JP2020130071A - 振動による害虫防除及び作物受粉の方法 - Google Patents

振動による害虫防除及び作物受粉の方法 Download PDF

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Abstract

【課題】野菜や園芸作物といった作物について、振動によって害虫を防除する方法を確立し、提供すること。【解決手段】作物栽培施設を構成する枠部に振動を与えて該作物栽培施設の作物を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s2以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、振動を用いた害虫の行動制御による植物保護技術に関する。より具体的には、本発明は、振動を用いたコナジラミ類又はアブラムシ類の行動制御によりこれらの対象害虫を直接又は間接的に防除して作物に対する加害を減じ、もって作物を保護する方法に関する。
昆虫において、振動は忌避、誘引、交尾、摂食、産卵等の行動を引き起こす、重要かつ普遍的な信号であることがわかっている。したがって、振動信号を人工的に制御することで、様々な害虫の行動を制御することが可能となり得る。
かかる制御としては、有益な昆虫に対する正の行動制御及び害虫に対する負の行動制御がある。正の行動制御として、害虫防除の資材として用いられる天敵・捕食者の対象害虫への誘引等が挙げられ、また、負の行動制御としては、忌避ならびに交尾、摂食及び産卵の阻害等による、該害虫の防除を行うことが挙げられる。
たとえば、植物等を伝播する振動を用いた害虫の防除方法は、かかる行動制御を利用した害虫防除の例である。かかる方法は、物理的防除に包含されるものであるところ、化学合成殺虫剤における普遍的な問題である薬剤抵抗性の問題や人体、環境及び非標的生物に対する悪影響の問題を伴わないといった利点を有する。したがって、かかる方法は、薬剤に抵抗性を持つ害虫の出現や、環境・食品の安全・安心志向の高まりから、長年にわたり社会的に求められている、薬剤の代替となる環境調和型の害虫防除技術の開発に資するものである。
振動による害虫の防除について例示するに、特許文献1には、カミキリムシ類、シロアリ類、カメムシ類及びコナジラミ類等の害虫の特定の行動を誘発又は抑制する、前記害虫の生息媒体における振動の周波数の範囲及び振幅の範囲を決定する工程、及び前記周波数の範囲及び振幅の範囲の振動を前記害虫の生息媒体に1回又は2回以上発生せしめ前記害虫の行動を制御する工程等について開示されている。同文献には、振動の周波数の範囲として加速度(m/s、片振幅のピーク値)を用いると5Hz〜5kHz、振幅の範囲として0.001m/s以上とすることや、持続時間が5s以下である振動を少なくとも1回含むことや、あるいは振動を2回以上与える際の振動を与える間隔を100ms以上かつ100s以下とすることについても記載されている。同文献にはとくにマツノマダラカミキリ及びイエシロアリについて、それぞれ25Hz〜1kHzの範囲である周波数及び0.05m/s以上23.5m/s以下の範囲である振幅が、ならびに1kHz〜5kHzの範囲である周波数及び0.05m/s以上15m/s以下の範囲である振幅が、有効であることについても示されている。
特許文献2及び非特許文献1には、イチジク枝の振動によるクワカミキリの防除について開示されている。非特許文献1にはブドウのつるに振動を与えることにより、ヨコバイの一種(Scaphoideus titanus)の交尾率を低下させたことについて開示されている。
特許文献3にはオンシツコナジラミを含む各種害虫に対する振動による防除について記載されている。
特許第5867813号公報 特開2001−252002号公報 特開2018−093831号公報
イチジク枝の人為的な振動刺激によるクワカミキリ被害の防除 第39回日本応用動物昆虫学会講演要旨(1995)116 細見彰洋
化学合成農薬を用いない害虫防除の試みが種々なされているものの、所期の目的を達成した例は極めて限定的である。化学合成農薬を用いない防除における条件設定の困難性が、有効な防除手段を確立する際の大きな障害になっている。
振動を用いる防除においても、振動を感知することによって行動を示す害虫における周波数を含む振動のパラメータと行動との関係は害虫の種類により固有のものが存在し区々であるところ、かかる関係についての知見を得ることの困難性や、個々の害虫の生息媒体における外部からの振動の影響を精査することの困難性等の理由により、それぞれの害虫の特定の行動を制御する振動の周波数及び振幅を決定することは困難である。
振動によって害虫を防除する方法に対する社会的な要請があるにも拘らず、かかる方法は未だ確立の途上にあるのが現状である。
近年、野菜や園芸作物といった作物の生産現場では、物理的保護技術や生物農薬などの化学合成農薬に依存しない新たな害虫防除技術の開発についての需要が高まっているが、上記のような事情により、振動を用いる害虫防除技術は存在していない。
このような背景の下、本発明は、野菜や園芸作物といった作物について、振動によって害虫を防除する方法を確立し、提供することを課題とした。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、振動のパラメータとして周波数及び振幅を害虫ごとに特定することによって上記課題が解決することを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
[1]
作物栽培施設を構成する枠部、又は畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材に振動を与えて該作物栽培施設内の作物を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上である。
[2]
振動により作物の受粉が促進される[1]に記載の方法。
[3]
作物がトマト又はイチゴである[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
防除の対象がコナジラミ類である[1]〜[3]のいずれか]に記載の方法。
[5]
振動により制御される行動が定着又は産卵行動である[4]に記載の方法。
[6]
振動として加振機により発生された振動が用いられる、[1]〜[5]のいずれか]に記載の方法。
[7]
加振機が磁歪材料である[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
振動が1秒間与えられた後9秒間振動を停止するパターンが6回以上反復され、10分から1時間の間隔を置く工程を含む[1]〜[7]のいずれか]に記載の方法。
[9]
加振機が線状部材又はその近傍に設置され、植物支持部材であるワイヤー、ひも、又は誘引治具の一端を前記線状部材に懸垂し、前記誘引治具の他端を作物に接触させて加振装置が発生した振動を該作物に伝達することを含む、[1]〜[8]のいずれか]に記載の方法。
[10]
植物支持部材が金属性の誘引治具である[9]に記載の方法。
[11]
複数の作物が植栽された作物栽培施設において、前記複数の作物の2つ又は3つ以上を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上であり、
前記2つ又は3つ以上の作物は、畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材により相互に連結されている。
[12]
作物の苗が置かれた、作物栽培施設育苗用の金網製の台に振動を与えて前記苗を振動させ、該苗に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
ただし前記苗に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上である。
[13]
定植後の前記苗には振動を与えない[12]に記載の方法。
本発明によれば野菜や園芸作物といった作物を生育させている施設において、作物栽培施設を構成する枠部に振動を与え、もって作物を振動させることにより、コナジラミ類やアブラムシ類といった害虫を防除することができる。これらの害虫はいずれも成虫が振動により行動を制御されるため、本発明の方法により、成虫による加害及び生殖行動を抑制し、防除が行われる。
振動発生装置(加振機)として、磁歪素子(磁化によって大きな外形変化を生ずる磁性材料を用いた振動子で、希土類金属−鉄系合金やコバルト−鉄系合金などがある。このまわりにソレノイドを設置し、交流電流を流すことで振動を発生できる。)を用いることにより、広範囲から選択した周波数にて、大きな加振力を発生させることが可能になり、一層高い防除効果が達成される。
さらに、本発明の方法又は装置と粘着板等のトラップとを組み合わせることにより、作物から離れた害虫を誘殺し、振動による防除効果を増強することができる。またさらに、本発明においては、作物栽培施設において栽培される作物の生育には影響がないばかりでなく、ある態様においては受粉を促進する効果が奏される。
現在頻用されている化学合成農薬は、標的でない天敵等他種にも殺虫効果を及ぼす等の欠点があるばかりでなく、周囲の地域住民への影響や環境汚染の問題も招来している。
これに対し、本発明の方法は、対象害虫の特性に応じた生息媒体における伝播振動により、特定の対象のみをピンポイントで効率的に防除することを可能にするものである。すなわち、本発明の方法は上記のような化学合成農薬の問題を伴わない特性とともに、生息媒体を伝播する振動を用いる方法であるため騒音を発生させない特性を有する、環境にやさしい防除技術を提供するものである。
このようにコナジラミ類やアブラムシ類を振動により防除することは本発明により初めて可能になったことであり、本発明は化学合成農薬や生物農薬を用いる従来技術とは全く異なる手法によるものである。
オンシツコナジラミやタバココナジラミといったコナジラミ類は小型の吸汁性害虫であり、幼虫及び成虫がトマトをはじめ、イチゴ、ナス、キュウリなどの野菜の多くの作物や花卉に寄生し加害する。葉上で交尾をする前に、雌雄間で振動信号を用いて交信を行う。1頭のメスは100個以上の卵を産むため、好適な条件下では爆発的に増殖する。イチゴでは、定植後の10月ごろから寄生がみられ、その後密度が上がっていく。イチゴの保温が始まるころには、施設内には天敵が少なくなり、仮にいても天敵にとっては好適な温度ではないため密度抑制にはつながらない。また、葉裏に生息することから、密度が低い場合には見つけづらいほか、生息部位に薬剤が行き届かないことも多い。暖かくなる3月以降急速に増殖する。多発した場合は、排泄物が直下の葉に付着してすす病の原因となる。同種も、防除が重要であるにもかかわらず、現有の防除手段では防除が難しい害虫である。
トマトについては、コナジラミ類が害虫として最も深刻な被害を与えている。コナジラミ類は飛翔するため、トマト栽培施設内へ容易に侵入する。また微小害虫であることから、被害が拡大する前に発見することも困難である。トマト等作物への寄生するタバココナジラミは重要病害となる植物ウイルス病のトマト黄化葉巻病を媒介する。その他、オンシツコナジラミやタバココナジラミの排泄物は、すす病の原因となり、作物の品質を低下させる。
アブラムシ類(モモアカアブラムシ、ワタアブラムシなど)も小型の吸汁性害虫であり増殖力が高い難防除害虫である。
本発明は、これらの難防除害虫に対して、作物の安全性を化学合成農薬や生物農薬より確実に担保しつつ防除することを可能にするものであり、従来技術によっては達成することが不可能な格別な効果を奏するものである。
トマト等の野菜を受粉させて果実を収穫するために、マルハナバチ等の受粉昆虫や農薬であるホルモン剤の利用が一般的である。しかし、外来種の受粉昆虫(セイヨウオオマルハナバチ)は法律上利用が規制されており、受粉用のホルモン剤は作物の品質低下を招くことが知られている。こうした既存技術から転換させるニーズは大きく、特に植物工場などの大型栽培施設では新たな技術開発が高品質・高効率な生産を目指す上で不可欠である。さらに、ホルモン剤等を含む化学合成農薬を散布する労働時間は、農作業全体の1割以上に相当し、その効率化や省力化、また散布者への健康被害低減が課題となっている。本発明の方法のうち、さらに振動により作物の受粉が促進される方法は、かかる背景に鑑み有用性がとくに高い。
実施例1(宮城県のトマトハウスにおける試験)において、コナジラミ類幼虫の密度が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例1において、作物の結実に、振動の影響はなかったことを示す図である。 実施例2(神奈川県のトマトハウス(土耕栽培)における試験)において、加振機の設置と作物への振動伝播の方法について示す図である。図中の「金属パイプ」は線状部材である。 実施例2における加振区において、コナジラミ類成虫の密度(捕獲数)が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例3(神奈川県のトマトハウス(水耕栽培)における試験)における試験区の配置を示す図である。 実施例3において、加振区において捕獲されたコナジラミ類成虫の密度(捕獲数)が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例4(沖縄県のトマトハウスにおける試験)における試験区の配置を示す図である。 実施例4において、調査対象とした上・中・下位からの任意の3枚の葉の位置関係を示す図である。 実施例4において、加振区においてコナジラミ類(タバココナジラミ)の成虫数が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例4において、加振区においてコナジラミ類(タバココナジラミ)の幼虫数が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例5(兵庫県のトマトハウスにおける試験)における試験区の配置を示す図である。 実施例5において、加振区においてコナジラミ類の幼虫の密度が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例5において、加振区においてアブラムシ類の成虫の密度が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例6(磁歪素子の効果確認試験1)において、加振区においてコナジラミ類の幼虫の密度が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例7(兵庫県のジニア・トマト育苗ハウスにおける試験)における試験区の配置を示す図である。 実施例7において、加振区においてコナジラミ類の成虫及び幼虫の密度が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例8(神奈川県のトマト育苗・定植ハウスにおける試験)において、育苗加振区においてコナジラミ類の幼虫の密度が無処理区より低下したことを示す図である。 実施例9(磁歪素子の効果確認試験2)において、加振区においてコナジラミ類幼虫の密度が無処理区より低下したしたことを示す図である。 実施例9において、30Hzのパルスを2回与えた試験区における着果数が、30Hzのパルスを8回与えた試験区やホルモン処理区、無処理区より多かったことを示す図である。 参考例1(大規模施設における振動伝達評価)において、金属誘引治具を用いた場合には、60m離れていても振動は十分に伝播され、ひも誘引治具を用いた場合には、振動が伝播される距離は約15〜60mであったことを示す図である。 参考例1において、高さとして150cm以下(加振機から50m以内の場合)が、防除に有効な範囲であることを示す図である。
(定義)
本明細書において「振動」とは、空気以外の基質を媒体として伝達されるものを意味する。したがって、本発明における「振動」には、空気を媒体とする、聴覚への刺激である音自体は包含されないが、音を生ぜしめる原因となる媒体における振動は包含される。
本明細書において「害虫を防除する」とは、生息媒体における、害虫の生息密度を低減せしめることのほか、害虫による生息媒体に対する被害(食害、他の有害生物の伝播等)を低減せしめることも包含する。
本明細書において「枠部」とは、作物栽培施設を構成する枠組みのあらゆる部分を意味し、側壁を構成するための部分、天井部を構成するための部分、梁、及び作物を支持するための部分を包含する。「枠部」は金属性のパイプ(金属パイプ)であってよい。
本明細書において「線状部材」とは、作物の植物体を結びつけて固定するために用いられる、長細形状を有する部材である。「線状部材」は金属性のパイプ(金属パイプ)であってよい。
本発明は上記のとおり、以下の発明に関する:
作物栽培施設を構成する枠部、又は畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材に振動を与えて該作物栽培施設内の作物を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上である。
本発明においては、上記周波数及び振幅を有する振動を作物の植物体において生じさせ、該振動によりコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を制御してこれらの害虫を防除するのである。
本発明において、「作物栽培施設」には、ビニルハウス、ガラスハウス、及び植物工場が包含されるところ、その規模や種類は限定されない。
以下において本発明をさらに詳細に説明する。
(本発明の方法において用いられる部材について)
本発明において、コナジラミ類又はアブラムシ類を防除するために、これらの害虫の生息媒体であるトマト、イチゴといった作物に振動を与える。作物に振動を与える方法は、振動が付与される起点としての作物栽培施設を構成する枠部に振動を与え、該振動を伝播し作物に振動を与える方法であれば限定されないところ、例えば以下のようにして与えることができる:
1.防除対象害虫について特定の周波数の範囲及び振幅の範囲の振動を加振機から、上記害虫が生息しているか又は生息が予測される作物栽培施設を構成する枠部又は畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材に与え、
2.該振動を、
(i)枠部又は線状部材から直接、ワイヤー、もしくはひも(テープを包含する)等の部材(植物支持部材)を1つ又は2つ以上の作物の上部に結合すること、もしくは隣接する作物を相互に接続する棒状又は帯状の部材(振動伝達部材)を略水平方向に設置すること、により、上記植物支持部材を振動させることにより伝播し、
3.上記(i)における植物支持部材に伝播された振動又は(ii)における上記基盤部分に伝播された振動を作物に伝播させて、所望の振動を作物に与える。
上記(i)における植物支持部材は振動を伝達する部材(振動伝達部材)でもあり、作物に直接又は間接的に振動を伝播できるように、設置される。作物栽培施設内のすべての作物を振動させることは不可欠ではない。また、枠部に振動を与える際に加振機は枠部に接触するように設置されている必要はなく、加振機を設置するための部材を介して設置されていてよい。すなわち、枠部に与えられた振動を伝播可能な態様で設けられた、加振機を設置するための資材のような他の部材を経由して間接的に、上記いずれかの植物支持部材(振動伝達部材)に伝播してよい。
枠部に用いられる部材の材質は、振動を伝達するものであれば限定されず、金属製の棒又はパイプが例示される。加振機から枠部に与えられた振動を伝達する部材の材質も、加振機からの振動が十分に伝播・伝達されるものであれば限定されない。
加振機が線状部材又はその近傍に設置され、植物支持部材であるワイヤー、ひも、又は誘引治具の一端を前記線状部材に懸垂し、前記誘引治具の他端を作物に接触させて加振装置が発生した振動を該作物に伝達することを含む本発明の方法は好ましい。
本発明において用いられるワイヤーは金属製であればよく、ひもとバンドの材質としてはポリプロピレンが、それぞれ例示される。これらの材質からなる素材は、振動の伝達性能やコストの面において好適であり好ましい。
ワイヤー又はひもの長さも限定されず、例えば約10cm〜約180cmであってよく、作物の高さや植え付けの範囲に応じて改変してよい。
作物栽培施設の梁が金属製の棒又はパイプである本発明の方法は好ましい。
また梁または線状部材に加振機が設置される本発明の方法は好ましい。
作物が2つ以上存在し、該2つ以上の作物の1つを他の作物と樹脂又は金属で連結して振動を伝達することを含む本発明の方法は好ましい。
植物支持部材が誘引治具である本発明の方法は好ましい。本発明における誘引治具とは作物の地上部を特定の方向に導き安定させ、生育を補助するための器具を意味する。誘引治具として金属性のものは好ましく、かかる好ましい誘引治具としてクリッパーやたなたな君(商標)が例示される。
加振機に与えられた振動を伝播するための部材同士の接続を、振動の減衰が小さくなるように行うことは好ましい。
本発明は、複数の作物が植栽された作物栽培施設において、前記複数の作物の2つ又は3つ以上を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する下記方法も含む:
ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上であり、
前記2つ又は3つ以上の作物は、畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材により相互に連結されている。
(本発明の方法において用いられる振動について)
本発明の方法においては、防除対象害虫の特定の行動を誘発又は抑制する、作物における振動の周波数の範囲及及び/又は振幅の範囲を決定する工程を含むことは好ましい。防除に好適な振動の周波数の範囲及及び/又は振幅の範囲を決定することにより、防除をより効率的に行うことが可能になるからである。
上記周波数の範囲及び振幅の範囲は、対象害虫種及び制御の対象である行動等を特定し、信号発生器及び加振機を用いて種々の周波数及び振幅の組み合わせからなる振動を当該害虫に与え、該行動を観察・記録し、同行動を制御する周波数及び振幅の閾値の組み合わせを特定することによって決定することができる。
振動の周波数の範囲及び振幅の範囲を決定する工程において、与える振動の持続時間はとくに限定されず、適宜設定してよい。振動を与える回数も、とくに限定されず適宜設定してよい。振動を与える回数は、2回以上が好ましい。
振動を2回以上与える場合、個々の振動の持続時間及び与える間隔はとくに限定されず適宜設定してよい。また、前記持続時間及び与える間隔は、各振動ごとに同一でも異なってもよい。
与える振動の波形は限定されず、サイン波ならびに矩形波、三角波、ノコギリ波等の非正弦波のいずれでもよい。これらの波形は、防除のための振動においても同様であってよい。
振動の周波数の範囲は上記の範囲であればとくに限定されない。また、スイープやノイズと定義される、これらの周波数帯を全て又は一部含むものも有効であり好ましい。
さらに、2種類以上の周波数を組み合わせると、順応回避に有効であるため好ましい。
なお、測定機器の制限から加速度として振幅の測定が困難である場合には、振動中の媒体の振動の速度及び周波数から換算した振幅の値を求めることができる。すなわち、速度(v)と加速度(a)及び周波数(f)との間には、a=(2πf)・vの関係がある。したがって、例えば5kHzの周波数における0.000000032m/sの速度を加速度に換算すると、0.001m/sとなる。
本発明において、コナジラミ類又はアブラムシ類を防除するために、上記のとおり同種の生息媒体であるトマト、イチゴのような作物に振動を与える。
振動を与える間隔が1s以上かつ20s以下である方法は好ましく、5s〜10sであるものはより好ましい。
振動が1秒間与えられた後9秒間振動を停止するパターンが6回以上反復され、10分から1時間の間隔を置く工程を含む本発明の方法はとくに好ましい。
(制御対象である害虫の行動について)
本発明の方法によれば、害虫種(コナジラミ類又はアブラムシ類)の振動信号を制御し、1)忌避による害虫の誘導、侵入防止、2)定着・交尾の阻害、3)摂食・産卵の軽減、4)本発明の方法と既存の防除技術(例:光や誘引物質によるトラップ等)の組み合わせ、等による害虫防除が可能となる。
本発明の方法により防除対象害虫の防除を実施するためには、たとえば、対象害虫の成虫が生息しているか又は生息が推測される作物栽培施設の一定面積ごとに1台又は2台以上の加振機を設置することによって該害虫の忌避、産卵阻害、摂食阻害等の行動を制御することにより防除を行うことができる。
制御の対象とする害虫の行動はとくに限定されず、探索、定位、定着、集合、摂食、交尾、産卵、逃避、不動化及び警戒等が例示される。
振動により制御される行動が定着又は産卵行動である本発明の方法は好ましい。
振動により作物の受粉が促進される本発明の方法は好ましい。受粉を促進するための作物に与えられる振動の周波数及び振幅の範囲として、30〜300Hz、及び該振動の振幅の範囲は4m/s以上が、それぞれ挙げられる。これらの周波数の範囲及び振幅の範囲の少なくとも一方を充足する本発明の方法は好ましく、両方を充足する本発明の方法は一層好ましい。
作物がトマト又はイチゴである本発明の方法も、コナジラミ類及びアブラムシ類を効率的に防除できるため好ましい。作物の栽培形態は限定されず、土耕でも水耕であってもよい。
本発明には、作物の苗における防除のための以下の方法も包含される:
作物の苗が置かれた、作物栽培施設育苗用の金網製の台に振動を与えて前記苗を振動させ、該苗に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
ただし前記苗に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上である。
かかる方法においては、定植後の前記苗には振動を与えず誘導された抵抗性を用いて防除を行ってよく、かかる方法は省力化に資するため好ましい。
<加振機>
本発明の方法において、振動を発生せしめる方法は限定されず、防除対象害虫の生息媒体における振動の周波数の範囲及び振幅の範囲の振動を厳密にコントロールできる加振機やアクチュエータ等を用いてよい。本発明の方法において、加振機として磁歪素子(磁歪材料)を用いることは好ましい。
磁歪素子を用いる加振機は、従来のボイスコイルや圧電素子による装置よりも、耐久性、耐水性、耐候性において優れているばかりでなく、本発明においては、上記各害虫の防除に用い得る特定の振動を発生させるための制御装置と電子回路により、家庭用電源を用いて、かかる振動を発生させる上記加振機を用いることができる。また、磁歪素子を用いることにより、加振対象資材や防除対象作物に十分な加振力を与えることができるばかりでなく、より広い周波数制御範囲により、周波数の制御をより厳密に行うことができる点において、現在多く用いられているボイスコイル式の電磁加振機に対する優位性を有する。
磁歪材料とは磁化により外形変化を生ずる磁性材料であり、これにより、防除と受粉に最適な周波数での大きな振動を発生させる。磁歪材料にコバルト−鉄系合金を使用することで、加工しやすく、かつ製造コストを抑えることになる。更に望ましくは、国際公開番号WO2018/230154A1の発明である磁歪材料と軟磁性材料或いは異符号の磁歪材料(例えば、コバルト-鉄系合金に対しニッケル系合金)とを接合して磁歪効果を増幅したクラッド構造の磁歪材料を磁歪素子に用いることにより、効率よく高トルクの加振を行うことができる。家庭用電源を用いて、特定の振動を発生させるための制御装置と電子回路を有するものは好ましい。
本発明の方法においては加振機として希土類金属−鉄系の超磁歪素子を用いることもできる。
加振機の台数は限定されず、防除対象害虫の生息媒体の数に応じて調整してよい。例えば防除対象害虫の生息媒体の数が単数である場合には、1台の加振機を用いればよいが、必要な振幅の大きさに応じて、複数台の加振機を用いてもよい。
また、防除対象害虫の生息媒体の数が複数存在する場合には、複数の加振機を用いて個々の生息媒体に振動を与えてよい。加振機の台数は、加振機の加振力に応じて調整してよい。
さらに、防除対象害虫の生息媒体の大きさ又は広さに応じて複数の加振機を用いてもよい。この場合においても、加振機の台数は、加振機の加振力に応じて調整してよい。
以下に、本発明を参考例及び実施例によりさらに詳細に説明する。ただし当該記載はあくまで例示を目的とするものであって、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
●(実施例1)コナジラミ類に対する効果(1)
<材料と方法>
以下のようにして試験を行った:
・試験地 宮城県のトマトハウス(土耕栽培、3畝)
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:120Hz、振動の振幅:0.4m/s(弱)〜14m/s(強)(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:1台の加振機をハウスの梁(加振区(強)の畝上部)に設置した。梁から垂下したひも(ポリプロピレン、長さ約180cm)にトマト植物体(約100cm〜約180cm高)を接続して振動が伝播するようにした。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、日中に30分間ずつ行った。
・調査として、上中下位の各1複葉(加振区(強)・(弱)の畝あたり9株ずつ)におけるコナジラミ類幼虫数(オンシツコナジラミ)をカウントした。
・畝あたり9株の開花数、着果数、草丈、茎径を計測した。
<結果>
加振区においては、コナジラミ類幼虫の密度が無処理区より明らかに低下した(図1)。
作物の開花数や着果数に振動の影響は見られなかった(図2)。草丈や茎径についても振動の影響がなかった。
●(実施例2)コナジラミ類に対する効果(2)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 神奈川県のトマトハウス(土耕栽培、5畝)
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:120Hz、振動の振幅:6.2〜18m/s(加振区(強))、4.2m/s(加振区(中))(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:1台の加振機をハウスの線状部材(加振区(強)の畝上部に位置する金属パイプ)に設置した。線状部材から垂下したひも(長さ約10〜30cmのポリエチレンテープ)にトマト植物体(約150cm高)を接続して振動が伝播するようにした(図3−1)。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、日中に連続で行った。
・調査として、粘着板に捕獲された成虫数を畝ごとの加振区(強)、加振区(中)においてカウントした。
<結果>
加振区においては、コナジラミ類成虫(オンシツコナラジラミとタバココナジラミ)の密度(捕獲数)が加振の処理前より明らかに低下した(図3−2)。
●(実施例3)コナジラミ類に対する効果(3)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 神奈川県のトマトハウス(水耕栽培)
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:120Hz、振動の振幅:0.3〜0.5m/s(弱)、2〜4m/s(強)(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:1台の加振機をハウスの線状部材(長さ8mの金属パイプ)に設置した。線状部材から垂下したワイヤーまたはひも(長さ約50〜100cm)にトマト植物体(約150cm高)を接続して振動が伝播するようにした。
試験区の配置は図4に示すとおりであった。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、日中に30分間ずつ行った。
・調査として、各ベッド中央に5枚の粘着板を設置し、両端・中央の3枚で捕獲されたコナジラミ類(オンシツコナラジラミ)の頭数を調査した。
<結果>
加振区(高密度:頭数の多い3ベッド)においては、捕獲されたコナジラミ類成虫の頭数が無処理区と加振区(低密度:頭数の少ない3ベッド)より明らかに低下した(図5)。
作物の果数に、振動の影響はなかった。
●(実施例4)コナジラミ類に対する効果(4)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 沖縄県のトマトハウス(ポット栽培)
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:100Hz、振動の振幅:10〜50m/s(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:1台の加振機を振動伝達部材(ジュラコンのロッド、長さ約3m)に装着した。振動伝達部材を6株のトマト植物体(約80cm高)の植物支持部材(イボタケ)に接続して振動が伝播するようにした。
試験区の配置は図6−1に示すとおりであった。2棟のビニールハウスを設置し、各棟に加振区と無処理区を設けた。トマト1株あたり30頭のタバココナジラミ成虫を放飼した。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、日中の30分ごとに1分間ずつ50日間行った。
・調査として、上・中・下位から任意の3枚の葉に定着しているタバココナジラミの成虫数及び幼虫数をカウントした(図6−2)。
<結果>
加振区においては、コナジラミ類の成虫数及び幼虫数が無処理区より明らかに低下した(図7、8)。
作物の開花数と草丈に、振動の影響はなかった。
●(実施例5)コナジラミ類及びアブラムシ類に対する効果
以下のようにして試験を行った:
・試験地 兵庫県のトマトハウス(土耕栽培、3畝)
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:100Hz、振動の振幅:0.3〜7m/s(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:2台の加振機をハウスの線状部材(中央畝上部の長さ約10mの金属パイプ)に設置した。線状部材から垂下したワイヤー(長さ約100cm)にトマト植物体(約80cm〜約170cm高)を接続して振動が伝播するようにした。
試験区の配置は図9に示すとおりであった。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、6:00〜18:00の30分毎に1分間行った。
加振機を設置しない、隣接した異なるトマトハウスを無処理区とした。
・調査として、コナジラミ類(オンシツコナラジラミ)の成虫数を粘着版に捕獲してカウントした。また、アブラムシ類(モモアカアブラムシ)の有翅成虫数を粘着版に捕獲してカウントした。
<結果>
加振区においては、コナジラミ類幼虫の密度が無処理区より明らかに低下し(図10)、アブラムシ類成虫の密度も無処理区より明らかに低下した(図11)。
振動による収穫量及び果実の重量への影響はなかった。
●(実施例6)コナジラミ類に対する効果(磁歪素子の効果確認試験1)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 宮城県のトマトハウス(土耕栽培、3畝)
・用いられた加振機:磁歪素子(東北特殊鋼株式会社製)
・振動の周波数:300Hz、振動の振幅:4〜10m/s(トマト茎上)、又は
30Hz、振動の振幅:0.1〜1.5m/s(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:1台の加振機をハウスの線状部材に設置した。線状部材から垂下したワイヤー(長さ約10cm)にトマト植物体(約150cm高)を接続して振動が伝播するようにした。
上記300Hzのパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、5:00から19:00まで15分間ずつ行った。一方、30Hzは60秒間を2回、9:00と11:00に与えた。
・調査として、コナジラミ類の幼虫(オンシツコナラジラミ若齢齢及び中齢幼虫)の数をカウントした。
<結果>
加振区においては、いずれの区においてもコナジラミ類幼虫の密度が無処理区より明らかに低下した(図12)。
●(実施例7)コナジラミ類に対する効果(5)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 兵庫県のジニア・トマト育苗ハウス
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:128Hz、振動の振幅:3.5m/s(培地上。54cm離れた加振樹の基準点における振動の振幅:80m/s
・加振機の設置と振動伝播の方法:育苗用の金属製の網状の台に、1台の加振機を設置し、その周辺にジニア植物体(約20cm〜約30cm高)を設置して振動が伝播するようにした。
試験区の配置は図13に示すとおりであった。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、24時間通して行った。
・調査として、ジニア上に生息しているコナジラミ類の成虫・幼虫(オンシツコナラジラミ)の数カウントした。
<結果>
加振区のコナジラミ類の密度は週数が経過するに伴って、成虫、幼虫ともに無処理区より明らかに低下した(図14)。
ジニアとトマト苗の生育に、振動の影響はなかった。
●(実施例8)コナジラミ類に対する効果(6)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 神奈川県のトマト育苗・定植ハウス
・用いられた加振機:超磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:100Hz、振動の振幅:1.5m/s(培地上)・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:育苗用の金属製の網状の台に、1台の加振機を設置し、その周辺にトマト苗(約20cm〜約30cm高)を設置して振動が伝播するようにした。
上記振動のパルスを1秒間与えた後9秒間休止するセットを、日中に15分間ずつ、1月間かけて行った。
・加振したトマト苗をトマトハウス(土耕)に定植し、定植後に加振や薬剤による処理を一切行わなかったものを育苗加振区とした。一方、加振しなかったトマト苗を定植し、薬剤による処理したものを薬剤処理区、同様のトマト苗を定植し、処理を一切行わなかったものを無処理区とした(各区10株3反復)。
・調査として、トマト上に生息しているコナジラミ類(オンシツコナラジラミ)の成虫・幼虫数を定植2週後に各区8株カウントした。
<結果>
育苗加振区のコナジラミ類幼虫の密度は、無処理区と比べて5分の1未満と大きく低下し、さらに薬剤処理区と大差が無かった。このことより、加振した苗を定植後、加振しないことでも効果が認められた(図15)。一方、コナジラミ類成虫の密度は、各処理区で大きな違いが認められなかった。
●(実施例9)コナジラミ類及び作物に対する効果(磁歪素子の効果確認試験2)
以下のようにして試験を行った:
・試験地 宮城県のトマトハウス(土耕栽培、3畝)
・用いられた加振機:磁歪素子(東北特殊鋼株式会社製)
・振動の周波数:30Hz、振動の振幅:4〜6m/s(トマト茎上)
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:畝ごとに2台の加振機を独立した線状部材(長さ約9mのパイプ)に等間隔で2畝分設置した。1畝には加振機を設置しない無処理区とした。線状部材から垂下したワイヤー(長さ約180cm)にトマト植物体(約150cm高)を接続して振動が伝播するようにした。
上記振動のパルスについて、1畝に60秒間を2回、9:00と11:00に与えた。一方、別の1畝には60秒間を8回、9:00から17:00まで1時間おきに与えた。
・調査として、コナジラミ類の幼虫(オンシツコナラジラミ)の数を畝毎に9株、4複葉(中位葉2、下位葉2)でカウントした。
・試験区毎に6株の着果数(1-3段目)、草丈、茎径を計測した。加振機を設置しない株の半数に受粉用のホルモン剤を処理した。残り半数を無処理区とした。
<結果>
30Hzの加振区において、コナジラミ類幼虫の密度が無処理区より明らかに低下した(図16)。
着果数は、30Hzのパルスを2回与えた試験区が、30Hzのパルスを8回与えた試験区やホルモン処理区、無処理区よりも多くなった(図17)。一方、草丈や茎径については振動の影響はなかった。
◆(参考例1)大規模施設における振動伝播
以下のようにしてミニトマトの大規模施設における振動についての評価試験を行った:
・用いられた加振機:磁歪素子(湘南メタルテック株式会社製)
・振動の周波数:100Hz
・加振機の設置と作物への振動伝播の方法:1台の加振機をハウスの線状部材(ワイヤー)に設置した。線状部材から垂下した金属誘引治具(長さ約100cmのクリッパー)又はひも誘引治具(長さ約100cmのローラーフック)にミニトマト植物体(ワイヤーから約200cm以上)を接続して振動が伝播するようにした。加振機と振動測定地点との距離は、最大で約60mであった。水平方向の防除有効範囲(加振機からの距離)を、防除に有効な振動の加速度の閾値として1m/sを想定して測定した。
また金属誘引治具を用いた場合の鉛直方向の防除有効範囲(高さ)を、防除に有効な振動の加速度の閾値として1m/sを想定して測定した。
<結果>
金属誘引治具を用いた場合には、60m離れていても振動は十分に伝播され、ひも誘引治具を用いた場合には、振動が伝播される距離は約15〜60mであった(図18−1)。
高さとしては150cm以下(加振機から50m以内の場合)が、防除に有効な範囲であることが明らかになった(図18−2)。
◆(参考例2)振動によるコナジラミ類の産卵阻害効果
100Hzの振動がコナジラミ類(オンシツコナジラミ)の産卵に影響を及ぼすかについての室内試験を行った。容器内のトマトの苗2本には上位から第三・第二・第一葉があり、65頭のメスを話して、振動を与えた加振区と振動を与えない無処理区の産卵数を比較した。
その結果、当該振動の振幅が高い第三葉においてオンシツコナジラミの産卵が強く阻害された(表1)。

本発明によれば、コナジラミ類又はアブラムシ類の成虫の行動を制御することにより、これらの害虫を防除することができる。そのため本発明は、化学合成農薬に代替する環境調和型の防除技術の発展に大きく貢献できると考えられる。したがって、本発明は、害虫防除産業、環境保全及び関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (13)

  1. 作物栽培施設を構成する枠部、又は畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材に振動を与えて該作物栽培施設内の作物を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
    ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上である。
  2. 振動により作物の受粉が促進される請求項1に記載の方法。
  3. 作物がトマト又はイチゴである請求項1又は2に記載の方法。
  4. 防除の対象がコナジラミ類である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 振動により制御される行動が定着又は産卵行動である請求項4に記載の方法。
  6. 振動として加振機により発生された振動が用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 加振機が磁歪材料である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 振動が1秒間与えられた後9秒間振動を停止するパターンが6回以上反復され、10分から1時間の間隔を置く工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 加振機が線状部材又はその近傍に設置され、植物支持部材であるワイヤー、ひも、又は誘引治具の一端を前記線状部材に懸垂し、前記誘引治具の他端を作物に接触させて加振装置が発生した振動を該作物に伝達することを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 植物支持部材が金属性の誘引治具である、請求項9に記載の方法。
  11. 複数の作物が植栽された作物栽培施設において、前記複数の作物の2つ又は3つ以上を振動させ、該作物に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
    ただし前記作物に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上であり、
    前記2つ又は3つ以上の作物は、畝の上方に該畝に並行して設置された線状部材により相互に連結されている。
  12. 作物の苗が置かれた、作物栽培施設育苗用の金網製の台に振動を与えて前記苗を振動させ、該苗に生息するコナジラミ類又はアブラムシ類の行動を振動により制御して作物栽培施設における生息密度を低減することを含む、前記コナジラミ類又はアブラムシ類を防除する方法:
    ただし前記苗に与えられる振動の周波数の範囲は30〜300Hzであり、該振動の振幅の範囲は1m/s以上である。
  13. 定植後の前記苗には振動を与えない請求項12に記載の方法。
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