JP2020132975A - 黒色ステンレス鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができる黒色ステンレス鋼板を実現する。【解決手段】Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼板を素地(BM)とし、素地(BM)の表面に酸化皮膜(L)が形成されており、酸化皮膜(L)に含まれる複数の層のうち、素地(BM)の界面に最も近い層は、Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含んでおり、酸化被膜(L)の厚みが0.70μm〜2.0μmである。【選択図】図1
Description
本発明は、黒色ステンレス鋼板に関する。
ステンレス鋼は、耐食性、意匠性に優れた素材であり、ステンレス無垢材が有する光沢のある銀白色の地肌を活かし、内装・外装材、排ガス経路部材等に使用されている。一方で、銀白色以外の意匠が求められる場合は、様々な色調を持つステンレス鋼が適用される。ステンレス鋼に黒色の色調を付与する手段としては、化学発色法、塗装法、酸化処理法等が採用されている。
酸化処理法は、酸化性雰囲気でステンレス鋼を加熱し、表面に形成した酸化皮膜によって黒色の色調を付与するものである。酸化処理法は、ステンレス鋼の製造工程における焼鈍処理を利用できるので、工程数を追加する必要がなく、化学発色法および塗装法に比べて安価に黒色の色調を付与することが可能である。
酸化処理法によるステンレス鋼の黒色処理は、酸化皮膜の組成および厚さが影響するため、ステンレス鋼の化学成分の他に、雰囲気、加熱温度、加熱時間などの処理条件を選定する必要がある。例えば、特許文献1には、Mn、TiおよびAlを含むステンレス鋼板に、露点が+20℃以上の酸化性雰囲気中で最高到達温度を1000℃以上とし、975℃以上の温度から最高到達温度までの温度域で25秒以上加熱する酸化処理を施す黒色ステンレス鋼板の製造方法が記載されている。
しかしながら、上記特許文献1には、ステンレス鋼板の意匠性を向上させる観点については記載されているものの、耐酸化皮膜剥離性を向上させる観点については何も記載されていない。例えば、酸化皮膜の組成、構造によっては、皮膜の密着性が乏しく、皮膜が剥離し易い場合がある。また、黒色度を向上させるために皮膜を厚くすると、加工時に皮膜が剥離し、色調が変化し易いという問題点がある。
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができる黒色ステンレス鋼板を実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る黒色ステンレス鋼板は、Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼板を素地とし、当該素地の表面に酸化皮膜が形成された黒色ステンレス鋼板であって、上記酸化皮膜に含まれる複数の層のうち、上記素地の界面に最も近い層は、Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含んでおり、上記酸化皮膜の厚みが0.70μm〜2.0μmである。上記構成によれば、酸化皮膜の厚みが0.70μm〜2.0μmである。このため、耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができる黒色ステンレス鋼板を実現することができる。
本発明の一態様に係る黒色ステンレス鋼板は、上記黒色ステンレス鋼板に対して特定方向に張力を加えて引張加工を行ったときの加工前後における色調変化ΔE*が2以下であることが好ましい。上記構成によれば、加工を受けた部分において皮膜が剥離せず、色調の変化を抑制することができる。
本発明の一態様によれば、耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができる黒色ステンレス鋼板を実現することができるという効果を奏する。
(ステンレス鋼:素地と酸化皮膜)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板(黒色ステンレス鋼板)10は、Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼を素地BMとしている。また、ステンレス鋼板10は、素地BMの表面に酸化皮膜Lが形成されている。酸化皮膜Lの厚みは、0.70μm以上である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板(黒色ステンレス鋼板)10は、Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼を素地BMとしている。また、ステンレス鋼板10は、素地BMの表面に酸化皮膜Lが形成されている。酸化皮膜Lの厚みは、0.70μm以上である。
また、同図に示すように、酸化皮膜Lは、素地BMから近い順に、Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含む第1領域L1と、主としてCrの酸化物からなる第2領域L2と、Mnの濃化層、またはMnおよびTiの濃化層からなる第3領域L3とが積層された膜となっている。
酸化皮膜Lと素地BMとの界面の近傍に、Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含む層(第1領域L1)を有しており、酸化皮膜Lのトータル酸化皮膜厚みが0.70μm〜2.0μmである。なお、トータル酸化皮膜厚みは、GDS(Glow Discharge Spectroscopy)分析において、酸素強度がピークの1/4となる位置までの厚みを示す。
第1領域L1では、Alの酸化物、Tiの酸化物、Mnの酸化物、またはそれらの複合酸化物のそれぞれが、第1領域L1内に点在する構造を有している。第3領域L3では、Mnの酸化物、またはMnおよびTiの酸化物を含む濃化層が存在している。L2+L3の皮膜の厚みは、0.30μm以上、より好ましくは0.40μm以上である。
この第1領域L1の任意の断面において、第2領域L2との界面から深さ0.5μmまでの範囲に、断面積0.001μm2以上のAl、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物が、単位面積1μm2あたり10個以上分布している。
ステンレス鋼を高温に加熱すると、Crを始めとする合金成分が酸素と結合し、Crの酸化物を主な組成とする酸化皮膜Lが生成する。そして、素地BMから成分元素が表面側に拡散していくこと、および雰囲気中から酸素、水蒸気等が酸化皮膜Lを介して素地BMに向けて拡散することにより、酸化皮膜Lが成長する。ステンレス鋼は、この酸化皮膜Lの成長に伴って表面が着色される。
酸化皮膜Lの主組成であるCrの酸化物が成長する過程では、素地BMから表面へのCrの拡散よりも表面におけるCrの酸化反応の方が速い速度で進行する。そのため、酸化皮膜L直下にある素地BM部分のCr濃度は、バルク部分のCr濃度に比較して著しく低下する現象が生じる。この現象は、Crの貧化現象と称されている。
酸化皮膜L直下のCr貧化の度合いと耐食性との間に密接な相関関係があり、Crの貧化が大きい材料ほど耐食性が低い。Crの貧化が耐食性を劣化させる原因は、次のように推察される。酸化処理で形成される酸化皮膜Lは、通常の2D仕上げ等の無垢のステンレス鋼板表面に形成されている酸化皮膜、いわゆる不動態皮膜に比較すると緻密さが非常に低いものと考えられる。そのため、酸化処理で形成された酸化皮膜Lは不動態皮膜に比べて保護能に劣り、得られるステンレス鋼板の耐食性が低くなる。
上述した図1に示す構造によれば、Crの貧化を小さくできるため耐食性を向上させることができる。ここで、Crの貧化が大きい程、耐食性が低下する。また、上記構造によれば、Cr酸化皮膜/母材界面に点在するAl、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物のアンカー効果により、酸化皮膜の皮膜密着性が向上し、高温からの冷却時の剥離が抑制される。これにより黒色皮膜が維持されることに加えて、皮膜による保護性を高め耐食性を維持することができる。また、この内部酸化物が生成する過程で生じた酸化皮膜/母材界面の凹凸により、Cr酸化皮膜を透過した光を酸化皮膜/母材界面で散乱させ反射を抑制することで、黒色度を高めるものと推察される。
なお、本発明の一態様に係る黒色ステンレス鋼板は、C:0.020質量%以下、Si:1.10質量%以下、Mn:0.04〜1.20質量%、P:0.040質量%以下、S:0.006質量%以下、Ni:0.10〜0.50質量%以下、Cr:13.55〜22.50質量%、Mo:0.03〜2.10質量%、およびN:0.006〜0.020質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
酸化皮膜Lに酸化物として含まれるMnは、酸化処理で生成する酸化皮膜Lの最も表側の第3領域L3および/または内側の第1領域L1に濃化する。本発明者等の調査・研究によると、第3領域L3におけるMn酸化物の濃化が大きいほど黒色化が促進されていることが判った。黒色の目標色調を付与するためには、マトリックスに0.04質量%以上のMnが含まれ、このマトリックス濃度の5倍以上にMnが第3領域L3に濃化されていることが必要とされる。
しかし、ステンレス鋼板10に多量のMnが含まれると、鋼板中のSと結合し、孔食や発銹の起点となる非金属介在物を形成し、母材の耐食性を低下させる。そのため、本実施形態では、Mnの有害な影響がでないように、Mn含有量の上限を1.20質量%に設定した。
次に、Tiの酸化物は、酸化皮膜Lの表側の第3領域L3および内側の第1領域L1の両方に濃化する。黒色性に及ぼすTi酸化物の作用・効果を確保するためには、マトリックスのTi含有量を0.05質量%以上とし、第3領域L3でマトリックス濃度の5倍以上、第1領域L1でマトリックス濃度の7倍以上に酸化物としてのTiを濃化させることが有効である。しかし、ステンレス鋼板に多量のTiが含まれると、ステンレス鋼板の表面に疵が発生し易くなり、また鋳造スラブの靭性低下等によって製造性が悪くなる。そこで、本実施形態においては、Tiの有害な影響がでないように、Ti含有量の上限を0.50質量%に設定した。
次に、Alの酸化物は、酸化皮膜Lの内側の第1領域L1に濃化する。黒色化の効果を発揮させるためには、マトリックスのAl含有量を0.04質量%以上とし、マトリックス濃度の6倍以上にAlが第1領域L1に濃化されていることが有効である。しかし、ステンレス鋼板に多量のAlが含まれると、Tiと同様に表面疵が発生し易くなる。そこで、本実施形態においては、Al含有量の上限を1.00質量%に設定した。本発明が対象とするステンレス鋼板10は、Mnを含み、Ti、AlおよびNbのうち1種以上を含むことを必須とするが、これら元素以外に黒色性を損なうことなく耐食性や加工性の向上に有効な合金成分を含むこともできる。
なお、上述したように、本実施形態のステンレス鋼板10は、酸化皮膜Lのトータル酸化皮膜厚みが0.70μm〜2.0μmである。このため、耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができるステンレス鋼板10を実現することができる。
(黒色性)
ステンレス鋼板10の表面は、明度指数(L*)がL*≦45、クロマティクネス指数(a*、b*)が、−5≦a*≦5、−5≦b*≦5、および黒色度(E)がE=(L*2+a*2+b*2)1/2≦45の範囲にあることが好ましい。これにより、鋼板表面の黒色性を向上させることができるため、意匠性に優れたステンレス鋼板10を実現できる。
ステンレス鋼板10の表面は、明度指数(L*)がL*≦45、クロマティクネス指数(a*、b*)が、−5≦a*≦5、−5≦b*≦5、および黒色度(E)がE=(L*2+a*2+b*2)1/2≦45の範囲にあることが好ましい。これにより、鋼板表面の黒色性を向上させることができるため、意匠性に優れたステンレス鋼板10を実現できる。
(黒色ステンレス鋼板の製造方法)
本実施形態のステンレス鋼板10の製造方法では、Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼板に、露点が+20℃以上の酸化性雰囲気中で最高到達温度を800℃以上とし、500℃から800℃の温度範囲を10℃/秒以下の昇温速度で加熱する酸化処理を施す。
本実施形態のステンレス鋼板10の製造方法では、Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼板に、露点が+20℃以上の酸化性雰囲気中で最高到達温度を800℃以上とし、500℃から800℃の温度範囲を10℃/秒以下の昇温速度で加熱する酸化処理を施す。
このうち、500〜600℃の範囲を緩やかに昇温することにより、Crの酸化皮膜の生成前に、Mn、またはMnおよびTiを酸化させることができる。600〜800℃の範囲を緩やかに昇温することにより、生成したCr酸化皮膜と母材の界面での酸素分圧を下げつつ、Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上を内部酸化させ点在させることができる。この内部酸化物の存在により、皮膜の密着性を向上させることができる。
また、本実施形態のステンレス鋼板10の製造方法では、酸化皮膜Lのトータル酸化皮膜厚みを0.70μm〜2.0μmとする。
上記方法によれば、上記の酸化処理は、通常のステンレス鋼板製造ラインに組み込まれている焼鈍工程で実施することができるため、工程数を増やすことなく、ステンレス鋼板10が製造される。
また、上記方法によれば、露点が+20℃以上の酸化性雰囲気中で加熱する酸化処理を施すため、Crの貧化を小さくでき、耐食性を向上させることができる。また、上記方法によれば、Cr酸化皮膜/母材界面に点在するAl、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物のアンカー効果により、高温からの冷却時の剥離を抑制し、酸化皮膜の皮膜密着性が向上する。これにより黒色度を維持することに加えて、皮膜による保護性を高め耐食性を維持することができる。また、この内部酸化物が生成する過程で生じた酸化皮膜/母材界面の凹凸により、Cr酸化皮膜を透過した光を、酸化皮膜/母材界面で散乱させ反射を抑制することで、黒色度を高めていると推察される。
また、上記方法によれば、酸化皮膜Lのトータル酸化皮膜厚みを0.70μm〜2.0μmとする。このため、耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができるステンレス鋼板10を実現することができる。
〔実施例〕
以下、本発明に係る実施例について説明する。なお、本発明は、以下の説明に限定されるものではない。
以下、本発明に係る実施例について説明する。なお、本発明は、以下の説明に限定されるものではない。
図2に示す化学成分を有するステンレス鋼を溶製し、熱間圧延によって板厚3mmの熱延板を作製した。この熱延板に1050℃で3分間焼鈍を施した後、ドライホーニングを用いて表面の酸化皮膜を除去した。その後、板厚1mmまで冷間圧延し、1030℃で1分間の仕上焼鈍を施した後、120番、240番および400番の乾式研磨紙を順次用いて手研磨を行った。図2の鋼組成は、質量%で示されており、残部がFeおよび不可避的不純物である。なお、図中の下線は、本発明の範囲外であることを示す。
その後、得られた鋼板の表面を黒色化するため、露点+40℃、10質量%O2、90質量%N2の混合ガス雰囲気中で、1100℃、均熱3分の熱処理を行った。なお、500℃から800℃の温度範囲における昇温速度を変化させた実験を行った。
(酸化皮膜密着性の評価試験)
圧縮試験機を用いて、試験片をR=2mmで角度90°に曲げ、曲げ部における酸化皮膜の剥離の有無を目視で確認した。剥離が無かったものを合格(○)、剥離が生じたものを不合格(×)と評価した。
圧縮試験機を用いて、試験片をR=2mmで角度90°に曲げ、曲げ部における酸化皮膜の剥離の有無を目視で確認した。剥離が無かったものを合格(○)、剥離が生じたものを不合格(×)と評価した。
(耐食性の評価試験)
孔食電位の測定には、3.5%のNaCl水溶液を使用し、30℃でAr脱気において試験を行った。上記のNaCl水溶液中に試験面を完全に浸し、10分間放置した後、ポテンショスタットを用いた動電位法により、電位掃引速度20mV/minで、自然電位からアノード分極曲線を得た。孔食電位は、アノード分極曲線において100μA/cm2に対応する電位のうち、最も貴な値とした。
孔食電位の測定には、3.5%のNaCl水溶液を使用し、30℃でAr脱気において試験を行った。上記のNaCl水溶液中に試験面を完全に浸し、10分間放置した後、ポテンショスタットを用いた動電位法により、電位掃引速度20mV/minで、自然電位からアノード分極曲線を得た。孔食電位は、アノード分極曲線において100μA/cm2に対応する電位のうち、最も貴な値とした。
黒色ステンレス鋼板の孔食電位を、その素材(無垢材)との差異により評価した。同等以上もしくは低下幅50mV以下の場合を合格(○)、50mVを超えて低下した場合を不合格(×)と評価した。
上記の皮膜密着性および耐食性についての評価結果を図3に示す。実施例の鋼種では皮膜密着性に優れるともに、耐食性も良好であることが確認された。
図3において、トータル酸化皮膜厚みは、GDS(Glow Discharge Spectroscopy)分析において、酸素強度がピークの1/4となる位置までの厚みを示す。また、内部酸化物の個数密度は、FIB加工により作製した断面試料のTEM観察において、酸化皮膜/母材界面から深さ0.5μmまでの範囲に存在する、断面積0.001μm2以上のAl、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物の個数密度(個/μm2)を示す。
また、皮膜密着性は、90°曲げ部の目視観察による評価を示す。また、耐食性は、孔食電位の素材(無垢材)との差異を示す。なお、図中の下線は、本発明の範囲外であることを示す。
以上の方法により得られたステンレス鋼板10は、意匠性に優れた表面の色調を活用して内装材、外装材、屋根材等の建築用材料や、家電製品、事務機器等のケーシングや部品等として使用される。また、マフラー等の自動車用排ガス部材用途では、溶接管の素材としても使用される。なお、本発明で黒色化されるステンレス鋼板10の原板としては、圧延材や酸洗材以外に研磨、ダル目柄圧延等によって意匠性を付与した材料も使用できる。
(耐酸化皮膜剥離性の評価試験)
次に、図4に、本発明の実施例に係る黒色ステンレス鋼板および比較例のステンレス鋼板の耐酸化皮膜剥離性の評価結果を示す。ここでは、引張加工により、20%あるいは40%の伸びを付与したものについて、引張加工前後における色調変化ΔE*による評価を行った。酸化皮膜の剥離やそれに伴う下地の現出が生じた場合、色調が大きく変化することから、ΔE*により耐酸化皮膜剥離性を判断できる。なお、伸びはいずれも全伸びを示しており、40%の場合は、引張試験片のなかでも局部伸び部分での色調変化を評価した。
次に、図4に、本発明の実施例に係る黒色ステンレス鋼板および比較例のステンレス鋼板の耐酸化皮膜剥離性の評価結果を示す。ここでは、引張加工により、20%あるいは40%の伸びを付与したものについて、引張加工前後における色調変化ΔE*による評価を行った。酸化皮膜の剥離やそれに伴う下地の現出が生じた場合、色調が大きく変化することから、ΔE*により耐酸化皮膜剥離性を判断できる。なお、伸びはいずれも全伸びを示しており、40%の場合は、引張試験片のなかでも局部伸び部分での色調変化を評価した。
図2に示す鋼種A、鋼種I、および鋼種Lの化学成分を有する、板厚1mmまで冷間圧延したステンレス鋼板に対して、露点+40℃、10質量%のO2および90質量%のN2の混合ガス雰囲気中で熱処理を行って黒色化処理を行った。黒色度は、分光測色計により測定した明度指数(L*)により評価した。
トータル酸化皮膜厚みは、GDS(Glow Discharge Spectroscopy)分析において、酸素強度がピークの1/4となる位置までの厚みとした。
皮膜の剥離やそれに伴う下地の現出によりステンレス鋼板の色調が変化することから、引張加工前後における色調変化ΔE*は2以下であることが好ましい。
CIELAB色空間は、国際照明委員会(CIE)が策定したほぼ完全な色空間である。CIELAB色空間は、L*、a*およびb*の3つの座標で構成され、色調変化(色差)ΔE*は、次式で与えられる。
ΔE*=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2
L*は色の明度を表し、L*=0が黒、L*=100が白の拡散色となる。a*は、赤色/マゼンタ色と緑色との間の位置を表し、負の値が緑色寄りとなり、正の値が赤色/マゼンタ色寄りとなる。b*は、黄色と青色との間の位置を表し、負の値が青色寄りとなり、正の値が黄色寄りとなる。
ΔE*=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2
L*は色の明度を表し、L*=0が黒、L*=100が白の拡散色となる。a*は、赤色/マゼンタ色と緑色との間の位置を表し、負の値が緑色寄りとなり、正の値が赤色/マゼンタ色寄りとなる。b*は、黄色と青色との間の位置を表し、負の値が青色寄りとなり、正の値が黄色寄りとなる。
例えば、実施例1および2の鋼材では、ステンレス鋼板10に対して特定方向に張力を加えて引張加工を行ったときの引張加工前後における色調変化ΔE*は、伸び率20%および40%のとき、それぞれ1.1および0.9であり、何れも2以下となっていることが分かる。実施例3および4の鋼材では、伸び率20%および40%のとき、色調変化ΔE*は、それぞれ、1.7および1.9である。すなわち、本発明によれば、耐酸化皮膜剥離性に優れ、加工前後の色調の変化を抑制することができるステンレス鋼板10を実現することができる。また、比較例1と2の鋼材では、伸び率20%および40%のとき、色調変化ΔE*は、それぞれ3.8および4.3となっており、変化が大きい。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
BM 素地
L 酸化皮膜
L1 第1領域:Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含む
L2 第2領域:主としてCrの酸化物からなる
L3 第3領域:Mnの濃化層、またはMnおよびTiの濃化層からなる
10 ステンレス鋼板(黒色ステンレス鋼板)
L 酸化皮膜
L1 第1領域:Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含む
L2 第2領域:主としてCrの酸化物からなる
L3 第3領域:Mnの濃化層、またはMnおよびTiの濃化層からなる
10 ステンレス鋼板(黒色ステンレス鋼板)
Claims (2)
- Mn:0.04〜1.20質量%を含み、さらにTi:0.05〜0.50質量%、Al:0.04〜1.00質量%、およびNb:0.05〜1.00質量%のうち1種以上を含むステンレス鋼板を素地とし、当該素地の表面に酸化皮膜が形成された黒色ステンレス鋼板であって、
上記酸化皮膜に含まれる複数の層のうち、上記素地の界面に最も近い層は、Al、Ti、およびMnのいずれか1つ以上の内部酸化物を含んでおり、
上記酸化皮膜の厚みが0.70μm〜2.0μmであることを特徴とする黒色ステンレス鋼板。 - 上記黒色ステンレス鋼板に対して特定方向に張力を加えて引張加工を行ったときの加工前後における色調変化ΔE*が2以下であることを特徴とする請求項1に記載の黒色ステンレス鋼板。
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