JP2019081147A - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents

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Yoshiki Nishiguchi
芳機 西口
修治 古野
Shuji Furuno
修治 古野
清彦 高谷
Kiyohiko Takaya
清彦 高谷
晃平 倉岡
Kohei Kuraoka
晃平 倉岡
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博之 山田
雅樹 東
Masaki Azuma
雅樹 東
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Shoji Nishimura
将司 西村
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Abstract

【課題】中間製品の巻き長さを長くした場合においても、巻きシワや巻きズレの発生を防ぐことができ、製造コストの低減を図ることができる複合半透膜の提供。【解決手段】基材の上に多孔性支持層を有し、さらにその上に分離機能層を配した複合半透膜において、複合半透膜を幅方向に5つの領域に等分割し、順にそれぞれの領域の複合半透膜の平均厚みをt1〜t5としたときに以下の式を満たす複合半透膜。1μm≦(t1+t5)/2−t3/2≦10μm、t1>t2>t3、t5>t4>t3【選択図】図1

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜およびその製造方法に関する。本発明に係る複合半透膜は、例えば海水やかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源類のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。なかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透水性や塩除去率の高い分離法として広く用いられている。(特許文献1、2)
特開平9−19630号公報 特開2005−169332号公報
複合半透膜は製造された後、巻芯の周りに一旦巻き付けられ、ロールを形成する。エレメント組立時には、複合半透膜はこのロールから引き出されて、エレメントに適した長さに切断される。
ロールに巻き付けるときには、巻芯に複合半透膜の端部を粘着テープで固定する。粘着テープを複合半透膜から外しても、粘着物が複合半透膜に残ったり、複合半透膜の一部が剥がれたりするため、複合半透膜の巻芯側の端部において一定の領域は、エレメントに適用されずに廃棄される。1つのロールを形成する複合半透膜の長さが短いほど、つまりロールの径が小さいほど、ロールに含まれる複合半透膜における廃棄する部分の占める割合が大きくなる。しかし、ロール径を大きくすると、廃棄する部分の割合は小さくなるものの膜の巻き数が大きくなるので、シワおよびズレが大きくなるリスクが高まる。
そこで本発明の目的は、ロール状に巻かれる膜の長さを長くした場合においても、シワおよびズレの発生を抑制することができる複合半透膜を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の複合半透膜は下記の構成からなるものである。
<1> 基材と、前記基材上の多孔性支持層と、前記多孔性支持層上の分離機能層と、を有する複合半透膜であって、
前記複合半透膜をR1〜R5の領域に幅方向に順に等分割すると、それぞれの領域の平均厚みt1〜t5が以下の式を満たす複合半透膜。
1μm≦(t1+t5)/2−t3≦10μm (1)
t1>t2>t3 (2)
t5>t4>t3 (3)
<2>下記式を満たす前記<1>に記載の複合半透膜。
|t1−t5|≦10μm (4)
<3>領域R1〜R5の多孔性支持層の平均厚みs1〜s5が、以下の式を満たす<1>または<2>に記載の複合半透膜。
s1>s2>s3 (5)
s5>s4>s3 (6)
本発明によって、中間製品の巻き長さを長くした場合においても、巻きシワや巻きズレの発生を防ぐことができ、その結果、複合半透膜の製造コストの低減を図ることができる。
本発明の実施の一形態にかかる複合半透膜の断面図である。 複合半透膜のロールにおける領域R1〜R5を模式的に示す図である。 分離膜エレメントの構造を示す図面である。
1.複合半透膜
(1−1)複合半透膜全体
本発明の複合半透膜は、図1に示すように、基材と、前記基材上の多孔性支持層と、前記多孔性支持層上の分離機能層とを備える。本発明の複合半透膜は、その厚みが幅方向で変化することを特徴とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、幅方向における複合半透膜の中央部の厚みが端部に比べて薄いことで、図2に示すように複合半透膜をロール状に巻いたときにシワおよびズレが生じにくく、生じてもその程度が小さく抑えられることを見出した。
幅方向の両端部が厚い場合、中間製品を巻き取った際に両端部に圧力が掛かるため、巻きズレが起こりにくく、中間製品の巻き長さを長くすることが可能となる。また、中央部の厚みが薄いことで、巻き取った膜と膜の層間に隙間ができるため、蛇行などが発生した場合にも、膜が擦れてキズがつくことを防ぐことができ、膜性能の低下を抑制することができる。
具体的には、図1〜3に示すように、幅方向において複合半透膜を5つの領域R1〜R5に等分割する。ただし、図1に示すように複合半透膜の端部に多孔性支持層および分離機能層が設けられていない領域がある場合は、その領域を除いた部分を等分する。膜全体に多孔性支持層および分離機能層が設けられていれば、全体を等分すればよい。また、エレメントから取り出した複合半透膜を分析するときは、複合半透膜の端部で接着剤が付着している箇所はのぞいた領域を等分する。
それぞれの領域R1〜R5の平均厚みt1〜t5は、1μm≦(t1+t5)/2−t3≦10μmを満たすことが好ましく、1μm≦(t1+t5)/2−t3≦5μmを満たすことがさらに好ましい。
(t1+t5)/2−t3≦10μmであることで、中間製品の巻径が大きくなっても、中央部の製品径が端部の製品径に比べて小さくなりすぎず、膜の自重を支えることができる。それゆえ、くぼみによるシワが発生しにくく、結果として複合半透膜の分離機能層の傷つきによる性能低下が抑制される。
また、t1〜t5は、t1>t2>t3、t5>t4>t3を満たすことが好ましい。つまり、複合半透膜は、その分離機能層側表面が凹んだ形状である。ロールが局所的に膨らむと複合半透膜が変形するが、t1〜t5がこの条件を満たすことで、ロールの局所的膨らみを抑制し、結果として膜の変形による性能低下を抑制することができる。
なお、複合半透膜の厚みは、幅方向において階段状に変化するのではなく、徐々に変化することが好ましい。
また、1μm≦(t1+t5)/2−t3であることで、中間製品を巻いているときに、重なり合う複合半透膜と複合半透膜との間に適度な隙間ができるので、蛇行により膜がズレたとしても、膜表面が強くこすれず、傷つきによる性能低下が抑制される。
また、複合半透膜の厚みに関して、一方の端部と他方の端部の厚みは同じであることが好ましい。すなわち、|t1−t5|≦10μmであることが好ましく、さらに好ましくは|t1−t5|≦5μmである。|t1−t5|≦10μmであることで、巻き取った中間製品の片側端部ともう一方の端部とで、径が同程度になるので、幅方向での張力のバランスが均等になり、巻きズレの発生が抑制できる。
ここで幅方向とは、複合半透膜の製膜時に複合半透膜を巻き取る方向を長手方向として、これと垂直な方向を幅方向とする。つまり、幅方向とは、エレメントに組み込まれる前の、ロール状に巻かれた長尺の複合半透膜においては、巻き取り軸に平行な方向である。また、エレメントにおいては、エレメントの通水方向(つまり集水管の長手方向)が、複合半透膜の幅方向に該当する。
複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。1つの領域において、幅方向に等間隔に5箇所で測定し、その相加平均を算出することで、平均厚みt1〜t5を算出することができる。
なお、複合半透膜の厚みをシックネスゲージによって測定することが困難な場合、走査型電子顕微鏡で測定してもよい。1つの領域について任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。
(1−2)多孔性支持膜
多孔性支持膜は、基材と前記基材上に設けられる多孔性支持層とを備え、実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度および複合半透膜をエレメント化したときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、多孔性支持膜の厚さは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
(1−2−a)基材
基材としては、ポリエステルおよび芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種からなる布帛が例示される。機械的および熱的に安定性の高いポリエステルを使用するのが特に好ましい。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持層が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布をより好ましく用いることができる。長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントにより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。特に、基材の多孔性支持層と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
基材の多孔性支持層の反対側に配置される繊維の繊維配向度としては0°〜25°の範囲にあることが好ましい。ここで繊維配向度とは、多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角の方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により多孔性支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。多孔性支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持層と反対側に配置される繊維と多孔性支持層側に配置される繊維との配向度差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透水性能が高くなる。これは、多孔性支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持層の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは40μm以上150μm以下の範囲である。
(1−2−b)多孔性支持層
本発明における多孔性支持層は、非対称膜であることが好ましい。非対称構造とは片面に緻密な細孔を持ち、もう一方の面まで細孔が徐々に大きくなっていく構造であり、細孔径が片面からもう一方の面まで連続的に変化していることが好ましい。
多孔性支持膜は、例えば基材上に高分子重合体を流延することで、基材上に多孔性支持層を形成することにより得ることができる。多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されない。
基材上に流延する樹脂の種類としては、例えばポリスルホンや酢酸セルロールやポリ塩化ビニル、あるいはそれらを混合したものが好ましく使用される。化学的、機械的および熱的に安定性の高いポリスルホンが特に好ましい。具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、多孔性支持層の孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいはポリエステル不織布の上に一定の厚さに流延し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径10nm以下の微細な孔を有した多孔性支持膜を得ることができる。
上記の多孔性支持膜の厚みは、得られる複合半透膜の強度およびエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。多孔性支持膜の厚みは、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、30μm以上300μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50μm以上250μm以下の範囲内である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、多孔性支持膜から基材を剥がして多孔性支持層を採取した後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜15kVの加速電圧で高分解能電解放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるし、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法などに従って製造することもできる。
多孔性支持層の厚みは、20μm以上70μm以下の範囲内にあることが好ましい。より具体的には、後述のs1〜s5の5つの値が全てこの範囲内にあることが好ましい。多孔性支持層の厚みが20μm以上であることで、良好な耐圧性が得られるとともに、欠点のない均一な多孔性支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持層を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持層の厚みが70μmを超えると、製造時の未反応物質の残存量が増加し、それにより透水性能が低下するとともに、耐薬品性が低下する。
さらに、複合半透膜を5つの領域R1〜R5に幅方向に等分割すると、それぞれの領域の多孔性支持層の平均厚みs1〜s5は、s1>s2>s3、s5>s4>s3を満たすことが好ましい。すなわち、幅方向における中央部の多孔性支持層の厚みが、端部の多孔性支持層の厚みよりも薄いことが好ましい。このようにすることで、多孔性支持層の厚みを調整することにより、複合半透膜の幅方向の厚みを好ましい範囲に調整することが容易となる。
また、多孔性支持層の幅方向の厚みムラは、1%以上40%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1%以上30%以下である。多孔性支持層の幅方向の厚みムラとは、s1〜s5の最大値と最小値の差を、s1〜s5の平均値で割ったもの(%)である。多孔性支持層の幅方向の厚みムラが1%以上であることで、多孔性支持層の厚みを調整することで所望の複合半透膜の厚みを得られやすくなる。また、多孔性支持層の幅方向の厚みムラが40%以下であることで、幅方向での透水性の差を小さくすることが可能である。
分離機能層の厚みは多孔性支持層の厚みと比較して非常に薄く無視できるので、多孔性支持層の厚みと分離機能層の厚みとを合わせて、多孔性支持層の厚みとみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持層の厚みを算出することができる。
基材の厚みは、複合半透膜から多孔性支持層および分離機能層を剥がした後、複合半透膜の厚みと同様にデジタルシックネスゲージで測定することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。あるいは、複合半透膜の断面の電子顕微鏡写真から、基材の厚みを測定してもよい。この場合も、複合半透膜の厚み測定と同様に厚みの平均値を算出することができる。
(1−3)分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定させる。
ポリアミド分離機能層は、具体的には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合によって得られる架橋ポリアミドからなる。
ここで多官能アミンは、芳香族多官能アミンおよび脂肪族多官能アミンから選ばれた少なくとも1つの成分からなる。
芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどが例示される。また、そのN−アルキル化物として、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどが例示される。性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミンまたは1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
また、脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミンおよびその誘導体である。例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチレンジアミンなどが例示される。性能発現の安定性から、特に、ピペラジンまたは2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。
これらの多官能アミンは、単独で用いても、2種類以上を混合物として用いてもよい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸等の酸ハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロライドが好ましい。上記多官能酸ハロゲン化物は単独で用いても、2種類以上を混合物として用いてもよい。
2.複合半透膜の製造方法
次に、本発明に係る複合半透膜の製造方法について説明する。製造方法は、基材と多孔性支持層を含む多孔性支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)多孔性支持膜の形成工程
多孔性支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程、基材に前記高分子溶液を含浸させる工程、および、前記高分子溶液を含浸した前記基材を、高分子の良溶媒と比較して前記高分子の溶解度が小さい溶液(以下、単に「非溶媒」と称する。)の凝固浴に浸漬させて前記高分子を凝固させ、高分子の三次元網目構造を形成させる工程を含んでいてもよい。
所定の構造を持つ層を得るためには、前記高分子溶液の基材への含浸を制御する必要がある。高分子溶液の基材への含浸を制御するためには、例えば、基材上に高分子溶液を塗布した後、非溶媒に浸漬させるまでの時間を制御する方法、或いは高分子溶液の温度または濃度を制御することにより高分子溶液の粘度を調整する方法が挙げられ、これらの製造方法を組み合わせることも可能である。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで十分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
多孔性支持層を形成する高分子溶液がポリスルホンを含有する場合、ポリスルホン濃度は、10%以上25%以下であり、好ましくは13%以上22%以下、さらに好ましくは15%以上20%以下である。ポリスルホン濃度が10%よりも低いと、後述する方法により多孔性支持層の厚みを制御しようとしても、高分子溶液の粘度が低くなりすぎるため、凝固浴に浸漬するまでの間にレベリングして平坦になってしまい、所望する厚みに制御することができない。一方、ポリスルホン濃度が25%を越える場合には、多孔性支持層の緻密層の割合が大きくなり、必要量のアミン水溶液を保持できなくなってしまい、得られる複合半透膜の性能が低くなる。
塗布時の高分子溶液の温度は、ポリスルホンを用いる場合、通常10〜60℃の範囲内で塗布するとよい。この範囲内であれば、高分子溶液が析出することなく、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで十分に含浸したのちに固化される。
その結果、アンカー効果により、多孔性支持層が基材に強固に接合し、本発明の多孔性支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
基材上への高分子溶液の塗布は、種々のコーティング法によって実施できるが、バーコート方式が好ましく適用される。バーコートで用いるコーティングバーは、横断面が円形の回転する棒でも、非回転の丸棒でも、ロールナイフと呼称されているエッジ付のバーでも、ブレードタイプのものでもよい。
多孔性支持膜を所望の厚みにするには、幅方向で高分子溶液の塗布厚みを変更しなければならない。すなわち、塗布端部では塗布厚みを厚く、塗布中央部では塗布厚みを薄くしなければならない。これを達成するために、コーティングバーと基材との間隙(クリアランス)を幅方向で変化させることが必要となる。そこで、ベンディング機構を有するロールナイフを用いるのが適している。ベンディング量の大小により、中央部のクリアランスを変更することができ、それによって、中央部の多孔性支持層厚みを調整することが可能となる。
コーティングバーと基材との間のクリアランスおよびベンディング量は具体的な数値に限定されるものではなく、目的とする多孔性支持層の厚みによって、適宜変更することができる。クリアランスと多孔性支持層の厚みとは完全に一致しない場合があり、多くの場合、得られる多孔性支持層の厚みはクリアランスよりも小さくなる。具体的には、多孔性支持層の厚みは、クリアランスの10%〜80%程度になることがある。これは凝固の過程で高分子溶液から溶媒が抜けるためだと考えられる。コーティングバーと基材との間のクリアランスおよびベンディング量はこの縮みを想定すると共に、試作を行うことにより決定すればよい。
以下にクリアランスおよびベンディング量について例示する。基材とコーティングバーとのクリアランスは、最も狭いところで、好ましくは25μm以上250μm以下である。
端部におけるクリアランスと中央部におけるクリアランス差は、好ましくは3μm以上30μm以下、より好ましくは4μm以上20μm以下である。クリアランス差がこの範囲にあることで、多孔性支持層の厚みを適切に制御することができる。
なお、ここでの「端部」とは、コーティングバーにおいてコーティングに寄与する領域の端部を指す。つまり、「端部」はコーティングバーの全長における端部とは限らない。「中央部」についても同様に、コーティングバーにおいてコーティングに寄与する領域の中央部である。
本発明の良溶媒とは、高分子材料を溶解するものである。本発明で用いられる良溶媒としては、高分子の種類によって異なるものの、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP);テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;テトラメチル尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等の低級アルキルケトン;リン酸トリメチル、γ−ブチロラクトン等のエステルおよびラクトン;並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
前記樹脂の非溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、重合体を溶解しない上記非溶媒であればよい。組成によって多孔性支持層の膜形態が変化し、それによって複合半透膜の膜形成性も変化する。
また、凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜30℃である。この範囲より高いと、熱運動により凝固浴面の振動が激しくなり、膜形成後の膜表面の平滑性が低下しやすい。逆に低すぎると凝固速度が遅くなり、製膜性に問題が生じる。
また、上記高分子溶液は、多孔性支持層の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有していてもよい。
孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水;アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩;ホルムアルデヒド、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
次に、このような好ましい条件下で得られた基材及び多孔性支持層を含む多孔性支持膜を、膜中に残存する製膜溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲より高いと、多孔性支持膜の収縮度が大きくなり、透水性が低下する。逆に低いと洗浄効果が小さい。
(2−2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を形成する分離機能層の形成工程の一例として、ポリアミドを主成分とするポリアミド分離機能層の形成を挙げて説明する。
ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、多孔性支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することができる。
多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は3.0質量%以上25質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5.0質量%以上20質量%以下の範囲内である。この範囲であると十分な透水性と塩およびホウ素の除去性能を得ることができる。
多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。
界面活性剤は、多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。有機溶媒は界面重縮合の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合を効率よく行える場合がある。
界面重縮合を多孔性支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を多孔性支持膜に接触させる。接触は、多孔性支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。
具体的には、例えば、多官能アミン水溶液を多孔性支持膜にコーティングする方法や多孔性支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。多孔性支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を多孔性支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が欠点となって複合半透膜の除去性能が低下することを防ぐことができる。
液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液接触、液切り後の多孔性支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層を形成させる。
水と非混和性の有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物濃度は、0.10質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.14質量%以上2.0質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。多官能酸ハロゲン化物濃度が0.10質量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、10質量%以下であることで副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重合が促進され、さらに好ましい。
水と非混和性の有機溶媒は、多官能酸ハロゲン化物を溶解し、多孔性支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を多孔性支持膜へ接触させる方法としては、多官能アミン水溶液を多孔性支持膜へ被覆する方法と同様に行えばよい。
本発明の界面重縮合工程においては、多孔性支持膜上を架橋ポリアミドで十分に覆い、かつ、接触させた多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を多孔性支持膜上に残存させておくことが肝要である。このため、界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。
界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、多孔性支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を多孔性支持膜上に保持することができる。
界面重縮合によって多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法として、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。
得られた複合半透膜を水洗槽にて水洗し、複合半透膜に残留した溶媒を除去した後、複合半透膜を巻取装置にて中間製品として巻き取る。
(複合半透膜の利用)
複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿説した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントは、直列または並列に接続されて圧力容器に収納されることで、複合半透膜モジュールを構成することができる。
集水管の周りに複合半透膜を巻回する際は、複合半透膜の幅方向の向きに集水管を置いて、複合半透膜の長手方向に膜を巻き取ってエレメントを作成する。すなわち、複合半透膜の幅方向に原水が通水することとなる。エレメント化して圧力を掛けて通水した場合、水の圧力によって原水流路材が震動することがある。複合半透膜の幅方向の中央部が薄い場合、膜と原水流路材との間に隙間ができるため、原水流路材が震動した場合にも膜面を傷つけることなく、性能低下を防ぐことができる。
また、上記の複合半透膜や複合半透膜エレメント、複合半透膜モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
図3を参照して、具体的な分離膜エレメントの構成について説明する。
図3に示すように、スパイラル型分離膜エレメント1aは、原流体101を透過流体102と濃縮流体103とに分離する。分離膜エレメント1aは、有孔集水管6と、分離膜3bと、第1端板71と、第2端板80と、フィラメントワインディング70とを備える。
有孔集水管6は、内部が中空である管であって、かつその表面に内部と通ずる多数の孔が開けられている。その素材としては、PVC、ABS等の硬質プラスチックやステンレス等の金属など各種材質が用いられる。1本の分離膜エレメントに設けられる有孔集水管の数は、基本的には1本である。後述するように、分離膜を透過した透過流体102は、有孔集水管6によって集められる。
分離膜3bは、有孔集水管6の周りに巻囲されることで、巻囲体3を形成する。つまり、分離膜エレメント1aはいわゆるスパイラル型分離膜エレメントである。分離膜3bとしては、上述の中央部の厚みが端部に比べて薄い分離膜が適用可能である。
本実施形態において、供給側の流路を形成する供給側流路材としては、高分子製のネット2が使用されている。また、透過側流路材としては、分離膜3bの落ち込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、供給側流路材よりも間隔が細かいトリコット4と呼ばれる編物部材が使用されている。
透過側流路材の両面に重ね合わされて封筒状に接着された分離膜3bにより、封筒状膜5aが形成される。封筒状膜5aの内側が透過流体流路を構成しており、ネット2と交互に積層された封筒状膜5aは、開口部側の所定部分を有孔集水管の外周面に接着しスパイラル状に巻囲される。
本実施形態では特に、分離膜3bは、貼り合わされることで矩形の封筒状膜5aを形成する。封筒状膜5aは、矩形の一辺が開口しており、その開口が有孔集水管6の外周面に対向するように、有孔集水管6に接着されている。有孔集水管6に接着された封筒状膜5aは、有孔集水管6の周りに巻囲されることで、巻囲体3を形成している。
巻囲体3の外観は円柱状である。本実施形態では、有孔集水管6の長手方向における巻囲体3の2つの端面、つまり図3における左手前端面および右奥端面をそれぞれ第1端面および第2端面と呼ぶ。
フィラメントワインディング70は、接着剤を含浸させたガラス繊維を巻囲体3における分離膜3bの最外面を囲むように配置することにより構成される。つまり、フィラメントワインディング70、巻囲体3の外周面、つまり巻囲体3の円柱形状における側面に該当する面を囲むように配置される。フィラメントワインディング70がこのように設けられることで、原流体101が分離膜エレメント1aの外周面から流入するのを防止するとともに分離膜エレメントの機械的強度を向上させることができる。「外周面」とは、特に、分離膜エレメント1aおよび巻囲体3の外面全体のうち、上述の第1端面および第2端面を除く部分であるとも言える。本実施形態では、フィラメントワインディング70は、巻囲体3の外周面のほぼ全体を覆うように配置される。
第1端板71は、外縁が略円形であって、孔を有する部材であり、巻囲体3の第1端面に装着される。第1端板71の孔から、巻囲体3中の分離膜3bの供給側表面に、原流体101が供給される。
第2端板80は、透過流体出口81および濃縮流体出口82を備えると共に、外縁が略円形の部材である。第2端板80が巻囲体3の第2端面に装着されることで、巻囲体3の端部に、透過流体出口81および濃縮流体出口82が設けられる。
分離膜エレメント1aによる流体の分離について説明する。本実施形態では、原流体101は、分離膜エレメント1aが圧力容器(図示せず)内に配置された状態で、第1端面に対して供給される。
供給された原流体101は、図3に示すように、分離膜3bを透過する透過流体102と、透過しない物質を含む濃縮流体103とに分離される。透過流体102は孔61を通過することで有孔集水管6内に到達する。有孔集水管6内を通った透過流体102は、透過流体出口81を通って、分離膜エレメント1a外に排出される。一方、濃縮流体103は、分離膜間を流れることで巻囲体3内を移動し、最終的には濃縮流体出口82から分離膜エレメント1aの外部に排出される。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変形や修正が可能である。
(複合半透膜の厚み)
複合半透膜を幅方向に5等分することで領域R1〜R5に分けた。複合半透膜の厚みを領域R1〜R5でそれぞれ5点ずつ等間隔に尾崎製作所株式会社PEACOCKデジタルシックネスゲージにて測定し、5点の厚みを平均し、R1〜R5それぞれの平均厚みをt1〜t5として求めた。ここで、平均としては算術平均を用いた。
(多孔性支持層の厚み)
上記に記載の複合半透膜の厚みの測定により、R1〜R5における複合半透膜の平均厚みt1〜t5を測定する。その後、多孔性支持層および分離機能層をピンセットでこすって裂け目をいれ、そこを起点として多孔性支持層および分離機能層を手で引き剥がした。R1〜R5それぞれの領域でマーキングされた5点において、基材の厚みを尾崎製作所株式会社製PEACOCKデジタルシックネスゲージにて測定し、5点の厚みを平均し、R1〜R5における基材の平均厚みを求めた。ここで、平均としては算術平均を用いた。複合半透膜の平均厚みt1〜t5から、R1〜R5におけるそれぞれの領域の基材の平均厚みを引くことにより、R1〜R5におけるそれぞれの領域の多孔性支持層の平均厚みs1〜s5を求めた。s1〜s5は、厳密には多孔性支持層と分離機能層を合わせた厚みであるが、分離機能層は非常に薄く、無視できるため、s1〜s5を多孔性支持層の厚みとして差し支えない。
(多孔性支持層の幅方向の厚みムラ)
上記で求めたs1〜s5のうち、最大値と最小値の差を、s1〜s5の平均値で割った値(%)を多孔性支持層の幅方向の厚みムラとして求めた。
(ロールの巻姿)
長尺の複合半透膜を作成し、ロールに巻き取ったときの巻姿を観察し、変形、ズレ、およびシワがないものをA、変形、ズレおよびシワが発生した場合をCとした。
(複合半透膜の幅方向性能差)
複合半透膜から、幅方向の端部と中央部(複合半透膜の厚み測定における領域R1、領域R3、領域R5に相当する領域)から3枚の試料を切り出した。試料は直径7.5cmの円形とした。
温度25℃、pH6.5の海水(供給水に該当)を操作圧力5.5MPaで、得られた試料片に供給し、24時間に渡ってろ過処理を行った。得られた透過水量から膜面1平方メートルあたりかつ1日あたりの透水量(立方メートル)を膜透過流速(m3/m2/日)として算出した。
こうして得られた3つの膜透過流速の値のうち、最大値と最小値の差が、膜透過流速の平均値と比べて7%以内である場合をA、7%以上15%以内の場合をB、15%よりも大きい場合をCと判定した。
(実施例1)
基材として、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.3cc/cm/sec)を用いた。ポリスルホン(ソルベイ・アドバンスト・ポリマーズ株式会社のUdel(登録商標)P−3500)をジメチルホルムアミドに溶解したポリスルホン溶液(濃度16重量%、温度20℃)を調製した。こうして得られたポリスルホン溶液を多孔性支持層形成用の高分子溶液として用いた。
この高分子溶液を基材である不織布の表側に左右両端の一定幅を除き塗布した。基材への高分子溶液の塗布には、ベンディング機能を有するコーティングバーを用いた。不織布の裏面は、その全幅に渡り、バックアップロールにより支持した。
コーティングバーとしては、そのベンディング機能により、基材の面方向に対して膨らむようにあるいはへこむように湾曲できるものを用いた。ベンディング機能を利用することで、コーティングバーと基材との間の距離(つまりクリアランス)を、塗布方向(基材の進行方向)と垂直な方向、すなわち幅方向において、膜の中央部から端部に向かって、徐々に小さくするか、徐々に大きくするか、または一定にすることができる。本実施例では、クリアランスを幅方向中央部において小さく、幅方向端部に近いほど大きくした。
具体的には、コーティングバーの両端部と基材との間のクリアランスを170μmとし、コーティングバーのベンディング量を調整することで、中央部でのクリアランスを端部のクリアランスより15μm狭くした。
高分子溶液が塗布された不織布を、塗布後0.5秒後に、20℃の純水に浸し、ポリスルホンを凝固させて、不織布の表面に多孔性ポリスルホン支持層が形成された多孔性支持膜を製造した。
得られた多孔性支持膜を水洗槽にて水洗し、多孔性支持膜に残留した溶媒を除去した後、ポリアミド機能層の形成工程を行った。得られた多孔性支持膜を、m−フェニレンジアミンの5質量%水溶液中に1分間浸漬し、垂直方向に引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け多孔性支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロライド0.175質量%を含む25℃のn−デカン溶液を表面が完全に濡れるようにコーティングした後、1分間搬送することにより、多孔製支持膜の上に、ポリアミド分離機能層を形成した。次に、エアーノズルから空気を吹き付けることにより、膜から余分な溶液を除去し、その後、90℃の熱水で2分間洗浄し、得られた長尺の複合半透膜を巻き取り装置にて巻き取った。
得られた複合半透膜の厚み、ロールの巻姿、幅方向の性能差は表1に示すとおりである。巻姿も良好で、幅方向に性能差の小さい複合半透膜を得ることができた。
(実施例2)
ポリスルホン溶液の濃度を20%とした以外は実施例1と同じようにして作製した。得られた複合半透膜の厚み、ロールの巻姿、幅方向の性能差は表1のとおりであった。
(実施例3)
高分子溶液が塗布された不織布を1.0秒後に20℃の純水に浸した以外は、実施例1と同じようにして生産した。得られた複合半透膜の厚み、ロールの巻姿、幅方向の性能差は表1のとおりであった。
(実施例4)
ポリスルホン溶液の濃度を20wt%とし、かつコーティングバーを基材のクリアランスを全体に狭くし(つまりコーティングバー全体を基材に近づけ)、さらにコーティングバーのベンディング量を変更した。具体的には、コーティングバー両端と基材との間のクリアランスを130μmとし、中央部のクリアランスを端部のクリアランスに比べて25μm狭くした。得られた複合半透膜は、その多孔性支持層の厚みが薄く、多孔性支持層の幅方向の厚みムラは大きく、それにより幅方向での性能に差が発生したものの、巻き姿は良好であったので、不合格品とはならなかった。
(比較例1)
コーティングバーのベンディング量を調整し、中央部のクリアランスが端部のクリアランスに比べて40μm狭くなるようにセッティングした。それ以外は実施例1と同じようにして生産した。得られた複合半透膜は中央部の厚みが端部に比べて非常に薄くなり、ロールに巻き取ったときに中央部が窪んで変形した。これにより、膜性能が低下した。
(比較例2)
コーティングバーのベンディング量及び平行度を調整し、中央部のクリアランスが領域R1側の端部のクリアランスに比べて35μm狭く、領域R5側の端部のクリアランスが領域R1側の高分子塗布端部のクリアランスに比べて30μm狭くなるようにセッティングした。それ以外は実施例1と同じようにして製膜した。得られた複合半透膜は片側の厚みが薄くなり、ロールに巻き取ったときにズレが発生した。
(比較例3)
コーティングバーのベンディング量を調整し、中央部のクリアランスが端部のクリアランスと同じになるようにセッティングした。それ以外は実施例1と同じようにして生産した。得られた複合半透膜は中央部と端部の厚みがほぼ同じものであった。ロールに巻き取っている最中、蛇行が発生して場合に膜がズレる時の勢いが強く、それにより膜面にキズがつく頻度が多かった。またズレと同時にシワも入った。
(比較例4)
コーティングバーのベンディング量を調整し、中央部のクリアランスが端部のクリアランスに比べて30μm広くなるようにセッティングした。ロールに巻き取っている期間の前半はロールの巻姿は綺麗であったものの、ロール径が大きくなってくると中央部が局所的に膨れ変形した。
表1においては、コーティングバーの一端(領域R1側の端部)のクリアランスを基準(つまりゼロ)として、中央部および他端部のクリアランスとの差を「クリアランス差」として示している。正の数値はR1側端部よりもクリアランスが小さいことを意味し、負の数値はクリアランスが大きいことを意味する。
本発明の複合半透膜は、特に、海水やかん水の脱塩に好適に用いることができる。
1a スパイラル型分離膜エレメント
101 原流体
102 透過流体
103 濃縮流体
2 供給側流路材(ネット)
3b 分離膜
4 透過側流路材(トリコット)
5a 封筒状膜
6 有孔集水管6
70 フィラメントワインディング
71 第1端板
80 第2端板

Claims (3)

  1. 基材と、前記基材上の多孔性支持層と、前記多孔性支持層上の分離機能層と、を有する複合半透膜であって、
    前記複合半透膜をR1〜R5の領域に幅方向に順に等分割すると、それぞれの領域の平均厚みt1〜t5が以下の式を満たす複合半透膜。
    1μm≦(t1+t5)/2−t3≦10μm (1)
    t1>t2>t3 (2)
    t5>t4>t3 (3)
  2. 下記式を満たす請求項1に記載の複合半透膜
    |t1−t5|≦10μm (4)
  3. 領域R1〜R5の多孔性支持層の平均厚みをs1〜s5が、以下の式を満たす請求項1または2に記載の複合半透膜。
    s1>s2>s3 (5)
    s5>s4>s3 (6)
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