JP2020138137A - 分離膜および分離膜エレメント - Google Patents

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Abstract

【課題】原水供給部側での高い耐ファウリング性を実現した、分離膜エレメントの提供。【解決手段】本発明は、基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる分離膜10であって、前記分離膜が、前記分離膜の幅方向において造水量の勾配を有する分離膜および分離膜エレメント1。好ましくは、分離機能層が架橋ポリアミドであり、さらに好ましくは、分離機能層の架橋ポリアミドがアゾ基を有し、アゾ基濃度が勾配を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、液体、気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される分離膜および分離膜エレメントに関する。
海水およびかん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜に分類される。これらの膜は、例えば海水、かん水および有害物を含んだ水などからの飲料水の製造、工業用超純水の製造、並びに排水処理および有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分および分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントとしては様々な形態があるが、分離膜の一方の面に原水を供給し、他方の面から透過水を得る点では共通している。分離膜エレメントは、束ねられた多数の分離膜を備えることで、1個の分離膜エレメントあたりの膜面積が大きくなるように、つまり1個の分離膜エレメントあたりに得られる透過水の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種の形状が提案されている。
例えば、逆浸透ろ過には、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。スパイラル型分離膜エレメントは、中心管と、中心管の周囲に巻き付けられた積層体とを備える。積層体は、原水(つまり被処理水)を分離膜表面へ供給する原水側流路材、原水に含まれる成分を分離する分離膜および分離膜を透過し原水側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成される。スパイラル型分離膜エレメントは、原水に圧力を付与することができるので、透過水を多く取り出すことができる点で好ましく用いられている。
スパイラル型分離膜エレメントでは、一般的に、原水側流体の流路を形成させるために、原水側流路材として、主に高分子製のネットが使用される。また、分離膜として、積層型の分離膜が用いられる。積層型の分離膜は、原水側から透過側に積層された、ポリアミドなどの架橋高分子からなる分離機能層、ポリスルホンなどの高分子からなる多孔性樹脂層(多孔性支持層)、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子からなる不織布の基材を備えている。また、透過側流路材としては、分離膜の落込みを防ぎ、かつ透過側の流路を形成させる目的で、原水側流路材よりも間隔の細かいトリコットと呼ばれる編み物部材(緯編物とも言う)が使用される。
近年、造水コストの低減への要求の高まりから、分離膜エレメントの高性能化が求められている。例えば、特許文献1には、ポリアミドを含有するとともに、ポリアミドとアミド結合で結合した親水性高分子を有する分離機能層を備える分離膜が開示されている。また、特許文献1には、親水性高分子によって耐ファウリング性が実現されることが記載されている。
国際公開第2015/046582号
しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の技術を用いた場合においても、ファウリングを完全に抑制することは困難である。
通常の分離膜エレメントは、原水がエレメント端面から他方の端面へ流れるため濃度分極が生じやすい形態であり、特に高回収率運転(回収率:エレメントに供給する原水量に対する造水量の割合)を実施する場合には、その傾向が顕著である。一般的に分離膜エレメントは一定の造水量となるように運転する場合が多い。この場合、濃縮水排出部側で濃度分極による浸透圧の増加によって造水量が低下すると、相対的に原水供給部側の造水量を高くする必要があり、原水供給部側でファウリングが発生しやすいという問題があった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、分離膜エレメントにおいて、より高い耐ファウリング性を実現することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
[1]基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる分離膜であって、前記分離膜が、前記分離膜の幅方向において造水量の勾配を有する分離膜。
[2]前記造水量の幅方向の勾配が、前記分離膜の一方の面において低く、他方の面に向かって高くなる勾配である[1]に記載の分離膜。
[3]前記分離膜の一方の面と他方の面の造水量比が1.1以上である、[1]または[2]に記載の分離膜。
[4]前記分離膜が分離機能層の形成手段によって造水量の勾配が設けられている[1]〜[3]のいずれか1項に記載の分離膜。
[5]前記分離機能層が架橋ポリアミドである[1]〜[4]のいずれか1項に記載の分離膜。
[6]基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる分離膜が集水管の周りに巻回された分離膜エレメントであって、 前記集水管の長手方向端部に、それぞれ原水供給部と濃縮水排出部を備え、前記原水供給部側の分離膜と前記濃縮水排出部側の分離膜において造水量の勾配を有する分離膜エレメント。
[7]前記造水量の勾配が、前記原水供給部側の分離膜において低く、前記濃縮水排出部側の分離膜に向かって高くなる勾配である[6]に記載の分離膜エレメント。
[8]前記原水供給部側の分離膜と前記濃縮水排出部側の分離膜の造水量比が1.1以上である[6]または[7]に記載の分離膜エレメント。
[9]前記分離機能層が架橋ポリアミド形成後の後処理によって造水量の勾配が設けられている[6]〜[8]のいずれか1項に記載の分離膜エレメント。
本発明の分離膜エレメントは、分離膜が原水供給部側から濃縮水排出側に向かって高くなる勾配を有しているので、濃度分極発生時にも原水供給部側の造水量が高くなることを抑制することができる。その結果、分離膜エレメント幅方向の造水量が均一化されるので、原水供給部側でのファウリングが生じ難く、性能安定性に優れた分離膜エレメントを得ることができる。
一般的な分離膜エレメントの一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施の一形態について、詳細に説明する。
1.分離膜エレメント
図1に示すように、分離膜エレメント1は、集水管6と、集水管6の周囲に巻回された膜リーフ3とを備える。また、分離膜エレメントは、供給側流路材2および端板等の部材をさらに備える。
膜リーフ3は、分離膜10と、分離膜10の透過側の面に配置された透過側流路材4とを備える。
膜リーフ3は、透過側の面を内側に向けた矩形状の封筒状膜5を形成する。封筒状膜5は、透過水が集水管6に流れるように、その一辺のみにおいて開口し、他の三辺においては封止される。透過水はこの封筒状膜によって供給水から隔離される。
供給側流路材2は、封筒状膜5の間、つまり分離膜の供給側の面の間に配置される。供給側流路材2および複数の封筒状膜5は、重なった状態で、集水管6の周囲に巻き付けられる。
分離膜エレメント1の長手方向における一端から供給された原水(図中に「供給水7」として示す。)は、供給側流路材2によって形成された流路を通って、分離膜10に供給される。
分離膜10を透過した水(図中に「透過水8」として示す。)は、透過側流路材4によって形成された流路を通って集水管6に流れこむ。こうして、透過水8は、集水管6の一端から回収される。
一方、分離膜10を透過しなかった水(図中に「濃縮水9」として示す)は、分離膜エレメント1の他端から回収される。
図1に示す分離膜エレメント1は、集水管と、集水管の周囲に巻回された分離膜とを備えるスパイラル型分離膜エレメントの構成の一例であり、本発明はこの形態に限定されるものではない。
2.分離膜
分離膜とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得ることができる膜である。分離膜は、基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える。分離機能層は、分離膜において溶質の分離機能を担う層である。一方、支持膜は実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離性能を有する分離機能層に強度を与えるためのものである。
(2−1)分離機能層
分離機能層は、孔径制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという点で架橋高分子が好ましく、特に、原水中の成分の分離性能に優れるという点で、架橋ポリアミドが好ましく使用される。
架橋ポリアミドは、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重合物であることが好ましい。ここで、多官能アミンは、芳香族多官能アミン及び脂肪族多官能アミンから選ばれた少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が例示される。また、そのN−アルキル化物として、N,N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミン等が例示される。性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミン(以下、m−PDAという。)、または1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
また、脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミン及びその誘導体である。例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミン等が例示される。性能発現の安定性から、特に、ピペラジンまたは2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。
架橋ポリアミドは、多官能アミンに由来するモノマーユニットを1種のみ含んでもよいし、2種類以上を含んでもよい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記多官能アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸等のハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロライド(以下、TMCという。)が好ましい。架橋ポリアミドは、多官能酸ハロゲン化物に由来するモノマーユニットを1種のみ含んでもよいし、2種類以上を含んでもよい。
(2−2)支持膜
支持膜は、基材と多孔性支持層とを備えるものであり、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する分離機能層に強度を与えるためのものである。
多孔性支持層に使用される材料やその形状は特に限定されないが、例えば、多孔性樹脂によって基板上に形成されてもよい。多孔性支持層としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合、積層したものが使用される。中でも、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
多孔性支持層は、分離膜に機械的強度を与え、かつイオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離機能層のような分離性能を有さない。多孔性支持層の有する孔のサイズおよび孔の分布は特に限定されないが、例えば、多孔性支持層は、均一で微細な孔を有してもよいし、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面(基材側)にかけて径が徐々に大きくなるような孔径の分布を有してもよい。
なお、いずれの場合でも、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて測定された細孔の投影面積円相当径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。特に界面重合反応性および分離機能層の保持性の点で、多孔性支持層において分離機能層が形成される側の表面における孔は、3nm以上50nm以下の投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性支持層の厚みは特に限定されないが、分離膜に強度を与えるため等の理由から、20μm以上500μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3kV〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、株式会社日立製作所製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真に基づいて、多孔性支持層の膜厚、表面の投影面積円相当径を測定することができる。
多孔性支持層の厚みおよび孔径は、平均値であり、多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点の厚みを測定した平均値である。また、孔径は、200個の孔について測定された、各投影面積円相当径の平均値である。
(2−3)基材
基材としては、強度、凹凸形成能および流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。繊維状基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じることを抑制できる。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布と比べて、高分子溶液流延時に繊維の毛羽立ちによって起きる不均一化および膜欠点の発生を抑制することができる。さらに、分離膜は、連続製膜されるときに、製膜方向に対し張力がかけられるので、寸法安定性に優れる長繊維不織布を基材として用いることが好ましい。
(2−4)造水量
本発明の分離膜は、一方向において造水量の勾配を有する。すなわち、分離膜は、一方向において、造水量の異なる領域を有する。
通常、連続的な製膜を行うと、製膜方向に長い膜が得られる。このような長尺上の膜においては、その長手方向に垂直な方向を幅方向と呼ぶ。「一方向」は、この幅方向であることが好ましい。また、後述のスパイラル型分離膜エレメントにおいては、「一方向」は集水管の長手方向であることが好ましい。
分離膜の造水量は、一方向において単調性を有することが好ましい。つまり、一方向において、造水量は、単調に増加する(あるいは単調に減少する)ことが望ましい。「単調に増加する」とは、一方向において、分離膜を第1、第2・・・第n領域に区切ったときに、x<y<zであって、第x領域の造水量Fx、第y領域の造水量Fy、第z領域の造水量Fzが、Fx≦Fy≦Fzであって、かつF1<Fnであることを意味する。なお、同方向の逆から番号を付ければ、単調に減少することになる。例えば、分離膜について、一方向における一端からその領域までの距離を横軸に、その領域の造水量を縦軸としたグラフは、直線、階段状、上に凸な曲線、下に凸な曲線またはそれらの組み合わせとして描くことができる。
スパイラル型エレメントにおいては、低い造水量を示す領域端部を分離膜エレメントの原水供給部側、高い造水量を示す領域を濃縮水排出部側に配置することにより、分離膜エレメントの濃縮水排出部側で濃度分極が発生しても分離膜エレメント原水供給部側の造水量向上を抑制し、原水供給部側でのファウリング発生を抑制できるという利点を有する。
また、分離膜の幅方向における造水量の勾配が緩やかな領域と、幅方向における造水量の勾配が急な領域と、を有することが好ましい。特に、造水量が低い部分で勾配が緩やかであり、かつ、造水量の高い部分で勾配が急であることが好ましい。このような構成によると、塩濃度分極により急激に造水量が変化する濃縮水排出部側の造水量低下を緩やかにすることができるため、分離膜エレメント全体としての造水量をさらに平坦化することができる。
造水量の勾配が緩やかである領域とは、造水量の勾配が相対的に小さな値で連続している領域である。また、造水量の勾配が急な領域とは、造水量の勾配が相対的に大きな値で連続している領域であり、例えば、分離膜を低造水量条件で製膜した領域から高造水量条件で製膜した領域へ遷移する領域等が挙げられる。勾配が緩やかな領域と急な領域とは、巨視的に区別される。なお、造水量の勾配が緩やかな領域には、造水量の勾配が一定な領域が含まれる。
分離膜において、造水量の高い領域と低い領域の造水量比は原水の塩濃度と塩濃度分極の度合によって適宜決定されるが、通常1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。造水量比が上記範囲内であることにより、分離膜エレメントの濃縮水排出部側で濃度分極が発生した場合にも分離膜エレメント全体としての造水量を平坦化することができる。
造水量の厚み方向の勾配が、本態様のようになっているか否かの判断は、分離膜幅方向の造水量を測定することにより判断することができる。分離膜幅方向の造水量を測定する方法としては、例えば、直径30mmとなるように円形に分離膜を切断し、温度25℃、pH7、塩化ナトリウム濃度200ppmに調整した評価水を操作圧力0.41MPaで供給して膜ろ過処理を行い、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)に換算した値を造水量(m/m/日)として測定する方法が挙げられる。
なお、分離膜の造水量の勾配は、連続的に変化する形態に限定されるものではなく、不連続に変化してもよい。
3.分離膜の製造方法
次に、上記分離膜の製造方法について説明する。製造方法は、支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
(3−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程および溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃〜60℃の範囲が好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって得られる支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる分離膜も変化する。凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10℃〜50℃である。凝固浴の温度がこの範囲以内であれば、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、膜形成後の膜表面の平滑性が保たれる。また温度がこの範囲内であれば凝固速度が適当で、製膜性が良好である。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は40℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60℃〜95℃である。この範囲内であれば、支持膜の収縮度が大きくならず、透過水量が良好である。また、温度がこの範囲内であれば洗浄効果が十分である。
(3−2)分離機能層の形成工程
次に、分離膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド分離機能層を形成する。
多官能酸ハロゲン化物を溶解する有機溶媒としては、水と非混和性のものであって、支持膜を破壊しないものであり、かつ、架橋ポリアミドの生成反応を阻害しないものであればいずれであってもよい。代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮すると、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能アミン水溶液や多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、両成分間の反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、多官能アミン水溶液で支持膜表面を被覆する。多官能アミン水溶液で支持膜表面を被覆する方法としては、支持膜の表面がこの水溶液によって均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、水溶液を支持膜表面にコーティングする方法、支持膜を水溶液に浸漬する方法等で行えばよい。
本発明では、分離膜幅方向において造水量の勾配を設けるため、多官能アミン水溶液の濃度を幅方向で変え、膜表面にコーティングすることができる。多官能アミン水溶液の濃度を幅方向で変える手法としては、例えば膜面の幅方向において複数箇所から多官能アミン水溶液を滴下し、それぞれ多官能アミン水溶液に濃度差を設けることが挙げられる。多官能アミン水溶液の濃度が低い部分が高造水量、高い部分が低造水量化した分離膜を得ることができる。
幅方向は、膜の説明における第1方向である。また、長尺状の基材を製造ライン上で移動させながら連続的に支持層、分離機能層を形成する場合に、幅方向とは、膜の長手方向に垂直な方向、つまり膜の移動する方向に垂直な方向である。
ここで、多官能アミンを含有する水溶液の濃度は、0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下である。多官能アミン水溶液の濃度が低い部分の濃度A(重量%)と高い部分の濃度B(重量%)は、B/A≧1.3の関係式を満たすことが好ましい。また、比B/Aは、エレメント運転時の塩濃度により適宜設定されるが、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.0以上である。
支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。次いで、過剰に塗布された水溶液を液切り工程により除去することが好ましい。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。
その後、多官能アミン水溶液で被覆した支持膜に、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布し、界面重縮合により架橋ポリアミドの分離機能層を形成させる。界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。
有機溶媒溶液における多官能酸ハロゲン化物の濃度は、特に限定されないが、低すぎると活性層である分離機能層の形成が不十分となり欠点になる可能性があり、高すぎるとコスト面から不利になるため、0.01重量%以上1.0重量%以下程度が好ましい。
本発明では、分離膜幅方向において造水量の勾配を設けるため、有機溶媒溶液における多官能酸ハロゲン化物の濃度を幅方向で変え、塗布することができる。多官能酸ハロゲン化物の濃度を幅方向で変える手法としては、例えば膜面の幅方向において複数箇所から有機溶媒溶液を滴下し、それぞれ多官能酸ハロゲン化物に濃度差を設けることが挙げられる。多官能酸ハロゲン化物の濃度が低い部分が高造水量、高い部分が低造水量化した分離膜を得ることができる。
ここで、有機溶媒溶液における多官能酸ハロゲン化物の濃度は、特に限定されないが、低すぎると活性層である分離機能層の形成が不十分となり欠点になる可能性があり、高すぎるとコスト面から不利になるため、0.01重量%以上1.0重量%以下程度が好ましい。有機溶媒溶液における多官能酸ハロゲン化物の濃度が低い部分と高い部分の濃度は、目的とする分離機能層の造水量に合わせて適宜設定することができる。分離機能層形成時のモノマーバランスの観点からは、多官能アミン水溶液の濃度/多官能酸ハロゲン化物の濃度比を、幅方向で等しくすることが好ましい。
次に、反応後の有機溶媒溶液を液切り工程により除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下の間にあることが好ましく、1分以上3分以下の間であるとより好ましい。把持する時間が1分間以上であることで目的の機能を有する分離機能層を得やすく、3分間以下であることで有機溶媒の過乾燥による欠点の発生を抑制できるので、性能低下を抑制することができる。
(3−3)その他の処理
上記方法により得られた分離膜は、50〜150℃、好ましくは70〜130℃で、1秒〜10分間、好ましくは1分〜8分間熱水処理する工程などを付加することにより、分離膜の除去性能および透水性を向上させることができる。
また、本発明で得られる分離膜は、熱水処理後に分離機能層上の第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)と接触させ、その後前記化合物(I)との反応性をもつ水溶性化合物(II)を接触させる工程を含むことにより、塩除去率をさらに向上させることができる。
接触させる第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)としては、亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。
一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
前記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)、例えば亜硝酸ナトリウムの濃度は、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。この範囲であると十分なジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する効果が得られ、溶液の取扱いも容易である。
本発明では、分離膜幅方向において造水量の勾配を設けるため、前記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)の濃度を幅方向で変えることも好ましい態様である。化合物(I)の濃度を幅方向で変える手法としては、例えば膜面の幅方向において複数箇所から化合物(I)の溶液を滴下し、それぞれ化合物(I)に濃度差を設けることが挙げられる。化合物(I)の濃度が低い部分が低造水量、高い部分が高造水量化した分離膜を得ることができる。
該化合物(I)の温度は15℃〜45℃が好ましい。この範囲だと反応に時間がかかり過ぎることもなく、亜硝酸の分解が早過ぎず取り扱いが容易である。
該化合物(I)との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがより好ましい。
また、接触させる方法は特に限定されず、該化合物(I)の溶液を塗布(コーティング)しても、該化合物の溶液に該分離膜を浸漬させてもよい。該化合物(I)の濃度差により造水量の勾配を設ける場合には、コーティングにより接触させることが好ましい。該化合物を溶かす溶媒は該化合物が溶解し、該分離膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、第一級アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
次に、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成した分離膜を、ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる。ここでジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、フェノール類、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。
亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンと反応させると瞬時に置換反応が起こり、アミノ基がスルホ基に置換される。また、芳香族アミン、フェノール類と接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族を導入することが可能となる。これらの化合物は単一で用いてもよく、複数混合させて用いてもよく、異なる化合物に複数回接触させてもよい。接触させる化合物として、好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンである。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる濃度と時間は、目的の効果を得るために適宜調節することができる。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる温度は10〜90℃が好ましい。この温度範囲であると反応が進みやすく、一方ポリマーの収縮による透過水量の低下も起こらない。
本発明の分離膜は、さらに、分離機能層表面に水可溶性有機重合体を配して膜表面の親水性を向上させることが好ましい。水可溶性有機重合体としては、ビニル系合体や縮合系重合体、付加系重合体などを用いることができ、特に、重合体中に非イオン系の親水性基を有するものが好ましい。この親水性基としては、水酸基(−OH)やエーテル基(−O−)、アミノ基(−NH)などが好ましい。このうち、水酸基を含む水可溶性有機重合体としては、たとえば、ポリビニルアルコールや、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などを用いることができ、アミノ基を含むものとしては、ポリアリルアミンや、ポリエチレンイミン、ポリエピアミノヒドリン、アミン変性ポリエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アミドなどを用いることができる。これらは、単独で用いてもよいが、ポリエチレンイミンとポリビニルアルコールを混合して用い、第2アミンと水酸基とを導入すると好ましい。
これら重合体の水溶液濃度は、0.01〜30重量%の範囲内にあると好ましく、0.01〜10重量%の範囲内にあるとより好ましく、0.01〜5重量%の範囲内にあるとさらに好ましい。濃度が、0.01重量%を下回ると、分離機能層表面に均一に被覆しにくくなり、また30重量%を上回ると、得られる水不溶性の架橋重合体の厚みが増し、架橋重合体の抵抗による造水量の低下が見られるようになる。
水可溶性有機重合体を架橋する方法として、酸またはアルカリ触媒存在下で熱架橋し、水不溶性の架橋重合体を得る方法を用いることができる。酸としては、無機酸でも有機酸でもよく、たとえば、塩酸を使用する場合、その濃度は0.01〜1.0モル/リットルの範囲内にあることが好ましく、0.01〜0.5モル/リットルの範囲内にあるとより好ましく、0.01〜0.3モル/リットルの範囲内にあるとさらに好ましい。濃度が0.01モル/リットルを下回ると、触媒としての機能が発現しにくくなり、1.0モル/リットルを超えると、架橋反応を阻害する傾向がみられる。
上記の架橋反応は、たとえば、残存する酸ハライドとポリビニルアルコールの水酸基が反応すればエステル結合で架橋された水不溶性ポリビニルアルコールとなり、ポリアリルアミンやポリエチレンイミンのアミノ基と反応すればアミド結合で架橋された構造の分離機能層を得ることができる。ケン化度の高いポリビニルアルコールは酸、アルカリ触媒のもとで熱を加えると、ポリビニルアルコール鎖が相互の水素結合により水不溶性となる。また、水可溶性有機重合体を架橋するものとして、多官能アルデヒドも用いることができる。たとえば、グルタルアルデヒドで架橋後熱処理を行うと、水不溶性の架橋重合体となる。
熱架橋を行う際の加熱方法としては、たとえば、熱風を吹き付ける方法を用いることができる。その場合の加熱温度は、30〜150℃の範囲内にあることが好ましく、30〜130℃の範囲内にあるとより好ましく、60〜130℃の範囲内にあるとさらに好ましい。加熱温度が30℃を下回ると、十分な加熱が行われず架橋反応速度が低下する傾向にあり、150℃を超えると副反応が進行しやすくなる。
また、上記水溶液には、架橋剤として、グリオキサールやグルタルアルデヒドなど、1分子中に少なくとも2個の官能基を有するアルデヒドを添加することもできる。添加濃度としては、0.01〜5.0重量%の範囲内にあることが好ましく、0.01〜1.0重量%の範囲内にあるとより好ましく、0.01〜0.5重量%の範囲内にあるとさらに好ましい。濃度が0.01重量%を下回ると、架橋密度が低くなり架橋重合体の水不溶性が不十分となりやすく、5.0重量%を上回ると、架橋密度が高くなり造水量が低くなる傾向がみられ、さらに、架橋反応が急激に進み室温でゲル化が起こり、均一塗布ができにくくなる。
4.分離膜エレメントの製造方法
分離膜エレメントの製造には、従来のエレメント製作装置を用いることができる。また、エレメント作製方法としては、参考文献(特公昭44−14216、特公平4−11928、特開平11−226366)に記載される方法を用いることができる。詳細には以下の通りである。
(4−1)供給側流路の形成
供給側流路材が、ネット等の連続的に形成された部材である場合は、分離膜と供給側流路材とを重ね合わせることで、供給側流路を形成することができる。
また、分離膜に樹脂を直接塗布することで、不連続な、または連続な形状を有する供給側流路材を形成することができる。分離膜本体に固着された供給側流路材によって形成される場合も、供給側流路材の配置が分離膜の製造方法の一部と見なされてもよい。
また、分離膜本体を凹凸加工することで、流路を形成してもよい。凹凸加工法としては、エンボス成形、水圧成形、カレンダ加工といった方法が挙げられる。エンボス加工の条件、エンボス加工形状等は、求められる分離膜エレメントの性能等に応じて変更可能である。この凹凸加工は、分離膜の製造方法の一部と見なされてもよい。
(4−2)分離膜の積層および巻回
1枚の分離膜を透過側面が内側を向くように折り畳んで貼り合わせることで、または2枚の分離膜を透過側面が内側を向くように重ねて貼り合わせることで、封筒状膜5が形成される。上述したように、封筒状膜は三辺が封止される。封止は、接着剤またはホットメルト等による接着、熱またはレーザによる融着等により実行できる。
封筒状膜の形成に用いられる接着剤は、粘度が40PS以上150PS以下の範囲内であることが好ましく、さらに50PS以上120PS以下がより好ましい。分離膜にしわが発生すると、分離膜エレメントの性能が低下することがあるが、接着剤粘度が、150PS以下であることで、分離膜を集水管に巻囲するときに、しわが発生しにくくなる。また、接着剤粘度が40PS以上である場合、分離膜間からの接着剤の流出が抑制され、不要な部分に接着剤が付着する危険性が低下する。
接着剤の塗布量は、分離膜が集水管に巻囲された後に、接着剤が塗布される部分の幅が10mm以上100mm以下であるような量であることが好ましい。これによって、分離膜が確実に接着されるので、原流体の透過側への流入が抑制される。また、有効膜面積も比較的大きく確保することができる。
接着剤としてはウレタン系接着剤が好ましく、粘度を40PS以上150PS以下の範囲とするには、主剤のイソシアネートと硬化剤のポリオールとが、イソシアネート:ポリオール=1:1〜1:5の割合で混合されたものが好ましい。接着剤の粘度は、予め主剤、硬化剤単体、及び配合割合を規定した混合物の粘度をB型粘度計(JIS K 6833)で測定される。
こうして接着剤が塗布された分離膜は、封筒状膜の閉口部分が巻回方向内側に位置するように配置され、集水管の周囲に分離膜を巻きつけられる。こうして、分離膜がスパイラル状に巻回される。本発明では幅方向において造水量の勾配を有する分離膜について、分離膜エレメントの原水側が低造水量、濃縮水側が高造水量となるように配置することが必要である。
(4−3)その他の工程
分離膜エレメントの製造方法は、上述のように形成された分離膜の巻回体の外側に、フィルムおよびフィラメント等をさらに巻きつけることを含んでいてもよいし、集水管の長手方向における分離膜の端を切りそろえるエッジカット、端板の取り付け等のさらなる工程を含んでいてもよい。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、表中の開口率について、逆L型分離膜エレメントでは濃縮水排出部、それ以外の形態の分離膜エレメントでは原水供給部の開口率を指す。
(NaCl除去率)
直径30mmにカットした円形分離膜に、温度25℃、pH7、塩化ナトリウム濃度200ppmに調整した評価水を操作圧力0.41MPaで供給して膜ろ過処理を行なった。供給水及び透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製の電気伝導度計「WM−50EG」で測定して、それぞれの実用塩分、すなわちNaCl濃度を得た。こうして得られたNaCl濃度及び下記式に基づいて、NaCl除去率を算出した。
NaCl除去率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}
(造水量)
前項の試験において、供給水(NaCl水溶液)の膜透過水量を測定し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)に換算した値を造水量(m/m/日)とした。
(分離膜エレメント性能)
供給水として、全炭素(TC)35ppm、全有機炭素(TOC)3.8ppm、TDS濃度350ppm、pH7.3の中国上海市水道水を用い、運転圧力0.41MPa、温度25℃の条件下で30分間運転した後に1分間のサンプリングを行い、1日当たりの透水量を造水量(m/日)として示した。また塩除去率は、上記のNaCl除去率と同様に求めた。
(造水量低下率)
分離膜エレメントの初期造水量を測定後、300hr運転を行った後の造水量を同様に測定し、下記式から造水量低下率を算出した。
造水量低下率(%)=100×(1−(300hr後の造水量)/(初期造水量))
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(繊度:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1cc/cm/sec、密度0.80g/cm)上にポリスルホンの17.0重量%N,N−ジメチルホルムアミド溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置し、80℃の温水で1分間浸漬することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる、多孔性支持体(厚み130μm)ロールを作製した。
その後、多孔性支持体の表面に、製膜幅方向3か所に設置したノズルからそれぞれm−PDAを2.8重量%、2.0重量%、1.5重量%含む水溶液を滴下し、過剰な液を除去した。さらに、エアーノズルから窒素を吹き付けることで、支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。
その後、TMC0.08重量%を含むn−デカン溶液を、支持膜の表面が完全に濡れるように塗布してから、1分間静置した。その後、支持膜から余分な溶液をエアブローで除去し、80℃の熱水で1分間洗浄した。
その後、親水性分子であるグリセリンの水溶液で、85%に加湿した25℃の恒温装置内にて、分離膜を10分間静置することにより親水化処理を行った(以下、「親水化工程」)後、60℃で2分間の乾燥処理を行い(以下、「乾燥工程」)、分離膜ロールを得た。
このようにして得られた分離膜を、分離膜エレメントでの有効面積が0.45mになるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:700μm、ピッチ:3mm×3mm、繊維径:0.35mm、投影面積比:0.18)を供給側流路材として挟み込み、次いでトリコット(厚み:260μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を透過側流路材として積層して、254mmの幅を有する2枚の封筒状膜を作製した。
こうして得られた封筒状膜を集水管にスパイラル状に巻き付け、巻囲体を得た。巻囲体の外周にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット及び端板取りつけを行うことで、2インチ分離膜エレメントを作製した。
(実施例2〜3、比較例1)
実施例1において、多孔性支持体の表面に塗布するm−PDAの濃度を表1の通りに変更して分離膜エレメントを作製した。
以上の結果を表1に示す。これらの結果より、本発明の構成により、優れた造水安定性を示す分離膜エレメントが得られることがわかる。
(実施例4)
比較例1において、分離膜ロール作製後、TMCを含むn−デカン溶液の塗布において、製膜幅方向3か所に設置したノズルからそれぞれTMCを0.15重量%、0.09重量%、0.06重量%含むn−デカン溶液を塗布する以外は比較例1と同様にして分離膜エレメントを作製した。
(実施例5〜6)
実施例4において、TMCを含むn−デカン溶液の塗布濃度を表2の通りに変更して分離膜エレメントを作製した。
以上の結果を表2に示す。これらの結果より、本発明の構成により、優れた造水安定性を示す分離膜エレメントが得られることがわかる。
(実施例7)
比較例1において、分離膜ロールを得た後に、製膜幅方向3か所に設置したノズルからそれぞれpH3、35℃に調整した亜硝酸ナトリウム水溶液を0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%含む水溶液を塗布し、次に0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に35℃で2分間浸漬する以外は比較例1と同様にして分離膜エレメントを作製した。
(実施例8〜9、比較例2)
実施例7において、亜硝酸ナトリウムの塗布濃度を表3の通りに変更して分離膜エレメントを作製した。
以上の結果を表3に示す。これらの結果より、本発明の構成により、優れた造水安定性を示す分離膜エレメントが得られることがわかる。
本発明の分離膜および分離膜エレメントおよび分離膜の製造方法によれば、高回収率で運転を行った際にも、原水中の分離成分濃縮による分離性能及び寿命期間の低下の影響を低減することができ、長期間に亘って安定的に、かつ高い造水量及び分離性能を維持したまま運転することが可能となる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
1 分離膜エレメント
2 供給側流路材
3 膜リーフ
4 透過側流路材
5 封筒状膜
6 集水管
7 供給水
8 透過水
9 濃縮水
10 分離膜

Claims (9)

  1. 基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる分離膜であって、
    前記分離膜が、一方向において造水量の勾配を有する分離膜。
  2. 前記造水量の勾配が、前記一方向において、一端から他端に向けて高くなる勾配である請求項1に記載の分離膜。
  3. 前記分離膜内で、造水量が最も低い箇所と最も高い箇所とで、造水量比が1.1以上である請求項1〜2のいずれか1項に記載の分離膜。
  4. 造水量の前記勾配が、前記分離機能層の組成または構造の違いによって設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離膜。
  5. 前記分離機能層が架橋ポリアミドである請求項1〜4のいずれか1項に記載の分離膜。
  6. 前記分離機能層が架橋ポリアミドであり、かつ、
    前記一方向において、前記架橋ポリアミドがアゾ基を有し、アゾ基濃度が勾配を有する
    請求項4に記載の分離膜。
  7. 基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる分離膜が集水管の周りに巻回された分離膜エレメントであって、
    前記集水管の長手方向端部に、それぞれ原水供給部と濃縮水排出部を備え、
    前記分離膜が、前記集水管の長手方向において、造水量の勾配を有する分離膜エレメント。
  8. 前記造水量の勾配が、前記原水供給部側の分離膜において低く、前記濃縮水排出部側の分離膜に向かって高くなる勾配である請求項7に記載の分離膜エレメント。
  9. 基材及び多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層からなる分離膜の製造方法であって、
    前記多孔性支持層上で多官能アミンを含む水溶液と多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒とを接触させることで前記分離機能層を形成する分離機能層形成工程を有し、
    前記分離機能層形成工程において、複数箇所から多官能アミン水溶液を滴下し、前記多官能アミン水溶液の濃度に第1方向に沿った勾配を設ける工程A、
    前記分離機能層形成工程において、複数箇所から多官能酸ハロゲン化物を滴下し、前記多官能酸ハロゲン化物水溶液の濃度に第1方向に沿った勾配を設ける工程B、
    前記分離機能層を形成した後に、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)を含有する水溶液を複数箇所から滴下し、化合物(I)を含有する前記水溶液の濃度に第1方向に沿った勾配を設ける工程C、
    のいずれかを行う分離膜の製造方法。
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