JP2020139789A - 微生物分析用試料の調製方法、微生物の分析方法、微生物の識別方法および微生物分析用キット - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の第2の態様は、第1の態様の微生物分析用試料の調製方法を用いて微生物分析用試料を調製することと、調製された微生物分析用試料の第1質量分析を行うこととを備える微生物の分析方法に関する。
本発明の第3の態様は、第2の態様の微生物の分析方法を用いて微生物の識別を行う微生物の識別方法に関する。
本発明の第4の態様は、第1の態様の微生物分析用試料の調製方法、第2の態様の微生物の分析方法、または第3の態様の微生物の識別方法を行うための微生物分析用キットに関する。
第1実施形態の微生物の分析方法では、所定の濃度の微生物を含む試料溶液が調製され、この試料溶液の遠心分離により得られた上清を用いて質量分析用試料が調製される。調製された質量分析用試料は質量分析に供される。
なお、このとき、試料Sを含む溶液の濁度を調整後、マトリックス溶液Mに混合し、試料溶液MSが得られてもよい。または、試料Sを秤量後、菌濃度が調整された試料Sを含む溶液を調製し、これをマトリックス溶液Mと混合し、試料溶液MSが得られてもよい。また、マトリックス溶液Mと試料Sの混合は、秤量または濁度調整と、後述する超音波処理および遠心分離の少なくとも一つを含む一連の処理を行った試料Sを含む溶液を試料プレートに滴下後、マトリックス溶液Mを試料プレートに滴下し、試料プレート上で試料Sとマトリックスを混合してもよい。
試料Sは微生物を含めば特に限定されない。採取された対象物に含まれる微生物を分析に供する場合、対象物から微生物を含む部分を取り出し、当該部分を培地に塗布して、微生物の培養を行う。この培養により得られたコロニーを回収し、コロニーに含まれる微生物を試料Sとすることができる。例えば、環境から採取された標本、食品または生物の体液等を対象物とすると、本実施形態の方法によりこれらに含まれる微生物の種類を好適に識別することができる。
秤量または濁度調整により調整される試料溶液MSの菌濃度は、1×106CFU/μL以上となることが好ましく、3×106CFU/μL以上となることがより好ましい。菌濃度を高くすると、より大きいm/zに対応するピークをより確実に検出できるようになる。同様の観点から、当該試料溶液MSの濁度は、3MFU以上となることが好ましく、1×10MFU以上となることがより好ましい。以下において、MFUはマクファーランドユニットを示す。
秤量を行う場合、その方法は特に限定されないが、微量天秤等の天秤を用いて微生物の量を測定することが好ましい。秤量で得られた試料Sの量に対して適切な量のマトリックス溶液を加えることにより、菌濃度が調整された試料溶液MSが得られる。
超音波処理の方法は特に限定されず、公知の方法等を用いることができる。超音波洗浄器または超音波破砕機により、試料溶液MSに連続的または断続的に超音波を放射して行うことができる。超音波処理を行う時間も特に限定されず、例えば30秒〜5分等に適宜設定することができる。
遠心分離の方法は特に限定されず、遠心分離機を用いた公知の方法等により行うことができる。遠心分離の条件は特に限定されないが、回転数は6000rpm以上が好ましく、10000以上がより好ましい。さらに、回転数は15000rpm以下が好ましく、13000以下がより好ましい。遠心分離を行う時間も特に限定されず、1分〜5分等に適宜設定することができる。
質量分析は、質量分析計により行われる。検出対象のピークを検出することができれば質量分析の方法は特に限定されない。しかし、解析しやすい測定データを得る観点から、一価のイオンが生成しやすい上述のMALDIによりイオン化を行うことが好ましい。また、10000以上のm/zに対応する高質量のイオンを精度よく分析する観点から、上述の飛行時間型質量分析を行うことが好ましい。飛行時間型質量分析のイオンの飛行経路は特に限定されず、リニアモードまたはリフレクトロンモード等を適宜用いることができる。MALDI法によるイオン化が可能なMALDI飛行時間型質量分析計(以下、MALDI−MSと呼ぶ)を用いて、MALDI法でイオン化されたイオンの飛行時間型質量分析を行うことがより好ましい。MALDI法は、ソフトイオン化法の一種であり、レーザ光を吸収しにくい物質、またはタンパク質等のレーザ光により損傷を受けやすい物質を分析するために、レーザ光を吸収しやすくイオン化しやすいマトリックスと分析対象物質とを混合し、これにレーザ光を照射することで分析対象物質をイオン化する手法である。質量分析におけるイオン化では、正イオンモードおよび負イオンモードのいずれを用いてもよい。質量分析は、シングル質量分析計により行ってもよいし、多段階でフラグメントイオンの解析を行ってもよい。
なお、質量分析用試料を試料プレートのウェルに滴下する前に、ウェルにプリコートを行ってもよい。プリコートは、例えば、エタノール等のアルコールを溶媒としたマトリックス溶液をウェルに滴下することにより行われる。プリコートにより、質量分析用試料が滴下された後、適切な位置に安定して保持されやすくなり、加えてイオン化効率を上げることができる。
なお、検出器電圧の調整は適宜省略してもよい。
上述の処理装置により、第1質量分析で得られたマススペクトルデータにスムージング処理を行われることが好ましい。このスムージング処理では、m/zの値に応じて、異なるスムージング処理が行われる。例えば、閾値を15000以上20000以下のいずれかの値とする。ここで、当該閾値以上のm/zに対応するデータ点のスムージング処理では、当該閾値未満のm/zに対応するデータ点のスムージング処理よりも、1つのデータ点に対してより多くのまたはより広い範囲のデータ点を用いてスムージングを行うことができる。このように、処理装置は、m/zの第1範囲におけるスムージングよりも、第1範囲よりも高いm/zを有する第2範囲において、各データ点に対応する強度をより多くのデータ点を用いて修正する。第1範囲は、例えば、上記閾値以下の範囲から設定され、第2範囲は、上記閾値よりも大きい範囲から設定される。
なお、スムージング処理は適宜省略してもよい。
微生物の識別を行う場合、第1質量分析で得られたマススペクトルにおけるピークと、データベースに記憶された複数の微生物に含まれるタンパク質のマススペクトルのピークとの比較が行われる。当該データベースには、微生物の種類(属名、種形容語、亜種名、血清型等)と、マススペクトルにおいて観察されるピークのm/zとが紐づけられたデータが記憶されている。
なお、第1質量分析で得られたデータに基づいて微生物の識別を行う方法は特に限定されず、例えば、データベースには、各m/zに対応するピークが各種類の微生物のマススペクトルにおいて観察される割合や確率等に基づいた重みづけ情報を含んでもよく、当該重み付け情報に基づいて類似度が算出されてもよい。
本実施形態に係る微生物分析用試料の調製、微生物の質量分析および微生物の識別に好適に用いられる微生物分析用キットが提供される。分析用キットには、上述の微生物分析用試料の調製、質量分析および微生物の識別で用いられる任意の消耗品等が含まれる。さらに、微生物分析用キットには、微生物分析用試料の調製方法または微生物の分析方法を示す文書や電子データ等が含まれる。微生物分析用キットを用いることで、微生物分析用試料の調製、分析、および微生物の識別等を効率的に行うことができる。
(第1項目)一態様による微生物分析用試料の調製方法は、微生物の濃度が、1×106CFU/μL以上6×107CFU/μL以下の試料溶液(MS)を調製することと、前記試料溶液(MS)の遠心分離を行うことと、前記遠心分離により得られた上清(Sn)を用いて、質量分析用試料を調製することとを備える。これにより、質量分析におけるピーク検出を安定させ、微生物に含まれる分子のピーク検出の再現性を向上することができる。従来、マーカータンパク質に対応するピ−クに対し、ウェル間、日程間などで、検出状況が再現しない場合があった。加えて、微生物の属、種に加え、亜種、血清型、株などを判別するためのマーカータンパク質は、(属、種までを判別するためのマーカータンパク質に比べ)ピークの検出感度が低く、再現性の低いことが多かった。本実施形態の分析方法では、例えば、このようなマーカータンパク質に対応するピークについて、検出感度や再現性の向上が可能となる。
これにより、検出の難しい高質量イオンのピーク検出の再現性を高め、幅広いm/zの範囲において、安定性(再現性)の高いマススペクトルを提供することができる。
以下の1.〜9.を時系列順に各操作を行った。以下の各実施例でも、同様に番号の順に各操作を行った。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Orion, jfrlSe1402-15)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、SA-1、SA-2およびSA-3の各溶液を調製した。各マトリックス溶液の組成は以下の通りである。SA-1: 25 mg/mL; シナピン酸(SA) in エタノール(EtOH)(以下、「in」の後の液体は溶媒を示す)、SA-2: 25 mg/mL; SA in 0.6% トリフルオロ酢酸(TFA), 50% アセトニトリル(ACN)、SA-3: 25 mg/mL; SA in 1% MDPNA, 1mM DMP, 0.6% TFA 50% ACN。以下の各実施例でも同様であるが、SAはWako社製、MDPNAおよびDMPはSigma-Aldrich社製を、それぞれ用いた。
4. 実施例1として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、2.のマトリックス溶液SA-3を加え、複数の菌濃度の試料溶液を調製し、ニードルで懸濁し、得られた懸濁液を、遠心分離にかけた(12000 rpm、5 min)。
6. 比較例1として、3.で調製された懸濁液を、5.でプリコートされた各ウェル上に、1 μLずつ滴下した。
7. 実施例1として、4.の遠心分離で得られた遠心上清液を、5.でプリコートされた各ウェル上に、1 μLずつ滴下した。
9. 測定後、得られた測定データに自己キャリブレーションを適用し、得られたマススペクトルを比較評価した。高質量イオンに対応するピークでピークトップ(ピークの上部)が割れているものに対しては、スム−ジング補正(Axima PerformanceのPeak Processingのスムージング設定を、50から200へ変更)を行った。サルモネラの12マーカー(以下の実施例では、単にマーカーと呼ぶ)のピークに対応するm/zの理論値に対し、800 ppm以内にピークピッキングされているか否かにより、当該マーカーが検出されたか否かを判定した。マーカーの検出率は、各試料に対する複数のウェル中、何ウェルでピーク検出されたかの割合(%)として算出した。
図3の表1−Aおよび図4の表1−Bは、それぞれ比較例1および実施例1における、複数の菌濃度(濁度)における12マーカーに対応するそれぞれのピークの検出率(n=4)を示す。比較例1および実施例1において、菌濃度(濁度)が濃すぎても薄すぎても検出率が低下する一方、比較的検出率の高い最適菌濃度(最適濁度)が存在することが、確認された。表1−Aおよび表1−Bで、特に検出率の高い最適菌濃度の部分を、太枠Fで囲っている。最適菌濃度は、比較例1では6×106〜1×107個/ウェル(2×10〜3×10 MFU)、実施例1では3×106〜3×107個/ウェル(1×10〜1×102MFU)と、実施例1の方が、最適範囲が広かった。全体的にみても、比較例1に比べ、実施例1で、検出率の高い傾向が確認された。これは、添加剤による高質量域を含む感度向上効果と、主に実施例3および実施例4で後述する、遠心上清を用いることによる、感度向上および結晶均一性の向上による効果の少なくとも一つによると考えられた。実施例1では、1×107個/ウェル(3×10 MFU)で、マーカーに対応するピークの感度が特に高かった。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Orion, jfrlSe1402-15)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. 比較例2として、各菌株のコロニーを、熟練者の勘を排除するようランダムに約1 cm分ニードルで採り、生理的食塩水に加えて懸濁し、懸濁液を調製した(n=4)。上記約1 cm分の菌体が、懸濁液10μLに含まれるように調製された。
3. 実施例2として、各菌株のコロニーを約1 mg秤量し、生理的食塩水に加えて懸濁し、段階希釈し、複数の濃度の懸濁液を調製した(n=4)。
4. 比較例2および実施例2で調製された懸濁液を、濁度計(DensiCHEK(登録商標) plus; BIOMERIEUX)を用いて、濁度を測定した。
5. 4.で測定された濁度から、マックファーランド比濁法により、1ウェルあたりの菌数(×107個/μL)を算出し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL濃度の1 μL分)と、比較例2と実施例2の1ウェルあたりのばらつきを評価した。
マックファ−ランド比濁法により、表1−Aおよび表1−Bに示す複数の菌濃度を含む、各実施例に示す菌濃度と濁度を換算した。このとき、例えば、最適濃度の換算値として、サルモネラ・エンテリカの4菌株(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, NBRC3313; 血清型Thompson, ATCC BAA-1738;血清型Orion, jfrlSe1402-15)に対し、同じ値であることを確かめた。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, NBRC3313)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 比較例3として、1.のサルモネラについて、2.のマトリックスSA-2溶液10 μLに、コロニー約1 cm分をニードルで懸濁し、懸濁液を調製した。
4. 実施例3として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックスSA-3溶液を加え、ニードルで懸濁し、懸濁液を調製した。得られた懸濁液を、超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 比較例3として、3.で調製された懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1.2 μLずつ滴下した。
7. 実施例3として、4.の遠心上清液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
8. 6.および7.で滴下された液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得たのち、MALDIプレート上の結晶の写真を撮影した。
図7に、(a)比較例3および(b)実施例3で得られた結晶写真を示す。比較例3では、表面に凹凸をもつ比較的厚めの結晶が形成されたのに対し、実施例3では、比較的均一な薄膜状の結晶が形成された。これは、比較例3では遠心分離に供していない菌の懸濁液を滴下したのに対し、実施例3では遠心上清液を滴下したことによる効果だと考えられた。また、同じ理由で、比較例3ではウェル間により結晶にばらつきが生じやすいのに対し、実施例3では比較的同一の結晶が得られる傾向がみられた。これにより、結晶の不均一性が改善され、ウェル上および異なるウェル間における再現性が向上した。
1. サルモネラ・エンテリカの6菌株(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, NBRC3313; 血清型Thompson, ATCC BAA-1738; 血清型Choleraesuis, NBRC 105684; 血清型Infantis, jfrlSe1402-4; 血清型Orion, jfrlSe1402-15)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1およびSA-3を調製した。
4. 遠心分離を行う例(実施例4−2)として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックスSA-3溶液を加え、ニードルで懸濁し、懸濁液を調製した。得られた懸濁液を、超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 実施例4−1として、3.で調製された懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
7. 実施例4−2として、4.で得られた遠心上清液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
8. 6.および7.で滴下された液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例1と同様の条件で質量分析を行った。質量分析後、得られたデータに自己キャリブレーションを適用後、得られたマススペクトルを比較評価した。
図8は、(a) 実施例4−2(遠心上清: 遠心分離後、遠心上清を用いた場合)と、(b)実施例4−1(遠心なし: 遠心分離を行わず、懸濁液を用いた場合)のサルモネラ・エンテリカの上記6菌株のSodAに対応するピークを含むマススペクトルを示す。6菌株全てに対し、遠心上清を用いた場合は、遠心を行わなかった場合に対し、SodAのピークが、明らかに、感度高く検出された。これは、遠心を行うことで、懸濁液中のイオン化阻害物質が沈殿し、マーカータンパク質と分離されたことで、遠心上清液中のマーカーに対応するピークの感度が向上したと考えられた。特に、検出が不安定だったSodAなど高質量のマーカーピークが、安定して、再現性高く、検出されるようになった。遠心分離の条件を変えて同様の実験を行ったところ、具体的に6000 rpm、12000 rpm、または15000 rpmで、1 minあるいは5 minで、遠心分離を行ったところ、6000 rpmおよび15000 rpmの場合もある程度の感度および安定性が得られたが、特に12000 rpmで5 min行った場合、マーカーピークの感度がより高く、より安定して検出された。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Enteritidis, NBRC3313)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1およびSA-3を調製した。
3. 超音波処理を行わずニードルによる懸濁のみ行う例(実施例5−1)として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
4. 超音波による懸濁を行う例(実施例5−2)として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 3.および4.の懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
7. 6.で滴下された液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを比較評価した。
図9は、(a)超音波懸濁を行った場合(実施例5−2)、および(b)ニードル懸濁を行い超音波処理を行わなかった場合(実施例5−1)の、サルモネラ・エンテリカ(血清型Enteritidis, NBRC3313)の、マーカーYciFに対応するピークを含むマススペクトルを示す。従来、サルモネラ・エンテリカ(血清型Enteritidis, NBRC3313)におけるマーカーYciFは、特にマーカーピークの感度が低く、検出が不安定だった。本実施例では、YciFのピークは、超音波懸濁を行い分析用試料を調製することにより、より安定して検出されるようになった。超音波懸濁を行わなかった場合に比べ、超音波懸濁を行った場合、溶液中に、より多くのYciFが溶出された可能性が考えられた。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1およびSA-3を調製した。
3. 超音波処理を行わずボルテックスミキサーによる懸濁を行う例(実施例6−1)として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁し、その後、ボルテックスミキサーで懸濁(5 min)し懸濁液を調製した。得られた懸濁液を、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
4. 超音波による懸濁を行う例(実施例6−2)として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁し、その後、超音波処理(1 min)に供し懸濁液を調製した。得られた懸濁液を、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 3.および4.で得られた懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
7. 6.で滴下された液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを比較評価した。
図10は、(a)超音波懸濁を行った場合(実施例6−2)と、(b)ボルテックスミキサーによる懸濁を行った場合(実施例6−1)の、サルモネラ・エンテリカ(血清型Enteritidis, NBRC3313)の、マーカーYciFに対応するピークを含むマススペクトルを示す。ボルテックスミキサーによる懸濁に比べ、超音波懸濁を行った場合では、YciFに対応するピークは、より高感度に検出された。YciF以外のピークを含むマススペクトル全体でも、ピーク感度の向上が確認された。ボルテックスミキサーによる懸濁に比べ、超音波懸濁を行った場合では、懸濁液中に、より多くのYciFを含むタンパク質が溶出されたと考えられた。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 検出器電圧調整の基準となる、大腸菌の懸濁液として、E. coli DH5α Electro-Cells (TKR 9027、タカラバイオ)を、2.のSA-2溶液で1/50倍希釈した懸濁液を調製した。
5. SA-1溶液を、MALDIプレートに0.5 μLずつ滴下し、プリコートを行った後、4.の遠心上清液を、プリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
6. 3.で得られた大腸菌の懸濁液を、MALDIプレ−トに、1 μLずつ滴下した。
図11は、大腸菌の質量分析で得られた、(a)m/z 21500〜23000、および(b)m/z 21500〜24000のマススペクトルを示す。図11のマススペクトルを取得した際の検出器電圧においては、m/z 22000付近のピーク強度は0.1〜0.3 mV、m/z 23000付近のピーク強度は0.1〜0.4mVで、比較的安定して検出された。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1およびSA-3を調製した。
3. 1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックスSA-3溶液を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
5. 3.で得られた遠心上清液を、4.のプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
6. 5.で滴下した液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例1と同様の条件で質量分析を行った。質量分析後、得られたデータに自己キャリブレーションを適用後、得られたマススペクトルを評価した。実施例1と同様の基準でマーカーピークが検出されたか否かを判定した。高質量のイオンに対応するピークでピークトップが割れているものに対しては、スムージング補正(Axima PerformanceのPeak Processing のスムージング設定を、50から200へ変更)を行い、補正前後でピーク検出への影響を評価した。
図15は、(a)Axima PerformanceのPeak Processing設定において、スムージング値: 50を用いた場合と、(b)スムージング値: 200を用いた場合の、サルモネラ・エンテリカ(血清型Orion, jfrlSe1402-15)の、マーカーSodAに対応するピークを含むマススペクトルを示す。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Choleraesuis, NBRC 105684)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 比較例9として、1.のサルモネラについて、2.のマトリックス溶液SA-2 10 μLに、コロニー約1 cm分をニードルで懸濁し、懸濁液を調製した。
4. 実施例9として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックスSA-3溶液を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 比較例9では、3.で得られた懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1.2 μLずつ滴下した。
7. 実施例9では、4.で得られた遠心上清液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
8. 6.および7.の液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを評価した。なお、質量分析の際の検出器電圧は、比較例9と実施例9で、同じ値を用いた。
図16はサルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245)、図17はサルモネラ・エンテリカ(血清型Choleraesuis, NBRC 105684)に対する、(a)比較例9および(b)実施例9による、マーカーSodAに対応するピークを含むマススペクトルを示す。いずれの菌株の場合も、比較例9では容易でなかったSodAのピーク検出が、実施例9では、安定して、高感度に検出されていることが確認された。従来、SodAのピークは、表1に示されたサルモネラのマーカーにおいて、最も高質量のタンパク質であり、特に感度が低く、検出不安定なピークであることが知られている。実施例9における感度向上は、添加剤による感度向上効果、遠心上清を用いることによりイオン化阻害物質と分離されることによる感度向上効果、超音波によりマーカータンパク質が溶出されることによる感度向上効果など、複数の要素が寄与していると考えられた。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Choleraesuis, NBRC 105684; 血清型Infantis, jfrlSe1402-4)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 比較例10として、1.のサルモネラについて、2.のマトリックス溶液SA-2 10 μLに、コロニー約1 cm分をニードルで懸濁し、懸濁液を調製した。
4. 実施例10として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックスSA-3溶液を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 比較例10では、3.で得られた懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1.2 μLずつ滴下した。
7. 実施例10として、4.で得られた遠心上清液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
8. 6.および7.で滴下した液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを評価した。なお、質量分析の際の検出器電圧は、比較例10と実施例10で、同じ値を用いた。
図18はサルモネラ・エンテリカ(血清型Choleraesuis, NBRC 105684)について、図19はサルモネラ・エンテリカ(血清型Infantis, jfrlSe1402-4)について得られたSodAに対応するピークを含むマススペクトルを示す。比較例10および実施例10において、8ウェル(n=8)のそれぞれで得られたマススペクトルを示している。図18および図19とも、比較例10ではウェル間で感度またはS/N比等にばらつきが生じているのに対し、実施例10では、全8ウェルで、ピーク検出状況は、ほぼ再現した。前述の通り、従来、SodAのピークは、表1に示されたサルモネラのマーカーにおいて、最も高質量のタンパク質であり、特に感度が低く、検出不安定なピークであることが知られている。実施例10における再現性の向上は、添加剤、遠心上清若しくは超音波処理による感度向上効果、または、遠心上清による結晶の均一化若しくはウェル間の再現性向上効果等が、影響していると考えられた。
なお、以下の実施例では、実施例7と同様に、大腸菌試料を質量分析して得られたデータに基づき、検出器電圧を設定した。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, GTC00131; 血清型Infantis, ATCC BAA-1675; 血清型Thompson, ATCC BAA-1738)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
5. 3.で得られた遠心上清液を、4.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
6. 5.で滴下した液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例7と同様に検出器電圧を設定した他は実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを評価した。
図20、21、22および23は、それぞれ、サルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, GTC00131; 血清型Infantis, ATCC BAA-1675; 血清型Thompson, ATCC BAA-1738)の、マーカーSodAに対応するピークを含むマススペクトルを示す。図中の各マススペクトルは、4ウェル(n=4)のそれぞれに対応する。いずれの菌株においても、感度、再現性とも高く、安定して、SodAのピーク検出が確認された。実施例11における、感度および再現性の向上は、添加剤、遠心上清、超音波、または検出器電圧調整による感度向上効果と、遠心上清による結晶の均一化またはウェル間の再現性向上効果が、影響していると考えられた。
1. サルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Choleraesuis, NBRC 105684; 血清型Orion, jfrlSe1402-15)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 比較例12として、1.のサルモネラについて、2.のマトリックス溶液SA-2 10 μLに、コロニー約1 cm分を加えニードルで懸濁し、懸濁液を作製した。
4. 実施例12として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 比較例12では、3.で得られた懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1または1.2 μLずつ滴下した。
7. 実施例12では、4.で得られた遠心上清液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
8. 6.および7.で滴下した液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例7と同様に検出器電圧を設定した他は実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを評価した。マーカーのピークに対応するm/zの理論値に対し、800 ppm 内でピークピッキングされているか否かにより、当該マーカーが検出されたか否かを判定した。マーカーの検出率は、各試料に対する4ウェルまたは8ウェル中、何ウェルで検出されたかの割合(%)として算出した。
図24の表12-Aおよび図25の表12-Bに、それぞれ比較例12および実施例12のサルモネラ・エンテリカ(血清型Typhimurium, NBRC13245)に対する12マーカーの、日ごとの検出率を示した。図26の表12-Cおよび図27の表12-Dに、それぞれ比較例12および実施例12のサルモネラ・エンテリカ(血清型Choleraesuis, NBRC 105684)に対応する12マーカーの、日ごとの検出率を示した。図28の表12-Eおよび図29の表12-Fに、それぞれ比較例12および実施例12のサルモネラ・エンテリカ(血清型Orion, jfrlSe1402-15)に対応する12のマーカーの、日ごとの検出率を示した。測定日の6桁の数字は、最初の2桁が西暦の年の下2桁を示し、次の2桁が月、最後の2桁が日を表す。表12-B(図25)の「180117-0309」のように、日付がハイフンで結ばれている場合は、ハイフンで結ばれた前の日付から後の日付までの期間のいずれかの日に測定を行ったことを示す。
1. サルモネラ・エンテリカの6菌株(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, NBRC3313; 血清型Thompson, ATCC BAA-1738; 血清型Choleraesuis, NBRC 105684; 血清型Infantis, jfrlSe1402-4; 血清型Orion, jfrlSe1402-15)を、LB寒天培地で、37℃で、20時間、培養した。
2. マトリックス溶液として、上述のSA-1、SA-2およびSA-3を調製した。
3. 比較例13として、1.のサルモネラについて、2.のマトリックス溶液SA-2 10 μLに、コロニー約1 cm分を加え、ニードルで懸濁し、懸濁液を作製した。
4. 実施例13として、1.のサルモネラを約1 mg微量天秤で秤量し、最適菌濃度(1 mg/0.075 mL; 1×107個/μL)になるよう2.のマトリックス溶液SA-3を加え、ニードルで懸濁後、得られた懸濁液を超音波処理(1 min)に供し、その後、遠心分離(12000 rpm、5 min)に供した。
6. 比較例13として、3.で得られた懸濁液を、5.でプリコートされたウェル上に、1または1.2 μLずつ滴下した。
7. 実施例13として、4.で得られた遠心上清液を、5.でプリコートされたウェル上に、1 μLずつ滴下した。
8. 6.および7.で滴下した液滴を自然乾燥に供し質量分析用試料を得た後、実施例7と同様に検出器電圧を設定した他は実施例4と同様に質量分析を行い、得られたマススペクトルを評価した。マーカーピークに対するm/zの理論値に対し、800ppm内でピークピッキングされたか否かにより、当該マーカーピークが検出されたか否かを判定した。マーカーピークの検出率は、各試料に対応する4ウェル中、何ウェルで検出されたかの割合(%)として算出した。
図30の表13-A、図31の表13-Bおよび図32の表13-Cに、サルモネラ・エンテリカの代表6菌株(血清型Typhimurium, NBRC13245; 血清型Enteritidis, NBRC3313; 血清型Thompson, ATCC BAA-1738; 血清型Choleraesuis, NBRC 105684; 血清型Infantis, jfrlSe1402-4; 血清型Orion, jfrlSe1402-15)の、12マーカーの検出率を示す。表13-Aおよび表13-Bは、比較例13におけるそれぞれ異なる実験日の結果を示す。表13-Cは、実施例13の結果を示す。
Claims (19)
- 微生物の濃度が、1×106CFU/μL以上6×107CFU/μL以下の試料溶液を調製することと、
前記試料溶液の遠心分離を行うことと、
前記遠心分離により得られた上清を用いて、質量分析用試料を調製することと
を備える微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項1に記載の微生物分析用試料の調製方法において、
前記遠心分離の前に、前記試料溶液に超音波処理を行うこと
を備える微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項1または2に記載の微生物分析用試料の調製方法において、
マトリックスを含む溶液に前記微生物を加えた後、前記溶液の濁度を調整するか、若しくは、前記微生物を含む溶液の濁度を調製した後、マトリックスを含む溶液と混合すること、または、前記微生物を秤量し、秤量された前記微生物をマトリックスを含む溶液に加えるか、若しくは、前記微生物を秤量し、秤量された前記微生物を含む溶液を調製した後、マトリックスを含む溶液と混合することにより前記試料溶液を調製する微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項3に記載の微生物分析用試料の調製方法において、
前記マトリックスの添加剤としてホスホン酸基を含む化合物および界面活性剤の少なくとも一つを用いて前記質量分析用試料を調製する微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項4に記載の微生物分析用試料の調製方法において、
前記添加剤は、メチレンジホスホン酸およびN−デシル−β−D−マルトピラノシドである微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項3から5までのいずれか一項に記載の微生物分析用試料の調製方法において、
前記マトリックスは、シナピン酸である微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項1から6までのいずれか一項に記載の微生物分析用試料の調製方法において、
前記微生物は、サルモネラ属の細菌である微生物分析用試料の調製方法。 - 請求項1から7までのいずれか一項に記載の微生物分析用試料の調製方法を用いて微生物分析用試料を調製することと、
調製された微生物分析用試料の第1質量分析を行うことと
を備える微生物の分析方法。 - 請求項8に記載の微生物の分析方法において、
前記第1質量分析は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化により前記微生物分析用試料をイオン化する微生物の分析方法。 - 請求項8または9に記載の微生物の分析方法において、
前記第1質量分析では、10000以上のm/zに対応するピークを検出する微生物の分析方法。 - 請求項10に記載の微生物の分析方法において、
前記微生物とは異なる微生物から調製された質量分析用試料の第2質量分析を行い、前記第2質量分析により得られたデータに基づいて前記第1質量分析における検出器の電圧を設定することとを備える微生物の分析方法。 - 請求項11に記載の微生物の分析方法において、
前記第2質量分析は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化により前記微生物分析用試料をイオン化する微生物の分析方法。 - 請求項11または12に記載の微生物の分析方法において、
前記第2質量分析において、大腸菌のマススペクトルのm/z 22000以上23000以下の範囲における最も強度の大きいピーク、および、前記マススペクトルのm/z 23000以上24000以下の範囲における最も強度の大きいピークの少なくとも一つの強度に基づいて、前記検出器の電圧を設定する微生物の分析方法。 - 請求項8から13までのいずれか一項に記載の微生物の分析方法において、
前記第1質量分析により、マススペクトルに対応するマススペクトルデータを取得することと、
前記マススペクトルデータにおいて、m/zに基づいて異なるスムージングを行うこととを備える微生物の分析方法。 - 請求項14に記載の微生物の分析方法において、
前記マススペクトルデータにおいて、m/zの第1範囲におけるスムージングよりも、前記第1範囲よりも高いm/zを有する第2範囲において、各データ点に対応する強度をより多くのまたはより広い範囲のデータ点を用いて修正する微生物の分析方法。 - 請求項15に記載の微生物の分析方法において、
前記第1範囲および前記第2範囲は、閾値に基づいて設定され、前記閾値はm/z 15000以上20000以下である微生物の分析方法。 - 請求項8から16までのいずれか一項に記載の微生物の分析方法を用いて微生物の識別を行う微生物の識別方法。
- 請求項17に記載の微生物の識別方法において、
前記微生物は、サルモネラ属の細菌であり、
前記第1質量分析では、gns、YaiA、YibT、PPI、L25、L21、S8、L17、L15、S7、YciFおよびSodAからなる群から選択される少なくとも一つのサルモネラ由来のタンパク質の検出を行う微生物の識別方法。 - 請求項1から7までのいずれか一項に記載の微生物分析用試料の調製方法、請求項8から16までのいずれか一項に記載の微生物の分析方法、または請求項17または18に記載の微生物の識別方法を行うための微生物分析用キット。
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