本発明の伝動ベルト用ゴム組成物は、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(1)で表される化合物の塩、及び下記式(2)で表される化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む。以下、本明細書において、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(1)で表される化合物の塩、及び下記式(2)で表される化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物のことを総称して、単に「ピラゾロン系化合物」ともいう。また、下記式(1)で表される化合物又はその塩のことを「化合物(1)」、下記式(2)で表される化合物又はその塩のことを「化合物(2)」ともいう。また、伝動ベルト用ゴム組成物のことを、単に「ゴム組成物」ともいう。
[式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。R
3とR
4とは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R
2、R
3及びR
4のいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
[式中、R
5、R
7及びR
8は同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
6はアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
上述の如く、本発明のゴム組成物は、ゴム成分に加えてピラゾロン系化合物を含む。ピラゾロン系化合物を含まない場合、ゴム成分に充分な耐久性及び低発熱性を付与することができない。そして、ピラゾロン系化合物を含むゴム組成物から作製(製造)された伝動ベルトは、耐久性に優れ、かつ低発熱性を付与できることから、発熱性が低減され、その結果、優れた耐久性及び低燃費性能を発現する。
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、1−エチルプロピル等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、5−プロピルノニル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8の環状アルキル基等が挙げられる。
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル基等が挙げられる。
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H−フルオレニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アミノ基」としては、−NH2で表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s−ブチルアミノ、t−ブチルアミノ、1−エチルプロピルアミノ、n−ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3−メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピラジニル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ピリミジル、3−ピリダジル、4−ピリダジル、4−(1,2,3−トリアジル)、5−(1,2,3−トリアジル)、2−(1,3,5−トリアジル)、3−(1,2,4−トリアジル)、5−(1,2,4−トリアジル)、6−(1,2,4−トリアジル)、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル、2−キノキサリル、3−キノキサリル、5−キノキサリル、6−キノキサリル、7−キノキサリル、8−キノキサリル、3−シンノリル、4−シンノリル、5−シンノリル、6−シンノリル、7−シンノリル、8−シンノリル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、5−キナゾリル、6−キナゾリル、7−キナゾリル、8−キナゾリル、1−フタラジル、4−フタラジル、5−フタラジル、6−フタラジル、7−フタラジル、8−フタラジル、1−テトラヒドロキノリル、2−テトラヒドロキノリル、3−テトラヒドロキノリル、4−テトラヒドロキノリル、5−テトラヒドロキノリル、6−テトラヒドロキノリル、7−テトラヒドロキノリル、8−テトラヒドロキノリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、4−(1,2,3−チアジアゾリル)、5−(1,2,3−チアジアゾリル)、3−(1,2,5−チアジアゾリル)、2−(1,3,4−チアジアゾリル)、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)、5−(1,2,4−オキサジアゾリル)、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)、1−(1,2,3−トリアゾリル)、4−(1,2,3−トリアゾリル)、5−(1,2,3−トリアゾリル)、1−(1,2,4−トリアゾリル)、3−(1,2,4−トリアゾリル)、5−(1,2,4−トリアゾリル)、1−テトラゾリル、5−テトラゾリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、1−イソインドリル、2−イソインドリル、3−イソインドリル、4−イソインドリル、5−イソインドリル、6−イソインドリル、7−イソインドリル、1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル、6−ベンゾイミダゾリル、7−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、4−ベンゾフラニル、5−ベンゾフラニル、6−ベンゾフラニル、7−ベンゾフラニル、1−イソベンゾフラニル、3−イソベンゾフラニル、4−イソベンゾフラニル、5−イソベンゾフラニル、6−イソベンゾフラニル、7−イソベンゾフニル、2−ベンゾチエニル、3−ベンゾチエニル、4−ベンゾチエニル、5−ベンゾチエニル、6−ベンゾチエニル、7−ベンゾチエニル、2−ベンゾオキサゾリル、4−ベンゾオキサゾリル、5−ベンゾオキサゾリル、6−ベンゾオキサゾリル、7−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、4−ベンゾチアゾリル、5−ベンゾチアゾリル、6−ベンゾチアゾリル、7−ベンゾチアゾリル、1−インダゾリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、6−インダゾリル、7−インダゾリル、2−モルホリル、3−モルホリル、4−モルホリル、1−ピペラジル、2−ピペラジル、1−ピペリジル、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、2−テトラヒドロチオピラニル、3−テトラヒドロチオピラニル、4−テトラヒドロチオピラニル、1−ピロリジル、2−ピロリジル、3−ピロリジル、フラニル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチエニル、3−テトラヒドロチエニル、5−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキリデン基」としては、特に限定はなく、例えば、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキレン基」としては、特に限定はなく、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。これらアルキレン基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、フェニレン基を介していてもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、−CH2NHCH2−、−CH2NHCH2CH2−、−CH2NHNHCH2−、−CH2CH2NHCH2CH2−、−CH2NHNHCH2CH2−、−CH2NHCH2NHCH2−、−CH2CH2CH2NHCH2CH2CH2−、−CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2SCH2CH2−、−CH2CH2SCH2CH2−、
これらアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アルキリデン基、及びアルキレン基の各基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個有していてもよい。
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2−アミノエチル、2−(メチルアミノ)エチル、2−(エチルアミノ)エチル、2−(ジメチルアミノ)エチル、2−(エチルメチルアミノ)エチル、2−(ジエチルアミノ)エチル、3−アミノプロピル、3−(メチルアミノ)プロピル、3−(エチルアミノ)プロピル、3−(ジメチルアミノ)プロピル、3−(エチルメチルアミノ)プロピル、3−(ジエチルアミノ)プロピル基等のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n−ブチリルオキシ、ピバロイルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N−メチルアセトアミド、N−ベンジルアセトアミド基等のN−置換アミド基;等が挙げられる。
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ−n−プロピル、カルボキシ−n−ブチル、カルボキシ−n−ペンチル、カルボキシ−n−ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ−n−プロピル、ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ−アルキル基が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
化合物(1)の中でも、R1、R3及びR4が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である化合物が好ましい。
上記の中でも、R1は水素原子であることが、より好ましい。
化合物(1)において、R2は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、又はフリル基であることがより好ましく、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状アルキル基であることが特に好ましい。
化合物(1)において、R3及びR4の少なくとも一方は水素原子であることが好ましく、R3及びR4が共に水素原子であることがより好ましい。
化合物(1)としては、R1が水素原子であり、R2が水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物、及び、R1が水素原子であり、R2が水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R3とR4とが一緒になってアルキリデン基を形成している化合物がさらに好ましく、R1が水素原子であり、R2が水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状アルキル基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物が特に好ましい。
化合物(2)としては、R5は水素原子であり、R6は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R7及びR8は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基又は複素環基である化合物が好ましい。
化合物(2)としては、R6が炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基である化合物が好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又はアリール基である化合物がより好ましい。
化合物(2)としては、R7及びR8が同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基である化合物が好ましい。
化合物(2)としては、R5は水素原子であり、R6が炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又はアリール基であり、R7及びR8が同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基である化合物が好ましい。
化合物(1)及び化合物(2)の中でも、化合物(1)が特に好ましい。
具体的に、化合物(1)又は(2)としては、例えば、5−ピラゾロン、3−メチル−5−ピラゾロン、3−(ナフタレン−2−イル)−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、3−(フラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、3−フェニル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、3−プロピル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、3−ウンデシル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、4−ベンジル−3−メチル−1H−ピラゾール−5(4H)オン、4,4’−(フェニルメチレン)ビス(5−メチル−1H−ピラゾール−3(2H)−オン)、4−[(ジメチルアミノ)メチリデン]−3−メチル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、4−メチル−2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン−3エン−1−オン、5−メチル−2−(4−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール−3(2H)−オン、5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロ−3H−ピラゾール−3−オン、1,5−ジメチル−2−フェニル−1H−ピラゾール−3(2H)−オン、4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−インダゾール−3(3aH)−オン、4−{[4−ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}−3−メチル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、1−フェニル−1H−ピラゾール−3(2H)−オン、4,4’−(4−ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5−メチル−1H−ピラゾール−3(2H)−オン)、1,3−ジフェニル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、4,4’−(4−ニトロフェニルメチレン)ビス(5−メチル−1H−ピラゾール−3(2H)−オン)、及び、4−アミノ−1,5−ジメチル−2−フェニル−1H−ピラゾール−3(2H)−オン等が挙げられる。
化合物(1)の中でも、5−ピラゾロン、3−メチル−5−ピラゾロン、3−(ナフタレン−2−イル)−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、3−(フラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、3−フェニル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、及び3−プロピル−1H−ピラゾール−5(4H)−オンがより好ましい。
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物は、これらピラゾロン系化合物を一種単独で、又は二種以上を混合して含んでもよい。
化合物(1)又は(2)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性化が可能である(例えば、溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(1)又は(2)は、例えば、式(3)〜(9)で表されるような互変異性体として存在することができる。
前記式(1)において、R1及びR3が水素原子である化合物(化合物(1)−A)には、以下の式(3)〜(5)で表される互変異性体が存在する。
前記式(1)において、R3が水素原子である化合物(化合物(1)−B)には、以下の式(6)〜(7)で表される互変異性体が存在する。
前記式(1)において、R1が水素原子である化合物(化合物(1)−C)には、以下の式(8)で表される互変異性体が存在する。
前記式(2)において、R5が水素原子である合物(化合物(2)−A)には、以下の式(9)で表される互変異性体が存在する。
上記式(3)〜(9)で表されるような互変異性体と、化合物(1)又は(2)とは、どちらの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(1)又は(2)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内である。
また、式(1)又は(2)で表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。かかる塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物は、化合物(1)又は化合物(2)が任意の割合で含まれる混合物を含んでもよい。
ピラゾロン系化合物の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがより好ましく、0.2〜10質量部であることがさらに好ましい。ピラゾロン系化合物の配合量を、ゴム成分100質量部に対して50質量部以下とすることにより、コストが低減し経済性が向上する。一方、得られる伝動ベルトの耐久性を考慮し、ピラゾロン系化合物を、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上配合することが好ましい。
(ゴム成分)
ゴム成分としては、公知のものを広く使用することが可能であり、特に制限はない。例えば、天然ゴム(NR)、ジエン系ゴム、及び天然ゴムとジエン系ゴムとの混合物、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、合成ジエン系ゴムを好適に使用することができる。
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴム、樹脂成分発酵ゴムなどを使用することが可能であり、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムを使用してもよい。
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体(SBS)、エチレン−α―オレフィン共重合ゴム(SPO)、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、アルコキシシリル基、ポリエーテル基、又はカルボキシル基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500〜3000000、分子量分布1.5〜15が好ましい。
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
上記したゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、SBR、天然ゴム、IR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくはSBR、天然ゴム、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、SBR、天然ゴム又はこれらから選ばれる2種以上の混合物が特に好ましい。
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物中におけるゴム成分の含有量は、当該ゴム組成物の使用目的に応じて適宜設定されるが、例えばゴムの弾性を低下させず、維持させるという目的に使用する場合、ゴム組成物100質量%中におけるゴム成分の含有量を30〜99質量%とすることが好ましく、40〜80質量%とすることがより好ましい。
(カーボンブラック及び/又は無機充填材)
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物は、カーボンブラック及び/又は無機充填材を含むことも好ましい。
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物がカーボンブラック/又は無機充填材を含有することにより、最終的に得られるゴムの補強性を向上させることができる。なお、本明細書においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれないものと定義される。
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon−Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム組成物がカーボンブラックを含有することにより、最終的に得られる伝動ベルトの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、さらにゴムの強度を向上させる効果を得ることができる
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60〜200cm3/100g、より好ましくは70〜180cm3/100g、特に好ましくは80〜160cm3/100gである。かかる構成を採用することにより、得られる伝動ベルトの耐久性を向上させることができる。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217−2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30〜200m2/g、より好ましくは40〜180m2/g、特に好ましくは50〜160m2/gである。かかる構成を採用することにより、得られる伝動ベルトの低発熱性を向上させることができる。
カーボンブラックが配合されたゴム組成物では、ピラゾロン系化合物、又はピラゾロン系化合物とゴム成分との反応物が、カーボンブラックと強く相互作用をすることが考えられる。したがって、本発明のゴム組成物によれば、特にカーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性を顕著に改良できる。
カーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、20〜200質量部であることが好ましく、30〜130質量部であることがより好ましく、35〜130質量部であることがさらに好ましい。
カーボンブラックの配合量が20質量部以上であれば、静電気防止性能及びゴム強度性能を確保する観点から好ましく、200質量部以下とすることにより、優れた補強性と低発熱性を確保することができる。
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はなく、公知のものを広く使用することが可能である。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイ(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸バリウム(BaSO4)、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
これら無機充填材の中でも、ゴムに強度を付与する観点から、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、及び酸化チタンが好ましい。これらの白色系充填材を用いることにより、ホワイトゴム等をはじめとして、顔料と組み合わせることにより、強度に優れた着色ゴムへの展開が可能となる。
これら無機充填材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、2〜200質量部とすることが好ましく、7.5〜130質量部とすることがより好ましく、10〜130質量部とすることがさらに好ましい。
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
シリカとしては、特に限定はなく、市販のあらゆるものを好適に使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40〜350m2/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
かかる観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が50〜250m2/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積80〜230m2/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積100〜210m2/gの範囲にあるシリカである。また、これらのBET比表面積の異なるシリカを組み合わせて用いてもよい。
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m2/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m2/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m2/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m2/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m2/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)、ソルベイ社製の商品名「Z1085Gr」(BET比表面積=90m2/g)、「ZPremium200MP(BET比表面積=215m2/g)」、「Z HRS 1200MP」(BET比表面積=200m2/g)等が挙げられる。
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、2〜200質量部とすることが好ましく、30〜130質量部とすることがより好ましく、35〜130質量部とすることがさらに好ましい。
特に耐久性の向上と低発熱性の改善との両立を図る場合のシリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜200量部であり、好ましくは30〜130質量部であり、より好ましくは35〜130質量部である。
カーボンブラック及び無機充填材の両方を配合する場合には、両成分の合計量がゴム100質量部に対して、通常2〜200質量部であり、好ましくは30〜130質量部であり、より好ましくは35〜130質量部になるように適宜調整すれば良い。
カーボンブラック及び無機充填材の配合量が、2質量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、200質量部以下であれば、発熱性低減の観点から好ましい。
(その他配合剤)
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物には、上述した成分以外にも、必要に応じてゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、カーボンブラック及び/又はシリカなどの無機充填材が配合されたゴム組成物においては、カーボンブラック及び/又はシリカによるゴム組成物の補強性を高める目的、又はゴム組成物の耐久性と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール等を挙げることができる。
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9−オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9−オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、カーボンブラック及び/又は無機充填材100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが好ましく、3〜15質量部とすることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の耐久性向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
(伝動ベルト用ゴム組成物の製造方法)
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物の製造方法としては、特に制限されず、常法にしたがって行えばよい。例えば、ゴム成分、上記化合物(1)又は化合物(2)、並びに必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材を含む原料成分を混練する工程(A)、並びに工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混練する工程(B)を実施することにより、製造することが可能である。
(工程(A))
工程(A)は、ゴム成分、上記化合物(1)又は化合物(2)、並びに必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材を含む原料成分を混練する工程である。当該工程は、加硫剤を配合する前の工程である。
工程(A)では、さらに必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。
工程(A)における混練方法としては、例えば、ゴム成分と、上記化合物(1)又は化合物(2)と、必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材を含む原料成分とを含む組成物を混練する方法が挙げられる。この混練方法においては、各成分の全量を一度に混練してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混練してもよい。また、ゴム成分と必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材とを混練した後、上記化合物(1)又は化合物(2)を投入して混練するか、ゴム成分と上記化合物(1)又は化合物(2)とを混練した後、必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材を投入して混練してもよい。各成分を均一に分散させるために、混練操作を繰り返し行ってもよい。
また、工程(A)における別の混練方法としては、ゴム成分と上記化合物(1)又は化合物(2)とを混練する工程(A−1)、並びに工程(A−1)で得られた混合物と必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材を含む原料成分とを混練する工程(A−2)を含む二段階の混練方法を挙げることができる。
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度の上限としては、特に制限はなく、例えば、100〜190℃とすることが好ましく、110〜175℃とすることがより好ましく、120〜170℃とすることがさらに好ましい。
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
工程(A−1)におけるゴム成分と上記化合物(1)又は化合物(2)とを混合する際の温度としては、60〜190℃であることが好ましく、70〜160℃であることがより好ましく、80〜150℃であることがさらに好ましい。該混合温度が60℃より低いと反応が進行せず、また、190℃以上になると、ゴムの劣化が進行するためである。
工程(A−1)における混合時間としては、10秒間〜20分間が望ましく、30秒間〜10分間であることがより好ましく、60秒間〜7分間であることがさらに好ましい。該混合時間が10秒より短いと反応が十分に進行せず、また、20分間以上は生産性が低下するためである。
工程(A−2)における工程(A−1)で得られた混合物と必要に応じてカーボンブラック及び/又は無機充填材とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が100〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、110〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(A−2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
工程(A)において、上記化合物(1)又は化合物(2)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜50質量部とすることが好ましく、0.1〜20質量部とすることがより好ましく、0.2〜10質量部とすることがさらに好ましい。
(工程(B))
工程(B)は、工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程である。
工程(B)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤等を配合することができる。
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。
混合(又は混練)時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、亜鉛華等の加硫促進剤、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
ゴム組成物は、常法により混合又は混練することが可能であり、具体的には、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合又は混練することができる。
(その他の配合剤の添加)
本発明の伝動ベルト用ゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
その他の配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。
(用途)
このようにして得られたゴム組成物は、コンベアベルト等のベルト用等の各種ゴム部材に用いることができる。
本発明のゴム組成物を伝動ベルト、特にコンベアベルトに用いる場合、例えば、前記ゴム組成物を補強材に密着させ、加硫することにより製造することができる。具体的には、前記ゴム組成物を押出成形等することによってシート状のカバーゴム層を製造し、補強材を該カバーゴム層で上下から挟み込み、このベルト成形品を金型にセットして所定の温度及び圧力で所定時間加硫する。なお、補強材は、コンベアベルトの用途に応じ、サイズ等を考慮して通常コンベアベルトに用いられるものを適宜選択して使用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜2:伝動ベルト用ゴム組成物の製造
下記表1の工程(A)に記載の各成分を当該表中に記載された割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混練した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表1〜4の工程(B)に記載の各成分を当該表中に記載された割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混練して、ゴム組成物を製造した。
実施例1〜4及び比較例1〜2:低発熱性(低発熱性指数)試験
下記実施例1〜4のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15Hzの条件で、Tanδ値を測定した。化合物を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(比較例1及び2)を作製し、そのTanδ値を100とした。下記式に基づいて、低発熱性指数を算出し、表1に示した。なお、低発熱性指数の値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
式:低発熱性指数
=(各実施例1〜2のゴム組成物のTanδ値)/(比較例1のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
=(各実施例3〜4のゴム組成物のTanδ値)/(比較例2のTanδ値)×100
実施例1〜4及び比較例1〜2:耐久性(引裂強度指数)試験
下記実施例1〜4及び比較例1〜2で得られたゴム組成物の各引裂強度指数は、JISK6252によりクレセント型試験片を用いて、室温下、引張速度500mm/minの条件で測定した。ここで得られた比較例1及び2の値を100とした指数で表し、下記式に基づいて引裂強度指数を算出し、表1に示した。なお、引裂強度の数値が大きいほど耐久性に優れていることを示す。
式:引裂強度指数
=(各実施例1〜2のゴム組成物の引裂強度)/(比較例1の引裂強度)×100
式:引裂強度指数
=(各実施例3〜4のゴム組成物の引裂強度)/(比較例2の引裂強度)×100
実施例1〜4及び比較例1〜2:耐久性(破断伸び指数)試験
下記実施例1〜4及び比較例1〜2で得られたゴム組成物の各破断伸び指数は、JISK6251によりダンベル状試験片を用いて、歪率60%にて繰り返し歪みを与え、破断に至るまでの回数を測定した。ここで得られた比較例1及び2の値を100とした指数で表し、下記式に基づいて破断伸び指数を算出し、表1に示した。なお、破断伸び指数の数値が大きいほど耐久性に優れていることを示す。
式:破断伸び指数
=(各実施例1〜2のゴム組成物の破断伸び)/(比較例1の破断伸び) ×100
式:破断伸び指数
=(各実施例3〜4のゴム組成物の破断伸び)/(比較例2の破断伸び)×100
※1 :SBR(スチレンブタジエンゴム);日本ゼオン社製、NipolR 1502
※2:SBR(スチレンブタジエンゴム);日本ゼオン社製、NipolR SBR NS210
※3:CB(カーボンブラック);Cabot社製、N234
※4:老化防止剤(N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン);Kemai Chemical Co.,Ltd社製
※5:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※6:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※7:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※8:プロセスオイル;Hansen&Rosenthal社製、Vivatec700
※9:化合物A;大塚化学株式会社製、3−メチル−5−ピラゾロン
※10:加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド);大内新興化学工業社製、ノクセラ−CZ−G
※11:硫黄;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製