JP3852614B2 - 構造計画支援システムおよびプログラム - Google Patents
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また、これ以外の方法としては、設計作業を全く行わずに、規模や用途などが似た別の建物の実績を元に、坪単価から概算見積りを計算する方法や、建物の一部分の数量を拾い出すことにより単位面積当たりの数量(歩掛り)を求めて、その単位面積当たりの数量から建物全体の数量を推定して概算見積りを行う方法などが知られている。
一方、坪単価や歩掛り等から見積り計算を行う方法においては、上記方法と比較して見積り作業が容易になるという利点が得られるものの、見積り結果に対する信頼性に欠け、坪単価や歩掛りの設定が不適切であると、見積り結果と実際の工事費用との間に大きな差異が生じる懸念があった。
構造要素とは、建物を構成する要素のうち、主として構造力学上荷重を支持し外力に抵抗する目的で用いられるものを指し、その形態としては、例えば、壁、柱、大梁、床、小梁、基礎、杭、屋根などの他、手摺壁、パラペット、階段なども含まれる。
「構造力学上必要とされる構造要素」とは、平面図のCADデータには表れないが当該建物の構成に不可欠な構造要素であって、躯体工事費用の積算対象となる構造要素である。かような構造要素としては、例えば、大梁、小梁、基礎、杭などが挙げられる。
構造要素の幾何学的情報には、その構造要素の位置と形状を特定することが可能な情報(例えば、構造要素の頂点の座標データ、構造要素の境界線或いは境界面を表す関数式や座標データなど)が含まれる。
構造躯体モデルとは、構造要素を単位構成要素として、各構造要素の識別データに、その幾何学的情報と断面情報(材料仕様、断面形状、配筋仕様など)とを相互に関連付けることによって構成されるモデルである。
躯体材料には、各構造要素の材料となるものすべてが含まれ、その代表的なものとしては、例えば、鉄筋、コンクリート、型枠、鉄骨などが挙げられる。
「構造力学上の条件を満足する断面」とは、構造要素に加わる自重、積載荷重、地震、衝撃などの予め想定される各種外力に対して十分に抵抗でき、安全性を確保することができる適正断面(建築構造に関する法令や規準に適合する断面)のことを云い、その設定方法としては、例えば、構造要素の幾何学的情報と、構造要素が属する室の用途や要求される仕様から得られる荷重の情報をもとに構造計算(例えば、許容応力度設計法や終局強度設計法、限界状態設計法に基づく構造計算など)により求める方法や、構造要素の幾何学的情報と建物の基本情報(建物用途、建物高さ、耐震要素の多少)をもとに、予め安全性が確認された複数の架構モデルの断面データの中から当該構造要素と条件が合致するものを選択する方法などが挙げられる。
ここで、建物の基本情報には、例えば、建物用途、建物高さ、耐震要素の多少および建物構造などが挙げられる。
構造要素の断面決定に関与する所定のパラメータとしては、例えば、柱の場合、柱寸法、コンクリート材料、鉄筋材料、鉄筋径、断面と材料の変化の上階分布などが挙げられ、大梁の場合、梁せい、梁幅、コンクリート材料、鉄筋材料、鉄筋径、断面と材料の変化の上階分布などが挙げられる。それらパラメータを変化させる方法としては、一定の刻み幅でパラメータを変化させる方法や、刻み幅を適宜変動させながらパラメータを変化させる方法(例えば、躯体コストの極小値近傍において刻み幅を相対的に小さくする方法)などが挙げられるが、何れの方法を採用するようにしてもよい。
なお、構造力学上の条件を満足しつつ躯体コストが最小となる断面を探索する際には、数値計算を行う専用のソフトウェアを利用することも可能であり、その場合には、上記ソフトウェア用の入力ファイルとして、上記所定のパラメータに関する制約条件や目的関数(躯体コストを示す関数)等の各種設定データを含む入力ファイルを作成し、これを上記ソフトウェアに読み込ませて数値計算の処理を実行させるようにすればよい。
これら機能は、構造計画支援システム10のCPUが記憶装置内に格納された各種アプリケーションプログラム(本発明に係る構造積算プログラムを含む。)を読み込んで実行することにより、付与されるものである。
先ず、3次元空間関係モデル構築処理について説明する。この3次元空間関係モデル構築処理は、図4のフローチャートに示すように、ステップS1〜ステップS7の処理からなる。
なお、ステップS2で作成した接円ネットワークモデルを評価することで、上記平面領域と壁開口の推定まで同時に行うことも可能であるが、本実施形態のように、壁芯を確定させて、それを単線に単純化した状態で上記平面領域と壁開口の推定を行うようにした場合には、それら推定に係る処理が簡潔になるという効果が得られる。
そして、室の分類コードと平面領域との関連付けが完了したら、その結果を表示装置に表示するとともに、その結果に対して修正入力或いは確認操作を利用者に促すダイアログを表示装置に表示する。
次に、構造躯体モデル構築処理について説明する。この構造躯体モデル構築処理は、3次元空間関係モデルから構造躯体モデルを構築する処理であって、図13のフローチャートに示すように、ステップS10とステップS20の処理からなる。
具体的には、図13に示すように、上記その他構造要素(階段、手摺壁、パラペット、庇など)の断面設定(ステップS21)→耐震壁を除く壁の断面設定(ステップS22)→柱、大梁および耐震壁の基準断面設定(ステップS23)→床・小梁の最適断面設定(ステップS24)→柱、大梁および耐震壁の最適断面設定(ステップS25)→基礎・杭の最適断面設定(ステップS26)の順に、各構造要素の断面を設定する処理が行われる。
階段に関しては、幅員Lに基づいて片持ち階段または一方向階段の何れか一方を選択した後、片持ち階段を選択した場合には、幅員Lを条件にして、また一方向階段を選択した場合には、階段長さLoを条件にして、予め登録された標準断面リスト(図17参照)から断面情報(断面形状、鉄筋等の納まりに関する情報)を取得し、これを階段の識別データに関連付けて記憶装置の所定記憶領域に記憶する。
パラペットに関しては、建物用途や屋上の仕様に応じてパラペットの高さを決定した後、その条件に該当する断面情報を予め登録された標準断面リストから選択し、これをパラペットの識別データに関連付けて記憶装置の所定記憶領域に記憶する。
庇に関しては、庇の出の長さに応じて厚さを決定した後、その条件に該当する断面情報を予め登録された標準断面リストから選択し、これを庇の識別データに関連付けて記憶装置の所定記憶領域に記憶する。
また、大梁のグルーピング方法としては、応力状態を考慮し、大梁のスパン長、大梁の連続条件をグルーピングの判定条件とする。具体的には、図19に示すように、スパン長、および大梁の両端部が隣の大梁に連続するか否かを判定条件として、各大梁をグルーピングする方法が挙げられる。大梁のグルーピング符号は、例えば、X方向に延びる大梁については、一般部分の大梁のときG1,G2,…、基礎大梁のときFG1,FG2,…、Y方向に延びる大梁については、一般部分の大梁のときG11,G12,…、基礎大梁のときFG11,FG12,…というように設定する。なお、図18および図19におけるケース1〜4に対応するグルーピングの設定例を図20に示す。
また、耐震壁のグルーピング方法としては、例えば、耐震壁が支える層数などを判定条件として、各耐震壁をグルーピングする方法が挙げられる。耐震壁のグルーピング符号は、例えば、EW1,EW2,EW3というように設定する。
例えば、図21に示すように、当該建物について、建物用途の分類コードが「1」、建物高さの分類コードが「1」、耐震要素の多少の分類コードが「1」、建物構造の分類コードが「1」に該当する場合には、架構モデルのケースIDとして「1」が選択される。そして、基準断面を設定する構造要素が、例えば、建物の1階にあるグルーピング符号C1の柱である場合、その柱のリストIDは、柱リストテーブルによれば「1」となり、その柱の断面情報は、柱断面テーブルのリストIDが「1」の欄に示す通りとなる。すなわち、主架構を構成する構造要素の基準断面を設定する際には、当該建物の用途、高さ、耐震要素の多少および建物構造から架構モデルのケースIDを求めた後、このケースID、設置階、グルーピング符号からリストテーブルを参照してリストIDを求め、このリストIDに該当する断面の情報を基準断面データベースから取得し、これを基準断面として構造要素の識別データに関連付けて記憶装置の所定記憶領域に記憶する。
〈終局時層せん断力〉
Qudi = Z・Rt・Ai・Wi・C0
〈終局時必要層せん断力〉
Quni = Ds・Qudi
〈梁の必要モーメントの算定〉
Mi = Quni・hi
mi = λi・Mi+(1−λi)・Mi-1
gM’= mi/gn
〈梁の設計用モーメント〉
gML = ξg・gM’・gα/(1+γ) :左上端
gMR = ξg・gM’・gα・γ/(1+γ) :右上端
〈梁の曲げ終局強度〉
Mu = 0.9・at・σy・d
〈柱の設計用モーメント〉
cMt = ξc・gMu’・cα・0.5
cMb = ξc・gMu’・cα・0.5・β/(1−β)
なお、この実施形態では、各検討ケースが設計可能であるか否かの判定(構造力学上の条件を満足するか否かの判定)を終局強度設計法に基づいて行うようにしたが、例えば、許容応力度設計法に基づいて行うことも可能である。
以上のように、このステップS25では、最適断面設定プログラムを用いて、構造力学上の条件を満足しつつ躯体コストが最小となる断面を探索し、その断面を最適断面として設定する処理が行われる。
直接基礎とする場合には、上記面積に応じて独立基礎、布基礎、べた基礎の何れかを選択した後、選択した基礎に対応する断面情報を予め登録された標準断面リストから選択し、これを基礎の識別データに関連付けて記憶装置の所定記憶領域に記憶する。
なお、基礎底深さおよび支持層深さについては、入力装置からの入力がある場合には、その入力データを用いるようにし、一方、入力がない場合には、当該建物の屋上階レベルから基礎底深さを推定し、支持層深さについては、デフォルト値を用いるようにする。また、基礎の寸法は、杭の軸径に縁明きの標準値を加えた値として設定する。地震時水平力については建物重量と必要Ds値より算出する。支持層N値については入力がある場合には入力データを用い、入力がない場合は省略値を用いる。
この躯体数量算出処理では、構造躯体モデルを構成する各構造要素の幾何学的情報と断面情報とから、コンクリート、鉄筋、型枠、鉄骨等の躯体材料の数量を導き出す処理が行われる。また、この際には、3次元空間関係モデルを参照することにより接合関係にある構造要素の組合せを抽出して、その組合せの接合関係情報に対応する建築プロセス情報を建築プロセス情報データベースより取得し、当該建築プロセス情報に基づいて、構造要素の接合に伴い派生する各積算項目の拾い出しと数量算出を行う。
その後、例えば、図32に示すような予め設定されたフォーマットの見積書(概算シート、総合構造比率表)の文書データを作成して記憶装置に格納した後、見積書を印刷装置等から出力する処理を実行する。
Claims (5)
- 建物の壁および柱の線画情報として、壁および柱の輪郭線を示す線画情報または壁の中心線や柱の中心位置を示す線画情報を含むとともに、建物の各室に対応する位置に室名称を含む平面図のCADデータを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段から上記平面図のCADデータを読み込んで、当該CADデータに含まれる上記線画情報から、建物の構造要素として、少なくとも壁および柱を識別し、それら構造要素の位置と形状を当該構造要素の幾何学的情報としてそれぞれ記憶するとともに、上記CADデータに含まれる上記線画情報から、建物の各室の床あるいは吹き抜けに対応する平面領域を識別した後、それら平面領域と上記室名称との対応関係を設定し、各平面領域に配置すべき構造要素の形態を設定する構造要素識別手段と、
上記構造要素識別手段によって識別・設定した構造要素の幾何学的情報から、それら構造要素以外に構造力学上必要とされる構造要素を予め設定された配置規則に従って導き出し、導き出した構造要素の形態と幾何学的情報をそれぞれ記憶する構造要素導出手段と、
上記構造要素識別手段によって識別した構造要素および上記構造要素導出手段によって導き出した構造要素について、それら構造要素の各断面を、構造要素の幾何学的情報と、構造要素が属する室の用途や要求される仕様から得られる荷重の情報をもとに構造計算により求めて設定し、若しくは構造要素の幾何学的情報と建物の基本情報をもとに、予め安全性が確認された複数の架構モデルの断面データの中から当該構造要素と条件が合致するものを選択することにより設定して、構造躯体モデルを構築する構造躯体モデル構築手段と、
上記構造躯体モデルを構成する各構造要素の幾何学的情報および断面情報から躯体材料の数量を導き出す数量算出手段とを備えることを特徴とする構造計画支援システム。 - 上記構造要素導出手段によって導き出される構造要素には、少なくとも大梁が含まれており、
上記構造要素導出手段は、上記構造要素識別手段によって識別した柱の集合の中から、通り芯上において互いに隣接する柱の組合せをそれぞれ抽出し、それら柱間を結ぶ線分が、当階および上階の床に対応する平面領域内若しくはその境界線上に存在する場合に、その線分上に大梁を配置する設定として、その線分の位置情報を大梁の幾何学的情報として記憶することを特徴とする請求項1に記載の構造計画支援システム。 - 上記構造要素導出手段は、各大梁の幾何学的情報から大梁によって囲まれた閉領域を床組として抽出し、当該床組に対応する室の属性情報に基づいて、予め登録された複数の候補の中から床工法、小梁方向および小梁間隔の組合せを選択し、その選択に従って、当該床組に配置する小梁およびスラブを設定して、その位置情報を小梁およびスラブの幾何学的情報として記憶することを特徴とする請求項2に記載の構造計画支援システム。
- 上記構造要素導出手段は、互いに直交する通り芯の交点を求めて、その交点上に柱が存在するか否かを判定し、その結果、柱が存在すると判定される場合には、最下階の柱の直下に基礎・杭を配置する設定として、その位置情報を基礎・杭の幾何学的情報として記憶することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の構造計画支援システム。
- コンピュータに実行させるプログラムであって、
建物の壁および柱の線画情報として、壁および柱の輪郭線を示す線画情報または壁の中心線や柱の中心位置を示す線画情報を含むとともに、建物の各室に対応する位置に室名称を含む平面図のCADデータを、上記コンピュータの記憶装置から読み込むステップと、
上記平面図のCADデータに含まれる上記線画情報から、建物の構造要素として、少なくとも壁および柱を識別し、それら構造要素の位置と形状を当該構造要素の幾何学的情報として上記記憶装置にそれぞれ記憶するとともに、上記CADデータに含まれる上記線画情報から、建物の各室の床あるいは吹き抜けに対応する平面領域を識別した後、それら平面領域と上記室名称との対応関係を設定し、各平面領域に配置すべき構造要素の形態を設定するステップと、
上記線画情報より識別・設定した構造要素の幾何学的情報から、それら構造要素以外に構造力学上必要とされる構造要素を予め設定された配置規則に従って導き出し、導き出した構造要素の形態と幾何学的情報を上記記憶装置にそれぞれ記憶するステップと、
各構造要素の断面を、構造要素の幾何学的情報と、構造要素が属する室の用途や要求される仕様から得られる荷重の情報をもとに構造計算により求めて設定し、若しくは構造要素の幾何学的情報と建物の基本情報をもとに、予め安全性が確認された複数の架構モデルの断面データの中から当該構造要素と条件が合致するものを選択することにより設定して、構造躯体モデルを構築するステップと、
上記構造躯体モデルを構成する各構造要素の幾何学的情報および断面情報から躯体材料の数量を導き出すステップとを上記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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