JP2020125439A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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健 小宮
真吾 西田
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真吾 西田
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Akiyoshi Tamai
晃義 玉井
梅津 秀之
Hideyuki Umezu
秀之 梅津
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Abstract

【課題】熱老化後の機械強度およびそのばらつき、熱老化後のプレスフィット特性に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供する。【解決手段】下記成分(A)、(B)、および(C)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、下記成分(A)の100重量部に対して下記成分(C)が0.01〜3.0重量部であり、前記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる1mm厚の成形品の180℃・375時間加熱前後の降温結晶化温度変化量ΔTmcが4℃以上16℃以下であるポリアミド樹脂組成物。成分(A):ポリアミド樹脂、成分(B):銅および/または銅化合物、成分(C):酸無水物由来の構造単位を有する樹脂【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱老化性に優れるポリアミド樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、熱老化後の機械強度およびそのばらつき、熱老化後のプレスフィット性に優れるポリアミド樹脂組成物に関するものである。
ポリアミド樹脂は優れた耐熱性、機械特性、成形性などを有することから、エンジニアリングプラスチックスとして好適な性質を有しており、自動車部品、電気・電子部品などの各種用途に広く使用されている。これらの用途のうち、自動車部品用途においては、エンジンルーム内部品の高密度化やエンジン出力の増加など環境温度上昇が進んでおり、より高温条件下における耐熱老化特性が求められている。一方電気・電子部品分野においては、コネクター、クリップ、結束バンド等の嵌合部を有する成形品にも好ましく使用されている。嵌合部を有する成形品は、成形品の肉厚が薄い部品やヒンジ構造を有する部品も多く、そのような部品は薄肉部を折り曲げ変形するときに折れやすく、また、嵌合する際に割れやすい。高温での使用環境下においては、なおさらその傾向が強く、このような嵌合部を有する部品に対しては、高温条件下における耐熱老化性に加え、熱老化後におけるプレスフィット性が求められている。また、このような小型部品に関しては、特性のばらつきを少なくして、品質の安定したポリアミド樹脂組成物の提供が求められている。
ポリアミド樹脂の耐熱老化性改良技術としては、これまで数々の技術的な改良が試みられてきた。例えば、アミド基濃度が8.2mmol/g以下であるポリアミド樹脂と、水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基を含む化合物を含むポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、ポリアミド樹脂と、70ミクロン以下の粒径を有する多価アルコールを含む熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、ポリアミド樹脂と、2000未満の数平均分子量を有する多価アルコールポリマーと、銅安定剤やヒンダードフェノールなどの補助安定剤と、補強剤と、ポリマー強化剤とを含むポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)、ポリアミド樹脂と、2〜8個の水酸基を含む多価アルコールと、強化剤または増量剤(耐衝撃改良剤)を含むポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献4)が提案されている。
特開2016−164206号公報 特表2014−525506号公報 特表2011−529989号公報 特表2013−538927号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、熱老化後の引張強度に優れるものの、熱老化後のプレスフィット性は評価されていない。特許文献2に記載された技術によれば、耐熱エージング性には優れるものの、熱老化後のプレスフィット性は評価されていない。また、特許文献3に記載された成形品では熱老化後の靭性についての記述はあるものの、4mm厚での評価であり、クリップ、結束バンド等の成形品に用いる薄肉領域での熱老化後のプレスフィット性は評価されていない。特許文献4による成形品では機械強度が優れるものの熱老化後のプレスフィット性は評価されていない。
そこで本発明は、これら従来技術の課題に鑑み、熱老化後の機械強度およびそのばらつき、熱老化後のプレスフィット特性に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、主として以下の構成を有する。
[1]下記成分(A)、(B)、および(C)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、下記成分(A)の100重量部に対して下記成分(C)が0.01〜3.0重量部であり、前記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる1mm厚の成形品の180℃・375時間加熱前後の降温結晶化温度変化量ΔTmcが4℃以上16℃以下であるポリアミド樹脂組成物。
成分(A):ポリアミド樹脂
成分(B):銅および/または銅化合物
成分(C):酸無水物由来の構造単位を有する樹脂
ΔTmc= Tmc −Tmc加熱後
(Tmc:未加熱の1mm厚成形品における降温結晶化温度、Tmc加熱後:180℃で375時間加熱した1mm厚成形品における降温結晶化温度)
[2]前記成分(A)に対して、前記成分(B)に含まれる銅元素の重量割合が250ppm以上500ppm以下である、[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記成分(C)が、100℃以上200℃以下のガラス転移点を有する樹脂である、[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記成分(C)が、成分(C)の構造単位の全量100モル%に対して、酸無水物由来の構造単位を1モル%以上80モル%以下含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記成分(C)の重量平均分子量と酸価の比(重量平均分子量/酸価)が、30〜3000の範囲にある、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]前記成分(A)100重量部に対して、下記成分(D)を0.1重量部以上2.0重量部未満含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
成分(D):1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物
[7]下記成分(E)を含有し、前記成分(B)に含まれる銅元素に対する下記成分(E)に含まれるカルシウム元素およびアルミニウム元素の重量比率((E)/(B)比)が0.01以上0.4以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
成分(E):カルシウムおよび/またはアルミニウムを含む化合物
[8]前記成分(C)が、下記化学式(1)で表される構造単位、および酸無水物由来の構造単位を含む共重合樹脂であり、さらに、前記共重合樹脂における各構造単位の割合が、下記化学式(1)で表される構造単位:20モル%以上99モル%以下であり、酸無水物由来の構造単位:1モル%以上80モル%以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
Figure 2020125439

(式中、Rは炭素原子1〜8個有するアルキル基または水素原子であり、Rは炭素原子1〜8個を有するアルキル基を表し、かつnは0、1、2もしくは3の値を有する。)
本発明によれば、熱老化後の機械強度およびそのばらつき、熱老化後のプレスフィット性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車用途部品、電気・電子部品に好ましく利用することができ、特に嵌合部を有する成形品に好ましく利用することができる。
実施例において製品評価に用いた嵌合部を有する成形品を示し、(A)は断面図、(B)は右側面図である。(B)中の破線は中空部の断面積が最大となる断面の輪郭を示す。 実施例において製品評価に用いた嵌合部を有する成形品取付用ステンレスプレートの取付穴の概略図である。
以下、本発明について、実施形態とともに詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、下記成分(A)、(B)および(C)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、下記成分(A)の100重量部に対して下記成分(C)が0.01〜3.0重量部であり、前記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる1mm厚の成形品を180℃で375時間加熱した際の下記式(1)で表される降温結晶化温度変化量(以下、ΔTmcと略する場合もある)が4℃以上16℃以下であることを特徴とする。
成分(A):ポリアミド樹脂
成分(B):銅および/または銅化合物
成分(C):酸無水物由来の構造単位を有する樹脂
式(1) ΔTmc= Tmc −Tmc加熱後
(Tmc:未加熱の1mm厚成形品における降温結晶化温度、Tmc加熱後:180℃で375時間加熱した1mm厚成形品における降温結晶化温度)
一般的に、ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を向上させるための手段としては、熱劣化による主鎖の分解と、結晶化による脆化の二点を制御する必要がある。前者は、熱老化時に発生するラジカルの発生を抑制することにより、あるいは、発生したラジカルを捕捉することにより耐熱老化性を向上させる技術であり、後者は、熱老化時のポリアミド樹脂の結晶の進行を遅らせることによる耐熱老化性の向上となる。ここで、ポリアミド樹脂の結晶化の進行を遅らせる技術としては、結晶化遅延剤を配合することが挙げられる。一般的に、結晶化遅延剤をポリアミド樹脂に配合すると、結晶化遅延剤がポリアミド樹脂の主鎖間に配位し、ポリアミド樹脂の主鎖の折りたたみや配列による結晶化を阻害する。そのため、降温結晶化温度は低下し熱老化後の成形品の靭性は向上するものの、結晶化遅延剤がポリアミド樹脂の主鎖間に配位するため、主鎖同士の絡み合いは減少し、熱老化後の成形品の機械強度や熱老化後のプレスフィット性は低下傾向となる。
そこで、本願発明者らは、ポリアミド樹脂に、(B)成分と、特定の構造を有する(C)成分を特定量配合し、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品のΔTmcを特定の範囲とすることにより、得られる成形品の熱老化後の機械強度および靭性をバランスよく向上させることを見出し、本発明に至った。なお、本発明においては、熱老化後の靭性および機械的強度のバランスを測る指標として、プレスフィット性に着目した。
本発明においては、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品を特定の条件で測定した際の、ΔTmcが4℃以上16℃以下である。ΔTmcが4℃未満の場合、熱老化時の結晶化は抑制できず、熱老化による脆化が進行し、熱老化後の機械強度、プレスフィット性が低下する。また、熱老化後の機械強度もばらつく。ΔTmcは6℃以上が好ましく、7℃以上がより好ましく、8℃以上がさらに好ましい。また、ΔTmcが16℃を超える場合、熱老化時の結晶化の進行は抑制できるが、主鎖の分子運動性が低下しすぎ、熱老化後のプレスフィット性が低下する。ΔTmcは15℃以下が好ましく、14℃以下がより好ましく、13℃以下がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物における降温結晶化温度は、示差走査型熱量計(以下、DSCと略する場合もある。)を使用して、1mm厚の成形品を溶融させた後、DSCの降温過程における結晶化ピークトップ温度より算出できる。具体的には、ポリアミド樹脂組成物の1mm厚の成形品約10mgをDSCにおいて、A)50℃で1分保持、B)50℃から融点+50℃まで昇温(昇温速度20℃/分)、C)融点+50℃で1分保持、D)融点+50℃から50℃まで降温(降温速度20℃/分)の条件で測定し、D)で観測される降温結晶化ピークトップ温度(Tmc)を用いて、加熱前のTmcと、180℃375時間加熱後のTmc加熱後との差から前記式(1)により算出できる。
以下、ポリアミド樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
<成分(A)>
成分(A)に用いるポリアミド樹脂とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。成分(A)の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明において、ポリアミド樹脂の原料として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはポリアミドコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。ここで、「/」を含むポリアミド樹脂は共重合体を示し、共重合体を構成する成分を記号「/」の前後に記載した。以下、共重合体については同様の表記とする。
成分(A)に用いるポリアミド樹脂は、そのアミド基濃度が8.0mmol/g以下であることが好ましい。ここで、アミド基濃度とは、ポリアミド樹脂の構造単位あたりに含まれるアミド基個数を表し、下記式(2)で表される。
式(2) アミド基濃度[mmol/g]=(構造単位あたりのアミド基個数/構造単位の分子量)×1000
なお、上記式(2)において、構造単位とは、ポリアミド樹脂を構成する繰り返し構造単位のことを指し、構造単位あたりのアミド基個数は構造単位中に含まれるアミド基の数であり、構造単位の分子量とは構造単位に相当する分子量を指す。例えば、アミノ酸を構成成分とするポリアミド樹脂の場合は、アミノ酸の分子量から水分子1つ分の分子量を引いた数値である。ラクタムを構成成分とするポリアミド樹脂の場合は、ラクタムの分子量の数値である。ジアミンとジカルボン酸の残基を構成成分とするポリアミド樹脂の場合は、ジカルボン酸とジアミンの分子量の和から水分子2つ分の分子量を引いた数値である。ここで、ポリアミド樹脂のアミド基濃度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという場合もある)や熱分解MS−GCなどの一般的な分析方法によりその構造単位を特定し、その分子量を算出し、上記式(2)により求めることができる。
アミド基濃度が8.0mmol/g以下の場合、アミド基間の主鎖が長くなり、主鎖の運動性が相対的に高くなり、また主鎖同士の絡み合いも増加するため、熱老化後の靭性が向上する傾向にあるため好ましい。熱老化後の靭性をより向上させる観点から、アミド基濃度は、7.8mmol/g以下がより好ましく、7.5mmol/g以下がより一層好ましい。アミド基濃度の下限としては、熱老化後の機械強度をより向上させる観点から、5.0mmol/g以上が好ましい。
アミド基濃度を上記範囲にするための手段としては、ポリアミド樹脂の原料として、後に例示するものの中から、所望の炭素数のものを選択する方法などが挙げられる。
アミド基濃度が8.0mmol/g以下であるポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリオクタメチレンテレフタルアミド(ナイロン8T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。
成分(A)に用いるポリアミド樹脂は、上記ポリアミド樹脂の中でも脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂は、熱老化後のプレスフィット性を向上させることができる。特に、溶融粘度が高い脂肪族ポリアミド樹脂では、分子鎖の絡み合いが増加し、靭性をより向上させることができるため、得られる成形品の熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。
さらに、熱老化後のプレスフィット性をより向上させる観点から、成分(A)に用いるポリアミド樹脂は、アミド基濃度が8.0mmol/g以下であり、かつ、脂肪族ポリアミド樹脂であることが特に好ましい。
これらポリアミド樹脂の重合度としては、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.5以上5.0以下が好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、得られる成形品は熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。相対粘度は、2.0以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、成形加工性の観点から、相対粘度は5.0以下が好ましい。
<成分(B)>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成分(B)として、銅および/または銅化合物(以下、銅化合物という場合もある)を含有する。
成分(B)は、熱老化時に発生する分解ラジカルの捕捉能があることから、耐熱老化性を向上させることが出来るが、多量に配合すると分散性が悪化し凝集による熱老化後の成形品の機械強度の低下やばらつきが多くなる傾向がある。しかし、後述する成分(C)と併用することで、成分(C)が成分(A)と分岐構造を形成し局所的な結晶化が抑制され、系が均一化されることにより、成分(B)の分散性が向上する。その結果、成分(B)を多量に用いても熱老化後成形品の機械強度は低下せず、ばらつきも低減することが可能となる。また、成分(B)は、成分(A)や後述する成分(C)と配位結合すると考えられ、これにより、成分(B)は、成分(A)と成分(C)の相溶性を高める効果があると考えられる。成分(A)と成分(C)の相溶性が高まると、得られる樹脂組成物を成形してなる、熱老化後の機械強度、およびプレスフィット性に優れる。
成分(B)に用いる銅化合物に含まれる銅元素は、成分(A)に対して250ppm以上500ppm以下であることが好ましい。成分(B)に含まれる銅元素が成分(A)に対して250ppm以上の場合、成分(A)と成分(C)の相溶性が高められ、得られる成形品の熱老化後の機械強度が向上し、ばらつきが低下するため好ましい。また、熱老化後のプレスフィット性が向上されるため好ましい。耐熱老化性をより向上させる観点からは、成分(B)に含まれる銅元素は、成分(A)に対して275ppm以上がより一層好ましい。また、成分(B)に含まれる銅元素が成分(A)に対して500ppm以下の場合、成分(A)や成分(C)との配位により、熱老化後の機械強度が向上しばらつきが低下する。また、熱老化後のプレスフィット性が向上する。機械強度やプレスフィット性をより向上させる観点から、成分(B)に含まれる銅元素は成分(A)に対して450ppm以下がより好ましく、400ppm以下がさらに好ましい。
成分(B)に用いる銅化合物としては、銅、無機金属塩、有機金属塩等が挙げられる。例えば無機金属塩としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、水酸化銅、ほうふっ化銅、硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅などが、有機金属塩としては、ギ酸銅、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、クエン酸銅などが挙げられ、これらを1種ないし複数種以上含有してもよい。複数種用いる場合は、その合計量が、上記範囲内に含まれることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物では、分散性向上による熱老化後の靭性や熱老化後の機械強度向上、およびばらつき抑制の観点から、成分(A)と成分(B)、および/または後述する成分(F)その他の添加剤を用いて後述する高濃度予備混合物(以下、マスターペレットという場合もある)を作製し、規定の濃度になるように配合する方法が例示できる。なお、この場合の成分(B)の配合量は、マスターペレット内の成分(A)も加味した成分(A)に対する配合量として算出する。
<成分(C)>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成分(C)を成分(A)に対して0.01重量部以上、3.0重量部以下(0.01〜3.0重量部)含有する。上記の成分(B)とともに含有することで、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品を特定の条件で測定した際ΔTmcを特定の範囲にし、得られる成形品の熱老化後の機械強度、および熱老化後のプレスフィット性を向上させることができる。
成分(C)は、酸無水物由来の構造単位を有する樹脂である。成分(C)は、ポリアミド樹脂末端基と反応し分岐構造を生成する。それにより、成分(A)ポリアミド樹脂の結晶性を低下させ、ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度変化量(ΔTmc)を本願規定の範囲に調整することができる。
成分(C)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、0.01重量部以上3.0重量部以下である。0.01重量部未満の場合、成分(A)との反応性に乏しく、得られる成形品の熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性が低下する。熱老化後の機械強度、ばらつき、および熱老化後のプレスフィット性のさらなる向上の観点から、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。
一方、成分(C)の含有量が3.0重量部を超える場合、溶融混練時に過剰な架橋反応により、せん断発熱が大きくなり成分(A)の熱分解を招き、得られる成形品の機械強度が低下しばらつきも大きくなる。また、熱老化後のプレスフィット性も低下する。熱老化後の機械強度、プレスフィット性のさらなる向上の観点から、2.75重量部以下が好ましく、2.5重量部以下がより好ましい。
成分(A)ポリアミド樹脂等は融点(以下、Tmと呼ぶ場合がある)に対し+10〜50℃で溶融加工されることが多い。さらにポリアミド樹脂の溶融加工温度の上限は、350℃近傍でアミド結合が切れ分解するため、この温度以下での溶融加工が望まれる。成分(A)との混練性の観点から、成分(C)のガラス転移点は100℃以上200℃以下であることが好ましい。100℃以上の場合、高温時の機械強度が向上し、熱老化後の機械物性が上昇する。110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。一方、200℃以下の場合には、溶融加工温度が高くなりすぎず、成分(A)の熱分解を抑制できるため、成形品の機械強度、および熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性が上昇する。さらなる機械強度向上のため、180℃以下が好ましく、さらに好ましくは150℃以下である。なお、ガラス転移点は、特に制限はないが、例えば、成分(C)を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、セイコーインスツルメント社製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて、次の条件で測定することができる。溶融状態から20℃/minの降温速度で30℃まで降温した後、20℃/minの昇温速度で昇温した場合に現れる階段状の吸熱ピークの中点の温度(ガラス転移点)を測定できる。
成分(C)の重量平均分子量と酸価の比(重量平均分子量/酸価)は、30〜3000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量と酸価の比を30以上とすることで、成分(C)と、成分(A)のアミノ基と反応が進行し、架橋構造が形成されるため、熱老化後の機械強度、プレスフィット性が向上する。熱老化後のプレスフィット性のさらなる向上の観点から、300以上がさらに好ましく、800以上がことさら好ましい。
一方、重量平均分子量と酸価の比を3000以下とすることで、成分(A)のアミノ基との反応性が向上し、ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度を抑制することで、熱老化後の機械強度、靭性が向上する。熱老化後の機械強度のさらなる向上の観点から2000以下がより好ましい。
成分(C)は、そのメカニズムは詳しくはわからないが、本発明におけるΔTmcの範囲となるように、成分(A)の末端と反応し、成分(C)の側鎖に成分(A)がグラフトされたような分岐構造が形成されることで、主鎖の運動性を確保しながら熱老化時の結晶化の進行を抑制することが出来ると考えられる。このため、特に制限はないが、成分(C)の重量平均分子量(以下、Mwと略する場合もある)は10,000を超え200,000以下であることが好ましい。Mwが10,000を越える場合、成分(C)は耐熱性が向上し、得られる成形品の熱老化後の機械強度、プレスフィット性が向上する。熱老化後の靭性向上の観点から、Mwは15,000以上が好ましく、さらに好ましくは100,000以上である。最も好ましくは、120,000以上である。
一方、Mwが200,000以下の場合には、溶融混練時に成分(A)との混練性が向上し、得られる成形品の機械強度が向上する。より好ましくは、190,000以下である。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて算出することができる。具体的には、化合物が溶解する溶媒、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用い、カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて重量平均分子量を測定することができる。
成分(C)の酸価は、1.0mgKOH/g以上500mgKOH/g以下が好ましい。酸価を1.0mgKOH/g以上とすることで、成分(C)と、成分(A)のアミノ基との反応性が向上し、成分(A)ポリアミド樹脂の末端と反応し分岐構造が形成されやすくなることから、得られる成形品の靭性が向上する。また、分岐構造により、結晶化が抑制されるため、ポリアミド樹脂組成物のΔTmcが本願規定の範囲に入り、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性が向上する。熱老化後のプレスフィット性のさらなる向上の観点から、成分(C)の酸価は、100mgKOH/g以上がより好ましい。一方、酸価を500mgKOH/g以下とすることで、成分(C)と、成分(A)のアミノ基との過剰な反応を抑制し、熱老化後のプレスフィット性が向上する。酸価の上限は、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/gがさらに好ましい。
酸価は、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することが出来る。250ml三角フラスコに、成分(C)を約0.2g採取し、重量を測定し、次いで20mlのクロロホルムに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、0.1N(規定)の水酸化カリウムエタノール溶液で滴定することによって算出できる。
成分(C)は、酸無水物由来の構造単位を有する樹脂であるが、成分(C)の構造単位の全量100モル%に対して、酸無水物由来の構造単位を1モル%以上80モル%以下含有する樹脂が好ましい。具体的な成分(C)としては、酸無水物由来の構造単位を有する、スチレン系樹脂、フェニレンエーテル系樹脂、カーボネート系樹脂、イミド系樹脂、アミドイミド系樹脂、エーテルイミド系樹脂、アリレート系樹脂、スルホン系樹脂、エーテルスルホン系樹脂、エーテルエーテルケトン系樹脂などが挙げられる。この中で、好ましい成分(C)としては、酸無水物由来の構造単位を有する、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂、アリレート系樹脂を挙げることができ、特に、酸無水物由来の構造単位を有する、スチレン系樹脂が好ましい。また、熱老化後のプレスフィット性や成形時の流動性を向上させる目的から、これらの構造単位を複数含むことも好ましい。
酸無水物由来の構造単位を有するスチレン系樹脂は、酸無水物由来構造単位およびスチレン由来構造単位を必須とする共重合体である。本発明の成分(C)として、より好ましくは、下記化学式(1)で表される構造単位、および酸無水物由来の構造単位を含む共重合樹脂である。成分(C)は、成分(C)の構造単位の全量100モル%に対して、(C−a)下記化学式(1)で表される構造単位20〜99モル%と、(C−b)1種以上の酸無水物から誘導された構造単位を1〜80モル%を含むコポリマーであることが好ましい。なお、化学式(1)で表される構造単位(C−a)はスチレンもしくは置換されたスチレンよりなる構造単位である。
Figure 2020125439
(式中、Rは炭素原子1〜8個有するアルキル基または水素原子であり、Rは炭素原子1〜8個を有するアルキル基を表し、かつnは0、1、2もしくは3の値を有する。)
(C−a)スチレンもしくは置換されたスチレンよりなる構造単位は、成分(C)の構造単位の全量100モル%に対して、50〜90モル%が好ましく、60〜85モル%がさらに好ましい。一方、(C−b)1種以上の酸無水物から誘導された構造単位は、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がさらに好ましい。
化学式(1)中の好ましいR基としては、メチル基、エチル基または水素が挙げられる。また好ましいR1は、メチル基またはエチル基である。好ましい(C−a)成分としては、スチレンもしくはα―メチルスチレンまたはこれらの混合物が挙げられる。
成分(C−b)として、酸無水物から誘導された構造単位としては特に限定はないが、好ましくはコハク酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、またはこれらの混合物から誘導された構造単位が用いられる。中でも、スチレン由来の構造単位(C−a)とマレイン酸無水物由来の構造単位(C−b)とのコポリマーが好ましい。
さらに、成分(C−a)および成分(C−b)以外の構造単位として、熱老化後のプレスフィット性や成形時の流動性を向上させる観点で、より剛直な構造を有する構造単位が好ましく、イミド由来の構造単位を含むことが好ましい。中でも、マレイミド由来の構造単位が好ましく、メチルマレイミド由来の構造単位、エチルマレイミド由来の構造単位、フェニルマレイミド由来の構造単位が好ましい。成分(C−a)および成分(C−b)以外の構造単位は、成分(C)の構造単位の全量100モル%に対して、0〜15モル%が好ましく、熱老化後のプレスフィット性や成形時の流動性を向上させる観点で、1〜13モル%がより好ましく、3〜13モル%がさらに好ましい。
成分(C)の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、溶液重合法、および溶液−塊状重合法など通常の方法を用いることができる。
成分(C)の各構造単位の含有量は、その測定方法に特に制限がなく、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により、各構造単位を定量し、その比より求めることが出来る。
<成分(D):1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに、成分(D)1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物(以下、水酸基含有化合物という場合もある)を含有することができる。成分(D)は、流動性等の成形加工性や耐熱老化性を向上させる効果がある。成分(D)としては、脂肪族化合物が好ましい。脂肪族化合物は、芳香族化合物および脂環族化合物に比べて立体障害性が低く、成分(A)との反応性に優れることから成分(A)との相溶性に優れ、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。また、成分(D)の1分子中の水酸基数は3つ以上であり、4つ以上が好ましく、6つ以上がさらに好ましい。成分(D)は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよいし、縮合物であってもよい。
1分子中の水酸基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、成分(D)の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(3)により求めることができる。
式(3) 水酸基数=(数平均分子量×水酸基価)/56110
成分(D)の分子量は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、数平均分子量はGPCを用いて算出することができる。具体的には、成分(D)が溶解する溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPという場合もある)を移動相として、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAという場合もある)を標準物質として用いて算出することができる。カラムは溶媒に合わせ、例えば、HFIPを使用する場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量の測定を行うことができる。
成分(D)の水酸基価は、成分(D)を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
成分(D)の具体例としては、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、グルコース、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2−メチル−1,2,4−ブタントリオールなどを挙げることができる。これらの中でも、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールが好ましい。
また、成分(D)として、上記水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物とを反応させて得られる、1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物を挙げることができる。以下、上記水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物とを反応させて得られる、1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物を化合物(d)と記載する場合もある。かかる化合物(d)により、耐熱老化性をより向上させることができる。この理由については定かではないが、以下のように考えられる。つまり、上記水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をあらかじめ反応させることにより、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物を連結点とした多分岐構造を有する化合物(d)が形成される。かかる化合物(d)は、多分岐構造を有することにより自己凝集力がより小さくなり、成分(A)との反応性および相溶性がより向上する。また、多分岐構造を有する化合物(d)は溶融粘度が向上することから、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(d)の分散性がより向上する。このため、ポリアミド樹脂組成物中において微細な分散構造を形成させることができ、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができると考えられる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物は、1分子中にエポキシ基および/またはカルボジイミド基を2つ以上有することが好ましく、4つ以上有することがさらに好ましく、6つ以上有することがいっそう好ましい。エポキシ基およびカルボジイミド基は成分(A)との相溶性に優れるため、1分子中にエポキシ基および/またはカルボジイミド基を2つ以上有する化合物は、成分(A)と化合物(d)の相溶性を高める効果があると考えられる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。
1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は、上述した水酸基の数と同様に低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の数平均分子量を、エポキシ当量またはカルボジイミド当量で割ることにより求めることができる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の数平均分子量は、GPCを用いて、算出することができる。
エポキシ当量は、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をHFIPに溶解させた後、酢酸、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(4)により算出できる。
式(4) エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
カルボジイミド当量は、以下の方法で算出できる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物と、内部標準物質としてフェロシアン化カリウムをドライブレンドし、約200℃で1分間熱プレスを行い、シートを作製する。その後、赤外分光光度計を用いて、透過法で、シートの赤外吸収スペクトルを測定する。測定条件は、分解能4cm−1、積算回数32回とし、透過法での赤外吸収スペクトルは、吸光度がシート厚みに反比例するため、内部標準ピークを用いて、カルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。2140cm−1付近に現れるカルボジイミド基由来ピークの吸光度を、2100cm−1付近に現れるフェロシアン化カリウムのCN基の吸収ピークの吸光度で割った値を算出する。この値からカルボジイミド当量を算出するために、あらかじめカルボジイミド当量が既知のサンプルを用いてIR測定を行い、カルボジイミド基由来ピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成し、化合物(d)の吸光度比を検量線に代入し、カルボジイミド当量を算出する。なお、カルボジイミド当量が既知のサンプルとして、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡製、“カルボジライト(登録商標)”LA−1、カルボジイミド当量247g/mol)、芳香族ポリカルボジイミド(ラインケミー製、“スタバクゾール(登録商標)”P、カルボジイミド当量360g/mol)を用いることができる。
エポキシ基含有化合物の具体例として、エピクロロヒドリン、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジル基含有ビニル系重合体等を例示できる。これらを2種以上用いてもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造されるもの、エピクロロヒドリンとビスフェノールFから製造されるもの、ノボラック樹脂にエピクロロヒドリンを反応させたフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフェノールAから誘導されるいわゆる臭素化エポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが例示される。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、p−オキシ安息香酸またはダイマー酸から製造されるエポキシ樹脂、トリメシン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが例示される。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、p−オキシ安息香酸またはダイマー酸から製造されるエポキシ樹脂、トリメシン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが例示される。
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基を有する化合物などが例示される。
複素環式エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、ヒダントインまたはイソシアヌール酸から製造されるエポキシ樹脂などが例示される。
グリシジル基含有ビニル系重合体としては、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーをラジカル重合したものが挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。
エポキシ基含有化合物の市販品としては、低分子の多官能エポキシ化合物であるポリグリシジルエーテル化合物(例えば、阪本薬品工業(株)製「SR−TMP」、ナガセケムテックス(株)製「“デナコール(登録商標)”EX−521」など)、ポリエチレンを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、住友化学(株)製「“ボンドファスト(登録商標)”E」)、アクリルを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、東亞合成(株)製「“レゼダ(登録商標)”GP−301」、東亞合成(株)製「“ARUFON(登録商標)”UG−4000」など)、アクリル・スチレン共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、BASF社製「“Joncryl(登録商標)”−ADR−4368」、東亞合成(株)製「“ARUFON(登録商標)”UG−4040」など)、シリコーン・アクリル共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、「“メタブレン(登録商標)”S−2200」など)、ポリエチレングリコールを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、日油(株)製“エピオール(登録商標)”「E−1000」など)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製“jER(登録商標)”「1004」など)、ノボラックフェノール型変性エポキシ樹脂(例えば、日本化薬(株)製“EPPN(登録商標)”「201」)などが挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物としては、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのジカルボジイミドや、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフタレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。
カルボジイミド基含有化合物の市販品として、日清紡ホールディングス(株)製“カルボジライト(登録商標)”、ラインケミー製“スタバクゾール(登録商標)”などを挙げることができる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は、成分(A)と、化合物(d)との相溶性を向上させる観点から、800〜10000が好ましい。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を800以上とすることにより、溶融混練時に揮発しにくくなるため、加工性に優れる。また、溶融混練時の粘度を高めることができるため、成分(A)と、化合物(d)との相溶性がより高くなり、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は1000以上がより好ましい。一方、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を10000以下とすることにより、溶融混練時の粘度を抑えることができるため、加工性に優れる。また、成分(A)と、化合物(d)との相溶性をより高く保持することができる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は8000以下がより好ましい。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は、前述の方法により求めることができる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物は、25℃において固形であるか、または25℃において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、溶融混練時に所望の粘度にすることが容易となり、成分(A)と、化合物(d)との相溶性がより高くなり、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の官能基濃度を示す指標となる、分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、50〜2000であることが好ましい。ここで、官能基の数とは、エポキシ基およびカルボジイミド基の合計数を指す。この値は小さいほど官能基濃度が高いことを表すが、50以上とすることにより、過剰な反応によるゲル化を抑制でき、また、成分(A)および化合物(d)との反応性がほどよく高まるため、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を、1分子中の官能基の数で割った値は、100以上がより好ましい。一方、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を、1分子中の官能基の数で割った値を、2000以下とすることにより、成分(A)および化合物(d)との反応を十分に確保することができ、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができるため好ましい。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を、1分子中の官能基の数で割った値は、1000以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
成分(D)(以下、成分(D)として、化合物(d)を用いる場合は、その原料となる水酸基含有化合物を含むものをいう)の水酸基価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。成分(D)の水酸基価を100mgKOH/g以上とすることにより、成分(A)と成分(D)との反応量を十分に確保することが容易となるため、耐熱老化性をより向上させることができる。成分(D)の水酸基価は300mgKOH/g以上がより好ましい。一方、成分(D)の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、成分(A)と成分(D)との反応性がほどよく高まり、過剰反応によるゲル化を抑制することができるため、耐熱老化性をより向上させることができる。成分(D)の水酸基価は1800mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基価は、成分(D)を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
成分(D)は、水酸基とともに、他の反応性官能基を有していてもよい。他の官能基として例えば、アルデヒド基、スルホ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。
本発明に用いられる成分(D)の分子量は、50〜10000が好ましい。成分(D)の分子量が50以上であれば、溶融混練時に揮発しにくいことから、加工性に優れる。成分(D)の分子量は150以上が好ましく、200以上がより好ましい。一方、成分(D)の分子量が10000以下であれば、成分(A)との相溶性がより高くなるため、本発明の効果がより顕著に奏される。成分(D)の分子量は6000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。成分(D)分子量は、前述の方法により求めることができる。
本発明において、成分(D)の分岐度は、0.05〜0.70が好ましい。分岐度は、化合物中の分岐の程度を表す数値であり、直鎖状の化合物が分岐度0であり、完全に分岐したデンドリマーが分岐度1である。この値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を導入でき、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性を向上させることができる。分岐度を0.05以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造が十分に形成されるため、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。分岐度は、0.10以上がより好ましい。一方、分岐度を0.70以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造の密度を抑え、ポリアミド樹脂組成物中における成分(D)の分散性をより高め、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。分岐度は、0.35以下がより好ましい。なお、分岐度は、下記式(5)により定義される。
式(5) 分岐度=(D+T)/(D+T+L)
上記式(5)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。なお、上記D、T、Lは13C−NMRにより測定したピークシフトの積分値から算出することができる。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。
分岐度が前述の範囲にある成分(D)としては、例えば、前述の好ましい水酸基含有化合物の例や、かかる水酸基含有化合物とエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物などが挙げられる。
本発明において、成分(D)は、下記化学式(2)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物が好ましい。
Figure 2020125439
上記化学式(2)中、X〜Xはそれぞれ同一でも異なってもよく、OH、CHまたはORを表す。ただし、OHとORの数の和は3以上であり、かつ、OHの数は3以上である。また、Rはエポキシ基を有する有機基またはカルボジイミド基を有する有機基を表し、nは0〜20の範囲を表す。
エポキシ基を有する有機基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシジルエーテル型エポキシ基、グリシジルエステル型エポキシ基、グリシジルアミン型エポキシ基、エポキシ基またはグリシジル基で置換された炭化水素基、エポキシ基またはグリシジル基で置換された複素環基などが挙げられる。カルボジイミド基を有する有機基としては、例えば、アルキルカルボジイミド基、シクロアルキルカルボジイミド基、アリールアルキルカルボジイミド基などが挙げられる。
化学式(2)におけるnは0〜20の範囲を表す。nが20以下である場合、成分(A)の可塑化が抑制され、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。nは4以下がより好ましい。一方、nは1以上がより好ましく、成分(D)の分子運動性を高めることができ、成分(A)との相溶性をさらに向上させることができる。
化学式(2)中のOHとORの数の和が3以上であることにより、成分(A)との相溶性に優れ、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。ここで、OHとORの数の和は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。
また、縮合物の場合、OH(水酸基)の数は、化学式(2)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量と水酸基価を算出し、上記式(3)より求めることができる。
また、縮合物の場合、ORの数は、化学式(2)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。化学式(2)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量は、前述の方法により求めることができ、エポキシ当量またはカルボジイミド当量は、前述した方法を用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、成分(D)は、成分(A)の100重量部に対して0.1重量部以上2重量部未満であれば添加することができる。成分(D)の含有量が0.1重量部以上であると、成形時の流動性が向上するため、得られる成形品の機械強度のばらつきが低減され、また、耐熱老化性も向上することから熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性が向上する。成分(D)の含有量は、成分(A)の100重量部に対して、0.25重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。一方、成分(D)の含有量が2.0重量部未満の場合、ポリアミド樹脂組成物において、熱老化時に架橋構造を形成するため、結晶化が抑制され、熱老化後のプレスフィット性が上昇する傾向にある。成分(D)の含有量は、成分(A)の100重量部に対して、1.75重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましい。
成分(D)として、前述の水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物とを反応させて得られる、少なくとも3つの水酸基を有する化合物(d)を用いる場合、その製造方法は、水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドし、両成分の融点よりも高い温度で溶融混練する方法が好ましい。
前述の水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物を反応させて化合物(d)を作製する場合、これらの配合比は、化合物(d)の1分子中の水酸基の数の和が、化合物(d)および/またはその縮合物の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くなるようにこれら化合物を配合することが好ましい。エポキシ基およびカルボジイミド基は、水酸基と比較して、成分(A)の末端基との反応性に優れる。このため、化合物(d)の1分子中の水酸基の数の和を、化合物(d)の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くすることにより、過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。
また、前述の水酸基含有化合物に対する、反応させるエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の重量比((水酸基含有化合物)/(エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物))は、0.3以上10000未満が好ましい。成分(A)とエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の反応性、ならびに成分(D)とエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の反応性は、成分(A)と成分(D)の反応性よりも高い。このため、前記重量比が0.3以上の場合、過剰な反応によるゲルの生成を抑制し、熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性をより向上させることができる。
前述の水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物を反応させて化合物(d)を作製する場合、水酸基と、エポキシ基またはカルボジイミド基の反応率は、1〜95%であることが好ましい。反応率が1%以上の場合、成分(D)の分岐度を高め、自己凝集力を低下させることができ、成分(A)との反応性を高めることができ、耐熱老化性をより向上させることができるため好ましい。反応率は10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、反応率が95%以下の場合、エポキシ基またはカルボジイミド基を残存させることができ、成分(A)との反応性を高めることができるため好ましい。反応率は90%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
水酸基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基の反応率は、反応により得られた化合物(d)を、溶媒(例えば重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化HFIPなど)に溶解し、エポキシ基の場合はH−NMR測定によりエポキシ環由来ピークについて、原料として用いた水酸基含有化合物との反応前後の減少量を求めることにより、カルボジイミド基の場合は13C−NMR測定によりカルボジイミド基由来ピークについて、原料として用いた水酸基含有化合物との反応前後の減少量を求めることにより、算出することができる。反応率は、下記式(6)により求めることができる。
式(6) 反応率(%)={1−(e/d)}×100
上記式(6)中、dは、原料として用いた水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドしたもののピーク面積を表し、eは反応により得られた成分(D)のピーク面積を表す。
<成分(E):カルシウムおよび/またはアルミニウムを含む化合物>
本発明のポリアミド樹脂組成物では、成分(E)カルシウムおよび/またはアルミニウムを含む化合物を含有することが好ましい。成分(E)は、成分(B)と併用することで、成分(B)の分散を向上させ、さらに成分(A)と成分(C)とも配位することでポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を向上させ、熱老化後の機械強度のばらつきを低減させる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前記成分(B)に含まれる銅元素に対する成分(E)に含まれるカルシウム元素およびアルミニウム元素の重量比率((E)/(B)比)が0.01以上0.4以下の範囲で成分(E)を含有することが好ましい。(E)/(B)比が0.01以上である場合、カルシウムおよび/またはアルミニウムが成分(B)の銅元素を安定化でき、成分(A)と成分(B)、および成分(C)の相溶性が向上し、反応が十分に進行して耐熱老化性が向上する。また、成分(A)や成分(C)の凝集を抑制し、熱老化後の機械強度のばらつきが低減する。熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性の向上、機械強度のばらつきの低減の観点から、(E)/(B)比は0.05以上がより好ましく、0.1以上がより一層好ましい。
(E)/(B)比が0.4以下の場合、成分(E)に含まれるカルシウム元素および/またはアルミニウム元素が、成分(B)の銅元素の分散性を向上させ、成分(B)や成分(E)の凝集が抑制されるため、熱老化後のプレスフィット性が向上する。熱老化後のプレスフィット性をより向上させる観点で、(E)/(B)比は0.35以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましく、0.25以下がより一層好ましい。
(E)/(B)比は、ポリアミド樹脂組成物中に含まれる成分(B)の銅元素の含有量と、ポリアミド樹脂組成物中に含まれる成分(E)のカルシウム元素およびアルミニウム元素の含有量から計算する。銅元素は、成分(B)由来の元素であり、カルシウム元素およびアルミニウム元素は、成分(E)由来の元素である。成分(B)として、複数の銅化合物を用いる場合は、その合計量で計算する。同様に、成分(E)として、複数のカルシウムを含む化合物および/またはアルミニウムを含む化合物を使用する場合は、それらの合計量で計算する。
成分(E)のカルシウムおよびアルミニウム元素量は、例えば、原子吸光を用いた検量線法により求めることが出来る。ポリアミド樹脂組成物のペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析計((株)島津製作所製AA−6300)を用いて、原子吸光分析(検量線法)することによりカルシウム含有量およびアルミニウム含有量を求め、この値を成分(A)の重量で割ることで、成分(A)に対するカルシウム含有量、およびアルミニウム含有量を求めることができる。
成分(E)に用いるカルシウムを含む化合物として、塩が好ましく、例えば、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ハロゲン化カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
成分(E)に用いるアルミニウムを含む化合物として、塩が好ましく、例えば、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸アルミニウム、ベヘン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、酢酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。
<その他添加剤>
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物では、本発明の効果を損なわない範囲において、成分(F)として各種添加剤を配合することが可能である。添加剤としては、例えば、以下の各種添加剤を含有することができる。ポリエステル樹脂、ポリケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂など成分(A)もしくは成分(C)以外の樹脂。オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、アイオノマーなどのエラストマー。フェノール系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物、リン系化合物などの安定剤。前記成分(B)銅化合物、および前記成分(D)以外の金属塩。イソシアネート系化合物。有機シラン系化合物。有機チタネート系化合物。有機ボラン系化合物。難燃剤。結晶核材。可塑剤。離型剤。滑剤。紫外線防止剤。着色剤。発泡剤。
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用でき、反応性向上の点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましい。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上使用できるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機を用いた溶融混練による方法が最も好ましい。
混練方法としては、
1)成分(A)、(B)、(C)、および(F)その他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、
2)成分(A)、(B)、および(C)を元込めフィーダーから投入して混練した後、必要であれば(F)その他の添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、
3)I)成分(A)と成分(B)および/または成分(F)その他の添加剤、または、II)成分(A)と成分(C)、および/または成分(F)その他の添加物、III)成分(A)と成分(D)、および/または成分(F)その他の添加剤を、それぞれ高濃度に含む高濃度予備混合物(マスターペレット)を作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットを成分(A)や成分(F)その他の添加剤と混練する方法(マスターペレット法)、などが例示される。これらの中でも、分散性向上による熱老化後の機械強度、およびそのばらつきの向上の観点から、3)マスターペレット法が好ましい。
<ポリアミド樹脂組成物の成形品>
かくして得られる本発明のポリアミド樹脂組成物は、公知の方法で成形することができ、ポリアミド樹脂組成物からシート、フィルム、繊維などの各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられる。中でも嵌合部を有する成形品として用いる観点では、射出成形が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車用部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、とりわけ、熱老化性後の機械強度およびそのばらつき、熱老化後のプレスフィット性に優れることから、自動車部品、電気電子関連部品に適しており、特に嵌合部を有する成形品としたときに有効である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、薄肉においても熱老化後の機械強度、靭性、プレスフィット性に優れるため、上記範囲においても優れた嵌合部を有する成形品としての特性を示し、とりわけ高温度環境下における自動車部品として用いられる配線、コード、センサー、チューブを束ねるクリップ、クランプ、バンド、スペーサーなどの結束部品用途に有用である。
次に、実施例を挙げて本発明のポリアミド樹脂組成物と成形品について、さらに具体的に説明する。特性評価は、下記の方法に従って行った。
[ポリアミド樹脂の融点]
成分(A)を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、セイコーインスツルメント社製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて、次の条件で成分(A)の融点を測定した。300℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃の温度まで降温し、30℃の温度で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
[ガラス転移点]
成分(C)を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、セイコーインスツルメント社製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて、次の条件で成分(C)のガラス転移点を測定した。溶融状態から20℃/minの降温速度で30℃まで降温した後、20℃/minの昇温速度で昇温した場合に現れる階段状の吸熱ピークの中点の温度(ガラス転移点)を求めた。
[アミド基濃度]
後述する構造単位が既知のポリアミド樹脂について、構造単位から構造単位あたりのアミド基個数と分子量を算出し、上記式(2)によりアミド基濃度を求めた。
式(2) アミド基濃度[mmol/g]=(構造単位あたりのアミド基個数/構造単位の分子量)×1000
[1分子中の水酸基数]
水酸基の数は、後述する方法で算出した成分(D)の数平均分子量と水酸基価を算出し、上記式(3)により算出した。
式(3) 水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110
[重量平均分子量、数平均分子量]
成分(C)、成分(D)として水酸基含有化合物または化合物(d)を、それぞれHFIP(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を、次に示す。
・装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
・検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
・カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
・流速:0.5ml/min
・試料注入量:0.1ml
・温度:30℃
・分子量校正:ポリメチルメタクリレート(PMMA)。
[水酸基価]
成分(D)として水酸基含有化合物または化合物(d)を0.5g採取し、それぞれ250ml三角フラスコに加え、次いで、無水酢酸と無水ピリジンを1:10(質量比)に調整・混合した溶液20.00mlを採取し、前記の三角フラスコに入れ、還流冷却器を取り付けて、100℃の温度に温調したオイルバス下で20分間、撹拌しながら還流させた後、30℃まで冷却した。さらに、前記の三角フラスコ内に、冷却器を通じてアセトン20mlと蒸留水20mlを加えた。これにフェノールフタレイン指示薬を入れて、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により滴定した。別途測定したブランク(試料を含まない)の測定結果を差し引き、下記式(7)により水酸基価を算出した。
式(7) 水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E
上記式中、Bは滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]を表し、Cはブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]を表し、fは0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクターを表し、Sは試料の質量[g]を表し、Eは酸価を表す。
[酸価]
250ml三角フラスコに、成分(C)、または、成分(D)として水酸基含有化合物または化合物(d)を約0.2g採取し、重量を測定した。次いで20mlのクロロホルムに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、0.1N(規定)の水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、酸価[mgKOH/g]を算出した。
[水酸基とエポキシ基との反応率]
化合物(d)0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、H−NMR測定を行った。分析条件は、下記のとおりである。
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、O・BFIN10500.00Hz
・積算回数:256回。
得られたH−NMRスペクトルから、エポキシ環由来ピークの面積を求めた。ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。成分(D)としての化合物(d)をドライブレンドしたもののピーク面積をdとし、化合物(d)のピーク面積をeとし、反応率は、上記式(6)により算出した。
式(6) 反応率[%]={1−(e/d)}×100
[1分子中のエポキシ基の数]
エポキシ基の数は、化合物(d)の数平均分子量をエポキシ当量で割った値により算出した。
成分(D)としての水酸基含有化合物と、化合物(d)の数平均分子量と水酸基価は、前述の方法で測定した。エポキシ当量は、化合物(d)400mgを、HFIP 30mlに溶解させた後、酢酸20ml、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液(=50g/200ml)を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、上記式(4)により算出した。
式(4) エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001)
上記式中、Fは滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]を表し、Gはブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]を表し、fは0.1Nの過塩素酸のファクターを表し、Wは試料の質量[g]を表す。
[分岐度]
成分(D)含有化合物または化合物(d)を、下記の条件で13C−NMR分析した後、上記式(5)により分岐度(DB)を算出した。
式(5) 分岐度=(D+T)/(D+T+L)
上記式(5)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。
上記のD、T、Lは、13C−NMRにより測定したピーク面積から算出した。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。測定条件は、下記のとおりである。
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・測定サンプル量/溶媒量:0.035g/0.70ml
・観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
・積算回数:512回。
[銅含有量、およびカルシウム、アルミニウム含有量]
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析計((株)島津製作所製AA−6300)を用いて、原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量、カルシウム含有量、およびアルミニウム含有量を求め、この値を成分(A)の重量で割ることで、成分(A)に対する銅含有量、カルシウム含有量、およびアルミニウム含有量を求めた。
[ΔTmc]
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+35℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒の条件で射出成形することにより、ASTM 4号ダンベル片(1mmt)を得た。この試験片約10mgをセイコーインスツルメント社製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて、次の条件で降温結晶化温度(Tmc)を測定した。A)50℃で1分保持、B)50℃からTm+50℃まで昇温(昇温速度20℃/分)、C)Tm+50℃で1分保持、D)Tm+50℃から50℃まで降温(降温速度20℃/分)の条件で測定し、D)で観測される降温結晶化ピークトップ温度(Tmc)とした。ついで、試験片を180℃の熱風オーブンで375時間熱処理(耐熱老化処理)し、処理後の試験片について、前記同様の方法で熱処理後の降温結晶化温度(Tmc加熱後)を測定した。これらの値を用いて上記式(1)から降温結晶化温度変化量を算出した。
式(1) ΔTmc= Tmc −Tmc加熱後
(Tmc:未加熱の1mm厚成形品における降温結晶化温度、Tmc加熱後:180℃で375時間加熱した1mm厚成形品における降温結晶化温度)
[成分(C)の構造単位の含有量]
成分(C)0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、H−NMR測定を行った。分析条件は、下記のとおりである。
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、O・BFIN10500.00Hz
・積算回数:256回。
得られたH−NMRスペクトルから、酸無水物、および共重合した構造単位由来ピークの面積を求めた。ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。求めたピーク面積の比から酸無水物由来の構造単位、共重合した構造単位の比を算出することで各含有量を求めた。
[引張強度保持率測定]
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+35℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒の条件で射出成形することにより、ASTM 4号ダンベル片(1mmt)を得た。この試験片について、ASTM−D638に従い23℃で引張強度を評価した。5本の試験片にて同様の測定を行いその平均値を引張強度として算出した。
さらに、前記引張試験で作成したASTM 4号ダンベル片を、175℃の熱風オーブンで500時間熱処理(耐熱老化処理)し、処理後の試験片について、前記同様の引張試験を行い、5本の試験片での測定値の平均値を耐熱老化処理後の引張強度として算出した。耐熱老化処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比を、引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が大きいほど、熱老化後の機械強度に優れることを示している。
[引張強度安定性(引張強度標準偏差)測定]
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+35℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒の条件で射出成形することにより、ASTM 4号ダンベル片(1mmt)を得た。この試験片について、175℃の熱風オーブンで500時間熱処理(耐熱老化処理)し引張試験を行い、10本の測定値の標準偏差を算出した。この標準偏差の値を熱老化後の機械強度安定性として比較し、値が小さいほど熱老化後の引張強度のばらつきが少なく安定性が優れることを、値が大きいほど熱老化後の機械強度のばらつきが多く安定性が劣ることを示している。
[熱老化後のプレスフィット性]
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+35℃、金型温度:80℃、保圧時間/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:70rpm、射出速度:50mm/秒の条件で射出成形することにより、図1に示す嵌合部を有する成形品を20個得た。なお、図1において、嵌合部を有する成形品1の(A)は断面図、(B)は右側面図を、図2において、嵌合部を有する成形品取付用ステンレスプレートの取付穴2の概略図を示す。図1における嵌合部を有する成形品1の大きさは下記の通りであり、厚み1.5mm以下の部分の体積は成形品全体の体積の10%以上である。A:7.5mm(直径)、B:3.0mm、C:4.0mm、D:11mm、E:1.5mm、F:4.8mm、G:3.4mm、H:3.5mm、I:0.8mm。また、図2における取付穴2の直径Jは3.5mmである。
得られた嵌合部を有する成形品を、175℃の熱風オーブンで500時間熱処理(耐熱老化処理)し、処理後の成形品について、取付用ステンレスプレート(穴直径3.5mm:J)に差し込む操作を行った。この操作を30個の嵌合部を有する成形品に対して行い破損した個数を計数した。破損個数が少ないほど、熱老化後の機械強度に優れており、得られる成形品の熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性に優れることを示している。
[薄肉流動性](厚み0.5mmtバーフロー)
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを、射出成形機(ファナック製ROBOSHOTα−30c)を用いて、シリンダー温度:成分(A)の融点+55℃、金型温度:80℃、射出速度:100mm/sec、最大射出圧:98MPa条件で射出成形することにより、厚さ0.5mm、幅13mmの棒状成形品を成形し、移動距離を測定した。5回の試験における平均値を流動距離とした。流動距離が長いほど、成形時の流動性が優れることを示している。
<参考例>
参考例1(A)−1
70リットルのオートクレーブに、1,6−ヘキサンジアミンとセバシン酸の等モル塩の50質量%水溶液17.6kg、1,6−ヘキサンジアミン63.8gを仕込み、重合槽内を窒素置換した後、220℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで、重合槽内温度を270℃まで昇温させ、槽内圧力を1.7MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて缶内圧力を常圧に戻し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、融点223℃、アミド基濃度7.08mmol/gのポリアミド610樹脂を得た。
参考例2(A)−2
70リットルのオートクレーブに、ドデカンラクタム20kg、水0.5kgと5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン49.3gを仕込み、重合槽内を窒素置換した後、180℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで、重合槽内温度を270℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて缶内圧力を常圧に戻し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、融点179℃、アミド基濃度5.07mmol/gのポリアミド12樹脂を得た。
参考例3(A)−3
デカメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩である1010塩900g、デカメチレンジアミン10重量%水溶液41.4g(1010塩に対して1.00mol%)、次亜リン酸ナトリウム0.4g(生成ポリマー重量に対して0.05重量%)を重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が0.5MPaに到達した後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を0.5MPaで1.5時間保持した。その後10分間かけて缶内圧力を常圧に戻し、更に窒素フロー下で1.5時間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、融点190℃、アミド基濃度5.91mmol/gのポリアミド1010樹脂を得た。
参考例4(B)−2
ポリアミド610樹脂(参考例1)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液21.7重量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度245℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.60重量%のマスターバッチペレットを作製した。
参考例5(D)−1
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、分子量/1分子中の官能基数42)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201)10重量部を予備混合した後、池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、化学式(1)で表される水酸基含有化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は53%、分岐度は0.29、水酸基価は1280mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は3つ以上であった。
参考例6(C)−5
1リットルのオートクレーブに、スチレン―無水マレイン酸共重合体(Polyscope社製“XIBOND140”)200gおよびシクロヘキサノン(関東化学製)130gを仕込み、100℃に加熱した。温度を100℃に維持したまま、生じた混合物にアニリン(東京化成工業製)14gを添加し、160℃で12時間反応させた。反応後、室温に冷却し、固形分を回収し、スチレン―無水マレイン酸−フェニルマレイミド共重合体を得た。得られたスチレン―無水マレイン酸−フェニルマレイミド共重合体の重量平均分子量は180,000、ガラス転移温度は180℃、酸価82mgKOH/g、スチレン構造単位84モル%、無水マレイン酸構造単位8モル%、メチルマレイミド構造単位8モル%であった。
参考例7(C)−6
ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製:“ユピエース” PX−100F)100重量部と無水マレイン酸1.2重量部とラジカル発生剤(“パーヘキシン”25B:日油(株)製)0.1重量部をドライブレンドし、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化して得た。得られた無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度は205℃であった。
その他、本実施例および比較例に用いた成分(A)、(B)、および(D)等は以下の通りである。
(A)−4:融点260℃のポリアミド66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)、アミド基濃度8.84mmol/g
(A)−5:融点225℃のポリアミド6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1017)、アミド基濃度8.84mmol/g
(B)−1:ヨウ化銅(関東化学(株)製)、分子量190.45
(C)−1:エチレン―無水マレイン酸共重合体(ExxonMobile社製“Exxelor VA1803”)、ガラス転移点―59℃、無水マレイン酸構造単位0.7モル%
(C)−2:スチレン―無水マレイン酸共重合体(Polyscope社製“XIBOND140”)、重量平均分子量180,000、ガラス転移点134℃、酸価170mgKOH/g、スチレン構造単位84モル%、無水マレイン酸構造単位16モル%
(C)−3:スチレン―無水マレイン酸共重合体(Polyscope社製“XIBOND180”)、重量平均分子量12,5000、ガラス転移点165℃、酸価320mgKOH/g、スチレン構造単位71モル%、無水マレイン酸構造単位29モル%
(C)−4:スチレン―無水マレイン酸共重合体(Polyscope社製“XIBOND250”)、重量平均分子量10,000、ガラス転移点130℃、酸価285mgKOH/g、スチレン構造単位74モル%、無水マレイン酸構造単位26モル%
(D)−2:ジペンタエリトリトール(Sigma Aldrich社製)、分子量254.28
(E)−1:パルチミン酸カルシウム(関東化学(株)製)、分子量551
(F)−1:次亜リン酸ナトリウム一水和物(和光純薬工業(株))、分子量105.99
(F)−2:塩化リチウム(関東化学(株)製)、分子量42.39
(F)−3:ヨウ化カリウム(和光純薬工業(株)製)、分子量166.00
(実施例1〜25、比較例1〜8)
各表に示す成分(A)、(B)、(C)、および(D)、(E)、(F)を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+25℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。各実施例および比較例の評価結果を表1〜3に示す。
Figure 2020125439
Figure 2020125439
Figure 2020125439
実施例1〜25は、比較例1〜8と比較して、成分(B)と、特定量の成分(C)を含有することで、ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度変化量ΔTmcが本願規定の領域に制御され、得られる成形品の熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性が優れることがわかった。これは、成分(B)と成分(C)がポリアミド樹脂組成物の結晶化を抑制しつつも、分子運動性を確保できていることに由来する。成分(B)を適量とする、または、成分(E)に含まれるカルシウム元素および/またはアルミニウム元素を成分(B)の銅元素量に対して重量比率((E)/(B)比)を0.01以上0.4以下で含有することで、各成分の相溶性、分散性が向上されるため、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品の熱老化後の機械強度のばらつきも低減することがわかった。
実施例2は、実施例5と比較して、得られる成形品の熱老化後の機械強度、熱老化後のプレスフィット性が優れることがわかった。この理由について詳しくは判明していないが、実施例5では、成分(C)の酸無水物由来の構造単位が末端に多く存在しているため、成分(A)主鎖と成分(C)主鎖が鎖延長されるのに対し、実施例2では、成分(C)の酸無水物由来の構造単位が成分(C)主鎖全体に存在しており、成分(A)が成分(C)の側鎖にグラフト様に分岐構造を形成することにより、ポリアミド樹脂組成物の結晶化を抑制しつつも、分子運動性を確保できているためと考えられる。
実施例24、25は、実施例2、23と比較して、薄肉流動性が向上していることがわかった。このメカニズムは詳しくは判明していないが、成分(C)が、成分(C−a)および成分(C−b)以外により剛直なマレイミド由来の構造単位を含むことにより、より少ない架橋点で熱老化後のプレスフィット性を発現させることができるため、流動性を向上させることが出来ると考えられる。
1 嵌合部を有する成形品
2 取付穴

Claims (8)

  1. 下記成分(A)、(B)、および(C)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、下記成分(A)の100重量部に対して下記成分(C)が0.01〜3.0重量部であり、前記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる1mm厚の成形品の180℃・375時間加熱前後の降温結晶化温度変化量ΔTmcが4℃以上16℃以下であるポリアミド樹脂組成物。
    成分(A):ポリアミド樹脂
    成分(B):銅および/または銅化合物
    成分(C):酸無水物由来の構造単位を有する樹脂
    ΔTmc= Tmc −Tmc加熱後
    (Tmc:未加熱の1mm厚成形品における降温結晶化温度、Tmc加熱後:180℃で375時間加熱した1mm厚成形品における降温結晶化温度)
  2. 前記成分(A)に対して、前記成分(B)に含まれる銅元素の重量割合が250ppm以上500ppm以下である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記成分(C)が、100℃以上200℃以下のガラス転移点を有する樹脂である、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記成分(C)が、成分(C)の構造単位の全量100モル%に対して、酸無水物由来の構造単位を1モル%以上80モル%以下含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記成分(C)の重量平均分子量と酸価の比(重量平均分子量/酸価)が、30〜3000の範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記成分(A)100重量部に対して、下記成分(D)を0.1重量部以上2.0重量部未満含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
    成分(D):1分子中に少なくとも3つの水酸基を有する化合物
  7. 下記成分(E)を含有し、前記成分(B)に含まれる銅元素に対する下記成分(E)に含まれるカルシウム元素およびアルミニウム元素の重量比率((E)/(B)比)が0.01以上0.4以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
    成分(E):カルシウムおよび/またはアルミニウムを含む化合物
  8. 前記成分(C)が、下記化学式(1)で表される構造単位、および酸無水物由来の構造単位を含む共重合樹脂であり、さらに、前記共重合樹脂における各構造単位の割合が、下記化学式(1)で表される構造単位:20モル%以上99モル%以下であり、酸無水物由来の構造単位:1モル%以上80モル%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
    Figure 2020125439

    (式中、Rは炭素原子1〜8個有するアルキル基または水素原子であり、Rは炭素原子1〜8個を有するアルキル基を表し、かつnは0、1、2もしくは3の値を有する。)
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