JP2020138952A - ヨウ素担持活性炭 - Google Patents

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【課題】活性炭に担持させるヨウ素の活性な状態を保持するとともに抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることが可能なヨウ素担持活性炭を提供する。【解決手段】活性炭にヨウ素を添着することでヨウ素担持活性炭を製造する方法であって、賦活後にアルカリ成分が残留した前記活性炭に対し、前記ヨウ素の添着時にヨウ素イオン又はヨウ素酸イオンが生成されないように予め酸処理することによって当該アルカリ成分を除去した上で、前記ヨウ素が空中に放出又は水中に溶出しないように、かつウイルス、真菌及び一部の芽胞菌を除く細菌類を前記ヨウ素で不活化すべく前記活性炭へ吸着可能に、元素状ヨウ素の状態で前記活性炭に添着する、ことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、活性炭にヨウ素を添着することで抗菌性及び抗ウイルス性を持たせたヨウ素担持活性炭に関する。
活性炭は、大部分が炭素(C)からなる多孔質の物質であり、細孔に他のものを吸着させる性質を有する。活性炭は、木材、石炭又はやし殻などを炭化させ、水蒸気などで賦活することで、多数の細孔が形成される。活性炭は、脱臭や水質浄化又は有害物質の吸着などに利用され、加熱することで吸着したものを放出させて再利用することもできる。特許文献1に記載されているように、汚染された水にヨウ素を添加して殺菌し、その後、ヨウ素を活性炭に吸着させて回収する発明も開示されている。
また、ヨウ素(I)は、ハロゲン元素の一つであり、強い殺菌力を有する。ヨウ素はアルコールには比較的よく溶け、エタノールに溶かしたヨードチンキも強い殺菌力を有する消毒薬である。ただ、ヨードチンキは生体への刺激が強いため、ポリビニルピロリドンとヨウ素を混合して生体への影響を弱くしたポビドンヨードがうがい薬などに使用されている。
なお、ヨウ素は、ヨウ化カリウム(KI)水溶液又はヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液に溶解させると、三ヨウ化物イオン(I )の状態になるので、そこに活性炭を含浸することで、活性炭の細孔に担持させることが可能である。
ヨウ素系消毒薬は、ウイルス、真菌、及び一部の芽胞菌を除く細菌(結核菌や一般細菌)などの微生物類に対して消毒効果があり、塩素系と同等の効力を有する中水準消毒薬である。しかしながら、ヨウ素系消毒薬は、(鳥)インフルエンザウイルスなどを殺菌する際に生体まで傷付けるおそれがある。そのため、ヨウ素系消毒薬を使用する場合、生体に対して非侵襲で殺菌する消毒薬であることが望まれる。
鳥インフルエンザは、鳥インフルエンザウイルスの感染により起きる鳥類の感染症である。鶏などの家禽類に感染すると非常に高い病原性を示す高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)は、養鶏産業の脅威となっている。H5N1亜型ウイルスなどで人間への感染も報告されており、今のところ人間に感染する危険性は低いものの、人間に感染する能力を有するウイルスに変異することが懸念されている。そのため、ウイルスを不活化して感染力を失わせる方法なども研究されており、特許文献2、3に記載されているように、燻液で鳥インフルエンザウイルスを不活化する発明も開示されている。
鳥インフルエンザ等の家畜伝染病の消毒方法としては、消石灰液(10%)を消毒薬として使用することが定められている。鳥インフルエンザ発生時には、これに従って防疫及び消毒に消石灰が使用されている。特許文献4に記載されているように、水酸化カルシウム(消石灰)を配合した水溶液でノロウイルスを不活化する発明も開示されている。
消石灰すなわち水酸化カルシウム(Ca(OH))は、固体は白い粉であり、運動場のライン引きや畑に撒かれていたが、目に入ると失明のおそれなど危険であることが指摘されている。また、水酸化カルシウムは、二酸化炭素(CO)と反応して炭酸カルシウム(CaCO)になると消毒効果を失うので、散布してすぐはウイルス等の伝染を防止することができるが、長期に渡り予防することはできないと考えられる。
消石灰を使用した消毒剤における侵襲性と持続性の問題を解決するために、発明者らは、一部の芽胞菌を除く微生物類を生体には非侵襲で殺菌するヨード活性炭(ヨウ素担持活性炭)の発明、及びウイルスや細菌類を不活化する効果が長時間持続する抗菌・抗ウイルス剤の発明について特許出願している(特許文献5、6)。
特許第4368146号公報 特許第5236339号公報 特許第5507718号公報 特許第5763546号公報 特願2017−102762号 特願2018−032302号
しかしながら、水蒸気で賦活した活性炭はアルカリ性を示すため、ヨウ素を添着させるときにヨウ素イオン又はヨウ素酸イオンが生成されやすく、活性炭から溶出してしまう性質を有しているため、抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることが困難である。
また、ヨウ素担持活性炭を様々なものに混合して抗菌・抗ウイルス効果を持たせることが検討されているが、アルカリ成分を含有する物質に混ぜると活性炭の表面においてヨウ素の活性な状態が抑制され、抗菌・抗ウイルス効果を得られない場合がある。
そこで、本発明は、活性炭に担持させるヨウ素の活性な状態を保持するとともに抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることが可能なヨウ素担持活性炭を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明であるヨウ素担持活性炭の製造方法は、活性炭にヨウ素を添着することでヨウ素担持活性炭を製造する方法であって、賦活後にアルカリ成分が残留した前記活性炭に対し、前記ヨウ素の添着時にヨウ素イオン又はヨウ素酸イオンが生成されないように予め酸処理することによって当該アルカリ成分を除去した上で、前記ヨウ素が空中に放出又は水中に溶出しないように、かつウイルス、真菌及び一部の芽胞菌を除く細菌類を前記ヨウ素で不活化すべく前記活性炭へ吸着可能に、元素状ヨウ素の状態で前記活性炭に添着する、ことを特徴とする。
また、前記ヨウ素担持活性炭の製造方法は、ヨウ素イオン又はヨウ素酸イオンの状態にならないように、前記ヨウ素を昇華させて前記活性炭の細孔に吸着させることにより、元素状ヨウ素の状態で前記活性炭に気相で添着する、ことを特徴とする。
また、本発明であるヨウ素担持活性炭は、前記方法によって製造された、ことを特徴とする。
また、本発明である抗菌・抗ウイルス剤は、前記ヨウ素担持活性炭が、吸湿性を有する水硬性無機物又はそれが混合された珪藻土に添加された抗菌・抗ウイルス剤であって、前記水硬性無機物のアルカリ成分によってウイルス、真菌及び一部の芽胞菌を除く細菌類の不活化が阻害されないように、前記活性炭は、前記ヨウ素が添着される前に予め酸処理が施される、ことを特徴とする。
また、前記抗菌・抗ウイルス剤は、前記水硬性無機物を心材とし、外殻に散在する前記ヨウ素担持活性炭の一部が当該心材に埋没することなく当該外殻に露出するように造粒される、ことを特徴とする。
また、本発明である内装材は、前記抗菌・抗ウイルス剤が使用された、ことを特徴とする。
本発明によれば、活性炭に担持させるヨウ素の活性な状態を保持するとともに抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることができる。ヨウ素を添着させる前に活性炭を酸処理しておくことで、活性炭に元素状ヨウ素を担持させることができる。活性炭からヨウ素が空気中に放出されず、かつ水中に溶出されないので、生体には非侵襲で、抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることができる。アルカリ成分を含有する物質にヨウ素担持活性炭を混ぜたとしても、活性炭の表面においてヨウ素の活性な状態が抑制されず、抗菌・抗ウイルス効果を十分に得ることができる。
本発明であるヨウ素担持活性炭の殺菌原理を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の製造方法を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭に担持させるヨウ素の化学形態を示す電位−pH図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭にヨウ素を担持させる前に酸処理を行い、その後ヨウ素を添着する処理を説明する図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の殺菌力について実験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の抗菌性について実験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の侵襲性について実験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭をケイ酸カルシウムに混合したときの抗菌性について実験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭を珪藻土に混合したときの抗菌性について実験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭を珪藻土に混合したときの防カビ性について実験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭のウイルス不活化能について試験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭のウイルス不活化能について試験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭のウイルス不活化効果の持続性について、消石灰と比較試験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の消毒効果の持続性について試験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の消毒効果の持続性について試験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭の酸処理した場合のウイルス不活化能について試験した結果を示す図である。 本発明であるヨウ素担持活性炭を混合した造粒物を示す図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
まず、本発明であるヨウ素担持活性炭について説明する。図1は、ヨウ素担持活性炭の殺菌原理を示す図である。図2は、ヨウ素担持活性炭の製造方法を示す図である。図3は、ヨウ素担持活性炭に担持させるヨウ素の化学形態を示す電位−pH図である。図4は、ヨウ素担持活性炭にヨウ素を担持させる前に酸処理を行い、その後ヨウ素を添着する処理を説明する図である。
図1に示すように、ヨウ素担持活性炭100は、活性炭300の細孔にヨウ素400を担持させることにより、活性炭300が吸着した微生物類200をヨウ素400によって不活化させる。
微生物類200は、ウイルス、真菌(菌類)及び細菌類などである。ウイルスは、大きさが約50ナノメートル(nm)程度であり、(鳥)インフルエンザウイルスやノロウイルスやエボラ出血熱ウイルスや口蹄疫ウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)などがある。なお、ウイルスは定義上生物とは言えないが、微生物類200に含まれるものとする。真菌(カビ)は、大きさが約5マイクロメートル(μm)程度の菌類であり、白癬菌などがある。細菌類は、大きさが約1マイクロメートル(μm)程度であり、枯草菌や納豆菌など耐久性の高い芽胞菌や、結核菌や大腸菌やコレラ菌やサルモネラ菌などその他の一般細菌がある。
ヨウ素担持活性炭100は、活性炭300が担持しているヨウ素400を人や動物等の生体へ侵襲させることなく、活性炭300の細孔が吸着した微生物類200をヨウ素400によって不活化する。なお、不活化は、微生物類200を死滅させ、感染力を失わせることである。具体的には、ヨウ素カチオンが生体内のタンパク質のアミノ酸残基であるシステインを酸化し、チロシンやヒスチジンをヨウ素化することでタンパク質を変質させる。不活化には、滅菌(ウイルス)、殺菌(ウイルス)、消毒、除菌(ウイルス)又は抗菌(ウイルス)等することを含むものとする。すなわち、ヨウ素400は、消毒薬や抗菌・抗ウイルス剤などとして機能する。
例えば、消毒薬には、ほとんどの芽胞菌まで効果のある高水準消毒薬、結核菌とほとんどの真菌とウイルスにも効果がある中水準消毒薬、及びほとんどの一般細菌といくつかの真菌とウイルスに効果がある低水準消毒薬がある。消毒薬に対する抵抗性は、強い方から芽胞菌、ウイルス、結核菌、一般細菌の順である。ヨウ素400は中水準消毒薬であり、ヨウ素400に対して耐久性のある一部の芽胞菌などを除く微生物類200に対して効果を有する。
活性炭300は、やし殻、木材、石炭又は石油系の原料を炭化させ賦活することで多数の細孔を形成させたものであり、破砕して粉末状にしたものや、球状など粒状に成型したものがある。活性炭300には、1グラムあたり1500ミリグラム(mg/g)程度までヨウ素400を吸着可能である。例えば、ヨウ素吸着性能が1500mg/g以下のヤシ殻活性炭や、1200〜1350mg/gの球状活性炭などがある。なお、木炭の場合は300〜400mg/gである。
また、活性炭300は、細孔の入口が狭く深めの穴が多いものや、細孔の入口が広く浅めの穴が多いものがある。細孔には、直径2ナノメートル(nm)以下のミクロ孔、直径2〜50ナノメートル(nm)のメソ孔、及び直径50ナノメートル(nm)以上のマクロ孔があるが、平均が1〜5ナノメートル(nm)であることが好ましい。また、比表面積が1グラムあたり300〜2000平方メートル(m/g)であることが好ましい。
図2に示すように、活性炭300の製造方法の例としては、まず、木材、石炭又はやし殻などの原料500を粉砕するなど予め処理しやすい形状や大きさに加工し、その原料500を約700〜800℃で酸素を遮断して加熱することにより炭化510させる。そして、約900〜1000℃で水蒸気(HO)等と反応させて賦活520し、不純物を取り除いて大きさを揃えるなど精製する。賦活により活性炭300に多数の細孔が形成され、吸着力が飛躍的に増大する。
その後、活性炭300に酸処理530等のpH調整を行った上で、活性炭300の細孔に(元素状)ヨウ素400を添着することで、ヨウ素担持活性炭100を製造する。ヨウ素担持活性炭100は、ケイ酸カルシウム等の水硬性無機物や珪藻土などと混合し、造粒物550にして消毒剤などとして利用される。さらに、建物の壁材などに添加して、抗菌性・抗ウイルス性を持たせた内装材560として利用される。
ヨウ素400を活性炭300に担持させる方法としては、まず、ヨウ素単体(I)をヨウ化カリウム(KI)水溶液又はヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液に溶解して三ヨウ化物イオン(I )の状態にする。そこに活性炭300を含浸することで、活性炭300の細孔にヨウ素400が吸着され安定保持される。
三ヨウ化物イオン[I=I−I]は、ヨウ素単体(I=I)とヨウ化物イオン(I)により生成されたポリヨウ化物であり、複数結合したヨウ素400が活性炭300の触媒作用により、活性励起状態である元素状ヨウ素(I=II=I)の状態で活性炭300に担持される。
また、ヨウ素400は常温、常圧で固体であるが、昇華性もあることから、ヨウ素400を気化させたヨウ素ガスを活性炭300に吸着させても良い。ヨウ素ガスは、原子間の結合が比較的弱いことから、高温で解離して単原子分子となることもあり、元素状ヨウ素(I)の状態で活性炭300に担持される。
元素状ヨウ素は、活性炭300の細孔表面において、2〜3次元のマルチボンドのネットワークが形成された状態となる。元素状ヨウ素は、ヨウ素単体に紫外線を照射する等によって生成されるラジカル(I)と同様であり、化学的活性度の高い状態である。活性炭300の疎水性、親油性、さらに触媒特性を利用することにより、元素状ヨウ素が安定した状態で活性炭300に保持される。元素状ヨウ素には、ヨウ素400の単原子分子だけでなくヨウ素単体を含むものとする。
ヨウ素400は、活性炭300の細孔において、ファンデルワールス力(分子間力結合)により分子吸着(共有結合)される。さらに、元素状ヨウ素の場合、複数の単原子分子がネットワーク状にマルチボンド(多重結合)することにより物理的・化学的に強く結合される。そのため、元素状ヨウ素は、化学的な活性度を長時間保ちながら、空気中に放出せず且つ水中にも溶出しない状態で、活性炭300に担持される。
ヨウ素400の沸点は184℃であり、沸点以上でヨウ素400が活性炭300から揮発離脱する。使用済みの活性炭300からヨウ素400などを揮発させ、また賦活から繰り返してヨウ素400を添着させれば、ヨウ素担持活性炭100として再利用可能である。活性炭300の細孔の閉塞や極端な還元作用が無い限り、ヨウ素400の殺菌力は持続する。なお、ヨウ素400には刺激臭があるが、活性炭300に担持された状態では、無味・無臭である。
ヨウ素400は、ヨウ素単体(I)や元素状ヨウ素(I)の状態であれば殺菌力がかなり強いが、ヨウ素イオン(I)の状態であると殺菌力が無くなる。また、三ヨウ化物イオン(I )やヨウ素酸イオン(IO )や過ヨウ素酸イオン(IO )等の状態であると殺菌力は保持されるが、水溶性であるため水に溶解して拡散すればその殺菌力は減損する。そのため、ヨウ素400には、ヨウ素イオン(ヨウ化物イオン)、三ヨウ化物イオン及び(過)ヨウ素酸イオンの状態は含まないものとする。
図3に示すように、電位が還元状態である領域600では、ヨウ素イオンの状態になるため抗菌・抗ウイルスの効果がない。また、電位が極端な酸化状態である領域610では、ヨウ素酸イオン等の状態になるため酸化力(抗菌・抗ウイルスの効果)は強いが、水溶性であるため効果が長く持続しない。
図中、太線で囲んだ三角形状の灰色の領域620においては、pH(水素イオン濃度)が中性から酸性であれば元素状ヨウ素の状態が維持され、酸化力(抗菌・抗ウイルスの効果)もあり、水にも溶けにくいため効果が長く持続する。なお、pHがアルカリ性になるとヨウ素酸イオン又はヨウ素イオンの状態になるため効果の持続性が期待できない。
活性炭300の賦活には、塩化亜鉛(ZnCl)等の薬品を用いる方法と、原料を炭化して水蒸気で細孔を形成させる方法などがあるが(図2参照)、薬品賦活法には環境問題や腐食性などの問題があることから、水蒸気賦活法が多く利用されている。
図4(a)に示すように、水蒸気賦活法の場合、原料に含まれるアルカリ金属(ナトリウムやカリウム等)及びアルカリ土類金属(マグネシウムやカルシウム等)の灰分が残留するため、賦活後の活性炭300はアルカリ性(pH9〜10程度)を示す。具体的には、原料である炭素(C)に水蒸気(HO)が結合し、炭素表面に結合した水蒸気の分解により水素(H)が放出されると、炭素表面に留まった酸素(O)により一酸化炭素(CO)が生成されることで反応(賦活)が進行する。そして、残留するアルカリ成分410により活性炭300はアルカリ性となる。
アルカリ性となった活性炭300にヨウ素400を添着させても抗菌・抗ウイルスの効果が弱いので、図4(b)に示すように、ヨウ素400を添着させる前に、塩酸、硫酸又は硝酸などの無機酸でアルカリ成分410を中和溶解させて活性炭300から除去する。そして、図4(c)に示すように、活性炭300にヨウ素400を添着させれば、活性炭300からヨウ素400の溶脱が抑制されるとともに、抗菌・抗ウイルスの効果が高い元素状ヨウ素の状態で活性炭300にヨウ素400が担持される。
ヨウ素担持活性炭100は、低濃度(2〜5%程度)の酸、アルコール、有機溶剤に対しては耐久性が強いが、高濃度のアルカリ、アルコール、有機溶剤、還元剤に対しては耐久性が弱い。また、ヨウ素担持活性炭100におけるヨウ素400の溶出性は、空気中に放出又は水中に溶出せず、水への溶解性は、ヨウ素イオン(I)として0.05%以下であり、ヨウ素単体(I)として0.05%以下である。
また、ヨウ素担持活性炭100は、金属腐食性が僅かであり、塩素に比べ低い。ヨウ素担持活性炭100は、海水中でpH5程度(酸性)であり、海水に700日浸漬したステンレス鋼耐食性試験においても、pHの変化は少なく、金属腐食性も少ない結果が出ている。すなわち、ヨウ素担持活性炭100の活性は、長時間持続するにもかかわらず、金属に対する腐食性が少ない。
ヨウ素担持活性炭100にはヨウ素400が安定的に保持されており、ヨウ素担持活性炭100から放出や溶出されるものはないので、周囲にあるものには影響を与えることなく、ヨウ素担持活性炭100に吸着されたウイルス等だけをヨウ素400によって不活化させる。すなわち、人間や動物などの生体に対して非侵襲であり、ウイルス等の微生物類200を受動的に不活化する。
活性炭300におけるヨウ素400の担持量は、活性炭300の吸着能力とヨウ素400の不活化力とのバランスにより調整する。1グラムあたり1500ミリグラム(mg/g)以下のヨウ素400を担持可能な活性炭300に対して、ヨウ素400の不活化力と、活性炭300がウイルス等を吸着する能力とから、ヨウ素400の担持量を決めれば良い。
例えば、100gの活性炭300に対し、30gのヨウ素400が担持された場合、活性炭300の残る吸着可能表面積の割合は約80%程度であり、また、ヨウ素400による不活化力の割合は約20%程度となる。ヨウ素400の殺菌力は強く、その飽和担持量に対し20%程度であっても十分な不活化力を有する。ヨウ素400が少なくても不活化力が期待できる場合は、ヨウ素400の担持率を低くして、ウイルス等の吸着能力を上げれば良い。
ヨウ素400の担持量を少なくして、活性炭300の吸着能力が充分に残っている状態にしても良いし、ヨウ素400の担持量を多くして、強い不活化効果のある状態にしても良い。ただし、ヨウ素400の担持量が多すぎると、ヨウ素担持活性炭100にウイルス等を吸着可能な表面積の割合が少なくなる。なお、鳥インフルエンザウイルスを不活化させる場合の担持量は、100〜500mg/g程度が好ましい。
例えば、鳥インフルエンザ等のウイルス200に感染した鳥類に、ヨウ素担持活性炭100として、ヨウ素400を担持させた活性炭300を混合した飼料を食べさせ、鳥類の体内でウイルス200を不活化させ、それを排泄物と共に排出させれば良い。生体に非侵襲で鳥インフルエンザウイルスを不活化すれば、ウイルスの感染拡大を抑制又は防止することができ、大量の鳥類を殺処分したり、焼却又は埋却したりすることを減らす効果が期待される。
次に、本発明であるヨウ素担持活性炭を混合した造粒物や内装材について説明する。ヨウ素担持活性炭100は、吸湿性を有する水硬性無機物又はそれが混合された珪藻土に添加しても良い。水硬性無機物としては、ケイ酸カルシウム、セメント、石膏、石灰、炭酸カルシウム等がある。ケイ酸カルシウムは、酸化カルシウム、二酸化ケイ素、水などが結合した組成物であり、石灰石と珪藻土などから得られる。珪藻土は、二酸化ケイ素を主成分とする珪藻の殻である。珪藻土を主体とする壁材は、被塗物との密着性や、塗装後のひび割れ防止対策として、水硬性無機物を添加することが好ましい。
ヨウ素担持活性炭100を混合した水硬性無機物は、ペースト状にして壁材などの内装材に噴霧したり、造粒して内装材に埋設したりすれば良い。例えば、造粒物にする場合、水硬性無機物を心材とし、外殻に散在するヨウ素担持活性炭100の一部が当該心材に埋没することなく外殻に露出するように造粒される。また、内装材にする場合、水硬性無機物を主材とし、表層に散在するヨウ素担持活性炭100の一部が当該主材に埋没することなく表層に露出するように成形される。ヨウ素担持活性炭100によって内装材に抗菌・抗ウイルスの効果を持たせることが可能となる。
ヨウ素担持活性炭100は、活性炭300の賦活後に残留したアルカリ成分によって効果が阻害されないように、ヨウ素400が添着される前に予め酸処理が施されている。さらに、水硬性無機物は吸湿性があることから、水硬性無機物のアルカリ成分によっても、ヨウ素担持活性炭100の効果を抑制されない。仮に抑制されたとしても抗菌・抗ウイルスの効果が十分に発揮されるほど元素状ヨウ素が活性化されている。なお、酸性が強いほど元素状ヨウ素は活性な状態が維持される。
次に、本発明であるヨウ素担持活性炭の有効性について説明する。図5は、ヨウ素担持活性炭の殺菌力について実験した結果を示す図である。図6は、ヨウ素担持活性炭の抗菌性について実験した結果を示す図である。図7は、ヨウ素担持活性炭の侵襲性について実験した結果を示す図である。なお、(元素状)ヨウ素を担持させた活性炭のことをヨード活性炭と言うこととし、(IodAC)と表記する。
図5(a)において、(Ref)は、大腸菌の検査等に用いられるブリリアントグリン乳糖ブイヨン(BGLB)培地の培養液に何も入れない場合、(AC)は、ヨウ素を担持していない活性炭を入れた場合、(IodAC)は、ヨード活性炭を入れた場合の結果である。また、図5(b)において、(pre−IodAC)は、培養液に鳥餌の煮汁中にヨード活性炭を6時間浸漬した後に水洗いしたものを入れた場合の結果である。なお、培養液の成分は、牛胆汁末、乳糖、ペプトン及びブリリアントグリン等である。
図5(a)に示すように、30〜35℃で27時間保管した後、(Ref)及び(AC)では大腸菌が増殖して培養液は濁ったが、(IodAC)では培養液は透明な状態が維持され、(IodAC)の強い殺菌力が認められる。また、図5(b)に示すように、30〜35℃で26時間保管した後、(pre−IodAC)でも培養液は透明な状態が維持され、(IodAC)の強い殺菌力が維持されている。
図6においては、(AC)は、生菌数測定用培地として一般的に使用される標準寒天培地にヨウ素を担持していない活性炭を入れた場合、(IodAC)は、ヨード活性炭を入れた場合の結果を示す。30〜35℃で22時間保管した後、(AC)では周りに細菌類が増殖しており、(IodAC)では周りに細菌類の増殖が抑制されたことを示す阻止円(ハロー)が出来ており、(IodAC)の抗菌性が認められる。
図7において、(ヨードI)は、鶏砂嚢にヨウ素を接触させた場合、(IodAC)は、ヨード活性炭を接触させた場合の結果を示す。常温で8時間置いた後、(ヨードI)では接触部位にヨウ素の侵襲による反応が生じているが、(IodAC)では接触部位に何の反応もなく、侵襲性がないことが分かる。
ヨウ素担持活性炭は、活性炭が担持しているヨウ素によって一部の芽胞菌を除く微生物類を死滅させるが、人間や動物などの生体に対して非侵襲で安全性があるため、受動的な不活化剤として様々な用途に応用可能である。
次に、本発明であるヨウ素担持活性炭における酸処理の有無による効果について説明する。図8は、ヨウ素担持活性炭をケイ酸カルシウムに混合したときの抗菌性について実験した結果を示す図である。図9は、ヨウ素担持活性炭を珪藻土に混合したときの抗菌性について実験した結果を示す図である。図10は、ヨウ素担持活性炭を珪藻土に混合したときの防カビ性について実験した結果を示す図である。
図8では、ケイ酸カルシウム粉末と、塩酸で酸処理を施した後に元素状ヨウ素を担持させたヨード活性炭(ヨウ素30%含有)とを、ビーカー内で均一に混練し、直径1cm程度の錠剤状に成形して試料とする。標準寒天培地を固化させた表面に大腸菌溶液を綿棒にて塗布し、その上に試料を静置して37℃で24時間培養後のハロー(発育阻止帯)の状態を観察した。
図8(a)に示すように、酸処理を施していない場合、ケイ酸カルシウム80%でヨード活性炭20%、ケイ酸カルシウム50%でヨード活性炭50%のいずれのケースにおいても試料の周りに阻止円はなく、抗菌性が認められないことが分かる。また、図8(b)に示すように、酸処理を施した場合、ケイ酸カルシウム75%でヨード活性炭25%、ケイ酸カルシウム50%でヨード活性炭50%のいずれのケースにおいても試料の周りに阻止円があり、抗菌性が確認されたことが分かる。
図9では、珪藻土をペースト状にしたものと、塩酸で酸処理を施した後に元素状ヨウ素を担持させたヨード活性炭(ヨウ素30%含有)とを、ビーカー内で均一に混練し、直径1cm程度の錠剤状に成形して試料とする。標準寒天培地を固化させた表面に大腸菌溶液を綿棒にて塗布し、その上に試料を静置して37℃で24時間培養後のハロー(発育阻止帯)の状態を観察した。
図9(a)に示すように、酸処理を施していない場合、珪藻土50%でヨード活性炭50%において試料の周りに阻止円はなく、抗菌性が認められないことが分かる。また、図9(b)に示すように、酸処理を施した場合、珪藻土50%でヨード活性炭50%において試料の周りに阻止円があり、抗菌性が確認されたことが分かる。
図10では、建物の内装材である化粧ボード上に、珪藻土のみを塗り付けた場合と、ヨード活性炭を混合した珪藻土を塗り付けた場合とを用意し、その表面全体に黒コウジカビを噴霧して湿度90%以上で温度25度前後に維持した空間に静置し、4ヶ月後の経過を観察した。
図10(a)に示すように、珪藻土のみの場合は周りからカビが侵襲して覆われ始めているが、図10(b)に示すように、ヨード活性炭を混合した珪藻土の場合はカビの侵襲を阻止している。
続いて、本発明であるヨウ素担持活性炭のウイルス不活化能について試験した結果を示す。図11、12は、ヨウ素担持活性炭のウイルス不活化能について試験した結果を示す図である。図13は、ヨウ素担持活性炭のウイルス不活化効果の持続性について、消石灰と比較試験した結果を示す図である。図14は、ヨウ素担持活性炭の消毒効果の持続性について試験した結果を示す図である。図15は、ヨウ素担持活性炭の消毒効果の持続性について試験した結果を示す図である。
なお、活性炭として、(AC)は、粒径が0.25〜0.5mmのヤシ殻活性炭を用いており、(BAC)は、粒度が0.4mm以下の球状活性炭を用いている。(IodAC)は、元素状ヨウ素を担持させた(ヤシ殻)活性炭であり、(IodBAC)は、元素状ヨウ素を担持させた球状活性炭である。
また、活性炭は、重量の10〜50%、好ましくは30%程度のヨウ素を担持させれば良い。なお、100gの活性炭に30g(重量の30%)の元素状ヨウ素を担持させたものを(IodAC−30)のように表記する。
鳥インフルエンザウイルスを10日齢発育鶏卵(SPF有精卵)の尿膜腔内に接種し、35℃にて2日間培養した後、尿膜腔液を採取したものをウイルス液とした。なお、ウイルス液は、50%発育鶏卵感染価(EID50)を算出して用いる。また、ウイルス株は、1983年に島根県に飛来したコハクチョウの糞便から分離したH5亜型低病原性鳥インフルエンザウイルスA/swan/Shimane/499/83(H5N3)株であり、ヒナで累代継代することにより高病原性を獲得することが確認されている。
まず、乾燥した(AC)、(IodAC−30)及び(IodBAC−30)を15mL又は50mLチューブに測り取り、比重が1になるように、(AC)及び(IodAC−30)には重量の1.3倍量の滅菌蒸留水をそれぞれ添加し、(IodBAC−30)には重量の0.67倍量の滅菌蒸留水を添加し混合した。
次に、ウイルス液をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)にて、約107.5EID50/0.2mLに調製した。
次に、(AC)、(IodAC−30)又は(IodBAC−30)とウイルス液とを[1:10]、[1:20]、[1:40]又は[1:100]の比率で混合し、「室温にて2分間、10分間又は1時間静置して反応」又は「室温にて10分間又は1時間連続撹拌して反応」させた。
次に、反応した液をPBSにて10倍段階で希釈し、希釈段階ごとに3個の10日発育鶏卵尿膜腔内に0.2mL宛接種し、35℃で2日間培養した。
次に、尿膜腔液を採取し、0.5%鶏赤血球浮遊液と反応させ、赤血球の凝集によりウイルス増殖の有無を判定した。なお、残存ウイルス力価(log10EID50/0.2mL)は、Reed and Muenchの方法によりEID50を算出することにより得たものであり、少ないほどウイルスが不活化されたことを示す。
図11(a)に示すように、(IodAC−30)と[10倍量]のウイルス液との反応では、「静置2分間の反応」で残存ウイルス力価を約1000分の1に減少させ、「静置10分間の反応」で残存ウイルス力価を約1万分の1に減少させ、「静置1時間の反応」で約100万分の1に減少させた。
図11(b)に示すように、(IodAC−30)と[20倍量]のウイルス液との反応では、「静置10分間の反応」で残存ウイルス力価を約100分の1に減少させた。
図12(a)に示すように、(IodAC−30)と[20倍量]及び[40倍量]のウイルス液との反応では、「連続撹拌1時間の反応」で残存ウイルス力価を大きく減少させた。
図12(b)に示すように、(IodAC−30)は、[40倍量]のウイルス液に対し、「連続撹拌10分間の反応」で残存ウイルス力価を検出限界以下に減少させ、[100倍量]のウイルス液に対し、「連続撹拌10分間の反応」で残存ウイルス力価を約300分の1に減少させた。また、(IodBAC−30)は、[40倍量]のウイルス液に対し、「連続撹拌10分間の反応」で残存ウイルス力価を約300分の1に減少させ、[100倍量]のウイルス液に対し、「連続撹拌10分間の反応」で残存ウイルス力価を約10分の1に減少させた。
(IodAC−30)及び(IodBAC−30)は、鳥インフルエンザウイルスに対して、連続撹拌により継続して接触させることで不活化効果を示し、特に(IodAC−30)の効果が高いことが確認された。
さらに、ウイルス不活化効果の持続性について、消石灰とヨード活性炭とを比較する。消石灰(水酸化カルシウム)は、その水溶液(石灰水)が強いアルカリ性を示し、酸性化した河川や土壌の中和剤や殺菌剤などに用いられる。なお、鳥インフルエンザウイルスの防疫対策として、消石灰が用いられることもある。
予め、消石灰及び(IodAC−30)をそれぞれ37.5g、500g/mの密度で均一に紙製ウエスの上に散布した後、2日ごとに2mmの降雨量相当の水を噴霧し、降水処理の翌日まで大気に曝露した。
消石灰に関しては、3日目、5日目、7日目、9日目及び28日目にサンプルを採取し、それぞれ15mLチューブに200mg測り取って、PBSを3.8mL加えて混合した後、2000rpmで2分間遠心分離した。上清の2mLを新しい15mLチューブに採取し、反応時の最終濃度を2.5%とした。
(IodAC−30)に関しては、10日目及び28日目にサンプルを採取し、それぞれ15mLチューブに100mg測り取って、PBSを1.9mL加え、反応時の最終濃度を2.5%とした。
鳥インフルエンザウイルスA/swan/Shimane/499/83(H5N3)株を10日齢発育鶏卵(SPF有精卵)の尿膜腔内に接種し、35℃にて2日間培養した後、尿膜腔液を採取したものをウイルス液とした。なお、ウイルス液は、50%発育鶏卵感染価(EID50)を算出し、PBSにて、約107.5EID50/0.2mLに調製して用いる。
まず、上記の消石灰及び(IodAC−30)をそれぞれ等量のウイルス液と混合し、室温にて10分間反応させた。なお、(IodAC−30)については、連続撹拌して反応させた。また、陰性対照として、PBSとウイルス液を同様に混合し、室温にて10分間反応させた。
次に、反応した液をPBSにて10倍段階で希釈し、希釈段階ごとに3個の10日発育鶏卵尿膜腔内に0.2mL宛接種し、35℃で2日間培養した。
次に、尿膜腔液を採取し、0.5%鶏赤血球浮遊液と反応させ、赤血球の凝集によりウイルス増殖の有無を判定した。なお、残存ウイルス力価は、Reed and Muenchの方法によりEID50を算出することにより得たものである。
図13(a)に示すように、消石灰の場合、第1回目の試験結果から、降水処理・大気曝露の3日目(3d)までは、未使用消石灰(0d)同様に残存ウイルス力価を約10万分の1以下にまで減少させたが、28日目(28d)では、抗ウイルス作用が消滅した。
また、第2回から第5回を見ると、5日目(5d)では、鳥インフルエンザウイルスの不活化効果は安定せず、7日目(7d)以降、抗ウイルス作用を示さないことが判明した。
図13(b)に示すように、(IodAC−30)の場合、10日目及び28日目においても、共に残存ウイルス力価を検出限界以下まで大幅に減少させた。
さらに、消石灰とヨード活性炭のpH(水素イオン指数)と抗菌性についても比較する。pHについては、消石灰及び(IodAC−30)の各サンプル約0.5gに水10mLを加えて測定した。
図14(a)に示すように、消石灰の場合、約10日頃から大きなpH変化(アルカリ性から中性へ低下)が見られたが、それに対し、(IodAC−30)の場合、pH変化が少なかった(酸性のまま)。
抗菌性については、まず、BGLB溶液600mLに土壌(大腸菌)12.42gを加えて加温撹拌した後、2000rpmで5分間遠心分離して液体培地とした。
各サンプルを50mL試験管に厚さ2〜3mm程度分取して液体培地30mLと混合し、36℃で43時間培養したとき、消石灰の場合、濁りが大きく抗菌性が低かったのに対し、(IodAC−30)の場合、濁りがほとんど無く抗菌性があることが確認された。
次に、標準寒天培地の表面に大腸菌群を増殖させたBGLB液体培地を均一に塗布し、そこに各サンプルを約8〜15mmφの大きさで置いてから36℃で培養し、1〜2日放置後の阻止円の大きさ(ハロー幅)を測定した。
図14(b)に示すように、消石灰の場合、1日目はハロー幅が1.5mm程度の小さな阻止円があったが、2〜3日で阻止円が消失している。それに対し、(IodAC−30)の場合、ハロー幅が3.5mm程度の大きな阻止円が20日以上維持され、抗菌性が持続していることが確認された。
消石灰は、降水・大気曝露の条件下でウイルス不活化能が1週間も持続しなかったのに対し、(IodAC−30)は、撹拌してウイルス液と作用させることで、その卓越したウイルス不活化能が約1ヶ月間ほとんど低下しないことが判明し、本発明であるヨウ素担持活性炭が極めて優れた消毒剤であることが明らかとなった。
図15に示すように、ウイルス力価に関しても、消石灰は3〜5日で抗ウイルス能力が消失したのに対し、(IodAC−30)は抗ウイルス能力が20日以上低下しなかった。すなわち、経時的な抗ウイルス性も、抗菌性の結果と同様の傾向を示すことが確認された。
次に、ウイルス不活化能についても、ヨウ素担持活性炭における酸処理の有無による効果について説明する。図16は、ヨウ素担持活性炭の酸処理した場合のウイルス不活化能について試験した結果を示す図である。図17は、ヨウ素担持活性炭を混合した造粒物を示す図である。
試験サンプルとして、(4)重量の40%の活性炭(粒径250〜500μm)を混合した珪藻土、(5)重量の40%のヨード活性炭(粒径250〜500μm、重量の30%のヨウ素を担持)を混合した珪藻土、(6)重量の40%のヨード活性炭(粒径6μm、重量の30%のヨウ素を担持)を混合した珪藻土、(7)重量の30%の活性炭を混合したケイ酸カルシウム造粒物、(8)重量の30%のヨード活性炭を混合したケイ酸カルシウム造粒物、(9)重量の50%のヨード活性炭を混合したケイ酸カルシウム造粒物(図17参照)を使用する。
試験サンプル(4)〜(9)について、それぞれの重量の半量のウイルス液を混合し、室温にて10分間反応させた。その後、SCDLP培地を加え、10倍希釈し、反応を終了させた。PBSにて10倍段階希釈し、希釈段階ごとに3個の10日齢発育鶏卵尿膜腔内に0.2mL宛接種し、35℃で2日間培養した。培養後、尿膜腔液を採取し、0.5%鶏赤血球浮遊液と反応させ、赤血球の凝集によりウイルスの増殖の有無を判定した。なお、内装材である壁材に使用される珪藻土及びケイ酸カルシウム造粒物は、吸水性があまり無いため、液量を減らしてサンプルの重量の半量のウイルス液と反応させている。
図16に示すように、試験サンプル(5)(6)のヨード活性炭を含んだ珪藻土においては、残存ウイルス力価を約5万分の1以下に減少させ、試験サンプル(8)(9)のヨード活性炭を含んだケイ酸カルシウムにおいては、100万分の1〜500万分の1以下に減少させており、残存ウイルス力価を検出限界以下に減少させたことが分かる。
本発明によれば、活性炭に担持させるヨウ素の活性な状態を保持するとともに抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることができる。ヨウ素を添着させる前に活性炭を酸処理しておくことで、活性炭に元素状ヨウ素を担持させることができる。活性炭からヨウ素が空気中に放出されず、かつ水中に溶出されないので、生体には非侵襲で、抗菌・抗ウイルス効果を長時間持続させることができる。アルカリ成分を含有する物質にヨウ素担持活性炭を混ぜたとしても、活性炭の表面においてヨウ素の活性な状態が抑制されず、抗菌・抗ウイルス効果を十分に得ることができる。
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、本発明は、人以外の動物の感染症を予防又は治療する方法に適用することができる。また、ヨウ素を担持させた活性炭と芽胞菌を併用しても良い。例えば、芽胞菌である納豆菌を担持させた活性炭と併用したときに、納豆菌を生存させたまま他の細菌類やウイルスを殺菌するので、納豆菌によって鳥類の腸内免疫力を向上させる効果も期待できる。さらに、鳥類の生息する湖沼等にヨウ素を担持させた活性炭と納豆菌を担持させた活性炭を撒くことにより、アオコや悪臭を改善する効果が期待できる。
100:ヨウ素担持活性炭
200:微生物類
300:活性炭
400:ヨウ素
410:アルカリ成分
500:原料
510:炭化
520:賦活
530:酸処理
540:ヨウ素添着
550:造粒物
560:内装材
600:領域(ヨウ素イオン)
610:領域(ヨウ素酸イオン)
620:領域(元素状ヨウ素)

Claims (6)

  1. 活性炭にヨウ素を添着することでヨウ素担持活性炭を製造する方法であって、
    賦活後にアルカリ成分が残留した前記活性炭に対し、前記ヨウ素の添着時にヨウ素イオン又はヨウ素酸イオンが生成されないように予め酸処理することによって当該アルカリ成分を除去した上で、前記ヨウ素が空中に放出又は水中に溶出しないように、かつウイルス、真菌及び一部の芽胞菌を除く細菌類を前記ヨウ素で不活化すべく前記活性炭へ吸着可能に、元素状ヨウ素の状態で前記活性炭に添着する、
    ことを特徴とするヨウ素担持活性炭の製造方法。
  2. ヨウ素イオン又はヨウ素酸イオンの状態にならないように、前記ヨウ素を昇華させて前記活性炭の細孔に吸着させることにより、元素状ヨウ素の状態で前記活性炭に気相で添着する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のヨウ素担持活性炭の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法によって製造された、
    ことを特徴とするヨウ素担持活性炭。
  4. 請求項3に記載のヨウ素担持活性炭が、吸湿性を有する水硬性無機物又はそれが混合された珪藻土に添加された抗菌・抗ウイルス剤であって、
    前記水硬性無機物のアルカリ成分によってウイルス、真菌及び一部の芽胞菌を除く細菌類の不活化が阻害されないように、
    前記活性炭は、前記ヨウ素が添着される前に予め酸処理が施される、
    ことを特徴とする抗菌・抗ウイルス剤。
  5. 前記水硬性無機物を心材とし、外殻に散在する前記ヨウ素担持活性炭の一部が当該心材に埋没することなく当該外殻に露出するように造粒される、
    ことを特徴とする請求項4に記載の抗菌・抗ウイルス剤。
  6. 請求項4又は5に記載の抗菌・抗ウイルス剤が使用された、
    ことを特徴とする内装材。
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