以下、本発明の第1の実施形態に係るボルテックスポンプを、図1乃至図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボルテックスポンプ1の構成を、一部断面で示す側面図、図2及び図3は、ボルテックスポンプ1に用いられるポンプケーシング42の構成を斜視及び正面視で示す図である。
図1及び図2に示すように、ボルテックスポンプ1は、ベース10と、モータ11と、モータ11に固定されたポンプ12と、を備えている。
ベース10は、モータ11及びポンプ12を、ボルト等の締結部材10a等により固定し、支持する。
モータ11は、モータフレーム21と、モータフレーム21内に固定された固定子と、固定子に対して回転可能に構成された回転子と、回転子に固定された回転軸24と、を備えている。また、モータ11は、モータフレーム21に設けられ、回転軸24を軸支する軸受部材と、固定子と電気的に接続される電装箱と、を備えている。モータフレーム21は、垂直方向に対して直交する方向に回転軸24を延設可能に、その軸方向が水平方向となるようにベース10に固定される。
回転軸24は、モータフレーム21から突出することで、ポンプ12の回転軸を構成する。
ポンプ12は、ケーシング31と、ケーシング31内に配置され、回転軸24に固定されるインペラ32と、ケーシング31及び回転軸24間を密封する軸封装置33と、を備えている。
ケーシング31は、モータフレーム21に固定されるケーシングカバー41と、ケーシングカバー41に固定されるポンプケーシング42と、を備えている。ケーシング31は、垂直方向に対して直交する方向に回転軸24を延設可能に、その軸方向が水平方向となるようにベース10に固定される。ケーシング31は、収容したインペラ32により水を圧送するためのポンプ室31aと、軸封装置33を収容する軸封室31bと、を内部に構成する。
ケーシングカバー41は、回転軸24を挿通させる挿通孔41aを有する。ケーシングカバー41は、ポンプケーシング42とともに、ポンプケーシング42の渦巻室42aを閉塞することで、渦巻室42aの一部を構成する。
ポンプケーシング42は、ポンプ室31aを構成する部位の内周面が、巻き終わりが垂直方向の下端に配置されたボリュート形状(渦巻形状)に形成される。また、ポンプケーシング42は、軸方向の一方の端部に形成された吸込口51と、外周面の一部に形成された吐出管部52と、外周面に90°間隔で設けられた3つの脚部53と、を有する。また、ポンプケーシング42は、軸方向の他方の端部に、他方の端部がインペラ32を挿入可能、且つ、ケーシングカバー41と接続可能に開口する。また、ポンプケーシング42は、軸封室31b側の内径が、ポンプ室31a側の内径よりも小径に構成される。
また、ポンプケーシング42は、内周面のインペラ32の外周縁と対向する部位に、ポンプケーシング42内をインペラ32とともに、ポンプ室31aと軸封室31bとに仕切る仕切壁54を有する。
仕切壁54は、インペラ32の外周面と、より具体的にはインペラ32の後述するシュラウド61の外周面と対向して配置され、インペラ32の外周面との間に所定の隙間が生じる内径に構成される。また、仕切壁54は、少なくともポンプケーシング42がベース10に固定されたときに最下端となる部位にスリット部54aを有する。本実施形態においては、仕切壁54は、複数の、より具体的には周方向に90度間隔で形成された4つのスリット部54aを有する。スリット部54aは、ポンプ室31a及び軸封室31bを連通する。
4つのスリット部54aは、ポンプケーシング42をベース10に固定したときに、仕切壁54の0°、90°、180°、270°の位置に配置される。換言すると、仕切壁54は、4つの円弧状の壁部54bが周方向に等間隔に配置されることで構成される。
また、スリット部54aが設けられた部位のポンプケーシング42の内面は、軸封室31b側からポンプ室31a側に向かって径方向外方へ傾斜する。
壁部54bは、インペラ32の回転方向の二次側の端部、本実施形態においては、軸封室31b側の主面を正面視としたときに、軸封室31b側の時計回りで一次側の端部に、軸封室31b側に突出するリブ54cを有する。即ち、仕切壁54は、軸封室31b側の主面を正面視としたときに、時計回りでスリット部54aの二次側の端部に軸封室31b側に突出するリブ54cを有する。壁部54b及びリブ54cの隅部は、曲面により湾曲する。なお、壁部54bは、インペラ32の回転方向に漸次厚さが増加するように、換言すると、軸封室31b側の主面を正面視としたときに、時計回りで二次側の端部からリブ54cに向かって、ポンプ室31a側の主面が傾斜して形成されていてもよい。
ポンプ室31aは、軸方向で一方の端部側の内面が、インペラ32と所定の間隙を有する形状に形成される。ここで、所定の間隙は、図1中に二点鎖線で示すように、所定の粒径の異物100が通過可能な間隙であり、適宜設定される。
吸込口51は、ポンプケーシング42の一方の端部の外面から突出して形成される。吸込口51は、その先端に配管等が接続可能なフランジ57が固定される。
吐出管部52は、ポンプケーシング42に一体に延設された円筒状の管である。吐出管部52は、その端部に、ボルテックスポンプ1から二次側に汚水を供給する配管99が接続されるフランジ57が固定される。吐出管部52は、その内径が渦巻室42aからその先端に向かって一定の内径で形成されるとともに、フランジ57が固定される端部側に吐出口52aを有する。
脚部53は、設置面に固定されたときにポンプ12を支持可能な形状に構成されている。脚部53は、ベース10に締結部材等により取り付けられる一対の脚53aにより構成される。3つの脚部53は、ポンプケーシング42の外周面であって、且つ、ポンプケーシング42の軸心回りで吐出管部52から90°、180°、270°の位置に設けられる。また、脚部53及び吐出管部52は、4つのスリット部54aと周方向で同じ位置となるように、90度間隔で配置される。ベース10に固定する脚部53は、吐出管部52の延設方向によって、適宜選択される。
インペラ32は、回転軸24に固定されるボス部61aを有するシュラウド61と、シュラウド61のポンプケーシング42の一方の端部に対向する面に設けられた複数の羽根62と、を備えている。インペラ32は、所謂セミオープンインペラである。例えば、シュラウド61の軸方向の厚さは、仕切壁54の軸方向の厚さよりも小さく設定される。
軸封装置33は、メカニカルシールである。
このように構成されたボルテックスポンプ1は、ポンプ室31a及び軸封室31bを仕切る仕切壁54にスリット部54aを設けることで、軸封室31bに侵入した異物をポンプ室31a側に排出することが可能となる。これにより、ボルテックスポンプ1は、軸封室31bに異物が侵入することを防止できる。
また、仕切壁54にスリット部54aを4つ設けることで、3つの脚部53のいずれをベース10に固定した場合であっても、スリット部54aが重力方向でポンプケーシング42の下端に位置することになる。このため、ボルテックスポンプ1は、その姿勢に関わらず、軸封室31bの異物をポンプ室31aに排出することができる。また、スリット部54aを吐出管部52と周方向で同じ位置にも設けることで、ボルテックスポンプ1を運転するために呼び水を行ったときに、軸封室31bに空気だまりができることを防ぐことが可能となる。
また、ポンプケーシング42のスリット部54aが設けられた部位を、軸封室31bからポンプ室31aに向かって径方向外方へ傾斜させる構成とすることで、軸封室31bの空気や異物がポンプ室31a側へ排出されやすくなる。これにより、軸封室31bに空気だまりが生じること、及び、軸封室31bに異物が堆積することを極力防止できる。
また、仕切壁54は、軸封室31b側の主面のインペラ32の回転方向の二次側の端部に、軸封室31bに突出するリブ54cを設けることで、ボルテックスポンプ1の運転中に、軸封室31b内で異物が循環することを抑制することができ、インペラ32のシュラウド61の背面や軸封装置33が異物によって摩耗することを防止できる。
さらに、壁部54b及びリブ54cの隅部を曲面とすることで、リブ54cの周囲に渦流れが生じることを極力防止できることから、リブ54cの裏側や、壁部54bのポンプ室31a側に異物が堆積することを防止できる。なお、壁部54bの主面を、インペラ32の回転方向に漸次厚さが増加するように形成することで、リブ54cの周囲に渦流れが生じることより防止できる。また、すべての壁部54bにおいて、壁部54b及びリブ54cの隅部の形状を曲面とすることから、ポンプケーシング42の姿勢を変更した場合であっても、異物が堆積することを防止できる。
このように構成された実施形態のボルテックスポンプ1と、スリット部54a及びリブ54cを有さない比較例のボルテックスポンプと異物流出試験について、以下説明する。異物流出試験として、実施形態のボルテックスポンプ1及び比較例のボルテックスポンプの軸封室31bに、活性炭を100gに投入し、吐出流量を0.4m3/minで10分間運転した。
運転停止後、軸封室31bから排出された活性炭を回収したところ、本実施形態のボルテックスポンプ1は、投入した活性炭の98.5%が軸封室31bから排出されており、比較例のボルテックスポンプは、投入した活性炭の78.3%が排出されていた。
このような結果からも明らかなように、本実施形態のボルテックスポンプ1によれば、軸封室31b内の異物の排出を促進し、軸封室31bに異物が堆積することを抑制できる。
上述したように、本発明の一実施形態に係るボルテックスポンプ1によれば、軸封室31b内に異物が堆積することを防止できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上述した仕切壁54は、スリット部54aを有し、そして、リブ54cを有さない構成としてもよい。また、スリット部54aの形状を、スリット部54aが設けられた部位のポンプケーシング42の内面が軸封室31bからポンプ室31aに向かって径方向外方へ傾斜する構成を説明したがこれに限定されず、例えば、スリット部54aが設けられた部位のポンプケーシング42の内面が軸方向へ沿う形状としてもよい。
また、上述した4か所のスリット部54aのうち、周方向で吐出管部52と同じ位置になるスリット部54aは、空気を軸封室31b側からポンプ室31a側へ移動させるために用いられる。このため、周方向で吐出管部52と同じ位置になるスリット部54aは、周方向で脚部53と同じ位置になるスリット部54aよりも、周方向の幅が小さく形成されていてもよい。
また、上述した例では、脚部53は3つ設けられる構成を説明したがこれに限定されない。即ち、脚部53は、2つであってよく、また、ポンプケーシング42の姿勢を変えないのであれば、脚部53は一つであってもよい。また、例えば、スリット部54aは、少なくとも仕切壁54の最下端となる位置に設ける構成とすれば、軸封室31b内の異物を排出する機能を有する。また、ポンプケーシング42は、1つのスリット部54aを1つの脚部53と同じ角度位置で設けるとともに、180度の角度位置でさらにスリット部54aを設ける構成であれば、ポンプケーシング42をベース10に配置したときに、仕切壁54の最下端と最上部にスリット部54aが配置される構成であってもよい。これにより、最上部のスリット部54aを空気排出用のスリット部として用いることができる。
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。