JP2020145991A - 親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤、酵素安定化剤の製造方法、酵素の安定化方法、リグノセルロース系バイオマスの糖化方法、及び酵素安定化剤の製造装置 - Google Patents
親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤、酵素安定化剤の製造方法、酵素の安定化方法、リグノセルロース系バイオマスの糖化方法、及び酵素安定化剤の製造装置 Download PDFInfo
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Abstract
Description
特許文献3には、リグニンと親水性化合物との反応によりリグニン誘導体を製造する方法について開示されている。
[1]リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させ、得られるリグニン誘導体に、第二の酸を添加後、固液分離をして液分画を得ることにより得られる親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤。
[2]親水性リグニン誘導体が、リグニンのコニフェリルアルコール骨格のα位の炭素にポリアルキレングリコール基を有し、前記ポリアルキレングリコールの末端が水酸基である[1]の酵素安定化剤。
[3]前記リグノセルロース系バイオマスが木粉である[1]又は[2]の酵素安定化剤。
[4]前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである[1]〜[3]のいずれか1つの酵素安定化剤。
[5]前記ポリエチレングリコールの平均分子量が200〜600である[4]の酵素安定化剤。
[6]前記親水性リグニン誘導体の平均分子量が1000〜3200である[1]〜[5]のいずれか1つの酵素安定化剤。
[7]前記第一の酸又は第二の酸が硫酸である[1]〜[6]のいずれか1つの酵素安定化剤。
[8]リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させ、得られるリグニン誘導体に、第二の酸を添加後、固液分離をして液分画を得ることを特徴とする親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤の製造方法。
[9]以下の工程を含む親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤の製造方法。
(1)リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させる工程、
(2)工程(1)で得られた反応液にアルカリを添加して中和する工程、
(3)工程(2)で得られたアルカリ中和液から固形分を除く工程、
(4)工程(3)で得られた液分画に第二の酸を添加する工程、及び、
(5)工程(4)で沈殿した沈殿物に対し固液分離を行い、親水性リグニン誘導体を含む液分画を得る工程
[10]親水性リグニン誘導体が、リグニンのコニフェリルアルコール骨格のα位の炭素にポリアルキレングリコール基を有し、前記ポリアルキレングリコールの末端が水酸基である[8]又は[9]の酵素安定化剤の製造方法。
[11]前記リグノセルロース系バイオマスが木粉である[8]〜[10]のいずれか1つの酵素安定化剤の製造方法。
[12]前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである[8]〜[11]のいずれか1つの酵素安定化剤の製造方法。
[13]前記ポリエチレングリコールの平均分子量が200〜600である[12]の酵素安定化剤の製造方法。
[14]前記親水性リグニン誘導体の平均分子量が1000〜3200である[8]〜[13]のいずれか1つの酵素安定化剤の製造方法。
[15]前記第一の酸又は第二の酸が硫酸である[8]〜[13]のいずれか1つの酵素安定化剤の製造方法。
[16]基質と酵素の反応系に、[1]〜[7]のいずれか1つの酵素安定化剤、又は[8]〜[15]のいずれか1つの製造方法により得られる酵素安定化剤を添加することを特徴とする酵素の安定化方法。
[17]リグノセルロース系バイオマスの酵素による糖化方法において、[1]〜[7]のいずれか1つの酵素安定化剤、又は[8]〜[15]のいずれか1つの製造方法により得られる酵素安定化剤を添加することを含む、リグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
[18]前記酵素安定化剤中の親水性リグニン誘導体を、酵素糖化されるリグノセルロース系バイオマスの乾燥重量に対し0.1〜1.0質量%となるように添加する、[17]の糖化方法。
[19]アルカリ供給手段を有し、リグノセルロース系バイオマスとポリエチレングリコールとに第一の酸を反応させる第一の反応槽と、
濾過装置と、
前記濾過装置を用いて固液分離して得られた液分画と第二の酸とを反応させる第二の反応槽と、
固液分離装置と、
を備えることを特徴とする酵素安定化剤の製造装置。
本明細書中で使用される場合、「酵素の安定化」とは、基質と酵素との反応において、酵素安定化剤を存在させることにより、酵素の失活を防ぎ、酵素活性を高い値に維持することを意味する。具体的には、例えば、後述する試験例1の酵素糖化反応条件下で、残存酵素活性が、酵素安定化剤を使用していない場合と比較して、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上高いことをいう。なお、酵素活性測定法は、本明細書記載の方法、市販品であればカタログ記載の方法、文献等に記載の方法などの中から当業者が適宜採用することができる。
本明細書中で使用される場合、「酵素」とは、化学反応を触媒するタンパク質を中心とした高分子化合物をいい、特に、糖化酵素をいう。糖化酵素としては、セルロースを分解するセルラーゼ、ヘミセルロースを分解するヘミセルラーゼ、グルコキシダーゼ(βグルコキシダーゼ)、デンプンを分解するアミラーゼ等が挙げられ、好ましくはセルラーゼである。
本明細書中で使用される場合、「親水性リグニン誘導体」とは、前記親水性リグニン誘導体を構成するコニフェリルアルコール骨格のα位の炭素のいずれかにポリアルキレングリコール基を有し、リグノセルロース系バイオマスと、末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールとに硫酸を添加して得られるリグニン誘導体のうち、硫酸によりpHを2〜3にした時に沈殿しないリグニン誘導体をいう。親水性リグニン誘導体としては、分子量1000〜3200のものが好ましい。これは分子量1000以下では親水性が不十分となる傾向があり、一方3200以上では分子量が大きいため酵素安定化剤としての機能が低下する傾向があるためである。
本明細書中で使用される場合、「疎水性リグニン誘導体」とは、前記疎水性リグニン誘導体を構成するコニフェリルアルコール骨格のα位の炭素のいずれかにポリアルキレングリコール基を有し、リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに硫酸を添加して得られるリグニン誘導体のうち、硫酸によりpHを2〜3にした時に沈殿するリグニン誘導体をいう。疎水性リグニン誘導体としては、分子量4000〜20000のものが好ましい。
本実施形態に係る酵素安定化剤は、リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させ、得られるリグニン誘導体に、第二の酸を添加後、固液分離をして液分画を得ることにより得られる親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤である。ここで、リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させ、得られるリグニン誘導体に、第二の酸を添加後、固液分離をして得られる親水性リグニン誘導体を含む液分画は、基質と酵素との反応において、酵素活性を安定化することができることが、後述する実施例で実証されている。従って、本実施形態に係る酵素安定化剤は、酵素の失活を防ぎ、酵素活性を安定化することができる。
本発明において、リグノセルロース系バイオマスは、木本植物、草本植物、それらの加工物およびそれらの廃棄物からなる群より選ばれる少なくとも1種であればその種類は問わないが、細かく粉砕した方が好ましい。
などを挙げることができる。
本発明において、ポリアルキレングリコールとしては、アルキレングリコールが重合したものであれば、特に制限はないが、末端に水酸基を有するものが好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられるが、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールの分子量は本発明の酵素安定化剤の製造に用いることができれば特に制限はないが、ポリエチレングリコールの場合は、200〜1000が好ましく、400〜600がより好ましい。
リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールとに第一の酸を添加して反応させることにより、リグノセルロース系バイオマス中のリグニンからリグニン誘導体を液分画中に得ることができる。このようにして得られるリグニン誘導体を含む液分画は、親水性リグニン誘導体と疎水性リグニン誘導体を含む。図1に本発明に係るリグニン誘導体を含む液分画の製造方法の概略を示す。
以下、図1を参照しながら、当該リグニン誘導体を含む液分画の製造方法を具体的に説明する。
(1)リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールとに第一の酸を添加して反応させる工程(図中11)、
(2)工程(1)で得られた反応液にアルカリを添加して中和する工程(図中12)、
(3)工程(2)で得られたアルカリ中和液から固形分画を除く工程(図中13)、
アルカリ添加後の反応液のpHは、pH6以上12以下であること好ましく、pH6以上10以下であることがより好ましい。
上記工程(3)において、アルカリ中和液から固形分を除く方法としては、アルカリ中和液から固形分を除くことができれば特に制限はないが、例えば、遠心分離、スクリュープレス、フィルタープレス、透過膜等が挙げられる。上記工程(3)で固形分を除いて得られた液分画に、親水性および疎水性リグニン誘導体が含まれ、親水性リグニン誘導体は本発明の酵素安定化剤として用いることができる。
リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させることにより得られる上記リグニン誘導体を含む液分画に、第二の酸を添加後、固液分離をして、固形物を分離し、親水性リグニン誘導体を含む液分画得ることができる。以下、図1を参照しながら、該親水性リグニン誘導体を含む液分画の製造方法を具体的に説明する。
(4)上記の工程(3)で得られた液分画に第二の酸を添加する工程(図中14)、
(5)上記工程(4)で沈殿した固形物に対し固液分離を行い、リグニン誘導体を含む液分画を得る工程(図中15)。
液分画に第二の酸を加えて酸性にすることにより、未反応のリグニン及び疎水性リグニン誘導体が沈殿し、固液分離をして、固形物を分離することにより、親水性リグニン誘導体を含む液分画が得られる。なお、前記液分画には、親水性リグニン誘導体の他に未反応のポリアルキレングリコールが含まれるため、前記液分画の未反応のポリアルキレングリコールは工程(1)に再利用することが可能である。
固液分離の方法としては、第二の酸を添加して生成する固形物を分離できる方法であれば、特に制限はないが、遠心分離が好ましい。遠心分離は、通常、2000g〜20000g、好ましくは、5000g〜15000gである。
本発明の親水性リグニン誘導体を含む液分画を酵素安定化剤として使用する場合は、水溶液の形態で使用してもよいし、または、乾燥させたものを粉体化して使用してもよい。
本実施形態に係る酵素の安定化方法は、基質と酵素との反応系に、前記酵素安定化剤を添加することを特徴とする酵素の安定化方法である。ここで、リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールとの反応により生成される親水性リグニン誘導体を含む液分画は、基質と酵素との反応において、酵素活性を安定化することができることが、後述する実施例で実証されている。したがって、本実施形態に係る酵素の安定化方法は、前記親水性リグニン誘導体を含む液分画を使用するので、酵素活性を安定化することができる。
の基質としては、セルロースが好ましく、特に木材等を由来とするリグノセルロースが好
ましい。
反応液に添加する親水性リグニン誘導体の濃度は、以下の式により算出することができる。
本実施形態に係る酵素糖化方法は、リグノセルロース系バイオマスの酵素による糖化方法において、実施形態1に係る酵素安定化剤を添加することを含むリグノセルロース系バイオマスの糖化方法である。本実施形態に使用する酵素安定化剤は、上記のとおり、酵素の失活を防ぎ、酵素活性を安定化することができる。したがって、前記酵素安定化剤を使用する糖化方法によれば、使用した酵素を再利用すること、又は酵素使用量を減じることが可能である。
(a)リグノセルロース系バイオマスに酸又はアルカリを混合させ、水熱処理(前処理)を行う工程、
(b)前処理を行ったリグノセルロース系バイオマスに酵素、本発明の酵素安定化剤及び水を添加し、バイオマス内のセルロース及びヘミセルロースをそれぞれグルコース及びキシロースの単糖に加水分解(糖化)し糖液を得る工程、及び
(c)得られた糖液に、酵母を添加し発酵させ、エタノールを生産する工程を含む。
説明された酵素安定化剤と同様の構成及び作用効果を有する。よって、実施形態1と同様
の内容については、適宜説明を省略する。
シダーゼ活性を有する任意の酵素を用いることができる。これら糖化酵素産生菌の例としては、好気性のトリコデルマ属、アスペルギルス属、フミコラ属、イルペックス属、アクレモニウム属などが挙げられる。
酵素や発酵微生物は必要に応じて無菌的に追加しても良い。
回収したエタノールは、蒸留装置で蒸留することができる。
リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させることにより得られる上記リグニン誘導体を含む液分画に、さらに第二の酸を添加後、固液分離をして、疎水性リグニン誘導体を含む固形分画を得ることができる。以下、図1を参照しながら、当疎水性リグニン誘導体を含む固形分画の製造方法を具体的に説明する。
(4)上記の工程(3)で得られた液分画に第二の酸を添加する工程(図中14)、
(6)上記工程(4)で沈殿した沈殿物に対し固液分離を行い、リグニン誘導体を含む固形分画を得る工程(図中15)。
液分画に第二の酸を加えて酸性にすることにより、疎水性リグニン誘導体が沈殿し、固液分離により、疎水性リグニン誘導体を含む固形分画が得られる。なお、固液分離により得られた固形分画には、前記疎水性リグニン誘導体の他に未反応のリグニンを含む。
固液分離の方法としては、第二の酸を添加して生成する沈殿物を分離できる方法であれば、特に制限はないが、遠心分離が好ましい。遠心分離は、通常、2000g〜20000g、好ましくは、5000g〜15000gである。
固形分画中の疎水性リグニン誘導体の濃度は、以下の式により算出することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る酵素安定化剤の製造装置を模式的に示す概略構成図である。以下、図1を参照しながら、本実施形態の酵素安定化剤の製造装置の各構成について説明する。
本発明の第1実施形態に係る酵素安定化剤の製造装置100は、第一の反応槽1と、濾過装置2と、第二の反応層3と、固液分離装置4と、を備える。第一の反応槽1は、アルカリ供給手段1aを有し、リグノセルロース系バイオマスとポリエチレングリコールとに第一の酸を反応させる。前記第二の反応槽3は、第二の酸供給手段3aを有する。
反応槽1は、リグノセルロース系バイオマスとポリエチレングリコールとに第一の酸を反応させて、リグニン誘導体を得るための槽である。リグノセルロース系バイオマス、ポリエチレングリコール及び第一の酸については、上述の酵素安定化剤にて記載されたものと同じものが挙げられる。
加えるポリアルキレングリコールの量は、特に制限はなく、通常、リグノセルロース系バイオマス10乾燥重量部に対して、5〜100重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
加える第一の酸の量は、例えば、ポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.1〜0.3重量部である。
反応槽1は撹拌翼等の撹拌機構を有していてもよい。
また、撹拌槽における反応液の温度は、特に制限はなく、通常、100℃〜200℃、好ましくは120℃〜160℃である。
反応槽1内の温度を上記範囲内に保つために、撹拌槽1は温度調整装置又は温度計1bを備えていてもよい。
また、反応槽1は、アルカリ供給手段1aを有する。さらに、図1に示すようにリグノセルロース系バイオマス供給手段1c、ポリアルキレングリコール供給手段1d、第一の酸供給手段1e等を有してもよい。
また、反応槽1は、pH計を有してもよい。pH計は、アルカリ供給後の反応液のpHを測定し、アルカリ供給量を適宜調整するために、用いればよい。
アルカリ供給手段1aは反応槽1に配設されており、アルカリを反応槽1に供給するためのものである。アルカリを供給することで、前記反応槽1内において、リグニン誘導体の生成反応が終了した後に、反応液を中和することができる。アルカリとしては、上述の酵素安定化剤の製造方法において例示されたものと同様である。
アルカリ供給後の反応液のpHは、pH6以上12以下であること好ましく、pH6以上10以下であることがより好ましい。
アルカリ供給手段1aはアルカリの供給量を調整するためのポンプ、弁等を有していてもよい。
濾過装置2は、反応液から固形分画を取り除くためのものである。
濾過装置2としては、アルカリ中和液から固形分画を除くことができれば、特に制限はないが、例えば、遠心分離、スクリュープレス、フィルタープレス等が挙げられる。
第二の反応槽3は、濾過装置2で得られた液分画と第二の酸とを反応させるためのものである。
加える第二の酸の量は、例えば、液分画100重量部に対して、0.01〜3.0重量部である。
また、第二の反応槽3は、耐酸性であるものであればよく、特別な限定はない。
第二の反応槽3は撹拌翼等の撹拌機構を有していてもよい。
固液分離装置4は、第二の反応槽3で得られた反応液を、固液分離して、固形物を除くことにより、親水性リグニン誘導体を含む液分画を得るためのものである。
固液分離装置4は、酸を添加して生成する固形物を分離できる装置であれば、特に制限はないが、例えば、遠心分離機等が挙げられる。
まず、反応槽1に、リグノセルロース系バイオマス供給手段1c、ポリアルキレングリコール供給手段1d及び第一の酸供給手段1eにより、リグノセルロース系バイオマス、ポリアルキレングリコール及び第一の酸を添加する。各材料の種類、添加量、反応温度及び反応時間は、上述の酵素安定化剤の製造方法に記載されたとおりである。上記材料を反応させて、リグニン誘導体を生成させる。
次いで、反応後のリグニン誘導体を含む反応液に、アルカリ供給手段1aからアルカリを添加して、反応液を中和する。アルカリの種類、添加量は、上述の酵素安定化剤の製造方法に記載されたとおりである。次いで、中和された反応液は、ポンプ5aにより送液量を調整しながら配管5を介して、濾過装置2に送られる。濾過装置2において、送られた反応液から固形分画を取り除き、液分画を得る。固形分は配管6aを介して排出される。
一方、得られた液分画は、配管6bを介して、第二の反応槽3に送られ、第二の酸が添加される。反応液は配管7を介して固液分離装置4に送られ、ここで、未反応のリグニン及び疎水性リグニン誘導体を含む固形物が固形分画として分離される。
一方、得られた液分画には、親水性リグニン誘導体の他に未反応のポリアルキレングリコールが含まれる。そのため、液分画に含まれる未反応のポリアルキレングリコールは図示しない配管により、ポリアルキレングリコール供給手段1dに送られ、再利用することができる。
施例に限定されるものではない。
風乾したスギの木粉250gに、ポリエチレングリコール200(PEG200、ライオン社製)1250gと95%硫酸4gを加え、140℃に加熱し、90分間撹拌して反応させた。反応終了後、2N水酸化ナトリウム水溶液150mlを加えて中和し、リグニン誘導体を抽出した。得られた反応液を濾過膜(ADVANTEC社製)にかけ、固形分を除去した。
得られた濾液に3N硫酸をpH2になるまで加えた。硫酸により沈殿する沈殿物を13000gで15分間遠心分離することにより、親水性リグニン誘導体を含む液分画を得た。
遠心分離により得られた沈殿物は、水3Lで洗浄し、凍結乾燥し、疎水性リグニン誘導体を含む固形分画を得た。
実施例1において、PEG200の代わりに、PEG400(ライオン社製)又はPEG600(ライオン社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、親水性リグニン誘導体を含む液分画をそれぞれ得た。
実施例1において、PEG200の代わりにPEG1000(WAKO製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、親水性リグニン誘導体を含む液分画を得た。
風乾した杉チップをアルカリ蒸解処理し、アルカリ処理リグニンを得た。得られたアルカリ処理リグニン10gを100mlの1N水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、ラウリルアルコール−ポリエチレンオキサイドーグリシジルエーテルを40g加えた。得られた溶液を70℃に加熱し、3時間撹拌反応させた。反応後、得られた溶液に酢酸を加えてpH4に調整し、分子量1000以下を排除する限外ろ過膜にて濾過を行った。濾過後、残渣を収集し、リグニン誘導体を得た。
バガス20gを希硫酸で前処理したバガス前処理物の乾燥重量10gと、水で希釈した糖化酵素液2gに、実施例1で調製した親水性リグニン誘導体を含む液分画又は疎水性リグニン誘導体を含む固形分画を、それぞれリグニン誘導体量として、バガス乾燥重量当り0.1〜2.2重量%となるように加え、さらに水を加えて100mlとした。これを50℃で48時間反応させ、糖化反応を行った。反応後のC6糖化率を測定し、リグニン誘導体添加率と、C6糖化率の関係を調べた。その結果を図2に示す。ここで、添加率0重量%とは、実施例で調製した液分画又は固形分画を添加しないものをいう。図2から明らかなように、実施例1で調製した親水性リグニン誘導体を含む液分画を0.25重量%添加することにより、C6糖化率が約5%上昇した。それに対し、疎水性リグニン誘導体を含む固形分画を添加した場合は、1〜2重量%添加することによりC6糖化率が約5%上昇した。これにより、親水性リグニン誘導体を含む液分画は、基質と酵素との反応性を高め、酵素の活性を向上させることが確認できた。
試験例1において、実施例1で調製した親水性リグニン誘導体の代わりに、実施例2で調製した親水性リグニンを用いる以外は試験例1と同様にして、糖化試験を実施した。、親水性リグニン誘導体の添加率とC6糖化率との関係を図3に示す。
試験例1において、実施例1で調製した親水性リグニン誘導体の代わりに、実施例3で調製した親水性リグニン誘導体を用いる以外は、試験例1と同様にして、糖化試験を実施した。親水性リグニン誘導体の添加率は、バガス前処理物乾燥重量当たり0.5重量%となるように加えた。実施例1及び2で用いたPEGの分子量(200、600)及び実施例3で用いたPEGの分子量(1000)と糖収量比の関係を図4に示す。なお、糖収量比とは、リグニン誘導体を添加しない場合の糖化終了時のグルコース量と、リグニン誘導体を添加した場合の糖化終了時のグルコース量の比であり、糖収量比100%以上はリグニン誘導体添加により糖化率が上昇したことを示す。この結果、用いるPEG分子量が大きくなるほど糖化率が上昇するが、PEG600以上では糖化率が大きく上昇しないことが確認された。さらに、それぞれPEG200、PEG600、PEG1000を用いた親水性リグニン誘導体の平均分子量は、各々1530、2250、3060であった。以上のことから、親水性リグニン誘導体分子量は1000〜3200程度が好ましく、より好ましくは1500〜2300程度であると推測される。
試験例1において、実施例1で調製した親水性リグニン誘導体の代わりに、PEG400を用いて調製した実施例2の親水性リグニン誘導体および比較例1にて調製したリグニン誘導体を用いる以外は、試験例1と同様にして、糖化試験を実施した。結果を図5に示す。
Claims (19)
- リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させ、得られるリグニン誘導体に、第二の酸を添加後、固液分離をして液分画を得ることにより得られる親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤。
- 親水性リグニン誘導体が、リグニンのコニフェリルアルコール骨格のα位の炭素にポリアルキレングリコール基を有し、前記ポリアルキレングリコールの末端が水酸基である請求項1に記載の酵素安定化剤。
- 前記リグノセルロース系バイオマスが木粉である請求項1又は2に記載の酵素安定化剤。
- 前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素安定化剤。
- 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が200〜600である請求項4に記載の酵素安定化剤。
- 前記親水性リグニン誘導体の平均分子量が1000〜3200である請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素安定化剤。
- 前記第一の酸又は第二の酸が硫酸である請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素安定化剤。
- リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させ、得られるリグニン誘導体に、第二の酸を添加後、固液分離をして液分画を得ることを特徴とする親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤の製造方法。
- 以下の工程を含む親水性リグニン誘導体を含む酵素安定化剤の製造方法。
(1)リグノセルロース系バイオマスとポリアルキレングリコールに第一の酸を添加して反応させる工程、
(2)工程(1)で得られた反応液にアルカリを添加して中和する工程、
(3)工程(2)で得られたアルカリ中和液から固形分を除く工程、
(4)工程(3)で得られた液分画に第二の酸を添加する工程、及び、
(5)工程(4)で沈殿した沈殿物に対し固液分離を行い、親水性リグニン誘導体を含む液分画を得る工程 - 親水性リグニン誘導体が、リグニンのコニフェリルアルコール骨格のα位の炭素にポリアルキレングリコール基を有し、前記ポリアルキレングリコールの末端が水酸基である請求項8又は9に記載の酵素安定化剤の製造方法。
- 前記リグノセルロース系バイオマスが木粉である請求項8〜10のいずれか1項に記載の酵素安定化剤の製造方法。
- 前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項8〜11のいずれか1項に記載の酵素安定化剤の製造方法。
- 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が200〜600である請求項12に記載の酵素安定化剤の製造方法。
- 前記親水性リグニン誘導体の平均分子量1000〜3200である請求項8〜13のいずれか1項に記載の酵素安定化剤の製造方法。
- 前記第一の酸又は第二の酸が硫酸である請求項8〜14のいずれか1項に記載の酵素安定化剤の製造方法。
- 基質と酵素の反応系に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酵素安定化剤、又は請求項8〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られる酵素安定化剤を添加することを特徴とする酵素の安定化方法。
- リグノセルロース系バイオマスの酵素による糖化方法において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酵素安定化剤、又は請求項8〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られる酵素安定化剤を添加することを含む、リグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
- 前記酵素安定化剤中の親水性リグニン誘導体を、酵素糖化されるリグノセルロース系バイオマスの乾燥重量に対し0.1〜1.0質量%となるように添加する、請求項17に記載の糖化方法。
- アルカリ供給手段を有し、リグノセルロース系バイオマスとポリエチレングリコール、とに第一の酸を反応させる第一の反応槽と、
濾過装置と、
前記濾過装置を用いて固液分離して得られた液分画と第二の酸とを反応させる第二の反応槽と、
固液分離装置と、
を備えることを特徴とする酵素安定化剤の製造装置。
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