以下、図面を参照して、例示的な実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[第一実施形態]
[自動駐車装置の構成]
図1は、実施形態に係る自動駐車装置1を備える車両2の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、乗用車などの車両2には、自動駐車装置1が搭載されている。自動駐車装置1は、駐車目標位置に車両2を自動で駐車させる。
車両2は、外部センサ20、内部センサ21、操作量検出センサ22、HMI(Human Machine Interface)23、ECU(Electronic Control Unit)及びアクチュエータ29を備えている。ECUは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニットである。車両2は、ECUとして、自動駐車ECU24、駆動力ECU25、制動力ECU26、操舵ECU27及びシフトレンジ制御ECU28を備えている。
外部センサ20は、車両2の周辺の状況(環境)を検出する検出機器である。外部センサ20の検出結果は自動駐車ECU24へ出力される。一例として、外部センサ20は、カメラ及びレーダセンサのうち少なくとも一つを含む。
カメラは、車両2の外部状況を撮像する撮像機器である。カメラは、車両2のフロントガラスの裏側に設けられている。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して車両2の周辺の物体を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を車両2の周辺に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。
内部センサ21は、車両2の走行状態を検出する検出機器である。内部センサ21の検出結果は自動駐車ECU24へ出力される。内部センサ21は、車速センサを少なくとも含む。
車速センサは、車両2の速度を検出する検出機器である。車速センサとしては、車両2の車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。
内部センサ21は、加速度センサ又はヨーレートセンサを含んでもよい。加速度センサは、車両2の加速度を検出する検出機器である。加速度センサは、車両2の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、車両の横加速度を検出する横加速度センサとを含んでいる。ヨーレートセンサは、車両2の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。
操作量検出センサ22は、車両2の運転者の運転操作の操作量を検出する機器である。操作量検出センサ22の検出結果は自動駐車ECU24へ出力される。操作量検出センサ22は、例えば、アクセルペダルセンサ及びステアリングセンサのうち少なくとも一つを含む。
アクセルペダルセンサは、アクセルペダルの踏込み量を検出する検出器である。アクセルペダルの踏込み量は、例えば所定位置を基準としたアクセルペダルの位置(ペダル位置)である。アクセルペダルセンサは、例えば車両2のアクセルペダルのシャフト部分に対して設けられる。
ステアリングセンサは、ステアリングの回転状態を検出する検出器である。回転状態の検出値は、例えば操舵トルク又は舵角(操舵操作の操作量)である。ステアリングセンサは、例えば、車両2のステアリングシャフトに対して設けられる。
操作量検出センサ22は、ブレーキペダルセンサを含んでもよい。ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダルの踏込み量を検出する検出器である。ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダルの操作力(ブレーキペダルに対する踏力やマスタシリンダの圧力など)を検出してもよい。
HMI23は、運転者と自動駐車装置1との間で情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。HMI23は、例えば、画像を表示するディスプレイ、音声を出力するスピーカ、及び運転者が入力操作を行うための操作ボタン又はタッチパネル等を備えている。操作ボタン又はタッチパネルは、自動駐車の開始ボタン、実行中の自動駐車を中断させるキャンセルスイッチ(キャンセルSW)、中断された自動駐車を終了させる終了ボタンなどが含まれる。HMI23は、無線通信を介して接続された端末を入出力端末として利用してもよい。
自動駐車ECU24は、自動駐車装置1を構成する主なハードウェアであり、車両2の自動駐車を制御する演算機器である。自動駐車ECU24は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、上述した車両2の構成要素と通信可能に接続されている。自動駐車ECU24は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、入力データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで、後述する自動駐車ECU24の構成要素の機能を実現する。なお、自動駐車ECU24は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
自動駐車ECU24は、機能として、周辺環境認識部241、経路生成部242、車両制御部10(車両制御部の一例)、受付部11(受付部の一例)及びオーバーライド判定部12(判定部の一例)を備えている。車両制御部10、受付部11及びオーバーライド判定部12は自動駐車装置1の主要機能に対応する。
周辺環境認識部241は、外部センサ20の検出結果に基づいて、車両2の周辺の環境を認識する。一例として、周辺環境認識部241は、車両2の周囲の物体の位置、物体の大きさや種別、駐車スペースの路面境界線の位置などを認識する。
経路生成部242は、周辺環境認識部241の認識結果を用いて自動駐車時における車両2の経路を生成する。経路生成部242は、例えば現在の車両2の位置から目標駐車スペースに駐車するまでの経路を生成する。目標駐車スペースは、車両2を自動で駐車させる駐車スペースである。経路生成部242は、一例として、HMI23の入力結果に基づいて目標駐車スペースを設定する。あるいは、経路生成部242は、空車の駐車スペースを目標駐車スペースとして認識してもよい。
経路生成部242は、車両2と目標駐車スペースとの位置関係、車両2と物体との位置関係などに基づいて、車両2が物体と接触することなく目標駐車スペースで停車する経路を生成する。経路の生成処理については、幾何学計算などの周知の手法を採用することができる。なお、経路は、車両2の進行方向の切り返し地点を含んでもよい。つまり、経路は、車両2の前進及び後退を含んでもよい。また、経路には、位置に応じた目標速度が含まれていてもよい。
図2は、車両2の自動駐車シーンの一例を説明する図である。図2に示されるシーンは、車両2が目標駐車スペース100に自動駐車するシーンである。自動駐車装置1は、車両2が位置K1に存在しているときから自動駐車を開始する。周辺環境認識部241は、外部センサ20の検出結果に基づいて、空きスペースを目標駐車スペース100として認識する。経路生成部242は、外部センサ20の検出結果に基づいて、車両2と目標駐車スペース100との位置関係を把握し、目標駐車スペースに車両2を後向きに駐車することを決定する。そして、車両2の旋回性能を考慮し、目標となる経路を生成する。目標となる経路は、前進する経路L1と後退する経路L2とを含んでおり、経路L1と経路L2との接続点が方向転換地点K2となる。
車両制御部10は、車両2を駐車するために、車両2の速度、操舵、及び、車両2の変速機のシフトレンジを制御する。車両制御部10は、経路生成部242によって生成された経路に沿って車両2を走行させる。
車両制御部10は、駆動力ECU25及び制動力ECU26に対して信号を出力し、車両2の速度を調整する。一例として、車両制御部10は、位置ごとの目標速度と、車両2の速度との差分が小さくなるように、車両2の速度を調整する。車両制御部10は、操舵ECU27に対して信号を出力し、車両2の操舵を調整する。一例として、車両制御部10は、経路の形状に応じた操舵角となるように、車両2の操舵を調整する。車両制御部10は、シフトレンジ制御ECU28に対して信号を出力し、車両2の変速機のシフトレンジを調整する。一例として、車両制御部10は、経路の方向転換地点K2においてシフトの切り返しが発生するように、車両2の変速機のシフトレンジを調整する。
受付部11は、車両制御部10による自動駐車中に車両2の運転者による運転操作を受け付ける。運転操作は、車両2の挙動を制御する運転者による操作である。運転操作は、アクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、ステアリング操作、シフトレバー操作、HMI23のボタン操作、スイッチ操作などを含む。受付部11は、操作量検出センサ22又はHMI23を介して運転操作を受け付ける。
オーバーライド判定部12は、受付部11により受け付けられた運転操作が所定のオーバーライド条件を満たすか否かを判定する。オーバーライド判定部12が判定対象とする運転操作は、車両の速度を減速させる操作以外の運転操作である。つまり、判定対象となる運転操作は、ブレーキペダル操作以外の運転操作であり、一例として、アクセルペダル操作、ステアリング操作、シフトレバー操作、HMI23のボタン操作、スイッチ操作などである。ブレーキペダル操作については、自動駐車中の車両2の速度に操作量が反映される。
オーバーライド条件は、運転操作に対応して設定されている。例えば、運転操作がスイッチ操作である場合、オーバーライド条件は、実行中の自動駐車を中断させるHMI23のキャンセルスイッチの操作を受付部11が受け付けた場合に満たされる。例えば、運転操作がシフトレンジの変更操作である場合、オーバーライド条件は、車両2の前進中にシフトレンジを「D」(前進)から「R」(後退)へ変更する操作を受付部11が受け付けた場合に満たされる。あるいは、運転操作がシフトレンジの変更操作である場合、オーバーライド条件は、車両2の後退中にシフトレンジを「R」(後退)から「D」(前進)へ変更する操作を受付部11が受け付けた場合に満たされる。また、運転操作がアクセルペダル操作である場合、オーバーライド条件は、閾値以上のアクセルペダルの操作量を受け付けた場合に満たされる。運転操作とオーバーライド条件とは関連付けてECUの記憶部などに記憶されている。オーバーライド判定部12は、記憶部を参照することで、運転操作に対応するオーバーライド条件を取得することができる。オーバーライド判定部12は、少なくとも一つの運転操作がオーバーライド条件を満たす場合にはオーバーライドがなされたと判定する。
車両制御部10は、オーバーライド判定部12によりオーバーライド条件を満たすと判定された場合、車両2を停車させるとともに車両2の変速機のシフトレンジを非駆動レンジに設定する。車両制御部10は、シフトレンジ制御ECU28に対して非駆動レンジに設定する要求を出力する。なお、変速機の非駆動レンジとは、車両2のタイヤに動力が伝達されない状態である。一例として、変速機の非駆動レンジは、「P」(停車)又は「N」(ニュートラル)である。
車両制御部10は、複数の制御モードで動作する。車両制御部10は、車両2の速度、操舵、及び、車両2の変速機のシフトレンジを制御している間は、正常モードとして機能する。車両制御部10の制御モードは、自動駐車中において、オーバーライド判定部12によりオーバーライド条件を満たすと判定された場合、正常モードから中断モードに遷移する。中断モードとは、自動駐車を再開できる状態で自動駐車に関する制御を一時的に中断している状態である。車両制御部10は、制御モードが正常モードから中断モードに遷移したときに、算出していた経路、目標駐車スペースの位置、車両2の位置や周辺環境に関する情報を、前回情報としてECUの記憶部などに記憶する。さらに、車両制御部10は、車両2の周辺の物体の監視を継続し、物体の位置に応じて経路再計算をバックグラウンドで行う。車両制御部10は、中断モードが解除されて正常モードに遷移するときに、記憶部を参照して前回情報及び再計算結果を取得する。このように、車両制御部10は、中断モードにおいては、前回情報及び再計算結果をロードして、再開時の自動駐車に反映する。
図3は、自動駐車中の運転操作と駐車制御の状態との関係の一例を説明する表である。図3に示されるように、車両制御部10は、自動駐車中の運転操作がブレーキペダル操作である場合、駐車制御を継続する。車両制御部10は、正常モードで動作し、自動駐車中の車両2の速度にブレーキペダル操作の操作量を反映する。一方、車両制御部10は、自動駐車中の運転操作がアクセルペダル操作、ステアリング操作、シフトレバー操作、及びボタン・スイッチ操作の何れかである場合、自動駐車を中断する。車両制御部10は、ブレーキ制御により停車して中断モードとなる(シフトレンジは非駆動レンジ)。車両制御部10は、HMI23に制御結果を出力してもよい。制御結果は、自動駐車に関する制御結果である。制御結果は、自動駐車の制御モードを含んでもよい。
自動駐車ECU24は、中断モード中の運転操作に基づいて、自動駐車の再開(正常モードへの遷移)、運転者への運転の受け渡し、自動駐車の終了の何れかの動作を決定する。制御モードが中断モードに遷移した場合、自動駐車ECU24は、ブレーキペダル操作も考慮して動作を決定する。動作決定の詳細は後述する。自動駐車ECU24は、自動駐車の再開が決定された場合、前回情報及び再計算結果をロードするとともに、周辺状況を取得しなおして、途中経路から自動駐車を再開する。自動駐車ECU24は、運転者への運転の受け渡しが決定された場合、シフトレンジを「N」(ニュートラル)のまま運転者へ運転を受け渡す。自動駐車ECU24は、自動駐車の終了が決定された場合、シフトレンジを「P」(駐車)へ変更する。
駆動力ECU25は、自動駐車ECU24からの要求に基づいて、車両2のアクチュエータ29を動作させて駆動力を制御する。駆動力ECU25により動作するアクチュエータ29は、一例としてスロットルアクチュエータである。制動力ECU26は、自動駐車ECU24からの要求に基づいて、車両2のアクチュエータ29を動作させて制動力を制御する。制動力ECU26により動作するアクチュエータ29は、一例としてブレーキアクチュエータである。
操舵ECU27は、自動駐車ECU24からの要求に基づいて、車両2のアクチュエータ29を動作させて操舵を制御する。操舵ECU27により動作するアクチュエータ29は、一例としてステアリングアクチュエータである。シフトレンジ制御ECU28は、自動駐車ECU24からの要求に基づいて、車両2のアクチュエータ29を動作させてシフトレンジを制御する。操舵ECU27により動作するアクチュエータ29は、一例としてシフトレンジアクチュエータである。
[自動駐車装置の動作]
図4は、自動駐車ECU24と他のECUとの連携の一例を説明する図である。図4に示されるように、自動駐車ECU24と制動力ECU26、シフトレンジ制御ECU28及び駆動力ECU25がデータのやり取りを行うことにより、自動駐車の中断処理が行われる。なお、図4においては、車両2が前進しているときの動作を説明する。また、自動駐車中の運転操作として、ボタン・スイッチ操作、シフトレバー操作、及び、アクセルペダル操作の何れかが行われた時の動作を説明する。
自動駐車中において、運転者(ドライバ)がキャンセルSWをONする操作(第一操作D1)をした場合、自動駐車ECU24は、操作情報を受け付けてオーバーライド判定(処理P3)を行う。自動駐車ECU24は、キャンセルSWをONする操作情報を受け付けた場合、オーバーライド条件を満たすと判定する。
自動駐車中において、運転者がシフトレンジ「R」(後退)の操作(第二操作D2)をした場合、シフトレンジ制御ECU28は、シフト操作の検出処理(処理P1)を行う。シフトレンジ制御ECU28は、現在のシフトレンジである現レンジ「D」(前進)と、要求されたシフトレンジである要求レンジ「R」(後退)とを自動駐車ECU24へ出力する。自動駐車ECU24は、操作情報を受け付けてオーバーライド判定(処理P3)を行う。自動駐車ECU24は、シフトレンジを「D」(前進)から「R」(後退)へ変更する操作を受け付けた場合、オーバーライド条件を満たすと判定する。
自動駐車中において、運転者がアクセルペダル操作(Aペダル操作:第三操作D3)をした場合、駆動力ECU25は、ペダル操作の検出処理(処理P2)を行う。駆動力ECU25は、アクセルペダルの操作量(開度)を自動駐車ECU24へ出力する。自動駐車ECU24は、操作量を受け付けてオーバーライド判定(処理P3)を行う。自動駐車ECU24は、操作量が閾値以上である場合には、オーバーライド条件を満たすと判定する。
オーバーライド判定(処理P3)において、オーバーライド条件を満たすと判定された場合、自動駐車ECU24は、制動力ECU26に要求制動力を出力する。制動力ECU26は、要求に基づいてブレーキ制御(処理P4)を行い、速度情報を自動駐車ECU24へ出力する。自動駐車ECU24は、速度情報に基づいて速度=0であるか否かを判定する停車判定(処理P6)を行う。
自動駐車ECU24は、停車判定(処理P6)において停車を判定後、シフトレンジの要求レンジとして「N」(ニュートラル)をシフトレンジ制御ECU28へ出力する。シフトレンジ制御ECU28は、要求レンジとして「N」(ニュートラル)を駆動力ECU25へ出力する処理(処理P7)を行う。駆動力ECU25は、要求レンジに基づいてシフト制御(処理P8)を行い、認識しているレンジである認識レンジ「N」(ニュートラル)をシフトレンジ制御ECU28へ出力する。シフトレンジ制御ECU28は、要求レンジと認識レンジとを比較してシフト制御が行われたことを判定するシフト判定(処理P9)を行う。続いて、シフトレンジ制御ECU28は、現在のシフトレンジである「N」(ニュートラル)を自動駐車ECU24へ出力する。
自動駐車ECU24は、シフトレンジが「N」(ニュートラル)となったときに、中断モードに移行したと判定する(処理P10)。自動駐車ECU24は、HMI23に自動駐車が中断された旨を表示させる。図中では、アクセルペダルが操作されたことに起因して自動駐車が中断されたことを運転者に報知する画像が一例として示されている。
自動駐車ECU24は、中断モード中に、HMI23に「自動駐車再開」ボタン、「自動駐車終了」ボタンを表示させる。運転者がブレーキペダル操作を行い、かつ、「自動駐車再開」ボタンを押下した場合には、自動駐車ECU24は自動駐車を再開する(状態A1)。運転者がブレーキペダル操作を行い、かつ、「自動駐車終了」ボタンを押下した場合には、自動駐車ECU24は中断モードを継続しながら、運転者に運転を受け渡す(状態A2)。このときのシフトレンジは、「N」(ニュートラル)である。運転者がブレーキペダル操作のみを行った場合、自動駐車ECU24は中断モードを継続せずに、運転者に運転を受け渡す(状態A3)。このときのシフトレンジは、「N」(ニュートラル)である。運転者が運転操作を所定時間行わない場合、自動駐車ECU24は中断モードを継続せずに、自動駐車を終了する(状態A4)。このとき、自動駐車ECU24は、シフトレンジを「P」(駐車)に設定する。
以上、自動駐車ECU24は、オーバーライド条件を満たす場合に、車両2のシフトレンジを非駆動レンジに設定する。なお、車両2が後退しているときの動作は、図4における「R」(後退)と「D」(前進)とが入れ替わるだけであり、その他は同一である。
[中断処理のフローチャート]
図5は、中断処理の一例を説明するフローチャートである。図5に示されるフローチャートは、自動駐車制御中に開始される。
図5に示されるように、オーバーライド判定部12は、判定処理(S10)として、オーバーライド条件を満たすか否かを判定する。一例として、オーバーライド判定部12は、受付部11によって受け付けられた運転操作に対応するオーバーライド条件を満たすか否かを判定する。
オーバーライド条件を満たすと判定された場合(S10:YES)、車両制御部10は、停車処理(S12)として、ブレーキ制御を実行し、車両2を停止させる。続いて、車両制御部10は、レンジ設定処理(S14)として、車両2の変速機のシフトレンジを非駆動レンジに設定する。続いて、車両制御部10は、フラグ設定処理(S16)として、中断モードフラグをON(例えば「1」)に設定する。中断モードフラグは、ECUの記憶部に記憶されており、自動駐車制御が中断された場合に「ON」され、それ以外の場合に「OFF」される。続いて、車両制御部10は、報知処理(S18)として、制御モードが中断モードになった旨をHMI23に表示させる。
オーバーライド条件を満たさないと判定された場合(S10:NO)、及び、報知処理(S18)が終了すると、図5に示される中断処理を終了する。自動駐車制御中である場合、車両制御部10は、図5に示されるフローチャートを最初から実行する。
[動作決定処理のフローチャート]
図6は、中断処理後の動作決定処理の一例を説明するフローチャートである。図6に示されるフローチャートは、中断モードフラグが「ON」されている場合に開始される。
図6に示されるように、自動駐車装置1の受付部11は、判定処理(S20)として、運転操作が受け付けられたか否かを判定する。ここでの運転操作は、ブレーキペダル操作も含む。
運転操作が受け付けられたと判定された場合(S20:YES)、自動駐車装置1の車両制御部10は、判定処理(S22)として、運転操作が再開操作であるか否かを判定する。再開操作とは、制御モードを中断モードから正常モードへ移行させる運転操作である。一例として、再開操作は、ブレーキペダル操作と「自動駐車再開」ボタンの押下操作との組み合わせである。
運転操作が再開操作であると判定された場合(S22:YES)、車両制御部10は、再開処理(S24)として、制御モードを中断モードから正常モードへ移行させる。つまり、車両制御部10は、前回情報及び再計算結果をロードするとともに、周辺状況を取得しなおして、途中経路から自動駐車を再開する。
運転操作が再開操作でないと判定された場合(S22:NO)、車両制御部10は、判定処理(S28)として、運転操作が終了操作であるか否かを判定する。終了操作とは、自動駐車を終了させる運転操作である。一例として、終了操作は、ブレーキペダル操作のみ、又は、ブレーキペダル操作及び「自動駐車終了」ボタンの押下操作との組み合わせである。
運転操作が終了操作であると判定された場合(S28:YES)、車両制御部10は、受け渡し処理(S30)として、シフトレンジを「N」(ニュートラル)のまま、運転者に運転を受け渡す。例えば、車両制御部10は、HMI23に自動駐車制御を終了する旨や、以後は運転者が運転すべきことを表示させる。続いて、車両制御部10は、終了処理(S32)として、途中演算結果の破棄などを行う。
一方、運転操作が受け付けられていないと判定された場合(S20:NO)、自動駐車装置1の車両制御部10は、判定処理(S34)として、中断モード開始から所定時間が経過したか否かを判定する。
中断モード開始から所定時間が経過したと判定された場合(S34:YES)、車両制御部10は、受け渡し処理(S36)として、シフトレンジを「P」(ニュートラル)へ設定し、運転者に運転を受け渡す。例えば、車両制御部10は、HMI23に自動駐車制御を終了する旨や、以後は運転者が運転すべきことを表示させる。続いて、車両制御部10は、終了処理(S38)として、途中演算結果の破棄などを行う。
再開処理(S24)又は終了処理(S32及びS38)が終了すると、車両制御部10は、フラグリセット処理(S26)として、中断モードフラグを「OFF」に設定する。
運転操作が終了操作でないと判定された場合(S28:NO)、中断モード開始から所定時間が経過していないと判定された場合(S34:NO)、又は、フラグリセット処理(S26)が終了した場合、図6に示される動作決定処理が終了する。終了後、中断モードフラグが「ON」であれば、図6に示される動作決定処理が最初から実行される。
[第一実施形態の作用効果]
以上、第一実施形態に係る自動駐車装置1によれば、自動駐車中においてオーバーライド条件がみたされた場合、車両2の変速機のシフトレンジが「N」(ニュートラル)に設定され、その後、車両2の運転が運転者に受け渡される。このため、この装置は、運転者が車両2を発進させる際に改めてシフトレンジを設定させることができる。よって、この装置は、運転者の想定とは異なるシフトレンジでの車両2の発進を回避することができる。
[第二実施形態]
[自動駐車装置の構成]
第二実施形態に係る自動駐車装置の構成は、第一実施形態に係る自動駐車装置1の構成と比較して、車両制御部10の一部機能が相違し、その他は同一である。第二実施形態に係る自動駐車装置が搭載される車両の構成は、第一実施形態で説明された車両2と同一である。以下では重複する説明は繰り返さない。
[中断処理のフローチャート]
図7は、中断処理の一例を説明するフローチャートである。図7に示されるフローチャートは、自動駐車制御中に開始される。
図7の判定処理(S40)、停車処理(S42)、レンジ設定処理(S44)、フラグ設定処理(S46)及び報知処理(S48)は、図5の判定処理(S10)、停車処理(S12)、レンジ設定処理(S14)、フラグ設定処理(S16)及び報知処理(S18)と同一である。つまり、図5に示された中断処理と比較すると、減速判定処理(S43)が挿入されている点のみが相違する。
車両制御部10は、減速判定処理(S43)として、運転操作が減速区間で行われたか否かを判定する。より具体的には、車両制御部10は、受付部11により運転操作が受け付けられたタイミングにおいて車両2が減速しているか否かを判定する。図8は、自動駐車中の車両2の速度パターンの一例を説明する図である。図8のグラフの横軸は距離であり、縦軸は速度である。図8の速度パターンは、図2で説明された駐車シーンの経路L1の速度パターンである。図8に示されるように、車両2が位置K1(図2)から発進し、所定距離走行するまでの間は速度が上昇する(発進区間)。その後、車両2は所定速度で移動する(定常区間)。そして、方向転換地点K2でシフトを切り替える必要があるため、車両2は方向転換地点K2で停車するために減速する(減速区間)。つまり、減速区間は、方向転換地点K2の所定範囲内の区間である。
運転操作が減速区間で行われたと判定された場合(S43:YES)、レンジ設定処理(S44)へ移行する。一方、運転操作が減速区間で行われていないと判定された場合(S43:NO)、図7に示される中断処理を終了する。
[第二実施形態の作用効果]
車両2の進行方向を変更するようなシフトレンジの変更は、車両2が方向転換地点K2に到達するとき(減速するとき)に発生する。つまり、駐車制御中において車両2が減速していないときは、車両2の進行方向を変更するようなシフトレンジの変更が行われない。第二実施形態に係る自動駐車装置によれば、車両2が減速していないときには、車両2の変速機のシフトレンジを非駆動レンジに設定しないようにすることで、不必要なシフトレンジの変更を抑制することができる。
上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
例えば、図6において、車両制御部10は、判定処理(S28)として、ブレーキペダル操作のみ、又は、ブレーキペダル操作及び「自動駐車終了」ボタンの押下操作との組み合わせを受け付けたときに、運転操作が終了操作であると判定していたが、「ブレーキペダル操作のみ受け付けた場合」と、「ブレーキペダル操作及び「自動駐車終了」ボタンの押下操作との組み合わせを受け付けた場合」とで自動駐車の処理を変更してもよい。例えば、運転者がブレーキペダル操作を行い、かつ、「自動駐車終了」ボタンを押下した場合には、自動駐車ECU24は中断モードを継続しながら、運転者に運転を受け渡すようにしてもよい(図4の状態A2)。そして、運転者がブレーキペダル操作のみを行った場合、自動駐車ECU24は中断モードを継続せずに、運転者に運転を受け渡してもよい(図4の状態A3)。
例えば、上述した実施形態では、車両制御部10は、車両2を停車させた後に非駆動レンジを設定する場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両制御部10は、非駆動レンジを設定した後に車両2を停車させてもよい。あるいは、停車処理と非駆動レンジの設定処理とを同時に(並行して)行ってもよい。
また、上述した実施形態では、中断モード時にシフトレンジを「N」(ニュートラル)に設定しているが、運転者に運転を受け渡すことが確定してからシフトレンジを「N」(ニュートラル)に設定してもよい。例えば、図4の状態A2、状態A3の状態となることが確定してからシフトレンジを「N」(ニュートラル)に設定してもよい。