JP2020130181A - インジェクションピペット - Google Patents

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Abstract

【課題】哺乳類の卵細胞質内注入法に使用され、圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットにおいて、オペレーションリキッド(フロリナート)を充填する必要がなく、PMMの効率的な駆動を実現することができ、さらに操作性が向上し、インジェクションピペットによる卵子の膜の伸展性、穿刺性に優れたインジェクションピペットを提供する。【解決手段】 インジェクションピペット1は、先端側の外周面4及び内周面がテーパ状に構成された主テーパ部3を有し、主テーパ部3よりさらに先端側において、インジェクションピペット1の内周面のテーパ角度が主テーパ部3のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部7を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、卵子、細胞等に穿刺するインジェクションピペットに関し、特に、卵細胞質内注入法に使用し、圧電素子の駆動によって微小駆動されるインジェクションピペットに関する。
従来、バイオテクノロジーにおいては、遺伝子・細胞等に人工的操作を加え、新しい遺伝情報体、受精卵を作成することが行われている。光学顕微鏡で観察することできる細胞、核、受精胚等に対して、物理的・機械的操作を加えるマイクロマニピュレータが用いられている。マイクロマニピュレータは、細胞等の人工的操作に不可欠なものとなっている。
マイクロマニピュレータには、微小器具(マイクロピペット)が装備され、マイクロピペットを直線方向に移動させる微小移動装置が備えられている。尚、マイクロピペットは、インジェクションピペットともいう。
[コンベンショナル法による卵子細胞質内への顕微注入操作]
図13は、卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのコンベンショナル法を説明する図である。図13(a)に示すように、コンベンショナル法では、ホールディングピペット68に固定された卵子60の破膜に先端が鋭利なスパイク加工されたマイクロピペット(以下、「コンベンショナルピペットCV」と記す。)が用いられている。精子70は、コンベンショナルピペットCVの内部に吸引されている。
このため、図13(b)に示すように、卵子60の透明帯61をコンベンショナルピペットCVが貫通する間、卵子全体が内側に変形して、透明帯61が押されることにより卵細胞質65への内圧上昇が発生することがある。
また、コンベンショナルピペットの尖端部75(図13(a))は鋭利にスパイク加工されているため、図13(c)に示すように卵細胞質膜64の伸展が十分にされないままに、矢印で示す箇所にストレスがかかり破膜する割合が上昇する。
また、図13(d)に示すように、卵細胞質膜64の穿刺では、コンベンショナルピペットCVの内部に卵細胞質65の一部を吸引するため、卵細胞質65に攪拌が起こることがある。
このため、鋭利な先端を有するマイクロピペットを用いるコンベンショナル法に代えて、圧電素子を使用して先端がフラットなマイクロピペットで卵子を穿刺する圧電微小駆動装置(ピエゾマイクロマニピュレータ(「PMM」ともいう))が知られている。
特許文献1には、圧電微小駆動装置が開示されている。特許文献1によれば、圧電微小駆動装置は、保持体に当接部材を介して適切な摩擦力で支持されるマイクロピペット微小器具と、該微小器具に形成される鍔部と、該鍔部に設けられ、かつ微小器具と同心円状に配置される圧電素子と、該圧電素子に取り付けられ、圧電素子の駆動により微小器具に衝撃力を付与する慣性体とを具備するものであり、圧電素子の駆動により、慣性体による衝撃力を発生させ、これを利用して卵子を穿刺することが開示されている。
また、特許文献2乃至特許文献4においても、圧電素子の駆動により、慣性体による衝撃力を発生させ、これを利用して卵子を穿刺することが開示されている。
このように、所謂ピエゾICSI法における圧電微小駆動装置においては、先行技術文献に記したような、圧電素子の後端部に固定される慣性体が設けられている。
[ピエゾICSI法による卵子細胞質内への顕微注入操作]
ここで、圧電微小駆動装置を用いた精子の卵子細胞質内への顕微注入操作について説明する。図14は、卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのピエゾICSI法を説明する図である。
図14(a)に示すように、注入操作を行う卵子60の第一極体66を6時もしくは12時の位置にホールディングピペット68によって保持し、卵子60の穿刺を行う際に極体の直下の卵子核にダメージを与えないようにする。
図14(b)に示すように、透明帯61にインジェクションピペットPIの先端を軽く押し当てる。このときの精子70は、インジェクションピペットPI先端から少し離れたインジェクションピペットPIの内部に位置するようにする。
インジェクションピペットPI先端が透明帯61に軽く接触した状態で、圧電素子(ピエゾ)を駆動させ、インジェクションピペットPIが透明帯61に刺さり最後の一層までインジェクションピペットPIを押し進める。最後の一層を残し、圧電素子を止めて、手動で押し開ける。
尚、圧電素子の駆動設定は、圧電素子の振動回数、振動の強度の大きさについて行う。また、圧電素子の駆動設定は、透明帯61等の穿刺状況に応じて変更する。インジェクションピペットPI内に透明帯61の断片が入っている場合は、卵子60の外もしくは囲卵腔67に排出する。
図14(c)に示すように、精子70をインジェクションピペットPIの先端までに移動させ、インジェクションピペットPIの先端を卵細胞質膜64に押し当てて、卵細胞質膜64を伸展させる。卵細胞質65の半分から2/3の位置まで針先を進める。
このとき、卵細胞質膜64は伸展して、図14(c)に示すように、変形する。卵細胞質65の半分から2/3の位置で圧電素子48を駆動させる。即ち、圧電微小駆動装置を用いて顕微授精操作における卵細胞質膜64を穿刺する際、インジェクションピペットPIの先端を卵細胞質膜64に接触させて押すように移動させて、卵細胞質膜64を充分伸展させた後に圧電微小駆動装置の圧電素子を稼働させて破膜し、精子70を卵子60に注入して操作を完了させる。
卵細胞質膜64を穿破(破膜)した後、なるべく培養液を注入しないように精子70を注入する。このとき、図14(d)に示すように、卵細胞質65は、元の状態に復元するように矢印で示す方向に移動する。
尚、卵子細胞質膜64を充分に伸展できず、卵子細胞質膜64の伸展開始個所から中心に向けて伸展する途中で破膜した場合には、圧電微小駆動装置を稼働させずに精子70を注入するようにする。精子70を注入後、ゆっくりインジェクションピペット等を引き抜くようにする。これにより、ブタの卵子細胞質内への顕微注入操作が完了する。
この場合、卵細胞質内注入法にあたり、精子注入用のインジェクションピペットのセッティングは、ピペットホルダ35(図3に示す)に取り付ける前に、予めオペレーションリキッド(フロリナート)を吸引した充填器であるマイクロピペッターを用いてインジェクションピペットの中心付近にオペレーションリキッド(フロリナート)を約1から1.5cmの幅で充填しておく。尚、充填器は、マイクロピペッターに限らず、インジェクションピペット内にオペレーションリキッドを充填できる器具であればよい。
このオペレーションリキッド(フロリナート)のインジェクションピペットへの充填は、圧電素子からの衝撃力をインジェクションピペットの先端に効率よく伝えるために行うものであり、衝撃伝達液として作用するものである。
尚、これら所謂ピエゾICSI法のマイクロマニピュレータにおいて、圧電微小駆動装は卵子を穿刺する際に使用するものであり、通常、インジェクションピペットは圧電素子の駆動による慣性体からの衝撃力による卵子を穿刺する際の微小駆動の他、他のマニピュレータによってその他の位置決め操作が可能である。
特公平6−98582 特公平6−48975 特公平6−98583 特公平7−73830
上述したように、精子注入用のインジェクションピペットのセッティングは、圧電素子からの衝撃力をインジェクションピペットの先端に効率よく伝えるために、ピペットホルダに取り付ける前に、予めオペレーションリキッド(フロリナート)を吸引したマイクロピペッターを用いてインジェクションピペットの中心付近にオペレーションリキッド(フロリナート)を約1から1.5cmの幅で充填する。これによりピペットホルダに取り付ける前にインジェクションピペット内にオペレーションリキッドを充填する必要があり、操作に時間を要していた。
このため、フロリナート等のオペレーションリキッドを使用することなく、インジェクションピペットに関する操作を簡略化してPMMの効率的な駆動を実現することが求められている。
このように、オペレーションリキッドを使用することなしに穿刺性、操作性及び膜高伸展性に優れたインジェクションピペットが求められている。
そこで、本発明は、哺乳類における卵細胞質内注入法に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットであって、インジェクションピペットの中心付近にオペレーションリキッド(フロリナート)を充填する必要がなく、既存の構成要素を用いることにより、PMMの効率的な駆動を実現することができ、さらに操作性が向上し、圧電素子を駆動する前のインジェクションピペットによる卵子の膜の伸展性、穿刺性に優れ、胚盤胞発生率を向上させることが可能であって、それにより卵子生存率の向上に繋げることが可能なインジェクションピペットを提供することを目的とする。
上記目的達成のため、本発明に係るインジェクションピペットは、哺乳類における卵細胞質内注入法に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって当該圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動される先端側の外周面及び内周面がテーパ状に構成された主テーパ部を有するインジェクションピペットであって、当該インジェクションピペットは、前記主テーパ部よりさらに先端側において、前記インジェクションピペットの内周面のテーパ角度が前記主テーパ部のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部を有することを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットはガラス管であり、前記先端テーパ部は、先端に熱を加えて当該ガラス管を収縮させることにより形成される熱収縮部であることを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの前記先端テーパ部は、さらに前記熱収縮部と前記主テーパ部との間において、テーパ角度が前記主テーパ部の外周面のテーパ角度よりも大きい外周面を有し、かつ、前記主テーパ部の内周面のテーパ角度よりも大きい内周面を有する副テーパ部を有することを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの前記先端テーパ部は、テーパ角度が前記主テーパ部の外周面のテーパ角度よりも大きい外周面からなり、かつ、前記主テーパ部の内周面のテーパ角度よりも大きい内周面からなることを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの最先端に位置する卵細胞の透明体又は卵細胞質膜に接する円環部は、前記インジェクションピペットの先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、前記インジェクションピペットの前記円環部から前記外周面及び前記内周面への移行部は面取りがなされていることを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットは、内部に注入する衝撃伝達液として培養液を利用可能であることを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの内部に注入された前記衝撃伝達液の当該インジェクションピペット先端側に隣接してミネラルオイルを吸引し、さらに当該ミネラルオイルの前記インジェクションピペット先端側に隣接して卵細胞質内に注入する液体を吸引して使用することを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの先端の内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きく、かつ、当該精子を前記インジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを前記精子の頭部の直径の値以外に有することを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの前記熱収縮部は前記主テーパ部によりも外径に対する内径の割合が小さいことを特徴とする。
また、本発明に係る前記インジェクションピペットの前記主テーパ部における外径に対する内径の割合は80%以上100%未満であることを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットは、前記圧電素子に置換して電歪素子の駆動によって当該電歪素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されることを特徴とする。
また、本発明に係るインジェクションピペットは、前記卵細胞質内注入法に換えて、核移植における徐核操作又はバイオプシーによる核球採取に使用されることを特徴とする。
本発明によれば、卵細胞質内注入法という非常に微小な領域での作業について、原理が未知の部分が多いものの、発明者は試行錯誤の結果、以下のような効果を得られることを見出したものである。
即ち、本発明によれば、先端側に主テーパ部を有するインジェクションピペットは、主テーパ部よりさらに先端側において、内周面のテーパ角度が主テーパ部のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部を設けることにより、内周面が先端に向かって縮径されるため、インジェクションピペット内の培養液等の流れを調整することできインジェクタの操作性が向上する。
また、インジェクションピペットの先端テーパ部は、先端に熱を加えてガラス管を収縮させることにより形成される熱収縮部を有し、熱収縮部は先端を丸めた曲面となって先端の内径が狭くなるため、インジェクタによる培養液等の吸引と吐出とを微妙に調節できるようになり、ピエゾICSI法におけるマイクロマニピュレータのインジェクタの操作性が向上する。
本発明によるインジェクションピペットは、最先端に位置する円環部がインジェクションピペットの先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、インジェクションピペットの円環部から外周面及び内周面への移行部は面取りがなされていることにより、試行錯誤の結果、卵細胞質への内圧上昇が発生することがないことが判明した。これにより、穿刺性、操作性及び膜高伸展性に優れたインジェクションペットを提供することができる。
また、本発明に係るインジェクションピペットは、そもそもの構成要素である培養液を衝撃伝達液として利用することによって、フロリナート等のオペレーションリキッドを殊更用意することなく、従来と同様のピエゾICSI法による卵細胞質内の注入が可能となる。
また、本発明に係るインジェクションピペットによれば、インジェクションピペット内にオペレーションリキッドを注入する必要がなく、卵細胞質内の注入工程を簡素化することができる。
また、本発明に係るインジェクションピペットは、PMMによる卵子・胚に対して操作を行う際に確実な穿刺性能を有している。即ち、コンベンショナル法は、ピペットの形状、卵子の質および操作者の熟練度により穿刺もばらつきが発生する恐れがあるが、本発明に係るインジェクションピペットは、安定した穿刺性能により膜を十分に伸展して毎回同じような穿刺を行うことが可能である。
また、本発明に係るインジェクションピペットは先端形状を丸めることで、老化卵子の脆弱な卵細胞質膜を十分に伸展させることが可能となり、精子注入後の卵子生存率の向上が期待できる。
本発明に係るインジェクションピペットは、特に、穿刺性とインジェクタの操作性が重要なDNA、RNA注入や胚盤胞へのES細胞注入に有効である。また、それらのみならず、卵細胞質内注入法に換えて、核移植における除核操作、バイオプシーによる核球採取にも有効に使用可能である。
本発明によるインジェクションピペットの外観、構成を示す図であり、(a)は、インジェクションピペットの全体を示す図、(b)はインジェクションピペットの主テーパ部と主テーパ部の先端側に位置する先端テーパ部の外形を示す図、(c)は、図1(b)に示す破線円内の領域Aの先端テーパ部の構成を示す拡大断面図である。 ICSI操作に用いるインジェクションピペットの熱収縮部における先端の側面の形状及び各部の大きさを示す拡大した断面図であり、(a)は先端をフラットにした形状、(b)は先端を小さく丸めた熱収縮部の形状、(c)は先端を大きく丸めた熱収縮部の形状を示す。 本発明に係るインジェクションピペットが接続された圧電微小駆動装置の構成を示すブロック図である。 インジェクションピペットによるブタ卵子透明体への穿刺性、操作性の測定評価フローを示す図である。 インジェクションピペット内に吸引した培養液量の違いによるPMMの穿刺性の測定結果を示すグラフであり、(a)はコントローラのスピード2における穿刺の測定結果、(b)はコントローラのスピード5における穿刺の測定結果である。 図5に示すインジェクションピペット内に吸引した培養液量の違いによるインジェクタの操作性の評価結果を示す図である。 オペレーションリキッド無しでのブタ卵子透明体の穿刺性の測定結果を示す図である。 各種インジェクションピペットの穿刺性、操作性の測定評価結果を示す図である。 各種インジェクションピペットの卵細胞質膜の伸展性の測定結果を示す図である。 インジェクションピペット内にオペレーションリキッド無しでのブタ顕微授精の結果を示す図である。 7種類の形状のインジェクションピペットによるオペレーションリキッドの有無でのブタ顕微授精における生存卵子数とその割合(卵子生存率(%))及び胚盤胞発生数とその割合(胚盤胞発生率(%))の結果を示す図である。 図11に示す7種類の形状のインジェクションピペットによるオペレーションリキッドの有無でのブタ顕微授精における胚盤胞発生率の結果をグラフで示す図である。 卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのコンベンショナル法を説明する図である。 卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのピエゾICSI法を説明する図である。
以下、図面を参照して、本発明によるインジェクションピペットを実施するための形態について説明する。尚、本発明は、哺乳類における卵細胞質内注入法(ICSI)に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットに関するものであり、本発明に係るインジェクションピペットは、主テーパ部よりさらに先端側において、インジェクションピペットの内周面のテーパ角度が主テーパ部のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部を有することにより、オペレーションリキッド無しで内部に注入する培養液を衝撃伝達液として利用可能であることを発明者が試行錯誤の結果見出したものである。
[インジェクションピペットの構成]
図1は、本発明によるインジェクションピペットの外観、構成を示す図であり、図1(a)はインジェクションピペットの全体を示す図、図1(b)はインジェクションピペットの主テーパ部と主テーパ部の先端側に位置する先端テーパ部の外形を示す図、図1(c)は、図1(b)に示す破線円内の領域Aの先端テーパ部の構成を示す拡大断面図である。
尚、本発明は図12において説明した卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのピエゾICSI法のインジェクションピペットPIの形状及びその運用方法について改良を行ったものであり、図12と同じ内容については同じ符合を使用して説明する。
図1(a)に示すように、インジェクションピペット1は、ガラス管から成り、テーパ状に形成された主テーパ部3と、主テーパ部3の先端側に位置する先端テーパ部7と、開口された先端から所定の距離に設けられた曲げ部25と、ピペットホルダ35(図3に示す)に取り付けられ所定の長さを有し、外径が一定である直管状の基部27とを有している。図1(a)では、先端テーパ部7と基部27との境界を破線で示す。
図1(b)に示すように、インジェクションピペット1の主テーパ部3は、インジェクションピペット1の先端から例えば、約15mmの長さを有しており、先端に向かって縮径するテーパ状に形成され、テーパ角度θ1を有している。
主テーパ部3よりさらに先端側に先端テーパ部7が設けられている。主テーパ部3の先端側に位置する先端テーパ部7は、テーパ角度θ2を有している。また、先端テーパ部7は、先端を熱で収縮加工した熱収縮部12を有している。図1(b)では、主テーパ部3と先端テーパ部7との境界を破線で示す。
図1(b)に示すように、主テーパ部3の先端側に位置する先端テーパ部7におけるテーパ角度(図1(b)に示すθ2)は、主テーパ部3のテーパ角度(図1(b)に示すθ1)よりも大きくなっている。
図1(b)に示す先端テーパ部7は、さらに熱収縮部12と主テーパ部3との間において、テーパ角度θ2が主テーパ部3の外周面4のテーパ角度θ1よりも大きい外周面10を有し、かつ、テーパ角度(図示せず)が主テーパ部3の内周面(図示せず)のテーパ角度(図示せず)よりも大きい内周面11(図1(c)に示す)を有する副テーパ部9を有している。副テーパ部9は、インジェクションピペット1の先端から例えば、約0.25mmの長さを有している。
このように、先端テーパ部7は、熱収縮部12と副テーパ部9からなり、副テーパ部9はテーパ角度θ2が主テーパ部3の外周面のテーパ角度θ1よりも大きい外周面10からなり、かつ、主テーパ部3の内周面のテーパ角度(図示せず)よりも大きい内周面11(図1(c)に示す)からなる。これにより、主テーパ部3から先端テーパ部7に向かって急激に先細状態となっている。尚、先端テーパ部7を有するインジェクションピペット1をラディッシュタイプ(RDと記す)と称する。
また、先端テーパ部7における外周面及び内周面のテーパ角度が、主テーパ部3の外周面及び内周面のテーパ角度と同じ大きさの角度で形成している場合には、インジェクションピペット1は、主テーパ部3のみで構成される。以後、主テーパ部3のみで構成されるインジェクションピペット1をパラレルタイプ(Pと記す)と称する。尚、パラレルタイプでも熱収縮部12が形成されることがある。
図1(c)に示すインジェクションピペット1の熱収縮部12は、ファイアーポリシュによってインジェクションピペット1の先端に熱を加えてガラス管を収縮させたものである。先端に熱を加えることにより表面が溶けて、熱収縮部12の先端に周囲が面取りされた円環部14が形成される。
即ち、円環部14はインジェクションピペット1の先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、インジェクションピペット11の円環部14から外周面9への移行部19の端面は面取りがされている。また、インジェクションピペット1は、先端の円環部14から内周面11への移行部21の端面は面取りがされている。換言すれば、図1(c)において、移行部19と移行部21に挟まれた頂部分が円環部14となる。
これにより、円環部14は卵細胞質内注入における卵細胞の透明体又は卵細胞質膜に接して、卵細胞質への内圧上昇の発生を防止し、卵細胞質膜の伸展が十分に図られることが発明者の試行錯誤の結果判明した。
図1(c)に示すインジェクションピペット1の内径(図1(c)に示すdi)の大きさは、卵細胞質65(図12に示す)の中に注入する精子頭部の最大直径よりも大きくなっている。例えば、豚の精子頭部の直径が、約3.5マイクロンメータ(μm)前後であり、豚(ブタとも記す)に用いるインジェクションピペット1の内径は、ブタの精子特有の粘着性から、ピペットや、他の精子との癒着を防止するべく、精子頭部の最大直径以外のクリアランスが必要となり、その結果、ブタに用いるインジェクションピペット1の最低限必要な内径は、最小値が約6μmとなり、インジェクションピペット1を操作する者の経験や操作特性によって必要となるクリアランスも異なるため、最大値が約9μmとなる。
また、人の精子の頭部の直径は、やはり約3.5マイクロンメータ(μm)前後であり、ブタのような粘着性もないことからクリアランスを大きく設定する必要もなく、人(ヒトとも記す)に用いるインジェクションピペット1の最低限必要な内径の最小値は、約3.5μmを超える大きさである。
そのため、通常、精子の頭部の直径に対して、インジェクションピペット1の内径に対するクリアランスを0%超65%以下に保ったインジェクションピペット1であれば、インジェクションピペット1の内部に対して哺乳類の精子の出し入れが可能であり、インジェクションピペット1の内径は哺乳類の精子頭部の直径と、この直径以外のクリアランス(内径−精子頭部の最大直径)を考慮して設定される。
即ち、インジェクションピペット1の内径は、動物種による精子の特性(精子の先体反応などによる粘着性や、例えば、マウスの精子頭部のような鈎状等の精子頭部の形状)により、精子頭部の最大直径よりも余裕を持った大きさが必要となる。また、インジェクションピペット1を操作する者の経験や操作特性によって必要となるクリアランスも異なる。このため、インジェクションピペット1の内径のクリアランスは、内径に対して最大で65%である。一方、インジェクションピペット1の内径が、精子の頭部の最大直径の大きさとほぼ同じ大きさであってもよい場合もあることから、インジェクションピペット1の内径のクリアランスは、内径に対して最小で0%超(精子頭部の最大直径をわずかに超える値)である。
図1(a)に示すように、開口された先端から所定の距離に設けられた曲げ部25は、インジェクションピペット1の先端から例えば、1から5mmの距離に曲げ位置が設けられており、曲げ部25における曲げ角度は、例えば20度である。
曲げ角度は、インジェクションピペット1の基体を成す基部27からの曲げ角度が0度のときは、インジェクションピペット1全体がストレートに形成されている。尚、インジェクションピペット1は、曲げ角度を有するものに限らず、ストレートのものを使用してもよい。
ピペットホルダ35に取り付けられる基部27は、例えば約50mmの長さを有しており、先端に位置する熱収縮部12と連通した内部空間を有している。直管状の基部27の一方の端部は、主テーパ部3と連接されており、他の端部は、ピペットホルダ35に固定される。
[インジェクションピペットの先端の形状]
次に、ブタ用のICSI操作に用いるインジェクションピペットの熱収縮部における先端の形状について説明する。
図2は、ブタ用のICSI操作に用いるインジェクションピペットの熱収縮部における先端の側面の形状及び各部の大きさを示す拡大した断面図であり、図2(a)は先端をフラットにした形状、図2(b)は先端を小さく丸めた熱収縮部の形状、図2(c)は先端を大きく丸めた熱収縮部の形状を示す。
図2(a)に示す先端をフラットにしたインジェクションピペット1の外径do1は、10μm(マイクロンメータ)であり、内径di1は9μmである。尚、先端がフラットのインジェクションピペットをフラットFと記す。尚、先端がフラットのインジェクションピペットの外径do1は、先端外径ともいう。
図2(b)は、外径do2が11μmのガラス管の先端をファイアーポリシュにより、先端外径df1が10μm、内径di2が8μmとなるように先端を小さく丸め加工を行ったものである。また、インジェクションピペット1の最先端に位置する熱収縮部12の円環部14から軸方向に25から30μm(図2(b)に示すt1)に対応する副テーパ部9の外周面10までが、移行部19である。先端を小さく丸め加工した熱収縮部12を有するインジェクションピペット1を少ない丸めタイプRと記す。
図2(c)は、外径do3が12μmのガラス管の先端をファイアーポリシュにより、先端外径df2が10μm、内径di3が6.8μmとなるように先端を大きく丸め加工を行ったものである。また、インジェクションピペット1の最先端に位置する熱収縮部12の円環部14から軸方向に35から40μm(図2(c)に示すt2)に対応する副テーパ部9の外周面までが、移行部19である。先端を大きく丸め加工した熱収縮部12を有するインジェクションピペット1を大きい丸めタイプHRと記す。
図2(b)、図2(c)に示すように、インジェクションピペット1の先端を丸め加工することにより、先端の熱収縮部12のガラス管の厚みが増加している。尚、上述したインジェクションピペットの寸法は、一例であり、これに限定するものではない。
[顕微授精用ピペットの作製]
次に、インジェクションピペット1の作成について述べる。図1に示すインジェクションピペット1の作成には、素材がガラス管からなり、外径1mm、ガラス管肉厚約50μm、即ち、ガラス管の外径に対する内径の割合が90%のガラス管(以下、「90管」と記す。)、ガラス管肉厚約75μm(以下、「85管」と記す。)、ガラス管肉厚約125μm(以下、「75管」と記す。)を用いる。ガラス管をガラス管引き伸ばし機にセッティングし、目的の形状に合わせたプログラムにより、ガラス管を細く引き伸ばす。
引き伸ばしたガラス管は、ガラス管加工機のピペットホルダに装着する。ガラス管加工機は、ヒーターに取り付けられた白金線上のガラスの玉を加熱して各種の加工を行うものである。ガラス管加工機によって、ガラス管の所定の太さの部分に加熱したガラスの玉を素早く接着させることで、ガラス管を折るようにする。折ったガラス管は、先端から1mm以上の長さの部分にガラス管加工機の加熱したガラス玉の位置を調整して、必要があれば所定の角度に曲げるようにする。
また、ガラス管からなるインジェクションピペット1は、ファイアーポリシュよって先端に熱を加えて表面を溶解させることにより、熱収縮部12が形成される。また、ファイアーポリシュによってインジェクションピペット1の外周面10から円環部14への移行する部分である移行部19及び円環部14から内周面11への移行する部分である移行部21が形成される。尚、ファイアーポリシュの加熱時間等を調整することにより、図2(b)、図2(c)に示す先端形状が得られる。
[圧電微小駆動装置の構成]
次に、インジェクションピペット1が接続された圧電微小駆動装置の構成について説明する。
図3は、インジェクションピペット1が接続された圧電微小駆動装置の構成を示すブロック図である。図3に示すように、圧電微小駆動装置30は、インジェクションピペット1を取り付けるピペットホルダ35と、圧電微小駆動装置30を顕微鏡のXYZθマニピュレータ55に取り付ける器具であるスライドベース40と、圧電素子48を内蔵したドライブユニット45とを有している。
ピペットホルダ35は、先端にインジェクションピペット1を取り付けて固定するホルダグリップ36を備えている。ホルダグリップ36の内部に、O(オー)リングが設けられており、インジェクションピペット1の直管状の基部27における端部をピペットホルダ35に挿入して、O(オー)リングで締めてインジェクションピペット1を固定する。
尚、本発明のインジェクションピペット1は、オペレーションリキッド無しで使用するが、従来のように、インジェクションピペット1内にオペレーションリキッドを充填して使用することも可能である。
図3に示すように、ピペットホルダ35のホルダグリップ36とスライドベース40との間には、ドライブユニット45が取り付けられている。スライドベース40に設けられているクランプネジ41により、ピペットホルダ35をスライドベース40に固定する。スライドベース40には、顕微鏡に備えられたXYZθマニピュレータ55に接続するための接続部(図示せず)を有している。スライドベース40の接続部と顕微鏡のXYZθマニピュレータ55とを接続することにより、インジェクションピペット1の先端が、XYZθマニピュレータ55の動きに連動して移動する。
尚、本発明の所謂ピエゾICSI法のマイクロマニピュレータにおいて、圧電微小駆動装置30は卵子を穿刺する際に使用するものであり、インジェクションピペット1は圧電素子の駆動による慣性体からの衝撃力による卵子を穿刺する際の微小駆動の他、XYZθマニピュレータ55の動きによってその他の位置決め操作が可能である。
このように、インジェクションピペット1が接続された圧電微小駆動装置30は、スライドベース40を介して顕微鏡のXYZθマニピュレータ55に接続される。尚、圧電微小駆動装置と顕微鏡のXYZθマニピュレータ55の接続は、スライドベース40を使用することに限定するものではなく、他のものであってもよい。
ピペットホルダ35のホルダグリップ36とスライドベース40との間に位置するドライブユニット45は、圧電素子48の一方の主面(振動する面)に連結された慣性体49を内蔵し、圧電素子48の他方の主面を結合した鍔部47を介してピペットホルダ35のパイプに固定されている。ドライブユニット45がピペットホルダ35のホルダグリップ36とスライドベース40との間に位置することにより、インジェクションピペット1の先端に効率的に力を伝えることができる。尚、ピペットホルダ35のホルダグリップ36とドライブユニット45との間に、スライドベース40を取り付けるようにしてもよい。
圧電微小駆動装置30には、圧電素子48を制御するコントローラ54と、コントローラ54に接続され、圧電素子48の駆動条件を設定する表示パネル(図示せず)と、圧電素子48を駆動するスイッチ(図示せず)とが備えられている。
コントローラ54は、例えば圧電素子48に印加する振動数であるスピード(図面にSpeedと記す。)と、圧電素子48に印加する振動の大きさであるインテンシティー(図面にIntensityと記す。)によって圧電素子48を制御する。コントローラ54は、一例としてスピードが1から16、インテンシティーが1から16を設定することができ、出力の最小値は1であり、最大値は16である。コントローラ54の設定値に対する圧電素子48への出力は、リニアに変化する。
インジェクションピペット1は、圧電素子48の駆動によって圧電素子48に連結された慣性体49による衝撃力により微小駆動される。尚、圧電素子48の駆動による慣性体49によるインジェクションピペット1に発生する衝撃力に関する詳細は公知であり、特許文献1の特公平6−98582等に開示されているため、説明は省略する。尚、圧電素子48は、電歪素子であっても同様にインジェクションピペット1を慣性体49の衝撃力により微小駆動が可能である。
また、図3に示すように、ピペットホルダ35のホルダグリップ36と反対側の端部には、チューブ53を介して空圧式インジェクタ52が接続されている。空圧式インジェクタ52から供給される空気は、ドライブユニット45、ピペットホルダ35を流れてインジェクションピペット1の他端に供給される。
空圧式インジェクタ52は、チューブ53をドライブユニット45に接続するのみであり、吸引と吐出を微妙に調整することが可能である。このため、インジェクタとして空圧式インジェクタは好適である。尚、インジェクタとして空圧式インジェクタに代えて、液圧式インジェクタを用いてもよい。
以上の構成からなる圧電微小駆動装置30では、インジェクションピペット1は先端側に主テーパ部を有し、主テーパ部よりさらに先端側において、内周面のテーパ角度が主テーパ部のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部を設けることにより、内周面が先端に向かって縮径されるため、インジェクションピペット内の培養液等の流れを調整することできインジェクタの操作性が向上する。
また、インジェクションピペット1の先端テーパ部は、先端に熱を加えてガラス管を収縮させることにより形成される熱収縮部を有し、熱収縮部は先端を丸めた曲面となって先端の内径が狭くなるため、インジェクタによる培養液等の吸引と吐出とを微妙に調節できるようになり、ピエゾICSI法におけるマイクロマニピュレータのインジェクタの操作性が向上する。
[培養液量の違いによるPMMの穿刺性の測定]
次に、本発明のインジェクションピペットを用いた培養液量の違いによるPMMの卵子透明体への穿刺性、操作性の実験評価について述べる。尚、以下に示す穿刺性の測定は、インジェクションピペットにオペレーションリキッドを使用することなしに、培養液量等で卵子透明体に穿刺可能であるかを測定したものである。
図4は、本発明に係るインジェクションピペットによるブタ卵子透明体への穿刺性、操作性の測定評価フローを示す図である。
最初に、哺乳類おける卵細胞質内注入法での卵子透明体への穿刺の準備及び操作について述べる。尚、以下に述べる卵細胞質内注入法での卵子透明体は、哺乳類としてブタを用いたものである。卵細胞質内注入法は、圧電素子48(ピエゾ)を使用した圧電微小駆動装置30を用いており、圧電微小駆動装置30は、顕微鏡に設けられたXYZθマニピュレータ55に取り付けられている。
使用する卵子60(図12に示す)を固定するためのホールディングピペット68をピペットホルダ(図示せず)に取り付ける。その際、液圧式タイプのインジェクタに接続されている場合には、ピペットホルダ内のオイルを排出し気泡をしっかりと排出した後にホールディングピペット68を取り付けるが、空圧式インジェクタ52の場合はそのまま取り付ける。
図4に示すように、インジェクションピペット1をPMMに取り付ける(ステップS1)。使用したインジェクションピペット1は2種類であり、一方のインジェクションピペット1は、85管、先端外径の大きさが6μm、主テーパ部3のみのパラレルタイプP、先端形状がフラットFであり、これを85−6−P−Fと称す。
他方のインジェクションピペット1は、90管、先端外径の大きさが5μm、主テーパ部3の先端側に先端テーパ部7を有するラディッシュタイプRD、先端形状が少ない丸めタイプRであり、これを90−5−RD−Rと称す。
図3に示すように圧電微小駆動装置30の先端には、インジェクションピペット1とピペットホルダ35とを接続するホルダグリップ36が設けられている。圧電微小駆動装置30に取り付けられたピペットホルダ35のホルダグリップ36をインジェクションピペット1を取り付けるために緩める。
ピペットホルダ35のホルダグリップ36と反対側に位置する端部側に空圧式インジェクタ52が接続されている場合には、圧電微小駆動装置30が取り付けてあるピペットホルダ35のホルダグリップ36を緩めて、そのままインジェクションピペット1を取り付ける。
インジェクションピペット1をホルダグリップ36内の4連になっているO(オー)リングを貫通するように挿入してホルダグリップ36をしっかりと締め付ける。最初に、PMMに取り付けた85−6−P−Fのインジェクションピペット1を7%PVP(ポリビニルピロリドン)液でリンスし、リンス後にPVP液を吐き出す(ステップS2)。
PVP液を吐き出した後に、培養液であるPZMドロップに移動して、空圧式インジェクタ52を操作して、培養液であるPZM(Porcine Zygote Medium)をインジェクションピペット1先端から5mm吸引する(ステップS3)。
次に、インジェクションピペット1の先端にミネラルオイルを吸引する(ステップS4)。吸引したミネラルオイルは、異なる液の境界を示す指標としてオイル玉の形状を有している。
ミネラルオイルを吸引後に、インジェクションピペット1の先端からインジェクションピペット1の曲げ部25の1mmの位置までPVP液を吸引する(ステップS5)。
次に、ブタ卵子透明体に穿刺の測定を行う(ステップS6)。穿刺の測定は、最初に注入操作を行う卵子60の第一極体66(図12(a)参照)を6時もしくは12時の位置にホールディングピペット68によって保持する。
コントローラ54により圧電素子48の振動回数、振動の強度の大きさの駆動設定を行う。最初に圧電素子48の振動回数であるスピード(Speed)を2に設定する。インジェクションピペット1先端が透明帯61に軽く接触した状態で、圧電素子(ピエゾ)48を駆動させ、インジェクションピペット1が透明帯61に刺さり、透明帯61に穴が開くことを確認し、透明帯61に穴が開いたときのインテンシティー(Intensity)の値を測定する。インジェクションピペット1の先端にPVP液を吸引した状態をPVP+と記す。
さらに、透明帯61にインジェクションピペット1の先端を軽く押し当てた状態でのインジェクタの操作性の確認を行って、インジェクタの操作性を1から5の5段階で評価をする(ステップS7)。5段階の評価は、5については何の問題もなくインジェクションピペット1内に精子等を吸引したり、ピペット外に排出したりする操作が行えることを示す。4は、操作に多少の注意が必要であることを示す。3は、4や5に比べると注意を払いながら操作が必要になるが、穿刺操作等のコントロールが可能であることを示す。2や1は、穿刺操作等のコントロールが難しく操作ができないレベルを示す。
次に、オイル玉を指標に、インジェクションピペット1からPVP液を排出し、先端を培養液(PZM)に置き換える(ステップS8)。PVP液を排出して先端を培養液(PZM)に置き換えた状態をPVP−と記す。
次に、ステップS6と同様の操作により穿刺の測定を行う(ステップS9)。ステップS7と同様の操作によりインジェクタの操作性の確認を行って、5段階の評価をする(ステップS10)。
次に、ステップS3に移行して先端からPZMを7mm吸引する。以下同様に先端からPZMを10、12、13、15mm吸引するようにして穿刺性の測定をステップS3から繰り返す(ステップS11)。
また、圧電素子48の振動回数であるスピードを5に設定して、ステップS3から同様の実験評価を行う。
さらに、90−5−RD−Rのインジェクションピペット1についても、同様の卵子透明体への穿刺性、インジェクタの操作性の実験評価を行う。
[培養液量の違いによる穿刺性の測定の結果]
以下にインジェクションピペット毎の先端から培養液量の違いによるPMMの穿刺性の測定結果を図5を用いて説明する。図5は、インジェクションピペット1内に吸引した培養液量の違いによるPMMの穿刺性の測定結果を示すグラフであり、(a)はコントローラのスピード2における穿刺可能なコントローラのインテンシティー値の測定結果、(b)はコントローラのスピード5における穿刺可能なコントローラのインテンシティー値の測定結果である。
図5に示すPMMの穿刺性の測定結果を示すグラフの横軸は、吸引した培養液量のインジェクションピペット1の先端からの各距離(幅)を示し、グラフの縦軸は、コントローラのインテンシティーの数値を示す。
図5(a)に85−6−P−F/PVP+で示すように、85−6−P−FのインジェクションピペットではSpeed値2の設定条件で、インジェクションピペット先端からの培養液の量を5mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が16.0、培養液の量を7mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が15.0、培養液の量を10mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が11.0、培養液の量を12mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が6.5、培養液の量を13mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が5.5、培養液の量を15mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が5.0の設定でブタ卵子への穿刺が行えた。
図5(a)に85−6−P−F/PVP−で示すように、85−6−P−Fのインジェクションピペット内のオイル玉の前のPVP液を排出して培養液(PZM)に置き換えた場合、Speed値2の設定条件で、インジェクションピペット先端からの培養液の量を5mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が14.0、培養液の量を7mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が7.0、培養液の量を10mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が4.0、培養液の量を12mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が2.5、培養液の量を13mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が2.0、培養液の量を15mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が1.5の設定でブタ卵子への穿刺が行えた。
また、図5(b)に85−6−P−F/PVP+で示すように、85−6−P−Fのインジェクションピペットは、Speed値5の設定条件で、インジェクションピペット先端からの培養液の量を5mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が14.0、培養液の量を7mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が12.0、培養液の量を10mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が9.0、培養液の量を12mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が6.0、培養液の量を13mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が5.0、培養液の量を15mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が4.5の設定でブタ卵子への穿刺が行えた。
図5(b)に85−6−P−F/PVP−で示すように、85−6−P−Fのインジェクションピペット内のオイル玉の前のPVP液を排出して培養液(PZM)に置き換えた場合、Speed値5の設定で、インジェクションピペット先端からの培養液の量を5mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が12.0、培養液の量を7mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が6.0、培養液の量を10mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が3.0、培養液の量を12mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が2.0、培養液の量を13mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が1.5、培養液の量を15mmの幅で吸引した場合には、Intensity値が1.5の設定でブタ卵子への穿刺が行えた。
同様に、図5(a)、図5(b)にインジェクションピペット90−5−RD−RのPVP+の測定結果を90−5−RD−R/PVP+で、PVP−の測定結果を90−5−RD−R/PVP−で示す。
図5に示す穿刺性の測定結果からオペレーションリキッド無しで取り付けた85−6−P−Fは、インジェクションピペット先端からの培養液の吸引量が12mmの幅未満の場合には、コントローラ54のIntensity値が高くなり穿刺性が極端に低下した。また、培養液の吸引量が12mmの幅以上吸引してPVP液が含まれた場合には、穿刺性がやや改善することが確認された。
オペレーションリキッド無しで取り付けた90−5−RD−Rは、培養液の吸引量が7mmの幅以上あれば穿刺性が向上し、PVP液が含まれていても穿刺性は安定していた。
以上述べたように、試験によりオペレーションリキッド無しで取り付けたインジェクションピペットのセッティング条件として培養液の吸引量による影響を調べた結果、培養液を12mmの幅以上吸引すれば、両ピペットともに穿刺性が安定したものの、90−5−RD−Rは培養液の吸引量が7mmの幅以上で穿刺性が向上して安定するため、90−5−RD−Rが85−6−P−Fと比較して優位であることが分かった。
供試した2種類のインジェクションピペットの差は、ガラス管肉厚、テーパ部分の形状および先端形状が異なるが、テーパ部がラディッシュタイプRDのインジェクションピペットである90−5−RD−Rはオペレーションリキッド無しでの穿刺性が格段に安定している。
85−6−P−Fは、テーパ部分が緩やかに細くなる形状により、先端からの吸引している培養液の幅は90−5−RD−Rと同じでも、実際の培養液容量は少なくなるため穿刺性が低くなることが実験結果から分かった。
さらに、90−5−RD−R及び85−6−P−Fの両インジェクションピペットピペットは、培養液を多く吸引すれば穿刺性を得ることはできるものの、PVP液が含まれる条件でのインテンシティーの値が低いこと等の安定性と、培養液を吸引する時間等のセッティングに要する手間を考慮すると90−5−RD−Rの方が実用性が格段に高い。
[培養液量の違いによる操作性]
次に、図5に示すインジェクションピペット内に吸引した培養液量の違いによるインジェクタの操作性について説明する。このインジェクタの操作性とはインジェクタによるインジェクションピペット内への培養液等の吸引と吐出といった微妙な操作についての操作性を意味する。
図6は、インジェクションピペット内に吸引した培養液量の違いによる空圧式インジェクタの操作性の評価結果を示す図である。
図6に示すように、評価したインジェクションピペット85−6−P−F、90−5−RD−Rにおける培養液の吸引量に対する先端にPVP液を吸引した場合(PVP+と記す)とPVP液を排出した場合(PVP−と記す)での評価結果を1から5までの5段階で示す。
図6に示すように、空圧式インジェクタでの操作について培養液の吸引量による差は認められなかったが、PVP液が含まれない場合には、85−6−P−Fの方がインジェクタの操作性がやや低下し、90−5−RD−Rの方が安定していた。
これにより、ブタ卵子透明体に対する穿刺性、インジェクタの操作性とも90−5−RD−Rが85−6−P−Fより優れていることが判明した。即ち、90管、先端テーパ部がラディッシュタイプRD、先端形状が少ない丸めタイプRを有するインジェクションピペットが好適である。
以上のように、図5及び図6に示すインジェクションピペット1内に吸引した培養液量の違いによるPMMの穿刺性及びインジェクタの操作性の測定結果を考慮すると、培養液はこれまでのオペレーションリキッドと同程度(インジェクションピペット内で10〜15mmに相当する量)の量を用いれば、本発明に係るインジェクションピペット1の形状と組み合わせることにより、オペレーションリキッド無しで穿刺効果を発揮することが確認できた。
尚、培養液については、ブタ穿刺用のPZMを用いた例を説明したが、哺乳種によって培養液の種類は異なるものの、本発明に係るインジェクションピペット1は培養液の違いによる穿刺性能にほとんど影響を与えないことを確認した。
[インジェクションピペットの穿刺性能評価]
次に、超薄肉ガラス90管を用いて作製した90−5−RD−Rのインジェクションピペット1をオペレーションリキッド無しの条件でピエゾマイクロマニピュレータ(PMM)に使用した場合の穿刺性能を評価した。同様に85管で作製した先端外径の大きさが6μm、主テーパ部のみで構成されたパラレルタイプP、先端形状が大きい丸めタイプHRからなる85−6−P−HRのインジェクションピペットについてもオペレーションリキッド無しの条件でPMMの穿刺性能の評価試験を行った。穿刺性能の評価は、図7に示すように、C1、T1、T2、T3、T4の5つの試験区に区分して、各試験区でのブタ卵子透明帯への穿刺操作のコントローラ54のSpeed、Intensityの数値を調査した。
セッティングが完了したインジェクションピペット90−5−RD−Rを用いてブタ卵子に対して試験区C1、T1、T2、T3の設定条件で穿刺操作を行った。
各試験区の概要をまず説明する。試験区C1は、90−5−RD−Rのインジェクションピペット1の先端に少量のオイル玉(小オイル玉とも記す。)を吸引し、小オイル玉を吸引後にさらに多量の培養液を吸引して、小オイル玉をインジェクションピペット曲げ位置部分で保持した状態である。曲げ位置部分とは、インジェクションピペットの先端から約1mmであり、以下及び図7において「後方」として示す。試験区T1では、小オイル玉のインジェクションピペット内での位置を後方のみならず、インジェクションピペットの先端付近にした状態でも穿刺操作をおこなった。インジェクションピペットの先端付近とは、インジェクションピペットの先端から約500μmであり、以下及び図7において「前方」として示す。試験区T2は、オイル玉の量を試験区C1の10倍に増やして、インジェクションピペット内のオイル玉が前方及び後方に位置する状態である。試験区T3は、インジェクションピペット内に培養液の代わりにPVP液を多量に吸引した場合の状態である。このように、試験区T3は、試験区C1の多量の培養液に代えて多量のPVP液を吸引した状態である。
次に、セッティングが完了したインジェクションピペット85−6−P−HRを用いて試験区T4の条件でのブタ卵子透明帯への穿刺操作を行いSpeedおよびIntensityの数値を調査した。また、先端形状が小さい丸めタイプRからなる85−6−P−Rのインジェクションピペットについても、ブタ卵子透明帯への穿刺性を有するかの確認を行った。試験区T4は、吸引する培養液の各量、オイル玉の各液量及びインジェクションピペット内のオイル玉が後方に位置する状態である。
次に、各試験区の詳細な結果を説明する。図7は、オペレーションリキッド無しでのブタ卵子透明体の穿刺性の測定結果を示す図である。図7に示すように、試験区C1では、90管を用いて作製した90−5−RD−Rのインジェクションピペットをオペレーションリキッド無しでPMMに取り付けた場合、インジェクションピペット内に多量の培養液を吸引し、少量のオイル玉(小オイル玉)を吸引し、小オイル玉の位置を後方とした条件で、Intensity値3.5−4.5、Speed値5の設定でブタ卵子への穿刺でき、インジェクタの操作性も安定させることができた。
試験区T1では、インジェクションピペット内の小オイル玉の位置を(A)の後方で保持した場合には、Intensity値1.5、Speed値8で穿刺ができたが、オイル玉の位置を(B)の前方で保持した場合には、Intensity値1.5、Speed値8で穿刺できず、同等の穿刺性は得られなかった。
試験区T2では、インジェクションピペット内のオイル玉の量が試験区C1の約10倍であってもオイル玉の位置を(A)の後方で保持すれば、少量のオイル玉と同様の穿刺性能が得られた。オイル玉が大きい場合も、オイル玉の位置を(B)の前方で保持した場合には、穿刺できず穿刺性能が低下したが、(C)のようにオイル玉の位置を前方としてもコントローラ54のIntensityの設定値を3.5に上げることで穿刺することができた。
試験区T3では、(A)のようにインジェクションピペット内の培養液をPVP液に入れ換えて小オイル玉の位置が後方の場合には、Intensity値5.0、Speed値3であり培養液の場合に比べて穿刺性能が低下した。また、(B)は同様に小オイル玉の位置が後方で、Intensity値3.5、Speed値8であり培養液の場合に比べて穿刺性能が低下した。
試験区T4では、85管を用いて作製した85−6−P−HRを用い、かつ、(A)から(E)の何れもオイル玉の位置を後方として穿刺操作を行った。ピペット内環境(A)のオペレーションリキッド無し大量の培養液と少量のオイル玉(小オイル玉)を吸引した条件で穿刺テストを行った結果、Intensity値は4.5、Speed値5で穿刺ができた。ピペット内環境(B)のさらに培養液を多量に吸引することでIntensity値3.0、Speed値5の設定で穿刺でき、ピペット内環境(C)のようにSpeed値を8まで上げた場合、Intensity値2.0から2.5で穿刺が行えた。さらにピペット内環境(D)のように、オイル玉の量を試験区C1の2倍とすると、Speed値を8まで上げた場合、Intensity値2.5から3.0で穿刺が行えた。これら(A)から(D)に対してピペット内環境(E)に示すように、小オイル玉で、培養液を少量にした場合には、Intensity値8.0、Speed値8まで上げても穿刺できなかった。
また、85管を用いて作製した85−6−P−Rを用いてオペレーションリキッド無しで、図7に示す試験区T4におけるピペット内環境(A)と同一条件で穿刺テストを行った結果、Intensity値は4.5から5.5、Speed値5で穿刺が行えた。
このように、90−5−RD−Rのインジェクションピペットを使用した試験区C1と試験区T3との結果から、インジェクションピペット内に培養液を多量に吸引した場合には、インジェクションピペット内にPVP液を多量に吸引した場合と比較して、穿刺性能が高いことが分かった。
また、試験区T1と試験区T2との結果から、ミネラルオイルからなるオイル玉のインジェクションピペット内での位置によって、卵子への穿刺性に影響を及ぼすことが判明した。即ち、オイル玉の位置がインジェクションピペットの先端付近である前方では、穿刺性が低下する。そのため、実際の運用にあたってはこの点について留意する。
また、試験区T4の結果から、インジェクションピペット内に少量の培養液を吸引した場合には、穿刺できないことが分かった。
次に、各種のガラス管素材におけるインジェクションピペット1の穿刺性、インジェクタの操作性の測定評価結果について述べる。
図8は、各種のインジェクションピペット1の穿刺性、インジェクタの操作性の測定評価結果を示す図である。尚、測定評価は、75管、85管、90管について行った。
PMMに75管で作製した75−7−P−Fインジェクションピペットをオペレーションリキッド無しで取り付けて、インジェクションピペット先端から多量の培養液を吸引し、少量のオイルを吸引した後にPVP液を曲げ部25まで吸引してブタ卵子透明帯へ穿刺テストを行った。図8に示すように、PVPの有無の欄に+と記す75−7−P−Fの先端にPVP液を吸引した状態では、Speed値2、Intensity値16.0の設定でブタ卵子への穿刺でき、Speed値を5まで上げた場合、Intensity値15.0で穿刺できた。PVPの有無の欄に−と記すPVP液を排出して先端を培養液(PZM)に置き換えた状態では、Speed値2、Intensity値12.0の設定でブタ卵子への穿刺でき、Speed値を5まで上げた場合、Intensity値9.0で穿刺できた。
また、図8に示すように、85管で作製したインジェクションピペットの先端の形状がフラットFを有する85−6−P−Fと先端の形状が少ない丸めタイプRを有する85−6−P−Rとでは、先端を丸めた85−6−P−Rが、先端がフラットFの85−6−P−Fに比べてIntensity値が低くなり、穿刺性が向上した。
また、図8に示すように、90管で作製したインジェクションピペット90−5−RD−Rは、オペレーションリキッド無しでPMMに取り付けた場合、PVPが+では、Speed値2、Intensity値4.5で穿刺でき、Speed値を5まで上げた場合、Intensity値3.0で穿刺できた。PVPが−では、Speed値2、Intensity値2.5の設定でブタ卵子への穿刺でき、Speed値を5まで上げた場合、Intensity値2.0で穿刺できた。
このように、PMMにオペレーションリキッド無しで取り付けた75−7−P−Fの穿刺性が、他のピペットに対して極端に低下した。一方、インジェクションピペット90−5−RD−Rは、穿刺性能が他のインジェクションピペットと比べて高いことが確認できた。
また、図8に示すように、インジェクタの操作性については、75管、85管、90管とも培養液の注入、抽出等のコントロールが可能であった。
これにより、インジェクションピペット90−5−RD−Rはコントローラ54のインテンシティーが小さい値で使用することができるため穿刺性が良く、インジェクタの操作性も良いことが判明した。
[各種インジェクションピペットによる卵細胞質膜の伸展性の測定]
次に、各種のインジェクションピペットによる卵細胞質膜の伸展性に関する測定結果について述べる。
図9は、各種のインジェクションピペットの卵細胞質膜の伸展性の測定結果を示す図である。 卵細胞質膜の伸展性の測定は、インジェクションピペット1にオペレーションリキッドを使用すること無く、培養液等で行ったものである。
図9に示すように、使用したインジェクションピペット1は、素材が90管、先端外径が10μmであり、主テーパ部3の形状はRD(ラディッシュタイプ)とP(パラレルタイプ)とであり、それぞれの先端形状がF、R、HRであり、合計6種類からなる。それぞれのインジェクションピペット1に対して試験を4回行い、オペレーションリキッド無しでの穿刺操作を行い、操作卵子数、生存卵子数を集計して、膜脆弱の卵子の数を数えた。
図9に示すように、インジェクションピペット1にオペレーションリキッドを使用しないPMMでは、「膜脆弱の穿刺%」はテーパ形状がRDで先端形状がFでは、40%以上であったが、先端形状がR、HRでは、先端形状がFの半分の20%前後であった。また、テーパ形状がPで先端形状がR、HRでは、先端形状Fと比較して、「膜脆弱の穿刺%」が低い割合であり、特に、先端形状がHRでは、優位性が見られた。
また、卵子数の「生存率」は、テーパ形状がRD、Pで、その先端形状がR、HRのインジェクションピペットが高い割合であり、テーパ形状がRDでは、99.0%である。
これにより、インジェクションピペット1にオペレーションリキッドを使用しないPMMでは、テーパ形状がRDであり、又は、先端形状がR、HRのインジェクションピペット1が卵子生存率の向上に有効であることが確認された。
また、インジェクションピペットの先端形状を丸めることで、顕微授精を行う際に老化卵子(高齢の女性に見られる卵子)の脆弱な卵細胞質膜を十分に伸展させることが可能となり、精子注入後の卵子生存率が低下するとの課題を改善することが期待できる。
[オペレーションリキッド無しでのブタ顕微授精の結果]
次に、インジェクションピペット内にオペレーションリキッド無しでのブタ顕微授精の結果について説明する。
図10は、インジェクションピペット内にオペレーションリキッド無しでのブタ顕微授精の結果を示す図である。インジェクションピペット1は、先端をファイアーポリッシュにより少ない丸め加工を行った90−10−RD−Rと先端をファイアーポリッシュにより大きい丸め加工を行った90−10−RD−HRの2種類を用いた。
図10に示すように、90管を用いて作製した90−10−RD−Rおよび90−10−RD−HRを用いてオペレーションリキッドを充填せずに培養液を吸引した条件で顕微受精を行った結果、ブタ卵子透明帯(zona)を穿刺できたPMMの条件は、両ピペットともにIntensity値は3.5−5.0、Speed値5−8だった。卵細胞質膜(membrane)は、両ピペットともにIntensity値は4.0、Speed値1で穿刺が行えた。
また、顕微受精後の生存率は両ピペットともに、100%だった。顕微受精した卵子を6日間体外培養した結果、両区ともに胚盤胞まで発生した胚が観察された。胚盤胞発生率は、90−10−RD−Rの方が高い結果となった。
これにより、オペレーションリキッド無しでのブタ顕微授精を行った結果、インジェクションピペットとして90−10−RD−Rが優位であることが分かった。
[オペレーションリキッドの有無でのインジェクションピペットの形状の違いによる胚盤胞発生率の差異について]
更に、ピエゾICSI法におけるオペレーションリキッドの有無でのインジェクションピペットの形状の違いによる胚盤胞発生の優位性を明確にすべく、PMMを用いたブタ顕微授精を行い、ブタ顕微授精後における胚盤胞発生率の測定を基に インジェクションピペットの評価を行った。
評価に用いたインジェクションピペット1は、90管、先端外径が10μm、テーパ形状がRD、Pであり、それぞれの先端形状がHR、R、Fからなる90−10−RD−HR、90−10−RD−R、90−10−RD−F、90−10−P−HR、90−10−P−R、90−10−P−Fの6種類及び、75管、先端外径が12μm、テーパ形状がPであり先端形状がFからなる75−12−P−Fの1種類の合計7種類である。7種類のインジェクションピペット1でオペレーションリキッドの有無でのブタ顕微授精を行い、胚盤胞発生率の評価を行った。
[ブタ顕微授精の操作手順]
以下にオペレーションリキッドの有無でのインジェクションピペットによるブタ顕微授精の操作手順の概要を説明する。
オペレーションリキッド有りのインジェクションピペットで使用するICSI用のシャーレは、その中心に10−20μlの高浸透圧PZM(hPZM)のドロップを1つ、リンス用、精子懸濁用の7%PVP液のドロップを2つ作製し、ミネラルオイルでカバーして作製した。
オペレーションリキッド無しのインジェクションピペットで使用するICSI用のシャーレは、その中心に10−20μlのhPZMのドロップを1つ、インジェクションピペットのセッティング用PZMのドロップを1つ、リンス用、精子懸濁用の7%PVP液のドロップを2つ作製し、ミネラルオイルでカバーして作製した。
尚、高浸透圧PZM(hPZM)は、PZMにソルビトールを添加して、浸透圧をPZMより多少高めたものである。顕微授精操作で、卵子が入った培養液に高浸透圧PZM(hPZM)を使用する理由は、卵細胞質を少し収縮させて、第一極体の観察と卵子核の位置の把握とを容易にするためであり、また、透明帯と卵細胞質との隙間に位置する囲卵腔を大きくするためである。囲卵腔を大きくすることにより、PMMを駆動させて透明帯を穿刺した際に、囲卵腔が衝撃をやわらげて卵細胞質膜にダメージを与えるのを防ぐことができる。通常のPZMは、オペレーションリキッド無しでのセッティングにインジェクションピペット内に大量に吸引して培養液として使用される。
作製したシャーレは、使用する1−2時間前にはインキュベータ内で37−38.5℃に保温し、保温したシャーレのhPZMのドロップに操作するブタ体外成熟卵子を移した。また、精子懸濁用の7%PVP液のドロップに精子液を適量入れて懸濁し、ICSI操作のシャーレを準備した。
オペレーションリキッド有りのインジェクションピペットのセッティングは、圧電素子からの衝撃力をインジェクションピペットの先端に効率よく伝えるために、ピペットホルダに取り付ける前に、予めオペレーションリキッド(フロリナート)を吸引したマイクロピペッターを用いてインジェクションピペットの中心付近にオペレーションリキッド(フロリナート)を約1から1.5cmの幅で充填した。
オペレーションリキッド有りのインジェクションピペットは、ピペットホルダに取り付け後に、最初にリンス用の7%PVP液のドロップに落としこみ、インジェクタにより吸引・排出を繰り返し、操作性を確認すると同時にインジェクションピペットの内外をリンスした。
オペレーションリキッド無しのインジェクションピペットは、ピペットホルダに取り付け後に、インジェクションピペット内にPZMを吸引し、その後ミネラルオイルを吸引し、液境界用のオイル玉を形成した。リンス用7%PVP液のドロップに移動し、インジェクタにより吸引・排出を繰り返し、オイル玉の動きを指標にして操作性を確認すると同時にインジェクションピペットの内外をリンスした。
以下の操作は、オペレーションリキッド有りのインジェクションピペット、オペレーションリキッド無しのインジェクションピペットとも同様である。
インジェクションピペットを精子が懸濁された7%PVP液のドロップに移動して、精子不動化の操作を開始した。精子は、動きが活発で頭部および尾部に付着物がない物を選別した。精子の不動化は、インジェクションピペット内に精子を尾部から吸引して排出する際、尾部にインジェクションピペット先端を触れさせながら、PMMを駆動し、精子を不動化する方法を用いた。
完全に動きの止まったことを確認した精子をインジェクションピペット内に吸引し、卵子への注入操作に用いた。
精子をインジェクションピペット内に吸引後に、精子が含まれる7%PVP液から卵子への注入操作を行うhPZMドロップへ移動した。
卵子への穿刺は、図12に示す卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのピエゾICSI法により、卵子細胞質内への顕微注入操作を行った。
卵子に精子を注入後、インジェクションピペットを引き抜き、生存した卵子の数を確認した。生存した卵子は培養用のPZMドロップに移し、5%O2、5%CO2、20%N2の条件のインキュベータで6日間体外培養した。体外培養したICSI胚は、6日目で顕微鏡観察し、胚盤胞まで発生した個数を計数した。
[ブタ顕微授精での胚盤胞発生率の評価結果]
次に、インジェクションピペットの形状の違いによるオペレーションリキッドの有無でのブタ顕微授精における胚盤胞発生率の評価結果について説明する。
図11は、7種類の形状のインジェクションピペットによるオペレーションリキッドの有無でのブタ顕微授精における生存卵子数とその割合(卵子生存率(%))及び胚盤胞発生数とその割合(胚盤胞発生率(%))の結果を示す図である。図12は、図11に示す7種類の形状のインジェクションピペットによるオペレーションリキッドの有無でのブタ顕微授精における胚盤胞発生率の結果をグラフで示す図である。
尚、図11におけるOLの有無の+及び図12に示すOL+は、ブタ顕微授精でインジェクションピペット内部にオペレーションリキッドを充填して穿刺操作を行ったこと(OL有りと記す)を示し、図11におけるOLの有無の−及び図12に示すOL−は、インジェクションピペット内部にオペレーションリキッドを使用しないで穿刺操作を行ったこと(OL無しと記す)を示す。
[インジェクションピペット毎のOLの有無による胚盤胞発生率の影響]
図11に、テーパ形状及び先端形状の異なる各種のインジェクションピペットにおけるOLの有無におけるICSI操作に使用した卵子数(図11に示す操作卵子数)及び生存した卵子の数(図11に示す生存卵子数)とその割合(卵子生存率(%))を示す。また、胚発生の欄には、使用した培養胚数及び胚盤胞発生数とその割合(胚盤胞発生率)を示す。
図11及び図12に示すように、90−10−RD−HR、90−10−RD−R、90−10−P−HR及び90−10−P−RにおけるそれぞれのOL有り(OL+)とOL無し(OL−)でのブタ顕微授精後の胚盤胞発生率は、OL有りとOL無しとの差が少なく、ほぼ同一の値であった。
また、90−10−RD−F及び90−10−P−FにおけるそれぞれのOL有りとOL無しでのブタ顕微授精後の胚盤胞発生率は、顕著な差はなかったが、90−10−RD−F及び90−10−P−Fはともに、胚盤胞発生率はOL有りの方が高くなる傾向が見られた。
また75−10−P−Fにおいては、OL有りとOL無しでのブタ顕微授精後の胚盤胞発生率は、顕著な差があり、胚盤胞発生率は、OL有りが高くなることが明らかとなった。一方、75−12−P−FのOL無しは、卵子への穿刺能が低く、作出できた顕微授精胚は、胚盤胞まで発生しなかった。
[インジェクションピペットの形状及びOLの有無の組み合わせによる胚盤胞発生率の影響]
90−10−RD−HR及び90−10−RD−Rは、それぞれのOL有り、OL無しともに、胚盤胞発生率が高くなった。特に、90−10−RD−HRのOL有り、OL無し及び90−10−RD−RのOL無しにおける胚盤胞発生率は、90−10−P−FのOL有り、OL無しの胚盤胞発生率及び75−12−P−FのOL無しの胚盤胞発生率と比較して、顕著に高くなることが確認された。即ち、胚盤胞発生率に対して90−10−RD−HR及び90−10−RD−Rは、OL無しでも効果があることが確認された。
また、75−12−P−FのOL有りの胚盤胞発生率は、90−10−RD-HR及び90−10−RD-RのOLの有無の胚盤胞発生率と同様に高い割合であり、90−10−P-FのOLの有無の胚盤胞発生率及び75−12−P−FのOL無しの胚盤胞発生率に比べて顕著に高くなった。
また、75−12−P−FのOL無しの胚盤胞発生率は、卵子への穿刺能が低く、作出できた顕微授精胚は、胚盤胞まで発生しなかった。
このように、オペレーションリキッド(OL)を充填しないOL無しの90−10−RD−HR、90−10−RD−R、90−10−P−HR及び90−10−P-Rを用いたピエゾICSI法は、従来のオペレーションリキッドOLを充填したインジェクションピペットの場合と同等の結果であり、先端をポリッシュするHR、Rの形状は、OL無しでもピエゾマイクロマニピュレータ(PMM)で有効に使用できることが確認できた。
特に、90−10−RD−HR及び90−10−RD−Rでは、OL有り、OL無しともに胚盤胞発生率が高く、OL無しはOL有りと同等以上であることから、テーパ形状がラディッシュタイプ(大根型)であるRDの優位性が認められた。さらに、先端形状は先端を大きく丸め加工した熱収縮部であるHR、先端を小さく丸め加工した熱収縮部であるRが優位であることが分かった。
即ち、OL無しの90−10−RD−HR及び90−10−RD−Rは、穿刺性能及びインジェクタ―の操作が、従来のOL有りの条件と遜色なくICSI操作が可能となること、さらに、OL有りのようにインジェクションピペット内にオペレーションリキッドを充填する操作が必要なく、セッティングの確認に要する時間を短縮できるため、体外(インキュベータの外)での卵子及び精子の取り扱い時間を最小限にすることが可能となり、胚発生に良い結果をもたらしたものと推測される。
一方、90管を用いた先端がフラットの形状のピペット90−10−RD−F及び90−10−P−Fが、90−10−RD−HR、90−10−RD−R、90−10−P−HR及び90−10−P−Rに比べて胚盤胞発生率が低下した原因は、ガラス管の素材及び先端の形状が考えられる。即ち、90管のガラス管は超薄肉のため、先端加工がフラットの90−10−RD−F及び90−10−P−Fの場合には、鋭利な形状となりPMMの穿刺性能は高くなるが、卵細胞質膜に影響を与えていると考えられる。
尚、90−10−RD−F及び90−10−P−FのOL有りの方が無しに比べて、胚盤胞発生率がやや高くなったのは、OLが充填されることでインジェクタの操作性が、安定したことが考えられる。さらに90−10−RD−Fの方が90−10−P−Fよりも胚盤胞発生率が高くなる傾向が認められたが、これは、ラディッシュタイプ(大根型)であるRDがICSIに適したインジェクタの操作性が得られているためと推察される。このように、90−10−RD-HR及び90−10−RD−Rにおける胚盤胞発生率の結果からも大根型であるRDが有効であることが認められた。
また、従来、マニピュレーション操作に用いられている75管からなる先端形状がフラットな75−12−P−Fについては、ガラス管の肉厚が薄肉ではあるが、薄過ぎないため、先端形状は90管ほど鋭利ではない。そのため、オペレーションリキッドを充填する従来のPMMの使用方法であれば、十分な穿刺性能が得られ、卵細胞質膜にも影響を及ぼすことなく操作できたため、ICSI後、良好な胚発生が得られたものと考えられた。ただし、75管からなるインジェクションピペットは、ガラス管の肉厚が少し厚い分、オペレーションリキッド無しの条件ではPMMによる穿刺性能が大きく低下し、正確な顕微授精操作ができなかったため、その後胚盤胞まで発生しなかったと推察される。この結果からインジェクションピペットにおけるガラス管の肉厚が、穿刺性能にとって重要であることが明確となった。
以上述べたように、本発明によれば、先端側に主テーパ部を有するインジェクションピペットは、主テーパ部よりさらに先端側において、内周面のテーパ角度が主テーパ部のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部を設けることにより、内周面が先端に向かって縮径されるため、インジェクションピペット内の培養液等の流れを調整することできインジェクタの操作性が向上する。
また、インジェクションピペットの先端テーパ部は、先端に熱を加えてガラス管を収縮させることにより形成される熱収縮部を有し、熱収縮部は先端を丸めた曲面となって先端の内径が狭くなるため、インジェクタによる培養液等の吸引と吐出とを微妙に調節できるようになり、ピエゾICSI法におけるマイクロマニピュレータのインジェクタの操作性が向上する。
本発明によるインジェクションピペットは、最先端に位置する円環部がインジェクションピペットの先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、インジェクションピペットの円環部から外周面及び内周面への移行部は面取りがなされていることにより、試行錯誤の結果、卵細胞質への内圧上昇が発生しないことが判明した。これにより、穿刺性、操作性及び膜高伸展性に優れたインジェクションペットを提供することができる。
また、本発明に係るインジェクションピペットは、そもそもの構成要素である培養液を衝撃伝達液として利用することによって、フロリナート等のオペレーションリキッドを殊更用意することなく、従来と同様のピエゾイクシー法による卵細胞質内の注入が可能となる。
また、本発明に係るインジェクションピペットによれば、インジェクションピペット内にオペレーションリキッドを注入する必要がなく、卵細胞質内の注入工程を簡素化することができる。
また、本発明に係るインジェクションピペットは、PMMによる卵子・胚に対して操作を行う際に確実な穿刺性能を有している。即ち、コンベンショナル法は、ピペットの形状、卵子の質および操作者の熟練度により穿刺もばらつきが発生する恐れがあるが、本発明に係るインジェクションピペットは、安定した穿刺性能により膜を十分に伸展して毎回同じような穿刺を行うことが可能である。
また、本発明に係るインジェクションピペットは先端形状を丸めることで、老化卵子の脆弱な卵細胞質膜を十分に伸展させることが可能となり、精子注入後の卵子生存率の向上が期待できる。
本発明に係るインジェクションピペットは、特に、穿刺性とインジェクタの操作性が重要なDNA、RNA注入や胚盤胞へのES細胞注入に有効である。また、それらのみならず、卵細胞質内注入法に換えて、核移植における除核操作、バイオプシーによる核球採取にも有効に使用可能である。
本発明のインジェクションピペットによれば、卵子透明帯および卵細胞質膜を穿刺することが可能となることで、精子の注入のみならず、核置換技術、体細胞クローンを作出する目的での体細胞核移植、遺伝子発現制御のためのRNA注入、遺伝子組換え動物を作出するためのES細胞注入およびDNA注入やゲノム編集技術にも応用することが可能となる。
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
1 インジェクションピペット
3 主テーパ部
4 主テーパ部の外周面
7 先端テーパ部
9 副テーパ部
10 副テーパ部の外周面
11 副テーパ部の内周面
12 熱収縮部(先端部)
14 円環部
19、21 移行部
25 曲げ部
27 基部(直管部)
30 圧電微小駆動装置(PMM)
35 ピペットホルダ
36 ホルダグリップ
40 スライドベース
41 クランプネジ
45 ドライブユニット
47 鍔部
48 圧電素子(ピエゾ)
49 慣性体
52 空圧式インジェクタ
53 チューブ
54 コントローラ
55 XYZθマニピュレータ
60 卵子
61 透明帯
64 卵細胞質膜
65 卵細胞質
66 第一極体
67 囲卵腔
68 ホールディングピペット
70 精子
75 コンベンショナルピペットの尖端部
CV コンベンショナルピペット
PI インジェクションピペット
F フラットタイプ
R 小さい丸めタイプ
HR 大きい丸めタイプ
do1、do2、do3 インジェクションピペットの外径
di、di1、di2、di3 インジェクションピペットの内径
df1、df2 インジェクションピペットの先端外径
t1、t2 移行部の長さ

Claims (13)

  1. 哺乳類における卵細胞質内注入法に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって当該圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動される先端側の外周面及び内周面がテーパ状に構成された主テーパ部を有するインジェクションピペットであって、
    当該インジェクションピペットは、前記主テーパ部よりさらに先端側において、前記インジェクションピペットの内周面のテーパ角度が前記主テーパ部のテーパ角度よりも大きい先端テーパ部を有することを特徴とするインジェクションピペット。
  2. 前記インジェクションピペットはガラス管であり、前記先端テーパ部は、先端に熱を加えて当該ガラス管を収縮させることにより形成される熱収縮部であることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションピペット。
  3. 前記先端テーパ部は、さらに前記熱収縮部と前記主テーパ部との間において、テーパ角度が前記主テーパ部の外周面のテーパ角度よりも大きい外周面を有し、かつ、前記主テーパ部の内周面のテーパ角度よりも大きい内周面を有する副テーパ部を有することを特徴とする請求項2に記載のインジェクションピペット。
  4. 前記先端テーパ部は、テーパ角度が前記主テーパ部の外周面のテーパ角度よりも大きい外周面からなり、かつ、前記主テーパ部の内周面のテーパ角度よりも大きい内周面からなることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションピペット。
  5. 前記インジェクションピペットの最先端に位置する卵細胞の透明体又は卵細胞質膜に接する円環部は、前記インジェクションピペットの先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、前記インジェクションピペットの前記円環部から前記外周面及び前記内周面への移行部は面取りがなされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  6. 前記インジェクションピペットは、内部に注入する衝撃伝達液として培養液を利用可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  7. 前記インジェクションピペットの内部に注入された前記衝撃伝達液の当該インジェクションピペット先端側に隣接してミネラルオイルを吸引し、さらに当該ミネラルオイルの前記インジェクションピペット先端側に隣接して卵細胞質内に注入する液体を吸引して使用することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  8. 前記インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  9. 前記インジェクションピペットの先端の内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きく、かつ、当該精子を前記インジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを前記精子の頭部の直径の値以外に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  10. 前記熱収縮部は前記主テーパ部によりも外径に対する内径の割合が小さいことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のインジェクションピペット。
  11. 前記インジェクションピペットの前記主テーパ部における外径に対する内径の割合は80%以上100%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  12. 前記圧電素子に置換して電歪素子の駆動によって当該電歪素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項11のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  13. 前記卵細胞質内注入法に換えて、核移植における徐核操作又はバイオプシーによる核球採取に使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項12のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
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