JP2020143040A - 放射線増感剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射線療法の効果を向上させる、放射線増感剤の提供。【解決手段】1回あたり8mg/kg以下の一般式(I)で表される化合物が患者に投与されるように用いられることを特徴とする、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する、がん治療用の放射線増感剤。【選択図】なし
Description
本発明は、がん治療用の放射線増感剤に関する。
医療の進歩に伴って、ヒト、及びイヌやネコのような愛玩動物の寿命が延びるにつれ、死因に占めるがんの割合は大きくなってきている。がんに対する治療法としては手術療法及び化学療法の他に放射線療法があり、これらの治療法の進歩が常に望まれている。
放射線治療の治療効果を高める手法として、放射線増感剤を患者に投与する手法が研究されている。放射線増感剤の例としては、低酸素性細胞の放射線感受性を高める2−ニトロイミダゾール誘導体(特許文献1)や、DNAに組み込まれて放射線感受性を高める5−ヨードデオキシウリジン(特許文献2)などが知られている。近年、新たな放射線増感剤として、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体(特許文献3)も報告された。特許文献3には、αSQAP C10:0、αSQAP C14:0、αSQAP C18:0、αSQAP C22:0、βSQAP C18:0、及びβSQAP C18:1が、インビトロ試験で放射線との併用により血管新生を阻害したこと、及び、αSQAP C18:0が、ヒト食道扁平上皮癌又はヒト結腸腺癌を移植されたマウスにおいて放射線との併用により腫瘍体積の増加を抑制したことが記載されている。なお、「αSQAP Cm:n」との記載において、「α」はαアノマー、「β」はβアノマーを表し、「Cm:n」はSQAPのアシル残基に含まれる炭素の数が「m」であり、二重結合が「n」であることを示す。
放射線治療の治療成績を向上させることが望まれている一方で、例えば特許文献3に記載の方法は、ヒト癌細胞が移植されたマウスにスルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を投与することで、腫瘍体積の増加速度を抑制することはできたものの、腫瘍体積の増加を止めることはできなかった。
本発明は、放射線治療の効果を向上させることを目的とする。
本願発明者は、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を放射線増感剤として用いた放射線治療を実際の患者に適用した際に顕著な効果が見られる事例を発見し、この発見に基づいて本願発明を完成させるに至った。
放射線治療の効果を向上させることができる。
以下、実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
本発明の一実施形態に係る放射線増感剤は、がん治療用の放射線増感剤であり、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する。本明細書においては、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩のことを、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体と呼ぶ。
式(I)において、R1は脂肪酸のアシル残基である。脂肪酸のアシル残基とは、脂肪酸のカルボキシル基からOHを除去したものに相当する。脂肪酸の種類は特に限定されず、直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸の炭素数も特に限定されず、炭素数は1以上であればよいが、炭素数5以上(中鎖以上の脂肪酸)であることが好ましく、炭素数10以上であることがさらに好ましく、炭素数12以上(長鎖脂肪酸)であることがより好ましく、炭素数16以上であることが特に好ましい。一方、炭素数は26以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。脂肪酸として好ましくは直鎖状の脂肪酸であり、より好ましくは直鎖状の飽和脂肪酸である。
脂肪酸の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、及びセロチン酸などが挙げられる。
キノボース環に対するプロパンジオール部位(−OCH2CH2CH2OR1)の立体配置は特に限定されない。すなわち、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体は、αアノマー(スルホメチル基とプロパンジオール部位がトランス)であってもよいし、βアノマー(スルホメチル基とプロパンジオール部位がシス)であってもよいし、αアノマーとβアノマーの混合物であってもよい。好ましくは、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体はαアノマーである。なお、キノボース環は、舟形構造を有していてもよいし、イス形構造を有していてもよいし、舟形構造とイス形構造の混合物であってもよい。
式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩とは、患者への投与が可能な塩のことを指す。すなわち、式(I)で表される化合物は陽イオンとの塩を形成してもよく、例えば式(I)で表される化合物のスルホ基が水素イオンの代わりに陽イオンを有していてもよい。この場合、式(I)で表される化合物のスルホ基は−SO2Aで表され、ここでAは陽イオンを表す。
薬学的に許容される塩の種類は特に限定されない。例えば、薬学的に許容される塩は、金属イオンとの金属塩であってもよいし、有機陽イオンとの有機塩であってもよい。式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩及びカリウム塩のような1価の陽イオンの塩、並びに、カルシウム塩及びマグネシウム塩のような2価の陽イオンの塩などが挙げられる。
なお、製剤中で、製剤を投与用に希釈した際に、又は患者の体内において、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を生成するプロドラッグも、本発明に含まれることはいうまでもない。このようなプロドラッグの例としては、例えば、キノボース環に結合した水酸基とカルボン酸とのエステルなどが挙げられる。また、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の水和物も、本発明に含まれることはいうまでもない。
スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体は、例えば、国際公開第2009/14101号に記載の方法に従って製造することができる。
本発明の一実施形態に係る放射線増感剤は、有効量のスルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を活性成分として含有する。本発明の一実施形態に係る放射線増感剤は、2種類以上のスルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を含有していてもよい。例えば、放射線増感剤が、互いに異なる塩である2種以上のスルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を含有していてもよいし、互いに置換基R1が異なる2種以上のスルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を含有していてもよい。
さらに、本発明の一実施形態に係る放射線増感剤は、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体以外の成分を含んでいてもよい。このような成分の例としては、他の放射線増感剤、抗腫瘍剤、及びその他の薬理学的活性を有する物質が挙げられる。また、このような成分の別の例としては、添加剤、安定剤、賦形剤、及び希釈剤のような、薬理学的活性を有さない物質も挙げられる。
以下、スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体を含有する放射線増感剤の用法、及びこの放射線増感剤を用いたがん治療方法について説明する。スルホキノボシルアシルプロパンジオール誘導体は、がん治療用の放射線増感剤として用いることができる。放射線増感剤とは、放射線治療を行う際に患者に対して投与され、放射線治療の効果を高める薬剤のことを指す。放射線治療においては、がんの縮小又は消失を目的として、がんに対して放射線が照射される。具体的な治療方法の例については後述する。
治療対象となる動物(患者)の種類は特に限定されない。治療対象となる動物としては、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、及びウマなどの哺乳類が挙げられる。一実施形態において、より高い有効性を得る観点から、治療対象となる動物はイヌ又はネコである。すなわち、一実施形態に係る放射線増感剤は、イヌ又はネコに投与される、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する、がん治療用の放射線増感剤である。一実施形態に係る放射線増感剤を用いた放射線治療により、患者の体内で発生したがんを縮小し又は消失させる治療効果が得られる。
治療対象となるがんの種類は特に限定されない。がんの種類としては、脳腫瘍などを含む神経原性腫瘍、扁平上皮癌又は腺癌等の癌腫(頭頚部癌、皮膚癌、食道癌、甲状腺癌、胃癌、肺癌、胆のう癌、胆道癌、膵臓癌、肝臓癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌、腎癌、膀胱癌、及び大腸癌など)、黒色腫、骨・軟部腫瘍、リンパ腫、白血病、並びに骨髄腫などが含まれる。
一実施形態においては、より高い有効性を得る観点から、がんの種類は皮膚癌又は血液がんであり、特にメラノーマ(黒色腫)又はリンパ腫である。また、別の実施形態において、より高い有効性を得る観点から、がんの種類は扁平上皮癌又は腺癌である。さらに、別の実施形態において、より高い有効性を得る観点から、がんの種類は口腔内又は鼻腔内腫瘍である。
一実施形態において放射線増感剤は、1回あたり8mg/kg以下の一般式(I)で表される化合物が患者に投与されるように用いられる。すなわち、一実施形態に係る放射線増感剤は、1回あたり8mg/kg以下の一般式(I)で表される化合物が患者に投与されるように用いられる、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する、がん治療用の放射線増感剤である。また、放射線増感剤は、1回あたり0.5mg/kg以上、好ましくは1mg/kg以上の一般式(I)で表される化合物が患者に投与されるように用いられる。好ましくは、1回あたり2mg/kgを越え、さらに好ましくは3mg/kg以上であり、より好ましくは4mg/kg以上の、一般式(I)で表される化合物が患者に投与される。このような用量を選択することにより、投与量を減らしながら十分な有効性を得ることができる。
放射線増感剤の投与経路は特に限定されない。投与経路としては経口投与及び非経口投与が挙げられる。経口投与に適した剤型としては、固体、半固体、液体又は気体などの状態のものが含まれ、具体的には、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、及びエアロゾル剤などを挙げることができるが、これらには限定されない。また、非経口投与の方法としては、例えば、注射、経皮投与、直腸投与、及び眼内投与などが挙げられる。注射による投与方法として、皮下投与、皮内投与、静脈内投与、及び筋肉内投与などが挙げられる。
一実施形態において、より高い有効性を得る観点から、放射線増感剤は静脈内投与される。また、局所炎症を抑える観点から、放射線増感剤は1分間以上かけてゆっくりと投与することが好ましい。
放射線治療の方法は特に限定されない。例えば、従来行われている放射線治療と同様の、放射線の種類、量、及び回数を用いることができる。放射線治療方法の例としては、医療用放射線、例えばX線、γ線、電子線、β線、又は粒子線(π−中間子、中性子、又はその他の重粒子)を、照射量が1回あたり約0.1〜100Gyの照射量、合計約1〜500Gyとなるように、1週間〜6ヶ月の期間にわたって照射する方法が挙げられる。
一方で、放射線増感剤による放射線治療の有効性向上の効果を十分に得るため、一実施形態において、1回あたりの照射量は2Gyを越え、好ましくは3Gy以上であり、より好ましくは4Gy以上である。また、合計の照射量は10Gy以上であることが好ましく、15Gy以上であることがさらに好ましい。一方で、放射線増感剤による放射線治療の有効性が向上するため、一実施形態において、1回あたりの照射量は20Gy以下であってもよく、10Gy以下であることが好ましい。さらに、合計の照射量は100Gy以下であってもよく、50Gy以下であることが好ましい。
照射方法も特に限定されず、例えば、原体照射、悪性新生物の病巣をピンポイントで狙い撃ちする定位照射、又は強度変調放射線照射などを行うことができる。別の方法として、密封小線源を用いた照射、遠隔γ線照射、及び粒子線を用いた照射などを行うこともできる。
上述のように、放射線増感剤は放射線治療を行う際に患者に対して投与される。一方で、放射線治療を行う際の、放射線増感剤の具体的な投与タイミングは特に限定されない。例えば、国際公開第2009/14101号に記載されているように、放射線増感剤を毎日投与する一方で、放射線治療を3日おきに行ってもよい。一方で、繰り返し放射線治療を行い、それぞれの放射線治療の直前に放射線増感剤を投与してもよい。
一実施形態においては、放射線増感剤の投与と、投与直後の放射線照射のセットが繰り返される。このような繰り返しは、一定の間隔で行われてもよい。この場合、放射線照射を行わない日には、放射線増感剤の投与を行わなくてもよい。このように、放射線照射の直前に十分な量の放射線増感剤を投与することにより、より高い有効性を得ることができる。なお、放射線増感剤の投与直後の放射線照射とは、放射線増感剤を投与してから3時間以内に放射線を照射することを指す。放射線増感剤を投与してから放射線を照射するまでの時間は好ましくは1時間以内であり、さらに好ましくは30分間以内である。
一実施形態においては、放射線増感剤の投与と、投与直後の放射線照射のセットが、1日1回以下の頻度で繰り返される。すなわち、このセットは、毎日1回行われてもよいし、毎週1回行われてもよい。繰り返しの頻度は、好ましくは1ヶ月に1回以上であり、さらに好ましくは2週間に1回以上であり、より好ましくは1週間に1回以上である。また、このような繰り返しの回数は、3回以上であることが好ましく、4回以上であることがより好ましい。このような繰り返し投与により、より高い有効性を得ることができる。一方で、繰り返しの頻度は、2日に1回以上の頻度であることが好ましく、3日に1回以上の頻度であることがより好ましい。また、繰り返しの回数は、10回以下であることが好ましく、6回以下であることがより好ましい。このような実施形態によれば、放射線治療の副作用を抑えながら、より高い有効性を得ることができる。
その他、放射線の照射条件及び放射線増感剤の投与条件は、放射線源の種類、照射方法、照射部位及び照射期間;放射線増感剤の種類、投与ルート及び投与時期;治療対象となる疾患の種類及び疾患の重症度;並びに、治療対象となる患者の年齢、体重、健康状態、及び病歴などに依存して、医療従事者その他の専門家が適宜選択することができる。
以上のように、有効量の放射線増感剤をそれを必要とする患者に投与し、さらに患者に対して放射線治療を行うことにより、患者のがんを治療することができる。
本願発明者らは、イヌに対する毒性試験の結果として、本発明に係る放射線増感剤の投与量を8mg/kg以下とすることで毒性が低減されるとの知見を有している。すなわち、32mg/kgの本発明に係る放射線増感剤をイヌに対して2週間毎日静脈内投与した場合には全6例において赤色尿が認められ、投与量が16mg/kgである場合にも赤色尿が認められた。また、投与量が8mg/kgである場合にも、投与部位における局所刺激が生じることが認められた。このような知見からも、本発明に係る放射線増感剤の投与量は8mg/kg以下であることが好ましい。
(実施例1)
左上顎口腔メラノーマに罹患していたイヌに対し、放射線増感剤を併用した放射線治療を毎週1回、計4回行った。使用した放射線増感剤は化合物Aであった。化合物Aは、式(I)においてR1=CO(CH2)16CH3(ステアロイル基:ステアリン酸のアシル残基)である、αアノマーの化合物(αSQAP C18:0)である。
左上顎口腔メラノーマに罹患していたイヌに対し、放射線増感剤を併用した放射線治療を毎週1回、計4回行った。使用した放射線増感剤は化合物Aであった。化合物Aは、式(I)においてR1=CO(CH2)16CH3(ステアロイル基:ステアリン酸のアシル残基)である、αアノマーの化合物(αSQAP C18:0)である。
1回の放射線治療は以下のように行った。まず、8mg/kgの化合物Aを、5分間かけて静脈内投与した。その後、直ちに腫瘍に対して7.5Gyの放射線(X線、6MV)を照射した。
放射線増感剤を併用した4回の放射線治療により、腫瘍体積が49%に減少したことが確認された。
(実施例2)
鼻腔腺癌の罹患歴があるイヌに対し、手術による腫瘍の除去後2年1ヶ月を経て再発した鼻腔腺癌の治療のため、放射線増感剤を併用した放射線治療を毎日1回、計4回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療は以下のように行った。まず、8mg/kgの化合物Aを静脈内投与し、直ちに腫瘍に対して4.5Gyの放射線(X線、6MV)を照射した。
鼻腔腺癌の罹患歴があるイヌに対し、手術による腫瘍の除去後2年1ヶ月を経て再発した鼻腔腺癌の治療のため、放射線増感剤を併用した放射線治療を毎日1回、計4回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療は以下のように行った。まず、8mg/kgの化合物Aを静脈内投与し、直ちに腫瘍に対して4.5Gyの放射線(X線、6MV)を照射した。
腫瘍の大きさは評価されなかったものの、患者は放射線治療後1年4ヶ月にわたって生存した。なお、死亡原因は胃癌であった。
(実施例3)
左鼻腔内リンパ腫に罹患していたネコに対し、放射線治療を毎週1回、計6回行った。1回の放射線治療においては、5.5Gyの放射線(X線、4MV)を照射した。しかしながら、腫瘍縮小効果は認められず、放射線治療にもかかわらずかえって腫瘍の増大が認められ、眉間部の腫大化が観察された。
左鼻腔内リンパ腫に罹患していたネコに対し、放射線治療を毎週1回、計6回行った。1回の放射線治療においては、5.5Gyの放射線(X線、4MV)を照射した。しかしながら、腫瘍縮小効果は認められず、放射線治療にもかかわらずかえって腫瘍の増大が認められ、眉間部の腫大化が観察された。
そこで、上記放射線治療の後に、放射線増感剤を併用した放射線治療を毎週1回、計3回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療は以下のように行った。まず、4mg/kgの化合物Aを、1分間かけて静脈内投与した。化合物Aの投与から15分後、腫瘍に対して4Gyの放射線(X線、4MV)を照射した。
放射線増感剤を併用した2回目の放射線治療前において、眉間部の腫大化が解消し、顔貌が元に戻っていることが観察された。また、放射線増感剤を併用した3回目の放射線治療から1ヶ月後においても、左鼻腔及び眼窩に浸潤した腫瘍は大幅に縮小し、腫瘍体積は放射線増感剤を併用した放射線治療開始前の10%にまで減少していることが観察された。
(実施例4)
鼻腔内腺癌に罹患していた22頭のイヌを、放射線増感剤投与群(11頭)と非投与群(11頭)に分類し、放射線増感剤を併用した放射線治療の対照試験を行った。
鼻腔内腺癌に罹患していた22頭のイヌを、放射線増感剤投与群(11頭)と非投与群(11頭)に分類し、放射線増感剤を併用した放射線治療の対照試験を行った。
放射線増感剤投与群に対しては、放射線増感剤を併用した放射線治療を毎週1回、計6回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療は以下のように行った。まず、4mg/kgの化合物Aを、1分間かけて静脈内投与した。化合物Aの投与から15分後、腫瘍に対して6Gyの放射線(X線、4MV)を照射した。
放射線増感剤非投与群に対しては、放射線増感剤を併用せずに、放射線治療を毎週1回、計6回行った。1回の放射線治療においては、腫瘍に対して6Gyの放射線(X線、4MV)を照射した。
放射線増感剤投与群においては、放射線治療後に腫瘍体積が平均30%にまで減少する結果が得られた。また、放射線増感剤投与群における腫瘍縮小効果は、非投与群に対して有意であった(P=0.0205)。
(実施例5)
再発した口腔内扁平上皮癌に罹患していたネコに対し、放射線増感剤を併用した放射線治療を計3回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療においては、まず1mg/kgの化合物Aを静脈内投与し、直ちに腫瘍に対して放射線(X線、4MV)を照射した。放射線の照射量は合計21Gyであった。
再発した口腔内扁平上皮癌に罹患していたネコに対し、放射線増感剤を併用した放射線治療を計3回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療においては、まず1mg/kgの化合物Aを静脈内投与し、直ちに腫瘍に対して放射線(X線、4MV)を照射した。放射線の照射量は合計21Gyであった。
放射線増感剤を併用した放射線治療により腫瘍が消失したことが確認された。治療終了から3ヶ月後においても、依然として腫瘍は消失していることが確認された。
(実施例6)
左上顎扁平上皮癌に罹患していたネコに対し、放射線増感剤を併用した放射線治療を計5回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療においては、まず2〜4mg/kgの化合物Aを静脈内投与し、直ちに腫瘍に対して放射線(X線、6MV)を照射した。放射線の照射量は合計32.5Gy(7.5Gy×3回+5Gy×2回)であった。
左上顎扁平上皮癌に罹患していたネコに対し、放射線増感剤を併用した放射線治療を計5回行った。使用した放射線増感剤は上記の化合物Aであった。1回の放射線治療においては、まず2〜4mg/kgの化合物Aを静脈内投与し、直ちに腫瘍に対して放射線(X線、6MV)を照射した。放射線の照射量は合計32.5Gy(7.5Gy×3回+5Gy×2回)であった。
放射線増感剤を併用した放射線治療により左上顎部の腫瘍が消失したことが確認された。治療終了から5ヶ月後においても、依然として左上顎部の腫瘍は消失していることが確認された。
上記の実施例により、放射線増感剤を併用した放射線治療によって、患者の体内で発生したがんが縮小又は消失するという顕著な効果が得られることが確認された。
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
Claims (8)
- 前記患者がイヌ又はネコであることを特徴とする、請求項1に記載の放射線増感剤。
- 前記がんがメラノーマ又はリンパ腫であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射線増感剤。
- 前記がんが腺癌又は扁平上皮癌であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射線増感剤。
- 1回あたり0.5mg/kg以上の一般式(I)で表される化合物が患者に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の放射線増感剤。
- 前記放射線増感剤の投与及び前記投与直後の放射線照射のセットを繰り返すように用いられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の放射線増感剤。
- 前記セットを、1日に1回以下かつ1ヶ月に1回以上の頻度で繰り返すように用いられることを特徴とする、請求項6に記載の放射線増感剤。
- R1がステアロイル基であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の放射線増感剤。
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