JP2020132760A - 光硬化性組成物、硬化物、及びレンズ - Google Patents

光硬化性組成物、硬化物、及びレンズ Download PDF

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Abstract

【課題】光硬化性組成物、該光硬化性組成物を硬化して得られるレンズの提供。【解決手段】下記例示の、イオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物(成分A)と、表面修飾された金属酸化物のナノ粒子(成分B)を含有する液状の光硬化性組成物であって、金属酸化物(表面修飾部分を除く)の含有量が40重量%以上であることを特徴とする光硬化性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、高屈折率かつ高アッベ数な硬化物を形成する光硬化性組成物、かかる光硬化性組成物を光硬化してなるレンズに関するものである。
近年、ビデオカメラ、イメージングセンサ、ディスプレイ、光通信、太陽電池、照明等の光産業の進展とともに、光学性能に優れる透明樹脂が必要とされている。例えば、ビデオカメラに使用されるレンズやイメージングセンサに使用されるマイクロレンズには、透明性はもとより、高屈折率かつ高アッベ数(低色分散)な透明樹脂が必要とされる。ガラスではなく樹脂が必要とされる理由は様々であるが、軽量化や加工性の点から必要となることが多い。
一般的に、レンズ用透明樹脂の屈折率は1.4〜1.6程度であり、アッベ数は30〜60程度である。ガラスに比べると範囲が狭く、かつ、通常、高屈折率になるほど低アッベ数となるため、屈折率1.6以上で、アッベ数30以上を維持する樹脂は少ないのが現状である。しかし、近年の要望では、屈折率nDが約1.7以上、かつアッベ数νDが30以上の透明樹脂が望まれている。かかる透明樹脂には、光学性能以外に、低吸水率、高硬度、耐薬品・溶剤性、低熱膨張、耐熱性、耐光性などの諸特性も要求される。
一方、デバイスの軽量薄型化や高精細化のために、非球面レンズやマイクロレンズを形成する技術が必要とされている。例えば、ビデオカメラにおいては、単純な曲率を有するガラスレンズの表面に樹脂層を積層し、非球面レンズを製造する技術が必要である。また、イメージングセンサにおいては、カラーフィルターの画素ごとに、数μm〜数百μmサイズのマイクロレンズを形成したり、ガラス上に数μm〜数十μmの高さの回折格子を形成する技術が必要とされている。また、かかるレンズの反射防止を目的として、表面に数nm〜数百nmサイズのモスアイ形状を付与する技術も必要とされている。
かかる要望に応えるため、光インプリント材料への期待は大きい。光インプリントとは、ガラス等の透明基材と微細な表面形状を有する成形型(モールド)の間隙で光硬化性組成物を光硬化し、成形型を剥離(脱型)することにより、透明基材/硬化物よりなる積層体を得る手法である。光硬化性組成物としては、一般的に、無溶剤型のものが使用される。かかる手法により、硬化物表面には、成形型の微細な表面形状が転写される。微細な表面形状は、曲率を有するマイクロレンズ形状や、周期的な凹凸を有するレンチキュラー形状、フレネルレンズ形状、テクスチャー形状、モスアイ形状等、多様であり、サイズもナノメートルサイズからミリサイズまで多様である。なお、微細形状がナノメートルサイズの場合は、光ナノインプリントと呼ばれている。
一般的に、ガラス表面を、切削等の機械的な手法で微細加工するのは困難であり、またウェット/ドライエッチングで微細加工する手法は、高価であり、かつ大面積化や量産化が困難である。しかし、光インプリントを用いれば、微細加工が施された光学部品を、精度良く、かつ生産性良く製造することができる。特に生産性の関しては、数秒〜数十秒間の光照射で硬化が可能なため、大いに期待される所以となっている。
このような中、高屈折率かつ高アッベ数な硬化物を形成する各種材料が提案されている。例えば、ポリチオールを配合した硬化性組成物(例えば、特許文献1参照。)、含硫環状化合物(例えば、特許文献2、3参照。)、金属酸化物ナノ粒子を含有する硬化性組成物(例えば、特許文献4参照。)、特定の縮合環含有化合物と非共役ビニリデン基含有化合物よりなる硬化性組成物(例えば、特許文献5参照。)、酸化ジルコニウム粒子を含有するエポキシ系光硬化性組成物(例えば、特許文献6参照。)、ジチオラン環含有アクリレート系の光硬化性組成物(例えば、特許文献7参照。)、N−ビニルカルバゾールと特定のフルオレン系化合物を含有してなる光硬化性組成物(例えば、特許文献8参照。)、特定の臭素付加型ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートよりなる光硬化性組成物(例えば、特許文献9参照。)、ジチオラン環含有アクリレート系の光硬化性組成物(例えば、特許文献10参照。)、ウレタン結合及びチオエーテル結合を有する不飽和単量体を含有する光重合性組成物(例えば、特許文献11参照。)、スルフィド基含有アクリレート系の光重合性組成物(例えば、特許文献12参照。)、ジチアン環含有不飽和単量体と多官能チオールよりなる光重合性組成物(例えば、特許文献13参照。)、N−アクリロイルカルバゾール含有エポキシアクリレート系組成物(例えば、特許文献14参照。)、トリアジン環含有重合体を含有する光硬化性組成物(例えば、特許文献15参照。)、イオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート系化合物(例えば、特許文献16、17、18参照。)、酸化ジルコニウム粒子を含有するアクリル系光硬化性組成物(例えば、特許文献19参照。)。酸化チタン含有UV硬化樹脂(例えば、特許文献20参照。)、などが提案されている。
また、酸化ジルコニウム粒子として、分散性に優れるナノ粒子が提案されている(例えば、特許文献21、22、23参照。)。
特開平11−349658号公報 特開2003−327583号公報 特開2011−12077号公報 特開2017−97051号公報 特開2014−80572号公報 特開2016−121277号公報 特開2003−183334号公報 特開2006−232907号公報 特開2001−124903号公報 特開2003−183333号公報 特開平8−176235号公報 特開2004−269814号公報 特開平7−216023号公報 特開2008−158361号公報 国際公開第2017/077932号 特開昭62−195357号公報 特開昭61−72748号公報 特開平9−157332号公報 特開2017−128688号公報 特開2006−145823号公報 特開2013−122643号公報 特開2017−66021号公報 特開2017−178763号公報
しかしながら、特許文献1〜4に開示される硬化性組成物は、熱硬化性であるため光インプリントプロセスに対応できない。また、特許文献5〜19に開示される硬化性組成物や化合物は、屈折率nDが1.7未満であるため、近年の高屈折率化要望に対応できない。また、特許文献20に開示される酸化チタン含有UV硬化樹脂は、アッベ数νDが30未満であるため、近年の高アッベ数化要望に対応できない。
更に、上述した特許文献の実施例に記載された光硬化条件の多くでは、近年の光インプリントに対応することが困難である。例えば、特許文献5においては、光硬化で半硬化物を得た後、200℃で熱硬化する必要がある。また、特許文献6に開示される光硬化性組成物は、光硬化に30Jもの光量を要する。また、特許文献7に開示される光硬化性組成物は、光硬化に20分間も要する。また、特許文献8に開示される光硬化性組成物は、光硬化に80℃で500秒間(光量20J)も要する。また、特許文献9に開示される光硬化性組成物は、光硬化に10分間(光量480J)も要する。また、特許文献10に開示される光重合性組成物は、光硬化に5分間も要する。また、特許文献11に開示される光硬化性組成物は、光硬化に3分間も要する。また、特許文献12に開示される光重合性組成物は、光硬化に3分間も要し、かつ徐冷が必要である。また、特許文献13に開示される光硬化性組成物は、光硬化に3分間も要する。また、特許文献14に開示される光硬化性組成物は、光硬化に100秒間(10J)も要する。また、特許文献15に開示される光硬化性組成物は、薄膜しか形成できないため、レンズを形成することは困難である。
一般的に、光硬化性組成物は、高屈折率化するほど室温付近で固体化や不透明化が起こり、また速硬化することが困難となるため、従来の材料では、近年の光インプリントプロセスに対応することが困難であった。なお、溶剤希釈による液状化も考えられるが、光インプリントにおいては溶剤を使用できない場合が多い。
また、光インプリントプロセスに対応するには、基材との密着性や型からの剥離性(脱型性)も必要であり、成形型からの転写精度を向上するために低硬化収縮であることも必要である。
更に、得られる硬化物には、熱によるレンズの変形を低減するために低線膨張係数であること、吸/脱湿に伴うレンズの変形を低減するために低吸水であること、レンズの傷付き防止のために高い表面硬度を有すること、レンズの割れを回避するために曲げ強度などの機械的強度も必要である。
更に、得られる硬化物は抗菌性や防黴性を有することが好ましい。従来から、撮像系のレンズに、菌が付着及び増殖して、画像の品質を低下させることが知られている。菌としては、カンジダなどの真菌(黴)や黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌等、様々である。デバイス中に付着した菌は、増殖を繰り返し、比較的短期間でミクロンオーダー以上に成長する。近年、画像の高精細化が進み、ミクロンオーダー以下の欠点でさえ問題になっており、菌の増殖による欠点発生は回避する必要があった。特に、ミクロンオーダーのマイクロレンズにおいては、レンズを形成する樹脂に抗菌性や防黴性が求められている。
更に、得られる硬化物は難燃性を有することが好ましい。従来から、デバイスの筐体やデバイスを構成する部材には、安全性の観点から、難燃性の樹脂が用いられている。デバイス中の分厚いバルクレンズにも、本来はガラス同等の難燃性が必要であるが、透明性を確保するのは困難である。なお、一般的に、燃焼性の試験としてUL94HB試験(水平燃焼性試験)が知られており、試験方法や条件が定められている。例えば、厚み3mm以上の樹脂では、125mm×13mmの試験片を用いて、燃焼速度が40mm/分未満であればUL規格に合格となる。
そこで、本発明ではこのような背景下において、溶剤を含まずとも液状で、かつ速硬化性を有するものであり、透明性に優れ、高屈折率かつ高アッベ数な硬化物を形成するのに有用な光硬化性組成物、更には、該光硬化性組成物を硬化して得られる硬化物を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)及び(2)の少なくとも一方で示されるイオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物(成分A)と、表面修飾された金属酸化物のナノ粒子(成分B)を含有する液状の光硬化性組成物であって、金属酸化物(表面修飾部分を除く)の含有量が40重量%以上であることを特徴とする光硬化性組成物により、上記課題が解決されることを見出した。
Figure 2020132760
Figure 2020132760
更に、本発明は、かかる光硬化性組成物を硬化して得られる屈折率nDが四捨五入で1.7以上、かつアッベ数νDが30以上である硬化物、かかる硬化物よりなるレンズをも提供するものである。
本発明の光硬化性組成物は、溶剤を含まずとも液状で、速硬化性に優れ、光インプリント材料として有用であり、かかる光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物は、高い透明性を有し、高屈折率かつ高アッベ数であるため、高性能なレンズを提供できる。
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、レンズとは、特に断りが無い場合は、単レンズ、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイなどの総称である。
さらに、本発明において「屈折率」とは、特に断りのない限り、屈折率nDを意味するとともに、「アッベ数」とは、特に断りのない限り、アッベ数νDを意味する。
本発明で成分Aとして使用される上記一般式(1)で示されるイオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、p−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレン、m−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレン、p−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕キシリレン、m−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕キシリレン、p−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルチオ〕キシリレン、m−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルチオ〕キシリレン、p−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオプロピルチオ〕キシリレン、m−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオプロピルチオ〕キシリレンなどが挙げられる。これらの中では、光硬化性組成物の粘度の点で、p−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンとm−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンが好ましく、更に好ましくは、光硬化性組成物の即硬化性の点で、p−ビス〔β−アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンとm−ビス〔β−アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンである。これらの化合物は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
なお、p−ビス〔β−アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンとm−ビス〔β−アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンを単独で光硬化すると、屈折率1.60の高屈折率硬化物(ホモポリマー)を得ることができる。
本発明で成分Aとして使用される上記一般式(2)で示されるイオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオプロピルチオ〕ジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらの中では、光硬化性組成物の粘度の点で、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホンと4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホンが好ましく、より好ましくは、光硬化性組成物の保存安定性の点で、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホンである。これらの化合物は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
なお、4,4’−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホンを単独で光硬化すると、屈折率1.64の高屈折率硬化物(ホモポリマー)を得ることができる。また、該化合物の融点は室温(25℃)付近であるが、一旦加温して溶解すると25℃で長時間液体状態を維持し、ナノ粒子を配合すると低融点化する。
本発明において、上記一般式(1)及び(2)の少なくとも一方で示されるイオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物(成分A)を用いる理由は、(i)かかる化合物は比較的低分子量なモノマーであるためナノ粒子との相溶性を向上できる、(ii)かかる化合物の重合により形成される架橋構造の中に金属酸化物のナノ粒子を閉じ込め析出などの問題を回避できる、(iii)かかる化合物の重合により得られる高屈折率硬化物(ホモポリマー)と金属酸化物のナノ粒子との屈折率差を低減して透明性を向上できるためである。
前述した(i)に関して、成分Aの分子量が過度に増大すると、ナノ粒子との混合液において、析出による白濁や経時的な層分離が生じやすくなる傾向がある。本発明で使用されるイオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物は、分子量が300〜600程度である。
前述した(ii)に関して、成分Aにより形成される架橋構造が不充分な場合は、ナノ粒子が析出して硬化物の透明性が低下するばかりか、かかる析出物により硬化物の表面硬度が低下し、析出物によるこすれ傷の発生も顕著になる傾向がある。更には、硬化物の曲げ強度などの機械強度を大幅に低下させる傾向がある。
前述した(iii)に関して、高屈折率硬化物(ホモポリマー)の屈折率が1.6以上でなければ、本発明の目的とする屈折率1.7以上の硬化物が得難く、高屈折率樹脂(ホモポリマー)の屈折率が高くなるほど、金属酸化物のナノ粒子を多量に配合することができる傾向にある。
本発明の成分Bに使用される金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、及びこれらの複合体などが挙げられる。これらの中では、硬化物の透明性の点で、酸化ジルコニウム、及び酸化ジルコニウムを主成分とした複合体が好ましく、より好ましくは、酸化ジルコニウムの結晶構造の安定化の点で、酸化ジルコニウムを主成分とし酸化イットリウムが少量添加された複合体である。これらの金属酸化物は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
かかる金属酸化物として、酸化ジルコニウム、または酸化ジルコニウムを主成分とした複合体を用いる場合、結晶構造として、正方晶と立方晶の合計量が、単斜晶より多いことが好ましい。より好ましくは、正方晶と立方晶の合計量が、単斜晶の2倍以上である。一般的に、酸化ジルコニウムの屈折率は波長550nmにおいて2.2であるが、本来、正方晶や立方晶が単斜晶よりも高屈折率であるため、正方晶と立方晶の合計量を多くすることにより、硬化物の屈折率を向上できる。なお、単斜晶に対する正方晶と立方晶の合計量は、X線回折により測定することができる。
本発明の光硬化性組成物における金属酸化物(表面修飾部分を除く)の含有量は40重量%以上であり、好ましくは、硬化物の屈折率の点で50重量%以上、より好ましくは硬化物の透明性の点で50〜80重量%、更に好ましくは光硬化性組成物の粘度の点で、50〜70重量%である。
上述した金属酸化物(表面修飾部分を除く)の重量基準の含有量を体積基準の含有量に換算すると、例えば、酸化ジルコニウム(密度5.7g/cm3)50重量%と、一般的な光硬化性モノマー(密度1.1g/cm3)50重量%よりなる光硬化性組成物の場合(ケースA)、下記式の通り計算される。
ケースAの酸化ジルコニウムの含有量(体積%)=100×(50/5.7)/(50/5.7+50/1.1)=16体積%
当然のことながら、酸化ジルコニウムの密度が大きいため、光硬化性組成物中の酸化ジルコニウムの含有量(体積%)は、重量基準に比べて大幅に低下する。酸化ジルコニウム90重量%と一般的な光硬化性モノマー10重量%よりなる光硬化性組成物の場合(ケースB)ですら、酸化ジルコニウムの含有量(体積%)は63体積%に過ぎない。かかる状況は、光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物でも同様であり、一般的な光硬化性モノマーの硬化物が密度1.2g/cm3程度にしかならないことを勘案すれば、光硬化性組成物の硬化物においても、酸化ジルコニウムの含有量(体積%)が意外に少ないことがわかる。逆に、ケースBにおいても、光硬化性モノマーの含有量(体積%)は47体積%存在するため、光硬化性は確保され、かつポリマーとしての加工性や機械特性も発現することになる。
上述した試算は、硬化物の屈折率にも反映される。硬化物の屈折率は、硬化物を構成する原子及び原子団の体積に依存するためである。酸化ジルコニウム(屈折率2.2)50重量%と、一般的な光硬化性モノマー(硬化物屈折率1.5)50重量%よりなる光硬化性組成物の場合(ケースA)、その硬化物の屈折率は、下記式の通り試算される。
ケースAの硬化物の屈折率=2.2×0.16+1.5×0.84=1.6
硬化物の屈折率は、酸化ジルコニウムを50重量%配合しても0.1程度しか向上しない。本発明が目標とする屈折率1.7を達成するには、酸化ジルコニウムをより多量に配合するか、硬化物の屈折率が1.6以上の光硬化性モノマーを用いる必要がある。上記特許文献6や19では、透明性確保の点で、酸化ジルコニウムを多量に配合できず、かつ硬化物の屈折率が1.6以上のモノマーを使用していないために、屈折率1.7を達成できていない。
本発明で成分Bに使用される金属酸化物(表面修飾部分を除く)のナノ粒子のサイズ(nm)は、硬化物の透明性の点で、1次平均粒子径が100nm以下であることが好ましい。より好ましくは0.1〜50nm、特に好ましくは1〜30nmである。なお、かかる金属酸化物のナノ粒子のサイズ(nm)は、透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)などの手法で測定できる。
本発明で使用される金属酸化物のナノ粒子は、粉砕法やゾルゲル法などの公知の手法で合成できるし、市販品を用いることもできる。また、本発明における金属酸化物のナノ粒子の表面修飾も公知の手法で行うことができる。例えば、金属酸化物のナノ粒子と表面処理剤を、必要に応じて溶剤とともに、混合することにより行われる。表面処理剤の金属酸化物表面への固着を促進するため、加熱したり触媒を添加することも可能である。
本発明においては、ナノ粒子の分散性を高めるために、ナノ粒子の合成と同時に表面処理を行うことが好ましい。かかる手法としては、例えば、上述した特許文献21〜23に記載された公知の手法を用いることができる(実施例参照。)。
なお、かかる手法を用いたナノ粒子分散液が市販されており、例えば、表面処理した酸化ジルコニウムのナノ粒子をメチルエチルケトンに、酸化ジルコニウム含有量50〜60重量%で分散した日本触媒製「ジルコスターZP−153」等が挙げられる。かかる分散液から溶剤を留去して、表面処理された金属酸化物のナノ粒子単体を得ることも可能であるし、かかる分散液に成分Aを配合後、溶剤を留去して、本発明の光硬化性組成物を得ることもできる。
表面処理剤としては、例えば、カルボン酸、シランカップリング剤、アルコール、アミン、メルカプタン、界面活性剤などが挙げられる。これらの中では、金属酸化物と強固に結合する点で、カルボン酸とシランカップリング剤が好ましい。これらの表面処理剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
上記カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、サリチル酸、ナフテン酸、デカン酸、ウンデシル酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸、ステアリン酸、プリスタン酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸などのC3-9脂肪族ジカルボン酸の(メタ)アクリロイロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類;2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸などのC8-14芳香族ジカルボン酸の(メタ)アクリロイロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類等が挙げられる。これらの中では、硬化物の透明性の点で、アクリル酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸が好ましく、より好ましくは、ナノ粒子の分散性の点で、2−エチルヘキサン酸である。これらのカルボン酸は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤などを用いることができる。これらの中では、成分Aとの共重合が可能な(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤が好ましく、より好ましくは、硬化物の透明性の点で、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
本発明の光硬化性組成物おける成分AとBの含有重量比は、成分A:成分B=5〜40:60〜95であることが好ましい。より好ましくは、成分A:成分B=6〜30:70〜94、更に好ましくは、成分A:成分B=7〜20:80〜93である。成分Aの含有量比が下限値未満では、硬化物の機械的強度が低下する傾向にあり、逆に、上限値を超えると屈折率が低下する傾向にある。また、成分Bの含有量比が下限値未満では、屈折率が低下する傾向にあり、逆に、上限値を超えると硬化物の透明性が低下する傾向にある。
なお、本発明における成分Bの含有量(重量%)とは、表面処理された状態におけるものを指し、金属酸化物のみの含有量(重量%)とは異なるものである。
本発明の光硬化性組成物は、光硬化性組成物の低粘度化の点で、更に、芳香族系モノ(メタ)アクリレート化合物(成分C)を含有することが好ましい。かかる芳香族系モノ(メタ)アクリレート化合物(成分C)は、芳香環を含有するものであれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェニル−2’−(β−(メタ)アクリロイルオキシメトキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−フェノキシ−2’−ヒドロキシプロピル(メ タ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−ヒド ロキシプロピルフタレートなどが挙げられる。これらの中では、硬化物の高屈折率化の点で、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくは、更なる高屈折率化の点で、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。かかる成分Cは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
なお、本発明で使用される成分Bと成分Cは別々に入手せずとも、成分Bを成分Cに分散した各種組成物が市販されている。かかる組成物としては、例えば、表面処理した酸化ジルコニウムのナノ粒子をベンジルアクリレートに、酸化ジルコニウム含有量60〜70重量%で分散した日本触媒社製「ジルコスターHR−101」等が挙げられ、これを用いることが好ましい。
本発明において成分Cを用いる場合、その含有量は、光硬化性組成物全体の5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜30重量%、更に好ましくは、15〜25重量%である。成分Cの含有量比が下限値未満では、光硬化性組成物の粘度が増大する傾向にあり、逆に、上限値を超えると硬化物の屈折率が低下する傾向にある。
本発明で使用される成分Dの光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し得るものであれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)などが挙げられる。これらの中でも、速硬化性の点で、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)が好ましい。かかる光重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併用してもよい。
成分Dの含有量は、成分AとBの合計100重量部に対して(成分Cを用いる場合は成分A〜Cの合計100重量部に対して)、0.01〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部である。かかる含有量が少なすぎると硬化速度が遅くなる傾向があり、多すぎると硬化物の色相が悪化する傾向がある。
本発明においては、更に、光硬化性組成物の低粘度化や、硬化物の諸特性を整えるために、少量の補助モノマーを配合してもよい。かかる補助モノマーとしては、成分Aと成分Cを除くものであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートやその他のジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。かかる補助モノマーは、単独でも2種以上併用してもよい。
本発明における、補助モノマーの含有量は、成分AとBの合計100重量部に対して(成分Cを用いる場合は成分A〜Cの合計100重量部に対して)、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、更に好ましくは2重量部以下である。補助モノマーの含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向にある。
本発明の光硬化性組成物を塗布して使用する場合、本発明の主旨から溶剤希釈は好ましくないが、ハンドリング性の向上を目的に、少量の有機溶剤を添加することも可能である。その場合、有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等の公知の有機溶剤が挙げられる。当然のことながら、溶剤は、光硬化の前に乾燥により除去される。
かかる有機溶剤の含合量は、光硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。有機溶剤の含合量が多すぎると、乾燥負荷が増大する傾向がある。
かくして本発明の光硬化性組成物が得られるが、本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて各種添加剤を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、重合禁止剤、熱重合開始剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、染顔料、可塑剤、乾燥剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、難燃剤、抗菌・抗黴剤、架橋剤などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明の光硬化性組成物は、溶剤を含まずとも液状であり、液状とは室温(25℃)で液体の状態にあるさまをいうが、光インプリントプロセスへの適合性の点で、室温での粘度が0.1〜20Pa・sであることが好ましい。より好ましくは0.5〜10Pa・s、更に好ましくは1〜5Pa・sである。かかる粘度が下限値未満では、光インプリント時に液漏れなどの不具合が発生する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、無溶剤で塗布することが困難となる傾向にある。
本発明の光硬化性組成物は、硬化収縮率が、光インプリントプロセスへの適合性の点で、1〜10%であることが好ましい。より好ましくは2〜8%、更に好ましくは3〜7%である。かかる硬化収縮率が下限値未満では、光インプリント時に型からの剥離性が低下する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、型からの微細形状の転写精度が低下する傾向にある。かかる硬化収縮率を制御する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。
本発明の光硬化性組成物は、速硬化性の点から、光硬化に要する時間が1分以内であることが好ましい。より好ましくは、更なる速硬化性の点から、30秒以内、更に好ましくは10秒以内である。かかる光硬化の時間を光量に換算すると、例えば、一般的な100mW/cm2の紫外線ランプを用いた場合、1分間で6J/cm2、30秒間で3J/cm2、10秒間で1J/cm2となる。
本発明の光硬化性組成物の特徴は、短時間の光硬化で、高屈折率、かつ高アッベ数な硬化物が得られる点にある。かかる高屈折率かつ高アッベ数な硬化物により、従来不可能だったレンズの作製や光学系の設計が可能となる。前述した通り、一般的に、高屈折率な樹脂ほど低アッベ数であり、両者を高度な次元で両立させるのは困難である。
以下に、本発明の光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物ついて詳述する。なお、下記硬化物の物性についての測定方法は、実施例中に記載の方法を用いる。
本発明の硬化物の屈折率は、レンズの薄型軽量化の点で、1.65以上であることが好ましく、より好ましくは1.68以上、更に好ましくは1.70以上、特に好ましくは1.71以上である。硬化物のアッベ数は、レンズの色収差低減の点で、30以上であることが好ましく、より好ましくは31以上、更に好ましくは32以上、特に好ましくは33以上である。なお、一般的に、硬化物の屈折率の上限値は2程度であり、硬化物のアッベ数の上限値は70程度である。
本発明の硬化物の部分分散比θgFは、0.4〜0.7であることが好ましい。より好ましくは0.5〜0.6である。ここでいう部分分散比θgFとは、436nmにおける屈折率nG、486nmにおける屈折率nF、656nmにおける屈折率nCから、下記式に従って算出される数値である。
部分分散比θgF=(nG−nF)/(nF−nC)
かかる部分分散比θgFを上限値以下とすることにより、広範囲な可視光領域全体で色収差を低減することができる。なお、かかる硬化物の部分分散比θgFを低減する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。
本発明の硬化物の光線透過率は、70%以上であることが好ましい。より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。かかる光線透過率を、下限値以上とすることにより、レンズの透明性を向上することができる。なお、通常、硬化物の光線透過率の上限値は、99%である。かかる光線透過率を向上する手法としては、成分Bの含有量を低減するなど、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法や、光硬化性組成物の調合方法を適正化する手法が挙げられる。なお、ここでいう光線透過率は硬化物表面の反射を含むものであり、硬化物の屈折率が上がるほど光線透過率は低下する。例えば、厚み1mmの透明シートにおいて、屈折率nDが1.6の場合の光線透過率は89%程度であるのに対して、屈折率nDが1.7の場合の光線透過率は87%程度である。
本発明の硬化物のヘイズは、2%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。かかるヘイズを上限値以下とすることにより、レンズの透明性を向上することができる。なお、ヘイズの下限値としては、通常0.001%である。かかるヘイズを低減する手法としては、成分Bの含有量を低減するなど、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法や、光硬化性組成物の調合方法を適正化する手法が挙げられる。
本発明の硬化物の吸水率(重量%)は、レンズの変形回避の点で、1重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.7重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。かかる吸水率を低減する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。なお、通常、硬化物の吸水率の下限値は0.001重量%である。
本発明の硬化物のガラス転移温度(℃)は、レンズの変形回避の点で、100℃以上であることが好ましい。より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上である。かかるガラス転移温度(℃)を向上する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。例えば、成分Bの含有量を増加させればよい。なお、通常、硬化物のガラス転移温度(℃)の上限値は400℃である。
本発明の硬化物の線膨張係数(ppm/℃)は、レンズの変形回避や屈折率の温度依存性を低減できる点で、100ppm/℃以下であることが好ましい。より好ましくは70ppm/℃以下、更に好ましくは50ppm/℃以下である。かかる線膨張係数(ppm/℃)を低減する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。例えば、成分Bの含有量を増加させればよい。なお、通常、硬化物の線膨張係数(ppm/℃)の下限値は10ppm/℃である。
本発明の硬化物の鉛筆硬度は、レンズの傷つきにくさの点で、3H以上であることが好ましい。より好ましくは4H以上、更に好ましくは5H以上である。かかる鉛筆硬度を向上する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。例えば、成分Bの含有量を増加させればよい。なお、通常、硬化物の鉛筆硬度の上限値は9Hである。
本発明の硬化物の曲げ弾性率(GPa)は、レンズの剛性向上の点で、3GPa以上が好ましく、より好ましくは4GPa以上、更に好ましくは5GPa以上である。かかる曲げ弾性率を向上する手法としては、光硬化性組成物中の各成分の含有量を適宜調節する手法が挙げられる。例えば、成分Bの含有量を増加させればよい。
本発明の硬化物は、各種溶剤や各種薬品に耐性を有することが好ましい。溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、N−メチルピロリドン、γ−ブチルラクトン等が挙げられる。また、薬品としては、塩酸、アルカリ水溶液等が挙げられる。なお、ここでいう耐性とは、例えば、硬化物を、上記溶剤や薬品に室温で10分間程度浸漬しても、外観に変化が生じないことを意味する。
本発明の硬化物は、抗菌性を有することが好ましい。かかる抗菌性は、例えば、JIS Z 2801に準拠した試験において、抗菌活性値が2以上あることが好ましい。本発明における菌としては、例えば、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Micrococcus sp.、Pediococcus sp.、Proteus vulgaris、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas Pseudoalcaligenes、Pseudomonas cepacia、Alcaligenes defnitrificans、Alcaligenes faecalis、Bacillus subtils、Bacillus cerens、Acinetobacter calcoaceticus、Alcaligenes faecalis、Peptococcus sp.、Neisseria sp.、Salmonella typhimurium、Vibrio parahaemolyticus、Enterobacter cloacea、Citrobacter freundii、Kiebsiella pneumoniae、Actinomyces属やThiobacillus属の細菌などが挙げられる。また、本発明における真菌としては、例えば、Candida albicnas、 Aspergillus niger、Aspergillus terrus、Penicillium citrinum、Aspergillus penicilloides、Penicillium funiculosum、Penicillium digitatum、Aureobasidium pullulans、Phoma sp、Cladosporium cladosporioides、Cladosporium herbabarum、Cladosporium resinae、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus、Geotrichum sp.、Alternaria sp.、Alternaria Alternata、Fusarium solani、Nigrospora Oryzae、Pestalotia adusta、Trichoderma T−1、Trichoderma sp.、Trichoderma harzianu、Chaetomium globosum、Rhizopus stronifer、Rhizopus nigricansなどの真菌や、Curvularia属、Eurochiumu属、Nocardia属、Streptomyces属、Decdrosphaera属、Cochliobolus属、Acremonium属などに属する真菌等が挙げられる。
なお、工業製品における抗菌性や防黴性の定義は、明確では無く、また用途により要求レベルも異なると思われるが、(社)全国家庭電気製品公正取引協議会の指針に準じるものとする。即ち、本発明における抗菌性や防黴性とは、人体に直接的あるいは間接的に悪影響を及ぼす菌、黴などの微生物が、保護板の表面に付着した場合に、その発育を阻止する機能をいうこととする。
本発明の硬化物は、難燃性を有することが好ましい。一般的に、燃焼性の試験としてUL94HB試験(水平燃焼性試験)が知られており、試験方法や条件が定められている。例えば、厚み3mm以上の樹脂では、125mm×13mmの試験片を用いて、燃焼速度が40mm/分未満であればUL規格に合格となる。本発明の硬化物は、かかるUL94HB試験(水平燃焼性試験)において、燃焼速度が40mm/分未満であることが好ましく、20mm/分未満であることがより好ましい。
以下に、本発明の光硬化性組成物を光硬化して、単レンズを製造する手法、更に、本発明の光硬化性組成物を光インプリント材料として用いて、ガラスレンズ/硬化物よりなる非球面レンズや、ガラス板/マイクロレンズアレイよりなるイメージングセンサ用部材を製造する手法を説明する。
単レンズを製造する時は、先ず、本発明の光硬化性組成物を脱泡し、スペーサを介して上側及び下側に所望の曲率を有するガラスが設置されたモールド内に注入する。片面が平坦(曲率ゼロ)なレンズを作製する場合は、上側もしくは下側に平坦なガラスを使用すればよい。また、両面が平坦なシート状のレンズを作製する場合は、両側に平坦なガラスを使用すればよい。次いで、片側もしくは両側から光照射して光硬化を行った後、得られた硬化物をモールドから脱型することにより単レンズが得られる。単レンズは、応力歪の開放や色相の安定化のため、熱処理してもよい。なお、単レンズが凸レンズであっても凹レンズであっても、製造法は同様である。
光照射は、波長200〜400nmの紫外線を用いて、照射光量0.1〜5J/cm2で行うことが好ましい。照射光量のより好ましい範囲は0.5〜3J/cm2、更に好ましくは1〜2J/cm2である。照射光量が少なすぎると硬化不足になる傾向にあり、逆に、多すぎると生産性が低下する傾向にある。光照射は、複数回に分割して行ってもよい。紫外線源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、無電極水銀ランプ、LEDランプ等が挙げられる。
本発明においては、光インプリント性の向上の点から、光照射の時間が1分以内であることが好ましい。より好ましくは、更なる光インプリント性の向上の点から、30秒以内、更に好ましくは10秒以内である。かかる光照射の時間を光量に換算すると、例えば、一般的な100mW/cm2の紫外線ランプを用いた場合、1分間で6J/cm2、30秒間で3J/cm2、10秒間で1J/cm2となる。
なお、光照射時間の短縮を目的に、モールドを加熱したり赤外線を照射して硬化温度を上げることも可能であるが、重合反応が暴走して光学歪が増大する傾向にあり、硬化温度(硬化時の液温)は常温が好ましい。
次いで、本発明の光硬化性組成物を光インプリント材料として用いて、ガラスレンズ/硬化物よりなる非球面レンズを製造する手法を説明する。かかる手法は、2p成形(Photo Polymerization成形)とも呼ばれる。また、ガラスレンズ/硬化物よりなる非球面レンズは、ハイブリッドレンズと呼ばれることがある。
かかる非球面レンズを製造する時は、本発明の光硬化性組成物を脱泡し、基材となるガラスレンズ上に塗布する。次いで、表面が所望の非球面形状に加工された成形型を、上部から押し当てて賦形する。賦形に際しては、気泡の混入を避けるため、液状の光硬化性組成物がガラスレンズの中央部から周辺部に流れ出る様に、成形型の表面を押し当てることが好ましい。かかる賦形を、固定されたガラスレンズと成形型との空隙に、光硬化性組成物を注入する方式で行ってもよい。
次いで、光照射して光硬化を行うが、成形型が金型などの不透明な場合は、ガラスレンズ側からの片面照射を行い、成形型がガラスモールドなどの透明な場合は、片面もしくは両面から光照射する。光照射の条件は、上述した単レンズの場合と同様である。最後に、成形型を剥離して、ガラスレンズ/硬化物よりなる積層体を得る。かかる剥離をスムーズに行うため、あらかじめ成形型の表面を離型剤で処理しておくことも可能である。また、あらかじめガラスレンズの表面をシランカップリング剤などで処理しておき、硬化物との密着性を向上させてもよい。
得られた積層体は、必要に応じて、周辺部をトリミングされたり、熱処理されて、非球面レンズとなる。なお、非球面レンズが凸レンズであっても凹レンズであっても、製造法は同様である。
次いで、本発明の光硬化性組成物を光インプリント材料として用いて、ガラス板/マイクロレンズアレイよりなるイメージングセンサ用部材を製造する手法を説明する。
かかるイメージングセンサ用部材を製造する時は、本発明の光硬化性組成物を脱泡し、雌型となる成形型上に塗布する。成形型としては、所望のマイクロレンズアレイが形成される様に、表面が微細加工された金型、樹脂型、ガラス型を用いることができる。次いで、気泡が混入せぬように、系全体を減圧下にした後、上部から気泡が混入せぬようにガラス板を押し当てる。かかる賦形を、固定されたガラス板と成形型との空隙に、光硬化性組成物を注入する方式で行ってもよい。
次いで、光照射して光硬化を行うが、成形型が金型などの不透明な場合は、ガラス板側からの片面照射を行い、成形型がガラスモールドなどの透明な場合は、片面もしくは両面から光照射する。光照射の条件は、上述した単レンズの場合と同様である。最後に、成形型を剥離して、ガラス板/マイクロレンズアレイ(硬化物)よりなる積層体を得る。かかる剥離をスムーズに行うため、あらかじめ成形型の表面を離型剤で処理しておくことも可能であるが、マイクロレンズ形状の転写性が低下する傾向にあるため好ましくなく、光硬化性組成物の硬化収縮や表面張力を制御して、成形型からの剥離性を確保することが好ましい。なお、あらかじめガラス板の表面をシランカップリング剤などで処理しておき、マイクロレンズアレイ(硬化物)との密着性を向上させてもよい。
なお、マイクロレンズが凸レンズであっても凹レンズであっても製造法は同様であり、面内に凸レンズと凹レンズが混在する積層体や、曲率の異なるマイクロレンズが混在する積層体も製造可能である。
得られた積層体は、必要に応じて、周辺部をトリミングされたり、熱処理されて、最終製品となる。かかるガラス板/マイクロレンズアレイよりなる積層体は、個々のマイクロレンズが、外光を個々の受光素子に集光する機能を有するため、イメージングセンサ用部材として有用である。なお、ガラス板として、画素が形成されたカラーフィルターを使用することも可能である。また、形成されたマイクロレンズアレイをガラス板から剥離して、マイクロレンズアレイ単体を得ることも可能である。
以上、本発明の光硬化性組成物を光硬化して、単レンズを製造する手法、更に、本発明の光硬化性組成物を光インプリント材料として用いて、ガラスレンズ/硬化物よりなる非球面レンズや、ガラス板/マイクロレンズアレイよりなるイメージングセンサ用部材を製造する手法について説明したが、本発明はかかる説明に限定されるものではない。
かくして本発明の光硬化性組成物は、低粘度な液状で、速硬化性と低硬化収縮を有するものであり、該光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物は、透明性に優れ、高屈折率かつ高アッベ数であり、かつ低吸水率、高硬度などの諸特性にも優れ、抗菌性や難燃性をも有すものである。また、更に、低熱膨張、高硬度、耐薬品・溶剤性などのレンズとしての特性に優れた硬化物を形成することができ、レンズ材料、光インプリント材料、コーティング剤、接着剤、封止剤、塗料、インク等として種々の用途に有用である。
また、本発明の光硬化性組成物を光硬化して得られるレンズは、高屈折率かつ高アッベ数を有し、ビデオカメラ、イメージングセンサ、ディスプレイ、メモリー、光通信、太陽電池、照明、眼鏡等に使用されるレンズとして有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中における光硬化性組成物の各物性、かかる光硬化性組成物を硬化してなる硬化物(試験片)の各物性については、下記に示す測定条件に従って測定した。
<測定条件>
(1)粘度(Pa・s)
東機産業社製、粘度計「TVE−25L」を用いて、25℃、回転数0.1rpm(コーンロータ:3°×R9.4)で測定した。
(2)硬化収縮率(%)
光硬化性組成物の25℃における比重D1と、硬化物の25℃における比重D2から、下記式に基づき算出した。
硬化収縮率(%)=100×(1−D1/D2)
(3)速硬化性
ガラス板上に、1mLの光硬化性組成物を滴下し、25℃で光量1J/cm2(照度250mW/cm2で4秒間)の紫外線を照射して、光硬化性組成物の硬化具合を観察し、下記の基準で評価した。
○・・・硬化したもの
×・・・液状もしくはゲル状で硬化不充分となったもの
(4)光線透過率(%)
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの試験片を用いて、島津製作所社製、島津分光光度計「UV−3150」にて、550nmにおける光線透過率(%)を測定した。
(5)屈折率nD、アッベ数νD
長さ40mm×幅8mm×厚み1mmの試験片を用いて、アタゴ社製の「3波長アッベ屈折計DR−M4」にて、25℃で、NaF線における屈折率nF、NaD線における屈折率nD、NaC線における屈折率nCを測定した。また、得られた屈折率nF、屈折率nD、屈折率nCから、下記式に従ってアッベ数νDを算出した。
アッベ数νD=(nD−1)/(nF−nC)
(6)線膨張係数(ppm/℃)
長さ30mm×幅3mm×厚み1mmの試験片を用いて、セイコー電子社製「TMA120」で、引っ張り法TMA(支点間距離20mm、加重10g、昇温速度5℃/分、窒素フロー140mL/分)にて測定した。一旦、25℃から150℃に昇温して試験片を乾燥し、窒素フローしながら25℃に冷却した後、昇温測定を行い、下式に従い50℃から100℃までの線膨張係数を算出した。
線膨張係数(ppm/℃)=試験片の伸び(mm)/20(mm/50℃)×106
(7)吸水率(重量%)
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの試験片を用いて、23℃の水に1週間浸漬した後の重量増加から吸水率(重量%)を算出した。
(8)表面硬度
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの試験片を用いて、JIS K 5600−5−4に準じて、表面の鉛筆硬度を測定した。
(9)曲げ強度
長さ25mm×幅10mm×厚み1mmの試験片を用いて、島津製作所社製「オートグラフAG−5kNE」(支点間距離20mm、0.5mm/分)にて25℃で曲げ試験を行い、下記の基準で評価した。
〇・・・10MPaの応力でも割れなかったもの
×・・・10MPaの応力で割れたもの
(10)耐溶剤性
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの試験片を用いて、イソプロピルアルコールに23℃で1時間浸漬した後、表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○・・・変化なし
×・・・白濁や荒れ等の異常が見られる
(11)抗菌性
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの試験片を用いて、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)に関して、JIS Z 2801に準拠して試験を行い、以下の通り評価した。なおリファレンスには長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの青板ガラスを用いた。
○・・・いずれの菌に関しても抗菌活性値2以上
×・・・いずれかの菌に関して抗菌活性値2未満
(12)難燃性
長さ125mm×幅13mm×厚み3mmの試験片を用いて、UL94HB燃焼性試験方法に基づき燃焼速度(mm/分)を測定し、下記の基準で評価した。
〇・・・燃焼速度が20mm/分未満のもの
△・・・燃焼速度が20mm/分以上40mm/分未満のもの
×・・・燃焼速度が40mm/分以上のもの
<実施例1>
[ナノ粒子(B−1)の製造]
2−エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液90.4g(2−エチル ヘキサン酸ジルコニウム含有率44質量%、第一稀元素化学工業社製)と純水15.5 gを、オートクレーブ中で190℃16時間反応させ、反応後の沈殿物を濾別して回収し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥して、2−エチルヘキサン酸で表面修飾された酸化ジルコニウムのナノ粒子を得た。
次いで、得られた酸化ジルコニウムのナノ粒子10g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM−5103」)1.5g、トルエン90gを、フラスコ中で90℃1時間反応させ、反応液にn−ヘキサンを添加して粒子を析出させた。析出粒子を濾紙により分離後、23℃で乾燥し、2−エチルヘキサン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムのナノ粒子(B−1)を得た。
得られたナノ粒子(B−1)の平均粒子径を、電子顕微鏡で観察したところ11nmであり、X線回折装置で酸化ジルコニウム粒子の結晶構造を確認したところ、正方晶と単斜晶の割合は74/26であった。また、得られたナノ粒子の質量減少率を、TG−DTA(熱重量−示唆熱分析)装置により800℃まで測定したところ22重量%であり、ナノ粒子(B−1)中の表面修飾剤量は22重量%、金属酸化物量は78重量%であった。
[光硬化性組成物Iの調製]
成分Aとして4,4’−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン10g、成分Bとして上記ナノ粒子(B−1)90g、成分Dとして1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、「Irgacure184」)1gを、フラスコ中で60℃1時間撹拌して、光硬化性組成物Iを得た。表1に示される通り、得られた光硬化性組成物Iの粘度は25℃において10Pa・sであり、硬化収縮率は2%であった。また速硬化性を有していた。
[硬化物Iの作製]
上記光硬化性組成物Iを、150mm角のガラス板2枚を対向させ、厚み1mmのシリコン板をスペーサとした成形型に注液した。次いで、液温25℃で高圧水銀ランプを用いて、光量2J/cm2の紫外線を照射し光硬化を行った。最後に、脱型して、厚み1mmの硬化物I−(1)を得た。また、厚み3mmのシリコン板をスペーサとした成形型を用いた以外は硬化物I−(1)と同様にして、難燃性試験用の、厚み3mmの硬化物I−(2)を得た。
得られた硬化物I−(1)は、表2に示される通り、光線透過率73%、屈折率nD1.76、アッベ数νD35であり、良好な光学性能を有していた。また、線膨張係数、吸水率、表面硬度、曲げ強度、耐溶剤性などの諸特性も良好であり、抗菌性を有していた。また、得られた硬化物I−(2)は難燃性を有していた。
<実施例2〜4>
[光硬化性組成物II〜IVの調製]
表1の組成とする以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物II〜IVを得た。得られた光硬化性組成物II〜IVの特性は、表1に示される通りである。
[硬化物II〜IVの作製]
更に、実施例1と同様にして、厚み1mmの硬化物II〜IV−(1)、及び厚み3mmの硬化物II〜IV−(2)を得た。得られた硬化物II〜IV−(1)及び(2)の特性は、表2に示される通りである。
<実施例5〜9>
[光硬化性組成物V〜IXの調製]
成分Aとして4,4’−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン10g、成分Bとして上記ナノ粒子(B−1)72g、成分Cとしてフェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学社製、「POBA」)18g、成分Dとして1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、「Irgacure184」)1g、メチルエチルケトン50gを、フラスコ中で60℃1時間撹拌し、エバポレータでメチルエチルケトンを留去して、光硬化性組成物Vを得た。得られた光硬化性組成物Vの粘度、硬化収縮率、速硬化性は、表1に示される通りである。
表1の組成とする以外は、実施例5(光硬化性組成物V)と同様にして、硬化性組成物VI〜IXを得た。得られた光硬化性組成物VI〜IXの特性は、表1に示される通りである。
[硬化物V〜IXの作製]
更に、実施例1と同様にして、厚み1mmの硬化物V〜IX−(1)、及び厚み3mmの硬化物V〜IX−(2)を得た。得られた硬化物V〜IX−(1)及び(2)の特性は、表2に示される通りである。
<実施例10>
[光硬化性組成物Xの調製]
成分Aとして4,4’−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン10g、成分B及び成分Cとして、表面修飾された酸化ジルコニウムのナノ粒子をベンジルアクリレートに分散した溶液(日本触媒社製、「ジルコスターHR−101」、酸化ジルコニウム含有量60〜70重量%、表面修飾剤10〜20重量%、ベンジルアクリレート20重量%)90g、成分Dとして1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、「Irgacure184」)1gを、フラスコ中で60℃1時間撹拌して、光硬化性組成物Xを得た。得られた光硬化性組成物Xの粘度、硬化収縮率、速硬化性は、表1に示される通りである。
[硬化物Xの作製]
更に、実施例1と同様にして、厚み1mmの硬化物X−(1)、及び厚み3mmの硬化物X−(2)を得た。得られた硬化物X−(1)及び(2)の特性は、表2に示される通りである。
<比較例1〜5>
表1の組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物、並びに硬化物を得た。得られた光硬化性組成物と硬化物の諸特性は表1及び表2に示される通りである。なお、比較例4で調製した光硬化性組成物は25℃で固体であり、常温での光硬化は不可能であった。そこで、液温を50℃とする以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物の特性は表2に示される通りである。また、比較例5の光硬化性組成物から得られた硬化物は非常に脆く、線膨張係数の測定を繰り返しても毎回試験片が破断するため測定は不可能であった。
Figure 2020132760
Figure 2020132760
上記表1の結果より、実施例1〜10の光硬化性組成物は、液状で低硬化収縮であり、速硬化性に優れたものであった。また、得られた硬化物は、高屈折率かつ高アッベ数であり、線膨張係数、表面硬度などの諸特性に優れていることがわかる。
一方、ナノ粒子を配合しない比較例1、2の光硬化性組成物からは、低屈折率な硬化物しか得られず、実施例と比較して、線膨張係数、表面硬度に劣ることがわかる。また、抗菌性は有さず、難燃性に劣ることがわかる。
また、ナノ粒子を配合した比較例3から得られる硬化物は、低屈折率であり、線膨張係数、表面硬度に劣ることがわかる。また、比較例4の光硬化性組成物は、常温で固体であり、該光硬化性組成物から得られた硬化物は、比較的高屈折率であるものの、表面硬度に劣り、曲げ強度が低下することがわかる。また、比較例5の光硬化性組成物から得られた硬化物は、曲げ強度が低下し、非常に脆いことがわかる。
本発明の光硬化性組成物は、レンズ材料、光インプリント材料、コーティング剤、光学接着剤、封止剤、塗料、インク等として種々の用途に有用である。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)及び(2)の少なくとも一方で示されるイオウ含有芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物(成分A)と、表面修飾された金属酸化物のナノ粒子(成分B)を含有する液状の光硬化性組成物であって、金属酸化物(表面修飾部分を除く)の含有量が40重量%以上であることを特徴とする光硬化性組成物。
    Figure 2020132760
    Figure 2020132760
  2. 上記成分Bが、カルボン酸及びシランカップリング剤の少なくとも一方により表面修飾された酸化ジルコニウムのナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
  3. 更に、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族系モノ(メタ)アクリレート化合物(成分C)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の光硬化性組成物。
  4. 更に、光重合開始剤(成分D)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  5. 光硬化して得られる硬化物の屈折率nDが1.7以上、かつアッベ数νDが30以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  6. 請求項4記載の光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物の屈折率nDが1.7以上、かつアッベ数νDが30以上であることを特徴とする硬化物。
  7. JIS Z 2801の抗菌性試験にて、抗菌活性値が2以上であることを特徴とする請求項6記載の硬化物。
  8. UL94HB燃焼性試験(水平燃焼性試験)にて測定される燃焼速度が40mm/分以下であることを特徴とする請求項6記載の硬化物。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の硬化物よりなることを特徴とするレンズ。
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