JP2020127372A - 抹茶風味の容器詰め飲料および飲料の抹茶風味増強方法 - Google Patents

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啓一 松浦
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Abstract

【課題】抹茶風味を強く感じられる飲料に関する技術を提供する。【解決手段】抹茶風味の容器詰め飲料は、ペプチドを含有するものである。【選択図】なし

Description

本発明は、抹茶風味の容器詰め飲料および飲料の抹茶風味増強方法に関する。
抹茶風味は、菓子や飲料との相性が良く、広く親しまれている。なかでも抹茶風味を呈する飲料の需要はますます高まっている。
しかしながら、抹茶風味をより強く感じられるように飲料中の抹茶配合率を高めると、抹茶由来の不溶性固形分の沈殿の増加が生じたり、不溶性固形分の増加による製造負荷が生じる場合があった。また、沈殿などを抑制するために安定剤を使用すると、製造コストが上昇する場合があった。
一方、ペプチドは、2個以上のアミノ酸が結合した化合物であり、その有用な生理作用が注目され、多くの食品に用いられている。例えば、特許文献1には、有効成分を多く含む茶を濃縮した茶出物に、ペプチドを添加することで、茶に由来する苦みを抑制することが開示されている。また、特許文献2には、ペプチドに由来する苦みを抑制するために、ペプチドを含有した食品組成物に茶または茶風味を付与することが開示されている。
特開平3−168046号公報 特開平2−128669号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、茶の濃縮物において生じる苦みをペプチドにより抑制することに着目したものであり、ペプチドにより抹茶風味を強くすることについて何ら検討されたものではなかった。一方、特許文献2に開示される技術は、ペプチドによる苦みに着目したものではあるが、飲料の抹茶風味に関する検討はなされていない。
そこで、本発明者は、飲料の抹茶風味を増強させる観点から鋭意検討を行った結果、飲料にペプチドを含ませることで意外にも抹茶風味が強く感じられることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、ペプチドを含有する抹茶風味の容器詰め飲料が提供される。
また、本発明によれば、飲料にペプチドを配合する、飲料の抹茶風味増強方法が提供される。
本発明によれば、抹茶風味を強く感じられる飲料が提供できる。なお、抹茶風味とは、飲食品において一般に抹茶風味として広く知られる風味であり、適度な苦みと、抹茶の原料となる碾茶特有の深みとが融合した風味を意図する。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
<容器詰め飲料>
本実施形態の容器詰め飲料は、ペプチドを含有するものである。
以下、本実施形態の飲料の詳細について説明する。
[ペプチド]
本実施形態におけるペプチドは、飲料の抹茶風味を増強するために用いられる。ペプチドにより飲料の抹茶風味が増強される理由の詳細は明らかではないが、ペプチドの有する苦みが、抹茶風味の増強に寄与していると推測される。
本実施形態におけるペプチドは、例えば、動植物性あるいは微生物由来のタンパク質を酸、アルカリまたは蛋白質加水分解酵素で加水分解する等により得られるものである。具体的には、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、乳ペプチド、小麦ペプチドおよび卵ペプチドからなる群から選択される少なくとも1種類以上が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、抹茶風味との相性がよく、効果的に抹茶感を増強できる観点から、大豆ペプチドおよび乳ペプチドが好ましく、乳ペプチドがより好ましい。乳ペプチドとしては、例えば、牛乳、馬乳、山羊乳、および羊乳等の獣乳に由来するペプチドが挙げられる。なかでも、牛乳由来のカゼインペプチドを蛋白質加水分解酵素で分解して得られる乳カゼインペプチドであることが好ましい。
本実施形態におけるペプチドの分子量分布は、500〜6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態におけるペプチドは、分子量分布が500以上10000以下のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として50質量%以上であるものを含むことが好ましい。
ペプチドの分子量を、上記下限値以上とすることにより、抹茶風味を増強しやすくなる。一方、ペプチドの平均分子量を、上記上限値以下とすることにより、ペプチドに由来する臭いを抑制しつつ、抹茶風味が得られやすくなる。そのため、ペプチドの分子量分布を適切に制御することにより、ペプチドに由来する臭いの抑制と、抹茶風味の増強とのバランスを高水準で実現しやすくなる。
なお、ペプチドに由来する臭いとは、原料となる動植物由来の独特の不快な臭いを意図する。
本実施形態におけるペプチドの分子量は、公知の方法で測定することができ、例えば、粘度測定、HPLC及びサイズ排除クロマトグラフ法等の定量方法によって測定できる。なかでも、サイズ排除クロマトグラフ法であることが好ましい。サイズ排除クロマトグラフ法を用いる場合、使用カラムはTSKgel G2500PWXL(東ソー株式会社製)とすることが好ましい。
本実施形態の容器詰め飲料において、ペプチドの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。ペプチドの含有量を、上記下限値以上とすることにより、苦みを強くしつつ良好な抹茶感が得られ、かつ抹茶風味を増強しやすくなる。
一方、本実施形態の容器詰め飲料において、ペプチドの含有量は、過度な苦みを抑制しつつ、抹茶風味を増強させる観点から0.95質量%以下が好ましく、抹茶風味の増強作用と良好な抹茶感を得る観点から0.8質量%以下がより好ましい。
本実施形態の容器詰め飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の種々の成分を含んでもよい。
本実施形態の容器詰め飲料は、抹茶風味増強効果を顕著に得る観点から、茶成分、茶フレーバーの少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。
茶成分としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、粉茶、芽茶、ほうじ茶、玄米茶、および抹茶などの不発酵茶、黄茶、白茶、ウーロン茶、紅茶、および黒茶(プーアール茶)などの発酵茶が挙げられ、これらは一種又は二種以上を混合して用いられてもよい。これにより、ペプチドの風味と茶成分および/または茶フレーバーから得られる風味とが融合しやすくなり、飲料における抹茶特有の風味が増強される。なかでも、ペプチドが有する苦み等の風味との相性がよい観点から、抹茶を含むことがより好ましい。
本実施形態の容器詰め飲料は、抹茶を含む場合は抹茶飲料、抹茶および乳を含む場合は抹茶ラテ、抹茶を含まず茶フレーバーを含んだ無色透明タイプの場合はニアウォーターとして好適である。
上記の抹茶とは、碾茶を粉砕処理したものであり、多くは、不溶性固形分からなる粒子および繊維である。抹茶の含有量は、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.3〜1.0質量%であることがより好ましい。
上記の茶フレーバーとは、本実施形態の飲料に抹茶風味を付与するために用いられるものである。茶フレーバーとしては、飲料中に含有された際に抹茶を想起させる抹茶フレーバーであればよい。
茶フレーバーは、例えば、(Z)−3−ヘキセノール、ジメチルスルフィド、β−ヨノン、3−メチル−2,4−ナノンジオン、リナロール、フラネオール、メチオナール、インドール、ジャスモン酸メチル、リナロール、ゲラニオール、サリチル酸メチル、β−ダマセノン、フェネチルアルコール、ホトリエノール、2,4−ヘプタジエナール、および1−オクテン−3−オールなどの香気成分を少なくとも1種以上含むことが好ましい。
さらに、本実施形態の容器詰め飲料は、乳、甘味料、酸味料、乳化剤、pH調整剤、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、増粘安定剤等を含んでもよい。
上記の乳としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、および発酵乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD−ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、3.0〜7.5であることが好ましく、6.0〜7.5であることがより好ましい。pHをかかる数値範囲とすることで、抹茶風味を良好に保持しやすくなる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
[ブリックス値]
本実施形態の飲料のブリックス値は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは0.1〜25°であり、より好ましくは1〜18°であり、さらに好ましくは4〜15°である。
ブリックス値は、例えば、前述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
[容器]
本実施形態の容器詰め飲料における容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
<飲料の抹茶風味増強方法>
本実施形態の飲料の抹茶風味増強方法は、飲料にペプチドを配合するものである。これにより、飲料の抹茶風味を強く感じられるようになる。飲料としては、上記容器詰め飲料と同様のものを用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、表中「%」は、「質量%」である。
まず、以下の4種類のペプチドを準備した。
・乳カゼインペプチド−1:ラクトノナデカペプチド(以下、「LNDP」)
特許第5718741号公報段落[0108]〜[0110]に記載の方法に従って作製し、7時間反応させたものを用いた。
分子量分布は、500〜6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として65質量%であった。
・大豆ペプチド:ハイニュート−AM(不二製油社製)
・フィッシュコラーゲンペプチド: HPフィッシュコラーゲン(協和発酵バイオ株式会社製)
・乳カゼインペプチド−2:ラクトトリペプチド(以下、「LTP」)
特開2011−102327号公報段落[0024]実施例1に記載の方法で作製した。
分子量分布は、500〜6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として7質量%であった。
[実験例1]ペプチド(LNDP)濃度の違いの検証
<試作品1〜9>
上記のペプチド(LNDP)を用いて、濃度10質量%のペプチド(LNDP)溶液を作製した。
次に、飲料中の濃度が表1に示す値となるように上記のペプチド(LNDP)溶液を準備し、砂糖7.00質量%、乳化剤0.30質量%、抹茶0.60質量%、および香料0.08質量%とともに均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について以下の評価を行い、結果を表1に示した。
<評価>
・官能評価:試作品1〜9の飲料(20℃)それぞれを、熟練した5名のパネラー(A〜E)が試飲し、以下の評価基準に従い、「抹茶感の良さ」、「抹茶感の強さ」、「苦味の良さ」、「苦味の強さ」、「全体風味の良さ」それぞれについて、8段階(1〜8点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、試作品1の飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。なお、評価は、数値が大きいほど良好な結果であることを表す。
・評価基準
「抹茶感の強さ」、「苦味の強さ」
8点・・・対象品よりも非常に強い
7点・・・対象品よりもとても強い
6点・・・対象品よりも強い
5点・・・対象品よりもわずかに強い
4点・・・対象品と同等の強さ
3点・・・対象品よりもわずかに弱い
2点・・・対象品よりも弱い
1点・・・対象品よりも非常に弱いか全く感じない
「抹茶感の良さ」、「苦味の良さ」、「全体風味の良さ」
8点・・・対象品よりも非常によい
7点・・・対象品よりもとてもよい
6点・・・対象品よりもよい
5点・・・対象品よりもわずかによい
4点・・・対象品と同等程度
3点・・・対象品よりもわずかに悪い
2点・・・対象品よりも悪い
1点・・・対象品よりも非常に悪い
Figure 2020127372
[実験例2]ペプチドの種類の違いの検証
<試作品1,4,10,11,12>
ペプチドの種類を、表2に示すものに変更した以外は、試作品4(ペプチド濃度0.4質量%)と同様にして、容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験例1と同様にして、評価を行い、結果を表2に示した。
Figure 2020127372
[実験例3]ベース飲料の違いの検証−1
<試作品13,14>
飲料中のペプチド濃度が0質量%,0.4質量%となるように上記のペプチド(LNDP)溶液を準備し、砂糖7.00質量%、香料0.08質量%とともに均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより、抹茶風味ニアウォーターの容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験例1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表3に示した。
Figure 2020127372
[実験例4]ベース飲料の違いの検証−2
<試作品15,16>
飲料中のペプチド濃度が0質量%,0.4質量%となるように上記のペプチド(LNDP)溶液を準備し、砂糖7質量%、乳化剤0.3質量%、抹茶0.6質量%、香料0.08質量%、および牛乳3質量%とともに均一に混合して飲料を調合し、得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器に詰めた。これにより、抹茶ラテの容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について、上記実験例1と同様にして、測定および評価を行い、結果を表4に示した。
Figure 2020127372

Claims (7)

  1. ペプチドを含有する抹茶風味の容器詰め飲料。
  2. 前記飲料が茶成分および/または茶フレーバーを含有する、請求項1に記載の容器詰め飲料。
  3. 前記ペプチドの含有量が0.1質量%以上0.95質量%以下である、請求項1または2に記載の容器詰め飲料。
  4. 前記ペプチドが、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、乳ペプチド、小麦ペプチドおよび卵ペプチドからなる群から選択される少なくとも1種類以上である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の容器詰め飲料。
  5. 前記ペプチドは、分子量分布が500以上10000以下のものが50質量%以上であるものを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
  6. 前記茶成分が抹茶であり、当該抹茶の含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下である、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の容器詰め飲料。
  7. 飲料にペプチドを配合する、飲料の抹茶風味増強方法。
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