JP2018093831A - 振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法 - Google Patents

振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018093831A
JP2018093831A JP2016244162A JP2016244162A JP2018093831A JP 2018093831 A JP2018093831 A JP 2018093831A JP 2016244162 A JP2016244162 A JP 2016244162A JP 2016244162 A JP2016244162 A JP 2016244162A JP 2018093831 A JP2018093831 A JP 2018093831A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vibration
beetle
net
logs
amplitude
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016244162A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6849186B2 (ja
Inventor
琢磨 高梨
Takuma Takanashi
琢磨 高梨
小池 卓二
Takuji Koike
卓二 小池
松井 康浩
Yasuhiro Matsui
康浩 松井
奈美 上地
Nami Uechi
奈美 上地
晴記 立田
Haruki Tatsuta
晴記 立田
賢門 栗山
Kento Kuriyama
賢門 栗山
修二 福井
Shuji Fukui
修二 福井
宏 舟木
Hiroshi Funaki
宏 舟木
裕美 向井
Hiromi Mukai
裕美 向井
ニールス スカルス
Niels Sukarusu
ニールス スカルス
博之 宇賀
Hiroyuki Uga
博之 宇賀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
SHONAN-METALTEC CORP
University of the Ryukyus NUC
Shimane Prefecture
National Agriculture and Food Research Organization
University of Electro Communications NUC
Forest Research and Management Organization
Original Assignee
SHONAN-METALTEC CORP
University of the Ryukyus NUC
Shimane Prefecture
National Agriculture and Food Research Organization
University of Electro Communications NUC
Forest Research and Management Organization
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by SHONAN-METALTEC CORP, University of the Ryukyus NUC, Shimane Prefecture, National Agriculture and Food Research Organization, University of Electro Communications NUC, Forest Research and Management Organization filed Critical SHONAN-METALTEC CORP
Priority to JP2016244162A priority Critical patent/JP6849186B2/ja
Publication of JP2018093831A publication Critical patent/JP2018093831A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6849186B2 publication Critical patent/JP6849186B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Catching Or Destruction (AREA)

Abstract

【課題】きのこや果実、野菜といった作物について、振動によって害虫を防除する方法を確立し、提供すること。【解決手段】加振機による振動を、振動により成虫の行動が制御される害虫(ハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ、又はオンシツコナジラミ)の成虫の生息媒体又は周辺に存在する媒体に1回又は2回以上発生せしめ、前記害虫の成虫の行動を制御して前記害虫を防除する。【選択図】なし

Description

本発明は、振動を用いた害虫の行動制御による植物保護技術に関する。より具体的には、本発明は、振動を用いて害虫の行動制御により対象害虫を直接又は間接的に防除して作物に対する加害を減じ、もって作物を保護する方法に関する。
昆虫において、振動は忌避、誘引、交尾、摂食、産卵等の行動を引き起こす、重要かつ普遍的な信号であることがわかっている。したがって、振動信号を人工的に制御することで、様々な害虫の行動を制御することが可能となり得る。
かかる制御としては、有益な昆虫に対する正の行動制御及び害虫に対する負の行動制御がある。正の行動制御として、害虫防除の資材として用いられる天敵・捕食者の対象害虫への誘引等が挙げられ、また、負の行動制御としては、忌避ならびに交尾、摂食及び産卵の阻害等による、該害虫の防除を行うことが挙げられる。
たとえば、植物等を伝播する振動を用いた害虫の防除方法は、かかる行動制御を利用した害虫防除の例である。かかる方法は、物理的防除に包含されるものであるところ、化学合成殺虫剤における普遍的な問題である薬剤抵抗性の問題や人体、環境及び非標的生物に対する悪影響の問題を伴わないといった利点を有する。したがって、かかる方法は、薬剤に抵抗性を持つ害虫の出現や、環境・食品の安全・安心志向の高まりから、長年にわたり社会的に求められている、薬剤の代替となる環境調和型の害虫防除技術の開発に資するものである。
振動による害虫の防除について例示するに、特許文献1には、カミキリムシ類、シロアリ類、カメムシ類及びコナジラミ類等の害虫の特定の行動を誘発又は抑制する、前記害虫の生息媒体における振動の周波数の範囲及び振幅の範囲を決定する工程、及び前記周波数の範囲及び振幅の範囲の振動を前記害虫の生息媒体に1回又は2回以上発生せしめ前記害虫の行動を制御する工程等について開示されている。同文献には、振動の周波数の範囲として加速度(m/s、片振幅のピーク値)を用いると5Hz〜5kHz、振幅の範囲として0.001m/s以上とすることや、持続時間が5s以下である振動を少なくとも1回含むことや、あるいは振動を2回以上与える際の振動を与える間隔を100ms以上かつ100s以下とすることについても記載されている。同文献にはとくにマツノマダラカミキリ及びイエシロアリについて、それぞれ25Hz〜1kHzの範囲である周波数及び0.05m/s以上23.5m/s以下の範囲である振幅が、ならびに1kHz〜5kHzの範囲である周波数及び0.05m/s以上15m/s以下の範囲である振幅が、有効であることについても示されている。
特許文献2及び非特許文献1には、イチジク枝の振動によるクワカミキリの防除について開示されている。非特許文献1にはブドウのつるに振動を与えることにより、ヨコバイの一種(Scaphoideus titanus)の交尾率を低下させたことについて開示されている。
特許第5867813号公報 特開2001−252002号公報
イチジク枝の人為的な振動刺激によるクワカミキリ被害の防除 第39回日本応用動物昆虫学会講演要旨(1995)116 細見彰洋 Eriksson et al., "Exploitation of Insect Vibrational Signals Reveals a New Method of Pest Management", (2012), PLoS ONE, Volume 7, Issue 3, e32954
化学合成農薬を用いない害虫防除の試みが種々なされているものの、所期の目的を達成した例は極めて限定的である。化学合成農薬を用いない防除における条件設定の困難性が、有効な防除手段を確立する際の大きな障害になっている。
振動を用いる防除においても、振動を感知することによって行動を示す害虫における周波数を含む振動のパラメータと行動との関係は害虫の種類により固有のものが存在し区々であるところ、かかる関係についての知見を得ることの困難性や、個々の害虫の生息媒体における外部からの振動の影響を精査することの困難性等の理由により、それぞれの害虫の特定の行動を制御する振動の周波数及び振幅を決定することは困難である。
振動によって害虫を防除する方法に対する社会的な要請があるにも拘らず、かかる方法は未だ確立の途上にあるのが現状である。
近年、きのこや果実、野菜等の作物の生産現場では、物理的保護技術や生物農薬などの化学合成農薬に依存しない新たな害虫防除技術の開発についての需要が高まっているが、上記のような事情により、振動を用いる害虫防除技術は存在していない。また、東日本大震災後にシイタケ生産現場における原木の不足を解消するために九州地方から運び込まれた原木に寄生していたハラアカコブカミキリが、地球温暖化と相俟って生息域を拡大するといった問題も生じている。同様な生息領域が拡大傾向にあるという問題は、チャバネアオカメムシやタイワンゴマダラカミキリといった果樹の害虫においても生じている。
これらの背景の下、本発明は、きのこや果実、野菜といった作物について、振動によって害虫を防除する方法を確立し、提供することを課題とした。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、振動のパラメータとして周波数及び振幅を害虫ごとに特定することによって上記課題が解決することを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
[1]加振機による振動を、成虫の行動が振動により制御される害虫(ハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ、又はオンシツコナジラミ)の成虫の生息媒体又は周辺に存在する媒体に1回又は2回以上発生せしめ、前記害虫の成虫の行動を制御して前記害虫を防除する方法:
ただし該害虫のうち、
−ハラアカコブカミキリについては、振動の周波数の範囲は100〜2000Hzであり、振幅の範囲は0.8m/s以上である;
−タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリについては、振動の周波数の範囲は30〜2400Hzであり、振幅の範囲は、タイワンゴマダラカミキリについては5.0m/s以上であり、ゴマダラカミキリについては2.8m/s以上である;
−チャバネアオカメムシについては、振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は0.007m/s以上である;及び
−オンシツコナジラミについては、振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は3.4m/s以上である。
[2]ランダムに変化するのが好ましい0.1〜1sの持続時間及びランダムに変化するのが好ましい1〜15sの間隔で、好ましくは振幅がランダムに変化する振動を発生させることを含む、上記[1]の方法。
[3]害虫がハラアカコブカミキリであって、2本のきのこ栽培用の原木を、各原木が相互に接触するように組み合わせて配置し、該2本の原木の少なくとも1本に振動を与え、該2本の原木におけるハラアカコブカミキリ幼虫又は成虫の生育密度を減少させることを含む、上記[1]又は[2]の方法。
[4]1本又は2本以上の原木を、該原木の少なくとも1本(原木A)が前記2本のきのこ栽培用の原木の少なくとも1本に接触するように配置し、前記1本又は2本以上の原木のうち原木A以外の原木は、原木Aに直接接触するか又は他の原木を介して原木Aに間接的に接触している、上記[3]の方法。
[5]害虫がチャバネアオカメムシであって、1つの加振機に接続手段により接続された2本以上の樹木に、前記1つの加振機により振動を与え、該2本以上の樹木におけるチャバネアオカメムシの生息密度を減少させることを含む、上記[1]又は[2]の方法。
[6]害虫が作物栽培施設内の作物を加害するオンシツコナジラミであって、
(i)外壁の少なくとも一部に網で構成された部分を有する作物栽培施設の前記網又は外壁に設置した加振機により、前記網又は外壁に振動を与えて網を振動させる;又は
(ii)外壁の少なくとも一部に網で構成された部分を有しているかもしくは有していない作物生育施設内に栽培されている作物に設置した加振機により、前記作物に振動を与えて、
作物におけるオンシツコナジラミの生息密度を減少させることを含む、上記[1]又は[2]の方法。
[7]害虫が果樹栽培施設内の果実を加害するチャバネアオカメムシ、タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリであって、
(i)果樹栽培施設が、その周囲に配置された支柱により支持された、網で構成されている外壁を有し、前記網もしくは支柱に設置した加振機により網に振動を与えて網を振動させる;又は
(ii)網で構成されている外壁を有しているかもしくは有していない果樹栽培施設内に栽培されている果樹の少なくとも1本に設置した加振機により、前記果樹に振動を与えて、
果樹栽培施設内におけるチャバネアオカメムシ、タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリの生息密度を減少させることを含む、上記[1]又は[2]の方法。
[8]振動の発生に超磁歪素子が用いられる、上記[1]〜[7]のいずれかの方法。
[9]樹木又は原木への装着部材を超磁歪素子が備え、該装着部材は超磁歪素子本体の位置と反対方向に湾曲した面を具備する、上記[8]の方法。
[10]作物、網又は外壁への装着部材を超磁歪素子が備え、該装着部材は超磁歪素子本体に接続されたロッド又はバンドを具備し超磁歪素子からの振動を伝達する、上記[8]の方法。
本発明によればきのこ(シイタケ等)栽培用の原木、果樹、野菜又はこれらの作物を生育させている施設において、とくに振動の発生に超磁歪素子による振動発生装置(加振機)を用いて、ハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ、又はオンシツコナジラミといった害虫を防除することができる。これらの害虫はいずれも成虫が振動により行動を制御されるため、本発明の方法により、成虫による加害及び生殖行動を抑制し、防除が行われる。
また本発明によれば、単一の上記振動発生装置から、単数又は多数の媒体(果樹や原木、野菜等)に振動を与えるための、治具と方法も提供される。かかる治具又は方法としては、単数又は複数の樹木に振動を与える治具や、一列に植栽している多数の植物体に振動を伝える治具、そして効果的に振動を伝えるための複数原木の設置法が挙げられる。これらの治具の代用又は併用のために、施設において既存しているワイヤーや野菜の誘引線等も用いることができる。
振動発生装置(加振機)として、超磁歪素子(磁界によってひずみを生じる、希土類金属−鉄系の合金のこと。これにコイルを巻き、電流を流すことで振動を発生できる。)を用いることは好ましい。超磁歪素子を用いることにより、広範囲から選択した周波数にて、大きな加振力を発生させることが可能になる。超磁歪素子を用いる加振機は、従来のボイスコイルや圧電素子による装置よりも、耐久性、耐水性、耐候性において優れているばかりでなく、本発明においては、上記各害虫の防除に用い得る特定の振動を発生させるための制御装置と電子回路により、家庭用電源を用いて、かかる振動を発生させる上記加振機を用いることができる。
さらに、本発明の方法又は装置とトラップ等とを組み合わせることにより、作物又は生息媒体から離れた害虫を誘殺し、振動による防除効果を増強することができる。またさらに、本発明においては、栽培用の容器や基質、水等の媒体を経由して、植物体に振動を与えることもできる。なお、本発明の方法に用いられる振動は果実やきのこ等の作物に対して悪影響がないことが、本発明者らにより確認されている。
また、例えばオンシツコナジラミの防除においては、作物栽培施設のネット(網)に振動を与えて同種の侵入を防止することができる。これにより従来よりも大きな目合いのネットが利用可能となり、通気性を保ち施設内の過剰な高温及び/又は過湿を従来の技術より容易に避けることが可能になる。
現在頻用されている化学合成農薬は、標的でない天敵等他種にも殺虫効果を及ぼす等の欠点があるばかりでなく、周囲の地域住民への影響や環境汚染の問題も招来している。
これに対し、本発明の方法は、対象害虫の特性に応じた生息媒体における伝播振動により、特定の対象のみをピンポイントで効率的に防除することを可能にするものである。すなわち、本発明の方法は上記のような化学合成農薬の問題を伴わない特性とともに、生息媒体を伝播する振動を用いる方法であるため騒音を発生させない特性を有する、環境にやさしい防除技術を提供するものである。また、本発明の方法のうち、振動の持続時間が短い(例えば10ms以下)ものにおいては、振動を人間が感知しにくい点において環境にやさしいといった利点もある。
このようにこれらの各害虫を振動により防除することは本発明により初めて可能になったことであり、本発明は化学合成農薬や生物農薬を用いる従来技術とは全く異なる手法によるものである。また本発明は、作物の安全性を化学合成農薬や生物農薬より確実に担保できるものであり、これらの従来技術によっては達成することが不可能な格別な効果を奏するものである。
実施例1(室内試験)において、振動を与えた際のハラアカコブカミキリ成虫の反応を示すグラフである。 実施例1(室内試験)における、井桁の6段組みの原木のうち下から2段目の原木1本における端点と中点での、水平方向に伝わる振動の振幅比及び垂直方向に伝わる振動の振幅比として示すグラフである。 実施例2(室内試験)において、振動を与えた際のタイワンゴマダラカミキリ成虫及びゴマダラカミキリ成虫の反応を示すグラフである。各周波数における、反応を示す振幅の閾値を、タイワンゴマダラカミキリ成虫及びゴマダラカミキリ成虫のそれぞれについて示している。各振幅の閾値は、個体が反応を示した振幅のうち最小値の平均値である。 実施例3(室内試験)において、振動を与えた際のチャバネアオカメムシ成虫の反応を示すグラフである。各周波数における、反応を示す振幅の閾値を示している。各振幅の閾値は、個体が反応を示した振幅のうち最小値である。 実施例3(室内試験)において、振動を与えた際のチャバネアオカメムシ成虫の振動受容器の神経生理応答を示すグラフである。各周波数における、応答を示す振幅の閾値を示している。各振幅の閾値は、神経が応答を示した振幅のうち最小値の平均値である。 実施例4(室内試験1)において、振動を与えた際のオンシツコナジラミ成虫の反応を示すグラフである。各周波数における、反応を示す振幅の閾値を示している。各振幅の閾値は、個体が反応を示した振幅のうち最小値の平均値である。 実施例4(室内試験2)において、300Hz(持続時間1s、間隔3s)、振幅13m/s2以上の振動を加振機からネットに与えることにより、オンシツコナジラミ成虫がネットを通過することを阻害し得ることを示すグラフである。振動処理区におけるネット静止は0であった。 ポリプロピレン製のバンド(PPバンド)の振動伝達効果について示すグラフである。 実施例において用いた超磁歪素子による振動発生装置のドライバーの回路図である。
(定義)
本明細書において「生息媒体」とは、昆虫が生息・定着するあらゆる基質を意味し、植物体及び動物体等の生物体ならびに建築物及び水、土壌等の構造物等のあらゆる基質を包含する。また、実験室内における試験の場合には、「生息媒体」は、自然環境下で防除対象害虫が生息・定着する基質以外の人工的な媒体を包含する。
また、本発明において、「振動」とは、空気以外の基質を媒体として伝達されるものを意味する。したがって、本発明における「振動」には、空気を媒体とする、聴覚への刺激である音自体は包含されないが、音を生ぜしめる原因となる媒体における振動は包含される。
本明細書において、「害虫を防除する」とは、生息媒体における、害虫の生息密度を低減せしめることのほか、害虫による生息媒体に対する被害(食害、他の有害生物の伝播等)を低減せしめることも包含する。
本発明の方法は、以下の工程を含む、加振機による振動によって、成虫の行動が振動により制御される害虫(ハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ、又はオンシツコナジラミ)を防除する方法である:
前記振動を前記害虫の成虫の生息媒体又は周辺に存在する媒体に1回又は2回以上発生せしめ、前記害虫の成虫の行動を制御する工程;
ただし該害虫のうち、
−ハラアカコブカミキリについては、振動の周波数の範囲は100〜2000Hzであり、振幅の範囲は0.8m/s以上である;
−タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリについては、振動の周波数の範囲は30〜2400Hzであり、振幅の範囲は5.0m/s以上である;
−チャバネアオカメムシについては、振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は0.007m/s以上である;及び
−オンシツコナジラミについては、振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は3.4m/s以上である。
本発明の方法について、以下に詳述する。
本発明の方法によれば、害虫種の振動信号を制御し、1)忌避による害虫の誘導、侵入防止、2)定着・交尾の阻害、3)摂食・産卵の軽減、4)本発明の方法と既存の防除技術(例:光や誘引物質によるトラップ等)の組み合わせ、等による害虫防除が可能となる。
本発明の方法により防除対象害虫の防除を実施するためには、たとえば、対象害虫の成虫が生息しているか又は生息が推測される森林や果樹園の一定面積ごとに1個又は2個以上の加振機を設置することによって該害虫の忌避、産卵阻害、摂食阻害等の行動を制御することにより防除を行うことができる。
加害されているか又は加害されるおそれがある果樹等の樹木、原木又は野菜等の作物といった生息媒体に加振機から直接振動を与えてよい。また、果樹等の樹木、原木又は野菜等の作物を支持している土壌や作物栽培施設の外壁・網や支柱、棚、あるいは作物栽培施設内のフレームや天井部等上部にあるワイヤー、及び誘引線その他の媒体に、適切な振動を与えることによって樹木、原木、果樹もしくは作物、又は定着部位もしくは侵入部位に振動を与えてもよい。
本発明において、「作物栽培施設」には、ビニルハウス、ガラスハウス、及び植物工場が包含されるところ、その規模や種類は限定されない。
本発明の方法においては、防除対象害虫の特定の行動を誘発又は抑制する、該害虫の生息媒体における振動の周波数の範囲及及び/又は振幅の範囲を決定する工程を含むことは好ましい。防除に好適な振動の周波数の範囲及及び/又は振幅の範囲を決定することにより、防除をより効率的に行うことが可能になるからである。
上記周波数の範囲及び振幅の範囲は、対象害虫種及び制御の対象である行動等を特定し、信号発生器及び加振機を用いて種々の周波数及び振幅の組み合わせからなる振動を当該害虫に与え、該行動を観察・記録し、同行動を制御する周波数及び振幅の閾値の組み合わせを特定することによって決定することができる。
振動の周波数の範囲及び振幅の範囲を決定する工程において、与える振動の持続時間はとくに限定されず、適宜設定してよい。持続時間が1ms以上5s以下である振動を少なくとも1回含む本発明の方法は好ましく、5ms〜500msを少なくとも1回含む本発明の方法はより好ましい。
振動を与える回数も、とくに限定されず適宜設定してよい。振動を与える回数は、2回以上が好ましい。
振動を2回以上与える場合、個々の振動の持続時間及び与える間隔はとくに限定されず適宜設定してよい。また、前記持続時間及び与える間隔は、各振動ごとに同一でも異なってもよい。
持続時間が5s以下である振動を少なくとも1回含む本発明の方法は好ましく、持続時間が、1ms以上5s以下である振動を少なくとも1回含む本発明の方法は好ましく、5ms〜500msである振動を少なくとも1回含む本発明の方法は好ましい。
振動を与える間隔が100ms以上かつ100s以下である方法は好ましく、200ms〜60sであるものはより好ましく、500ms〜30sであるものはさらにより好ましく、1s〜15sであるものはとくに好ましい。
与える振動の波形は限定されず、サイン波ならびに矩形波、三角波、ノコギリ波等の非正弦波のいずれでもよい。これらの波形は、防除のための振動においても同様であってよい。
好ましくはランダムに変化する0.1s〜1sの持続時間及び好ましくはランダムに変化する1s〜15sの間隔で、好ましくは振幅がランダムに変化する振動を発生させることを含む、本発明の方法は好ましい。
制御の対象とする害虫の行動はとくに限定されず、探索、定位、定着、集合、摂食、交尾、産卵、逃避、不動化及び警戒等が例示される。
振動の周波数の範囲は上記の範囲であればとくに限定されない。また、スイープやノイズと定義される、これらの周波数帯を全て又は一部含むものも有効であり好ましい。
さらに、2種類以上の周波数を組み合わせると、順応回避に有効であるため好ましい。
振動の振幅の範囲も対象害虫種及び制御の対象である行動等に応じて設定され、とくに限定されない。
本発明においては上記のとおり、防除対象害虫について特定の周波数の範囲及び振幅の範囲の振動を前記害虫の生息媒体に1回又は2回以上発生せしめる工程含み、生息媒体自体に振動を与える場合、振動は加振機から該生息媒体に直接与えてもよいし、ロッドやワイヤー、あるいはバンドのような帯状の部材等の部材(振動伝達部材)を介して振動を伝播させて与えてもよい。
振動伝達部材の材質は、加振機からの振動が十分に伝播・伝達されるものであれば限定されない。ロッドの材質としてはジュラコンが、バンドの材質としてはポリプロピレンが、それぞれ例示される。これらの材質からなる素材は、振動の伝達性能やコストの面において好適であり好ましい。
なお、測定機器の制限から加速度として振幅の測定が困難である場合には、振動中の媒体の振動の速度及び周波数から換算した振幅の値を求めることができる。すなわち、速度(v)と加速度(a)及び周波数(f)との間には、a=(2πf)・vの関係がある。したがって、例えば5kHzの周波数における0.000000032m/sの速度を加速度に換算すると、0.001m/sとなる。
以下にハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ及びオンシツコナジラミについて、個々に説明する。
(1)ハラアカコブカミキリ
ハラアカコブカミキリは、シイタケ栽培用の原木を食害し、主に西日本に分布するきのこの害虫である。幼虫は食害時には原木内に穿孔しているため、防除が極めて困難である。糸状菌を用いた生物農薬が農薬登録されているが、同生物農薬の使用も避けられる傾向にあり、有効な防除手段は実質的に存在しない。
本発明の方法において、ハラアカコブカミキリを防除するために与える振動の周波数の範囲は100〜2000Hzであり、振幅の範囲は0.8m/s以上である。周波数の範囲が100〜1000Hzであり、振幅の範囲が0.8m/s〜20m/sである振動を与えることは好ましい。また、振動の持続時間としては0.5s〜2sが好ましく、振動の間隔は5s〜15sが好ましい。
これらの振動により、ハラアカコブカミキリ成虫に対する驚愕反応(体の一部を動かすこと)を誘発して摂食、交尾及び/又は産卵といった行動を制御し、防除を行うことができる。
ハラアカコブカミキリを防除するためには、同種の生息媒体である原木に振動を与えることが必要である。本発明の方法のうち、2本のきのこ栽培用の原木を、各原木が相互に接触するように組み合わせて配置し、該2本の原木の少なくとも1本に振動を与え、該2本の原木におけるハラアカコブカミキリ幼虫又は成虫の生育密度を減少させることを含む本発明の方法は、加振対象原木の本数より少ない個数の加振機により、より簡便かつ低コストでハラアカコブカミキリを防除することが好ましい。
また、1本又は2本以上の原木を、該原木の少なくとも1本(原木A)が前記2本のきのこ栽培用の原木の少なくとも1本に接触するように配置し、前記1本又は2本以上の原木のうち原木A以外の原木は、原木Aに直接接触するか又は他の原木を介して原木Aに間接的に接触している、本発明の方法はより好ましい。かかる方法によれば、3本又は4本以上の原木の保護が可能になる。
また、加振装置は原木の中点付近に装着することは、端点に装着するより好ましい100Hzの振動が発生しやすく、ハラアカコブカミキリの防除に適しているためである。装着のための部材としての樹木取り付け板を用いることも好ましい。また、加振機として超磁歪素子を用いることは好ましい。
(2)タイワンゴマダラカミキリ及び(3)ゴマダラカミキリ
タイワンゴマダラカミキリ及びゴマダラカミキリは、カンキツ、クワ、イチジク、ポプラ、ヤナギ、カエデ及びマメ類などの広範な果樹や街路樹等の樹木の幹や茎を食害する害虫である。これらの害虫も幼虫が樹木内に穿孔して食害するため、防除が困難な害虫である。
本発明において、タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリを防除するためには、同種の生息媒体である樹木に振動を与えることができる。本発明の方法においてタイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリを防除するために与える振動の周波数の範囲は30〜2400Hzであり、振幅の範囲は、タイワンゴマダラカミキリについては5.0m/s以上であり、ゴマダラカミキリについては2.8m/s以上である。
タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリに対して、周波数の範囲が50〜1200Hzであり、振幅の範囲が5.0m/s〜49.8m/s(タイワンゴマダラカミキリ)、又は2.8m/s〜15.0m/s(ゴマダラカミキリ)である振動を与えることは好ましい。また、これらの害虫に対し、振動の持続時間としては0.5s〜2sが好ましく、振動の間隔は2s〜15sが好ましい。
これらの振動により、タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリ成虫に対する驚愕反応(体の一部を動かすこと)や歩行を誘発して定着、摂食及び/又は産卵といった行動を制御し、防除を行うことができる。
害虫が果樹栽培施設内の果樹を加害するタイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリであって、
(i)果樹栽培施設が、その周囲に配置された支柱により支持された、網で構成されている外壁を有し、果樹栽培施設内の前記網もしくは支柱に設置した加振機により網に振動を与えて網を振動させる;又は
(ii)網で構成されている外壁を有しているかもしくは有していない果樹栽培施設内に栽培されている果樹の少なくとも1本に設置した加振機により、前記果樹に振動を与えて、
果樹栽培施設内におけるタイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリの生息密度を減少させることを含む、本発明の方法も、簡便にタイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリを防除することができるため、好ましい。
また、本発明のタイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリを防除する方法において、加振機として超磁歪素子を用いることは好ましい。
(4)チャバネアオカメムシ
チャバネアオカメムシは果樹カメムシの主要種であり、カンキツ、ナシやモモなどをはじめとする果実を吸汁し甚大な被害を及ぼすことがあるため、上記果実における防除が不可欠な害虫である。
チャバネアオカメムシに対しては、合成殺虫剤により一定の防除効果を奏することは不可能ではない。しかしながら同種は集合フェロモンを出し、集団で被害を与える場合があるため、防除適期を逃すと回復しがたい被害を与えることがあるといった点に、同種を防除するに際しての困難性がある。
本発明において、チャバネアオカメムシを防除するために、同種の生息媒体である樹木に振動を与えることができる。本発明の方法においてチャバネアオカメムシを防除するために与える振動の周波数の範囲は50〜2000Hzであり、振幅の範囲は0.007m/s以上である
チャバネアオカメムシに対して、周波数の範囲が50〜500Hzであり、振幅の範囲が0.007m/s〜15.3m/sである振動を与えることは好ましい。また、これらの害虫に対し、振動の持続時間としては0.5s〜2sが好ましく、振動の間隔は2s〜10sが好ましい。これらの振動により、チャバネアオカメムシ成虫に対する忌避行動(歩行、伏せ、静止・行動停止等)を誘発して果実に対する加害、定着といった行動を制御し、防除を行うことができる。
チャバネアオカメムシを防除するために、1つの加振機に接続手段により接続された2本以上の樹木に、前記1つの加振機により振動を与え、該2本以上の樹木におけるチャバネアオカメムシの生息密度を減少させることを含む、本発明の方法は好ましい。かかる方法によれば、加振対象樹木の本数の1/4以下の個数の加振機を用いることにより、より簡便かつ低コストでチャバネアオカメムシを防除することができる。本態様において、加振機として超磁歪素子を用いることは好ましい。本発明において、加振機を対象樹木の表面に緊結固定する際には、樹木の幹表面の曲率に近い曲率を有した木型反転型製法による樹脂製の樹木取り付け板をゴム等のバンドで緊結固定した後、該防水構造の振動発生装置フランジ部と着脱容易なボルト留め構造を加振機に有することは好ましい。
また、チャバネアオカメムシを防除するために、
(i)チャバネアオカメムシが発生しているか又は発生が予測される果樹栽培施設が、その周囲に配置された支柱により支持された、網で構成されている外壁を有し、果樹栽培施設内の前記網もしくは支柱に設置した加振機により網に振動を与えて網を振動させる;又は
(ii)網で構成されている外壁を有しているかもしくは有していない、チャバネアオカメムシが発生しているか又は発生が予測される果樹栽培施設内に栽培されている果樹の少なくとも1本に設置した加振機により、前記果樹に振動を与えて、
果樹栽培施設内におけるチャバネアオカメムシの生息密度を減少させることを含む、本発明の方法も、簡便にチャバネアオカメムシを防除することができるため、好ましい。
本発明のチャバネアオカメムシを防除する方法において、加振機として超磁歪素子を用いることは好ましい。
(5)オンシツコナジラミ
オンシツコナジラミは幼虫及び成虫が、イチゴをはじめ、トマト、キュウリなどの野菜の多くの作物に寄生し加害する。葉上で交尾をする前に、雌雄間で振動信号を用いて交信を行う。1頭のメスは100個以上の卵を産むため、好適な条件下では爆発的に増殖する。イチゴでは、定植後の10月ごろから寄生がみられ、その後密度が上がっていく。イチゴの保温が始まるころには、施設内には天敵が少なくなり、仮にいても天敵にとっては好適な温度ではないため密度抑制にはつながらない。また、葉裏に生息することから、密度が低い場合には見つけづらいほか、生息部位に薬剤が行き届かないことも多い。暖かくなる3月以降急速に増殖する。多発した場合は、排泄物が直下の葉に付着してすす病の原因となる。同種も、防除が重要であるにもかかわらず、現有の防除手段では防除が難しい害虫である。
本発明において、オンシツコナジラミを防除するためには、同種の生息媒体である上記のような作物に振動を与えることができる。本発明の方法においてオンシツコナジラミを防除するために与える振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は3.4m/s以上である。
オンシツコナジラミに対して、周波数の範囲が100〜700Hzであり、振幅の範囲が3.4m/s〜25.0m/sである振動を与えることにより、歩行・飛翔開始や歩行停止、驚愕反応が誘発されるため、かかる振動を与えることは好ましい。
またオンシツコナジラミに対する振動の持続時間としては0.1s〜2sが好ましく、振動の間隔は1s〜15sが好ましい。このような振動を与えることにより、オンシツコナジラミ成虫に対して定着、摂食、産卵等を阻害し、オンシツコナジラミの防除を行うことができる。
本発明の方法において、作物に振動を与える場合、2本又は3本以上の作物を誘引線、ワイヤー、紐、ロッド等の接続手段により接続し、該接続手段に振動を与えて間接的に作物に振動を与える方法はより少ない個数の加振機による防除が可能になるため好ましい。
また、例えば300Hz以下の振動により、1)ネットの通過を著しく阻害、2)植物体から飛翔する傾向、を誘発することができるため、かかる周波数の範囲の振動を与えてオンシツコナジラミを防除することできる。したがって本発明の方法よれば、作物栽培施設のネット(網)に振動を与えてオンシツコナジラミ成虫の定着を阻害し、また外部から施設内への侵入を防止して、オンシツコナジラミを防除することができる。そのため本発明の方法によれば、従来よりも大きな目合いのネットが利用可能となり、通気性を保ち施設内の過剰な高温及び/又は過湿を従来の技術より容易に避けることが可能になる。
本発明の方法においてネット全体に振動を与える際には、ネットを支持する治具を用いてよい。ネットに振動を与えるに際しては、振動を与える対象であるネットに加振機から直接振動を与えてよいし、あるいはネットに連結されている部材である施設の外壁等に振動を与え、その振動をネットに伝播させることにより間接的にネットに振動を与えてもよい。
したがって本発明の方法のうち、作物栽培施設内の作物を加害するオンシツコナジラミに対して、
(i)外壁の少なくとも一部に網で構成された部分を有する作物栽培施設の前記網又は外壁に設置した加振機により、前記網又は外壁に振動を与えて網を振動させる;又は
(ii)外壁の少なくとも一部に網で構成された部分を有しているか、もしくは有していない作物生育施設内に栽培されている作物に設置した加振機により、前記作物に振動を与えて、
本発明のオンシツコナジラミを防除する方法において、加振機として超磁歪素子を用いることは好ましい。
<加振機>
本発明の方法において、振動を発生せしめる方法は限定されず、防除対象害虫の生息媒体における振動の周波数の範囲及び振幅の範囲の振動を厳密にコントロールできる加振機やアクチュエータ等を用いてよい。本発明の方法において、加振機として超磁歪素子を用いることは好ましい。
防除対象害虫の生息媒体の数が単数である場合には、1個の加振機を用いればよいが、必要な振幅の大きさに応じて、複数個の加振機を用いてもよい。
また、防除対象害虫の生息媒体の数が複数存在する場合には、複数の加振機を用いて個々の生息媒体に振動を与えてもよく、あるいは、より少ない個数又は単数の、十分な加振力を与えることができる加振機を用いてもよい。
さらに、防除対象害虫の生息媒体の大きさ又は広さに応じて複数の加振機を用いてもよく、あるいは、より少ない個数又は単数の、十分な加振力を与えることができる加振機を用いてもよい。
たとえば、防除対象害虫の生息域が森林や農耕地等である場合には、一定面積ごとに1個又は2個以上の加振機を設置することができる。
振動を発生させる部位は、防除対象害虫が定着している生息媒体自体でよいが、該生息媒体に振動を伝える他の媒体でもよい。例えば、生息媒体が植物体又は構造物である場合、該植物体又は構造物を支持している土面や路面等の接地面に振動を与えることによって前記植物体又は構造物に間接的に適切な振動を与えることは好ましい。
本発明において用いられる振動の厳密なコントロールには、超磁歪素子を用いることが好ましい。超磁歪素子を用いることにより、樹木や農作物等の広域に広がる対象や家屋等の建造物に対しても十分な加振力を与えることができるばかりでなく、より広い周波数制御範囲により、周波数の制御をより厳密に行うことができる点において、現在多く用いられているボイスコイル式の電磁加振機に対する優位性を有するからである。また、小型加振機として、圧電素子を利用したものもあるが、圧電素子は駆動するためには高電圧が必要なのに対し、超磁歪素子は低電圧で駆動可能である。
さらに、超磁歪素子は圧電素子と同等以上の耐久性があるため、超磁歪素子を用いる方法は、コスト面においても、例えば化学合成農薬を用いる害虫の防除方法に優るものである。また、超磁歪素子による振動発生装置は、無線による遠隔操作や省電力な太陽電池でも駆動可能である。そして、超磁歪素子による振動発生装置を用いることによって、振動伝達性の金属・木材・樹木等を加振、又はこれらの振動伝達性のロッドを介して生息媒体を加振することも可能となる。
また、超磁歪素子による振動発生装置を用いれば、長いフレキシブルなステンレスワイヤーやセラミック等の硬いロッドを装着させ、その先端に減衰をあまり生じない振動を発生させることも可能であるところ、かかる振動の発生は遠隔地や局所の加振に有利である。そのため、超磁歪素子による振動発生装置を用いる本発明の方法は、局所的な生息媒体から広面積な物体、例として作物栽培施設、家屋、倉庫から農耕地、果樹園、森林まで適用が可能であり、適用の対象となる生息媒体は限定されない。
なお、超磁歪素子とは、磁界変化により伸縮する素子で、希土類元素と鉄属元素からなる。アクチュエータやセンサとして、機械・建築・医療・環境分野で実用化されている。
また、磁歪とは、磁気をあたえると伸縮し、外形を変形させると透磁率(磁気の通しやすさ)が変化する現象であるところ、超磁歪素子は、この磁歪特性が強い素子であり、その変形量は1500〜2000ppmに達し、変形速度もns〜μsと速いという特質を有する。
本発明において、樹木又は原木への装着部材を超磁歪素子が備え、該装着部材は超磁歪素子本体の位置と反対方向に湾曲した面を具備する方法は好ましい。本態様において、湾曲した面が樹木の幹表面の曲率に近い曲率を有する装着部材は好ましい。
本発明において、加振機を対象樹木の表面に緊結固定する際には、樹木の幹表面の曲率に近い曲率を有した木型反転型製法による樹脂製の樹木取り付け板をゴム等のバンドで緊結固定した後、該防水構造の振動発生装置フランジ部と着脱容易なボルト留め構造を加振機に有することは好ましい。
該振動発生装置の具体的な設置するために特定樹木の主幹に該樹木取り付け板を用いて該装置の先端を直接コンタクトさせ、該装置から発生する振動を該特定樹木の主要部位まで伝達する方法により上記各害虫の成虫の行動を制御することは好ましい。
該振動発生装置のさらなる伝達方法としては、アクリル系樹脂、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ジュラコン、デルリン樹脂等でそれぞれ断面直径がφ5mm〜φ12mmを有して長尺のロッドを、1〜12本程度その片端面のみを揃えて束ね、自由端面側の個々のロッドを果樹園内にあって1〜12本程度の果樹に該樹脂製ロッドまたは樹脂系棒のそれぞれの端面を該果樹の樹幹部表面に直接コンタクトさせる方法を挙げることができる。あるいは樹幹部巻き付け固定した後に、束ねた側の端面に該装置の先端を直接コンタクトさせて、該装置が発生する振動を、それぞれの果樹に分岐・分配して伝達する方法にて、上記各害虫の成虫の行動を制御してもよい。
該振動発生装置のさらなる伝達方法としては、銅、黄銅、アルミ、鉄等の金属でそれぞれ断面直径がφ5mm〜φ12mmを有して長尺のロッドを自在に可塑屈曲可能なように軟化焼鈍を施した後に、1〜12本程度その片端面のみを揃えて束ね、自由端面側の個々のロッドを果樹園内にあって1〜12本程度の果樹に、該金属製ロッドのそれぞれの端面を該果樹の樹幹部表面に直接コンタクトさせる方法を挙げることができる。あるいは樹幹部に巻き付け固定した後に、束ねた側の端面に該装置の先端を直接コンタクトさせて、該装置から発生する振動を、それぞれの果樹に分岐・分配して伝達する方法にて、上記各害虫の成虫の行動を制御してもよい。
振動発生装置のさらなる伝達方法として、バンドを用いる方法も好ましい。バンドの材質としてはポリプロピレンが例示されるところ、ポリプロピレン製のバンドは振動の伝達性能やコストの面において好適であり好ましい。
上記バンドの大きさは本発明における所望の効果が奏されるものであれば限定されず、例えば長さとしては2 m〜4 m、幅としては10 mm〜20 mm、厚さとしては0.3 mm〜0.6 mmほどであってよい。
本発明において、作物、網又は外壁への装着部材を超磁歪素子が備え、該装着部材は超磁歪素子本体に接続されたロッドを具備する方法は好ましい。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし当該記載はあくまで例示を目的とするものであって、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
●(実施例1)ハラアカコブカミキリ
<発生消長調査及び室内試験>
ハラアカコブカミキリは、シイタケ栽培用の原木を食害し、主に西日本に分布するきのこの害虫である。島根県の中山間地域におけるハラアカコブカミキリ成虫の発生消長を調査した。広葉樹の伐採木に集まるハラアカコブカミキリ成虫を捕獲したところ、5月上旬〜7月下旬に発生することが示された。
次に、ハラアカコブカミキリの被害木から脱出するハラアカコブカミキリ成虫を捕獲したところ、9月中旬〜10月下旬に発生した。これらが休眠して翌春に発生し、被害をもたらす。シイタケの原木栽培のスケジュールから、島根県の中山間地域では5〜6月に最も集中的な防除が必要であることが明らかとなった。
ハラアカコブカミキリ成虫の日周行動を雌雄各5頭放飼してビデオ撮影したところ、交尾、摂食、歩行が日中に最も多く見られた。このことから、日中を中心として防除を行うことが好ましいと考えられた。
(1−1)<室内試験>
加振機を用いて、振動に対する行動反応として驚愕反応(体の一部を動かすこと)を観察し、行動制御のための振動の周波数は100Hzまたは120Hzであり、振幅は0.8 m/s2以上と、予め特定した。
超磁歪素子による振動発生装置、及び振動の振幅や持続時間が調節できるドライバー(電流増幅器・信号発生器)を用いて、実験室内において単数の原木に振動(周波数100Hz-2000Hz、振幅1.5m/s2以上、持続時間1s、間隔9s)を発生させ、ハラアカコブカミキリ成虫の行動を観察した。その結果、ハラアカコブカミキリは歩行の停止、摂食の停止、そして驚愕反応を高頻度でひきおこした(図1)。一方、振動が与えられない場合、これらの行動がほとんどおこらなかった。
複数の原木を井桁に組み、振動発生装置を用いて加振したところ、100Hz-2000Hzの振動(振幅1.4〜6.6 m/s2)が加振部の原木から最も離れた原木まで発生した。ハラアカコブカミキリを加振部の原木においたところ、驚愕反応が観察された。
(1−2)<圃場試験>
島根県のきのこ生産現場において、超磁歪素子を用いた振動発生装置一式による防除試験を行った(周波数100Hz-2000Hz、振幅1.5m/s2以上、持続時間1s、間隔9s)。原木29本を井桁に組み、振動処理区に該装置を設置し、5月30日から21日間、昼夜ともに振動を与えた。一方、無処理区は処理区から5m以上離れており、振動は原木にほとんど伝わらなかった。5月31日には、無処理区のみにハラアカコブカミキリ成虫1頭を、6月9日には無処理区に成虫3頭、振動処理区に1頭を観察し、無処理区に多く成虫が定着する傾向にあった。一方、振動による産卵への影響を、産卵加工時につくられる産卵孔、そして成虫が脱出する際の脱出孔について、全原木における総数を比較した。その結果、振動処理区において産卵孔総数は多くなるものの、脱出孔総数は少なく、産卵率は4%のみであった(表1)。一方、無処理区の産卵率は8.7%であり、振動により産卵の阻害が生じていることが示された。
島根県内の圃場内において、原木28本を井桁に組み、振動処理区に該装置を設置し、6月30日から20日間、昼夜ともに振動を与えた。そして、原木切断面での菌糸の蔓延状況を振動処理区と無処理区で比較して、きのこへの影響を評価した。その結果、両区とも蔓延率は99.2%となり、差が認められなかった(供試原木5本)。シイタケ栽培用の原木に対して、振動は悪影響を及ぼさないと考えられた。
原木の組み方と効率的な振動の与え方:原木の中点に当該装置を装着するのが、端点よりもよい。100Hzの振動が(装置でなく、単純に叩いた場合でも)発生しやすく、ハラアカコブカミキリの防除に適している。また、原木は水平方向に比べて、垂直方向の減衰が大きい(図2)。樹木取り付け板も装着可能である。
これらの結果から、本発明の方法により、振動発生装置を用いてハラアカコブカミキリを防除できることとともに、ハラアカコブカミキリを防除するために原木における効率的な振動を発生させることができることが示された。
●(実施例2)タイワンゴマダラカミキリ及びゴマダラカミキリ
(2−1)<タイワンゴマダラカミキリ及びゴマダラカミキリに対する室内試験>
沖縄本島にはゴマダラカミキリ類が3種生息することが知られている。野外において捕獲された個体数は、本島北部よりゴマダラカミキリ2個体、オオシマゴマダラカミキリ1個体、そして南部からタイワンゴマダラカミキリ40個体程度であった。カンキツ等果樹の被害は南部のほうが大きく、南部のタイワンゴマダラは個体数が非常に多かった。このため、防除対象種として、タイワンゴマダラカミキリを選定した。また、比較のために、本州産のゴマダラカミキリも用いた。
タイワンゴマダラカミキリ及びゴマダラカミキリにおいて、加振機からの振動に対する行動反応として驚愕反応(体の一部を動かすこと)を観察した(供試数各5頭)。その結果、30〜2400Hzに反応が見られ、特に30-600Hzに敏感であった)。
タイワンゴマダラカミキリでは5.0 m/s2以上の振幅を、ゴマダラカミキリでは2.8 m/s2以上の振幅を防除に用いる必要があることを特定した(図3)。
タイワンゴマダラカミキリにおいて、持続時間は0.1sで観察した時よりも1sで観察した時のほうが明確な反応を示したため、持続時間1.0s、間隔1.0sで測定した。ゴマダラカミキリも同様の時間で実験をした。
(2−2)<タイワンゴマダラカミキリに対する圃場試験>
タイワンゴマダラカミキリにおいて、シークヮーサー苗木(室内)での当該振動発生装置による防除試験(周波数60Hz,持続時間1s,間隔4s)をおこなった。静止しているタイワンゴマダラカミキリに振動を与えた結果、シークヮーサーの枝及び幹(振幅10.2 m/s2以上)から回避する、または上部の葉(1.4 m/s2以下)に移動するという行動が確認され、振幅に依存して定着阻害がおこることが示された。すなわち、供試した5個体のうち2個体が苗から降り、3個体は葉の上まで逃げてから静止した。
タイワンゴマダラカミキリにおいて、振幅が閾値以下の場合、樹木取り付け板と当該振動発生装置を用いても、野外のカンキツ樹(樹高3.8m)において供試した4個体では効果は見られなかった。当該振動発生装置から220〜300cm離れた枝において、振幅は5.08m/s2以下であった。
●(実施例3)チャバネアオカメムシ
果樹カメムシの主要害虫種であるチャバネアオカメムシは、カンキツ、ナシやモモなどをはじめする様々な果樹に大きな被害を与える。例えばつくば市内において、フェロモントラップによりチャバネアオカメムシの発生消長を調べたところ、2014年は3月25日から11月11日の長期間に渡り捕獲された。また、発生ピークは夏であり、7月29日に最大180頭が捕獲された。
<室内試験>
チャバネアオカメムシ成虫の振動に対する行動反応を観察した。一定周波数の振動(100Hz他)を加振機から与えて、行動制御のための振動の特性(周波数や振幅)を特定することを目的とした。除振台に設置したキリの苗木や枝(直径約10cm、長さ約30cm)に成虫を1頭放し、周波数と振幅を変化させたサイン波(持続時間1s,間隔10s)の振動を与え、振動に対する反応を5〜10個体観察した。その結果、50〜2000Hzにおいて、歩行、伏せ(低姿勢になり、腹面を媒体に近づける)、触角を動かすなどの様々な行動反応が観察された。特に150Hzと500Hzの反応が高い傾向にあり、最も低い閾値はキリの苗木や枝において0.007 m/s2であった(図4)。また、高振幅の振動(8〜10m/s2)では、伏せの反応がよく見られた。
<近縁種との反応性対比>
チャバネアオカメムシとナナホシキンカメムシのオス成虫において振動に対する神経生理応答を記録した。周波数と振幅を変化させたサイン波(持続時間0.2s,間隔3s)の振動を加振機から与え、電極を後肢の基部に挿入し、振動受容器である弦音器官(Nishino, H., Mukai, H. Takanashi, T. (2016) Chordotonal organs in hemipteran insects: unique peripheral structures but conserved central organization revealed by comparative neuroanatomy. Cell and Tissue Research doi:10.1007/s00441-016-2480-0.)の閾値を測定した。その結果、チャバネアオカメムシは25〜1000Hzに対して神経生理応答が記録され、最も低い閾値は1.6m/s2であった(図5)。
一方、ナナホシキンカメムシでは、チャバネアオカメムシと比較して、1)50〜500Hzにおいて、閾値の振幅比で1.5〜3.2となり、2)600〜1000Hzでは、4〜5.5となった。このことから、チャバネアオカメムシのほうがナナホシキンカメムシよりも振動に敏感であり、閾値の種間差が大きいことから、行動制御のための振幅は種毎に異なることがあること示された。
<圃場試験>
超磁歪素子による振動発生装置を用いた防除試験を行った。チャバネアオカメムシ成虫100〜200頭を、網室内のカボス(樹高2.5m)の株元から放飼した。約24時間加振し(振幅1.0m/s2以上、持続時間1s、間隔9s)、その後、樹上の個体数を確認した。さらに、24時間、加振しない状態を続けた後、樹上の個体数を確認した。その結果、加振によって、樹上の個体数が27頭から15頭へ、28頭から12頭へと大きく減少する傾向が認められた。一方、加振しない場合は、樹上の個体はほとんど減少しなかった(12頭のままと、15頭から13頭)。これらのことから、振動によって定着の阻害が起こることが示された。樹上に果実が1個あったが、落果などは見られず、振動による悪影響はなかった。
また超磁歪素子による振動発生装置を用いて、複数の果樹を1個の加振機によって加振する防除試験を行った。
ウンシュウミカンの苗木(5年生)4本に、カメムシ成虫を1頭ずつ放し、加振時(持続時間1s、間隔9s)の反応を観察した。各苗木には、加振機に接続された1本のロッド(ジュラコン製)を介して、1個の加振機に接続して振動を与えた。
その結果、多くのチャバネアオカメムシ成虫が振動に反応した(反応率60-100%、10頭)。そして、苗木主幹の振動を測定したところ、0.59〜0.87m/s2の振幅があり、行動をおこす閾値よりも大きいことがわかった。
●(実施例4)オンシツコナジラミ
(4−1)<オンシツコナジラミの室内試験1>
オンシツコナジラミにおいて、振動に対する行動反応を観察した。ガラス容器内において、コナジラミ類が好む黄色の2本の棒を配置し、一本の棒に加振機より振動を発生させて、もう一本の棒には振動が発生しない条件にした。コナジラミ類は振動のある媒体と、振動のない媒体の間で、明確な行動反応の違いがみられ、振幅を変化させた50-1000Hzの一定周波数(持続時間1s、間隔3s)において、歩行停止や飛翔開始が観察された。最も敏感な周波数は300Hzであり、生息媒体に振動を与える場合の振動の周波数が、報告されているコナジラミ類が交信を行う音の周波数と類似することが明らかになった(文献Kanmiya 2006 Mating behaviour and vibratory communications in whiteflies)。行動反応が誘発する閾値は3.4 m/s2であったことから、3.4 m/s2以上の振幅を防除に用いる必要があることを特定した(供試個体23頭、図6)。
300Hz(持続時間1秒、間隔3s)、振幅13m/s2以上の振動を加振機からネットに与えて、オンシツコナジラミの通過が振動により阻害されるかどうかを観察した。プラスチックの導入側の容器から、ネット越しに移動するオンシツコナジラミ(供試個体13-26頭、3反復)の位置を2.5時間後に確認した。その結果、振動を与えることで、ネットを通過する個体は相当程度減少した(図7)。
さらに、ネット上で静止している個体は、振動のない条件で8%観察されたが、振動のある条件では0%であった(図7)。
(4−2)<オンシツコナジラミの室内試験2>
3)野菜等の作物栽培施設において、網を含む外壁に振動を与えて、オンシツコナジラミの侵入を防止する。市販の加振機または超磁歪素子を用いた振動発生装置とロッド等の装着部材を用いて、外壁の面を効率的に加振する。網の場合、コナジラミのサイズよりも大きな目合いを用いることが可能となり、夏期の高温下でも通気性が確保できる。そこで、以下の試験を行った。
鉢植えのキュウリ苗に100Hz又は200Hzの振動(振幅4m/s2)を加振機から与えて、コナジラミの行動を観察した。多数の飛翔中のコナジラミは、植物体に着地せず、飛翔する傾向にあった。持続時間0.1s、間隔2.5sの振動のほうが、持続時間1s、間隔3sの振動よりも効果が認められた。このことから、振動に定着阻害の効果があることが示された。
野菜等の作物栽培施設において、作物に直接または間接的に振動を与えて、オンシツコナジラミの定着や摂食、産卵等を阻害する。市販の加振機または超磁歪素子を用いた振動発生装置とロッド等の装着部材を用いて、複数の作物を効率的に加振する。その際、トラップなどを併用することで、作物などの生息媒体から移動した害虫を誘殺し、振動による防除効果を増強することが可能となる。
(4−3)<ポリプロピレン製バンドによる振動の伝達試験> 振動を伝達できると考えられた部材としてポリプロピレン製のバンド(PPバンド)を選択し、その振動伝達効果についての試験を行った。振動伝達効果を有する部材は、オンシツコナジラミを防除するために施設(ビニールハウス等)の壁面や施設内の作物あるいは作物を立位に保持するために作物同士を連結し伸長させたひもに、間接的に振動を与えることを可能にするため有用である。
超磁歪素子の振動発生装置にPPのバンド(長さ3.5 m、幅14 mm、厚さ0.45 mm)を1本接続し、異なる周波数における振動伝達性を解析した。具体的には、市販の信号発生装置と増幅器を用いて、100〜500 Hzにおける出力限度値の電流を入力し、3軸の加速度計により振動を測定した。
その結果、振動発生装置から0.5 mと3 mの距離において、100〜500 Hzの周波数はバンドの水平方向、垂直方向ともに伝達していた(図8)。特に、250 Hzと350 Hzでは、バンドの水平方向で50m/s2のレベルにまで達した。
なお、直径1mm程度のテグスを上記PPバンドに替えて用いた場合に伝達される振動は小さかった。
これらのことから、野菜等の植物体や栽培施設の網を加振するために、PPバンドを用いて振動を伝達させると、オンシツコナジラミ等の害虫の行動制御が十分可能な加速度を伝達することが明らかになった。
上記実施例において用いた超磁歪素子による振動発生装置のドライバーの回路図を図9に示す。回路図中の(1)スイッチQ1とQ4がONで電流が流れる。(2)Q1〜Q4すべてがOFFとなって電流停止する。(3)Q2とQ3がONで電流が流れる。(4)Q1〜Q4がOFFとなって電流停止する。(5)(1)〜(4)の繰り返しで銅コイルに100Hzの双方向(+/−)直流交番電流が流れる。
該ドライバー並びにTerfenol-D系(各モル比テルビウム0.27−ディスプロシウム0.73−鉄1.91)の超磁歪素子による振動発生装置において、印加電流±1.5Aにより出力変位は±50μmとなる。
本発明によれば、ハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ、又はオンシツコナジラミの成虫の行動を制御することにより、これらの害虫を防除することができる。そのため本発明は、化学合成農薬に代替する環境調和型の防除技術の発展に大きく貢献できると考えられる。したがって、本発明は、害虫防除産業、環境保全及び関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (10)

  1. 加振機による振動を、振動により成虫の行動が制御される害虫(ハラアカコブカミキリ、タイワンゴマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、チャバネアオカメムシ、又はオンシツコナジラミ)の成虫の生息媒体又は周辺に存在する媒体に1回又は2回以上発生せしめ、前記害虫の成虫の行動を制御して前記害虫を防除する方法:
    ただし該害虫のうち、
    −ハラアカコブカミキリについては、振動の周波数の範囲は100〜2000Hzであり、振幅の範囲は0.8m/s以上である;
    −タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリについては、振動の周波数の範囲は30〜2400Hzであり、振幅の範囲は、タイワンゴマダラカミキリについては5.0m/s以上であり、ゴマダラカミキリについては2.8m/s以上である;
    −チャバネアオカメムシについては、振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は0.007m/s以上である;及び
    −オンシツコナジラミについては、振動の周波数の範囲は50〜1000Hzであり、振幅の範囲は3.4m/s以上である。
  2. 好ましくはランダムに変化する0.1〜1sの持続時間及び好ましくはランダムに変化する1〜15sの間隔で、好ましくは振幅がランダムに変化する振動を発生させることを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 害虫がハラアカコブカミキリであって、2本のきのこ栽培用の原木を、各原木が相互に接触するように組み合わせて配置し、該2本の原木の少なくとも1本に振動を与え、該2本の原木におけるハラアカコブカミキリ幼虫又は成虫の生育密度を減少させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 1本又は2本以上の原木を、該原木の少なくとも1本(原木A)が前記2本のきのこ栽培用の原木の少なくとも1本に接触するように配置し、前記1本又は2本以上の原木のうち原木A以外の原木は、原木Aに直接接触するか又は他の原木を介して原木Aに間接的に接触している、請求項3に記載の方法。
  5. 害虫がチャバネアオカメムシであって、1つの加振機に接続手段により接続された2本以上の樹木に、前記1つの加振機により振動を与え、該2本以上の樹木におけるチャバネアオカメムシの生息密度を減少させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 害虫がオンシツコナジラミであって、
    (i)外壁の少なくとも一部に網で構成された部分を有する作物栽培施設の前記網又は外壁に設置した加振機により、前記網又は外壁に振動を与えて網を振動させる;又は
    (ii)外壁の少なくとも一部に網で構成された部分を有しているかもしくは有していない作物生育施設内に栽培されている作物に設置した加振機により、前記作物に振動を与えて、
    作物におけるオンシツコナジラミの生息密度を減少させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 害虫が果樹栽培施設内の果実を加害するチャバネアオカメムシ、タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリであって、
    (i)果樹栽培施設が、その周囲に配置された支柱により支持された、網で構成されている外壁を有し、果樹栽培施設内の果樹に設置した加振機により前記網もしくは支柱に設置した加振機により網に振動を与えて網を振動させる;又は
    (ii)網で構成されている外壁を有しているかもしくは有していない果樹栽培施設内に栽培されている果樹の少なくとも1本に設置した加振機により、前記果樹に振動を与えて、
    果樹栽培施設内におけるチャバネアオカメムシ、タイワンゴマダラカミキリ又はゴマダラカミキリの生息密度を減少させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  8. 振動の発生に超磁歪素子が用いられる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 樹木又は原木への装着部材を超磁歪素子が備え、該装着部材は超磁歪素子本体の位置と反対方向に湾曲した面を具備する、請求項8に記載の方法。
  10. 作物、網又は外壁への装着部材を超磁歪素子が備え、該装着部材は超磁歪素子本体に接続されたロッド又はバンドを具備し超磁歪素子からの振動を伝達する、請求項8に記載の方法。
JP2016244162A 2016-12-16 2016-12-16 振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法 Active JP6849186B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016244162A JP6849186B2 (ja) 2016-12-16 2016-12-16 振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016244162A JP6849186B2 (ja) 2016-12-16 2016-12-16 振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018093831A true JP2018093831A (ja) 2018-06-21
JP6849186B2 JP6849186B2 (ja) 2021-03-24

Family

ID=62631204

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016244162A Active JP6849186B2 (ja) 2016-12-16 2016-12-16 振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6849186B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020115855A (ja) * 2019-01-25 2020-08-06 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 集束超音波を利用したコナジラミ類害虫、アブラムシ類害虫又はカメムシ類害虫を防除する方法
JP2020130071A (ja) * 2019-02-21 2020-08-31 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動による害虫防除及び作物受粉の方法
CN112715531A (zh) * 2020-12-21 2021-04-30 中国农业科学院茶叶研究所 一种利用地埋振源驱赶或干扰害虫的方法
JP2021129540A (ja) * 2020-02-21 2021-09-09 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いた樹木害虫の防除法
JP2023013014A (ja) * 2021-07-15 2023-01-26 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いた害虫の行動及び成長の制御によりキノコ類を保護する方法
WO2023074666A1 (ja) * 2021-10-26 2023-05-04 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いたキノコ類の栽培技術

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011030783A1 (ja) * 2009-09-09 2011-03-17 独立行政法人森林総合研究所 振動により害虫を防除する方法
US9013961B1 (en) * 2012-03-06 2015-04-21 William D. Nicholson Apparatus and method of repelling unwanted pests

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011030783A1 (ja) * 2009-09-09 2011-03-17 独立行政法人森林総合研究所 振動により害虫を防除する方法
JP5867813B2 (ja) * 2009-09-09 2016-02-24 国立研究開発法人森林総合研究所 振動により害虫を防除する方法
US9013961B1 (en) * 2012-03-06 2015-04-21 William D. Nicholson Apparatus and method of repelling unwanted pests

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020115855A (ja) * 2019-01-25 2020-08-06 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 集束超音波を利用したコナジラミ類害虫、アブラムシ類害虫又はカメムシ類害虫を防除する方法
JP7352258B2 (ja) 2019-01-25 2023-09-28 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 集束超音波を利用したコナジラミ類害虫、アブラムシ類害虫又はカメムシ類害虫を防除する方法
JP2020130071A (ja) * 2019-02-21 2020-08-31 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動による害虫防除及び作物受粉の方法
JP2021129540A (ja) * 2020-02-21 2021-09-09 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いた樹木害虫の防除法
JP7055959B2 (ja) 2020-02-21 2022-04-19 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いた樹木害虫の防除法
CN112715531A (zh) * 2020-12-21 2021-04-30 中国农业科学院茶叶研究所 一种利用地埋振源驱赶或干扰害虫的方法
JP2023013014A (ja) * 2021-07-15 2023-01-26 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いた害虫の行動及び成長の制御によりキノコ類を保護する方法
JP7233060B2 (ja) 2021-07-15 2023-03-06 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いた害虫の行動及び成長の制御によりキノコ類を保護する方法
WO2023074666A1 (ja) * 2021-10-26 2023-05-04 国立研究開発法人森林研究・整備機構 振動を用いたキノコ類の栽培技術

Also Published As

Publication number Publication date
JP6849186B2 (ja) 2021-03-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6849186B2 (ja) 振動を用いた害虫の行動制御により植物を保護する方法
JP5867813B2 (ja) 振動により害虫を防除する方法
Polajnar et al. Manipulating behaviour with substrate‐borne vibrations–potential for insect pest control
JP6991488B2 (ja) 振動による害虫防除及び作物受粉の方法
US7541936B2 (en) Use of wing-fanning sounds to affect cockroach movement
JP7055959B2 (ja) 振動を用いた樹木害虫の防除法
Baral et al. Bird repeller–a review
AU2011338336B2 (en) Use of acoustics to disrupt and deter wood-infesting insects and other invertebrates from and within trees and wood products
JP7233060B2 (ja) 振動を用いた害虫の行動及び成長の制御によりキノコ類を保護する方法
JP7268957B2 (ja) 振動発生装置、及び振動発生システム
Walker Acoustic methods of monitoring and manipulating insect pests and their natural enemies
JP7352258B2 (ja) 集束超音波を利用したコナジラミ類害虫、アブラムシ類害虫又はカメムシ類害虫を防除する方法
JP5818274B2 (ja) チョウ目害虫の飛来を合成超音波で抑止する方法
JP2011205981A (ja) 害虫防除システム
CN104365419A (zh) 用于农业生产中防治软体动物的装置与方法
KR20200122506A (ko) 비닐하우스에 부착 가능한 야생동물 퇴치기
JP6644299B2 (ja) 果菜類栽培施設へのチョウ目害虫の飛翔行動を合成超音波により阻害する方法
WO2023074666A1 (ja) 振動を用いたキノコ類の栽培技術
KR102347926B1 (ko) 유해 조수 퇴치기
Sergeevich et al. Perspectives of using vibrational communication data to develop safe methods for insect population size control
Arul FABRICATION OF MOBILE ULTRASONIC BIRD REPELLER
Sidek et al. Study on Effectiveness of Air-Horn Device for Bird Deterrent in Paddy Cultivation Area
MALVIYA et al. Birds and Animals Damage to Agricultural Yield, Current Repelling Techniques, and Their Impacts
Chaturvedi et al. Intelligent e-Pest Repellent System
Berge Predatory behaviour of theraphosid spiders in northern Queensland

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20191128

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191213

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20191128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210127

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210224

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6849186

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250