JP2020124323A - 微細径繊維を用いた防滑履物底 - Google Patents

微細径繊維を用いた防滑履物底 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維を含む履物底において、平均繊維直径の異なる少なくとも2種類以上の繊維の相乗効果によって、雪氷面や濡れた研磨仕上石材のような滑りやすい路面において、防滑性と耐久性に優れた履物底を提供することを目的とする。【解決手段】ゴムまたは弾性合成樹脂のマトリックスM中に第一繊維F1および第二繊維F2を含む防滑履物底であって、平均第一繊維直径dF1が5μm〜600μmであり、平均第二繊維直径dF2が5nm〜5000nm(すなわち5μm)かつ前記平均第一繊維直径dF1の半分以下(dF2≦(dF1/2))であり、前記第一繊維F1の少なくとも先端一部および前記第二繊維F2の少なくとも先端一部がマトリックス表面Sに露出し、前記マトリックス表面Sにおいて前記第一繊維F1の凹凸および前記第二繊維F2の凹凸を形成した構造であることを特徴とする、防滑履物底。【選択図】図1

Description

本発明は、氷面や圧雪面に加え、濡れた研磨仕上石材のような滑りやすい路面に対しても耐久防滑効果のある、防滑履物底に関する。
従来、雪氷面での防滑性を有するゴム組成物として、セラミック粒子を含有したものや、クルミ殻や籾殻などの植物性粒子を含有したものなどの各種の防滑履物底が提案されている。
特許文献1には、ゴム又は合成樹脂のマトリックスにガラス繊維を混合し、ガラス繊維の先端をマトリックスの表面から突出させた防滑履物底が開示されている。この履物底は、表面に突出したガラス繊維の一本一本が雪氷面をひっかくことによって、防滑性を発揮する。ここでは、高弾性率の繊維により床面などを疵つける危険から、繊維直径は0.1mm以下と上限が示されている。また、実施例として第4図Bには、繊維径が5μm未満に見えるアルミナ繊維を用いた電子顕微鏡写真も示されている。しかしながら、防滑性を実現するよう繊維密度を上げる(引張弾性率E[kgf/mm]、直径d[mm]の時、1mm当たり1×10/(E・d)本以上の平均密度を満たす)には繊維径が細いほど添加量を増す必要があり、汎用ではなく比較的高価な極細繊維の使用は、コスト面から現実的ではなかった。また、繊維径が特に細い場合や、繊維径の組み合わせによる防滑性の違いは明らかではない。
また特許文献2には、ゴムや合成樹脂のマトリックス中に、非親水処理した天然植物繊維を含有し、当該天然植物繊維が履物底の表面に露出した防滑履物底が開示されている。特許文献2の発明は、防滑履物底に天然植物繊維をそのまま使用すると、天然植物繊維の有する親水性や吸水性ゆえに、弾性、ゴム成分との接着性、耐久性等が不十分であるという課題に対して、天然植物繊維をフェノールやイソシアネート等で処理することによって非親水化し、耐久性を向上させたものである。
特許文献1,2のようにガラス繊維や天然植物繊維を用いた靴底は、雪面を歩行する時に靴底に雪が付着してしまうことがあった。靴底に雪が付着すると、表面から突出した繊維が雪に覆われて雪氷面に接触しなくなるため、防滑性が発揮されない。
一方、濡れた路面や凍結面など、靴底と地面との接触面に水膜が介在する場合に滑りが生じ易くなることに着目し、水膜の形成を抑制するために、靴底等の表面に撥水性を付与することが提案されている(特許文献3、特許文献4)。
特許文献3には、弾性を有する樹脂と無機充填剤とを含む弾性体組成物において、弾性樹脂から露出した無機充填剤の表面に、撥水性被膜形成分子を共有結合させて、撥水性単分子膜を形成することが開示されている。その無機充填剤としてシリカ粒子以外に、脱落を防ぐため繊維状のガラス等無機酸化物が挙げられ、ミクロンレベルからナノレベルのフィラメントが良いとされている。この実施例には、ガラス繊維を含むゴムタイヤの表面に撥水剤を処理することによって、タイヤ表面の水に対する接触角が向上したことが示されている。しかしながら、タイヤの防滑性については開示されておらず、ガラス繊維の太さが極細のナノレベルまで開示されていても、その細さによる撥水性や防滑性の違いは明らかではない。
また特許文献4には、ゴム又は弾性合成樹脂を含む母材と、ガラス繊維と、合成樹脂繊維とを含む弾性複合材料であって、合成樹脂繊維はガラス繊維よりも撥水性が高く、ガラス繊維および合成樹脂繊維の少なくとも一部が母材の表面から突出している弾性複合材料が開示されている。この実施例には、一本の糸にガラス繊維とポリプロピレン繊維とが含有されている混繊糸(コミングルヤーン)を用い、ガラス繊維の表面にシランカップリング剤により撥水性被膜を形成することによって、動的撥水性が高く水膜が形成されにくく、氷上防滑性が向上したことが示されている。しかしながら、ガラス繊維表面の撥水性被膜や合成樹脂繊維自身の撥水性によるものであり、その細さが撥水性や防滑性へ与える影響は明らかではない。
ところで非特許文献1のように、近年、生体のもつ優れた機能や形状を模倣し、高性能な材料開発へ活用する生体・生物模倣技術(バイオミメティクス)の研究がおこなわれている。中でも超撥水性を示す表面として、表面の微細凹凸構造による撥水効果が知られている。例えば、ハスやサトイモの葉に代表されるような、表面が僅かに傾くだけで水滴が滑り落ちるもの(いわゆる「ロータス効果」)や、バラの花びらに代表されるような、表面を90°に傾けても水滴が落ちないほど強い吸着力を持ったもの(いわゆる「ペタル効果」)が挙げられる。また、ヤモリが垂直な壁を登り天井を這うことが可能な指の接着力は、その指先に密集した階層構造を持つ微細な剛毛表面と壁に働くファンデアワールス力に起因するとされている。
特許文献5には、樹脂成形体表面の撥水性を高めるためにロータス効果を利用した微細構造が優れているとして、その製造方法が提案されている。
ここで特許文献6には、熱可塑性樹脂、平均繊維径が1〜7μmで混練前の繊維長が300〜1000μmのガラス短繊維、及び平均繊維径が7〜20μmの繊維状の補強材を含む複合形成材料が開示されている。径の異なる繊維状の補強材を用い、その一方は1〜7μmと細いガラス短繊維であるが、あくまで射出成型品の補強に関するものであり、成型品の表面状態は荒くなく平滑で均質な方が良いとされ、その表面構造による撥水性や防滑性は明らかではない。
実開昭62−21905号公報 特開2008−188220号公報 特開2010−229180号公報 特開2015−172157号公報 特開2012−66417号公報 特開2014−201712号公報
下村政嗣,「生物の多様性に学ぶ 新世代バイオミメティック材料技術の新潮流」,科学技術動向 2010年5月号,科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター,第10巻,第5号,p.9−28
本発明はこのような事情に鑑み、繊維を含む履物底において、平均繊維直径の異なる少なくとも2種類以上の繊維の相乗効果によって、雪氷面や濡れた研磨仕上石材のような滑りやすい路面において、防滑性と耐久性に優れた履物底を提供することを目的とする。
本発明者らはまず、平均繊維直径が5μm以下の微細径繊維を用いることにより、履物底表面Sに微細凹凸構造を持たせ、ロータス効果やペタル効果のような物理的撥水効果を利用して撥水性を発現できるのではないかと考え、鋭意研究をおこなった。しかし、撥水性には有意差が得られないながら、繊維直径が細いほど繊維の風合いがしなやかとなる特徴により、防滑性の大きな向上を見出した。
すなわち、本発明に係る防滑履物底は、ゴムまたは弾性合成樹脂のマトリックスM中に第一繊維F1および第二繊維F2を含む防滑履物底であって、前記第一繊維F1の平均第一繊維直径dF1が5μm〜600μmであり、前記第二繊維F2の平均第二繊維直径dF2が5nm〜5000nm(すなわち5μm)かつ前記平均第一繊維直径dF1の半分以下(dF2≦(dF1/2))であり、前記第一繊維F1の少なくとも先端一部および前記第二繊維F2の少なくとも先端一部がマトリックス表面Sに露出し、前記マトリックス表面Sにおいて前記第一繊維F1の凹凸および前記第二繊維F2の凹凸を形成した構造である。
ここで、X〜Yで示した範囲はX以上Y以下であることを示し、これ以降も同様である。
また、本発明に係る防滑履物底は必要に応じて、前記第一繊維F1の少なくとも一種の第一繊維引張弾性率EF1が1×10kgf/mm以上である。
また、本発明に係る防滑履物底は必要に応じて、前記第二繊維F2の少なくとも一種の第二繊維引張弾性率EF2が1×10kgf/mm以上である。
また、本発明に係る防滑履物底は必要に応じて、前記第一繊維F1の少なくとも先端一部および前記第二繊維F2の少なくとも先端一部が、前記マトリックス表面Sに対して略垂直方向へ突出している。
また、本発明に係る防滑履物底は必要に応じて、前記マトリックス表面Sに露出した第二繊維突出長さLF2が、第一繊維突出長さLF1よりも短くかつ2dF2〜500μmである。
本発明の防滑履物底は、第一繊維F1の少なくとも先端一部に加えて第二繊維F2の少なくとも先端一部がマトリックス表面Sに露出し、マトリックス表面Sにおいて第一繊維F1の凹凸および第二繊維F2の凹凸を形成した構造により、従来の平均繊維直径が大きい第一繊維F1のみを配合した防滑履物底よりも防滑効果が得られ、雪氷面上や濡れた研磨仕上石材のような滑りやすい路面で滑りにくく、より安全に歩行可能な防滑性履物が得られる。これは、第一繊維F1および第二繊維F2という平均繊維直径(dF1、dF2)の異なる2種類の繊維の相乗効果によって、主に第一繊維F1で路面をひっかいて防滑効果を得るとともに十分な耐久性を実現し、平均第二繊維直径dF2が5nm〜5000nm(すなわち5μm)かつ平均第一繊維直径dF1の半分以下(dF2≦(dF1/2))である微細な第二繊維F2の柔軟性により、履物底の硬さ上昇を抑え防滑性低下の要因を減少したうえで第二繊維F2のひっかき効果も得て、防滑性が向上すると考えられる。
また、第一繊維F1の少なくとも一種の第一繊維引張弾性率EF1が1×10kgf/mm以上であることにより、または、第二繊維F2の少なくとも一種の第二繊維引張弾性率EF2が1×10kgf/mm以上であることにより、曲げ剛性による高いひっかき効果が持続するため、より耐久性の高い防滑性が得られる。
また、第一繊維F1の少なくとも先端一部および第二繊維F2の少なくとも先端一部が略垂直方向へ突出していることにより、繊維が路面をひっかくことによる防滑性をより効果的に得られる。
また、第二繊維F2突出長さLF2が、第一繊維F1突出長さLF1よりも短くかつ2dF2〜500μmであることにより、歩行する際には突出した繊維が路面をひっかいて防滑効果を得られるとともに、外力を第一繊維F1部分で支えて耐久性を確保できるため、第二繊維F2による防滑性が持続する。
本発明における履物底表面Sの構造を示した模式図である。 弾性曲線方程式を説明するための、いわゆる片持ち梁の模式図である。 (a)は本発明の実施例2における履物底表面Sの走査電子顕微鏡写真、(b)はそのさらに拡大した走査電子顕微鏡写真である。 本発明の比較例1における履物底表面Sの走査電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例5における履物底表面SのEPMA画像写真である。
以下、本発明の防滑履物底について、その実施形態を例示しつつ説明する。
<マトリックスM>
防滑履物底のマトリックスMは、ゴムまたは弾性合成樹脂を含み、ゴムまたは弾性合成樹脂を主成分とする材料である。ゴムとしては例えば、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴムなどの非ジエン系ゴムが挙げられ、これらのいずれかを単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。弾性合成樹脂としては、熱可塑性エラストマーと称される樹脂が挙げられ、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ウレタンエラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーなどが挙げられ、これらのいずれかを単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。マトリックスMは、求める物性などによって適宜選択すれば良いが、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴムやそれらを互いに配合させたゴムなどが好適に用いられる。
マトリックスMであるゴムや弾性合成樹脂には任意の添加剤などを含んで良く、添加剤としては例えば、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、シリカ(ホワイトカーボン)、カーボンブラックなどの粒子状充填剤や、シランカップリング剤、硫黄、可塑剤、着色剤、軟化剤、硬化剤、劣化防止剤などが挙げられる。
<第一繊維F1>
第一繊維F1としては、天然由来有機繊維、合成有機繊維、非金属無機繊維、金属繊維などの公知の繊維を使用できる。その平均第一繊維直径dF1は5μm〜600μmである。天然由来有機繊維としては、例えば、特許文献2に記載されたような非親水処理した天然植物繊維が好ましく、特にフェノール処理した竹繊維が好ましい。合成有機繊維としては、例えば、セルロース系再生繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリルニトリル繊維、ポリプロピレン繊維、フッ素繊維、ポリブチレンサクシネート繊維、ポリ乳酸繊維、芳香族アミド繊維(ポリアミド繊維に含まれる)、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維などが挙げられる。非金属無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、ホイスカー(単結晶繊維)などの人造鉱物繊維、ウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイトのような天然鉱物繊維、炭素繊維などが挙げられる。ただし、これらの例示中には、本来なら第二繊維F2としてしか適さない一般的には5μm未満の繊維を含む場合もある。これらのいずれかを単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
前記平均第一繊維直径dF1が5μm未満ではひっかき効果が不足し、dF1が600μmより大きいとマトリックスMへの分散がうまくいかず、成形底の物性が低下する。非親水処理した天然植物繊維の場合を除き、dF1は100μm以下が好ましい。
前記第一繊維F1の第一繊維引張弾性率EF1は、1×10kgf/mm以上が好ましい。中でも非金属無機繊維が好ましく、繊維状補強材として汎用のガラス繊維や炭素繊維がより好ましい。一般的には引張弾性率が高いと曲げ弾性率も高い当方性材料と考えられ、EF1が1×10kgf/mm以上であれば、第一繊維F1の曲げ剛性による高いひっかき効果が持続するため、より耐久性の高い防滑性が得られる。脆性破壊となるガラス繊維や炭素繊維などの非金属無機繊維は、マトリックスMとの混練時には繊維が適度に折れていくため、混練加工性が良い利点もある。
前記第一繊維F1は、特許文献1に記載されたように、ゴムまたは弾性合成樹脂のマトリックスMに第一繊維F1を含有せしめた試料をアクロン摩耗試験機にかけて荷重2.72kg、傾角15°で1000回転したとき、マトリックス表面Sから突出している繊維に曲がりや繊維先端部の変形が生じないような繊維を使用するのが好ましい。それによって、履用による防滑性の低下をなくし、持続的な防滑効果を持つ。この観点から、有機繊維の中で繊維自体の耐摩耗性が低くフィブリル化していくような繊維は、好ましくない。
前記第一繊維F1がガラス繊維の場合、一般的に樹脂補強用として市販されているチョップドストランドが好ましい。チョップドストランドとは、平均繊維直径が数μmから数十μm程度の太さに成形されたガラス繊維を、収束剤により束ねて所定の長さに切断したものである。
前記第一繊維F1の配合量は、マトリックスM100重量部に対して5〜100重量部が好ましい。配合量が5重量部未満では、マトリックス表面Sにおける露出が少なくひっかき効果や摩擦による防滑性が不足し、100重量部を超えると混練や圧延時の加工性が悪くなる上、成形底の物性が低下する。
<第二繊維F2>
第二繊維F2としても、第一繊維F1と同様に天然由来有機繊維、合成有機繊維、非金属無機繊維、金属繊維などの公知の繊維を使用できる。その平均第二繊維直径dF2は5nm〜5000nm(すなわち5μm)かつ平均第一繊維直径dF1の半分以下(dF2≦(dF1/2))である。天然由来有機繊維としては、例えば、セルロースナノファイバー、キチン・キトサンナノファイバー、バクテリアセルロースなどが挙げられる。合成有機繊維や非金属無機繊維としては第一繊維F1同様の例が挙げられ、炭素繊維にはカーボンナノファイバーやカーボンナノチューブを含む。これらのいずれかを単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
前記平均第二繊維直径dF2が5nm未満では、繊維が凝集したまま分散しにくく、微細径繊維を使用する効果が得にくい。dF2が5000nm(すなわち5μm)より大きいと、第二繊維F2として区別する意味がなく第一繊維F1となってしまう。
文献(藤田利仁、向井洋二,「極細ガラス長繊維」,繊維学会誌,社団法人繊維学会,1988年7月10日,44巻,7号,p.241−244)によると、円棒を折り曲げて破壊するときの曲率半径ρは次式のように表すことができる。
ρ=E・d/2σ
ここで、σ:破壊応力、E:弾性率、d:棒の直径を表す。
すなわち、E/σを一定とすれば、破壊時の曲率半径は棒の直径に比例し、繊維材料においては、単繊維直径が小さいほど屈曲性が高いことを示している。そのため、弾性率の高い繊維であっても、極細(ガラス)繊維は、径の大きな同弾性率の(ガラス)繊維に比べ屈曲摩耗性が優れ、風合いがしなやかとなる、とされている。
第二繊維F2により、雪氷面上や濡れた研磨仕上石材のような滑りやすい路面での防滑性が向上する理由は、明確には判らないが、本発明者らは、次のように推定している。
平均第一繊維直径dF1がより大きい第一繊維F1の添加量を増し、マトリックス表面Sから突出する第一繊維F1の平均密度を上げて(例えば1mm当たり1×10/(EF1・dF1)本以上として)防滑性を向上しようとしても、前述のように加工性や物性が低下する場合がある。例えば、ゴムまたは弾性合成樹脂へ短繊維を含有させると一般的にその硬さが上昇するため、繊維を添加した履物底は硬くなり、マトリックスMの持つ弾性が損なわれてしまう。しかし、第二繊維F2のように平均第二繊維直径dF2がより細いと、繊維の屈曲性が高まり風合いがしなやかとなることも一因で、履物底の硬さ上昇は抑えられる。それにより、路面凹凸への密着低下のような防滑性低下の要因を減少できる。しかし第二繊維F2だけでは、しなやかとなる分ひっかき効果が低く、第一繊維F1と組み合わせて使用することで、主に第一繊維F1で路面をひっかいて防滑効果を得るとともに十分な耐久性を実現できる。また、dF2≦(dF1/2)であるため、第一繊維F1と第二繊維F2の繊維直径差による屈曲性の差が効果的に現れる。これは、段落0045で後述する弾性曲線方程式からも分かる。
また、dF2が5nm〜5000nm(すなわち5μm)かつdF2≦(dF1/2)であると、マトリックス表面Sにおいて第一繊維F1の凹凸周囲に第二繊維F2の微細な凹凸を形成できる。この微細な凹凸構造により、ヤモリの指の接着力のように、ファンデルワールス力(分子間力)の集積を用いた物理吸着も加わって、防滑性が向上している可能性さえも考えられる。
前記第二繊維F2の配合量は、マトリックスM100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。配合量が0.1重量部未満では、マトリックス表面Sにおける露出が少なく防滑性向上はほとんど得られない。また、細さゆえに比較的高価であることが多い第二繊維F2は、配合量が増しても防滑性の向上が頭打ちになるだけでなく低下する場合さえあり、10重量部を超えても性能向上がほとんど期待しにくい。第二繊維F2はdF2が5nm〜5000nm(すなわち5μm)と細いため、単位重量あたりの繊維本数は多く、少量添加でもより高い繊維密度を得られる。
前記第二繊維F2の第二繊維引張弾性率EF2も、第一繊維F1と同様に1×10kgf/mm以上が好ましく、パラ系芳香族アミド繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維などの合成有機繊維や、非金属無機繊維、金属繊維などが挙げられる。中でも非金属無機繊維が好ましく、ガラス繊維やホイスカー(単結晶繊維)類がより好ましい。EF2が1×10kgf/mm以上であれば、第一繊維F1だけでなく第二繊維F2でも曲げ剛性によるひっかき効果での防滑性向上が得られるとともに、耐久性がより高くなると考えられる。また、繊維直径が細くなると屈曲性が高くしなやかになるため、より細い第二繊維F2でもひっかき効果を得るには、EF2が(すなわち曲げ弾性率も)高いと良い。第二繊維F2においても、脆性破壊となる非金属無機繊維は、混練加工性が良い利点もある。また、非金属無機繊維に含まれるホイスカー(単結晶繊維)類も針状または短い繊維状結晶なので、混練加工性は良い。
前記第二繊維F2のガラス繊維としては、dF2が5nm〜5000nm(すなわち5μm)であれば公知のガラス繊維を使用できる。近年では従来の樹脂補強用よりも繊維直径の細いガラス繊維として、特に断熱・吸音・フィルター用途などで高性能化のために極細ガラスウール短繊維が開発されており、それらが好ましい。また、前述の文献「極細ガラス長繊維」に記載されたような長繊維であっても良い。
第一繊維F1および第二繊維F2は、特に表面処理をせずに使用できるが、非金属無機繊維の場合は有機材料であるマトリックスMとの接着性を向上させるため、繊維表面にシランカップリング剤を処理することが好ましい。シランカップリング剤としては、公知の各種アルコキシシラン化合物をマトリックスMとの接着性などを考慮して適宜選択できる。他にも、HRH系処理やRFL系処理と呼ばれる接着処理を使用する場合がある。
本発明の防滑履物底において、第一繊維F1の少なくとも先端一部および第二繊維F2の少なくとも先端一部は、マトリックス表面Sに対して傾斜して突出していても略垂直方向へ突出していても良く、傾斜方向は一定方向に配向していてもランダムであっても良い。なお、繊維の方向が一定であってもランダムであっても、突出した繊維がマトリックス表面Sに対してなす最小角度θは10°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、略垂直(すなわち約90°)が最も好ましい。略垂直であれば、繊維が路面をひっかくことによる防滑性をより効果的に得られる。突出した繊維の全てが略垂直方向に配向していることが好ましいが、一部が略垂直方向へ突出していても良い。
マトリックス表面Sに露出した繊維の突出長さは任意であり、突出長さとは、マトリックス表面Sに対する垂直方向高さではなく、繊維軸方向の長さである。第一繊維突出長さLF1は、例えば1μm〜500μmが好ましく、3μm〜200μmがより好ましく、5μm〜100μmが特に好ましい。突出部をこの範囲の長さとすることで、歩行する際には突出した繊維が適度にたわみながら路面をひっかいて防滑効果を得られるとともに、十分な耐久性が得られると考えられる。ここで、LF1が500μmより長くなることは、dF1も大きな非親水処理した天然植物繊維の場合を除き、本発明者らの経験上から現実的に考えにくい。また、第二繊維突出長さLF2は第一繊維突出長さLF1よりも短いこと(LF2<LF1)が好ましい。ただし、一部にLF1≦LF2となる第一繊維F1があって良い。これは、第一繊維F1が第二繊維F2よりも突出していることで、外力を第一繊維F1部分で支えて耐久性を確保できるため、第二繊維F2による防滑性が持続すると考えられるからである。さらには、LF2は1μm未満で構わないが、2dF2以上が好ましい。このアスペクト比dF2:LF2=1:2以上となる第二繊維突出長さLF2により、他添加剤の粒子状充填剤とは異なる異方性を持った表面凹凸構造となり、繊維のたわみが生じると考えられる。
ここでは、第二繊維F2突出長さLF2(表面凹凸構造)の異方性のみに触れたが、第一繊維F1および第二繊維F2は、繊維自体の線状異方性によりマトリックスMへの埋没部分が深いため、粒子状充填剤よりも脱落に対する耐久性が高いのは当然である。
弾性曲線方程式によると、図2に示した片持ち梁のたわみ量δは次式で表される。
δ=PL/3EI
ここで、P:荷重、L:部材長さ、E:ヤング率(縦弾性係数、引張弾性率)、I:断面二次モーメントを表し、EI:曲げ剛性である。
また、断面が円形(円柱状)の部材であれば、断面二次モーメントIは次式で表される。
I=πd/64
ここで、d:円の直径、π:円周率を表す。
したがって、たわみ量δは次式のように、第一繊維F1および第二繊維F2のヤング率(すなわち引張弾性率:EF1、EF2)に反比例するのはもちろん、突出長さ(LF1、LF2)の3乗に比例し、直径(dF1、dF2)の4乗に反比例する。
δ=64PL/3πEd
このような累乗を含む複雑な変数によるたわみ量を示すため、第一繊維F1と第二繊維F2の繊維直径差だけでなく突出長さの差も加わり、第一繊維F1と第二繊維F2のひっかき効果は複雑に作用し、微細な第二繊維F2との組み合わせによる効果が生じると考えられる。
<履物底材料の製造方法>
本発明の履物底材料の製造方法は特に制限されず、公知の方法に従って、または公知の方法を一部修正して製造できる。例えば、次の方法が挙げられる。
[方法1]:マトリックス表面Sに対して繊維が略垂直方向へ配向
(1)マトリックスMに第一繊維F1および第二繊維F2、硫黄や添加剤などの成分を添加してロールまたはニーダーなどにより混練し、繊維入りゴム生地を得る。
(2)当該ゴム生地を圧延することによって、繊維が圧延方向に配向した圧延ゴム生地を得る。
(3)当該圧延ゴム生地を裁断し、互いの圧延方向を平行に積層する。
(4)当該積層した圧延ゴム生地を圧延方向と直交方向かつ積層面と直交方向に裁断する。これにより、裁断面に繊維が略垂直方向へ配向した未加硫ゴム材料を得る。
(5)当該裁断積層材料をモールドで熱プレスによって加硫一体化することで、履物底材料を得る。
(6)当該履物底材料の表面は熱プレスによりゴム層が形成されているため、続いてグラインダーを用いて履物底材料の片面を擦過することによって、マトリックスMの表層を削り取り、履物底表面Sに第一繊維F1および第二繊維F2を露出させる。
別の製造方法として、次の方法がある。[方法2]または[方法3]は繊維が一定方向に傾斜しており、傾斜方向に動かしたときの防滑性がその逆方向に動かしたときの防滑性よりも優れ、防滑性に方向性が出てくる。そのため、目的に応じて傾斜方向を特定方向に配置することで、防滑方向性をコントロールできる。[方法4]はその応用例である。[方法2]ないし[方法4]に関して、未加硫ゴム材料ながら裁断ロスはより多くなってしまう。
[方法2]:マトリックス表面Sに対して繊維が傾斜角度θで配向
前記(4)の工程に替わり、積層した圧延ゴム生地は、圧延方向と直交方向かつ積層面に対する傾斜角度θをつけて裁断する。これにより、裁断面に繊維が傾斜角度θで配向した未加硫ゴム材料を得る。他工程は同様に行う。
[方法3]:マトリックス表面Sに対して繊維が傾斜角度θで配向
前記(4)の工程に替わり、積層した圧延ゴム生地は、積層面と直交方向かつ圧延方向に対する傾斜角度θをつけて裁断する。これにより、裁断面に繊維が傾斜角度θで配向した未加硫ゴム材料を得る。他工程は同様に行う。
[方法4]:マトリックス表面Sに対して繊維がランダムに傾斜
前記(3)の工程に替わり、裁断した圧延ゴム生地は、互いの層が圧延方向の角度をずらすように回転させて積層する。前記(4)の工程に替わり、積層した圧延ゴム生地は、積層面と直交方向に(圧延方向に対しては任意方向に)裁断する。これにより、裁断面に繊維が各層間ではランダムかつ各層内では一定方向に傾斜した未加硫ゴム材料を得る。他工程は同様に行う。
[方法5]:マトリックス表面Sに対して繊維が略水平方向へ配向
前記(3)および(4)の工程は省略し、前記(5)の工程に替わり、繊維が圧延方向に配向した圧延ゴム生地を、圧延方法と平行なままモールドで熱プレスによって加硫一体化する。これにより、表面に繊維が略水平方向へ配向した履物底材料を得る。他工程は同様に行う。
ゴムまたは弾性合成樹脂のマトリックスMに繊維を混練してコンパウンドにするとき、繊維長が大きいとコンパウンドが硬くなり、繊維が絡み合ったりして操作性が悪い。しかし、ガラス繊維や炭素繊維のような非金属無機繊維の場合は脆性で折れやすく、ロールまたはニーダーなどによる材料混練時に、ゴム生地の粘弾性力とせん断力により繊維長1mm以下にせん断され、ほぼ均等に分散される。合成有機繊維で破断していかないほどに高強度な繊維などは、材料混練時に混合しやすいように3mm以下の短繊維として使用すると良い。
次に、本発明の実施例を各配合と各実験データの表1または表2、および図3ないし図5に基づいて詳しく説明する。
<実施例及び比較例の作製>
[材料]
マトリックスM;原料ゴム(天然ゴム/油展スチレンブタジエンゴム=60/油分除き40)。
第一繊維F1;平均繊維直径13μmのガラス繊維チョップドストランド(以下、GF13μと記すことがある。)、平均繊維直径23μmのガラス繊維チョップドストランド(以下、GF23μと記すことがある。)を一定比1:1で混合した。
第二繊維F2;平均繊維直径0.6μmのガラスウール繊維(以下、GW0.6μと記すことがある。)、または平均繊維直径3.5μmのガラスウール繊維(以下、GW3.5μと記すことがある。)。
[比較例1、比較例1’]
従来の繊維直径が大きい第一繊維F1のみを添加した配合として、一定比1:1のGF13μ+GF23μのみを30重量部添加した。
[実施例1−3]
第一繊維F1としてGF13μ+GF23μを30重量部に加え、第二繊維F2としてGW0.6μを添加し、添加量を0.5重量部から3.0重量部の間で変量した。
[比較例2]
従来の繊維直径が大きい第一繊維F1は添加せず、第二繊維F2としてGW0.6μのみを3.0重量部添加した。
[実施例4−6]
第一繊維F1としてGF13μ+GF23μを30重量部に加え、第二繊維F2としてGW3.5μを添加し、添加量を0.5重量部から3.0重量部の間で変量した。
[比較例3]
第一繊維F1および第二繊維F2のいずれも添加しなかった。
[比較例4−5]
従来の繊維直径が大きい第一繊維F1は添加せず、第二繊維F2としてGW3.5μのみを添加し、添加量を15重量部と30重量部で変量した。
[作製方法]
次の方法に従って履物底材料を作製した。
(1)原料ゴム100部に、第一繊維F1および/または第二繊維F2、その他の添加剤(ただし、オイルの多くは油展ゴム中含有)を表1および表2に示す量添加し、ロール混練によって繊維入りゴム生地を得た。この時、第一繊維F1および/または第二繊維F2はゴム生地の粘弾性力とせん断力によりせん断され、ほぼ均等に分散されて混練性は全く問題なかった。
(2)繊維入りゴム生地を圧延、裁断し、互いの圧延方向を平行に積層した。
(3)積層した繊維入りゴム生地を、圧延方向と直交方向かつ積層面と直交方向に裁断し、裁断した積層体をモールドで熱プレスによって加硫一体化し、繊維入り加硫ゴムを得た。
(4)繊維入り加硫ゴムの一面をグラインダーで鋤き、加硫ゴムの表層を除去することによって、繊維が履物底表面Sに露出した履物底材料を得た。
<走査電子顕微鏡写真>
実施例2(GF+GW0.6μ:1.5重量部)および比較例1(GFのみ)において、履物底表面Sの走査電子顕微鏡写真を撮影した。その結果を図3および図4に示す。
なお、図3および図4において、履物底表面Sに第一繊維F1または第二繊維F2以外の粒子による凹凸も見られるが、ホワイトカーボンの凝集体などの可能性が考えられる。これらは粒子状で、アスペクト比1:2以上となるような異方性はない。
<EPMA画像写真>
実施例5(GF+GW3.5μ:1.5重量部)において、EPMAにより履物底表面Sの立体画像写真を撮影した。その結果を図5に示す。
図3(実施例2)および図5(実施例5)より、履物底材料は、第一繊維F1の先端一部および第二繊維F2の先端一部が履物底表面Sに露出し、第一繊維F1の凹凸および第二繊維F2の凹凸を形成した構造と分かる。また、第一繊維F1の先端および第二繊維F2の先端は、履物底表面Sに対して一部が傾斜しているものの、多くが略垂直方向へ突出していることが分かる。さらに、第二繊維突出長さLF2は、主な第一繊維突出長さLF1よりも短く、2dF2以上(アスペクト比dF2:LF2=1:2以上)と分かる。
<防滑性試験>
防滑性は、防滑性試験による滑り抵抗係数および官能試験により評価した。その結果も表1および表2に示す。なお、一連の履物底材料作製と一連の防滑性試験は、表1と表2において別々におこなっている。
防滑性試験は、JIS A 1454:2016「高分子系張り床材試験方法」に規定される「17 滑り性試験」に準拠して実施した。被試験片である「滑り片材料」は、表1および表2記載の配合で作製した履物底材料を用いた。床面として表1では「ウエットの氷」、表2では「ウエットの氷」および「ウエットの研磨仕上大理石」について評価した。
滑り抵抗係数は、C.S.R値で示される。C.S.R値は、下記式による。
C.S.R=Pmax/W
Pmax:最大引張力(N)
W:鉛直力(N)=785N
C.S.R値として「東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル」(平成21年版)では、建築物の床材のすべり評価指標としてC.S.Rを用いるよう求めており、誘導基準として靴を履いて歩行するところは「C.S.R=0.4〜0.9」の値としている。
また、同履物底材料の靴を用いて北海道札幌市(外気温度0℃)での氷上路面における官能防滑評価をおこなった。その結果は、滑ってしまうものを×、問題ない防滑性能を示すものを○、優れた防滑性能を示すものを◎で表した。
<硬さ測定>
ゴム硬さは、JIS K 6253:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方−」に準拠して、以下の方法で測定した。
試験機はタイプAデュロメータを用いて、厚さ6mm以上の試験片に、押針が試験片測定面に垂直になるように加圧板を接触させ、試験片に9.81Nの荷重で押針を押し付けた後、すぐさま目盛りを読み取った。
表1より、「ウエットの氷」における防滑性の結果を比較する。第一繊維F1に加え第二繊維F2としてGW0.6μを添加した実施例1(0.5重量部)、実施例2(1.5重量部)、実施例3(3.0重量部)では、第二繊維F2添加せずに第一繊維F1のみ添加した比較例1よりもC.S.R値が高くなった。また、実施例1、実施例2とGW0.6μの添加量が増加するにつれて、C.S.R値が上昇する傾向が見られたが、実施例3のようにさらにGW0.6μの添加量が増加しても、C.S.R値の上昇が抑制された。このように今回の実施例においては、使用繊維同士の相互作用もあり、GW0.6μの添加量が0.5〜3.0重量部の間に防滑性の変曲点がありそうだと分かった。
第一繊維F1添加せずに第二繊維F2のみを添加した比較例2(3.0重量部)においては、C.S.R値が著しく低かった。
官能試験においても、C.S.R値と同様の傾向が得られた。
次に表2より、まず「ウエットの氷」おける防滑性の結果を比較する。第一繊維F1に加え第二繊維F2としてGW3.5μを添加した実施例4(0.5重量部)、実施例5(1.5重量部)でも、第二繊維F2添加せずに第一繊維F1のみ添加した比較例1’よりもC.S.R値が高くなった。ただし、実施例5、実施例6(3.0重量部)とGW3.5μの添加量がさらに増加するにつれて、C.S.R値は上昇せず僅かに低下する傾向が見られ、実施例6では比較例1’よりも低い値となった。このように、GW3.5μの添加量が0〜1.5重量部の間に、防滑性の変曲点がありそうだと分かった。なお、同配合である表1の比較例1と表2の比較例1’でC.S.R値が異なるのは、別々におこなった実験時により、「ウエットの氷」表面状態などの条件が異なる場合があるためである。
第一繊維F1および第二繊維F2のいずれも添加しなかった比較例3では、C.S.R値が著しく低かった。
第二繊維F2としてGW3.5μのみを添加した比較例4(15重量部)、比較例5(30重量部)では、添加量にともない比較例3よりもC.S.Rは高くなるが、添加量が多いにも関わらず第一繊維F1のみ添加した比較例1’(30重量部)のような値には至らなかった。
官能試験においても、C.S.R値と同様の傾向が得られた。
さらに表2より、「ウエットの研磨仕上大理石」における防滑性の結果を比較する。第一繊維F1に加え第二繊維F2としてGW3.5μを添加した実施例5(1.5重量部)、実施例6(3.0重量部)では、第二繊維F2添加せずに第一繊維F1のみ添加した比較例1’よりもC.S.R値が高くなり、添加量が増加するにつれてC.S.R値が上昇した。しかし実施例4(0.5重量部)では、比較例1’とC.S.R値が同一だった。
また表2より、繊維の添加量によるゴム硬さを比較する。第一繊維F1添加せずに第二繊維F2としてGW3.5μのみ30重量部添加した比較例5では、第一繊維F1および第二繊維F2のいずれも添加しなかった比較例3に対して、第一繊維F1としてGF13μ+GF23μを30重量部添加した比較例1’の場合よりも、ゴム硬さ上昇が少なかった。第一繊維F1に加え第二繊維F2としてGW3.5μを変量した実施例4(0.5重量部)、実施例5(1.5重量部)、実施例6(3.0重量部)の場合、第二繊維F2は少量添加でも繊維密度は高いはずながら、比較例1’からのゴム硬さ上昇が僅かだった。
あらためて「ウエットの氷」における防滑性を官能試験でまとめると、次のような結果となる。第一繊維F1に加え第二繊維F2を添加した実施例1−5においては、氷上路面における官能防滑評価にて優れた防滑性能(◎)が発現し、きわめて良好なる結果を得た。従来の第一繊維F1のみ添加した比較例1、比較例1’や、第二繊維F2のみを多量に添加した比較例4(15重量部)、比較例5(30重量部)においても、官能防滑評価にて問題ない防滑性能(○)だったが、実施例1−5よりも劣っていた。一方、第一繊維F1添加せずに第二繊維F2としてGW0.6μのみ添加量した比較例2(3.0重量部)、第一繊維F1および第二繊維F2のいずれも添加しなかった比較例3においては、C.S.R値が0.4未満と非常に低かった通り、官能防滑評価での防滑性能も滑ってしまい(×)、全く不良であった。
マトリックス
マトリックス表面、履物底表面
F1 第一繊維
F2 第二繊維
F1 平均第一繊維直径
F2 平均第二繊維直径
θ 突出した繊維がマトリックス表面に対してなす最小角度
F1 第一繊維突出長さ
F2 第二繊維突出長さ
δ 片持ち梁のたわみ量
荷重
円柱状片持ち梁の長さ
円柱状片持ち梁の直径

Claims (5)

  1. ゴムまたは弾性合成樹脂のマトリックス(M)中に第一繊維(F1)および第二繊維(F2)を含む防滑履物底であって、
    前記第一繊維(F1)の平均第一繊維直径(dF1)が5μm〜600μmであり、
    前記第二繊維(F2)の平均第二繊維直径(dF2)が5nm〜5000nm(すなわち5μm)かつ前記平均第一繊維直径(dF1)の半分以下(dF2≦(dF1/2))であり、
    前記第一繊維(F1)の少なくとも先端一部および前記第二繊維(F2)の少なくとも先端一部がマトリックス表面(S)に露出し、前記マトリックス表面(S)において前記第一繊維(F1)の凹凸および前記第二繊維(F2)の凹凸を形成した構造であることを特徴とする、防滑履物底。
  2. 前記第一繊維(F1)の少なくとも一種の第一繊維引張弾性率(EF1)が1×10kgf/mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の防滑履物底。
  3. 前記第二繊維(F2)の少なくとも一種の第二繊維引張弾性率(EF2)が1×10kgf/mm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の防滑履物底。
  4. 前記第一繊維(F1)の少なくとも先端一部および前記第二繊維(F2)の少なくとも先端一部が、前記マトリックス表面(S)に対して略垂直方向へ突出していることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の防滑履物底。
  5. 前記マトリックス表面(S)に露出した第二繊維突出長さ(LF2)が、第一繊維突出長さ(LF1)よりも短くかつ2dF2〜500μmであることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の防滑履物底。
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