以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、現場付けの外壁パネルである現場付けパネルを有するユニット式建物において、その現場付けパネルを建物ユニットに仮固定した状態で施工現場へ輸送する場合に、その現場付けパネルを仮固定する仮固定位置を決定するための仮固定位置決定装置について具体化している。以下では、その仮固定位置決定装置の説明を行うのに先立ち、まずユニット式建物の構成について説明する。図1は、そのユニット式建物の構成を示す平面図であり、図2は、そのユニット式建物を構成する建物ユニットを示す斜視図である。なお、ユニット式建物は二階建てとなっており、図1にはそのユニット式建物の一階部分を示している。
図1に示すように、ユニット式建物30(以下、略して建物30という)は、直方体状に形成された複数の建物ユニット20を備えて構成されている。建物30の一階部分には、複数の建物ユニット20が横並びに設けられており、詳しくは4つの建物ユニット20が横並びに設けられている。これら各建物ユニット20は、平面視において各建物ユニット20の短手方向に並ぶように配置されている。また、図示は省略するが、建物30の二階部分にも、複数の建物ユニット20が設けられている。
なお、以下の説明では、建物30の一階部分における各建物ユニット20を区別して建物ユニット20A〜20Dともいう。これら各建物ユニット20A〜20Dは、各建物ユニット20A〜20Dが並ぶ方向における一方側から他方側に向けて順に建物ユニット20A、建物ユニット20B、建物ユニット20C、建物ユニット20Dとなっている。
建物ユニット20は、図2に示すように、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。建物ユニット20では、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。
建物ユニット20の天井部には、対向する各天井大梁22の間に複数の天井小梁24が架け渡されている。これら天井小梁24には天井面材(図示略)が取り付けられる。また、建物ユニット20の床部には、対向する各床大梁23の間に複数の床小梁25が架け渡されている。これら床小梁25には床面材(図示略)が取り付けられる。また、建物ユニット20の各側面部では、一対の柱21と、それら各柱21の上端部及び下端部を連結する天井大梁22及び床大梁23とにより矩形状のフレームが形成されている。これら建物ユニット20の側面部(詳しくはフレーム)には、外壁パネル32(図1参照)や内壁パネル等が取り付けられる。
図1の説明に戻り、建物30の一階部分においては、隣り合う建物ユニット20A,20B同士が互いに離し置きされており、かつ、隣り合う建物ユニット20C,20D同士が互いに離し置きされている。これにより、各建物ユニット20A,20Bの間、及び各建物ユニット20C,20Dの間はそれぞれ建物ユニット20の存在しない離し置き領域28となっている。これら各離し置き領域28には、床部を構成する平板状の床ユニット29が設けられている。この場合、それら床ユニット29と各建物ユニット20A〜20Dの床部とにより建物30の床部が構成されている。
建物30には、その外周部に沿って外壁部31が設けられている。この外壁部31により屋内と屋外とが仕切られている。外壁部31は、建物外周部に沿って並べられた複数の外壁パネル32,33を有して構成されている。外壁パネル32,33には、建物ユニット20の側面部26に取り付けられた外壁パネル32と、各建物ユニット20A,20Bの間及び各建物ユニット20C,20Dの間に取り付けられた外壁パネル33とがある。これら各外壁パネル32,33はいずれも、外壁面材とその裏面側に設けられた下地フレームとを有して構成されている。なお、図1では、建物ユニット20の一の側面部26に1つの外壁パネル32しか示されていないが、実際には一の側面部26に複数の外壁パネル32が横並びで設けられている。
外壁パネル33には、各建物ユニット20A,20Bの間に設けられた一対の外壁パネル33A,33Bと、各建物ユニット20C,20Dの間に設けられた一対の外壁パネル33C,33Dとがある。外壁パネル33A,33Bは、各建物ユニット20A,20Bの間に架け渡された横架材(図示略)に取り付けられ、外壁パネル33C,33Dは各建物ユニット20C,20Dの間に架け渡された横架材(図示略)に取り付けられている。また、外壁パネル33A,33Bは、その幅が外壁パネル33C,33Dよりも大きくなっている。
各外壁パネル33A〜33Dは、施工現場において各建物ユニット20A,20Bの間及び各建物ユニット20C,20Dの間にそれぞれ取り付けられるようになっている。したがって、これらの外壁パネル33A〜33Dはいわゆる現場付けの外壁パネルとなっている。それに対し、外壁パネル32は、製造工場において建物ユニット20の側面部26に取り付けられるようになっている。したがって、外壁パネル32はいわゆる工場付けの外壁パネルとなっている。
次に、上述した建物30を構築する際の流れについて図3に基づいて説明する。図3は、建物30を構築する際の流れを説明するための平面図である。
まず、図3(a)に示すように、製造工場において、建物30を構成する各建物ユニット20を製造する。この場合、各外壁パネル32,33のうち、工場付けの外壁パネル32については建物ユニット20の側面部26に固定(本固定)する。一方、現場付けの外壁パネル33(以下、現場付けパネル33という)については建物ユニット20の側面部26において外壁パネル32が固定されていない領域に仮固定する。図3(a)の例では、各現場付けパネル33A〜33Dのうち、現場付けパネル33B,33Cが建物ユニット20Bの側面部26に仮固定され、現場付けパネル33A,33Dが建物ユニット20Cの側面部26に仮固定されている。現場付けパネル33A〜33Dの仮固定は、例えば当該パネル33A〜33Dの下地フレームを建物ユニット20の側面部26(詳しくは天井大梁22及び床大梁23)にボルト等で(仮)固定することにより行われる。
各建物ユニット20を製造した後、それら各建物ユニット20をトラック等で施工現場へ輸送する。この場合、各現場付けパネル33A〜33Dは建物ユニット20B,20Cに仮固定された状態で施工現場へと輸送される。
施工現場では、図3(b)に示すように、輸送された各建物ユニット20をそれぞれ所定の設置位置に設置する。これにより、各建物ユニット20A,20Bの間、及び、各建物ユニット20C,20Dの間にそれぞれ離し置き領域28が形成される。その後、各離し置き領域28にそれぞれ床ユニット29を設置する。
続いて、建物ユニット20B,20Cに仮固定された現場付けパネル33A〜33Dを建物ユニット20B,20Cから取り外し、その取り外した現場付けパネル33A〜33Dをそれぞれ所定の取付位置に取り付ける(本固定する)作業を行う。この作業では、建物ユニット20B,20Cから取り外した現場付けパネル33A〜33Dを所定の取付位置まで運び、その後、現場付けパネル33A〜33Dを当該所定の取付位置に取り付けることとなる。詳しくは、各現場付けパネル33A,33Bについては、各建物ユニット20A,20Bの間に取り付け、各現場付けパネル33C,33Dについては、各建物ユニット20C,20Dの間に取り付ける。なお、図3(b)では、建物ユニット20から取り外した現場付けパネル33A〜33Dを本取付位置まで運ぶ際の移動経路を矢印線で示している。
その後、各建物ユニット20の上方に屋根が設置される等して、建物30が構築される。
ここで、施工現場において、建物ユニット20に仮固定された現場付けパネル33を当該建物ユニット20から取り外し、所定の取付位置(以下、本取付位置ともいう)に取り付ける作業を行うに際しては、現場付けパネル33が各建物ユニット20のうちいずれの建物ユニット20のどの位置に仮固定されているかによって、つまり現場付けパネル33の仮固定位置によって、当該作業に要する工数が変わってくることが考えられる。例えば、現場付けパネル33の仮固定位置が当該現場付けパネル33の本取付位置から大きく離れている場合には、現場付けパネル33を仮固定位置から取り外して本取付位置まで運ぶ際に大きな工数がかかってしまうことが考えられる。
そこで、本実施形態では、現場付けパネル33の仮固定に伴い発生する上記の作業について工数低減を図るべく、現場付けパネル33の仮固定位置を仮固定位置決定装置10を用いて決定することとしている。以下においては、その仮固定位置決定装置10について図4を用いながら説明を行う。図4は、仮固定位置決定装置10の概略構成を示す図である。なお、仮固定位置決定装置10は、例えば建物メーカに設けられ、同メーカの設計者(ユーザ)により用いられる。
図4に示すように、仮固定位置決定装置10は、パーソナルコンピュータにより構成され、建物の設計を行うためのCADプログラムを有している。仮固定位置決定装置10は、制御部11と、操作部12と、表示部13と、記憶部14とを備える。制御部11は、現場付けパネル33の仮固定位置を決定する制御処理等、各種処理を行うもので、操作部12、表示部13及び記憶部14とそれぞれ接続されている。
操作部12は、制御部11による処理に必要な情報を入力操作するためのもので、キーボードやマウス等を備えて構成されている。表示部13は、制御部11による処理の結果を表示するためのもので、ディスプレイからなる。記憶部14は、制御部11による処理に必要な各種情報を記憶するもので、複数のデータベース15〜17を有している。
続いて、仮固定位置決定装置10により行われる制御処理の内容について説明する。ここでは、現場付けパネル33の仮固定位置を決定する制御処理の内容について図5に基づき説明する。図5は、かかる制御処理の流れを示すフローチャートとなっている。なお、本処理は、ユーザ(例えば設計者)の操作部12による開始操作をトリガとして開始され、制御部11により実行されるものとなっている。また、ここでは、上述した建物30を対象として、本処理が行われることを想定している。したがって、この場合、建物30が対象建物に相当する。
図5に示すように、まずステップS11では、建物30の設計データ(詳しくはCADデータ)を取得する。記憶部14には、あらかじめ建物30の設計データが記憶されており、その記憶部14から当該設計データを読み出して取得する。続くステップS12では、その取得した建物30の設計データに基づいて、建物30に含まれる現場付けパネル33(33A〜33D)を特定する。
ステップS13では、上記特定した現場付けパネル33(33A〜33D)を仮固定するための建物ユニット20の候補を選定する。この場合、各建物ユニット20のうち、現場付けパネル33と同じ一階部分に設けられた各建物ユニット20A〜20Dを、仮固定するための建物ユニット20の候補として選定する。
ステップS14及びS15では、上記選定した各建物ユニット20A〜20Dの側面部26において、現場付けパネル33を仮固定することが可能な仮固定可能領域を特定する処理を行う。この仮固定可能領域を特定する処理は、建物30の設計データに基づいて行う。以下、この処理の流れについて、図6を参照しながら説明する。図6は、仮固定可能領域を特定する処理を説明するための図である。
まずステップS14において、各建物ユニット20A〜20Dにおける4つの側面部26のうち、工場付けの外壁パネル32が取り付けられていない側面部26を未取付側面部36として特定する。図6(a)では、その特定された未取付側面部36が長円により囲まれた状態で示されている。図6(a)に示すように、各建物ユニット20A〜20Dのうち、端部に配置されている各建物ユニット20A,20Dについては、4つの側面部26のうち3面に外壁パネル32が取り付けられている。そのため、これらの建物ユニット20A,20Dについては残りの一面が未取付側面部36として特定される。また、中間部に配置されている各建物ユニット20B,20Cについては、4つの側面部26のうち2面に外壁パネル32が取り付けられている。そのため、これらの建物ユニット20B,20Cについては残りの2面が未取付側面部36として特定される。
続いて、ステップS15において、上記特定した各建物ユニット20A〜20Dの未取付側面部36のうち、現場付けパネル33を実際に仮固定することが可能な領域を仮固定可能領域37として特定する。図6(b)では、その特定された仮固定可能領域37が長円により囲まれた状態で示されている。本実施形態では、現場付けパネル33の仮固定を禁止する仮固定禁止領域38が予め定められている。そして、本ステップでは、未取付側面部36ごとに、未取付側面部36に仮固定禁止領域38が含まれているか否かを判断し、含まれている場合には、未取付側面部36のうち、仮固定禁止領域38以外の領域を仮固定可能領域37として特定する。また、未取付側面部36に仮固定禁止領域38が含まれていない場合には未取付側面部36全体を仮固定可能領域37として特定する。
図6(b)の例では、建物ユニット20Aにおいて、未取付側面部36における一部の領域が仮固定禁止領域38としての通路領域38a及び階段出入領域38bとなっている。したがって、建物ユニット20Aにおいては、未取付側面部36のうち、通路領域38a及び階段出入領域38bを除いた領域が仮固定可能領域37として特定される。なお、通路領域38aとは、建物ユニット20A内に出入りする際に通る領域であり、この領域に現場付けパネル33が仮固定されると、建物ユニット20Aに出入りすることができなくなってしまう。また、階段出入領域38bとは、建物ユニット20A内に設置された階段41に出入りする際に通る領域であり、この領域に現場付けパネル33が仮固定されると、階段41への出入りができなくなってしまう。このため、本実施形態では、これら通路領域38a及び階段出入領域38bをそれぞれ仮固定禁止領域38として定めている。
また、各建物ユニット20B,20Cにおいては、2面の各未取付側面部36のうち、一方の未取付側面部36において、その一部が仮固定禁止領域38としての間仕切・建具領域38cとなっている。したがって、この未取付側面部36においては、間仕切・建具領域38c以外の領域が仮固定可能領域37として特定される。なお、間仕切・建具領域38cとは、建物ユニット20B,20C内に設けられた間仕切壁42及び建具43の少なくとも一方が存在する領域であり、この領域に対しては現場付けパネル33を仮固定することが不可能となっている。このため、本実施形態では、この間仕切・建具領域38cを仮固定禁止領域38として定めている。
また、各建物ユニット20B,20Cでは、他方の未取付側面部36に仮固定禁止領域38が含まれていない。また、建物ユニット20Dでは、その未取付側面部36に仮固定禁止領域38が含まれていない。そのため、これらの未取付側面部36では、その全体が仮固定可能領域37として特定される。
ステップS16では、各現場付けパネル33A〜33Dを建物ユニット20A〜20Dの仮固定可能領域37において仮固定する際の、各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置について、複数の配置パターン(以下、仮固定パターンという)を作成する。この場合、例えば、各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定パターンとして想定されうる全てのパターンを作成する。図7には、その作成された仮固定パターンが複数例示されている。なお、図7(a)〜(d)では、図3(b)と同様、現場付けパネル33A〜33Dを仮固定位置から取り外して本取付位置へと運ぶ際の移動経路が示されている。
ステップS17では、各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置を決定する仮固定位置決定処理を行う。以下、この仮固定位置決定処理について図8に基づいて説明する。図8は、仮固定位置決定処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、仮固定位置決定処理では、まずステップS21において、ステップS16で作成された複数の仮固定パターンのうちいずれかの仮固定パターンを選択する。例えば、図7(a)〜(d)のうちいずれかに示す仮固定パターンを選択する。続くステップS22では、その選択した仮固定パターンにしたがって、建物30の設計データ上に各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置を仮設定する。
ステップS23〜S26では、上記のように仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置にそれら各現場付けパネル33A〜33Dが仮固定された場合に、施工現場にて発生する当該仮固定に伴う作業について、その作業に要する工数を算出する。ここでは、かかる作業工数を各現場付けパネル33A〜33Dごとに順次算出することとしており、以下においては、その算出の流れについて詳しく説明する。
まずステップS23では、各現場付けパネル33A〜33Dのうち、工数算出の対象となる現場付けパネル33を選択する。続くステップS24では、その選択した現場付けパネル33を対象として、工数算出処理を行う。以下、この工数算出処理について図9に示すフローチャートに基づき説明する。なお、以下では、工数算出処理の対象となる現場付けパネル33を現場付けパネル33Xという。
図9に示すように、工数算出処理では、まずステップS41において、仮設定された現場付けパネル33Xの仮固定位置に当該現場付けパネル33Xが仮固定された場合に、その現場付けパネル33Xを当該仮固定位置から取り外すのに要する工数(以下、第1工数という)を算出する。この場合、仮設定された現場付けパネル33Xの仮固定位置に基づき、第1工数を算出する。具体的には、第1工数の算出に際しては、現場付けパネル33の仮固定位置と第1工数との関係を予め定めた第1工数基準を用いる。
第1工数基準は、現場付けパネル33の仮固定位置が、建物ユニット20の側面部26のうち、他の建物ユニット20と隣接する隣接側面部26aに設定される場合と、他の建物ユニット20と隣接しない非隣接側面部26bに設定される場合とについてそれぞれ第1工数を規定したものである。この第1工数基準について詳しく説明すると、例えば現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の隣接側面部26aに設定されている場合(例えば図7(b)における現場付けパネル33C,33Dを参照)、現場付けパネル33を仮固定位置から取り外す作業を建物ユニット20内で行う必要がある。つまり、現場付けパネル33を仮固定しているボルト等を取り外し、その後現場付けパネル33を上方に吊り上げて取り外す、といった作業を建物ユニット20内で行う必要がある。しかしながら、建物ユニット20内ではこれらの作業を行うスペースの確保が困難であり、取り外しの作業に大きな工数を要することが考えられる。一方、現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の非隣接側面部26bに設定されている場合(例えば図7(a)における現場付けパネル33A,33Cを参照)、現場付けパネル33を仮固定位置から取り外す作業を屋外(詳しくは離し置き領域28)で行うことが可能となる。このため、取り外しの作業を行うためのスペースが広く確保されており、取り外しの作業に大きな工数を要しないと考えられる。
そこで、本実施形態では、上記の点を鑑み、第1工数基準として、現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の隣接側面部26aに設定される場合には第1工数をa1とし、現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の非隣接側面部26bに設定される場合には第1工数をa1よりも小さいa2とする規定を用いることとしている(a1>a2)。したがって、本ステップS41においては、仮設定された現場付けパネル33Xの仮固定位置が隣接側面部26aにある場合には当該現場付けパネル33Xの第1工数K1をa1として算出し、また仮設定された現場付けパネル33Xの仮固定位置が非隣接側面部26bにある場合には当該現場付けパネル33Xの第1工数K1をa2として算出する。
ステップS42では、各建物ユニット20A〜20Dが所定の設置位置に設置された状態における、仮設定された現場付けパネル33Xの仮固定位置から当該現場付けパネル33Xの本取付位置までの移動距離を算出する。この移動距離の算出は、建物30の設計データに基づき行う。
ステップS43では、上記算出された移動距離に基づき、仮固定位置から取り外した現場付けパネル33Xを当該仮固定位置から本取付位置まで運ぶのに要する工数(以下、第2工数という)を算出する。この第2工数の算出に際しては、現場付けパネル33の仮固定位置と第2工数との関係を予め定めた第2工数基準を用いる。この第2工数基準は、仮固定位置から本取付位置までの移動距離と第2工数との関係を規定したものであり、詳しくは移動距離をLとした場合、第2工数はα×L(αは定数)であると規定したものである。したがって、本ステップS43では、上記ステップS42で算出された移動距離Lにαを掛けることにより現場付けパネル33Xの第2工数K2を算出する。
ステップS44では、仮設定された現場付けパネル33Xの仮固定位置に当該現場付けパネル33Xが仮固定された場合に、当該現場付けパネル33Xと干渉する干渉部材が建物ユニット20内に存在するか否かを判定する。この判定は、建物30の設計データに基づき行う。干渉部材としては、キッチン設備や、空調設備といった設備機器等が挙げられる。例えば図7(a)では、建物ユニット20Aに仮固定された現場付けパネル33Bが建物ユニット20A内に設けられたキッチン設備45と干渉している。したがって、この場合、キッチン設備45が干渉部材に相当することになる。
ここで、設備機器等の干渉部材は、製造工場においてあらかじめ建物ユニット20内に組み込まれるのが通常である。そのため、現場付けパネル33の仮固定位置が干渉部材と干渉する位置にある場合、現場付けパネル33を製造工場において仮固定位置に仮固定することができなくなってしまう。したがって、現場付けパネル33をかかる仮固定位置に仮固定するに際しては、製造工場において干渉部材を建物ユニット20内に組み込むのをやめ、施工現場において、現場付けパネル33を仮固定位置から取り外した後、干渉部材を建物ユニット20内に組み込む必要がある。したがって、この場合、施工現場において、干渉部材を建物ユニット20内に組み込む工数(以下、第3工数という)が発生することになってしまう。
そこで、ステップS44において、現場付けパネル33Xと干渉する干渉部材が存在する場合、ステップS45及びS46において、その干渉部材について生じる第3工数を算出するための処理を行う。この場合、まずステップS45において、干渉部材の種類を特定する。干渉部材の種類としては、キッチン設備、空調設備、階段等、複数の種類があり、ここでは、建物30の設計データに基づき、干渉部材がいずれの種類であるかを特定する。
続くステップS46では、上記特定された干渉部材を建物ユニット20内に組み込む際に要する工数(つまり第3工数)を算出する。この第3工数の算出に際しては、干渉部材の種類ごとに第3工数をあらかじめ規定した第3工数基準を用いる。この場合、上記ステップS45で特定された干渉部材の種類に対応する第3工数を第3工数基準より取得し、その取得した第3工数を現場付けパネル33Xの第3工数K3として算出する。
ステップS46において第3工数K3を算出した後、ステップS47に進む。また、上述したステップS44において、干渉部材が存在しないと判定された場合にも、ステップS47に進む。
ステップS47では、現場付けパネル33Xについて、上記各ステップS41,S43,S46で算出した各工数の総和をパネル工数K(X)として算出する。具体的には、上記ステップS44で干渉部材が存在すると判定された場合には、ステップS41で算出された第1工数K1と、ステップS43で算出された第2工数K2と、ステップS46で算出された第3工数K3との総和をパネル工数K(X)として算出する(K1+K2+K3=K(X))。また、上記ステップS44で干渉部材が存在しないと判定された場合には、上記ステップS41,S43で算出された第1工数K1及び第2工数K2の総和をパネル工数K(X)として算出する(K1+K2=K(X))。その後、本処理を終了する。
図8の説明に戻って、工数算出処理(ステップS24)の後のステップS25では、全ての現場付けパネル33について工数算出処理が終了したか否かを判定する。全ての現場付けパネル33について工数算出処理が終了していない場合、つまりまだ工数算出処理を終えていない現場付けパネル33がある場合にはステップS23に戻り、工数算出処理を終えていない現場付けパネル33を選択して工数算出処理を行う。このようにして、各現場付けパネル33(33A〜33D)について順次工数算出処理を行い、全ての現場付けパネル33について工数算出処理を終了した後、ステップS26に進む。
ステップS26では、工数算出処理により算出された各現場付けパネル33A〜33Dのパネル工数K(X)を積算し、その積算値をそれら現場付けパネル33A〜33Dの総工数Ktとして算出する。これにより、ステップS21で選択された仮固定パターンについて、各現場付けパネル33A〜33Dの総工数Ktが算出される。
ステップS27では、全ての仮固定パターンについて、現場付けパネル33A〜33Dの総工数Ktの算出が終了したか否かを判定する。全ての仮固定パターンについて、総工数Ktの算出が終了していない場合、すなわち、総工数Ktの算出が終了していない仮固定パターンがまだ残っている場合には、ステップS21に戻り、総工数Ktの算出が終了していない仮固定パターンを選択して再度ステップS22〜S26の処理を行う。このように、各仮固定パターンについて順次ステップS22〜S26の各処理が行われる。つまり、各仮固定パターンについて順次総工数Ktの算出が行われる。そして、全ての仮固定パターンについて、総工数Ktの算出が終了した後、ステップS28に進む。
ステップS28では、上記算出された各仮固定パターンの総工数Ktを比較し、最も総工数Ktが小さかった場合の仮固定パターンを特定する。ここで、図7(a)〜(d)に示す各仮固定パターンについて、算出される総工数Ktを比較してみる。図7(a)の仮固定パターンでは、現場付けパネル33Bの仮固定位置がキッチン設備45と干渉する位置に仮設定されているため、キッチン設備45について第3工数が算出される。また、各現場付けパネル33B〜33Dについては、仮固定位置から本取付位置までの移動距離が大きくなっているため、第2工数が大きな工数として算出される。したがって、図7(a)の仮固定パターンでは、総工数Ktが大きな工数で算出されることになる。
図7(b)に示す仮固定パターンでは、各現場付けパネル33A〜33Cの仮固定位置が建物ユニット20の隣接側面部26aに仮設定されているため、これら各現場付けパネル33A〜33Cについては第1工数が大きな工数(a1)で算出される。また、各現場付けパネル33A〜33Dのそれぞれについて仮固定位置から本取付位置までの移動距離が大きくなっているため、各現場付けパネル33A〜33Dそれぞれについて第2工数が大きな工数として算出される。したがって、図7(b)の仮固定パターンでは、総工数Ktが大きな工数で算出されることになる。
図7(c)に示す仮固定パターンでは、各現場付けパネル33A〜33Dがそれぞれ建物ユニット20の非隣接側面部26bに仮設定されているため、各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数がそれぞれ小さな工数(a2)で算出される。ただ、その一方で、各現場付けパネル33A〜33Dのそれぞれについて仮固定位置から本取付位置までの移動距離が大きくなっているため、各現場付けパネル33A〜33Dそれぞれについて第2工数が大きな工数で算出される。したがって、図7(c)の仮固定パターンでは、総工数Ktが比較的大きな工数で算出されることになる。ただ、この仮固定パターンでは、総工数Ktが、上記図7(a)及び(b)の仮固定パターンよりも小さな工数で算出されることになる。
図7(d)に示す仮固定パターンでは、図7(c)の仮固定パターンと同様、各現場付けパネル33A〜33Dがそれぞれ建物ユニット20の非隣接側面部26bに仮設定されているため、各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数がそれぞれ小さな工数(a2)として算出される。また、各現場付けパネル33A,33C,33Dについては仮固定位置から本取付位置までの移動距離が小さくなっているため、これら各現場付けパネル33A,33C,33Dについては第2工数が小さな工数として算出される。したがって、図7(d)の仮固定パターンでは、総工数Ktが小さな工数で算出されることになる。
以上より、図7(a)〜(d)の各仮固定パターンのうちで、図7(d)の仮固定パターンにおいて、総工数Ktが最も小さくなる。また、これら図7(a)〜(d)の仮固定パターン以外の仮固定パターンについては図示を省略しているが、それら図示を省略した仮固定パターンを含めても、図7(d)の仮固定パターンにおいて総工数Ktが最も小さくなる。したがって、本ステップS28では、図7(d)の仮固定パターンが最も総工数Ktが小さい仮固定パターンとして特定される。
ステップS29では、上記ステップS28で特定された仮固定パターンにしたがい仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置をそれぞれ各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置として決定(本決定)する。その後、本処理(仮固定位置決定処理)を終了する。
図5の説明に戻り、仮固定位置決定処理(ステップS17)の後のステップS18では、仮固定位置決定処理による処理の結果を表示部13に出力する出力処理を行う。これにより、表示部13には、上記処理の結果、すなわち仮固定位置決定処理により決定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置が表示される。なお、出力処理では、プリンタ等、表示部13以外の出力機器に処理結果を出力するようにしてもよい。その後、本処理を終了する。
以上が、仮固定位置決定装置10により行われる制御処理についての説明である。
ここで、本仮固定位置決定装置10は、過去に施工されたユニット式建物(詳しくは現場付けパネルを有するユニット式建物)について、施工現場において実際に発生した第1工数、第2工数及び第3工数に関する実績データ(工数実績データ)を蓄積する工数データベース15〜17を備えている。これら各工数データベース15〜17は上述したように記憶部14により構築されている。各工数データベース15〜17のうち、第1工数データベース15には第1工数に関する実績データ(第1工数実績データ)が蓄積され、第2工数データベース16には第2工数に関する実績データ(第2工数実績データ)が蓄積され、第3工数データベース17には第3工数に関する実績データ(第3工数実績データ)が蓄積されている。
本仮固定位置決定装置10では、第1工数データベース15に蓄積された第1工数実績データに基づき第1工数基準を作成し、第2工数データベース16に蓄積された第2工数実績データに基づき第2工数基準を作成し、第3工数データベース17に蓄積された第3工数実績データに基づき第3工数基準を作成することとしている。この場合、仮固定位置決定装置10は、例えば工数データベース15〜17ごとに、その工数データベース15〜17に蓄積された工数基準データを深層学習することで、各々の工数基準を作成する。そこで、以下においては、これら各工数基準の作成に関する処理の内容について順に説明する。
まず、第1工数データベース15に蓄積された第1工数実績データに基づき、第1工数基準を作成する際の処理内容について説明する。
第1工数データベース15には、過去に施工されたユニット式建物について、その現場付けパネルが仮固定された仮固定位置に関する情報と、その仮固定位置での仮固定に伴い実際に生じた第1工数の実績データとが対応付けられた状態で第1工数実績データとして記憶されている。図10(a)には、その記憶された第1工数実績データが例示されている。図10(a)に示すように、第1工数実績データでは、仮固定位置に関する情報が、その仮固定位置が建物ユニット20の隣接側面部26a又は非隣接側面部26bのいずれにあるのかに関する情報(隣接側面情報)となっている。したがって、第1工数実績データとしては、仮固定位置が隣接側面部26aにある場合における第1工数の実績データと、仮固定位置が非隣接側面部26bにある場合における第1工数の実績データとがそれぞれ記憶されている。
第1工数実績データは、ユーザによる操作部12の入力操作等に基づき、第1工数データベース15に記憶されるようになっている。詳しくは、第1工数実績データに含まれる仮固定位置情報(隣接側面情報)については、ユニット式建物の設計データ(詳しくは仮固定位置情報を含む設計データ)に基づき、制御部11により取得される。また、第1工数実績データに含まれる第1工数の実績データについては、ユーザによる操作部12の入力操作に基づき制御部11により取得される。そして、制御部11は、それら取得された仮固定位置情報及び第1工数(実績データ)を対応付けた状態で第1工数実績データとして第1工数データベース15に記憶する。このようにして、第1工数データベース15には第1工数実績データが蓄積されるようになっている。
制御部11は、第1工数データベース15に蓄積された第1工数実績データに基づき、第1工数基準を作成する。第1工数基準は、上述したように、現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の隣接側面部26aに設定される場合には第1工数をa1とし、現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の非隣接側面部26bに設定される場合には第1工数をa2とする規定となっている(a1>a2)。そこで、制御部11により第1工数基準を作成するに際しては、次のような処理を行う。
まず、制御部11は、仮固定位置が隣接側面部26aにある場合における第1工数の実績データに基づき、仮固定位置が隣接側面部26aに設定された場合における第1工数a1(つまり第1工数基準における第1工数a1)を規定する。例えば、仮固定位置が隣接側面部26aにある場合における第1工数の各実績データの平均値を算出し、その算出した平均値を仮固定位置が隣接側面部26aに設定された場合の第1工数a1として規定する。
また、制御部11は、仮固定位置が非隣接側面部26bにある場合における第1工数の実績データに基づき、仮固定位置が非隣接側面部26bに設定された場合における第1工数a2(つまり第1工数基準における第1工数a2)を規定する。例えば、仮固定位置が非隣接側面部26bにある場合における第1工数の各実績データの平均値を算出し、その算出した平均値を仮固定位置が非隣接側面部26bに設定された場合の第1工数a2として規定する。
このようにして、制御部11は、第1工数実績データに基づき第1工数基準を作成する。なお、第1工数基準の作成は、例えば、上述した仮固定位置を決定するための制御処理(図5)が開始される際に行うことが考えられる。
続いて、第2工数データベース16に蓄積された第2工数実績データに基づき、第2工数基準を作成する際の処理内容について説明する。
第2工数データベース16には、過去に施工されたユニット式建物について、その現場付けパネルが仮固定された仮固定位置に関する情報と、その仮固定位置での仮固定に伴い実際に生じた第2工数の実績データとが対応付けられた状態で第2工数実績データとして記憶されている。図10(b)には、その記憶された第2工数実績データが例示されている。図10(b)に示すように、第2工数実績データでは、仮固定位置に関する情報が、その(現場付けパネルの)仮固定位置から当該現場付けパネルの本取付位置までの移動距離に関する情報(移動距離情報)となっている。そのため、第2工数実績データは、その移動距離情報と第2工数の実績データとが対応付けられたデータとなっている。
第2工数実績データは、ユーザによる操作部12の入力操作等に基づき、第2工数データベース16に記憶されるようになっている。詳しくは、第2工数実績データに含まれる仮固定位置情報(移動距離情報)については、ユニット式建物の設計データ(詳しくは仮固定位置情報を含む設計データ)に基づき、制御部11により取得される。この場合、制御部11は、ユニット式建物の設計データに基づき、仮固定位置から本取付位置までの移動距離を算出し、その算出した移動距離を移動距離情報(つまりは仮固定位置情報)として取得する。また、第2工数実績データに含まれる第2工数の実績データについては、第1工数の実績データと同様、ユーザによる操作部12の入力操作に基づき制御部11により取得される。そして、制御部11は、それら取得された仮固定位置情報(移動距離情報)及び第2工数(実績データ)を対応付けた状態で第2工数実績データとして第2工数データベース16に記憶する。このようにして、第2工数データベース16には第2工数実績データが蓄積されるようになっている。
制御部11は、第2工数データベース16に蓄積された第2工数実績データに基づき、第2工数基準を作成する。第2工数基準は、上述したように、仮固定位置から本取付位置までの移動距離Lと第2工数との関係を規定したものであり、詳しくは第2工数はα×L(αは定数)であると規定したものである。そこで、制御部11により第2工数基準を作成するに際しては、次のような処理を行う。
制御部11は、第2工数データベース16に記憶された各第2工数実績データごとに、第2工数(実績データ)を移動距離で除することにより距離係数を算出する。そして、制御部11は、それら算出した各第2工数実績データの距離係数の平均値を算出し、その算出した平均値を第2工数基準における上記αとして規定する。
このようにして、制御部11は、第2工数実績データを基に第2工数基準を作成する。なお、第2工数基準の作成は、例えば、上述した仮固定位置を決定するための制御処理(図5)が開始される際に行うことが考えられる。
続いて、第3工数データベース17に蓄積された第3工数実績データに基づき、第3工数基準を作成する際の処理内容について説明する。
第3工数データベース17には、過去に施工されたユニット式建物について、建物ユニット内に設けられた干渉部材の種類に関する情報(干渉部材情報)と、その干渉部材と干渉する位置に現場付けパネルを仮固定したことに伴い生じた第3工数の実績データとが対応付けられた状態で第3工数実績データとして記憶されている。図10(c)には、その記憶された第3工数実績データが例示されている。
第3工数実績データは、ユーザによる操作部12の入力操作等に基づき、第3工数データベース17に記憶されるようになっている。詳しくは、第3工数実績データに含まれる干渉部材情報については、ユニット式建物の設計データ(詳しくは仮固定位置情報を含む設計データ)に基づき、制御部11により取得される。また、第3工数実績データに含まれる第3工数の実績データについては、ユーザによる操作部12の入力操作に基づき制御部11により取得される。そして、制御部11は、それら取得された干渉部材情報及び第3工数(実績データ)を対応付けた状態で第3工数実績データとして第3工数データベース17に記憶する。このようにして、第3工数データベース17には第3工数実績データが蓄積されるようになっている。
制御部11は、第3工数データベース17に蓄積された第3工数実績データに基づき、第3工数基準を作成する。第3工数基準は、上述したように、干渉部材の種類ごとに第3工数を規定したものである。そこで、制御部11により第3工数基準を作成するに際しては、次のような処理を行う。
制御部11は、干渉部材の種類ごとに、第3工数の実績データの平均値を算出する。そして、制御部11は、干渉部材の種類ごとに、その算出した第3工数(実績データ)の平均値を第3工数基準における第3工数として規定する。例えば、干渉部材の種類がキッチン設備である場合には、キッチン設備における第3工数の各実績データの平均値を算出し、その算出した平均値をキッチン設備の第3工数として規定する。
このようにして、制御部11は、第3工数実績データに基づき第3工数基準を作成する。なお、第3工数基準の作成は、例えば、上述した仮固定位置を決定するための制御処理(図5)が開始される際に行うことが考えられる。
以上が、工数データベース15〜17に蓄積された工数実績データに基づき、工数基準(第1工数基準〜第3工数基準)を作成する処理についての説明である。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
建物30(対象建物に相当)の設計データ上において各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置が複数の配置パターン(仮固定パターン)で仮設定され、そして、各仮固定パターンごとに、その仮固定パターンで仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置に基づき、それら各現場付けパネル33A〜33Dについて仮固定に伴い生じる第1工数K1及び第2工数K2が算出される。すなわち、現場付けパネル33A〜33Dを仮固定位置から取り外す際に要する工数(第1工数K1)と、その取り外した現場付けパネル33A〜33Dを仮固定位置から本取付位置まで運ぶのに要する工数(第2工数K2)とがそれぞれ算出される。この場合、第1工数K1の算出に際しては、仮固定位置と第1工数との関係があらかじめ定められた第1工数基準が用いられ、第2工数K2の算出に際しては、仮固定位置と第2工数との関係があらかじめ定められた第2工数基準が用いられる。そして、このように算出された各仮固定パターンごとの各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2に基づき、各仮固定パターンのうちいずれかの仮固定パターンで仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置がそれら各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置として決定(本決定)される。
具体的には、各仮固定パターンごとに算出される各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2に基づき、各仮固定パターンごとに各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2を含む各工数(詳しくは、第3工数K3が生じている場合には第3工数K3も含む)が積算され、そして、その積算された積算値が各現場付けパネル33A〜33Dの総工数Ktとして算出される。そして、このように各仮固定パターンごとに算出された総工数Ktのうち、総工数Ktが最小となる仮固定パターンが特定され、その特定された仮固定パターンにしたがって仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置がそれら各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置として決定(本決定)される。これにより、複数の現場付けパネル33A〜33Dを建物ユニット20に仮固定した状態に輸送する場合において、それら各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定に伴い生じる施工現場での作業について工数低減を大いに図ることが可能な仮固定位置を得ることが可能となる。
各仮固定パターンごとに、その仮固定パターンで仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置に基づき、それら各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2が算出されることに加え、仮設定された現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置に現場付けパネル33A〜33Dと干渉する干渉部材(例えばキッチン設備45)が存在する場合には、その干渉部材を建物ユニット20内に組み込むのに要する第3工数K3が算出される。そして、このように算出された各仮固定パターンごとの各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2に加え、第3工数K3を加味して、各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置が決定(本決定)される。
具体的には、各仮固定パターンごとに算出される各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2に加え、各仮固定パターンごとに干渉部材が存在する場合に算出される第3工数K3に基づき、各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1及び第2工数K2と、干渉部材に伴い生じた第3工数K3とが積算され、そして、その積算された積算値が各現場付けパネル33A〜33Dの総工数Ktとして算出される。そして、このように各仮固定パターンごとに算出された総工数Ktのうち、総工数Ktが最小となる仮固定パターンが特定され、その特定された仮固定パターンにしたがって仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置がそれら各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置として決定(本決定)される。この場合、第3工数を加味して現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置が決定されるため、現場付けパネル33A〜33Dの仮固定に伴い発生する施工現場での作業について工数低減を図ることが可能な仮固定位置をより確実に得ることができる。
現場付けパネル33が建物ユニットの隣接側面部26aに仮固定される場合には、現場付けパネル33の取り外しの作業が建物ユニット20内で行われることになるため、その取り外しの作業に際しスペースの確保が困難となり、その作業に際し大きな工数(第1工数)を要することが考えられる。その一方、現場付けパネル33が非隣接側面部26bに仮固定される場合には、現場付けパネル33の取り外し作業を屋外で行うことが可能となるため、取り外し作業を行うためのスペースが広く確保され、その作業に際し工数(第1工数)の低減を図ることが可能となる。
そこで、上記の実施形態では、こうした点を鑑み、第1工数の算出に用いる第1工数基準として、仮固定位置が隣接側面部26aにある場合には第1工数をa1とし、仮固定位置が非隣接側面部26bには第1工数をa1よりも小さいa2とする規定のものを用いている(a1>a2)。これにより、第1工数基準を用いて第1工数を算出するに際し、その第1工数を好適に算出することが可能となる。
施工現場にて仮固定位置から取り外した現場付けパネル33をその仮固定位置から本取付位置まで運ぶのに要する作業工数(第2工数)は、仮固定位置から本取付位置までの移動距離に依存することが考えられる。そこで上記の実施形態では、こうした点に着目し、第2工数の算出に用いる第2工数基準として、仮固定位置から本取付位置までの移動距離と第2工数との関係を規定したものを用いている。詳しくは、第2工数基準は移動距離Lが大きいほど第2工数が大きくなる関係を規定したものとなっており、より詳しくは第2工数をα×Lと規定したものとなっている。
第2工数の算出に際しては、仮設定された仮固定位置から本取付位置までの移動距離が算出され、その算出された移動距離に基づき第2工数基準を用いて第2工数が算出される。これにより、第2工数基準を用いて第2工数を算出するにあたって、その第2工数を好適に算出することができる。
第1工数データベース15には、過去に施工されたユニット式建物において、現場付けパネルが仮固定された仮固定位置ごとに、その仮固定位置に関する情報(具体的には隣接側面情報)と、その仮固定位置での仮固定に伴い実際に生じた第1工数の実績データとが対応付けられた状態で第1工数実績データとして記憶されている。そして、この第1工数データベース15に記憶された第1工数実績データに基づき、第1工数基準が作成される。この場合、第1工数基準を用いて第1工数を算出するにあたり、現場での実際の作業に即した工数を算出することが可能となる。
同様に、第2工数データベース16には、過去に施工されたユニット式建物において、現場付けパネルが仮固定された仮固定位置ごとに、その仮固定位置に関する情報(具体的には移動距離情報)と、その仮固定位置での仮固定に伴い実際に生じた第2工数の実績データとが対応付けられた状態で第2工数実績データとして記憶されている。そして、この第2工数データベース16に記憶された第2工数実績データに基づき、第2工数基準が作成される。この場合、第2工数基準を用いて第2工数を算出するにあたり、現場での実際の作業に即した工数を算出することが可能となる。
第3工数データベース17には、過去に施工されたユニット式建物について、建物ユニット内に設けられた干渉部材の種類に関する情報(干渉部材情報)と、その干渉部材と干渉する位置に現場付けパネルを仮固定したことに伴い生じた第3工数の実績データとが対応付けられた状態で第3工数実績データとして記憶されている。そして、この第3工数データベース17に記憶された第3工数実績データに基づき、第3工数基準が作成される。この場合、第3工数基準を用いて第3工数を算出するにあたり、現場での実際の作業に即した工数を算出することが可能となる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、仮固定パターンごとに算出した各現場付けパネル33A〜33Dの総工数Ktのうち、総工数Ktが最小となる仮固定パターンにしたがって仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置をそれら各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置として決定(本決定)したが、各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置の決定は必ずしもこのように行う必要はない。
例えば、仮固定パターンごとに、各現場付けパネル33A〜33Dの第1工数K1の総和を総第1工数として算出するとともに、各現場付けパネル33A〜33Dの第2工数K2の総和を総第2工数として算出する。そして、それら算出した各仮固定パターンごとの総第1工数及び総第2工数に基づき、各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置を決定することが考えられる。具体的には、総第1工数が予め定められた第1基準値以下となっており、かつ、総第2工数が予め定められた第2基準値以下となっている仮固定パターンを特定し、その特定した仮固定パターンにしたがって仮設定された各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置をそれら各現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置として決定(本決定)することが考えられる。この場合にも、現場付けパネル33A〜33Dの仮固定に伴い発生する現場での作業について工数低減を図ることが可能な、仮固定位置を得ることができる。
(2)上記実施形態では、第1工数基準として、現場付けパネル33の仮固定位置が、建物ユニット20の隣接側面部26aに設定される場合には第1工数をa1とし、非隣接側面部26bに設定される場合には第1工数をa2とする規定のものを用いたが(a1>a2)、これを変更してもよい。
例えば、現場付けパネル33が建物ユニット20の非隣接側面部26bに仮固定される場合には、施工現場で現場付けパネル33を建物ユニット20から取り外す際、その取り外しの作業を屋外で詳しくは離し置き領域28で行うことが可能となる。ここで、この取り外しの作業は、離し置き領域28のスペースが広いほど作業がし易いと考えられ、ひいては、離し置き領域28のスペースが広いほど当該作業を行う際の工数つまりは第1工数を低減させることができると考えられる。そこで、かかる点に鑑み、第1工数基準として、現場付けパネル33の仮固定位置が、非隣接側面部26bに設定される場合には、第1工数と離し置き領域28の広さ(例えば離し置きの間隔)との関係を定めたものを用いるようにしてもよい。具体的には、第1工数は離し置きの間隔が大きいほど小さくなる旨を規定したものを用いることが考えられ、例えば第1工数はα(定数)/離し置きの間隔であると規定したものを用いることが考えられる。この場合、離し置き領域28の広さを考慮して第1工数を算出することができるため、第1工数の算出をより精度よく行うことができる。
(3)現場付けパネル33を仮固定位置から本取付位置まで運ぶ際に要する第2工数は、仮固定位置から本取付位置までの移動経路が屋内(建物ユニット20内)にあるか屋外にあるかによっても変わってくることが考えられる。例えば、移動経路が屋内にある場合には、現場付けパネル33を運ぶ際に、内装を傷付けないよう配慮しながら運ぶ等する必要が生じ、第2工数が大きくなることが考えられる。そこで、このような点を鑑み、第2工数基準を以下のように変更することが考えられる。
第2工数基準は、第2工数をα×L(Lは移動距離)であると、規定したものである。そこで、第2工数基準におけるαを、仮固定位置から本取付位置までの移動経路が屋内にある場合にはα1とし、屋外にある場合にはα1よりも小さいα2とする規定としてもよい。この場合、移動経路が屋内外のいずれにあるかも加味して第2工数を算出することができるため、第2工数の算出をより精度よく行うことができる。
(4)ところで、現場付けパネル33の仕様には、パネルの大きさ(サイズ)が異なる複数の仕様や、パネルの形状が異なる複数の仕様等がある。現場付けパネル33の仕様が異なれば、施工現場にて、現場付けパネル33を仮固定位置から取り外す際に要する第1工数や、その取り外した現場付けパネル33を本取付位置まで持ち運ぶ際に要する第2工数が変わってくると考えられる。例えば、現場付けパネル33の大きさが大きかったり、現場付けパネル33の形状がL字状をなしていたりする場合(例えば、現場付けパネル33が建物の入隅部や出隅部に配置されるL字のコーナパネルになっている場合)には、第1工数及び第2工数が大きくなることが考えられる。
そこで、上記の点に鑑み、現場付けパネル33の第1工数及び第2工数を算出するにあたり、仮設定された現場付けパネル33の仮固定位置に加え、現場付けパネル33の仕様に基づき、算出を行うようにしてもよい。この場合、現場付けパネル33の仕様ごとに工数の大小を示す係数を定めた係数基準を用いて、上記の算出を行うことが考えられる。この係数基準は、現場付けパネル33の仕様として、第1工数、第2工数が大きくなる仕様(例えばパネルサイズが大きい仕様)では係数が大きく設定されている一方、第1工数、第2工数が小さくなる仕様(例えばパネルサイズが小さい仕様)では係数が小さく設定されている。そして、現場付けパネル33の第1工数の算出に際しては、その現場付けパネル33の仕様に対応する係数を係数基準より取得し、その取得した係数に基づいて第1工数を算出する。例えば、現場付けパネル33の仮固定位置に基づき算出した第1工数(つまり上記実施形態のステップS41で算出される第1工数)に、上記取得した係数を掛け合わせることで第1工数K1を算出することが考えられる。この場合、現場付けパネル33の仕様を考慮して当該現場付けパネル33の第1工数を算出することができるため、第1工数の算出精度を高めることができる。なお、現場付けパネル33の第2工数を算出するに際にも、上記同様の手順で算出を行うことが可能である。
(5)上記実施形態では、現場付けパネル33Xの工数算出処理(ステップS24)に際し、第1工数K1及び第2工数K2に加えて、干渉部材が存在する場合には第3工数K3を算出し、それら算出した各工数K1〜K3の総和をパネル工数K(X)として算出したが、これを変更して、工数算出処理に際し、第3工数K3については考慮せず、第1工数K1及び第2工数K2の総和をパネル工数K(X)として算出するようにしてもよい。この場合、現場付けパネル33の仮固定位置の決定に際し、第3工数K3が加味されないことになるものの、その場合にも、第1工数K1及び第2工数K2に基づいて、工数低減を図ることが可能な現場付けパネル33の仮固定位置を決定することが可能となる。
(6)上記実施形態では、第1工数データベース15に蓄積された第1工数実績データに基づき第1工数基準を作成したが、第1工数基準は必ずしも工数実績データに基づき作成する必要はない。例えば、現場付けパネル33の仮固定位置が建物ユニット20の隣接側面部26aに設定される場合と、非隣接側面部26bに設定される場合とでそれぞれ第1工数がどれくらいになるかを予め見積もっておき、それら見積もった第1工数の見積もり値に基づき、第1工数基準を作成するようにしてもよい。この場合、作成した第1工数基準を操作部12の入力に基づき設定するようにすればよい。なお、第2工数基準及び第3工数基準の作成についても同様に、工数の見積もり値に基づき作成するようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、建物30に含まれる複数の現場付けパネル33A〜33Dの仮固定位置を決定する場合について説明したが、例えば建物が現場付けパネルを1つしか有していない場合には、その一の現場付けパネルが建物ユニット20に仮固定されて輸送されることになる。そこで、そのような場合に、その一の現場付けパネルの仮固定位置を仮固定位置決定装置10を用いて決定するようにしてもよい。この場合、その一の現場付けパネルについて、その仮固定位置を複数箇所に仮設定し、それら仮設定された各仮固定位置ごとに工数算出処理(ステップS24)を実施するようにすることが考えられる。そして、それら各仮固定位置ごとに算出されるパネル工数K(X)を比較して、パネル工数K(X)が最小となる仮固定位置を当該現場付けパネルの仮固定位置として決定(本決定)することが考えられる。この場合にも、上記一の現場付けパネルの仮固定に伴い発生する施工現場での作業について工数低減を図ることが可能な仮固定位置を得ることができる。
(8)上記実施形態の建物30では、離し置きされた各建物ユニット20A,20B(20C,20D)の間の離し置き領域28に現場付けパネル33が設けられていたが、現場付けパネル33が離し置き領域28以外に設けられることもある。例えば、建物ユニット20から屋外側に延びる袖壁を備えた建物では、袖壁が建物ユニット20の側面部26とは異なる所定の位置に設けられるため、袖壁を構成する外壁パネルが施工現場において上記所定位置に取り付けられることになる。そのため、この場合にも、施工現場で取り付けられる外壁パネル(つまり現場付けパネル)を製造工場にて建物ユニット20に仮固定して輸送することが考えられる。したがって、かかる場合にも、現場付けパネルの仮固定位置を決定するにあたり仮固定位置決定装置10を用いることができる。