JP2020131179A - 光学分割剤、光学分割カラム、及び光学分割剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学活性な化学物質を簡便な方法で光学分離することができる光学分割剤、光学分割カラム、及び光学分割剤の製造方法を提供する。【解決手段】(R)−3−ヒドロキシ酪酸をエーテル結合により担体上に固定化した光学分割剤。カラム容器と、カラム容器に充填された光学分割剤とを有する光学分割カラム。ハロゲン化アルキル基を側鎖に有する担体と、(R)−3−ヒドロキシ酪酸とから、脱ハロゲン化水素反応によって光学分割剤を製造する光学分割剤の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、生体活性物質として医薬領域で有効に用いられる光学活性物質の光学分割剤、光学分割カラム、及び光学分割剤の製造方法に関する。
(R)-3−ヒドロキシ酪酸(以下、R−3HBとも略す。)は、一般にケトン体と総称される化合物の一つであり、糖質の供給不足や利用障害等において脂肪酸酸化が亢進して、血中及び尿中のケトン体が増加する。そのため、このケトン体が糖尿病の病体把握に有用な指標となることが知られている。
R−3HBは、微生物による発酵生産が可能なバイオマス原料でもある(特許文献1)。この原料を基にして得られる有機材料は、生分解性や生体親和性に優れており、多くのバイオメディカル用途への利用展開が期待されている。
R−3HBのもう一つの特徴は光学活性物質であるという点であり、微生物が生合成するR−3HBはR体である。そして、光学活性物質を原料にして形成されるポリマーは、光学異性体間でステレオコンプレックスを形成し易いことがよく知られている(特許文献2)。また、異なる種類のポリマー間でもステレオコンプレックスが形成される例も知られている(特許文献3)。さらに、光学活性なポリマーのテンプレート上で、異なる光学活性モノマーがコンプレックスを形成することも知られている(非特許文献1)。このようなステレオコンプレックスの形成は、両者間の相互作用によるものであり、ある特定の位置関係で発生する。
そして、この光学異性体間の相互作用を利用することによって、光学異性体を光学分割する技術が開示されている(特許文献4)。これにより、化学合成で得られたラセミ体から、通常、生合性によってのみ得られる高付加価値な光学異性体が光学分割によって分取可能である。
ネイチャー(Nature)、429巻、52−55頁(2004)
R−3HBはR体であるため、他の光学活性物質と相互作用することが期待されるが、未だ、ステレオコンプレックス形成による光学分割に関する技術は開示されていない。
血中及び尿中のケトン体としてのR−3HBの濃度は、生理学的に重要な指標の一つであるため、その濃度を簡便にモニターできるならば非常に有効な診断技術の一つとなり得る。従って、R−3HBを血中及び尿中から簡便に光学分割する方法が望まれる。また、光学活性なモノマーを選択的に光学分離して、重合に寄与させることによって、光学活性なポリマーを得ることも可能である。このような簡便な方法として、ステレオコンプレックス形成による光学分割法の開発が望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、光学活性な化学物質を簡便な方法で光学分離することができる光学分割剤、光学分割カラム、及び光学分割剤の製造方法を提供することを目的とする。
血中及び尿中のケトン体としてのR−3HBの濃度は、生理学的に重要な指標の一つであるため、その濃度を簡便にモニターできるならば非常に有効な診断技術の一つとなり得る。従って、R−3HBを血中及び尿中から簡便に光学分割する方法が望まれる。また、光学活性なモノマーを選択的に光学分離して、重合に寄与させることによって、光学活性なポリマーを得ることも可能である。このような簡便な方法として、ステレオコンプレックス形成による光学分割法の開発が望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、光学活性な化学物質を簡便な方法で光学分離することができる光学分割剤、光学分割カラム、及び光学分割剤の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る光学分割剤は、(R)−3−ヒドロキシ酪酸をエーテル結合により担体上に固定化したものである。
第1の発明に係る光学分割剤において、多座配位金属を複合することができる。
第1の発明に係る光学分割剤において、前記多座配位金属は、6座配位金属若しくは8座配位金属であることが好ましい。
第1の発明に係る光学分割剤において、前記担体は、有機ポリマー粒子であることが好ましい。
前記目的に沿う第2の発明に係る光学分割カラムは、カラム容器と、該カラム容器に充填された第1の発明に係る光学分割剤とを有する。
前記目的に沿う第3の発明に係る光学分割剤の製造方法は、ハロゲン化アルキル基を側鎖に有する担体と、(R)−3−ヒドロキシ酪酸とから、脱ハロゲン化水素反応によって光学分割剤を製造する。
第1の発明に係る光学分割剤は、R−3HBと光学活性化合物との光学異性に基づく相互作用を利用して、光学活性化合物の光学異性体分割を容易に行うことができる。
第2の発明に係る光学分割カラムは、光学異性体混合溶液を通すだけで、光学異性体を簡便に分割することができる。
第3の発明に係る光学分割剤の製造方法は、光学活性化合物の光学異性体分割に有用な光学分割剤を簡便かつ確実に製造することができる。
続いて、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施の形態に係る光学分割剤は、(R)−3−ヒドロキシ酪酸をエーテル結合により担体上に固定化したものであり、さらに多座配位金属を複合することにより高い光学分割機能を発揮し、光学活性な化学物質を分離するものである。
本実施の形態において、(R)−3−ヒドロキシ酪酸(R−3HB)とは、下記構造式(1)に示す化学構造を持つ化合物である。ここで、水酸基が結合した3級炭素は立体配置がR体に固定されている。
本発明の一実施の形態に係る光学分割剤は、(R)−3−ヒドロキシ酪酸をエーテル結合により担体上に固定化したものであり、さらに多座配位金属を複合することにより高い光学分割機能を発揮し、光学活性な化学物質を分離するものである。
本実施の形態において、(R)−3−ヒドロキシ酪酸(R−3HB)とは、下記構造式(1)に示す化学構造を持つ化合物である。ここで、水酸基が結合した3級炭素は立体配置がR体に固定されている。
本実施の形態において、エーテル結合による固定化とは、下記反応式(2)に基づいて結合した様式をいう。ここで丸円中にPで示したものは、固定用の担体を意味し、有機ポリマーや有機ポリマー粒子、無機粒子、又は有機無機ハイブリッド粒子等の微粒子である。これらの担体の中で、有機ポリマー粒子が取り扱いの容易さから好適に用いられる。有機ポリマー粒子としては、ポリ(スチレンージビニルベンゼン)架橋粒子が好適であり、さらに多孔質の架橋粒子は、表面積が大きく、担持量を増やすことができるのでより好適に用いられる。
また、R1で示した置換基は、炭素数1〜20の範囲の有機基であり、好ましくは屈曲性のあるアルキレン基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜3のメチレン基、エチレン基、及びプロピレン基である。これらのアルキレン基は直鎖型及び分岐型のいずれでも好ましく使用できる。
また、R1で示した置換基は、炭素数1〜20の範囲の有機基であり、好ましくは屈曲性のあるアルキレン基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜3のメチレン基、エチレン基、及びプロピレン基である。これらのアルキレン基は直鎖型及び分岐型のいずれでも好ましく使用できる。
エーテル結合反応は、反応式(2)に示したように、担体Pが有する側鎖のハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子の置換反応とそれに続くエーテル化反応の2段階反応で行うのが最も好適に用いられる方法である。
担体P側鎖のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子の置換反応において、ハロゲンとしては塩素、臭素、又はヨウ素を用いることができるが、通常、塩素化合物として入手するのが容易である。一般的に入手が容易な塩素化合物として、クロロメチル化ポリ(スチレンージビニルベンゼン)架橋粒子が好適に用いられる。ただし、塩素化合物よりヨウ素化合物の方が反応性が高く、より効果的にエーテル結合が形成されやすい。そのため、塩素化合物をヨウ素化合物に、好ましくはハロゲン化アルキル基の一種である塩化アルキル基を同じくハロゲン化アルキル基の一種であるヨウ化アルキル基に変換することが好適に行われる。ここで、ヨウ化アルキル基のアルキルとは、反応式(2)のR1のアルキレンに対応するものである。
このヨウ素化反応は、有機溶剤中で行われることが好ましく、反応温度として、50〜100℃の温度範囲が好ましく、この温度範囲で使用する溶剤の沸点で還流によって温度制御することが最も好ましい方法である。ここで溶剤としては、反応式(2)の反応を阻害しない溶剤であれば何ら制限なく用いることができるが、後段の反応で使用するR−3HBを溶解し、また当該塩素及びヨウ素化合物が浮き上がらず、均一に攪拌可能な溶剤であることが好ましい。このような好適な溶剤としては、例えば、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、又はキシレン等の溶剤が好適に用いられる。さらに、ヨウ素化反応の進行の程度は、塩素化合物からヨウ素化合物への変化に伴う黄色への色調変化によって確認することができる。
担体Pのハロゲン原子の置換反応に引き続いて、反応式(2)に示したように、担体PとR−3HBとのエーテル化反応を行うが、この反応は脱ヨウ化水素反応(脱ハロゲン化水素反応の一種)によって進行する。この脱ヨウ化水素反応は、アルカリの存在下で行うことが速やかに反応が進行するため好ましい方法である。アルカリとして、水素化ナトリウム、油浸水素化ナトリウム、金属ナトリウム、又は水素化カルシウム等が好適に用いられる。これらのアルカリを反応系に添加する際には、十分冷却した状態で添加するのが安全であり、室温より低い温度で、水分をできる限り排除した雰囲気で行うことが好ましい態様である。この反応の際、溶剤を用いて行うことが好ましく、前段階のヨウ素化反応と同じ溶剤を使用する方法が最も簡便な方法である。アルカリの添加後、反応をより速やかに進行させるために、反応温度を上昇させることも好ましい方法であり、この場合、80〜150℃の温度範囲が好ましい温度範囲であり、用いる溶剤の沸点で還流によって温度制御を行う方法が最も簡便で確実な方法である。
本実施の形態において、多座配位金属とは、中心金属が配位サイトを複数有しており、下記の化学式(3)に示すように、担体Pにエーテル結合により固定化されたR-3HB残基が二つの配位サイトに配位してなる金属錯体を形成し得る金属である。光学異性体分割をするためには、光学異性体が同じ金属上に配位し近接することが有効である。そのため、4座以上の配位サイトを有する金属が好ましい。さらに好ましくは、R−3HB残基と分割すべき光学異性体がより近接することが効果的であるため、化学式(3)に示したように、6座配位金属若しくは8座配位金属が好適に用いられる。
ここで、6座配位金属とは8面体型結合錯体を形成し得るものである。このような6座配位金属としては、多くの金属種があり、特に問題なく、本発明の光学分割剤に用いることができる。ただし、取り扱いの容易さや安全性などの面から、Ca、Mg、Ba、又はSr等のアルカリ土類金属類が好ましく用いられる。また、8座配位金属としては、Csがあり、これは分割すべき光学異性体がさらに近接した位置に配位可能であるため、より効果的に立体的な相互作用が働き、光学分割がより速やかに進行するため好適である。
下記の化学式(4)は光学異性体の混合物である乳酸メチルの6座配位金属錯体による分割を模式的に示したものである。ここで、(S)−乳酸メチルがR−3HBとの相互作用により金属の配位サイトに配位し、一方の(R)−乳酸メチルは相互作用が小さいため、系中に溶出していき、光学分割が達成される。
本実施の形態において、多座配位金属と、R−3HBをエーテル結合により固定化した担体とによる、光学分割剤の製造は、多座配位金属を溶解若しくは分散した溶液と、R−3HBをエーテル結合により固定化した担体の溶液若しくは分散液とを混合することによって実施できる。ここで、多座配位金属は一般的に塩の形で溶液中に溶解若しくは分散しており、ここにR−3HB残基が配位する。この際、金属種の対アニオン種がR−3HBのカルボキシル基よりもpKa値が小さい場合、R-3HB残基の配位が不十分となることがあるため、対アニオン種としては、R−3HBよりもpKa値が大きなものが好ましく用いられる。このような金属種の対アニオン種としては、例えば、炭酸イオンが最も好適に用いられる。
多座配位金属と、R−3HBをエーテル結合により固定化した担体とから、光学分割剤を作製するためには、一般的に溶剤を使用する。ここで用いる溶剤は、配位金属錯体形成及びそれに続く光学異性体分割に抑制作用を及ぼさないものであれば何ら制限なく用いることができる。好適な溶剤を具体的に上げると、水、メタノール、エタノール、トルエン、又はこれらの混合溶剤等が好ましく用いられる。
以上説明した本実施の形態に係る(R)−3−ヒドロキシ酪酸をエーテル結合により担体上に固定化した光学分割剤は、R−3HBを機能部位とし、さらに6座配位金属や8座配位金属等の多座配位金属を複合することにより高い光学分割機能を発現するものである。そして、該光学分割剤中のR−3HBと溶液中に共存する光学異性体混合物の中の特定の光学異性体との相互作用に基づき、これらを分離分割することができる。本発明の光学分割剤は、この光学分割機能を活用して、バイオメディカルや吸着分離機能材料等の多様な用途に好適に用いることができる。特に、この光学分割剤をカラム容器に充填した光学分割カラムを用いれば、光学異性体混合溶液を通すだけで、光学異性体を簡便に分割することができる。
以下、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明するが、これらの実施例は何ら本発明の技術的範囲を制限するものではない。
[R−3HB担持ポリスチレン担体ビーズ(R−3HB−PS)の合成]
(実施例1)
R−3HBをエーテル結合により固定化したポリスチレン担体ビーズを以下の反応式(5)に示す反応に従って合成した。
(実施例1)
R−3HBをエーテル結合により固定化したポリスチレン担体ビーズを以下の反応式(5)に示す反応に従って合成した。
1%ジビニルベンゼンで架橋したクロロメチル化ポリスチレン樹脂(100−200メッシュ)(Cl−PS)(2g、2.4mmol Cl/g)にヨウ化ナトリウム(0.72g、4.8mmol)とアセトン(100mL)を100mLフラスコに加え、これらの混合物を70℃で24時間加熱還流した。その後、Cl−PS樹脂を濾取しアセトンで洗浄した。生成物は、室温で真空乾燥し淡黄色のヨードメチル化した担体ビーズ(I−PS)として得られた。収量は2.54gであった。
次に、(R)−3−ヒドロキシ酪酸(R−3HB)(0.42g、4mmol)と脱水したジメチルホルムアミド(DMF)50mLを100mLの二口フラスコに加えた。鉱油を含侵した水素化ナトリウム(0.14g、6mmol)をゆっくりと室温、窒素気流中で加えた。混合物は、室温で3時間攪拌し、次に、ヨードメチル化したポリスチレン担体ビーズ(I−PS)1gを加えた。反応は、120℃で24時間攪拌して行い、反応したI−PSは濾取し、DMF(10mLで3回)、メタノール(10mLで3回)、ジクロロメタン(10mLで3回)、メタノール:水=1:1(容量比)の混合溶液(10mLで3回)、そしてメタノール(10mLで3回)で徹底的に洗浄した。得られたR−3HB担持ポリスチレン担体ビーズ(R−3HB−PS)は、真空下で一晩乾燥した。
生成したR−3HB−PSの構造の確認は、赤外吸収(FTIR)スペクトル分析で行った。FTIRスペクトルは、KBrペレット法でパーキンエルマー社のSpectrum GX FTIRを用いて、3950−450cm−1の範囲で測定した。図1に、Cl−PS、R−3HB、そして生成物のR−3HB−PSのFTIRスペクトルを示す。
Cl−PSには674cm−1のC−Clの特性吸収が確認されるが、R−3HB−PSでは消失した。そして新たに三つの吸収が、3387cm−1、1724cm−1、及び1162cm−1に現れた。これらの吸収は、カルボキシル基のO−HとC=Oの特性吸収とエーテル結合(C−O−C)の特性吸収であり、R−3HBがエーテル結合によりPS樹脂に上手く導入された(固定化した)ことを示している。
次に、(R)−3−ヒドロキシ酪酸(R−3HB)(0.42g、4mmol)と脱水したジメチルホルムアミド(DMF)50mLを100mLの二口フラスコに加えた。鉱油を含侵した水素化ナトリウム(0.14g、6mmol)をゆっくりと室温、窒素気流中で加えた。混合物は、室温で3時間攪拌し、次に、ヨードメチル化したポリスチレン担体ビーズ(I−PS)1gを加えた。反応は、120℃で24時間攪拌して行い、反応したI−PSは濾取し、DMF(10mLで3回)、メタノール(10mLで3回)、ジクロロメタン(10mLで3回)、メタノール:水=1:1(容量比)の混合溶液(10mLで3回)、そしてメタノール(10mLで3回)で徹底的に洗浄した。得られたR−3HB担持ポリスチレン担体ビーズ(R−3HB−PS)は、真空下で一晩乾燥した。
生成したR−3HB−PSの構造の確認は、赤外吸収(FTIR)スペクトル分析で行った。FTIRスペクトルは、KBrペレット法でパーキンエルマー社のSpectrum GX FTIRを用いて、3950−450cm−1の範囲で測定した。図1に、Cl−PS、R−3HB、そして生成物のR−3HB−PSのFTIRスペクトルを示す。
Cl−PSには674cm−1のC−Clの特性吸収が確認されるが、R−3HB−PSでは消失した。そして新たに三つの吸収が、3387cm−1、1724cm−1、及び1162cm−1に現れた。これらの吸収は、カルボキシル基のO−HとC=Oの特性吸収とエーテル結合(C−O−C)の特性吸収であり、R−3HBがエーテル結合によりPS樹脂に上手く導入された(固定化した)ことを示している。
[D−乳酸メチルとL−乳酸メチルの光学分割]
(実施例2)
R−3HB−PS(25mg)をサンプル瓶に入れ、D−乳酸メチルとL−乳酸メチルの混合物(以下、D−乳酸メチルとL−乳酸メチルをまとめてD,L−乳酸メチルと表記する)(20mM)のトルエン:メタノール=3:1(容量比)溶液0.2mL(40×10−4mmol)を入れた。
室温で5分間攪拌した後、溶液中のD,L−乳酸メチルの濃度をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。
(実施例2)
R−3HB−PS(25mg)をサンプル瓶に入れ、D−乳酸メチルとL−乳酸メチルの混合物(以下、D−乳酸メチルとL−乳酸メチルをまとめてD,L−乳酸メチルと表記する)(20mM)のトルエン:メタノール=3:1(容量比)溶液0.2mL(40×10−4mmol)を入れた。
室温で5分間攪拌した後、溶液中のD,L−乳酸メチルの濃度をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。
(実施例3)
R−3HB−PS(25mg)をサンプル瓶に入れ、次に炭酸カルシウムの水溶液21×10−5mmolを加えた。最後にD,L−乳酸メチル(20mM)のトルエン:メタノール=3:1(容量比)溶液0.2mL(40×10−4mmol)を加えた。
室温で5分間攪拌した後、溶液中のD,L−乳酸メチルの濃度をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。
R−3HB−PS(25mg)をサンプル瓶に入れ、次に炭酸カルシウムの水溶液21×10−5mmolを加えた。最後にD,L−乳酸メチル(20mM)のトルエン:メタノール=3:1(容量比)溶液0.2mL(40×10−4mmol)を加えた。
室温で5分間攪拌した後、溶液中のD,L−乳酸メチルの濃度をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。
(実施例4)
炭酸カルシウムの水溶液の量を42×10−5mmolとした以外は実施例3と同様に行った。
炭酸カルシウムの水溶液の量を42×10−5mmolとした以外は実施例3と同様に行った。
(実施例5)
炭酸カルシウムの水溶液の代りに、炭酸セシウムの水溶液21×10−5mmolを加えた以外は実施例3と同様に行った。
炭酸カルシウムの水溶液の代りに、炭酸セシウムの水溶液21×10−5mmolを加えた以外は実施例3と同様に行った。
(実施例6)
炭酸セシウムの水溶液の量を42×10−5mmolとした以外は実施例5と同様に行った。
炭酸セシウムの水溶液の量を42×10−5mmolとした以外は実施例5と同様に行った。
(比較例1)
サンプル瓶に、D,L−乳酸メチル(20mM)のトルエン:メタノール=3:1(容量比)溶液0.2mL(40×10−4mmol)を入れた。
室温で5分間攪拌した後、溶液中のD,L−乳酸メチルの濃度をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。
サンプル瓶に、D,L−乳酸メチル(20mM)のトルエン:メタノール=3:1(容量比)溶液0.2mL(40×10−4mmol)を入れた。
室温で5分間攪拌した後、溶液中のD,L−乳酸メチルの濃度をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。
実施例2〜6及び比較例1のGC分析は、島津製作所製ガスクロマトグラフ(GC)モデル2014で、キャピラリーカラム(Varian wall coated open tubular with CP−cyclodextrin(50m、ID 0.25mm、film thickness 0.25μm)を用い、キャリヤーガスとしてヘリウム(流量 35mL/min)を用いて行った。オーブン温度は、初期温度70℃で5分保持した後、2℃/minで100℃まで昇温して、10分間保持するようにプログラム化した。
実施例2〜6で得られたGCスペクトルを図2に示す。また、実施例2〜6及び比較例1で得られたGCスペクトルのD,L−乳酸メチルのそれぞれのピーク面積比率から求めた光学分割割合を表1に示す。
実施例2〜6で得られたGCスペクトルを図2に示す。また、実施例2〜6及び比較例1で得られたGCスペクトルのD,L−乳酸メチルのそれぞれのピーク面積比率から求めた光学分割割合を表1に示す。
以上の結果から、R−3HB担持ポリスチレン担体ビーズ(R−3HB−PS)が、効率的に光学異性体である(R)−D−乳酸メチルと(S)−L−乳酸メチルを光学分割し、より選択的に(S)−L−乳酸メチルと相互作用することを確認した。また、下記反応式(6)に示すように、光学分割剤に多座配位金属の一種である6座配位金属のCaを複合した実施例3及び実施例4の場合や、8座配位金属のCsを複合した実施例5及び実施例6の場合、多座配位金属を複合していない実施例2よりも高い光学分割機能を発揮することを確認した。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
Claims (6)
- (R)−3−ヒドロキシ酪酸をエーテル結合により担体上に固定化したことを特徴とする光学分割剤。
- 請求項1記載の光学分割剤において、多座配位金属を複合したことを特徴とする光学分割剤。
- 請求項2記載の光学分割剤において、前記多座配位金属は、6座配位金属若しくは8座配位金属であること特徴とする光学分割剤。
- 請求項1〜3のいずれか1記載の光学分割剤において、前記担体は、有機ポリマー粒子であることを特徴とする光学分割剤。
- カラム容器と、該カラム容器に充填された請求項1〜4のいずれか1記載の光学分割剤とを有することを特徴とする光学分割カラム。
- ハロゲン化アルキル基を側鎖に有する担体と、(R)−3−ヒドロキシ酪酸とから、脱ハロゲン化水素反応によって光学分割剤を製造することを特徴とする光学分割剤の製造方法。
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