JP5806013B2 - 設計システム - Google Patents

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本発明は、建物、特に規格化・工業化された構造部材により架構が構成される建物における架構の設計システムに関する。
従来、建物を設計する設計システムとして、特許文献1に示す設計システムが知られている。これは架構を含む建物全体の設計システムであり、あらかじめ定めた設計ルールと部材情報および施工方法で建築可能を確認し、確認した設計データからプレハブ住宅を建築するための部材を算出するものである。その目的として、設計作業の効率化とともに、高い建築技能をもたない者にも一定品質の設計を可能にするようなサポート機能がある。
このような設計システムは、建築で使用する部材に関する部材情報を記憶した部材情報データベースと、建築に関する限定条件を示す設計情報を記憶した設計情報データベースと、を備えている。建物の架構の設計という部分に関していえば、ここでは構造用の部材の仕様や、それらの用法すなわち設計事例(たとえば「部位」という概念で規定された、部材名とその配置方法や組合せ方法など)を予め想定し、その想定範囲における個々の適・不適の判断を、データベースや関連プログラムに、言語的に記述している。
この設計システムを用いた場合、個々の建物の架構の設計において、設計者は、架構すなわち構造用の部材(以下「構造部材」とする)配置や部材どうしの納まりの詳細)を認識する必要がない。設計者の作業としては、たとえば設計ルールに従って柱の位置、床領域、外壁ライン等を設定するだけで、梁などの構造部材の配置は構造計算システムが自動生成するような構成となっている。この際、設計システムは設計情報データベースや関連プログラムと照合し、設計ルール違反(例えば、柱の位置の設定ミスなど)があった場合、エラーメッセージを表示し、設計者に警告する。設計ルール違反がなければ、システムが生成した構造部材の配置に基づき構造計算を実行する。構造計算の結果がOKとなれば、設計者は架構を確認することなく構造の検討作業が終了する。一方、自動生成された架構に基づく構造計算で結果がNGとなった場合、設計者は自動生成された部材配置を画面表示させ、NG部について、断面性能の高い部材に置き換えたり、梁を架け替えて部材荷重を軽減させるなど、手作業で個別に架構を部分的に変更し、OKになるまで構造計算を繰り返す。この場合も、言語表現として予め定められた部材配置ルール(たとえば「梁材Aを梁材Bに架けることはできない」など)に基づいて変更され、画面上は簡略化された様式(例えば柱を表す四角形や梁を表す直線などの絵や、部材記号など)で表示され、接合部の納まりなど詳細を確認することはできない。
特開2001−188812号公報
上述のような設計システムに係るルールによる納まりのチェックを、高い設計自由度が求められる建物(スキップフロアシステムを備えた建物など)に適用すると、ルールが膨大になりすぎ設計者やシステムの負荷(ルール決定の負荷とルールチェックの負荷の両方)が増大するという問題がある。
また、規格化・工業化された構造部材を架構に用いることで、上記設計システムで可能となる範囲よりはるかに多様な建物形態を構築することができる。特に鉄骨ラーメン構造は、架構が単純な格子形態であるため、よりいっそう多様な形態が可能となる。しかし、ルールで適用パターン等を限定すると設計上の制約が増えることにより、折角の構成自由度の高い、ユニバーサルな接合形態を有する構造部材(架構システム)が充分に活用されない、といった問題が生まれる。
一方、設計者には、構造部材の形態(外形や、接合部の状態など)を見ることにより、組み立てることが出来るか否かを読み取る能力が本来的に備わっている。例えば、構造部材同士の接合部において、ボルト孔の径や位置関係、接合部分の形状などを見れば、各構造部材同士が接合できるか否かは、システムでの演算によらず判断することができる。従来の設計システムでは、設計上のルールのみで適・不適を判断することで、設計者が納まりを見ながら自由に組み立てることを阻害している場合がある。一方、そのように設計者によって自由に組み立てられたモデルの構造性能を、システム上で効率よく計算し、確認する必要がある。
本発明は、そのような問題を解決するためになされたものであり、設計者が納まりを目視で確認しながら自由に構造部材の組み合わせることを可能とすると共に、当該モデルの構造性能を効率よく計算することのできる設計システムを提供することを目的とする。
本発明に係る設計システムは、構造部材を組み合わせることによって構成される建物の架構の設計システムであって、構造部材の識別情報、及び構造部材の形状情報を格納する第1の格納手段と、入力情報に基づいて、構造部材を組み合わせることによって、架構をモデリングするモデリング手段と、モデリング手段によってモデリングされた架構の三次元画像を表示する表示手段と、構造部材の識別情報、及び構造部材の構造計算情報を格納する第2の格納手段と、モデリング手段によってモデリングされた架構の構造計算を行う構造計算手段と、を備え、モデリング手段は、第1の格納手段に格納された識別情報及び形状情報と関連付けられた構造部材を用いて、架構をモデリングし、構造計算手段は、架構を構成する構造部材に関連付けられた識別情報に基づいて、当該構造部材の構造計算情報を第2の格納手段より取得することによって、構造計算を行うことを特徴とする。
本発明に係る設計システムは、入力情報に基づいて構造部材を組み合わせることによって、架構をモデリングするモデリング手段と、モデリング手段によってモデリングされた架構の三次元画像を表示する表示手段と、を備えている。また、モデリング手段は、第1の格納手段に格納された識別情報及び形状情報と関連付けられた構造部材を用いて、架構をモデリングするため、設計者は、表示手段で、構造部材の形状及びモデリングされた架構の形状を目視で確認しながら、自由に組み合わせることができる。ここで、モデリングにおける過度な設計ルールを排除しておくことにより、設計者は、構造部材の形状に基づいて接合可能性・配置可能性や納まりを目視で確認しながら、高い構成自由度で架構を設計することができる。また、設計システムは、モデリング手段によってモデリングされた架構の構造計算を行う構造計算手段を備えており、当該構造計算手段は、架構を構成する構造部材に関連付けられた識別情報に基づいて、当該構造部材の構造計算情報を第2の格納手段より取得することによって、構造計算を行う。このように、モデリング時に構造部材には識別情報を関連付け、構造計算時に当該識別情報に基づいて構造部材の構造計算情報を取得している。これによって、設計者が目視によって確認することで組み立てた架構を、効率よく構造計算することができる。以上によって、設計者が納まりを目視で確認しながら自由に構造部材の組み合わせることを可能とすると共に、当該モデルの構造性能を効率よく計算することができる。
また、本発明に係る設計システムにおいて、構造計算手段は、計算結果をモデリング手段へ出力し、モデリング手段は、構造計算手段による計算結果を、表示手段の架構の三次元画像に反映することが好ましい。このように、構造計算手段による計算結果を設計者にフィードバックすることで、設計者は計算結果を考慮して設計を行うことができる。
本発明に係る設計システムにおいて、モデリング手段は、一の構造部材と、他の構造部材との間の接合可能性を判定し、接合可能と判定した接合部分を、表示手段の架構の三次元画像上で表示することが好ましい。これによって、設計者は、組み合わせた構造部材が他の構造部材と接合可能か否かを、目視によって容易に判断することができる。
本発明によれば、設計者が納まりを目視で確認しながら自由に構造部材の組み合わせることを可能とすると共に、当該モデルの構造性能を効率よく計算することができる。
本発明の実施形態に係る設計システムの構成を示すブロック構成図である。 設計システムによる処理内容を示すフローチャートである。 モデリング部におけるモデリングの様子を示す図である。 構造部材の一例を示す図である。 構造部材の接合部分を示す三次元画像の一例を示す図である。 モデリング部において、データを構造計算部に送信する際の様子を示す図である。 構造計算部における処理の様子を示す図である。 構造計算部における構造計算がフィードバックされた架構の三次元画像の一例を示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る建物の架構の設計システムについて詳細に説明する。
本設計システムが対象とする建物は、鉄骨造ラーメン構造の架構を有する工業化住宅であり、予め規格化(標準化)された構造部材の組み合わせによって架構が構成される。構造部材は工場にて製造され、現場にて組み立て作業がなされる。
図3を参照して、基本架構の構成の一例について説明する。通り(布基礎)の交点上に立設された複数の柱(通し柱=複数の階層にわたって途中に梁が介在することなく連続的に立ち上がった柱)と、各通り上で、隣接する柱間に架け渡された複数の梁(大梁=柱で支持された梁)とで主架構が構成される。図3に示すように架構100は、柱102と梁101とが剛接合されたラーメン構造の構造形式を有する。
柱102は角形鋼管からなり、4つの側面には各階梁101との接合部を備え、夫々の接合部には梁をボルト接合するためのボルト孔が穿設される(例えば図5(a)参照)。柱脚部にはベースプレートが溶接され、露出型固定柱脚工法にて基礎に接合される。階高は所定の値に固定されているので、柱102は水平断面における外形寸法は統一されているが、長さについては後述のとおり複数のバリエーションを有する。各階の梁101は、H形鋼からなり、両端部には、鋼板からなりボルト孔が穿設されたエンドプレートが溶接されている(例えば図5(a)参照)。エンドプレートが通し柱102側面の梁101との接合部に当接されて高力ボルト接合される。
梁101は、平面モジュールMの整数倍の「呼び長さ(梁を架け渡す2本の柱間の芯‐芯寸法)」を有しており、平面モジュールMに対応した刻み寸法で複数種制定される。梁101の梁成、幅、ウェブ厚は、設置階や「呼び長さ」にかかわらず全て共通である。なおフランジ厚、ウェブ厚については接合に支障を生じない程度のバリエーションがある。(例えば、梁に取り付ける他の部材の寸法を統一し、部品種類を減らす為。フランジの内側には他の部材を取り付けないのでフランジ厚の変更は影響ない。)梁101の上下フランジ及びウェブには、平面モジュールMに基づくピッチで他の部材をボルト接合(固定)するためのボルト孔が穿設されている。対向する梁101には床パネル支持のための二次梁(小梁)が適宜架け渡される。二次梁101も平面モジュールの整数倍の呼び長さを有する。二次梁101は、平面視でT字状あるいはL字状のジョイント金物を介して梁(大梁)101のウェブにボルト接合される。ジョイント金物は梁(大梁)101のウェブに予めボルト接合されたのち、その突出片に二次梁101がボルト接合される。
更に本建物はスキップフロアシステムを有している。すなわち、柱102が各階層において高さの異なる梁接合部を複数有しており(または、各階層の梁接合部の高さの異なる柱102が予め構造部材として制定されており)、グリッド(4本の柱102とこれらに架設される梁101とからなる自立可能な最低限の架構単位、隣接するグリッドでは2本の柱102とこれに架設される梁101を共有する)単位で各階の梁101の設置高さを変えて床の高さを変える(スキップフロアを形成する)ことが可能である。スキップフロアが形成される階層においては、床段差部の梁101が異なる高さに2本架設されることになる。また、屋上階においてスキップフロアを形成する場合は、長さの異なる柱102が混在することになる。
本実施形態に係る設計システム1は、設計者の入力に従って複数の構造部材を組み合わせることによって建物の架構をモデリングし、その架構について構造計算をして構造性能の確認をするシステムである。図1に示すように、設計システム1は、架構のモデリングを行うモデリング部(モデリング手段)2と、架構の構造計算を行う構造計算部(構造計算手段)3と、情報を格納する第1格納部(第1の格納手段)4と、情報を格納する第2格納部(第2の格納手段)6と、設計者が情報を入力するキーボードやマウスなどの入力部7と、各種情報を表示するディスプレイなどの表示部(表示手段)8と、を備えている。本実施形態においては、一台の情報端末WSが、モデリング部2、構造計算部3、第1格納部4、第2格納部6を備える構成となっている。
設計システム1においては、モデリング部2において用いられる情報を第1格納部4に格納し、構造計算部3において用いられる情報を第2格納部6に格納している。第1格納部4では、モデリング部2での演算の負荷を軽減させるべく、設計者が架構の納まりを見ながら作業を行うのに最低限必要な情報を格納し、特性等の構造計算に必要とされる詳細な情報は第2格納部6に格納されていることが好ましい。
本実施形態では、第1格納部4は、各構造部材についての識別情報、及び形状情報を格納している。識別情報とは、構造部材のカテゴリ(柱なのか、梁なのか等)や、当該カテゴリーにおける種類(大梁なのか、小梁なのか等)などを識別する情報である。例えば、各構造部材に固有の文字コードなどを付与することによって識別情報とすることができる。形状情報とは、構造部材の外観上の形状を示す情報であり、材料特性や重量などの情報は含まれていない。第1格納部4は、モデリング部2と電気的に接続されており、モデリング部2からの要求に応じて情報を送信する。
第2格納部6は、各構造部材についての識別情報、及び構造計算情報を格納している。識別情報は、第1格納部4において各構造部材に付与されているものと同一のものが付与されている。これによって、モデリングされた架構を構成している構造部材を、第2格納部6に格納されている情報と照らし合わせることができる。構造計算情報として、例えば、使用材料のヤング係数、各構造部材の断面性能(断面二次モーメントなど)、長さ(構造計算上の節点間の長さ)、接合部のバネ定数などが挙げられる。第2格納部6は、構造計算部3と電気的に接続されており、構造計算部3からの要求に応じて情報を送信する。なお、第1格納部4及び第2格納部6は、互いに異なるメモリによって構成されてもよく、あるいは、一つのメモリの中で第1格納部4に該当する領域と、第2格納部6に該当する領域と、を形成してもよい。
架構を構成する構造部材として、例えば、鉄骨部材が挙げられる。鉄骨部材の例としては、柱・梁などの主要部材、部材同士(例えば梁と梁)の接合に用いる接合部材、壁パネルの位置決めや固定に用いる定規部材などが挙げられる。また、これらの構造部材の一のカテゴリーに対して、複数の種類、大きさ、断面形状に係る構造部材を準備しておくことが好ましい。
モデリング部2は、設計者によって入力部7から入力される入力情報に基づいて、構造部材を組み合わせることによって、架構の三次元モデルをモデリングする機能を有している。モデリング部2は、具体的には、三次元のCAD(Computer Aided Design)システムによって構成されている。モデリング部2は、第1格納部4に格納されている構造部材を読み出し、設計者が選択可能な状態とする。例えば、表示部8に構造部材一覧を表示し、設計者が所望の構造部材を選択できる状態としておく。モデリング部2は、設計者からの入力情報に基づいて、架構を組み立てる構造部材を選択し、架構が構築される作業空間での配置を設定する。モデリング部2は、作業空間において構造部材を組み立てる工程や組み立てられる架構を表示部8に三次元画像として表示することができる。これによって、設計者は、構造部材同士の納まりを目視で確認しながら、架構を組み立てることができる。
モデリング部2は、モデリングにおいて、設計上のルールや部材配置のルールなどに関する情報を排除していることが好ましい。すなわち、設計者の意思によって、構造部材一覧より自由に構造部材を選択可能とし、作業空間内で自由に構造部材を配置することができ、構成自由度の高い設計を可能とする。このように、モデリング部2は、特定の建物の設計のための特有の機能を有さず、所定の形状を有するコンポーネントを組み合わせて三次元のモデルを作成するのに最低限必要とされる機能を備えた、汎用性の高いプログラムによって構成されていることが好ましい。
モデリング部2は、一の構造部材と、他の構造部材との間の接合可能性を判定し、接合可能と判定した接合部分を、表示部8の架構の三次元画像上で表示する機能を有している。また、モデリング部2は、構造計算部3での計算結果を、表示部8の架構の三次元画像に反映させて表示する機能を有している。
構造計算部3は、モデリング部2によってモデリングされた架構を取得し、当該架構の構造計算を行う機能を有している。構造計算部3は、架構を構成している各構造部材にそれぞれ関連付けられている識別情報に基づいて、各構造部材の構造計算情報を第2格納部6から取得する。構造計算部3は、当該架構に構造計算上のエラーがある場合、設計者にエラー情報をフィードバックすることができる。
次に、図2〜図8を参照して、本実施形態に係る設計システム1による具体的な処理について説明する。図2の処理は、設計者による入力部7を介した入力情報に基づいて、モデリング部2及び構造計算部3で所定のタイミングで実行される。
図2に示すように、モデリング部2は、第1格納部4から、構造部材を読み出す(ステップS10)。このとき、モデリング部2は、識別情報及び形状情報が関連付けられた状態で構造部材を読み出し、設計者が選択可能となるように表示部8に表示する。図3に示す例では、モデリング部2は、第1格納部4から読み出した構造部材を、「構造部材一覧」というウィンドウWD1を表示部8の画面上に表示することができる。
次に、設計者の操作による入力情報に基づいて、複数の構造部材の中から一の構造部材を選択する(ステップS20)。図3に示す例では、設計者が「構造部材一覧」の中の「梁」というカテゴリーの中から「小梁」という種類の「B0」というタイプのフォルダをクリックすると、モデリング部2は、「B0」というタイプの小梁の画像を示したウィンドウWD2を表示部8の画面上に表示する。図3に示す例では、各小梁の一つ一つに対して、「B0−09、B0−12、B0−15…」などの識別情報が関連付けられている。設計者が「B0−15」という小梁SHを選択すると共にドラッグ操作によって作業空間VTへ移動させることにより、モデリング部2は当該小梁SHを選択すると共に、作業空間VT内に小梁SHを表示する。このとき、小梁SHは、識別情報(B0−15)及び形状情報に関連付けられた状態にて選択され、作業空間VTに挿入される。
ここで、構造部材は、設計者の入力によって変更可能なパラメータを有していてもよい。例えば、梁や柱の長さを変更可能としてもよく、この場合、梁や柱の断面形状及び接合部形状は一定に保たれたまま、長さだけが変更される。また、床や壁の幅及び長さを変更可能としてもよく、この場合、厚さは一定に保たれたまま、サイズだけが変更される。このように、構造部材が変更可能なパラメータを有している場合、識別情報に加えてパラメータの値も当該構造部材に関連付けられる。これによって、構造計算部3は、読み出した構造計算情報を、当該値に対応するものに(例えば、計算により、またはデータ照会により)調整して、構造計算をすることができる。図4に示す例では、設計者によって「CT0」というタイプの柱PL1が選択されると、モデリング部2は、当該柱PL1のデフォルト状態を作業空間に表示すると共に、柱長を入力するためのウィンドウWD3を表示する。設計者が柱長を入力すると、モデリング部2は、当該値に応じた柱長の柱PL2を作業空間に表示する。この柱PL2には、「CT0」という識別情報と共に、設定された柱長も関連付けられる。なお、当該柱PL2には、形状情報と共に、構造計算に必要な線情報である「構造ライン」も組み入れられる。梁や柱は、長さ方向に沿って延びる一本のラインで示すことができる。板や壁は、矩形領域の対向する頂点どうしを結ぶ一本の対角線で示すことができる。
次に、設計者の操作による入力情報に基づいて、モデリング部2は、S20で選択された構造部材を作業空間における所定の位置に配置する(ステップS30)。図3に示す例では、選択した小梁SHを、架構100を構築している他の構造部材101,102と組み合わせ、接合することができる。
ここで、モデリング部2は、一の構造部材と他の構造部材との間の接合可能性を判定し、接合可能と判定した場合に、当該接合部分を三次元画像上で色を分けて表示する(ステップS40)。モデリング部2は、構造部材の接合部における形状から接合可能性を判定することができる。例えば、互いの構造部材における接合面が一致すると共に、接合孔(ボルト用の孔など)の位置及び数量が一致する場合に、接合可能と判定することができる。
図5(a)に示す例では、柱102と梁101との接合部分103が示されている。この例では、柱102と梁101の接合面が一致すると共に、柱102の接合孔(合計八つである)の位置及び数量と、梁101の接合孔(合計八つである)の位置及び数量とが一致しているため、モデリング部2は、当該接合部分103を接合可能と判定する。従って、モデリング部2は、他の部分とは異なる色にて接合部分103を表示する。一方、図5(b)に示す例では、柱102と梁101の接合面は一致するが、柱102の接合孔(合計八つである)の位置及び数量と、梁101の接合孔(合計6つである)の位置及び数量とが一致していないため、モデリング部2は、当該接合部分103を接合不可と判定する。従って、モデリング部2は、他の部分と同じ色にて接合部分103を表示する。これによって、設計者は、新たに配置した構造部材が、他の部材と接合可能であるか否かを直ちに認識することができる。ただし、設計者は、色分けがなくとも、表示部8に示されている三次元画像に基づき、構造部材の接合部の形状及び位置を見ることによって、自ら接合可能性を判定することができる。従って、S40での色分けの処理を省略してもよい。また、接合可能な部分を、例えば、点滅や文字表示など、色分け以外の方法によって表示してもよい。
S20〜S40における作業は、図3の作業空間VT中に示すような、各構造部材の形状情報が反映された三次元画像を表示部8に表示しながら行われることが好ましい。これによって、設計者は、複雑な躯体構造も、納まりを立体的に確認しながら各構造部材を配置することができる。次に、設計者の操作による入力情報に基づいて、モデリング部2は、架構100のモデリングが完了したか否かの判定を行う(ステップS50)。モデリングが完了していない場合は、S20から再び処理が繰り返される。一方、モデリングが完了した場合、モデリング部2は、モデリングされた架構100のデータを構造計算部3に送信するためのデータ出力を行う(ステップS60)。図6に示す例では、外装部材や形状情報を排して各構造部材の座標データと識別情報のみを有する構造ラインに基づいて、架構100の構造を文字データLDの形式に変換して出力する。
次に、構造計算部3は、モデリングされた架構100のデータを取得する(ステップS70)。例えば、構造計算部3は、図6で出力された文字データLDを取得し、各構造部材の座標データ及び識別情報から、図7に示すように、モデリング部2でモデリングされた架構100を再び構築することができる。この状態において、再構築された架構100を構成する各構造部材には識別情報が関連付けられている。
次に、構造計算部3は、架構100を構成する各構造部材に関連付けられた識別情報に基づいて、当該構造部材の構造計算情報を第2格納部6から取得する(ステップS80)。例えば、梁101に「B0−15」という識別情報が関連付けられた小梁SH(図3参照)が用いられていた場合、構造計算部3は、第2格納部6から「B0−15」の識別情報に対応する小梁を検索し、当該小梁に設定されている構造計算情報を読み出し、対象となる梁101に付与する。また、柱102に「CT0」という識別情報が関連付けられると共に柱長が設定された柱PL2(図4参照)が用いられていた場合、構造計算部3は、第2格納部6から「CT0」の識別情報に対応する柱を検索し、当該柱に設定されている構造計算情報を読み出すと共に設定されている柱長に対応するものに調整し、対象となる柱102に付与する。
次に、構造計算部3は、各構造部材の座標データ及びS80で付与された構造計算情報に基づいて、架構100の構造計算を行う(ステップS90)。構造計算部3は、構造計算の結果を表示部8に出力する。構造計算部3は、S90での計算で、強度不足などによるエラーがあるか否かを判定する(ステップS100)。S100において、エラーがないと判定すると、設計者によってモデリングされた架構100には構造計算上の問題はないとして、図2に示す処理は終了する。
一方、S100において、エラーがあると判定すると、構造計算部3は、当該エラーの結果を設計者にフィードバックすることができる(ステップS110)。フィードバックの方法として、例えば、エラーがあると判定された部分をモデリング部2におけるモデルに反映させる方法を採用することができる。具体的に、構造計算部3は、エラーがあると判定した構造部材や接合部分を特定すると共に、当該部分が特定された状態のデータをモデリング部2へ出力する。モデリング部2は、当該データを受信するとともに、図8においてMKと示すように、エラーがあると特定された部分に係る構造部材を色分けして表示部8の架構100の三次元画像に表示することができる。これによって、設計者は強度計算上エラーがある部分を直ちに認識することが可能となる。S110の処理の後、S20から再び処理が繰り返される。設計者は、エラーの部分、及びその周辺を再度設計しなおすことができる。
あるいは、フィードバックの方法として、例えば、構造計算部3がエラー解消のための対策を導き出し、モデリング部2でのモデル上で設計者に提案する方法を採用してもよい。具体的に、構造計算部3は、エラーがあると判定した構造部材や接合部分を特定すると共に、当該エラーを解消するように、架構100における一部の構造を変更する。例えば、所定の梁において強度が不足しているとのエラーが出た場合、当該梁の断面を大きくすることによって強度を上げることでエラー解消をすることができる(そのとき、構造計算プログラム上での架構100のモデルにおいて、梁断面を変更した構造部材を色分けして表示した三次元画像を作成してもよい)。構造計算部3は、当該情報を所定の形式のデータで吐き出す(三次元画像での情報で吐き出してもよい)。次に、モデリング部2は、吐き出されたデータ(あるいは三次元画像)を読み込むと共に(あるいは、三次元画像を参照する)、データ変更が反映された架構100のモデルを表示部8に表示する。例えば、構造計算部3において、所定の梁の梁断面が変更された場合、図8においてMKで示すように、モデリング部2は梁断面が変更された梁を色分けして表示することができる。これによって、設計者は強度計算上エラーがあることによって、設計変更された部分を直ちに認識することが可能となる。設計者が、変更点を確認し問題がないと判断し、当該変更点を承諾する場合、S20以降の処理を繰り返すことなく図2の処理を終了してもよい。あるいは、設計者が構造計算部3が提案したモデルから、更に変更を加える場合は、S110の処理の後、S20から再び処理を繰り返してもよい。
次に、本実施形態に係る設計システム1の作用・効果について説明する。
設計システム1は、設計者による入力情報に基づいて構造部材を組み合わせることによって、架構100をモデリングするモデリング部2と、モデリング部2によってモデリングされた架構100の三次元画像を表示する表示部8と、を備えている。また、モデリング部2は、第1格納部4に格納された識別情報及び形状情報と関連付けられた構造部材を用いて、架構100をモデリングするため、設計者は、表示部8で、構造部材の形状及びモデリングされた架構100の形状を目視で確認しながら、自由に組み合わせることができる。
本実施形態においては、モデリング部2は、モデリングにおける詳細な設計ルールを排除し、構造部材を組み立てる機能と接合部分で部材同士を固定する機能を主に備えた、極めてシンプルな三次元CADによって構成されている。これによって、設計者は、構造部材の形状に基づいて接合可能性・配置可能性や納まりを目視で確認しながら、高い構成自由度で架構100を設計することができる。また、モデリング部2は、詳細な設計ルールが排除されていると共に、モデリング時において各構造部材に関連付ける情報を識別情報及び形状情報に留め、構造計算情報は構造計算時に読み出せばよい構成となっている。従って、モデリング部2でのモデリング中の演算の負荷を軽減することが可能となり、設計者は、快適にモデリングを行うことができる。また、モデリング部2を構成する三次元CADも、過度に高性能なものを用いる必要はなく、コストを抑えたシンプルな機能のものを適用することが可能となる。
また、設計システム1は、モデリング部2によってモデリングされた架構100の構造計算を行う構造計算部3を備えており、当該構造計算部3は、架構100を構成する構造部材に関連付けられた識別情報に基づいて、当該構造部材の構造計算情報を第2格納部6より取得することによって、構造計算を行う。このように、モデリング時に構造部材には識別情報を関連付け、構造計算時に当該識別情報に基づいて構造部材の構造計算情報を取得している。これによって、設計者が目視によって確認することで組み立てた架構100を、効率よく構造計算することができる。以上によって、設計者が納まりを目視で確認しながら自由に構造部材の組み合わせることを可能とすると共に、当該モデルの構造性能を効率よく計算することができる。
また、設計システム1において、構造計算部3は、計算結果をモデリング部2へ出力し、モデリング部2は、構造計算部3による計算結果を、表示部8の架構100の三次元画像に反映することができる。このように、構造計算部3による計算結果を設計者にフィードバックすることで、設計者は計算結果を考慮して設計を行うことができる。
また、設計システム1において、モデリング部2は、一の構造部材と、他の構造部材との間の接合可能性を判定し、接合可能と判定した接合部分を、表示部8の架構100の三次元画像上で色分けによって表示することができる。これによって、設計者は、組み合わせた構造部材が他の構造部材と接合可能か否かを、目視によって容易に判断することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、設計システムが、二台の情報端末WSによって構成されていてもよい。すなわち、一方の情報端末がモデリング部2及び第1格納部4を備え、他方の情報端末が構造計算部3及び第2格納部6を備え、各端末同士でデータの送受信を行うと共に、各端末が入力部7及び表示部8をそれぞれ有する構成としてもよい。
なお、実施形態において説明したモデリング部2や構造計算部3の機能は、一例に過ぎず、更に機能を追加してもよい。また、第1格納部4に格納する情報や、モデリング部2において構造部材に関連付ける情報も、更に増加させてもよい。また、モデリングにおいて用いる構造部材は、上述の実施形態において例示したものに限らず、あらゆるものを用いることができる。例えば、梁としても柱としても用いることができる汎用的な棒状部材や、壁としても床としても用いることができる汎用的な板部材などを適用してもよい。本発明に係る設計システムでは、設計ルールを排除して設計者にとって構成自由度の高い設計を可能とすることができるため、そのように構成自由度の高い構造部材を用いることも可能となる。
1…設計システム、2…モデリング部(モデリング手段)、3…構造計算部(構造計算手段)、4…第1格納部(第1の格納手段)、6…第2格納部(第2の格納手段)、7…入力部、8…表示部(表示手段)。

Claims (2)

  1. 構造部材を組み合わせることによって構成される建物の架構の設計システムであって、
    前記構造部材の識別情報、並びに前記構造部材同士の接合部における接合用孔の位置及び数量、並びに接合面に関する情報を含む形状情報を格納する第1の格納手段と、
    入力情報に基づいて、前記構造部材を組み合わせることによって、前記架構をモデリングするモデリング手段と、
    前記モデリング手段によってモデリングされた前記架構の三次元画像を表示する表示手段と、
    前記構造部材の識別情報、及び前記構造部材の構造計算情報を格納する第2の格納手段と、
    前記モデリング手段によってモデリングされた前記架構の構造計算を行う構造計算手段と、を備え、
    前記モデリング手段は、前記第1の格納手段に格納された前記識別情報及び前記形状情報と関連付けられた前記構造部材を用いて、前記架構をモデリングし、
    前記モデリング手段は、一の前記構造部材と、他の前記構造部材との間の接合可能性を、前記接合用孔の位置及び数量、並びに接合面が一致するか否かにより判定し、接合可能と判定した接合部分を、前記表示手段の前記架構の三次元画像上で表示し、
    前記構造計算手段は、前記架構を構成する前記構造部材に関連付けられた識別情報に基づいて、当該構造部材の前記構造計算情報を前記第2の格納手段より取得することによって、構造計算を行うことを特徴とする設計システム。
  2. 前記構造計算手段は、計算結果を前記モデリング手段へ出力し、
    前記モデリング手段は、前記構造計算手段による計算結果を、前記表示手段の前記架構の三次元画像に反映することを特徴とする請求項1記載の設計システム。
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