すればよい。
非水溶媒に電解質を溶解させて溶液を得る工程と、
得られた溶液に対し、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)(及び必要に応じ、その他の添加剤)を添加して混合し、非水電解液を得る工程と、
を含む製造方法が挙げられる。
この一例に係る製造方法において、(リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を添加する前の)溶液の電気伝導度に対し、得られた非水電解液の電気伝導度が低減されていることが好ましい。この態様の製造方法によって得られた非水電解液によれば、前述した非水電解液の効果(即ち、電池の内部抵抗を低減させる効果)がより効果的に発揮される。
本開示の一実施形態に係るリチウム二次電池前駆体(以下、単に「本実施形態の電池前駆体」ともいう)は、
ケースと、
ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備え、
上記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
上記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
上記電解液が、上述した本実施形態の非水電解液であるリチウム二次電池前駆体である。
後述する本実施形態のリチウム二次電池は、正極、負極、セパレータ、及び非水電解液をケースに収容してリチウム二次電池前駆体を製造し、得られたリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電(好ましくは、充電及び放電を含むエージング処理)を施すことによって製造される。
このため、本実施形態の電池前駆体によれば、本実施形態の非水電解液による効果と同様の効果が奏される。
本実施形態の電池前駆体におけるケースとしては特に限定はなく、公知のリチウム二次電池用のケースが挙げられる。
ケースとしては、ラミネートフィルムを含むケース、電池缶と電池缶蓋とからなるケース、等が挙げられる。
本実施形態の電池前駆体における正極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極である。
本実施形態の電池前駆体における正極は、好ましくは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質を少なくとも1種含む。
本実施形態の電池前駆体における正極は、より好ましくは、正極集電体と、正極活物質及びバインダーを含有する正極合材層と、を備える。
正極合材層は、正極集電体の表面の少なくとも一部に設けられる。
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な物質であれば特に限定されず、リチウム二次電池に通常用いられる正極活物質であり得る。
正極活物質としては、例えば;
リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする酸化物;
Liと、Niと、Li及びNi以外の金属元素(例えば、遷移金属元素、典型金属元素等)の少なくとも1種と、を構成金属元素として含む酸化物;
等が挙げられる。
酸化物中において、Li及びNi以外の金属元素は、好ましくは、原子数換算で、Niと同程度、又は、Niよりも少ない割合で含まれる。
Li及びNi以外の金属元素は、例えば、Co、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ca、Na、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La及びCeからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
リチウム含有複合酸化物(C1)は、単位体積当たりのエネルギー密度が高く、熱安定性にも優れるという利点を有する。
〔一般式(C1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、a、b及びcの合計は、0.99〜1.00である。〕
(一般式(C2)中、tは、0.95以上1.15以下であり、xは、0以上0.3以下であり、yは、0.1以上0.2以下であり、x及びyの合計は、0.5未満である。)
また、正極合材層中の正極活物質の含有量は、例えば99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
正極合材層に含有され得るバインダーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、フッ素樹脂、ゴム粒子等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。
ゴム粒子としては、スチレン−ブタジエンゴム粒子、アクリロニトリルゴム粒子等が挙げられる。
これらの中でも、正極合材層の耐酸化性を向上させる観点から、フッ素樹脂が好ましい。
バインダーは1種を単独で使用でき、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
バインダーの含有量が0.1質量%以上である場合には、正極集電体に対する正極合材層の接着性、及び、正極活物質同士の結着性がより向上する。
バインダーの含有量が4質量%以下である場合には、正極合材層中における正極活物質の量をより多くすることができるので、電池容量がより向上する。
本実施形態の電池前駆体における正極が、正極集電体と正極合材層とを備える場合、正極合材層は、導電助材を含むことが好ましい。
導電助材としては、公知の導電助材を使用することができる。
公知の導電助材としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上を併せて使用することができる。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱ケミカル社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000、LITX−50、LITX−200等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、Super−P(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(デンカ社製、アセチレンブラック)等が挙げられる。
グラファイトとしては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態の電池前駆体における正極が、正極集電体と正極合材層とを備える場合、正極合材層は、上記各成分に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤等が挙げられる。
正極集電体としては、各種のものを使用することができるが、例えばは、金属又は合金が用いられる。
正極集電体として、より具体的には、アルミニウム、ニッケル、SUS等が挙げられる。中でも、導電性の高さとコストとのバランスの観点から、アルミニウムが好ましい。ここで、「アルミニウム」は、純アルミニウム又はアルミニウム合金を意味する。
正極集電体として、特に好ましくはアルミニウム箔である。
アルミニウム箔としては特に限定されないが、A1085材、A3003材、等が挙げられる。
正極合材層は、例えば、正極活物質及びバインダーを含む正極合材スラリーを正極集電体の表面に塗布し、乾燥させることによって形成できる。
正極合材スラリーに含まれる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶媒が好ましい。
塗布方法としては、例えば、スロット・ダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング等が挙げられる。
乾燥方法としては、温風、熱風、低湿風による乾燥;真空乾燥;赤外線(例えば遠赤外線)照射による乾燥;が挙げられる。
乾燥時間及び乾燥温度については、特に限定されないが、乾燥時間は例えば1分〜30分であり、乾燥温度は例えば40℃〜80℃である。
正極合材層の製造方法は、正極集電体上に正極合剤スラリーを塗布し、乾燥させた後、金型プレス、ロールプレス等を用いた加圧処理により、正極活物質層の空隙率を低くする工程を有することが好ましい。
本実施形態の電池前駆体における負極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極である。
本実施形態の電池前駆体における負極は、好ましくは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を少なくとも1種含む。
本実施形態の電池前駆体における負極は、より好ましくは、負極集電体と、負極活物質及びバインダーを含有する負極合材層と、を備える。
負極合材層は、負極集電体の表面の少なくとも一部に設けられる。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質であれば特に制限はないが、例えば、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、および、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。
上記炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。
上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
上記炭素材料の粒径は特に限定されないが、例えば5μm〜50μm、好ましくは20μm〜30μmである。
人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。
また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。
また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
本実施形態の電池前駆体における負極が、負極集電体と負極合材層とを備える場合、負極合材層は、導電助材を含むことが好ましい。
導電助材としては、公知の導電助材を使用することができる。
負極合材層に含まれ得る導電助材の具体例は、前述した、正極合材層に含まれ得る導電助材の具体例と同様である。
本実施形態の電池前駆体における負極が、負極集電体と負極合材層とを備える場合、負極合材層は、上記各成分に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤等が挙げられる。
負極合材層は、例えば、負極活物質及びバインダーを含む負極合材スラリーを負極集電体の表面に塗布し、乾燥させることによって形成できる。
負極合材スラリーに含まれる溶媒としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用してもよい。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用してもよい。
本実施形態の電池前駆体におけるセパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂を含む多孔質の平板が挙げられる。また、セパレータとしては、上記樹脂を含む不織布も挙げられる。
好適例として、一種または二種以上のポリオレフィン樹脂を主体に構成された単層または多層構造の多孔性樹脂シートが挙げられる。
セパレータの厚みは、例えば5μm〜30μmとすることができる。
セパレータは、好ましくは、正極と負極との間に配置される。
本実施形態の電池前駆体における電解液は、前述した本実施形態の非水電解液である。
本実施形態の非水電解液の好ましい態様は前述したとおりである。
本実施形態の電池前駆体を製造する方法には特に限定はない。
本実施形態の電池前駆体を製造する方法の一例は、ケースに、正極、負極、セパレータ、及び電解液を収容する工程を含む。
上記一例は、好ましくは、
ケースに、正極、負極、及びセパレータを収容する工程と、
正極、負極、及びセパレータが収容されたケースに、電解液を注入する工程と、
を含む。
以下、本実施形態のリチウム二次電池前駆体の一例について、図1を参照しながら説明するが、本実施形態のリチウム二次電池前駆体は、以下の一例には限定されない。
リチウム二次電池前駆体1は、積層型リチウム二次電池の一例である。
本実施形態のリチウム二次電池前駆体としては、この積層型リチウム二次電池以外にも、例えば、正極、セパレータ、負極、及びセパレータをこの順の配置で重ねて層状に巻いた構造を有する、捲回型のリチウム二次電池も挙げられる。
リチウム二次電池前駆体1では、正極リード21及び負極リード22が、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。
正極リード21及び負極リード22は、例えば超音波溶接や抵抗溶接などにより後述する正極集電体及び負極集電体に取り付けることができる。
なお、図示しないが、正極リード及び負極リードが、外装体の内部から外部に向かって、同一方向に導出されていてもよい。
この構造において、正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極合材層11Bと、正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極合材層12Bと、がセパレータ13を介して向き合っている。
リチウム二次電池前駆体1では、隣接する正極合材層11B、セパレータ13及び負極合材層12Bによって、1つの単電池層14が形成されている。
なお、正極及び負極は、各集電体の片面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。
本開示の実施形態に係るリチウム二次電池の製造方法(以下、「本実施形態の電池の製造方法」ともいう)は、
本実施形態の電池前駆体を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、
電池前駆体に対してエージング処理を施すことにより、リチウム二次電池を得る工程(以下、「エージング工程」ともいう)と、
を含み、
エージング処理は、電池前駆体に対し、30℃〜70℃の環境下で、充電及び放電を施すことを含むリチウム二次電池の製造方法である。
電池前駆体を30℃〜70℃(好ましくは、30℃〜60℃)の環境下で保持する初期保持フェーズと、
初期保持フェーズ後の電池前駆体を、30℃〜70℃(好ましくは、30℃〜60℃)の環境下で充電する初期充電フェーズと、
初期充電フェーズ後の電池前駆体を、30℃〜70℃(好ましくは、30℃〜60℃)の環境下で保持する第2保持フェーズと、
第2保持フェーズ後の電池前駆体に対し、30℃〜70℃(好ましくは、30℃〜60℃)の環境下で、充電及び放電の組み合わせを1回以上施す充放電フェーズと、
を含む。
本開示の一実施形態に係るリチウム二次電池(以下、「本実施形態の電池」ともいう)は、
ケースと、
ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備え、
正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
電解液が、フッ素を含むリチウム塩である電解質と非水溶媒とを含有する非水電解液であり、
前記負極の表面の少なくとも一部に、下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物及び前記電解質に由来する成分を含有する負極被膜が形成されており、前記正極の表面の少なくとも一部に、下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物及び前記電解質に由来する成分を含有する正極被膜が形成されているリチウム二次電池である。
〔式(I)中、nは1以上の整数を示す。〕
本実施形態の電池は、上記負極被膜及び上記正極被膜を含むので、本実施形態の電池の製造方法によって製造された電池と同様の効果が奏される。
本実施形態の電池における非水電解液は、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)を含有していても構わない。
例えば、本実施形態の電池の製造方法によって本実施形態の電池を製造した場合、エージング処理により、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)が完全に消費されていてもよいし、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)の一部が残存していてもよい。
本開示のリチウム二次電池用添加剤、本開示のリチウム二次電池用非水電解液、本開示のリチウム二次電池前駆体、本開示のリチウム二次電池の製造方法、及び本開示のリチウム二次電池は、特に、ハイブリッド自動車又は電気自動車に対して特に好適に用いられるものである。
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、排気ライン、及び、ディーンシュターク管を備えた300mLのフラスコを準備した。ディーンシュターク管には、生成した水の除去用にトルエンを満たした。
上記300mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、濃度87.5%のリン酸33.6g(0.30mol)と、炭酸リチウム11.08g(0.15mol)と、水60gとを入れ、攪拌混合して均一溶液を得た。攪拌をしながらここにトルエン100gを加え、30分後に加熱を開始し、85〜110℃の温度でトルエンが還流する状態とした。加熱、攪拌、及びトルエン還流を継続し、留出する水をディーンシュターク管内でトルエンと分液して除去し続けた。還流するトルエンに水の同伴留出が無くなった段階で加熱を止め、反応液を室温(25℃)まで冷却した。上記によって得られた反応液は、固体が析出したスラリーであった。
19F−NMR:−148.3ppm。
31P−NMR:0.2ppm。
Mw及びMnの測定結果から、nは8〜11と考えられる。
<非水電解液(試料0〜試料5)の作製>
(試料0)
エチレンカーボネート(以下、EC)とジメチルカーボネート(以下、DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを、EC:DMC:EMC=30:35:35(体積比)で混合することにより、非水溶媒としての混合溶媒を作製した。
混合溶媒に対し、電解質としてのLiPF6を、最終的に得られる非水電解液中の濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
以上により、試料0を得た。
試料0は、比較例101の電池に使用する非水電解液である。
更に、リン酸ホウ素リチウム化合物(X)の一例として、実施例1で得られた化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)を、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量が、表1に示す含有量(質量%)となるように添加したこと以外は試料0と同様にして、試料1〜試料2を得た。
試料1〜試料2は、それぞれ、実施例101〜実施例102の電池に使用する非水電解液である。
更に、ビニレンカーボネート(VC)を、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量が、表2に示す含有量(質量%)となるように添加したこと以外は試料0と同様について、試料3を得た。
試料3は、比較例102の電池に使用する非水電解液である。
更に、ビニレンカーボネート(VC)を、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量が、表2に示す含有量(質量%)となるように添加したこと以外は試料1〜試料2の各々と同様にして、試料4〜5をそれぞれ得た。
試料4〜5は、それぞれ、実施例103〜実施例104の電池に使用する非水電解液である。
以下のようにして、リチウム二次電池としての捲回型電池(設計容量1Ah)(以下、単に「電池」ともいう)を作製した。
1.正極合材スラリー調製
正極合材スラリーの調製には、5Lのプラネタリーディスパを用いた。
正極活物質としてのNCM523(即ち、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)920g、導電助材としてのSuper−P(TIMCAL社製導電性カーボン)20g、及び導電助材としてのKS−6(TIMREX社製鱗片状黒鉛)20gを10分間混合した後、ここにN−メチルピロリドン(NMP)を100g加え、更に20分間混合した。
以上により、固形分濃度60%の正極合材スラリーを得た。
正極合材スラリーの塗工にはダイコーターを用いた。
上記正極合材スラリーを、乾燥後の塗布質量が19.0mg/cm2になるように、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み20μm、幅200mm)の片面の一部に塗布し乾燥させた。次いで、このアルミニウム箔の反対面(未塗工面)の一部に、同様に塗布質量が19.0mg/cm2になるように、上記正極合材スラリーを塗布し乾燥させた。
こうして得た両面塗工(38.0mg/cm2)されたアルミニウム箔を、真空乾燥オーブンにて、130℃で12時間乾燥させ、次いで、35トンプレス機を用い、プレス密度が2.9g/cm3となるように圧縮することにより、正極原反を得た。
この正極原反は、正極集電体としてのアルミニウム箔と、このアルミニウム箔の両面に設けられた正極合材層と、を含む。アルミニウム箔の両面は、それぞれ、正極合材層が形成された領域と、正極合材層が形成されていない領域(即ち、余白)と、を含む。
上記正極原反をスリットすることにより、おもて面側に、56mm×334mmの正極合材層と、タブ溶接用余白と、を含み、裏面側に、56mm×408mmの正極合材層と、タブ溶接用余白と、を含む、正極C−1を得た。
1.負極合材スラリーの調製
負極合材スラリーの調製には、5Lのプラネタリーディスパを用いた。
負極活物質としての天然黒鉛960g及び導電助材としてのSuper−P(導電性カーボン、BET比表面積62m2/g)10gに対し、1%−CMC水溶液(即ち、カルボキシメチルセルロース(CMC)の1質量%水溶液)を450g加え、30分間混合した。
得られた混合物に対し、1%−CMC水溶液300gを加えて30分間混練した後、更に、1%−CMC水溶液250gを加えて30分間混練した。
得られた混練物に対し、スチレンブタジエンゴム(SBR)(40%乳化液)50gを加えて30分間混合した後、真空脱泡を30分間行った。
以上により、固形分濃度45%の負極合材スラリーを調製した。
負極合材スラリーの塗工には、ダイコーターを用いた。
上記負極合材スラリーを、乾燥後の塗布質量が11.0mg/cm2になるように、負極集電体としての銅箔(厚み10μm)の片面の一部に塗布し乾燥させた。次いで、この銅箔の反対面(未塗工面)の一部に、上記負極合材スラリーを、塗布質量が11.0mg/cm2になるように塗布し、乾燥させた。
こうして得た両面塗工(22.0mg/cm2)された銅箔を、真空乾燥オーブンにて、120℃で12時間乾燥させ、次いで、小型プレス機を用い、プレス密度が1.45g/cm3となるように圧縮することにより、負極原反を得た。
この負極原反は、負極集電体としての銅箔と、銅箔の両面に設けられた負極合材層と、を含む。銅箔の両面は、それぞれ、負極合材層が形成された領域と、負極合材層が形成されていない領域(即ち、余白)と、を含む。
上記負極原反をスリットすることにより、おもて面側に、58mm×372mmの負極合材層と、タブ溶接用余白と、を含み、裏面側に、58mm×431mmの負極合材層と、タブ溶接用余白と、を含む、負極A−1を得た。
セパレータとして、多孔性樹脂シート(空隙率45%、厚み25μmのポリエチレン製多孔質膜)(60.5mm×450mm)を準備した。
負極A−1とセパレータと正極C−1とを、負極A−1の裏面がセパレータに接し、かつ、正極C−1の裏面がセパレータに接する向きで重ねて積層体を得た。得られた積層体を捲回し、捲回体を得た。得られた捲回体をプレス成型し、成型体を得た。
次いで、上記成型体における正極C−1の余白部分にアルミニウム製の正極タブを超音波接合機で接合し、上記成型体における負極A−1の余白部分にニッケル製の負極タブを超音波接合機で接合した。正極タブ及び負極タブが接合された成型体を、一対のラミネートシートで挟み込み、次いで三辺を加熱シールし、ラミネート体を得た。この際、ラミネート体における残りの一辺(加熱シールされていない一辺)から正極タブ及び負極タブがはみ出すようにした。
以上により、各実施例及び各比較例の電池前駆体(即ち、リチウム二次電池前駆体)をそれぞれ得た。
各実施例及び各比較例の電池前駆体に対し、それぞれ、以下に示すエージング処理を施すことにより、各実施例及び各比較例の電池(即ち、リチウム二次電池)を得た。以下、詳細を示す。
次に、40℃の雰囲気温度下で、電池前駆体を、充電レート0.05Cにて3.0Vまで定電流充電し、次いで充電レート0.1Cにて3.4Vまで定電流充電し、次いで充電レート0.2Cにて3.7Vまで定電流充電した。
次に、40℃の雰囲気温度下で、電池前駆体を24時間休止させた。
次に、40℃の雰囲気温度下で、電池前駆体を、充電レート0.5Cにて4.2V(SOC(State Of Charge)100%)まで定電流定電圧充電(0.5C−CCCV)し、次いで30分間休止させ、次いで放電レート0.5Cにて2.5Vまで定電流放電(0.5C−CC)させた。次に、電池前駆体を、0.5C−CCCVにて4.2Vまで充電し、次いで0.5C−CCにて2.5Vまで放電させた。
以上により、試験用電池を得た。
高温4週間後電池の電池抵抗、及び抵抗増加率の評価は、電池を保存する前(0週間後)、及び電池を0.2C−CCCVにて4.2Vまで充電し、60℃の環境下で、4週間保存した後(4週間保存後)の試験用電池を用いて、下記に示す操作を、25℃の条件下で行い、評価した。
次に、電池に対し、放電レート1CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC10s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート2CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC20s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート3CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC30s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート4CにてCC10s放電を行い、次いで充電レート1CにてCC40s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート5CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC50s充電を施した。
次に、各例における、高温4週間後電池の抵抗増加率を求めた。高温4週間後電池の抵抗増加率を算出するにあたり、増加の比較対象とする電池は、既述の電池を保存する前(保存0週間)の試験用電池である。つまり、高温4週間後電池の抵抗増加率は、既述の方法で測定した高温4週間後電池の直流抵抗値の値を、電池を保存する前(保存0週間)の試験用電池の直流抵抗値の値で除したものである。
結果を表1及び表2に示す。
なお、表1で示した高温環境下における、4週間保存後の電池抵抗、及び4週間保存後の抵抗増加率の値はそれぞれ、比較例101での4週間保存後の電池抵抗、及び4週間保存後の抵抗増加率の値を100%としたときの各例での相対値[%]である。また、表2で示した高温環境下における4週間保存後の電池抵抗、及び4週間保存後の抵抗増加率の値はそれぞれ、比較例102での4週間保存後の電池抵抗、及び4週間保存後の抵抗増加率の値を100%としたときの各例での相対値[%]である。
上記試験用電池におけるガス膨れの抑制効果を、高温保存前後の試験用電池の厚みを比較することで評価した。評価手順を以下に示す。
作製した試験用電池を、アルキメデス法に基づく比重測定装置(SGM−300P、島津製作所製)により測定し、初期電池体積[cm3]とした。その後、電池の高温保存試験を終えた電池の体積を同様に測定し、これを高温保存後電池体積[cm3]として、高温保存後電池体積の差[cm3](体積増分)を求めた。この時、浸漬溶媒には純水を使用し、電池体積の算出時に用いる水の密度は、25℃での値(0.99704g cm−3)を用いた。
結果を表1及に示す。
=(表1に記載の各例での高温保存後の電池体積の差/比較例101での高温保存後体積の差)×100
結果を表2に示す。
各例で得られた電池(すなわち、試験用電池)について、それぞれ、高温サイクル後(すなわち、高温環境下における充放電サイクル後)の電池抵抗の評価を行った。以下、詳細を示す。
試験用電池を、充電レート0.5CにてSOC100%まで充電させた後、放電レート1Cにて放電させるサイクルを、0サイクル、及び700サイクルそれぞれ行った。
各サイクル後に得られた試験用電池について、既述の方法により電池抵抗(Ω)を測定した。
結果を表3に示す。
なお、表3で示した700サイクル後の電池抵抗の値は、比較例101での700サイクル後の電池抵抗の値を100%としたときの各例での700サイクル後の電池抵抗の値の相対値[%]である。
高温環境下における700サイクル後の抵抗増加率の評価は、700サイクル後の電池に加え、既述の0サイクル後の試験用電池を用いて、下記に示す操作を、25℃の条件下で行い、評価した。
次に、電池に対し、放電レート1CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC10s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート2CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC20s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート3CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC30s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート4CにてCC10s放電を行い、次いで充電レート1CにてCC40s充電を施した。
次に、電池に対し、放電レート5CにてCC10s放電を施し、次いで充電レート1CにてCC50s充電を施した。
次に、各例における、高温700サイクル後の電池の抵抗増加率を求めた。高温700サイクル後の電池の抵抗増加率を算出するにあたり、増加の比較対象とする電池は、既述の0サイクル後の試験用電池である。つまり、高温700サイクル後の抵抗増加率は、既述の方法で測定した高温700サイクル後の電池の直流抵抗値の値を、0サイクル後の試験用電池の直流抵抗値の値で除したものである。
結果を表3に示す。
なお、表3で示した700サイクル後の抵抗増加率の値は、比較例101での700サイクル後の電池抵抗増加率の値を100%としたときの各例での700サイクル後の電池抵抗増加率の値の相対値[%]である。
10 電池素子
11 正極
11A 正極集電体
11B 正極合材層
12 負極
12A 負極集電体
12B 負極合材層
13 セパレータ
14 単電池層
21 正極リード
22 負極リード
30 外装体
Claims (11)
- 下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物。
〔式(I)中、nは1以上の整数を示す。〕 - 数平均分子量が150〜100000である請求項1に記載のリン酸ホウ素リチウム化合物。
- 数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1.0以上3.0以下である請求項1又は請求項2に記載のリン酸ホウ素リチウム化合物。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリン酸ホウ素リチウム化合物を含むリチウム二次電池用添加剤。
- フッ素を含むリチウム塩である電解質と、
非水溶媒と、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリン酸ホウ素リチウム化合物と、
を含有するリチウム二次電池用非水電解液。 - 前記リン酸ホウ素リチウム化合物の含有量が、リチウム二次電池用非水電解液の全量に対し、0.1質量%〜5.0質量%である請求項5に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
- 更に、ビニレンカーボネートを含有する請求項5又は請求項6に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
- ケースと、
前記ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備え、
前記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
前記電解液が、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用非水電解液であるリチウム二次電池前駆体。 - 前記正極が、正極活物質として、下記一般式(C1)で表されるリチウム含有複合酸化物を含む請求項8に記載のリチウム二次電池前駆体。
LiNiaCobMncO2 … 一般式(C1)
〔一般式(C1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、かつ、a、b及びcの合計は、0.99〜1.00である。〕 - 請求項8又は請求項9に記載のリチウム二次電池前駆体を準備する工程と、
前記リチウム二次電池前駆体に対してエージング処理を施すことにより、リチウム二次電池を得る工程と、
を含み、
前記エージング処理は、前記リチウム二次電池前駆体に対し、30℃〜70℃の環境下で、充電及び放電を施すことを含むリチウム二次電池の製造方法。 - ケースと、
前記ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備え、
前記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
前記電解液が、フッ素を含むリチウム塩である電解質と非水溶媒とを含有する非水電解液であり、
前記負極の表面の少なくとも一部に、下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物及び前記電解質に由来する成分を含有する負極被膜が形成されており、
前記正極の表面の少なくとも一部に、下記式(I)で表される繰り返し構造を含むリン酸ホウ素リチウム化合物及び前記電解質に由来する成分を含有する正極被膜が形成されているリチウム二次電池。
〔式(I)中、nは1以上の整数を示す。〕
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