JP2020111664A - 疎水化アニオン変性セルロースナノファイバー分散体の製造方法および疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)アニオン変性セルロースの分散体を準備する工程1、
アニオン変性セルロースの分散体に疎水化剤を添加して、疎水化アニオン変性セルロースの分散体を製造する工程2、
前記疎水化アニオン変性セルロースの分散体から分散媒を除去し、疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物を製造する工程3、及び
前記疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物を有機溶媒と混合して、前記有機溶媒中で疎水化アニオン変性セルロースの解繊を行い、前記有機溶媒を分散媒とする疎水化アニオン変性セルロースナノファイバーの分散体を製造する工程4、
を含み、
前記アニオン変性セルロースに1gに対する前記疎水化剤の結合量が0.40g以上であり、
前記疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物は、固形分濃度が90質量%より高い、疎水化アニオン変性セルロースナノファイバーの分散体を製造する方法。
(2)アニオン変性セルロースが、カルボキシル基を有するセルロースまたはカルボキシアルキル基を有するセルロースである、(1)に記載の方法。
(3)疎水化剤が結合したアニオン変性セルロースを含み、固形分濃度が90質量%より高く、アニオン変性セルロースに1gに対する疎水化剤の結合量が0.40g以上である、疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物。
工程1では、アニオン変性セルロースの分散体を準備する。アニオン変性セルロースとは、以下でより詳細に説明する通り、セルロースの分子鎖にアニオン性基が導入されたものである。
アニオン変性セルロースの原料となるセルロースの種類は、特に限定されない。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、原料として用いることができる。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
アニオン変性とはセルロースにアニオン性基を導入することをいい、具体的には酸化または置換反応によってセルロースのピラノース環にアニオン性基を導入することをいう。本発明において前記酸化反応とはピラノース環の水酸基を直接カルボキシル基に酸化する反応をいう。また、本発明において置換反応とは、当該酸化以外の置換反応によってピラノース環にアニオン性基を導入する反応をいう。
アニオン変性の一例として、カルボキシル化(カルボキシル基のセルロースへの導入、「酸化」とも呼ぶ。)を挙げることができる。本明細書においてカルボキシル基とは、−COOH(酸型)および−COOM(金属塩型)をいう(式中、Mは金属イオンである)。カルボキシル化セルロース(「酸化セルロース」とも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されないが、カルボキシル基の量はカルボキシル化セルロースの絶乾質量に対して、0.6mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、1.0mmol/g〜2.0mmol/gがさらに好ましい。
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
アニオン変性の一例として、カルボキシメチル基等のカルボキシアルキル基のセルロースへの導入を挙げることができる。本明細書においてカルボキシアルキル基とは、−RCOOH(酸型)および−RCOOM(金属塩型)をいう。ここでRはメチレン基、エチレン基等のアルキレン基であり、Mは金属イオンである。
ii)次いで、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う工程。
カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。メタノール900mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチル化セルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースに変換する。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5g〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。80質量%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター。
カルボキシメチル基の量(mmol/g)=(DS/(DS×58+162))×1000
カルボキシメチル基以外のカルボキシアルキル基置換度も、上記と同様の方法で得ることができ、また、カルボキシアルキル基の量は、カルボキシアルキル置換度(DS)を用いて、次式から算出することができる:
カルボキシアルキル基の量(mmol/g)=[DS/{DS×(カルボキシアルキル基の分子量−1)+162}]×1000
(1−2−3)エステル化
アニオン変性の一例としてエステル化を挙げることができる。エステル化の方法としては、セルロース原料にリン酸系化合物の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸系化合物の水溶液を添加する方法等が挙げられる。リン酸系化合物はリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形態であってもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由からリン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらの1種、あるいは2種以上を併用してセルロースにリン酸基を導入することができる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。また、反応を均一に進行できかつリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物は水溶液として用いることが望ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましいが、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が好ましい。
リン酸基の量(mmol/g)=(DS/(DS×64+162))×1000。
原料であるセルロースに対し、上記で例示したようなアニオン変性を行うことにより、アニオン変性セルロースを得ることができる。また、市販のものを用いてもよい。アニオン変性セルロースの種類としては、カルボキシル基を有するセルロースまたはカルボキシアルキル基を有するセルロースが好ましい。特に、N−オキシル化合物と酸化剤とを用いてセルロースを酸化することにより得られたカルボキシル化セルロースは、アニオン性基が均一に導入されており、均一に解繊しやすい点で好ましい。
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、株式会社島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10゜〜30゜の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6゜の002面の回折強度と2θ=18.5゜のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c−Ia)/I002c×100
Xc:セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6゜、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5゜、アモルファス部分の回折強度。
上記の方法で得られたアニオン変性セルロースは、通常、導入されたアニオン性基が、金属塩型(例えば、−COO−M+、または−RCOO−M+(Mはナトリウム、カリウム等の金属であり、Rはメチレン基、エチレン基等のアルキレン基である))の形態となっている。後の疎水化剤との反応を促進するために、アニオン変性セルロースにおける金属塩型のアニオン性基を、酸型(例えば、−COOH、−RCOOHなど)に変換することは好ましい。
工程1で準備するアニオン変性セルロースの分散体における分散媒は、水または有機溶媒、あるいはこれらの混合物を適宜選択できる。有機溶媒の種類は問わないが、例えばセルロース中の水酸基との親和性が高い極性溶媒、また、水と任意の割合で混合可能な水溶性有機溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。上記分散媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。例えば、有機溶媒を2種類以上混合する形態、水と有機溶媒を含む形態、水のみの形態などを適宜選択することができる。水のみを分散媒として用いること(すなわち、水100%)は、取扱いの容易性から好ましい。水と有機溶媒とを混合する場合の混合割合は特に限定されず、使用する有機溶媒の種類に応じて適宜混合割合を調整すればよい。
工程2では、アニオン変性セルロースの分散体に疎水化剤を添加して、アニオン変性セルロースを疎水化し、疎水化アニオン変性セルロースの分散体を製造する。疎水化とは、アニオン変性セルロースに疎水基を付与してアニオン変性セルロースの疎水性を向上させる処理をいう。
工程2で、アニオン変性セルロースに1gに対する疎水化剤の結合量が0.40g未満である場合、工程4において解繊が進行せず、ナノファイバー分散体を得ることができない。アニオン変性セルロースに1gに対する疎水化剤の結合量の上限は特に限定されないが、疎水化剤の結合量が過度に高すぎると、疎水化アニオン変性セルロース(すなわち、疎水化剤が結合したアニオン変性セルロース)におけるアニオン変性セルロースの割合が少なくなるから、アニオン変性セルロースに1gに対する疎水化剤の結合量は10.00g以下が好ましく、5.00g以下さらに好ましい。
i)疎水化剤がアニオン性基の量(モル数)に対して等量(モル数)以上添加された場合
アニオン変性セルロース1gに対する疎水化剤の結合量〔g〕=アニオン変性セルロースのアニオン性基の量〔mmol/g〕×疎水化剤の分子量 ×0.001×アニオン性基の価数
ii)疎水化剤の添加量(モル数)がアニオン性基の量(モル数)未満である場合
アニオン変性セルロース1gに対する疎水化剤の結合量〔g〕=アニオン変性セルロースのアニオン性基の量〔mmol/g〕×疎水化剤の分子量 ×0.001×アニオン性基の価数×添加した疎水化剤のモル数[mmol]/アニオン性基のモル数[mmol]
i)、ii)において、アニオン性基の価数は、アニオン性基がカルボキシル基またはカルボキシアルキル基である場合は1であり、アニオン性基がリン酸基である場合は2である。ii)において、アニオン性基のモル数(mmol)は、アニオン性基の量(mmol/g)とアニオン変性セルロースの絶乾質量(g)とから求めることができる。
工程3では、工程2で得られた疎水化アニオン変性セルロースの分散体から分散媒を除去して疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物を製造する。この際、乾燥固形物における固形分濃度が、90質量%より高くなるように、分散媒を十分に除去することが必要である。乾燥固形物における固形分濃度は、好ましくは95質量%より高く、より好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上である。セルロースは、水または水溶性有機溶媒を吸収して膨潤しやすいが、工程3においては、セルロースに吸収された水または水溶性有機溶媒も十分に除去することが必要である。工程3において、水または水溶性有機溶媒である分散媒を十分に除去することにより、溶媒置換工程を省略して、後の工程4で低極性の有機溶媒中で分散させることができるようになる。一方、乾燥後の固形物が10質量%以上の分散媒(水及び/または水溶性有機溶媒)を含んでいる場合、工程4においてトルエン等の低極性の有機溶媒中で解繊、分散させようとした場合に、低極性の溶媒と十分に混合させることができなくなり、沈殿が生じたり、また得られる分散体の透明度が低下するといった問題が生じる。
乾燥固形物を105℃のオーブンで12時間乾燥させ、乾燥前後の質量から乾燥固形物の固形分濃度を算出する。
乾燥固形物の固形分濃度(質量%)=乾燥後の質量/乾燥前の質量。
(4)工程4
工程4では、疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物を有機溶媒と混合し、有機溶媒中で疎水化アニオン変性セルロースの解繊を行い、有機溶媒を分散媒とする疎水化アニオン変性CNFの分散体を製造する。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
所定の濃度のCNF分散体を調製し、UV−VIS分光光度計 UV−1800(株式会社島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、660nm 光の透過率を測定し、透明度とする。
所定の濃度のCNF分散体を調製し、JIS−Z−8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃で、回転数60rpmまたは6rpmで、3分後の値を測定する。
工程3で得られる疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物は、疎水化処理によりアニオン変性セルロースの親水性が下げられており、また、水または水溶性有機溶媒のような水系の分散媒をほとんど含まないため、種々の有機溶媒や疎水性の高分子に良好に混合して用いることができる。疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物は、疎水化剤が結合したアニオン変性セルロースを含んでいる。疎水化剤は、上述した通りのものであり、少なくとも、アニオン変性セルロースに1gに対する疎水化剤の結合量が0.40g以上である。乾燥固形物における固形分濃度は、90質量%より高くなるように、分散媒が十分に除去されており、固形分濃度は、95質量%より高く、より好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上である。
<実施例1>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、パルプを十分に水洗することでカルボキシル基を導入したパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。このカルボキシル化セルロースのカルボキシル基量は、1.42mmol/gであった。
疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標) M−1000(HUNTSMAN社製、分子量1000)を用い、超高圧ホモジナイザーでの処理を80MPaで1回及び150MPaで3回とした以外は実施例1と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造した。疎水化剤の結合量は1.42gである。得られた疎水化カルボキシル化CNFの分散体(分散媒:トルエン、固形分量(カルボキシル化CNF換算):1質量%)の透明度及び粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標) M−2005(HUNTSMAN社製、分子量2000)を用い、超高圧ホモジナイザーでの処理を80MPaで1回及び150MPaで3回とした以外は実施例1と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造した。疎水化剤の結合量は2.84gである。得られた疎水化カルボキシル化CNFの分散体(分散媒:トルエン、固形分量(カルボキシル化CNF換算):1質量%)の透明度及び粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
疎水化剤としてオクチルアミン(東京化成工業株式会社製、分子量129)を用いた以外は実施例1と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造しようとしたが、解繊が進行せず、CNFの分散体は得られなかった。疎水化剤の結合量は0.18gである。
疎水化剤としてステアリルアミン(東京化成工業株式会社製、分子量270)を用いた以外は実施例1と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造しようとしたが、解繊が進行せず、CNFの分散体は得られなかった。疎水化剤の結合量は0.38gである。
実施例1と同様にしてカルボキシル基量が1.42mmol/gのカルボキシル化セルロースを製造した。このカルボキシル化セルロースを水で固形分濃度1質量%となるように調整し、超高圧ホモジナイザーを用いて20℃で80MPaで1回、さらに150MPaで3回処理(解繊)することにより、カルボキシル化CNFの水分散体を得た。
疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標) M−1000(HUNTSMAN社製、分子量1000)を用いた以外は比較例3と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造した。疎水化剤の結合量は1.42gである。得られた疎水化カルボキシル化CNFの分散体(分散媒:トルエン、固形分量(カルボキシル化CNF換算):1質量%)の透明度及び粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標) M−2005(HUNTSMAN社製、分子量2000)を用いた以外は比較例3と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造した。疎水化剤の結合量は2.84gである。得られた疎水化カルボキシル化CNFの分散体(分散媒:トルエン、固形分量(カルボキシル化CNF換算):1質量%)の透明度及び粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
疎水化剤としてオクチルアミン(東京化成工業株式会社製、分子量129)を用いた以外は比較例3と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造した。疎水化剤の結合量は0.18gである。得られた疎水化カルボキシル化CNFの分散体(分散媒:トルエン、固形分量(カルボキシル化CNF換算):1質量%)の透明度及び粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
疎水化剤としてステアリルアミン(東京化成工業株式会社製、分子量270)を用いた以外は比較例3と同様にして、トルエンを分散媒とする疎水化カルボキシル化CNFの分散体を製造した。疎水化剤の結合量は0.38gである。得られた疎水化カルボキシル化CNFの分散体(分散媒:トルエン、固形分量(カルボキシル化CNF換算):1質量%)の透明度及び粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
実施例1〜3及び比較例2において製造した疎水化カルボキシル化セルロースの乾燥固形物に対し、固形分がカルボキシル化セルロース換算(疎水化剤を含まない)で1質量%となるようにトルエンを添加し、8000rpmで10分間撹拌し、バイアル瓶に入れて24時間静置後、分散状態を目視で評価した。また、比較例8として、疎水化剤を添加しない以外は実施例1と同様にして製造したカルボキシル化セルロースの乾燥固形物についても同様に評価した。その結果、比較例2及び8では、24時間静置後に瓶の底に密な沈殿物が観察された。実施例1でも瓶の底に沈殿物が観察されたが、比較例2に比べると沈殿の程度が弱く、緩い沈殿であった。実施例2ではさらに沈殿の程度が弱まり、実施例3ではほとんど沈殿は見られなかった。これらのことから、疎水化剤の結合量が0.40g以上である疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物は、保管時に密な沈殿を生じにくいことがわかる。沈殿を生じると、解繊などの次工程に送液される際に、不均一な状態(高密度の部分と低密度の部分が混在する状態)で送液されやすく、解繊のスムーズな進行を妨げたり、また、装置が正常に作動しなくなるおそれがある。密な沈殿を生じにくい本発明の疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物は、有機溶剤等により均一に分散させやすく、したがって、より均一な状態で送液しやすく、ハンドリング性能がよいといえる。
Claims (3)
- アニオン変性セルロースの分散体を準備する工程1、
アニオン変性セルロースの分散体に疎水化剤を添加して、疎水化アニオン変性セルロースの分散体を製造する工程2、
前記疎水化アニオン変性セルロースの分散体から分散媒を除去し、疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物を製造する工程3、及び
前記疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物を有機溶媒と混合して、前記有機溶媒中で疎水化アニオン変性セルロースの解繊を行い、前記有機溶媒を分散媒とする疎水化アニオン変性セルロースナノファイバーの分散体を製造する工程4、
を含み、
前記アニオン変性セルロースに1gに対する前記疎水化剤の結合量が0.40g以上であり、
前記疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物は、固形分濃度が90質量%より高い、疎水化アニオン変性セルロースナノファイバーの分散体を製造する方法。 - アニオン変性セルロースが、カルボキシル基を有するセルロースまたはカルボキシアルキル基を有するセルロースである、請求項1に記載の方法。
- 疎水化剤が結合したアニオン変性セルロースを含み、固形分濃度が90質量%より高く、アニオン変性セルロースに1gに対する疎水化剤の結合量が0.40g以上である、疎水化アニオン変性セルロースの乾燥固形物。
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