JP2020146748A - 車体フレームの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、発明者等は、予ひずみを付与する波形状をプレス成形することによって降伏応力を上げる新規な方法も検討している。しかし、この方法は板厚が減少する、といったネガがあり、剛性の低下や、破断に対する許容荷重に対して不利である。
図1は、本発明の実施形態に係る車体フレームを示す図である。
車体フレーム10は、自動車等の車両用のフレーム部品であり、複数の一般面からなる多角形の断面形状で所定方向に延在する形状を有している。本実施形態の車体フレーム10は、金属板材(鋼板)をプレス成形することによって形成されたプレス成形品であり、所定方向Y(以下、長手方向Yと言う)に延在する板部11と、板部11の左右両端から下方に延びる左右一対の側面部12、13とからなる3つの一般面に加え、各側面部12、13の下端から外側に張り出す一対のフランジ部14、15を有する、いわゆる断面ハット形状に形成されている。
この車体フレーム10は、各フランジ部14、15がフロアパネル等に接合されることによって、閉断面構造となり、車両の骨格部品又は補強部品等として機能する。なお、車体フレーム10に使用される金属板材は、例えば高張力鋼板である。
なお、図1では、車体フレーム10の全ての一般面11〜13の中央部10Cに予ひずみを付与しているが、目標の耐荷重が得られる範囲であれば、一般面11〜13のいずれかの中央部10Cだけに波形状21をプレス成形してもよい。また、中央部10C以外に予ひずみを付与してもよい。さらに、車体フレーム10の形状も適宜に変更してもよく、要は曲げ変形等が相対的に生じやすい部位に予ひずみを付与し、所望の耐荷重を満足させるようにすればよい。
図3に示すように、波形状21には、円弧に沿った山部M1と谷部V1からなる波が繰り返す波形状が採用され、換言すると、正弦波を近似した波形状が採用されている。この波形状21が付与する予ひずみは、波の高さH、及び波の曲げ半径r(山部M1と谷部V1を近似する円弧の半径rに相当)等によって決定することができる。具体的には、予ひずみは次の計算式(1)、(2)で求めることができる。
板外部P2のひずみ量=((r+D/2)×θ/rsinθ)−1・・・(2)
また、値θは、波の高さがmax値(高さHに相当)から値0になるまでの上記円弧の角度(山部M1と谷部V1を近似する円の角度範囲に相当)0に相当する。式(1)中の値rθは、図3に示す周長Lに相当する。また、値Dは、車体フレーム10の板厚である。
図4では、説明の便宜上、予ひずみに相当する塑性ひずみを三段階に分けて模式的に示しており、相対的にひずみ量が多い領域を「領域SA」で示し、次にひずみ量が多い領域を「領域SB」で示し、相対的にひずみ量が小さい領域を「領域SC」で示している。なお、発明者等は、シミュレーションによって求めたひずみ量と、上記の簡易な計算式(1)、(2)で求めたひずみ量とが概ね一致していることを確認済である。
図5に示すように、予ひずみ工程K1Dは、車体フレーム10に対し、波形状21をプレス成形する第1プレス工程K11と、第1プレス工程K11の波形状21をフラット化する第2プレス工程K12と、第1プレス工程K11と同じ波形状21を、所定の距離Xだけずらしてプレス成形する第3プレス工程K13と、第3プレス工程K13の波形状21をフラット化する第4プレス工程K14とからなる4回のプレス工程で構成されている。
この第2プレス工程K12では、図6からも明らかなように、ひずみ量の多い領域SAが拡がると共に、波形状21がフラット化される。これにより、値Z近辺の予ひずみが得られた領域が拡がり、かつ、フラット化される。
第4プレス工程K14では、フラットダイス等を用いて波形状21をフラット化することにより、予ひずみが倍増する。これにより、図6からも明らかなように、ひずみ量の多い領域SAが更に拡がり、かつ、フラット化される。
上記第2及び第4プレス工程K12、K14は、曲げ戻しの加工とも言える。この曲げ戻しの加工によって板厚の減少を抑えることができる。
図8中、符号f1は、波形状21をプレス成形しない場合の特性曲線であり、符号f2は、図7中の上面に相当する板部11だけに波形状21をプレス成形した場合の特性曲線図である。符号f3は、図7中の側面部12、13だけに波形状21をプレス成形した場合の特性曲線図であり、符号f4は、車体フレーム10の三面(板部11、側面部12、13)に波形状21をプレス成形した場合の特性曲線図である。この図8から特性曲線f4>f3>f2>f1の関係で降伏応力が高くなることが判る。
本実施形態では、車体フレーム10の基本形状をプレス成形する工程(以下、「基本成形工程K1A」)の後工程において、波形状21をプレス成形する予ひずみ工程K1Dが行われる。基本成形工程K1Aは、図1の車体フレーム10の場合、断面ハット形状に形成するまでの工程に相当する。なお、図1には示していないが、実際の車体フレーム10には、断面ハット形状に形成した後に、各部に凹部又は凸部等の段差を設ける、といった追加工が適宜に施される。
本実施形態では、基本成形工程K1Aの後に予ひずみ工程K1Dを行うので、基本形状を形成するためのプレス成形によって、波形状21の領域がプレスされることがない。具体的には、図9に示すように、基本成形工程K1A後に行われるプレス成形K1B、及びトリミング成形K1Cの後に予ひずみ工程K1Dを行っており、つまり、プレス工程K1の最後に予ひずみ工程K1Dを行っている。これにより、基本形状を成形するためのプレス成形が波形状21に影響する事態を避けることができる。
この場合、プレス工程K1中のプレス成形等が波形状21に影響しない範囲で、予ひずみ工程K1Dのタイミングを変更してもよい。例えば、基本成形工程K1Aの後、かつ、プレス成形K1B又はトリミング成形K1Cの前のタイミングで、予ひずみ工程K1Dを行うようにしてもよい。また、基本成形工程K1A中の最後のプレス成形時、又はプレス工程K1中の最後のプレス成形K1B時に、予ひずみ工程K1Dに相当するプレス成形を同時に行うようにしてもよい。
また、車体フレーム10によっては一回のプレス成形(基本成形工程K1Aに相当)で成形できる場合がある。この場合、一回のプレス成形の後に、予ひずみ工程K1Dを行うようにしてもよい。なお、本説明中の各プレス成形は、最終製品(本実施形態では車両)の状態で所望の予ひずみが得られていれば、冷間プレス、及び温間プレスのいずれでもよい。
但し、上記焼鈍の熱処理によっては、予ひずみ工程K1Dで付与される予ひずみが減少することがある。このため、予ひずみに影響しないように熱処理の条件を設定すること、又は、焼鈍による減少分を加味して予ひずみを付与することが好ましい。
図8には、プレス成形による残留ひずみが相対的に多い領域を「領域SB1」で示し、領域SB1のうち特に残留ひずみが特に多い領域を「領域SA1」で示している。また、図8中の領域SBを示す輪郭内には、残留ひずみが相対的に少ない領域(図8中、領域SC1で示す)が存在する。
領域SB1、SA1で示す領域は、図8に示すように、プレス成形による曲げが存在する領域、及び、曲げの箇所が互いに近接する領域等である。一方、図8中の領域SC1で示す領域、及び、複数の領域SB1に挟まれる領域は、残留ひずみが相対的に少ない領域である。
例えば、図8に示す車体フレーム10に波形状21を追加する場合、領域SC1に設けることが好ましい。
しかも、上記波形状21に、円弧に沿った波が繰り返す波形状を使用しているので、せん断変形させて塑性ひずみを付与する場合と比べ、塑性ひずみに相当する予ひずみを均等に付与し易くなる。また、第2プレス工程K12によって、予ひずみが付与される領域をフラット化できると共に、板厚の減少を抑えることができる。これらにより、塑性ひずみを均等に付与し易く、かつ、塑性ひずみが付与された部分の板厚の減少を抑えつつフラット化し易くなる。板厚の減少を抑えることによっても、剛性の低下や、破断に対する許容荷重に対して有利となる。
しかも、車体フレーム10の基本形状をプレス成形する基本成形工程K1Aの後、又は、基本成形工程K1Aの最後のプレス成形と同時に予ひずみ工程K1Dを行うので、基本形状を成形するためのプレス成形が波形状21に影響する事態を避けることもできる。
例えば、予ひずみ工程K1D中の各工程を、塑性ひずみを均等に付与し易く、かつ、塑性ひずみが付与された部分をフラット化できる範囲で適宜に変更してもよい。図12は、予ひずみ工程K1Dの変形例を示す図である。
図12では、第3プレス工程K13として、第1プレス工程K11の波形状21に交差する波形状21をプレス成形した後、第4プレス工程K14によって、フラット化している。これによっても、同図12に示すように、予ひずみを付与する領域(図12中、領域SA)を拡げることができ、かつ、予ひずみが付与される領域をフラット化できる。図12では交差する角度が90°の場合を例示しているが、90°以外の角度にしてもよい。
なお、第3プレス工程K13の波形状21は、第1プレス工程K11の波形状21と同一でもよいし、異なってもよい。例えば、最終的に所望の強度が得られる範囲であれば、第3プレス工程K13の波形状21の各波の高さ、及びピッチ等を適宜に変更してもよい。異なる場合でも、第3プレス工程K13の波形状21に、円弧に沿った波が繰り返す波形状を使用することにより、せん断変形させて予ひずみを付与する場合と比べ、予ひずみに相当する塑性ひずみを均等に付与し易くなる。
10C 中央部
11 板部
12、13 側面部
14、15 フランジ部
21 波形状
Y 車体フレームの長手方向
H 波の高さ
r 波の曲げ半径
θ 波の円弧の角度
D 板厚
L 周長
LC 中心軸線
PT 波のピッチ
P1 板中心
P2 板外部
M1 山部
V1 谷部
K1 プレス工程
K2 溶接工程
K3 塗装工程
K1A 基本成形工程
K1D 予ひずみ工程
Claims (7)
- 金属製の車体フレームの製造方法において、
プレス成形によって、当該車体フレームとなる金属部品の降伏応力を上昇させる目標塑性ひずみに相当する予ひずみを付与する予ひずみ工程を行い、
前記予ひずみ工程では、
円弧に沿った波が繰り返す波形状であって、各波の高さが、前記目標塑性ひずみの半分に相当する予ひずみを付与する高さに設定された波形状をプレス成形する第1プレス工程と、
前記波形状をフラット化するプレス成形により、付与された前記予ひずみを倍増させる第2プレス工程と、
を行うことを特徴とする車体フレームの製造方法。 - 前記波形状は、前記車体フレームとなる金属部品のうち、残留ひずみが相対的に少ない領域に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車体フレームの製造方法。
- 前記波形状が有する波は、前記車体フレームの長手方向、又は長手方向に直交する方向の少なくともいずれかに延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体フレームの製造方法。
- 前記車体フレームは、一又は複数回のプレス成形によって成形されるプレス成形品であり、
いずれかの前記プレス成形の後に、前記予ひずみ工程を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車体フレームの製造方法。 - 前記プレス成形は、前記車体フレームの基本形状を成形する基本成形工程を含み、
前記基本成形工程の後、又は、前記基本成形工程の最後のプレス成形と同時に、前記予ひずみ工程を行うことを特徴とする請求項4に記載の車体フレームの製造方法。 - 前記予ひずみ工程では、前記第2プレス工程の後に、
前記第1プレス工程の波形状と同じ波形状を、この波形状の波長の四分の一に相当する距離だけ平行にずらしてプレス成形した後、プレス成形した波形状をフラット化するプレス成形により、その波形状によって付与された予ひずみを倍増させる他のプレス工程を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車体フレームの製造方法。 - 前記予ひずみ工程では、前記第2プレス工程の後に、
前記第1プレス工程の波形状に交差する波形状をプレス成形し、プレス成形された前記波形状をフラット化するプレス成形を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車体フレームの製造方法。
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