JP2020142399A - ヒートシール用フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる複室容器は、飲料品、医薬品、化粧品、化学品、雑貨品などに採用されており、使用する直前に2成分以上を混合して使用する。特に医療分野では、薬品混合での変性防止、臨床現場での調製作業の簡便性、細菌汚染・異物混入の防止、投薬調製時の過誤の防止、緊急使用時の迅速対応性、薬剤師や看護師の負担軽減等の観点から複室容器が広く使用されている。
これらのヒートシール強度を両立させる成形法としてサーキュラーダイ(インフレダイ)を用いるインフレーション成形法が知られているが、サーキュラーダイはTダイ成形機よりライン速度を速くしにくく、大量生産における阻害要因になっている。
また、特開2006−021504号公報(特許文献4)には、ヒートシール可能なシール層が、結晶融点が135〜145℃であるプロピレン・α−オレフィンランダムコポリマーと、結晶融点が160℃を超えるポリプロピレンホモポリマーとの混合物からなることを特徴とする可撓性プラスチックフィルムが開示されている。しかし、特許文献4に記載される技術では、弱シール強度を形成できる温度幅が2℃と非常に狭いという問題があった。また、サーキュラーダイを使用しているので、大量生産が困難である。
また、特開2001−226499号公報(特許文献5)には、プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)と、該共重合体(A)とα−オレフィン含有率の異なるプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)および/またはプロピレン単独重合体(C)の混合物からなる易剥離性フィルムが開示されている。しかし、特許文献5に記載される技術では、弱シールを発現させるために、10秒という長い時間を必要としており、工業的に現実的な手法とは言えない。また、サーキュラーダイを使用しているので、大量生産が困難である。
(A)成分:下記(A−1)及び(A−2)の要件を満たす多段重合体であって、当該多段重合体の第1の成分が(a−1)から(a−3)の要件を満たすポリプロピレン系樹脂。
(A−1)メルトフローレート(MFR)(JIS K7210、温度230℃、2.16kg荷重)が1g/10分以上、50g/10分以下であること
(A−2)DSCによる融解ピーク温度が110℃以上、140℃未満であること。
(a−1)メルトフローレート(MFR)(JIS K7210、温度230℃、2.16kg荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下であること
(a−2)DSCによる融解ピーク温度が110℃以上、140℃未満であること。
(a−3)ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、第1の成分が5重量部以上95重量部以下であること。
(B)成分:下記(B−1)及び(B−2)の要件を満たすポリプロピレン系樹脂。
(B−1)メルトフローレート(MFR)(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)が、0.5g/10分以上、25g/10分以下であること。
(B−2)DSCによる融解ピーク温度が140℃以上であること。
本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)成分30〜95重量%とポリプロピレン系樹脂(B)成分5〜70重量%と、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、任意にエラストマー(C)0重量部以上100重量部以下を含む樹脂組成物であって、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度の差が20℃以上であるヒートシール用樹脂組成物である。各樹脂成分に要求される特性等については以下で説明する。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、多段重合体であって、多段重合体を構成する各成分のポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体及びプロピレンと炭素数2〜12(炭素数3を除く)のα−オレフィンの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類の重合体であり、好ましくはプロピレン−エチレン共重合体またはプロピレン−エチレン−ブテン共重合体である。多段重合体は少なくとも2成分から構成されるものであれば、なんら制限なく用いることができる。以下、本発明において好ましい多段重合体である2成分系、すなわち第1の成分と第2の成分を含有する多段重合体について述べる。また、多段重合の順序は下記第1の成分が先でも下記第2の成分が先でもどちらでもよい。
エチレン系重合体やプロピレン系重合体は、触媒の選択により、分子量、分子量分布、分岐構造等の構造的特徴を制御できることが知られており、当業者であれば、触媒の種類により重合体の種類を区別することも可能であり、例えば、メタロセン触媒で重合されたエチレン系重合体やプロピレン系重合体をメタロセン系エチレン系重合体やメタロセン系プロピレン系重合体と称したり、メタロセン触媒以外の触媒で重合されたエチレン系重合体やプロピレン系重合体を非メタロセン系エチレン系重合体や非メタロセン系プロピレン系重合体と称したりする場合もある。
1−1)要件(A−1):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)
ポリプロピレン系樹脂(A)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、1.0g/10分以上、50g/10分以下であり、好ましくは1〜30g/10分、より好ましくは1〜20g/10分、特に好ましくは、1〜15g/10分である。メルトフローレートが1.0g/10分以上であれば、ヒートシール用フィルム成形時の負荷が増すことがなく、積層体の成形自体が容易となる。50g/10分以下であれば、ヒートシール用フィルム成形時の成形安定性が良好である。
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(DSCによる)は、110℃以上140℃未満であり、好ましくは115℃以上140℃未満であり、より好ましくは120℃以上140℃未満であり、特に好ましくは120℃以上135℃以下である。なお、融解ピーク温度を融点という場合もある。融解ピーク温度が110℃以上であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)と組み合わせることにより得られたヒートシール用フィルムが、例えば121℃30分という高温下での滅菌処理時にフィルム同士のヒートシールを施していない部分の意図せぬ融着が起りにくい。また、融解ピーク温度が140℃未満であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)と組み合わせることによりヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。
ポリプロピレン系樹脂(A)の第1の成分のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10分以上、10g/10分以下であり、好ましくは0.5g/10分以上、10g/10分以下、より好ましくは1g/10分以上、10g/10分以下である。第1の成分のメルトフローレートが0.1g/10分以上であれば、ヒートシール用フィルム成形時の負荷が増すことがなく、積層体の成形自体が容易となる。10g/10分以下であれば、ヒートシール用フィルム成形時の成形安定性が良好である。
ポリプロピレン系樹脂(A)の第1の成分の融解ピーク温度(DSCによる)は、110℃以上140℃未満であり、好ましくは115℃以上140℃未満であり、より好ましくは120℃以上140℃未満であり、特に好ましくは120℃以上135℃以下である。融解ピーク温度が110℃以上であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)と組み合わせることにより得られたヒートシール用フィルムが、例えば121℃30分という高温下での滅菌処理時にフィルム同士のヒートシールを施していない部分の意図せぬ融着が起りにくい。また、融解ピーク温度が140℃未満であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)と組み合わせることによりヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。
ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対する第1の成分の割合は5重量部以上95重量部以下であり、好ましくは20重量部以上90重量部以下であり、より好ましくは30重量部以上90重量部以下である。ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対する第1の成分の割合が5重量部以上であるとヒートシール用フィルム成形時の成形安定性が良好であり、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対する第1の成分の割合が95重量部以下であるとポリプロピレン系樹脂(B)と組み合わせることによりヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。
ポリプロピレン系樹脂(B)は、1種類または2種類以上のプロピレン系重合体からなり、2種類以上の成分からなる場合、2種類以上の成分のブレンド物として下記特性(B−1)〜(B−2)を満たせばよい。
ポリプロピレン系樹脂(B)は、1種類または2種類以上のプロピレン単独重合体、プロピレンと炭素数2〜12(炭素数3を除く)のα−オレフィンの共重合体から選ばれ、好ましくはプロピレン単独重合体である。
ポリプロピレン系樹脂(B)は、市販のプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体から、適宜選択することができる。具体的には、日本ポリプロ(株)製商品名「ノバテックPP」や、商品名「ウィンテック」が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、0.5g/10分以上25g/10分以下であり、好ましくは0.5〜15g/10分、より好ましくは0.5〜10g/10分である。メルトフローレートが0.5g/10分以上であれば、ポリプロピレン系樹脂(A)と組み合わせた際、フィッシュアイなどのフィルムの外観不良を起こしにくい。25g/10分以下であれば、ポリプロピレン系樹脂(A)と組み合わせることにより得られたヒートシール用フィルムのヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。
ポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度(DSCによる)は、140℃以上であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上、特に好ましくは160℃以上である。融解ピーク温度が140℃以上であれば、ポリプロピレン系樹脂(A)と組み合わせることにより得られたヒートシール用フィルムのヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。なお、ポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度の上限は、特に制限されないが、例えば170℃以下であることが好ましい。
本発明においては、得られるフィルムが広いシール温度幅を確保する観点から、ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度とポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度の差が、20℃以上であり、好ましくは25℃以上である。
ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は30〜95重量%であり、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは50〜85重量%である。ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量は5〜70重量%であり、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜55重量%、さらに好ましくは15〜50重量%である。
ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の含有量が上記範囲であれば、得られたヒートシール用フィルムのヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。また、ヒートシール強度が29.4N/15mm幅以上となる温度が高くなり過ぎることを防ぐことが出来る。このため、160℃以下という実用的なヒートシール温度で強シールを形成することができる。
多段重合体のMFRは多段重合体全体のMFRと第1の成分又は第2の成分どちらかのMFRしか測定できないことが多い。第1の成分または第2の成分の未知MFR計算方法は、後述の実施例の1.測定方法において記載したとおり、例えば特開2001−72730号公報に開示されている方法等が挙げられ、該公報の式2によれば第1の成分又は第2の成分どちらかのMFRが不明な場合でも、多段重合体全体のMFRと第1の成分又は第2の成分どちらかのMFR及び第1の成分と第2の成分の重量比が分かれば、未知MFRを推定可能である。
また、本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、任意にエラストマー(C)0重量部以上100重量部以下を含む。
エラストマー(C)は、本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物からなるフィルムが耐衝撃性を必要とされる場合や更なるヒートシール特性の調整が必要な場合に含有される。
エラストマー(C)の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、0重量部以上100重量部以下であり、好ましくは0重量部以上70重量部以下、より好ましくは0重量部以上60重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上60重量部以下、特に好ましくは10重量部以上50重量部以下である。
エラストマー(C)の含有量が100重量部以下であれば、得られたヒートシール用フィルムが、例えば121℃30分という高温下での滅菌処理時にフィルム同士のヒートシールを施していない部分の意図せぬ融着が起りにくく、また、高温でヒートシールした際に、29.4N/15mm幅以上のヒートシール強度を達成しやすい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンを主成分とする共重合体であり、エチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。
市販品の例としては、日本ポリエチレン(株)製商品名「カーネル」シリーズ、三井化学(株)製商品名「タフマーA」シリーズや「タフマーMY」シリーズ、ダウ社製商品名「アフィニティー(AFFINITY)」シリーズや「エンゲージ(ENGAGE)」シリーズ、エクソン・モービル社製商品名「エグザクト(EXACT)」シリーズ等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、0.86〜0.91g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.87〜0.90g/cm3である。
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)は、0.5〜10g/10分が好ましい。
市販品の例としては、エクソン・モービル社製商品名「Vistamaxx」シリーズ等が挙げられる。
本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の樹脂または添加剤等、各種の他の成分を、添加して用いることができる。
本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、ポリプロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン(株)製商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン(株)製商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、オレイン酸アミドやエルカ酸アミド等の高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルやシリコーンオイルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどで代表される帯電防止剤、ソルビトール系造核剤(例えば、新日本理化(株)製商品名「ゲルオールMD」)、芳香族燐酸エステル類(例えば、(株)ADEKA製商品名「アデカスタブNA−21」や「アデカスタブNA−11」)、ミリケン社製商品名「Millad」シリーズ、ミリケン社製商品名「Hyperform」シリーズ、新日本理化(株)製商品名「エヌジェスターNU−100」、タルク、高密度ポリエチレンなどで代表される造核剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤や有機過酸化物などで代表される分子量調整剤や架橋助剤、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類に代表される中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、抗菌剤、制菌剤、蛍光増白剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、顔料、天然油、合成油、ワックス、さらには用途に応じて有機系、無機系の難燃剤などを、添加してもよく、配合量は適宜量である。
本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物は、上記のポリプロピレン系樹脂(A)と上記ポリプロピレン系樹脂(B)および必要に応じてエラストマー(C)、添加剤および/またはその他樹脂を、ヘンシェルミキサー(商品名)、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。また、別の形態としては、上記のポリプロピレン系樹脂(A)と上記ポリプロピレン系樹脂(B)および必要に応じてエラストマー(C)を個別に添加剤および/またはその他樹脂などと共にヘンシェルミキサー(商品名)、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練、ペレット化したものをヘンシェルミキサー(商品名)、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合したペレット混合物としても得ることができる。任意成分として、エラストマーやその他添加剤を使用する場合は、前記ペレット混合物を得る際に添加することもできる。また、ヘンシェルミキサー(商品名)、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等でブレンドした混合物としたものをペレット混合物としてそのまま使用することもできる。
本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物は、かかる樹脂組成物を一層以上ヒートシール層として含むヒートシール用フィルム、特に、低いヒートシール強度と高いヒートシール強度を両立させるヒートシール用フィルムに好適に用いることが出来る。
本発明の製造方法により得られるフィルムは、少なくともヒートシール層を含む1層以上からなるフィルムであり、ヒートシール層が上述した本発明で用いるヒートシール用樹脂組成物からなることを特徴とする。
フィルムは、単層でも多層でもよいが、ヒートシール時の操作性の観点から積層体すなわち多層フィルムであることが好ましい。
本発明の製造方法で得られるヒートシール用フィルムは、ヒートシール用樹脂組成物を用いてTダイ成形機にて30℃以下の冷却ロールを用い冷却固化させて製造される単層フィルム又は多層フィルムである。
多層フィルムの製造方法としては、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられるが、経済性の観点から共押出法が好ましい。
冷却ロール温度は30℃以下であるが、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは20℃以下である。冷却ロール温度が30℃以下であるとヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅となるヒートシール温度幅を広く取り易い。冷却温度を30℃以下にすることで、ヒートシール層の結晶状態が最適化され、融着を抑制するような作用を及ぼし、得られるフィルムが広い弱シール温度幅を有するものと考えられる。
1.測定方法
(1)MFR(単位:g/10分):JIS K−7210:1999の附属書A表1、条件Mに従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mmの条件で測定した。また、ポリプロピレン系樹脂(A)において、ポリプロピレン系樹脂(A)全体のMFRと第1の成分のMFRから計算される第2の成分のMFRは特開2001−72730号公報に開示されている式2に準じて以下の計算式により求める。
logC=alogA+blogB
A:第1の成分のMFR、a:ポリプロピレン系樹脂(A)の内の第1の成分の重量比率
B:第2の成分のMFR、b:ポリプロピレン系樹脂(A)の内の第2の成分の重量比率
C:ポリプロピレン系樹脂(A)全体のMFR
ただし、a+b=1である。
(2)融解ピーク温度:示差走査型熱量計(DSC;TA Instruments社、Q2000型)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(3)ポリプロピレン系樹脂のエチレン含有量
特開2003−73426号公報に記載の13C−NMRによるエチレン含有量測定法により求めた標準サンプルのエチレン含有量を基準にして、赤外吸収スペクトルでの700〜760cm−1の範囲のピークの高さI[absorbance]とエチレン含有量E(A)[重量%]との関係式(下記式[1])を算出しこれを用いて求めた。
5gのポリプロピレン系樹脂を190℃プレス成形にて、これの0.5mmのシートを作製し、これの赤外吸収スペクトルを測定した。下記式[1]中のD[mm]はシート厚みであり10μm単位まで正確に測定した数値を用いた。
式[1] エチレン含有量(重量%)=5×I/D + 0.0613
(4)ヒートシール強度(単位:N/15mm幅):5mm×200mmのヒートシールバーを用い、得られたフィルムをヒートシール層同士がヒートシールされるように110℃から160℃の範囲において5℃刻みで、圧力0.34MPa、時間5秒のヒートシール条件下で溶融押出しした方向(MD)に垂直になるようにシールした。次いで、ヒートシール部が15mm幅になるようにサンプルを切り取り、引張試験器を用いて引張速度500mm/分にて引き離し、ヒートシール強度を求めた。ヒートシール温度と最高ヒートシール強度との関係をプロットし、得られた曲線から傾きを求め、弱シール開始温度(ヒートシール強度が2.9N/15mm幅に達する温度)、弱シール終了温度(ヒートシール強度が9.8N/15mm幅に達する温度)、強シール開始温度(ヒートシール強度が29.4N/15mm幅に達する温度)を求めた。ヒートシール強度が2.9〜9.8N/15mm幅であれば、容器内部の仕切り部は、製造時や輸送時においては樹脂フィルム又はシート同士が剥離しにくく、使用時(混合時)においては手または器具などで容易に剥離され、29.4N/15mm幅以上であれば、十分なヒートシール強度といえる。また、弱シール温度範囲が10℃以上であれば容易に弱シール強度を形成できると言える。
PP1(メタロセン触媒で重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体):下記<PP1の製造例>にて得られた多段重合体を用いた(融解ピーク温度:122℃、MFR:5.3g/10分)。
PP2(メタロセン触媒で重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリプロ(株)製商品名ウィンテックWFX6(融解ピーク温度:125℃、MFR:2g/10分、多段重合体ではない)。
PP3(メタロセン触媒で重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリプロ(株)製商品名ウィンテックWSX03(融解ピーク温度:125℃、MFR:25g/10分、多段重合体ではない)。
PP4(チーグラー触媒で重合されたプロピレン単独重合体):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP FY4(融解ピーク温度:160℃、MFR:5g/10分)。
PP5(チーグラー触媒で重合されたプロピレン単独重合体):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP FY6(融解ピーク温度:160℃、MFR:2.4g/10分)。
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学工業(株)製商品名「ベンクレイSL」;平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。
50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様及び乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
撹拌および温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で十分に置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調整した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,177mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調整した。
続いて、槽内温度を40℃に昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mM、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中のZr存在量(重量比)は0.018重量%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。
この操作により、触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン系樹脂組成物の製造を行った。
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=4.3、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数33rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に上記の方法で調製した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.71g/hr、トリイソブチルアルミニウムを30mmol/hrで連続的に供給した。温度は、反応器を等分した上流側を53℃、下流側を54℃とし、圧力を2.1MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.14、水素濃度が70molppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は7.6kg/hrであった。
第1重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を分析したところ、MFRは1.5g/10分、融解ピーク温度は121.5℃、エチレン含有量は3.3wt%であった。
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=4.3、内容積100リットル)に、第1重合工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を65℃、圧力を1.9MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.13、水素濃度が0.63mol%になるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が10.0kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第2重合工程での重合反応量を制御した。活性は14kg/g−触媒であった。
得られたパウダー状のPP1に酸化防止剤としてイルガノックス1010を1000重量ppm及びイルガホス168を1000重量ppm添加し、ヘンシェルミキサー(商品名)で混合後、Φ30mmの単軸造粒機にて、200℃の条件にて造粒し、ペレット状のPP1を得た。
また、下記式から計算した第1の成分の割合は76重量%であり、MFR計算式から算出される第2の成分のMFRは280g/10分であった。
第1の成分割合=第1重合工程抜き出し量/第2重合工程抜き出し量
三種三層Tダイ成形機の口径φ30mmである中間層及び口径φ18mmである非ヒートシール面の表面層用樹脂としてPP5を投入し、口径φ18mmであるヒートシール層用押出機に、あらかじめポリ袋の中でPP1とPP4を重量比で85%対15%の割合で、袋ごと手で上下左右に振とうして内容物を十分に撹拌することにより混合したものを投入し、押出機温度200℃、ダイス温度220℃でダイス幅150mm、リップ幅1mmのTダイから溶融押出し、10℃に調整された冷却ロールにて冷却固化し毎分7mの速度にて厚さ100μmのフィルムを表面層:中間層:ヒートシール層の厚み比率が1:7:2となるように製造した。表1にフィルムの評価結果を示す。2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が広く、弱シール形成が容易である。また、160℃以下の実用的なヒートシール温度で29.4N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能である。
実施例1のヒートシール層に用いた樹脂において、PP1をPP2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例と比べ、2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が狭く、弱シール形成が困難である。
比較例1の冷却ロール温度を30℃に変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例と比べ、2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が狭く、弱シール形成が困難である。
比較例2のヒートシール層に用いた樹脂において、PP2をPP3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例と比べ、2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が狭く、弱シール形成が困難である。
実施例1の冷却ロール温度を50℃に変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例と比べ、2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が狭く、弱シール形成が困難である。
比較例1の冷却ロール温度を50℃に変更した以外は比較例1と同様な操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例と比べ、2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が狭く、弱シール形成が困難である。
比較例3の冷却ロール温度を50℃に変更した以外は比較例3と同様な操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例と比べ、2.9〜9.8N/15mm幅のヒートシール強度を形成可能な温度幅が狭く、弱シール形成が困難である。
Claims (4)
- 少なくとも一層にヒートシール層を有するフィルムの製造方法であって、該ヒートシール層が下記ポリプロピレン系樹脂(A)成分30〜95重量%と下記ポリプロピレン系樹脂(B)成分5〜70重量%と、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、任意にエラストマー(C)0重量部以上100重量部以下を含み、さらにポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度の差が20℃以上である樹脂組成物をTダイ成形機にて30℃以下の冷却ロールを用い冷却固化させてフィルムを製造するヒートシール用フィルムの製造方法。
(A)成分:下記(A−1)及び(A−2)の要件を満たす多段重合体であって、当該多段重合体の第1の成分が(a−1)から(a−3)の要件を満たすポリプロピレン系樹脂。
(A−1)メルトフローレート(MFR)(JIS K7210、温度230℃、2.16kg荷重)が1g/10分以上、50g/10分以下であること
(A−2)DSCによる融解ピーク温度が110℃以上、140℃未満であること。
(a−1)メルトフローレート(MFR)(JIS K7210、温度230℃、2.16kg荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下であること
(a−2)DSCによる融解ピーク温度が110℃以上、140℃未満であること。
(a−3)ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、第1の成分が5重量部以上95重量部以下であること。
(B)成分:下記(B−1)及び(B−2)の要件を満たすポリプロピレン系樹脂
(B−1)メルトフローレート(MFR)(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)が、0.5g/10分以上、25g/10分以下であること。
(B−2)DSCによる融解ピーク温度が140℃以上であること。 - 前記ポリプロピレン系樹脂(A)において、ポリプロピレン系樹脂(A)全体のMFRと第1の成分のMFRから計算される第2の成分のMFRが50g/10分以上、10000g/10分以下である請求項1に記載のヒートシール用フィルムの製造方法。
- 前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、メタロセン系ポリプロピレン系樹脂である請求項1又は2に記載のヒートシール用フィルムの製造方法。
- 前記エラストマー(C)が、エチレン−α−オレフィン共重合体および/またはスチレン系エラストマーおよび/またはプロピレン−α−オレフィン共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートシール用フィルムの製造方法。
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