JP2019154307A - インジェクションピペット - Google Patents

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Abstract

【課題】哺乳類の卵細胞質内注入法に使用され、圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットにおいて、圧電素子を駆動する前の卵子の膜の伸展性に優れ、胚盤胞発生率を向上させることが可能なインジェクションピペットを提供する。【解決手段】インジェクションピペット1の先端表面に設けられ、細胞の膜に接する円環部5は、インジェクションピペット1の先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、インジェクションピペット1の外側面部10から円環部5への移行及び円環部5から内側面部11への移行は、面取りがなされているようにする。【選択図】図1

Description

本発明は、卵子、細胞等に穿刺するインジェクションピペットに関し、特に、卵細胞質内注入法に使用し、圧電素子の駆動によって微小駆動されるインジェクションピペットに関する。
従来、バイオテクノロジーにおいては、遺伝子・細胞等に人工的操作を加え、新しい遺伝情報体、受精卵を作成することが行われている。光学顕微鏡で観察することできる細胞,核,受精胚等に対して、物理的・機械的操作を加えるマイクロマニピュレータが用いられている。マイクロマニピュレータは、細胞等の人工的操作に不可欠なものとなっている。
マイクロマニピュレータには、微小器具(マイクロピペット)が装備され、マイクロピペットを直線方向に移動させる微小移動装置が備えられている。尚、マイクロピペットは、インジェクションピペットともいう。
図7は、卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのコンベンショナル法を説明する図である。図7(a)に示すように、コンベンショナル法では、ホールディングピペット68に固定された卵子60の破膜に先端が鋭利なスパイク加工されたマイクロピペット(以下、「コンベンショナルピペットCV」と記す。)が用いられている。精子70は、コンベンショナルピペットCVの内部に吸引されている。
このため、図7(b)に示すように、卵子60の透明帯61をコンベンショナルピペットCVが貫通する間、卵子全体が内側に変形して、透明帯61が押されることにより卵細胞質65への内圧上昇が発生することがある。また、コンベンショナルピペットの尖端部75(図7(a))は鋭利にスパイク加工されているため、図7(c)に示すように卵細胞質膜64の伸展が十分にされないままに、矢印で示す箇所にストレスがかかり破膜する割合が上昇する。また、図7(d)に示すように、卵細胞質膜64の穿刺では、コンベンショナルピペットCVの内部に卵細胞質65の一部を吸引するため、卵細胞質65に攪拌が起こることがある。
このため、鋭利な先端を有するマイクロピペットを用いるコンベンショナル法に代えて、圧電素子を使用して先端がフラットなマイクロピペットで卵子を穿刺する圧電微小駆動装置(ピエゾマイクロマニピュレータ(「PMM」ともいう))が知られている。
特許文献1には、圧電微小駆動装置が開示されている。特許文献1によれば、圧電微小駆動装置は、保持体に当接部材を介して適切な摩擦力で支持されるマイクロピペット微小器具と、該微小器具に形成される鍔部と、該鍔部に設けられ、かつ微小器具と同心円状に配置される圧電素子と、該圧電素子に取り付けられ、圧電素子の駆動により微小器具に衝撃力を付与する慣性体とを具備するものであり、圧電素子の駆動により、慣性体による衝撃力を発生させ、これを利用して卵子を穿刺することが開示されている。
また、特許文献2乃至特許文献4においても、圧電素子の駆動により、慣性体による衝撃力を発生させ、これを利用して卵子を穿刺することが開示されている。
このように、所謂ピエゾICSI法における圧電微小駆動装置においては、先行技術文献に記したような、圧電素子の後端部に固定される慣性体が設けられている。
尚、これら所謂ピエゾICSI法のマイクロマニピュレータにおいて、圧電微小駆動装は卵子を穿刺する際に使用するものであり、通常、インジェクションピペットは圧電素子の駆動による慣性体からの衝撃力による卵子を穿刺する際の微小駆動の他、他のマニピュレータによってその他の位置決め操作が可能である。
特公平6−98582 特公平6−48975 特公平6−98583 特公平7−73830
一般に、インジェクションピペットは、細胞膜を穿刺するため、 インジェクションピペットの先端部は、コンベンショナル法においては鋭利な研磨スパイク加工が施され、ピエゾICSI法においては、圧電素子の駆動により、慣性体による衝撃力を発生させ、これを利用して細胞膜を穿刺するため、フラットに加工されている。
近年、不妊者の高齢化に伴い、細胞膜の伸展性の低い、所謂、低伸展性細胞が増えてきており、細胞膜の弱い低伸展性の卵子でも死滅させないようにすることが課題となっている。
しかしながら、従来のインジェクションピペットでは、理由は未解明であるものの、卵子の低伸展性細胞に起因してなのか、胚盤胞発生率が低く、多くの卵子が死滅してしまうことが知られている。
そこで、本発明は、哺乳類における卵細胞質内注入法に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットであって、インジェクションピペットの先端表面に設けられ、細胞の膜に接する円環部が面取りがなされ、圧電素子を駆動する前の、インジェクションピペットによる卵子の膜の伸展性に優れ、胚盤胞発生率を向上させることが可能であって、それにより卵子生存率の向上に繋げることが可能なインジェクションピペットを提供することを目的とする。
上記目的達成のため、本発明に係るインジェクションピペットは、哺乳類に対する卵細胞質内注入法に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって当該圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットであって、当該インジェクションピペットの先端表面に設けられ、細胞の膜に接する円環部は、前記インジェクションピペットの先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、前記インジェクションピペットの外側面部から前記円環部への移行は面取りがなされていることを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットは、前記円環部から内側面部への移行は面取りがなされていることを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットはガラス管であり、先端に熱を加えて表面を溶解させることにより前記面取りがなされていることを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きいことを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きく、かつ、当該精子を前記インジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを前記精子の頭部の直径の値以外に有し、前記インジェクションピペットの外径に対する内径の割合は90%以上100%未満であることを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットは、前記圧電素子の駆動による前記慣性体から生じる衝撃力により微小駆動される他、前記インジェクションピペットが接続されたマニピュレータによる位置決め操作が可能であることを特徴とする。
本発明に係る前記インジェクションピペットは、前記圧電素子に置換して電歪素子の駆動によって当該電歪素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されることを特徴とする。
本発明によれば、インジェクションピペットの外側面部から円環部への移行が面取りがなされており、さらに、円環部から内側面部への移行は面取りがなされているため、詳細な原理は不明であるものの、細胞膜を充分に伸展して、膜に開く穴の大きさをより小さなものとして修復を容易とした低侵襲性な操作が可能となるとともに、従来のコンベンショナル法及びピエゾICSI法ように、インジェクションピペットの先端部分に鋭利な部分が存在しないため、細胞へのダメージ、細胞膜への穴の大きさを最小限に抑えることが可能となり、結果として胚盤胞発生率を向上させることができ、卵子生存率の向上に繋げることが可能である。
また、本発明によるインジェクションピペットは、先端を面取りすることにより、膜を伸展できる効果が得られ、細胞質膜に開く穴の大きさも小さくなり、細胞質膜の修復を早めることができる。
また、インジェクションピペットの先端を丸め加工で面取りすることにより、哺乳類であるブタの細胞膜の弱い卵子に対しても膜を充分に伸展することによる圧電微小駆動装置の操作が可能となる。
また、インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子頭部の最大直径よりも大きく、かつ、精子をインジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを精子の頭部の直径の値以外に有し、インジェクションピペットの外径に対する内径の割合は90%以上100%未満であるというようにインジェクションピペットが細管であることにより、インジェクションピペットの先端が面取りされていることとあいまって、膜を伸展できる効果が得られるとともに、細胞質膜に開く穴の大きさもより一層小さくなり、細胞質膜の修復を早めることができる低侵襲性な操作が可能となり、結果として胚盤胞発生率を向上させることができ、卵子生存率の向上に繋げることが可能である。
また、現在ヒトの不妊治療(顕微授精)を行う際に問題となっている老化卵子(高齢の女性に見られる卵子)の脆弱な卵細胞質膜における精子注入後の卵子生存率の低下、正常な受精卵を作出できないとの課題を改善することが期待できる。
本発明によるインジェクションピペットの外観、構成を示す図であり、(a)は、インジェクションピペットの全体を示す図、(b)は面取り前のインジェクションピペットの先端部の拡大を示す断面図、(c)は面取り済みのインジェクションピペットの先端部の拡大を示す断面図である。である。 ICSI操作に用いるインジェクションピペットの正面における各部の大きさを示す図である。 インジェクションピペットが接続された圧電微小駆動装置の構成を示すブロック図である。 ブタ顕微授精に用いたピペットの先端の側面の外形を示す図である。 圧電微小駆動装置を用いた精子の卵子細胞質内への顕微注入を説明する図である。 ブタICSIにおける各種インジェクションピペットによるICSI操作及び胚発生の実験結果を示す図である。 卵細胞質内注入法におけるマイクロピペットのコンベンショナル法を説明する図である。
以下、図面を参照して、本発明によるインジェクションピペットを実施するための形態について説明する。尚、本発明は、哺乳類に対する卵細胞質内注入法(ICSI)に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットに関するものであり、インジェクションピペットの先端表面に設けられた、細胞の膜に接する円環部を面取りすることにより、詳細な原理は不明であるものの、卵子の細胞膜の高い伸展性を維持できることができ、これにより胚盤胞発生率を向上させて、結果的に卵子生存率の向上に繋げることが可能であり、この点を本件発明者は試行錯誤の結果見出したものである。
[インジェクションピペットの構成]
図1は、本発明によるインジェクションピペットの外観、構成を示す図であり、(a)は、インジェクションピペットの全体を示す図、(b)は面取り前のインジェクションピペットの先端部の拡大を示す断面図、(c)は面取り済みのインジェクションピペットの先端部の拡大を示す断面図である。
図1(a)に示すように、インジェクションピペット1は、ガラス管から成り、テーパー状に形成された先端部3と、開口された先端から所定の距離に設けられた曲げ部15と、ピペットホルダ35(図3に示す)に取り付けられ所定の長さを有する基部18とを有している。
図1(b)の面取り前のインジェクションピペット1において、一端側に円環部5を有してテーパー状に形成された先端部3は、インジェクションピペット1の内部空間を囲うように管状に形成されており、円環部5はインジェクションピペット1の先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されている。また、先端部3において、円環部5と外側面部10との移行部分、円環部5と内側面部11との移行部分においては、鋭利な角部6が存在する。
図1(c)のインジェクションピペット1の先端部3は、図1(b)の先端部3における角部6に対して熱を加えることにより表面を溶解させて面取りしたものであり、円環部5が、インジェクションピペット1の先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、インジェクションピペット1の外側面部10から円環部5への移行は面取り7がなされている。
また、インジェクションピペット1は、先端の円環部5から内側面部11への移行は面取り8がなされている。尚、インジェクションピペット1の先端の面取りは、図1(c)に示す曲面形状に限らず、ストレートに研磨して平面を得るような他の形状であってもよい。
また、先端部3の形状は、先窄まりのテーパー状に限らず、例えば、円柱状の一定の内径を有するものであってもよい。
インジェクションピペット1の内径の大きさは、卵細胞質65(図5に示す)の中に注入する精子頭部の最大直径よりも大きくなっている。例えば、豚の精子頭部の直径が、約3.5マイクロンメータ(μm)前後であり、豚(ブタとも記す)に用いるインジェクションピペット1の内径は、ブタの精子特有の粘着性から、ピペットや、他の精子との癒着を防止するべく、精子頭部の最大直径以外のクリアランスが必要となり、その結果、ブタに用いるインジェクションピペット1の最低限必要な内径は、最小値が約6μmとなり、インジェクションピペット1を操作する者の経験や操作特性によって必要となるクリアランスも異なるため、最大値が約9μmとなる。また、人の精子の頭部の直径は、やはり約3.5マイクロンメータ(μm)前後であり、ブタのような粘着性もないことからクリアランスを大きく設定する必要もなく、人(ヒトとも記す)に用いるインジェクションピペット1の最低限必要な内径の最小値は、約3.5μmを超える大きさである。
そのため、通常、精子の頭部の直径に対して、インジェクションピペット1の内径に対するクリアランスを0%超65%以下に保ったインジェクションピペット1であれば、インジェクションピペット1の内部に対して哺乳類の精子の出し入れが可能であり、インジェクションピペット1の内径は哺乳類の精子頭部の直径と、この直径以外のクリアランス(内径−精子頭部の最大直径)を考慮して設定される。
即ち、インジェクションピペット1の内径は、動物種による精子の特性(精子の先体反応などによる粘着性や、例えば、マウスの精子頭部のような鈎状等の精子頭部の形状)により、精子頭部の最大直径よりも余裕を持った大きさが必要となる。また、インジェクションピペット1を操作する者の経験や操作特性によって必要となるクリアランスも異なる。このため、インジェクションピペット1の内径のクリアランスは、内径に対して最大で65%である。一方、インジェクションピペット1の内径が、精子の頭部の最大直径の大きさとほぼ同じ大きさであってもよい場合もあることから、インジェクションピペット1の内径のクリアランスは、内径に対して最小で0%超(精子頭部の最大直径をわずかに超える値)である。
開口された先端から所定の距離に設けられた曲げ部15は、例えば、インジェクションピペット1の先端から例えば、1−5mmの距離に曲げ位置が設けられており、曲げ部15における曲げ角度は、例えば20度である。曲げ角度は、インジェクションピペット1の基体を成す基部18からの曲げ角度が0度のときは、インジェクションピペット1全体がストレートに形成されている。尚、インジェクションピペット1は、曲げ角度を有するものに限らず、ストレートのものを使用してもよい。
ピペットホルダ35に取り付けられる基部18は、所定の長さを有しており、先端部3と連通した内部空間を有している。基部18の一方の端部は、テーパーの先端部3と連接されており、他の端部は、ピペットホルダ35に固定される。
[顕微授精用ピペットの作製]
次に、インジェクションピペット1の作成について述べる。図1に示すインジェクションピペット1の作成には、外径1mm、ガラス管肉厚約50μm、即ち、ガラス管の外径に対する内径の割合が90%のガラス管(以下、「ガラス管A」と記す。)を用いる。ガラス管をガラス管引き伸ばし機にセッティングし、目的の形状に合わせたプログラムにより、ガラス管を細く引き伸ばす。
引き伸ばしたガラス管は、ガラス管加工機のピペットホルダに装着する。ガラス管加工機は、ヒーターに取り付けられた白金線上のガラスの玉を加熱して各種の加工を行うものである。ガラス管加工機によって、ガラス管の所定の太さの部分に加熱したガラスの玉を素早く接着させることで、ガラス管を折るようにする。折ったガラス管は、先端から1mm以上の長さの部分にガラス管加工機の加熱したガラス玉の位置を調整して、所定の角度に曲げるようにする。
また、ガラス管からなるインジェクションピペット1は、ガラス管加工機の加熱したガラスの玉によって先端に熱を加えて表面を溶解させることにより、インジェクションピペット1の外側面部10から円環部5への移行する部分及び円環部5から内側面部11への移行する部分が面取りがなされている。この面取りは、研磨加工等で行うことも可能である。
図2は、ICSI操作に用いるインジェクションピペットの正面における各部の大きさを示す図である。尚、この図2におけるインジェクションピペットの正面とは、図1(a)の紙面の左側から見た場合に表れるインジェクションピペットの最先端部分を意味する。
図2におけるdoは先端部の外径、diは先端部の内径、diminは先端部の最小内径、tは先端部のガラス厚をそれぞれ示す。尚、インジェクションピペットの最小内径diminは、哺乳類の卵細胞質の中に精子を注入するために、精子頭部の最大直径の大きさとインジェクションピペット1の内部に対して哺乳類の精子の出し入れが可能とするクリアランスを考慮して規定される。インジェクションピペット1の先端に熱を加えて表面を溶解させた場合、先端部が表面張力により丸くなり、外側面部10及び内側面部11側に丸く膨らんでしまうことがあるが、その場合でも精子注入のためインジェクションピペットの最小内径diminよりもdiの先端部の内径は大きい必要がある。
ブタ用インジェクションピペット1は、例えば、先端部の外径doは、10μm、内径diは9μmであり、先端部3のインジェクションピペット1のガラス厚は、約0.5μmである。
一方、ヒト用インジェクションピペット1は、例えば、先端部の外径doは、5.5μm、内径diは5μmであり、先端部3のインジェクションピペット1のガラス厚は、約0.25μmである。
また、ブタ用インジェクションピペット1の先端部の最小内径diminは、ブタの精子特有の粘着性故に6μmであり、ヒト用インジェクションピペット1の先端部の最小内径diminは、ブタのような粘着性もないことから、精子頭部の最大直径よりも大きければよいため、3.5μm(ヒトの精子頭部の最大直径が3.5μm程度であるためそれをわずかに超える値)となる。
前述のようにインジェクションピペット1の内径は、卵細胞質の中に注入する精子頭部の最大直径よりも大きく、かつ、この精子をインジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスをこの精子の頭部の直径の値以外に有しており、そして、インジェクションピペット1の外径に対する内径の割合は90%以上100%未満であることが好ましい。
尚、ブタ用インジェクションピペット1及びヒト用インジェクションピペット1の各部の大きさは一例であり、これに限定するものではない。
[圧電微小駆動装置の構成]
次に、インジェクションピペットが接続された圧電微小駆動装置の構成について説明する。
図3は、インジェクションピペットが接続された圧電微小駆動装置の構成を示すブロック図である。図3に示すように、圧電微小駆動装置30は、インジェクションピペット1を取り付けるピペットホルダ35と、圧電微小駆動装置30を顕微鏡のXYZθマニピュレータ55に取り付ける器具であるスライドベース40と、圧電素子48を内蔵したドライブユニット45とを有している。
ピペットホルダ35は、先端にインジェクションピペット1を取り付けて固定するホルダグリップ36を備えている。ホルダグリップ36の内部に、O(オー)リングが設けられており、インジェクションピペット1をピペットホルダ35に挿入して、O(オー)リングで締めてインジェクションピペット1を固定する。
図3に示すように、ピペットホルダ35のホルダグリップ36とドライブユニット45との間には、スライドベース40が取り付けられている。スライドベース40に設けられているクランプネジ41により、ピペットホルダ35をスライドベース40に固定する。スライドベース40には、顕微鏡に備えられたXYZθマニピュレータ55に接続するための接続部(図示せず)を有している。スライドベース40の接続部と顕微鏡のXYZθマニピュレータ55とを接続することにより、インジェクションピペット1の先端が、XYZθマニピュレータ55の動きに連動して移動する。
尚、本発明の所謂ピエゾICSI法のマイクロマニピュレータにおいて、圧電微小駆動装30は卵子を穿刺する際に使用するものであり、インジェクションピペットは圧電素子の駆動による慣性体からの衝撃力による卵子を穿刺する際の微小駆動の他、XYZθマニピュレータ55の動きによってその他の位置決め操作が可能である
このように、インジェクションピペット1が接続された圧電微小駆動装置30は、スライドベース40を介して顕微鏡のXYθZマニピュレータ55に接続される。尚、圧電微小駆動装置と顕微鏡のXYZθマニピュレータに接続は、スライドベース40を使用することに限定するものではなく、他のものであってもよい。
ドライブユニット45は、圧電素子48の一方の主面(振動する面)に連結された慣性体49を内蔵し、圧電素子48の他方の主面を結合した鍔部47を介してピペットホルダ35のパイプに固定されている。
圧電微小駆動装置30には、圧電素子を制御するコントローラ(図示せず)と、コントローラに接続され、圧電素子の駆動条件を設定する表示パネル(図示せず)と、圧電素子を駆動するスイッチ(図示せず)とが備えられている。
インジェクションピペット1は、圧電素子48の駆動によって当該圧電素子48に連結された慣性体49による衝撃力により微小駆動される。尚、圧電素子48の駆動による慣性体49によるインジェクションピペットに発生する衝撃力に関する詳細は公知であり、特許文献1の特公平6−98582等に開示されているため、説明は省略する。尚、圧電素子48は、電歪素子であっても同様にインジェクションピペット1を慣性体49の衝撃力により微小駆動が可能である。
[ブタ顕微授精操作の準備]
次に、哺乳類おける卵細胞質内注入法での顕微授精の準備及び操作について述べる。尚、以下に述べる卵細胞質内注入法では、哺乳類としてブタを用いたものである。卵細胞質内注入法は、圧電素子48(ピエゾ)を使用した圧電微小駆動装置30を用いており、圧電微小駆動装置30は、顕微鏡に設けられたXYZθマニピュレータ55に取り付けられている。
最初に、使用する卵子60を固定するためのホールディングピペット68をピペットホルダ(不図示)に取り付ける。その際、液圧タイプのインジェクタに接続されている場合は、ピペットホルダ内のオイルを排出し気泡をしっかりと排出した後にホールディングピペット68を取り付ける。空気圧式インジェクタの場合は、そのまま取り付ける。
精子注入用のインジェクションピペット1のセッティングは、ピペットホルダ35に取り付ける前に、予めオペレーションリキッド(フロリナート)を吸収したマイクロローダーを用いてインジェクションピペット1の中心付近にオペレーションリキッド(フロリナート)を約1から1.5cmの幅で充填する。尚、オペレーションリキッド(フロリナート)のインジェクションピペット1への充填は、圧電素子48からの衝撃力をインジェクションピペット1の先端に効率よく伝えるために行うものである。
図3に示すように圧電微小駆動装置30の先端には、インジェクションピペット1とピペットホルダ35とを接続するホルダグリップ36が設けられている。圧電微小駆動装置30に取り付けられたピペットホルダ35のホルダグリップ36をインジェクションピペット1を取り付けるために緩める。
ピペットホルダ35のホルダグリップ36と反対側に位置する端部に液圧式インジェクタが接続されている場合は、ピペットホルダ35内のオイルを少し排出し、気泡がないことを確認し、オペレーションリキッドを充填したインジェクションピペット1を挿入する。
ピペットホルダ35に空気圧式インジェクタが接続されている場合には、圧電微小駆動装置30が取り付けてあるピペットホルダ35のホルダグリップ36を緩めて、そのままオペレーションリキッドを充填したインジェクションピペット1を挿入する。
インジェクションピペット1をホルダグリップ36内の4連になっているO(オー)リングを貫通するように挿入する。ホルダグリップ36をしっかりと締め付けて、その後、インジェクションピペット1の先端までオペレーションリキッドを送り出す。
インジェクションピペット1の先端からオペレーションリキッドが排出されていることを確認し、最初にインジェクションピペット1を5%PVP(ポリビニルピロリドン)ドロップに落としこむ。洗浄用の5%PVPドロップで、吸引、排出を繰り返し、液圧式又は空気圧式インジェクタの操作性を確認すると同時にインジェクションピペット1の内外を洗浄するようにする。
[ブタ精子の不動化]
次に、圧電微小駆動装置を用いたブタ精子の不動化について述べる。顕微授精における精子の不動化操作は、精子の尾部に物理的な圧迫や衝撃を与えて、精子の動きを止めることによりその後の操作を簡便にさせると同時に尾部の細胞膜へ傷をつけて、卵子活性化因子を精子から放出させるものである。
通常の受精では、卵子細胞質内に精子が侵入すると同時に卵子に対して受精(前核形成)および発生の開始を促す刺激を生じさせる卵子活性化因子(sperm factor)が精子より放出されるが、顕微授精においては、不動化しない精子をそのまま卵子細胞質内に注入しても精子からの卵子活性化因子が放出されないことにより、卵子の受精や発生は開始しないため、顕微授精ではその卵子活性化因子を放出させるべく、精子の尾部の細胞膜に傷をつける(精子の不動化)を行う。
この場合、懸濁した5%PVPドロップに精子を移動して、精子不動化の操作を行う。精子は、動きが活発で奇形がなく頭部および尾部に付着物が無いものを選別する。精子の不動化方法は、圧電微小駆動装置30を用いた場合には、精子をインジェクションピペット内に吸引して排出する際に、精子尾部にインジェクションピペット先端を当てて圧電微小駆動装置30を駆動させて精子を不動化する。
圧電微小駆動装置30を用いないコンベンショナルピペットによる精子不動化は精子をシャーレの底面にコンベンショナルピペットで挟み込み擦りつけて不動化する。精子が完全に動きの止まったことを確認した後に、精子をインジェクションピペット、コンベンショナルピペット内に吸引し、注入操作を行う。
[ブタ顕微授精試験]
ブタ顕微授精に用いるインジェクションピペットの違いが顕微授精操作および胚発生に及ぼす影響について調査を行った。
図4にブタ顕微授精に用いたインジェクションピペットの先端の側面の外形を示す。ブタ顕微授精に用いたピペットは、前述したように、ガラス管をガラス管引き伸ばし機、ガラス管加工機によって制作したものである。また、必要により、ピペット先端の表面はフラット加工、研磨加工される。
図4(a)に示す第1のインジェクションピペットは、ピエゾICSI法に用いるものであり、一例として、外径1mm、ガラス管肉厚約125μmのガラス管(以下、「ガラス管B」と記す。)を用い、ガラス管をカラス管引き伸ばし機にセッティングし、ガラス管を細く引き伸ばして作成した。それにより、第1のインジェクションピペットの外径は、一例として、12μm、内径は9μm、曲げ角は20度である。即ち、ガラス管の外径に対する内径の割合が75%である。この第1のピペットをCTと記す。CTは本発明のようにインジェクションピペットの先端を面取りしていないため、先端部において円環部から外側面部及び内側面部の移行部分が鋭利な角部6となっている。
図4(b)に示す第2のインジェクションピペットは、ピエゾICSI法に用いるものであり、一例として、ガラス管Aで第1のインジェクションピペットと同様に細く引き伸ばして作製し、外径は10μm、内径は9μm、曲げ角は20度である。即ち、インジェクションピペットの外径に対する内径の割合が90%である。この第2のピペットをNUTFと記す。NUTFはCTよりも細い管となっている。また、NUTFはCTと同様に本発明のようにインジェクションピペットの先端を面取りしていないため、先端部において円環部から外側面部及び内側面部の移行部分が鋭利な角部6となっている。
図4(C)に示す第3のインジェクションピペットは、本発明のインジェクションピペットであり、ピエゾICSI法に用いるものであり、一例として、ガラス管Aで第1及び第2のインジェクションピペットと同様に細く引き伸ばして作製し、図2に示すdo外径は10μm、di内径は9μm、先端を丸め加工(面取り7、8)し、曲げ角は20度である。即ち、インジェクションピペットの外径に対する内径の割合が90%である。この第3のピペットをNUTPと記す。
図4(d)に示す第4のインジェクションピペットは、コンベンショナル法に用いるものであり、一例として、ガラス管Bで第1乃至第3のインジェクションピペットと同様に細く引き伸ばして作製し、外径は12μm、内径は9μm、先端を30度に研磨加工後、鋭利なスパイクたる尖端部75を形成し、曲げ角は20度である。即ち、ガラス管の外径に対する内径の割合が75%である。この第4のピペットをCVと記す。
このように、試験区は、ガラス管Bで作製したPMM用ピペット(CT)、ガラス管Aで作製したPMM用ピペット(NUTF)、ガラス管Aで作製し先端を丸め加工したPMM用ピペット(NUTP)及び授精操作にPMMを用いないガラス管Bで作製した従来のコンベンショナル法の顕微授精用ピペット(CV)を用いた4区で比較した。
[卵子細胞質内への顕微注入操作]
次に、圧電微小駆動装置を用いた精子の卵子細胞質内への顕微注入操作について説明する。図5は、圧電微小駆動装置を用いた精子の卵子細胞質内への顕微注入を説明する図である。
精子70が含まれる5%PVP液から卵子60への注入操作を行う顕微授精操作用hoPZM(高浸透圧Porcine Zygote Medium)ドロップへ移動する。図5(a)に示すように、注入操作を行う卵子60の第一極体66を6時もしくは12時の位置にホールディングピペット68によって保持し、卵子60の穿刺を行う際に極体の直下の卵子核にダメージを与えないようにする。
図5(b)に示すように、透明帯61にインジェクションピペット1の先端を軽く押し当てる。このときの精子70は、インジェクションピペット1先端から少し離れたインジェクションピペット1の内部に位置するようにする。
インジェクションピペット1先端が透明帯61に軽く接触した状態で、圧電素子(ピエゾ)48を駆動させ、インジェクションピペット1が透明帯61に刺さり最後の一層までインジェクションピペット1を押し進める。最後の一層を残し、圧電素子48を止めて、手動で押し開ける。
圧電素子48の駆動設定は、圧電素子48の振動回数、振動の強度の大きさについて行う。また、圧電素子48の駆動設定は、透明帯61等の穿刺状況に応じて変更する。インジェクションピペット1内に透明帯61の断片が、入っている場合は、卵子60の外もしくは囲卵腔67に排出し注入操作を行う。
精子70をインジェクションピペット1の先端までに移動させ、インジェクションピペット1の先端を卵細胞質膜64に押し当てて、卵細胞質膜64を伸展させる。卵細胞質65の半分から2/3の位置まで針先を進める。
このとき、卵細胞質膜64は伸展して、図5(c)に示すように、変形する。卵細胞質65の半分から2/3の位置で圧電素子48を駆動させる。即ち、圧電微小駆動装置30を用いて顕微授精操作における卵細胞質膜64を穿刺する際、XYZθマニピュレータ55でインジェクションピペット1の先端を卵細胞質膜64に接触させて押すように移動させて、卵細胞質膜64を充分伸展させた後に圧電微小駆動装置30を稼働させて破膜し、精子70を注入して操作を完了させる。
卵細胞質膜64を穿破(破膜)した後、なるべく培養液を注入しないように精子70を注入する。このとき、図5(d)に示すように、卵細胞質65は、元の状態に復元するように矢印で示す方向に移動する。
尚、卵子細胞質膜64を充分に伸展できず、卵子細胞質膜64の伸展開始個所から中心に向けて伸展する途中で破膜した場合には、圧電微小駆動装置を稼働させずに精子70を注入するようにする。精子70を注入後、ゆっくりインジェクションピペット等を引き抜くようにする。これにより、ブタの卵子細胞質内への顕微注入操作が完了する。
[顕微注入後の卵子の処理]
次に、顕微注入した卵子の処理について述べる。最初に、卵子細胞質内への顕微注入操作後に、精子を注入した卵子60の生存数を確認する。
次に、顕微注入に用いた精子70によって顕微授精済みの卵子60は、電気刺激による電気活性化処理を行う。
[顕微授精胚の体外培養]
顕微授精胚の数に応じてPZM 50-100uLで作製したドロップ1つに30−50個ずつ分けて、38.5℃、5%CO2、5%O2、90%N2の条件に設定したインキュベータで体外培養する。顕微授精胚における分割胚を調べる場合には、2日目で顕微鏡観察により計数する。胚盤胞発生率は、体外培養後6日目で顕微鏡観察した胚盤胞の個数を計数する。
次に、ブタICSIにおける各種ピペットによるICSI操作及び胚発生の実験結果について説明する。図6は、ブタICSIにおける各種ピペットによるICSI操作及び胚発生の実験結果を示す。
尚、図6に示す項目の「N」は、試験回数を示す。また、顕微授精操作における卵細胞質膜64を穿刺する際、圧電微小駆動装置30を用いる場合に、卵子細胞質膜64を充分伸展させた後に圧電微小駆動装置30を稼働させて破膜して精子70を注入するが、その際、卵子細胞質膜64を充分に伸展できず、卵子細胞質膜64の伸展開始個所から中心に向けて伸展する途中で圧電微小駆動装置を稼働させずに破膜した場合を、膜低伸展卵子として判定した。
膜低伸展卵子とは、通常であれば膜を伸展させた後に、PPM30を駆動させ破膜させるところを伸展させる途中で破膜する卵子をいう。膜低伸展卵子の判断基準としては、顕微鏡観察による破膜した後に元の球形状に戻る卵子60を膜低伸展卵子とした。
また精子注入後、体外培養開始までの約1時間で生存していた卵子60を生存卵子と判定した。体外培養した顕微授精胚は、培養2日目で2−8細胞期に分割した胚を分割胚と判定し、培養6日目で胞胚腔を形成した胚を胚盤胞と判定した。
図6に示すように、ヒト老化卵子のモデルとして低グルコース濃度の成熟培養液を用いて体外成熟培養したブタ卵子に対して、顕微授精試験を4種類のピペットを用いて比較した結果、従来の顕微授精用の研磨スパイク付きコンベンショナルピペット(CV)では、卵細胞質膜64を伸展できずに穿孔する卵子60である膜低伸展卵子の割合が41.3%と高くなったのに対し、ガラス管Bで作製したPMM用ピペット(CT)、ガラス管Aで作製したPMM用ピペット(NUTF)およびガラス管Aで作製し先端を丸め加工した本発明のPMM用ピペット(NUTP)を用いた区では、卵細胞質膜64を伸展できずに穿孔する卵子60の割合が大幅に低下し、CTでは17.3%、NUTFでは12.4%、NUTPでは7.3%であった。
即ち、本発明のNUTPでは7.3%というように卵細胞質膜64を伸展できずに穿孔する卵子60の割合が大幅に低下し、膜低伸展卵子の割合についてCV、CT、NUTFの何れに対しても大幅な改善が見られた。特に、NUTFと比較しても1.69倍の改善がなされており、これは詳細な原理は不明であるものの、本発明のNUTPにおける先端部3における面取り7、8が何らかの改善効果を生んでいるものと推測される。
この結果は、卵細胞質膜64が脆弱な卵子60に対しても圧電微小駆動装置30を用いた本発明のNUTPの顕微授精ではピペット先端が面取りされているため、膜を充分に伸展して、膜に開く穴の大きさをより小さなものとして修復を容易とした低侵襲性な操作が可能となり、細胞の膜への穴の大きさを最小限に抑えることが可能となることを示しており、従来の折り加工のみのPMM用ピペット(CT及びNUTF)に比べても卵細胞質膜64への侵襲性がさらに低くなり、脆弱な卵細胞質膜64でも充分に伸展させることが可能である点が明らかとなった。
また、インジェクションピペットの内径が、卵細胞質の中に注入する精子頭部の最大直径よりも大きく、かつ、精子をインジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを精子の頭部の直径の値以外に有し、インジェクションピペットの外径に対する内径の割合は90%以上100%未満であるというようにインジェクションピペットが細管であることにより、インジェクションピペットの先端が面取りされていることとあいまって、卵細胞質膜64を伸展できる効果が得られるとともに、卵細胞質膜64に開く穴の大きさもより一層小さくなり、卵細胞質膜64の修復を早めることができる低侵襲性な操作が可能となり、脆弱な卵細胞質膜64でも充分に伸展させることが可能である点が明らかとなった。
尚、顕微授精(ICSI)操作後の卵子の生存率(生存卵子数)および体外培養2日目の培養胚数及び分割胚数(分割率)については各試験区で改善は認められなかった。この結果は、本実験で使用したブタ卵子は、培養液のグルコース濃度を調整することで卵細胞質膜64の伸展性は低くなり脆弱になったが、修復力は低下していないため、生存率に影響がなかったものと考えられる。
これに対して、ヒトの老化卵子の卵細胞質膜は脆弱で、膜の修復力も低下しているために顕微授精の際に卵細胞質膜が低伸展だった場合には変性(死滅)する卵子が多くなる。このため、本発明のNUTPが膜低伸展卵子の割合を大幅に低下させることが可能である点を考慮すると、ヒトの老化卵子に高伸展が可能な本発明のPMM用ピペット(NUTP)を用いることにより、伸展できずに穿孔する卵子の割合が大幅に低下することが期待される。
これに伴い、顕微授精(ICSI)操作後の卵子60の体外培養6日目の胚盤胞数(胚盤胞発生率)については、本発明のNUTPを用いた区(13.9%)が、CV区(6.7%)、CT区(7.3%)及びNUTF区(8.7%)に比べて、胚盤胞発生率が高くなることが確認された。
このため、本発明のPMM用ピペット(NUTP)を用いて卵細胞質膜が脆弱な卵子に顕微授精した場合に膜への低侵襲性(細胞膜を充分に伸展して、膜に開く穴の大きさをより小さなものとして修復を容易とした点)の効果が胚発生への改善効果があることが明らかになった。
本発明によるインジェクションピペットは、ブタの顕微授精試験により検証したものではあるが、本発明のPMM用ピペット(NUTP)は、ヒト老化卵子に対しても低侵襲性の効果が充分期待できる。
以上述べたように、本発明によれば、インジェクションピペットの外側面部から円環部への移行が面取りがなされており、さらに、円環部から内側面部への移行は面取りがなされているため、詳細な原理は不明であるものの、細胞膜を充分に伸展して、膜に開く穴の大きさをより小さなものとして修復を容易とした低侵襲性な操作が可能となるとともに、従来のコンベンショナル法及びピエゾICSI法ように、インジェクションピペットの先端部分に鋭利な部分が存在しないため、細胞へのダメージ、細胞膜への穴の大きさを最小限に抑えることが可能となり、結果として胚盤胞発生率を向上させることができ、卵子生存率の向上に繋げることが可能である。
また、本発明によるインジェクションピペットは、先端を面取りすることにより、膜を伸展できる効果が得られ、細胞質膜に開く穴の大きさも小さくなり、細胞質膜の修復を早めることができる。
また、インジェクションピペットの先端を丸め加工で面取りすることにより、哺乳類であるブタの細胞膜の弱い卵子に対しても膜を充分に伸展することによる圧電微小駆動装置の操作が可能となる。
また、インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子頭部の最大直径よりも大きく、かつ、精子をインジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを精子の頭部の直径の値以外に有し、インジェクションピペットの外径に対する内径の割合は90%以上100%未満であるというようにインジェクションピペットが細管であることにより、インジェクションピペットの先端が面取りされていることとあいまって、膜を伸展できる効果が得られるとともに、細胞質膜に開く穴の大きさもより一層小さくなり、細胞質膜の修復を早めることができる低侵襲性な操作が可能となり、結果として胚盤胞発生率を向上させることができ、卵子生存率の向上に繋げることが可能である。
また、現在ヒトの不妊治療(顕微授精)を行う際に問題となっている老化卵子(高齢の女性に見られる卵子)の脆弱な卵細胞質膜における精子注入後の卵子生存率の低下、正常な受精卵を作出できないとの課題を改善することが期待できる。
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
1 インジェクションピペット
3 先端部
5 円環部
6 角部
7、8 面取り
10 外側面部
11 内側面部
15 曲げ部
18 基部
30 圧電微小駆動装置(PMM)
35 ピペットホルダ
36 ホルダグリップ
40 スライドベース
41 クランプネジ
45 ドライブユニット
47 鍔部
48 圧電素子(ピエゾ)
49 慣性体
55 XYZθマニピュレータ
60 卵子
61 透明帯
64 卵細胞質膜
65 卵細胞質
66 第一極体
67 囲卵腔
68 ホールディングピペット
70 精子
75 (コンベンショナルピペットの)尖端部
CV コンベンショナルピペット
do インジェクションピペットの外径
di インジェクションピペットの内径
t インジェクションピペットのガラス厚
dimin インジェクションピペットの最小内径

Claims (7)

  1. 哺乳類に対する卵細胞質内注入法に使用され、かつ、圧電素子の駆動によって当該圧電素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されるインジェクションピペットであって、
    当該インジェクションピペットの先端表面に設けられ、細胞の膜に接する円環部は、前記インジェクションピペットの先端側の軸方向に対して直交する方向に形成されてなり、かつ、前記インジェクションピペットの外側面部から前記円環部への移行は面取りがなされていることを特徴とするインジェクションピペット。
  2. 前記インジェクションピペットは、前記円環部から内側面部への移行は面取りがなされていることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションピペット。
  3. 前記インジェクションピペットはガラス管であり、先端に熱を加えて表面を溶解させることにより前記面取りがなされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインジェクションピペット。
  4. 前記インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  5. 前記インジェクションピペットの内径は、卵細胞質の中に注入する精子の頭部の最大直径よりも大きく、かつ、当該精子を前記インジェクションピペットの先端から出し入れするのに最低限必要な所定のクリアランスを前記精子の頭部の直径の値以外に有し、
    前記インジェクションピペットの外径に対する内径の割合は90%以上100%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  6. 前記インジェクションピペットは、前記圧電素子の駆動による前記慣性体から生じる衝撃力により微小駆動される他、前記インジェクションピペットが接続されたマニピュレータによる位置決め操作が可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
  7. 前記圧電素子に置換して電歪素子の駆動によって当該電歪素子に連結された慣性体による衝撃力により微小駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載のインジェクションピペット。
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