JP2020143784A - 歯付ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】取付性と同期性を確保しつつ、繰り返される負荷に耐用するためのバランスの取れた、歯付ベルトを提供する。【解決手段】背部2と、ベルト長手方向に所定の間隔を有して配設された歯部3と、背部2に埋設された心線4とを有し、プーリ間に巻き掛けられる歯付ベルト1であって、心線4は、脂肪族ポリアミド繊維から形成されており、総繊度が230dtex以上710dtex以下の範囲であり、所定の取付張力でプーリ間に巻き掛けられる際の、ベルト伸長率(%)に対するベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)で定義されるベルト弾性率が、(a)ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が10N〜30Nの間は、15N/%以上31N/%以下の範囲、(b)ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が30N〜60Nの間は、23N/%以上50N/%以下の範囲になるように構成されている。【選択図】図6

Description

本発明は、歯付ベルトに係り、特には紙幣、カード、切符等を搬送する歯付ベルトに関する。
ATM(金融端末機)、自動改札機、両替機等において紙幣、切符、及びカード等の紙葉類を搬送する搬送装置(搬送ユニット)に用いられる紙葉類搬送用のベルトは、通常、比較的薄型の平ベルトの背面同士をあわせて、その間に紙葉類を挟持した状態で搬送するといった形態で使われている。上記紙葉類搬送用のベルトは、通常、搬送ユニットとは別体に設けられた駆動ユニットにより、駆動源(モータ)からの動力を上記搬送ユニットの一つのプーリ軸に歯付ベルトを介して同期伝達されることによって走行されるようになっている。(例えば、特許文献1図1、2の装置の紙面右側部分参照、段落0013、上記搬送ベルトは符号5,6、上記歯付ベルトは符号7に相当)。
近年、上記ATM等においては、小型化、低コスト化が推進されている。そのため、機内に備わる紙葉類の搬送装置にあっては、(i)紙葉類の搬送機能に加え、(ii)動力の伝達及び同期伝動機能、及び、(iii)搬送装置側の張力調整機構(軸間距離調整のブラケット等)を不要とする機能、を兼ね備えた歯付ベルトを有する、紙葉類の搬送ベルトシステムを求める市場要求が潜在的にある。この紙葉類の搬送ベルトシステムによれば、従来は別個であった搬送系と駆動系の各ユニットを一体にでき、従来の駆動ユニット内のベルト、プーリ類、及びそのスペースを排除できることで、装置全体の小型化、低コスト化に寄与できる。
この市場要求に対応するため、上記の歯付ベルトにあっては、ベルトの長手方向に伸縮性を持たせ、軸間固定のプーリ間に取付け容易であり、且つ、走行中もベルトの張力を維持でき、同期性を確保できる歯付ベルトでなければならない。
上記市場要求に対応し得ると考えられる歯付ベルトとしては、当紙葉類搬送のための搬送及び駆動の各伝動系が比較的軽負荷であるため、例えば、特許文献2に記載のように、芯体として、比較的低弾性な特性を有し、ベルトの伸びをある程度許容する程度にベルト長手方向に伸縮性を有する繊維材料(ポリウレタン系弾性繊維等)から形成された心線(撚りコード)を備える構成とすれば実現できることが考えられる。
特開2001−294353号公報 実開昭60−021053号公報
しかしながら、上記紙葉類の搬送装置内で使用されるベルトは、紙葉類の搬送中、ON/OFF、正転/逆転を頻繁に繰り返されながら負荷走行される。つまり、このように比較的軽負荷ながらも負荷を受けつつ、始動及び停止が頻繁に繰り返される走行パターンでは、始動及び停止時に衝撃的な負荷がベルトにかかる。さらに、例えば紙幣等の紙葉類あるいは異物が搬送経路内で詰まるトラブルが発生した場合には、上記定常の作動状態よりも大きな負荷がベルトに掛かる。
上記市場要求のもと、伸縮性を持たせた歯付ベルトにおいて、取付性を重視するあまり、歯付ベルトの引張強度ならびに歯付ベルトの引張弾性率の水準が必要以上に低水準に構成され、且つ、プーリ間への取付張力が低く設定された場合は、上記始動及び停止時の衝撃的な負荷、あるいは紙葉類や異物が詰まる際の過負荷に耐えきれず、歯付ベルト(心線)が伸び、ジャンピング(歯飛び)を起こす虞がある。ジャンピング(歯飛び)を起こすと、歯付ベルトがプーリの回転と同期して走行できなくなるばかりか、これにより歯欠け等が発生し歯付ベルトが早期に寿命に至る虞がある。
そのため、特許文献2に記載のようなベルト長手方向に伸縮性を有する歯付ベルトを紙葉類の搬送装置に適用可能とするには、上記歯付ベルト(心線)の伸びを許容することで解決し得る取付性と、歯付ベルト(心線)の伸びを制限することで解決し得る同期性(耐ジャンピング性、耐久性)とをバランスよく両立させることが課題であった。
そこで、本発明の目的は、取付性と同期性を確保しつつ、繰り返される負荷に耐用するためのバランスの取れた、歯付ベルトを提供することである。
本発明は、背部と、ベルト長手方向に所定の間隔を有して配設された歯部と、前記背部に埋設された心線とを有し、プーリ間に巻き掛けられる歯付ベルトであって、
前記心線は、脂肪族ポリアミド繊維から形成されており、総繊度が230dtex以上710dtex以下の範囲であり、
所定の取付張力で前記プーリ間に巻き掛けられる際の、ベルト伸長率(%)に対するベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)で定義されるベルト弾性率が、(a)ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が10N〜30Nの間は、15N/%以上31N/%以下の範囲、(b)ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が30N〜60Nの間は、23N/%以上50N/%以下の範囲になるように構成されていることを特徴としている。
上記構成によれば、心線は、比較的低い引張弾性率を有するとされる脂肪族ポリアミド繊維から形成され、且つ、総繊度を230dtex以上710dtex以下の実用的な範囲にすることにより、プーリ間に取付けられる際のベルト長手方向のベルト弾性率を人の手(治具なし)で取付け可能な程度まで低く抑えることができる。
また、上記ベルト弾性率を(a)ベルト張力が低めの領域(ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が10N〜30Nの間)では、比較的低いベルト弾性率(N/%)を呈し、(b)ベルト張力が高めの領域(ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が30N〜60Nの間)では、比較的高いベルト弾性率(N/%)を呈し、全体として、ベルト幅10mmあたり15N/%以上50N/%以下の範囲に比較的低く抑えられるように構成する。つまり、所定の取付張力でプーリ間に巻き掛けられる際のベルトの引張特性が、低弾性率領域と高弾性率領域とを併せ持ち、全体として、ベルト弾性率が比較的低く抑えられることにより、人の手(治具なし)で歯付ベルトをプーリ間に掛け易くなるとともに、低く抑えたベルト弾性率とベルトの引張強度とのバランスを確保することができる。
これにより、歯付ベルト(心線)の伸びを許容することで解決し得る、歯付ベルトのプーリ間への取付性と、歯付ベルト(心線)の伸びを制限することで解決し得る同期性(耐ジャンピング性、耐久性)とのバランスを確保することができる。
つまり、上記構成によれば、取付性と同期性を確保しつつ、プーリ間で歯付ベルトが走行する際に繰り返される負荷に耐用するためのバランスを確保することができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、前記心線が、ベルト長手方向に延在し、且つ、ベルト幅方向に配列されており、
前記ベルト幅方向に隣り合う心線と心線との間隔の合計値の、ベルト幅に対する割合が、20%以上43%以下であることを特徴としている。
上記構成によれば、心線は、歯付ベルトのプーリ間への取付性を確保し得る範囲内で、隣り合う心線と心線との間隔の合計値のベルト幅に対する割合、即ち、心線配列の密度の程度を比較的密にすることができる。これにより、低く抑えたベルト弾性率とベルトの引張強度とのバランスを確実に確保することができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、
前記心線は、径が0.22mm以上0.31mm未満の撚りコードであり、
前記ベルト幅方向における心線ピッチが、0.30mm以上0.42mm以下であることを特徴としている。
上記構成は、心線の太さ(径)を実用的な範囲とした場合に心線配列の密度の程度を密とする構成を規定している。この構成によれば、歯付ベルトの製造条件に直結し得る、歯付ベルトの設計事項をより具体的なものにすることができる。その結果、取付性と同期性を確保しつつ、プーリ間で歯付ベルトが走行する際に繰り返される負荷に耐用するためのバランスを確実に確保することができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、
前記歯部、及び、歯底部の表面に歯布が被覆されていることを特徴としている。
歯付ベルトをプーリ間に巻き掛ける際には、歯付ベルト(歯部)をプーリ(歯溝部)に掛ける際の、ベルト(歯部)とプーリ(歯溝部)との接触が、ベルト幅方向について部分的であっても、ベルト(歯部)とプーリ(歯溝部)がかみ合うことで、プーリを手で回しながら、試験ベルトをプーリ間に完全に巻き掛けることができる。このため、そもそも、歯部を有する歯付ベルトの場合は、歯部を有しないベルト(平ベルト等)の場合と比べて、ベルトのプーリ間への取付性を良好にすることができる。
更に、上記構成によれば、歯部の表面に歯布が被覆されていない場合と比べて、歯付ベルトをプーリ間に巻き掛ける際に、プーリ(歯溝部)と歯付ベルト(歯部)とが接触し擦れ合う部分の摩擦抵抗(摩擦係数)を小さくすることができるとともに、歯部の変形や摩耗を抑制することができる。つまり、歯部の表面に歯布が被覆されていない場合と比べて、より低い張力で歯付ベルトをプーリ間に巻き掛けることができるため、歯付ベルトのプーリ間への取付性をより良好にすることができる。また、歯部の変形や摩耗を抑制できるため、耐ジャンピング性や耐久性(寿命)を底上げすることができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、
前記所定の取付張力が、1つの駆動軸と1つの従動軸からなる2軸配置のプーリ間に当該歯付ベルトを巻き掛けた場合に、ベルト幅10mmあたり3N以上60N以下であることを特徴としている。
1つの駆動軸と1つの従動軸からなる2軸配置のプーリ間(つまり、2軸レイアウトのプーリ間)に歯付ベルトを巻き掛けた場合に、所定の取付張力が、比較的低いベルト幅10mmあたり3N以上60N以下に設定されているため、歯付ベルトの耐久性(寿命)を高めることができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトが、2軸配置のプーリ間に巻き掛けられることを特徴としている。
本発明の歯付ベルトは、2軸レイアウトのプーリ間に巻き掛けられるのが好ましい。この構成によれば、駆動プーリの数が1つであり、従動プーリの数が2つ以上の場合と比べて、駆動プーリの歯溝部が設けられた外周面の、歯付ベルトに接する部分が長くなり、歯付ベルトと駆動プーリとの噛み合い歯数が増える。そのため、歯付ベルトの伝動容量が増し、歯付ベルトの走行、及び、歯付ベルトの耐久性に係る信頼性をより向上させることができる。
また、従動プーリの数が2つ以上の場合と比べて、歯付ベルトを人の手(治具なし)でプーリ間に取付けることが容易である。
また、本発明は、上記歯付ベルトが、紙葉類の搬送ベルトシステムに用いられることを特徴としている。
紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステムに、上記歯付ベルトを使用することにより、取付性と同期性を確保しつつ、プーリ間で歯付ベルトが走行する際に繰り返される負荷に耐用することができる。
取付性と同期性を確保しつつ、繰り返される負荷に耐用するためのバランスの取れた、歯付ベルトを提供することができる。
本実施形態に係る、歯付ベルトの一部斜視図である。 本実施形態に係る歯付ベルトが使用される、搬送ベルトシステム(実機)の基本レイアウトを示す概略図である。 取付試験で用いた試験装置及び耐久走行試験装置の概略図である。 ジャンピング試験装置の概略図である。 耐久走行試験におけるベルトの走行パターンを示す図である。 ベルト伸長率とベルト張力との関係(S−S線図)を示す図である。 ベルト弾性率と心線密度との関係を示す図である。 心線の配列状態を示す歯付ベルトの断面図である。
(実施形態)
以下、図面に基づき、本発明の歯付ベルトの実施形態を説明する。
(歯付ベルト1)
図1に示すように、歯付ベルト1は、背部2と、ベルト長手方向に所定の間隔を有して背部2に配設された歯部3、背部2に埋設された心線4と、歯布5を備えている(歯付ベルト1は無端状)。背部2及び歯部3は、ゴム組成物を基材としたゴム状弾性体である。また、歯布5は、歯部3の表面および歯底部6の表面を被覆している。なお、歯付ベルト1は、歯布5を備えていない構成であってもよい。
(背部2、歯部3)
歯付ベルト1の背部2や歯部3を構成するゴム状弾性体は、ゴム組成物を架橋して形成されるものであり紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステム用途に適したゴム組成物としては、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を配合したもの、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ミラブルタイプのウレタンゴム(U)などから選ばれるゴムを単独で或いはブレンドして用いたゴムの主成分100重量部に、カーボンブラック、可塑剤、さらに架橋剤その他必要に応じた添加剤を配合して調製されるものである。なかでも、歯付ベルト1を紙葉類搬送用とする場合は、紙葉類の挟持搬送性ならびに歯付ベルト1の耐久性(耐摩耗性、張力維持性、等)確保の観点から、素材自身がしなやかで耐摩耗性に優れ、且つ、適度な摩擦係数と適度な収縮力とを兼ね備える、ミラブルウレタンを主成分とするゴム組成物を用いることが望ましい。
可塑剤としては、特に制限されるものではないが、トリメリット酸系、ポリエーテル系、ポリエステル系、フタル酸系のものを用いることができる。架橋剤としては、硫黄加硫系では、水素化ニトリルゴム100重量部に対する硫黄0.5〜2重量部と、メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、テトラメチルチウラムジサルファイド、テトラエチルチウラムジサルファイド等の加硫促進剤を併用するのが好適である。また有機過酸化物加硫系では、水素化ニトリルゴム100重量部に対して有機過酸化物0.2〜10重量部が好適であり、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物を用いることができ、さらに硫黄化合物、オキシムニトロソ化合物、モノマー類、ポリマー類で共架橋剤として一般に使用されるものを適用添加しても差し支えない。
(心線4)
心線4は、脂肪族ポリアミド繊維からなる原糸から形成し、且つ、総繊度を230dtex以上710dtex以下の、紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステム用途の歯付ベルト1の要求仕様に見合う実用的な範囲とした脂肪族ポリアミド心線である(後述する表2の心線種A−2〜A−5相当品)。この心線4は、紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステムに従来より広く採用されているEガラス心線用のEガラス繊維(汎用性無アルカリガラス繊維)よりも引張弾性率が十分に低く、総繊度(心線4の太さに相当)をEガラス心線と同様に上記紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステム用途の歯付ベルト1の要求仕様に見合う実用的な範囲としたものである。
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6−12、又はこれらの共重合体などが挙げられる。
この脂肪族ポリアミド繊維からなる原糸(平均繊度は、235dtex、470dtex等)を所定の撚り構成で撚糸した撚糸コードをイソシアネートでプレディップ処理(接着処理)するのが好ましい。なお、さらに、配合液がベルト本体のゴム組成物と同じ主成分からなるオーバーコート剤に浸漬し、加熱乾燥させるオーバーコート処理(接着処理)を施してもよい。
(歯布5)
歯付ベルト1の歯部3の表面および歯底部6の表面を被覆する歯布5としては、基布が織物、編物、不織布等から選択されるが、一般的には、6ナイロン、6,6ナイロンなどの脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)を素材とする織布に接着処理をしたものが用いられる。
歯布5を構成する繊維素材としては、上記の他公知のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。また、これらの繊維素材が単独で基布として用いられる必要はなく、それぞれの混合素材でもよい。
歯布5の構成としては、上記の繊維素材を平織、綾織、朱子織等に織成した織物を用いることが好ましい。例えば、経糸(ベルト幅方向)を6ナイロンとし、緯糸(ベルト長手方向)をウーリ6ナイロンとした織構成が綾織物である帆布が用いられている。なお、緯糸には伸縮性を有するウレタン弾性糸を一部使用してもよい。
接着処理として、上記の帆布をRFL液によって浸漬処理するのが好ましい。さらに、歯部3を構成するゴム組成物に接することになる方の面に、歯部3の形成用の上記ゴム組成物を溶剤で溶かしたゴム糊を糊引き処理したものを歯布5として用いてもよい。
歯付ベルト1の歯部3及び歯底部6に歯布5を設ける理由としては、歯部3の表面に歯布5が被覆されていない場合と比べて、歯付ベルト1をプーリ間に巻き掛ける際に、プーリ(歯溝部)と歯付ベルト1(歯部3)とが接触し擦れ合う部分の摩擦抵抗(摩擦係数)を小さくすることができるとともに、歯部3の変形や摩耗を抑制できることが挙げられる。つまり、歯部3の表面に歯布5が被覆されていない場合と比べて、より低い張力で歯付ベルト1をプーリ間に巻き掛けることができるため、歯付ベルト1のプーリ間への取付性をより良好にすることができる。また、歯部3の変形や摩耗を抑制できるため、耐ジャンピング性や耐久性(寿命)を底上げすることができることが挙げられる。
(歯付ベルト1の設計手法)
紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステム10に適用可能な歯付ベルト1の設計手法を次に示す。紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステム10に適用可能な歯付ベルト1の設計仕様は、下記設計の前提条件(1−1)〜(1−4)、及び、下記ベルトの詳細設計(2−1)〜(2−5)を踏まえ、決定できる。
(1−1)搬送ベルトシステム
歯付ベルト1を適用する対象の装置の一例として、ATM等の機内に備わる紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステム10を取り挙げる。搬送ベルトシステム10の基本レイアウトの一例を図2に示す。特許文献1の図1、図2の符号5,6と同様、上下2対のベルトの背面同士をあわせて、その間に紙葉類を挟持した状態で搬送する。図2の例では、歯付ベルト1は、下側のプーリ21・22間(歯付きの駆動プーリ21及び歯付きの従動プーリ22、2軸レイアウト)に巻き掛けられる。
歯付ベルト1は、前述のように、(i)紙葉類の搬送機能、(ii)動力の伝達及び同期伝動機能、及び、(iii)紙葉類の搬送ベルトシステム10側の張力調整機構を不要とする機能(伸縮性を有する構成)、を備えることを設計の前提とする。歯部3の形状は、比較的伝動容量が高いとされるSTPD歯形が好ましい。
なお、図2の上側のプーリ23・24間に巻き掛けられるベルトは、紙葉類の挟持搬送を可能とするための搬送機能(上記(i))を少なくとも備えていればよく、通常は比較的薄型の平ベルト31が採用される。挟持搬送部分(上下のベルトの背面同士が接触する部分)で、上側の平ベルト31とプーリ23・24が従動される。
また、上下のベルト間(挟持搬送部分)を搬送経路とする紙葉類の挟持力を調整するために、上下のプーリ間(駆動プーリ21と従動プーリ22との間、及び、プーリ23とプーリ24との間)のそれぞれには、適所に押えロールの役割を兼ねるアイドラー25・26・27が設けられる(図2参照)。このアイドラー25・26・27の付加により、歯付ベルト1及び平ベルト31には若干程度の張力が付与される。
また、上下のベルトの長手方向の相対的なずれを抑制するために、上下のプーリ及び上下のベルトをともに歯付プーリ及び歯付ベルトで構成し、同期伝動させてもよい。
なお、後述の試験ベルトの評価試験においては、後述の試験方法に従い、図2に示す上側のプーリ、ベルト及びアイドラー(押えロール)を排除した状態(図3等)で評価を行った。
(1−2)軸間距離
駆動プーリ21及び従動プーリ22のプーリ間の軸間距離は固定した状態を前提とする。
軸間距離の変化に関して、使用環境として基本的に屋内に設置され、搬送ベルトシステム10のように、駆動源が比較的低出力で小型の電動モータである場合、(例えば、駆動源が自動車エンジンの場合、エンジンの熱膨張により、ベルト走行中のエンジン本体の温度変化量が100℃にもなる場合と比べて、)駆動プーリ21の回転により歯付ベルト1が走行する間の搬送ベルトシステム10自体の温度変化量は僅かなものであり、軸間距離の変化は殆ど無いものとして無視できる。したがって、設計上は、取付時(取付張力)と走行時(ベルト走行時張力)とで、熱膨張等による軸間距離の変化によるベルト張力の変化はほとんどないものとみなしてよい。
(1−3)取付張力
所定の取付張力は、搬送ベルトシステム10(特には、プーリレイアウト)ごとに設定される。2軸レイアウト、つまり、1つの駆動軸と1つの従動軸からなる2軸配置のプーリ間に歯付ベルト1を巻き掛けた場合、ベルト幅10mmあたり3N〜60Nとするのが好ましい。このように、2軸レイアウトのプーリ間に歯付ベルト1を巻き掛けた場合に、所定の取付張力が、比較的低いベルト幅10mmあたり3N以上60N以下に設定されているため、歯付ベルトの耐久性(寿命)を高めることができる。なお、上記の値は、2軸レイアウトのプーリ間にアイドラー等の張力を付与する機構を有する場合を含む。
取付張力の下限値は、同期性を確保するために最低限必要な水準を示す。この下限値を下回ると、ベルト張力が弱すぎて、歯付ベルト1をプーリ間に掛架できず、仮に掛架できたとしても、駆動軸と従動軸の位相ずれが大きくなりすぎ(例えば位相ずれ角が2°以上となり)、同期性を損なう虞がある。
なお、歯付ベルト1の用途が紙葉類の搬送用の場合、前述のように、通常、上下のベルト間(挟持搬送部分)を搬送経路とする紙葉類の挟持力を調整するアイドラー(押えロール)をプーリ間に設ける。これにより、取付張力を下限値(ベルト幅10mmあたり3N)に設定されても、歯付ベルト1(歯部)と歯付プーリ(歯溝部)とのかみ合い性及び同期性が確保され易くなる(図2参照)。
取付張力の上限値は、駆動軸に過剰な負荷がかからない程度にモータを搬送ベルトシステム10の駆動用に適用可能な取付張力の最大値、あるいは、2軸レイアウト(軸間固定)での人の手(冶工具なし)による取付限界張力、のうち、値の小さい方に設定される。本実施形態では、搬送ベルトシステム10のプーリ軸は、取付限界張力に十分に抗し得る十分な強度を有していることを前提とし、取付張力の上限値は、後者の取付限界張力に設定されるものとする。取付限界張力の値が大きいほど、より大きな負荷に対応できるため好ましい。
なお、この上限値が適用可能なベルト幅は、12mm以下に限るものとする。ベルト幅が12mmを上回ると、人の手で取付困難になり得る。しかしながら、最近の搬送ベルトシステム10ひいてはATM等機器においては、小型化、低コスト化に対する市場要求が絶えず、今後、ベルト幅に対する市場要求としては12mm以下が見込まれているため、実質的に問題はない。
(1−4)ベルトの引張強度
歯付ベルト1の引張強度の許容最小値をベルト幅10mmあたり480Nとする。
搬送ベルトシステム10の同期性を確保しつつ、要求寿命を満足し得る歯付ベルト1の引張強度の許容最小値をベルト設計の前提条件に加える必要がある。この値は、搬送ベルトシステム10の有効張力(従動プーリ22に加わる負荷)に応じて決定される。本実施形態の搬送ベルトシステム10において、有効張力(負荷)は80Nであり、安全率(例えば安全率3)及び要求寿命(例えば800時間)、走行後に確保すべき強度保持率(例えば50%)を考慮して導かれた歯付ベルト1の引張強度の許容最小値は、480Nであった(算出式省略)。
(2−1)ベルト弾性率の測定(測定方法)
軸間固定のプーリ間に各試験ベルトを取付ける際の、ベルト弾性率を導く。
(試験ベルト)
ベルト呼称:100S3M282(ベルト形:S3M、歯数94、幅10mm、歯ピッチ3mm、ベルト呼び長さ282mm)
歯形状は、比較的伝動容量が高いとされる、STPD歯形とした。
(弾性率の測定)
室温23±2℃、相対湿度50±5%条件下で行い、上記試験ベルト(呼称:100S3M282)を同条件で24時間以上放置したものを用いた。
(2−1−1)
まず、引張試験機の上下のチャックのそれぞれに歯付プーリ(ともに、歯数:20、プーリ歯形:S3M、歯溝部ピッチ:3mm)を取付け、試験ベルトをプーリ間に巻き掛けて、初期の軸荷重20N(初張力10N)を与えた。
(2−1−2)
試験ベルトを引張速度50mm/分で引っ張り、ベルト伸長率とベルト張力との関係(S−S線図)をPC(パーソナルコンピュータ)に記録させた(図6)。図6では、初張力10N時のベルト伸長率(%)を0(原点)とした。なお、横軸のベルト伸長率(%)は、プーリ間(上記2−1−1)の軸間距離変化率(%)に等しい。縦軸のベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)は、引張試験機のロードセルで検出される荷重に相当する軸荷重(N)を2で除した値である。
(2−1−3)
次に、所定の取付張力の範囲内で、ベルト張力が比較的低い領域(a)の下限及び上限、即ち、ベルト張力10N時のS−S線図上の通過点(P1)とベルト張力30N時のS−S線図上の通過点(P2)とを結ぶ近似直線の傾きに相当する、P1〜P2間のベルト伸長率(プーリ間の軸間距離変化率)(%)に対するベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)の値(N/%)を求め、これをベルト張力が比較的低い領域(a)でのベルト弾性率とした。なお、詳細は実施例の項目で述べるが、ベルト弾性率は、(a)ベルト幅10mmあたりのベルト張力が10N〜30Nの間は、15N/%以上31N/%以下の範囲が望ましい。
(2−1−4)
次に、所定の取付張力範囲内で、ベルト張力が比較的高い領域(b)の下限及び上限、即ち、ベルト張力30N時のS−S線図上の通過点(P2)とベルト張力60N時のS−S線図上の通過点(P3)とを結ぶ近似直線の傾きに相当する、P2〜P3間のベルト伸長率(プーリ間の軸間距離変化率)(%)に対するベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)の値(N/%)を求め、これをベルト張力が比較的高い領域(b)でのベルト弾性率とした。なお、詳細は実施例の項目で述べるが、ベルト弾性率は、(b)ベルト幅10mmあたりのベルト張力が30N〜60Nの間は、23N/%以上50N/%以下の範囲が望ましい。
(2−1−5)
後述する実施例及び比較例に係る、各試験ベルトのベルト弾性率の測定結果を表4、表5のベルト弾性率の欄に示した。
(2−2)ベルト弾性率の推奨上限値の決定
心線4の仕様の選定に係る各評価試験(後述)の全てを満足した各試験ベルトの、上記測定方法で導かれる、所定の取付張力(下限、上限)範囲内のベルト張力下でのベルト弾性率のうち、値が最も大きいベルト弾性率を、低く抑えるべきベルト弾性率の推奨上限値とした。ここで、ベルト弾性率が上限値を上回る場合、取付性が損なわれる。
(2−3)ベルト弾性率の推奨下限値の決定
心線4の仕様の選定に係る各評価試験(後述)の全てを満足した各試験ベルトの、上記測定方法で導かれる、所定の取付張力(下限、上限)範囲内のベルト張力下でのベルト弾性率のうち、値が最も小さいベルト弾性率を、ベルト弾性率の推奨下限値とした。ここで、ベルト弾性率の推奨下限値は、同期性確保の観点から、装置の種別とはさほど関係なく、ほぼ画一的に決定される値である。ベルト弾性率が推奨下限値を下回る場合、駆動軸と従動軸の位相ずれが大きくなりすぎ(例えば位相ずれ角が2°以上となる)、同期性を損なう虞がある。その結果、ジャンピング(歯飛び)して、歯欠け等が発生し、ひいてはベルトが早期に寿命に至る虞がある。
(2−4)ベルト幅に対する、隣り合う心線と心線との間隔dの合計値の割合(%)の推奨範囲(下限、上限)、の決定
試験ベルト毎に、ベルト幅Wに対する、隣り合う心線4と心線4との間隔dの合計値の割合(%)とベルト弾性率との関係をプロットする(図7)。
このベルト幅Wに対する「間隔dの合計値」の割合(%)は、上記「ベルト弾性率」と逆相関(負の相関)の関係になり得る。そこで、「ベルト弾性率」の推奨範囲(下限〜上限)に属する、ベルト幅に対する「間隔dの合計値」の割合(%)の推奨範囲(下限〜上限)を読み取る。
これにより、「ベルト弾性率」の推奨範囲(下限〜上限)に対応する、ベルト幅Wに対する「間隔dの合計値」の割合(%)の推奨範囲(下限〜上限)を明らかにすることができる。
この結果、装置への取付性を確保し得る範囲内で、心線配列の密度の程度を比較的密にし、低く抑えたベルト弾性率とベルトの引張強度とのバランスを確保できる。
(2−5)歯付ベルトの設計仕様の決定(図8参照)
歯付ベルト1の設計仕様として、例えば、ベルト幅Wが10mmの場合の、心線4の径D及び心線ピッチPの各推奨範囲(下限〜上限)は、下記根拠を基に、決定できる(図8参照)。
・ベルト幅Wに対する「間隔dの合計値」(ベルト幅方向に隣り合う心線4と心線4との間隔の合計値)の割合(%)の推奨範囲20%以上43%以下
・ベルト幅Wに対する「間隔dの合計値」の割合(%)と置換可能な、「心線径Dと心線ピッチPの関係式」(数1参照)
・ベルトの引張強度の許容最小値 ベルト幅10mmあたり480N
(歯付ベルト1の製造方法)
上述した設計手順で設計された本発明の歯付ベルト1は、一例として下記に説明するように、公知の方法で製造される(以下(1)〜(6)に示す歯付ベルトの製造方法は、後述する、実施例、比較例で共通する製造方法である)。
(1)表1(後述)の配合成分をバンバリーミキサーで4分間混練りすることによって、背部2と歯部3を形成するゴム状弾性体用のゴム組成物を調製する。
(2)上記ゴム組成物を、オープンロールで圧延し、170℃、20分間の条件でプレス架橋することによって、架橋済みのゴムシートを作製し、この架橋済みゴムシートについて、ゴム硬度を測定する。なお、後述する実施例及び比較例では、デュロメータA硬さ(JIS K6253:2012準拠)で約76であった。
(3)表3(後述)に示す構成の歯布5を製織し、RFL液に浸漬、乾燥、熱処理する処理を実施する。
(4)この歯布5をエンドレス筒状に巻いて仕上げ、これを歯部形成用の溝を外周に多数設けて形成した円柱状の金型の外周にセットし、この上から表2(後述)の組成及び構成からなる撚糸コードに接着処理(前述)をした心線4を所定の心線ピッチにてベルト幅方向に配列するよう巻き上げる。
(5)次に、表1(後述)に示すゴム状弾性体用のゴム組成物をロールで厚み約1.2mmに圧延し、これを心線の上から巻き付け、架橋を行う。
(6)金型から脱型したスリーブ状の架橋物を所定の幅に輪切りして切断することによって、所定の呼称の歯付ベルト1を得る。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
上記の製造方法にて、以下に示す、実施例1〜6、及び、比較例1〜6の歯付ベルト(試験ベルト)を作製し、各々のベルト弾性率を測定したうえで、心線仕様の選定に係る評価試験(引張試験、取付性試験、ジャンピング試験、耐久走行試験)に供した。
(実施例1〜6、及び、比較例1〜6に係る歯付ベルト(試験ベルト))
実施例1〜6、及び、比較例1〜6に係る歯付ベルト(試験ベルト)は、背部、歯部、心線、及び、歯布(ただし、実施例2は歯布無し)から構成されている。なお、実施例及び比較例の各歯付ベルトの共通仕様として下記形状とした。
各歯付ベルトの呼称:100S3M282(ベルト形:S3M、歯数94、幅10mm、歯ピッチ3mm、ベルト呼び長さ282mm)
各歯付ベルトの、総厚は約1.9mmで、背厚は約0.8mmであった。
実施例1〜6、及び、比較例1〜6に用いた歯付ベルトの背部や歯部は、ミラブルウレタンを主成分とするゴム組成物を有機過酸化物からなる架橋剤で架橋して形成させた。その配合成分を表1に示す。なお、背部及び歯部を構成する、ゴム組成物のデュロメータA硬さ(JIS K6253:2012準拠)は約76であった。
(背部2及び歯部3に使用されるゴム組成物の配合成分)
心線は、脂肪族ポリアミド繊維からなる原糸が、ポリアミド66原糸(旭化成社製「66ナイロン繊維」)、またはポリアミド46原糸(PHP社製「46ナイロン繊維」)である。材料特性上、ポリアミド46心線を用いたベルトの方が、ポリアミド66心線を用いたベルトよりも、走行中のベルトの張力維持性(張力安定性)が良いと考えられた。
実施例1〜6及び比較例1〜6に用いた心線の組成及び構成を、表2に示す。表2に挙げた原糸を各撚り構成にて撚糸した撚糸コードを、イソシアネートのトルエン溶液に浸漬した後、約175℃で約40秒間加熱乾燥するプレディップ処理(接着処理)を施した。
(心線4の組成及び構成)
実施例1〜6及び比較例1〜6に用いた歯布は、ナイロン繊維を素材とする綾織の織布とした。その構成を表3に示す。表3に挙げた織布をRFL液によって浸漬処理(接着処理)したものを歯布として用いてもよい。ただし、実施例2は歯布無しの構成である。
(歯布の構成)
実施例1〜6、及び、比較例1〜6に係る各試験ベルトの心線及び心線配列の組み合わせを表4(実施例1〜6)及び表5(比較例1〜6)に示す。
実施例1、及び、実施例2は、心線種、心線配列の密度の程度、心線ピッチが同じで、実施例1は歯布有り、実施例2は歯布無しとしたものである。
実施例3は、実施例1、及び、実施例2よりも心線の総繊度を増やしたものである。なお、実施例1〜6の内、実施例3のみ心線の原糸をポリアミド46繊維とした。
実施例4、及び、実施例5は、さらに実施例3よりも心線の総繊度を増やした心線(心線種:A−4)を用いたもので、心線配列の密度の程度に関係する心線ピッチを変量したものである。
実施例6は、実施例4、及び、実施例5の心線と比べ、総繊度は同じで、撚り数を変量したものである。
比較例1は、試験ベルトのなかで総繊度が最も小の(最も細径の)心線(心線種:A−1)を用いたものである。
比較例2、及び、比較例3は、実施例3と心線種が同じであるが、実施例3と比較し、心線配列の密度の程度が疎になるよう、心線ピッチを上振れ(大に)させたものである。なお、比較例3は、試験ベルトのなかで心線配列の密度の程度が最も疎である。
比較例4、及び、比較例5は、試験ベルトのなかで総繊度が最も大の(最も太径の)心線(心線種:A−6)を用いたもので、心線配列の密度の程度に関し、比較例4が比較的密、比較例5が比較的疎になるよう、心線ピッチを変量したものである。
比較例6は、従来の搬送装置において、主に駆動ユニット用(動力の伝達及び同期伝動用)に使われていた、Eガラス心線(心線種:A−7)を有する標準的なベルトである。
(評価(項目、方法、基準))
(1:引張試験)
引張試験は、歯付ベルト単体の状態で行ない、「ベルトの引張強度(N)」を評価項目とした。
実施例1〜6及び比較例1〜6の各試験ベルトから、幅10mm×長さ150mmの短冊状の試験片を採取し、各試験片について、引張試験機(オートグラフAG−1)を用いて、雰囲気温度約23℃の下、引張試験(引張速度50mm/分)を行った。
破断時の引張強度を「ベルトの引張強度」、及び、耐久走行試験の「走行前のベルトの引張強度」とした。
なお、「ベルトの引張強度」が前述の許容最小値480Nを下回る試験ベルトは、装置の同期性を確保できず、要求寿命も満足し得ないと判断し、耐久走行試験は無評価とした。
(2:取付試験)
取付試験は、図3に示す2軸レイアウトの試験装置S1(後述の耐久走行試験機と同じ)に取付け、表6に示す試験条件で行った。一方のプーリ(例えば駆動プーリ)を両フランジ付きプーリとし、他方のプーリ(例えば従動プーリ)を片フランジ付きプーリとした。なお、片フランジ付きプーリは、フランジを有しない端面(側面)がプーリの軸部と反対側(つまり作業者側)になるようにセットした。
(取付試験の試験条件)
取付試験では、取付性の評価を適切に行うため、作業者は熟練作業者とし、(A)「人の手(治具なし)による取付限界張力(N/10mm幅)」を記録した。さらに、(B)「人の手(治具なし)による取付限界時のベルト伸長率(%)」を、試験ベルトの有効長さと、設定したプーリ間の軸間距離との関係から算出し、記録した。
上記評価項目(B)「人の手(治具なし)による取付限界時のベルト伸長率(%)」が、取付性判断の目安となる。(B)の値が大きいほど、ストレッチ性ひいては取付性に優れた歯付ベルトであることを示す。なお、(B)の値がある限度(例えば3%程度)を超えた歯付ベルトは、プーリ(歯溝部)とのかみ合い干渉(かみ合い性が悪化する現象)を起こす虞がある。この場合の対応としては、かみ合い干渉を起こさない程度に、プーリの歯溝部のピッチを規定の寸法よりも若干大に形成させたプーリを使用することが考えられる。
評価は、上記評価項目(A)(B)の測定のため、試験ベルト毎に、プーリ間の軸間距離が増加(取付張力が増加)する方向に、試験装置S1のプーリ間の軸間距離(固定)の設定を段階的に変更して行った。
(取付方法)
各試験ベルトの取付方法は下記手順により行った。
(1)一方の両フランジ付きプーリ(駆動プーリ)に試験ベルトを掛ける。
(2)人の手(治具なし)のみで試験ベルトを他方の片フランジ付きプーリ(従動プーリ)のフランジを有しない端面(側面)際の歯溝部に掛ける。このとき、試験ベルト(歯部)のプーリ(歯溝部)への接触(かみ合い)は、ベルト幅方向について部分的であってよい。
(3)プーリを手で回しながら、試験ベルトをプーリ間に完全に巻き掛ける。
(評価基準)
評価項目(A)の取付限界張力の値が大きいほど、より大きな負荷に対応できる点で好ましい。なお、(A)の値は、作業者の熟練度等によって多少変動するが、極端に(A)の値が小さい場合は、他方のプーリに掛けた際に、その掛けたベルトの部分(ベルト幅方向の一部分)にせん断応力が集中し、その部分の心線が切断する不具合が発生した可能性がある。この不具合は引張強度が極端に不足した状態のベルトに起こり得る(表5の比較例3参照)。
評価項目(B)の「人の手(治具なし)による取付限界時のベルト伸長率(%)」は、1%を許容最小値とする。
(B)の値が1%以上であった試験ベルトは、人の手(治具なし)で容易にプーリ間に取付けられるものとし、取付性を満足するものとした。
(B)の値が1%を下回った試験ベルトは、取付性を満足しないものとした。
(3:ジャンピング試験)
ジャンピング試験は、図4に示す2軸レイアウトのジャンピング試験装置S2に取付け、表7に示す試験条件で行った。
(ジャンピング試験の試験条件)
ジャンピング試験では、耐ジャンピング特性(かみ合い性や耐歯欠け性)の評価を適切に行うため、取付張力が下限値寄りの10N/10mm幅(表7参照)になるようにジャンピング試験装置S2のプーリ間の軸間距離を設定した。そして、試験ベルトをプーリ間(駆動プーリよりも従動プーリの方が小径)に装着し、表7に示す試験条件で試験ベルトを走行させ、従動軸に対する負荷トルクを徐々に上昇させて、ジャンピング(歯飛び)した時のトルク(Nm)をジャンピングトルクとして測定した。
なお、ジャンピング試験の評価項目は、「ジャンピングトルク(Nm)」とした(表4、表5)。ジャンピングトルクの許容最小値は、従来のEガラス心線を有する標準的なベルト(比較例6)の1/3相当の、0.12Nmとした。
ここで、所定の取付張力の下限値にすべきジャンピング試験における取付張力を、下限値の3N/10mm幅とせず、10N/10mm幅とした理由を次に述べる。
ベルトの引張強度が許容最小値(ベルト幅10mmあたり480N)を満足しないレベルまでベルト弾性率が低く抑えられた歯付ベルト(例えば比較例2、比較例3)は、取付張力が下限値(3N/10mm幅)で紙葉類の搬送ベルトシステムに組み込まれた場合、定常の作動状態としての始動及び停止時の衝撃的な負荷でさえ、ジャンピング(歯飛び)を起こしてしまう虞がある。
しかしながら、引張強度の許容最小値は満足し、ベルト弾性率が上記ほどは低く抑えられていない歯付ベルトは、取付張力が下限値(3N/10mm幅)でも、上記定常の作動状態でのジャンピング(歯飛び)は発生せず、例えば、紙葉類あるいは異物が搬送経路内で詰まるトラブルが発生した際など、歯付ベルトに過負荷が掛かった際に、その過負荷に耐えきれず、歯付ベルト(心線)が伸び、ジャンピング(歯飛び)を起こす虞がある、と考えられた。この過負荷時にジャンピング(歯飛び)現象を起こし得る取付張力の最低値としては、ベルト幅10mmあたり10N程度と見込まれる。このため、ジャンピング試験における取付張力を3N/10mm幅とせず、10N/10mm幅に設定した。
(4:耐久走行試験)
耐久走行試験は、引張試験による「ベルトの引張強度」(許容最小値)、及び、取付試験による「人の手(治具なし)による取付限界時のベルト伸長率(%)」(許容最小値)の両方を満足した各試験ベルトを順次、図3に示す2軸レイアウトの耐久走行試験装置S1(張力調整機構は備えていない)に取付け、表8に示す走行条件で行った。
(耐久走行試験の走行条件)
耐久走行試験では、試験ベルトの強度保持率(耐屈曲疲労性)及び張力維持性の評価を適切に行い、且つ寿命を加速させるため、取付張力が2軸レイアウトでの人の手(治具なし)による取付限界張力60N/10mm幅になるように、耐久走行試験装置S1のプーリ間の軸間距離を設定した。そして、試験ベルトをプーリ間に装着し、従動軸に有効張力(負荷)46〜92Nをかけつつ、ON/OFF、正転/逆転を頻繁に繰り返す走行パターンC1(図5参照)にて試験ベルトを負荷走行させた。
耐久走行試験の評価項目は、「走行時ベルト張力(N/10mm幅)」、「ベルトの張力維持率(%)」、「ベルトの故障の有無」、及び「ベルトの強度保持率(%)」とした(表4、表5参照)。
(「走行時ベルト張力(N/10mm幅)」の測定)
試験ベルトの走行を開始し、走行初期(走行開始から1時間、5時間、10時間)に、モータを一時停止させ、停止直後のベルト張力(N)を音波式張力計(三ツ星ベルト社製、商品名「ドクターテンション タイプIV」)で測定した。そのベルト張力(測定値)(N)をベルト10mm幅あたりに換算した値を「走行時ベルト張力(N/10mm幅)」とした。その後、走行を再開し、以降同様に、目標の走行時間(800時間)が経過した試験終了時点を含め、走行試験終了までの適切な間隔(例えば24時間毎)で、走行時ベルト張力(N/10mm幅)を測定した。
(「ベルトの張力維持率(%)」)
ベルトの張力維持性を評価するため、「走行初期(走行開始から1時間経過時点)の走行時ベルト張力」に対する「走行終了時点(走行途中にベルトの故障が認められない場合、800時間経過時点)の走行時ベルト張力」の割合の百分率(%)を算出し、これを「ベルトの張力維持率(%)」とした。
(「ベルトの故障の有無」)
上記「走行時ベルト張力」を測定するタイミングに合わせて、走行一時停止中に、歯欠け等の故障が無いか、目視にて観察した。
(「ベルトの強度保持率(%)」の測定)
走行後の試験ベルトについて、雰囲気温度約23℃の下、上記の引張試験を再度行い、走行後のベルトの引張強度を測定した。結果の集計として、上記「走行前のベルトの引張強度」に対する「走行後のベルトの引張強度」の割合の百分率(%)を算出し、これを「ベルトの強度保持率(%)」とした。
(評価基準)
「ベルトの故障」が無く、「ベルトの張力維持率」が40%以上で、且つ、「ベルトの強度保持率」が50%以上であったものについては、実用上問題はなく、耐久性を満足するものとした。上記の内、一つでもあてはまらないものは、耐久性を満足しないものと判断した。
(5:判定基準)
判定A:「ベルトの引張強度」(許容最小値以上)、「人の手(治具なし)による取付限界時のベルト伸長率(%)」(許容最小値以上)、「ジャンピングトルク」(許容最小値以上)、及び、「耐久性」(上記評価基準による)の全てを満足した場合は、実用上問題ないものと判断し、判定Aとした。
判定B:上記評価項目のうち、ひとつでも満足しなかった場合は、改良の余地ありと判断し、判定Bとした。
(6:評価結果)
ベルト伸長率とベルト張力との関係(S−S線図)を図6に示す。
評価試験(引張試験、取付試験、ジャンピング試験、耐久走行試験)の結果の一覧を、表4、表5に示す。
また、試験ベルト毎に得られたベルト弾性率と、心線配列の密度の程度(ベルト幅に対する、隣り合う心線と心線との間隔dの合計値の割合)との関係をプロットした散布図を、図7に示す。
(7:評価結果に対する考察、及び、得られた効果)
(実施例1〜6)
表4によると、実施例1〜6の、ベルトの引張強度は、許容最小値480N以上、人の手(治具なし)による取付限界時のベルト伸長率は1%以上、耐ジャンピング性の指標であるジャンピングトルクは0.12Nm以上、張力維持率は40%以上であり、且つ、強度保持率は50%以上であった。つまり、実施例1〜6は、ベルト(心線)の伸びを許容することで解決し得る取付性と、ベルト(心線)の伸びを制限することで解決し得る同期性(耐ジャンピング性、耐久性)とのバランスを確保でき、取付性と同期性を確保しつつ、繰り返される負荷に耐用するためのバランスを確保できることがわかった。
これによれば、紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステムに、上記歯付ベルトを使用することにより、取付性と同期性を確保しつつ、プーリ間で歯付ベルトが走行する際に繰り返される負荷に耐用できることが推察される。
実施例1〜6の歯付ベルトの心線は、引張弾性率が比較的低い脂肪族ポリアミド繊維から形成され、且つ、総繊度が230dtex以上710dtex以下の実用的な範囲であった。
また、所定の取付張力でプーリ間に巻き掛けられる際のベルト弾性率は、ベルト張力が低めの領域(a)10N〜30Nの間では比較的低いベルト弾性率(ベルト幅10mmあたり15N/%以上31N/%以下)を呈し、ベルト張力が高めの領域(b)30N〜60Nの間では比較的高いベルト弾性率(ベルト幅10mmあたり23N/%以上50N/%以下)を呈していた。即ち、ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が10〜60Nの間は、全体として、ベルト弾性率が比較的低く抑えられ、その範囲はベルト幅10mmあたり15N/%以上50N/%以下であった。
具体的なベルトの構成に置換えれば、ベルト幅10mmに対し、心線の径(中央値)(D)0.22mm以上0.31mm未満、及び心線ピッチ(P)0.30〜0.42mmの組み合わせにより、隣り合う心線と心線との間隔dの合計値のベルト幅に対する割合は、20%以上43%以下となり、心線配列の密度の程度が比較的密な範囲に構成されていた。
従って、上記ベルトの構成により、実施例1〜6は、ベルト弾性率とベルトの引張強度とのバランスを確保でき、本発明の効果が得られることがわかった。
また、図7によると、「ベルト幅に対する、隣り合う心線と心線との間隔の合計値の割合」は、「ベルト弾性率」と逆相関(負の相関)の関係になり、両者の好ましい範囲(推奨範囲)(図7の太枠内)は、「ベルト弾性率」を全体として比較的低く抑える代わりに「心線配列の密度の程度」を比較的密とする範囲であることを示している。これにより、歯付ベルトの設計の指標となり得る「ベルト弾性率」の好ましい範囲の決定から、歯付ベルトの具体的な設計仕様への展開(例えば、ベルト幅が10mmの場合の、心線の径及び心線ピッチの決定)までの一連の設計作業を効率的に行えることが伺えた。
(比較例1)
比較例1では、心線(心線種:A−1)がそもそも細すぎるため(総繊度が155dtex、径が中央値で0.19mm)、心線ピッチを小(隣り合う心線と心線との間隔dをベルトの製造が可能な最低限度の0.08mm)にし、心線配列の密度の程度を密(29.6%)にしても、最低限必要なベルトの引張強度を確保できなかった。そのため、耐久走行試験は無評価とした。なお、さらに心線ピッチを小にした場合、つまり、隣り合う心線と心線との間隔dを0.08mm未満にした場合は、ベルトの製造時(成形時)に隣り合う心線同士が乗り上げる不具合が発生する結果となった。
(比較例2)
比較例2は、実施例3と同じ太さの心線を用い、心線配列の密度の程度を実施例3よりも疎(75.3%)にしたため、上限値43%を上回り、実施例3よりも、ベルトの引張強度が低下してしまい、最低限必要なベルトの引張強度を確保できなかった。
(比較例3)
比較例3は、実施例3と同じ太さの心線を用い、心線配列の密度の程度を比較例2よりもさらに疎(91.7%)にしたため、ベルトの引張強度が極端に低下したほか、取付試験でプーリ(歯溝部)にベルト(歯部)を掛けた際に、その掛けたベルトの部分(ベルト幅方向の一部分)にせん断応力が集中し、取付張力56N/10mm幅にて、その部分の心線が切断する不具合が発生した。このため、取付限界張力は50N/10mm幅に留まった。
(比較例4)
比較例4は、心線(心線種:A−6)がそもそも太すぎるため(総繊度が1410dtex、径が中央値で0.44mm)、心線配列の密度の程度を従来同様に比較的密とした場合は、「ベルト弾性率」が上限値を超えてしまい、取付性を確保できなかった。
(比較例5)
比較例5は、比較例4と同じ太い心線(心線種:A−6)を用いているものの、「ベルト弾性率」が上限値を下回る程度に、比較例4よりも心線ピッチを大にし、心線配列の密度の程度を比較的疎にした場合は、取付性を確保できた。しかしながら、ベルト走行中、屈曲疲労が促進され、ベルトの耐久性(耐屈曲疲労性)が満足しなかった。
(比較例6)
従来の搬送装置において、主に駆動ユニット用(動力の伝達及び同期伝動用)に使われていた、Eガラス心線(心線種:A−7)を有する標準的なベルトの場合は、「ベルト弾性率」が極端に高すぎるため、取付限界時のベルト伸長率は0.4%に留まり、ベルトを人の手(治具なし)でプーリ間に取付けることが全くできない結果となった。
(その他の実施形態)
以上に、本発明の好適な実施形態・実施例に係る歯付ベルトについて説明したが、本発明はこれらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
本実施形態は、紙幣等紙葉類の搬送ベルトシステムに用いられる歯付ベルトとしたが、伝動系が比較的軽負荷の用途であれば、本発明の歯付ベルトは、搬送機能を備えなくてもよく、プリンタ等のOA機器、各種情報機器、家電機器、その他一般産業用の機器や装置等、広範囲の用途(動力の伝達及び同期伝動用の駆動ベルトシステム)に利用されてもよい。この場合、装置側の張力調整機構(軸間距離調整のブラケット等)を不要とすることができる。
また、上記実施形態では、2軸レイアウトのプーリ間に、歯付ベルトを巻き掛けた場合について説明した。これは、駆動プーリの数が1つであり、従動プーリの数が2つ以上の場合と比べて、駆動プーリの歯溝部が設けられた外周面の、歯付ベルトに接する部分が長くなり、歯付ベルトと駆動プーリとの噛み合い歯数が増える。そのため、歯付ベルトの伝動容量が増し、歯付ベルトの走行、及び、歯付ベルトの耐久性に係る信頼性をより向上させることができるからである。また、従動プーリの数が2つ以上の場合と比べて、歯付ベルトを人の手(治具なし)でプーリ間に取付けることが容易であることも理由として挙げられる。
もっとも、本発明の歯付ベルトは、2軸レイアウトのプーリ間に、巻き掛けた場合に限らず、3軸以上にレイアウトしたプーリ間に、本発明に係る歯付ベルトを巻き掛けて使用してもよい。
1 歯付ベルト
2 背部
3 歯部
4 心線
5 歯布
6 歯底部
10 搬送ベルトシステム

Claims (7)

  1. 背部と、ベルト長手方向に所定の間隔を有して配設された歯部と、前記背部に埋設された心線とを有し、プーリ間に巻き掛けられる歯付ベルトであって、
    前記心線は、脂肪族ポリアミド繊維から形成されており、総繊度が230dtex以上710dtex以下の範囲であり、
    所定の取付張力で前記プーリ間に巻き掛けられる際の、ベルト伸長率(%)に対するベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)で定義されるベルト弾性率が、(a)ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が10N〜30Nの間は、15N/%以上31N/%以下の範囲、(b)ベルト幅10mmあたりのベルト張力(N)が30N〜60Nの間は、23N/%以上50N/%以下の範囲になるように構成されていることを特徴とする、歯付ベルト。
  2. 前記心線は、ベルト長手方向に延在し、且つ、ベルト幅方向に配列されており、
    前記ベルト幅方向に隣り合う心線と心線との間隔の合計値の、ベルト幅に対する割合が、20%以上43%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の歯付ベルト。
  3. 前記心線は、径が0.22mm以上0.31mm未満の撚りコードであり、
    前記ベルト幅方向における心線ピッチが、0.30mm以上0.42mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯付ベルト。
  4. 前記歯部、及び、歯底部の表面に歯布が被覆されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の歯付ベルト。
  5. 前記所定の取付張力は、1つの駆動軸と1つの従動軸からなる2軸配置のプーリ間に当該歯付ベルトを巻き掛けた場合に、ベルト幅10mmあたり3N以上60N以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の歯付ベルト。
  6. 2軸配置のプーリ間に巻き掛けられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の歯付ベルト。
  7. 紙葉類の搬送ベルトシステムに用いられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の歯付ベルト。
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