JP2020111490A - 人造黒鉛材料、人造黒鉛材料の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウムイオン二次電池の負極材料として、人造黒鉛材料などの黒鉛が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
また、本発明は、上記の人造黒鉛材料の製造方法、上記の人造黒鉛材料を含むリチウムイオン二次電池用負極、およびこの負極を用いた0℃以下の低温で充放電が繰り返されても放電容量が劣化しにくいリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
レーザー回折式粒度分布測定装置により算出される体積基準表面積が0.22〜1.70m2/cm3であり、
吸油量が67〜147mL/100gであり、
波長514.5nmのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580cm−1±100cm−1の波長領域に存在するピークの半価幅ΔνGが19〜24cm−1であることを特徴とする人造黒鉛材料。
原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して原料炭組成物を生成する工程と、
前記原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程と、
前記原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程と、
前記黒鉛粉体を粉砕する工程とを、少なくとも含む人造黒鉛材料の製造方法。
[3]前記原料油組成物は、終留点が380℃以下でアスファルテン成分が1質量%未満である軽質油と、初留点が200℃以上でアロマ成分が50質量%以上であり、硫黄分が0.5質量%以下、窒素分が0.2質量%以下である重質油とを少なくとも含み、
且つ前記軽質油の含有率が5〜30質量%である[2]に記載の人造黒鉛材料の製造方法。
[5][4]に記載の負極を有するリチウムイオン二次電池。
本実施形態の人造黒鉛材料は、下記(1)〜(4)の条件を全て満たすものである。
(1)X線広角回折法によって得られた(112)回折線から算出されるc軸方向の結晶子の大きさL(112)が4〜30nmである。
(2)レーザー回折式粒度分布測定装置により算出される体積基準表面積が0.22〜1.70m2/cm3である。
(3)吸油量が67〜147mL/100gである。
(4)波長514.5nmのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580cm−1±100cm−1の波長領域に存在するピークの半価幅ΔνGが19〜24cm−1である。
L(112)が4nm未満の人造黒鉛材料は、結晶組織の発達が不十分である。このため、L(112)が4nm未満の人造黒鉛材料を含む負極を有するリチウムイオン二次電池は、容量が小さく、好ましくない(例えば、非特許文献2参照)。
粒度分布は、粒子径(μm)と頻度(%)のヒストグラムとして表現するが、頻度には単位重量当たりの粒子数の情報は全く含まれていない。同様に粒度分布から求められる体積基準表面積にも、単位重量当たりの粒子数の情報は全く含まれていない。
また、黒鉛粉体の剥離的な粉砕とは、黒鉛の化学結合の切断を伴わない粉砕であり、黒鉛の面方向に対して略平行な剥離が生じる粉砕であることを意味する。
したがって、本実施形態の人造黒鉛材料における半価幅ΔνGが小さいほど、剥離的な粉砕が生じた確率よりも割断的な粉砕が生じた割合が高いと見なすことができる。
これに対し、半価幅ΔνGが19cm−1未満である人造黒鉛材料は、製造時に黒鉛粉体の剥離的な粉砕よりも割断的な粉砕が優先的に生じたため、比表面積のうち、黒鉛結晶のベーサルプレーンが占める割合に対するエッジが占める割合が高すぎるものとなっている。その結果、この人造黒鉛材料を含む負極を有するリチウムイオン電池では、負極での副反応・競争反応が生じ易く、負極の充放電効率の急速な低下が不可避である。このため、負極と正極との充放電効率との差が拡大しやすく、放電容量の劣化が生じやすい。
これに対し、半価幅ΔνGが24cm−1を超える人造黒鉛材料は、製造時に黒鉛粉体の割断的な粉砕よりも剥離的な粉砕が優先的に生じたものであるため、人造黒鉛材料の粒子表面のエッヂ面における炭素原子の3次元的な配列が乱れたものとなっている。すなわち、人造黒鉛材料の粒子表面のエッヂ面における炭素原子の3次元的な配列の規則性が低下して、黒鉛結晶の完全性が低くなっている。その結果、この人造黒鉛材料を含む負極を有するリチウムイオン電池では、負極におけるリチウムイオンの可逆的なインターカレーション反応が阻害され(立体障害になる)、抵抗が大きくなる。このため、0℃以下の低温での充電によって負極でリチウム金属が析出し易くなり、放電容量が劣化しやすい。
本実施形態の人造黒鉛材料は、例えば、以下に示す製造方法により製造できる。
すなわち、原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して原料炭組成物を生成する工程と、原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程と、原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程と、黒鉛粉体を粉砕する工程とを行う。
本実施形態の人造黒鉛材料の製造方法において用いられる原料油組成物としては、軽質油と、重質油とを少なくとも含むものを用いることが好ましい。重質油は、コーキング処理時に良好なバルクメソフェーズを生成する。軽質油は、重質油との相溶性が良好であるため、原料油組成物中に均一に分散する。そして、軽質油は、コーキング処理時に生成したバルクメソフェーズが重縮合して炭化及び固化する際にガスを発生し、バルクメソフェーズの大きさを小さくする。
重質油としては、初留点が200℃以上でアロマ成分が50質量%以上、硫黄分が0.5質量%以下、窒素分が0.2質量%以下であるものを用いることが好ましい。重質油は1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
軽質油としては、終留点が380℃以下でアスファルテン成分が1質量%未満であるものを用いることが好ましい。軽質油は1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
そして、原料油組成物中における軽質油の含有率を5〜30質量%とすることが好ましい。
原料油組成物に含まれる軽質油は、芳香族分の高い軽質油であることが好ましい。芳香族分の高い軽質油としては、コーカー軽油等が代表的である。芳香族性が高い軽質油は、重質油との相溶性に優れる。重質油との相溶性が優れる軽質油は、原料油組成物中に均一に分散する。このため、コーキング処理時に原料油組成物中の軽質油から均一にガスが発生し、コークスの針状性が発達しやすくなり、小さな六角網平面が積層された結晶子で構成された選択的な配向性を有する微細組織を有する原料炭組成物が得られやすくなる。その結果、コークスの熱膨脹係数(CTE)が低くなり、好ましい。
運転条件は特に限定されるものではないが、上記の重質油を原料としてコーカー熱分解装置を用いて、反応圧力0.8MPa、分解温度400〜600℃で処理することが好ましい。
軽質油のアロマ成分及びアスファルテン成分は、重質油のアロマ成分と同様の方法により測定したものである。
軽質油を得るための流動接触分解は、一般的に上記した重質油を得るための流動接触分解と同一の条件下で行われる。
軽質油を得るためのディレードコーキングプロセスにおける圧力は、300〜800kPaであることが好ましい。圧力が上記範囲内である場合、圧力が高いほどコークスの収率が高くなるため好ましい。圧力は、プロセスによって適宜決定できる。
また、原料油組成物中における軽質油の含有率が30質量%を超えると、コーキング処理によって得られる原料油のコークス収率が大きく低下し、コークスの生産量が不十分となる場合がある。
原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理する方法は、高品質の人造黒鉛材料の原料を大量生産するために大変適している。
コーキング処理としては、例えば、コーキング圧力が制御された条件の下、ディレードコーカーを用いて原料油組成物を熱分解、重縮合して生コークスを含む原料炭組成物を得る処理を用いることが好ましい。
コーキング処理における温度は、400〜600℃であることが好ましく、490〜540℃であることがより好ましい。コーキング処理における温度が400〜600℃であると、原料油組成物から良好なメソフェーズを成長させることができる。
次に、コーキング処理して生成した原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程を行う。原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る方法としては、ハンマー式ミルを用いる方法など公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
次に、原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程を行う。
本実施形態の人造黒鉛材料の製造方法における原料炭粉体の熱処理は、原料炭粉体から揮発成分を除去し、脱水、熱分解して、固相黒鉛化反応させるために行う。この熱処理を行うことにより、安定な品質の人造黒鉛材料が得られる。
炭化処理としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下、最高到達温度500〜1500℃、好ましくは900〜1500℃で、最高到達温度の保持時間0〜10時間の加熱処理を行う方法が挙げられる。
本実施形態の人造黒鉛材料の製造方法において、原料炭粉体を熱処理して得た黒鉛粉体を粉砕する方法としては、気流式ジェットミルを用いる方法など公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
以上の工程を行うことにより、本実施形態の人造黒鉛材料が得られる。
(a)原料油組成物中の軽質油の性状(終留点およびアスファルテン成分含有量)と割合(原料油組成物中の含有率)を制御する。
(b)原料炭組成物の粉砕後の体積基準表面積(以下、「原料体積基準表面積」と略記する場合がある)と、熱処理後の黒鉛粉体を粉砕した後の体積基準表面積(以下、「黒鉛体積基準表面積」と略記する場合がある)の差を制御する。
本実施形態の人造黒鉛材料を含む負極を有するリチウムイオン二次電池は、0℃以下の低温で充放電が繰り返されても放電容量が劣化しにくいため、ハイブリッド自動車用、プラグインハイブリッド自動車用、電気自動車用などの自動車用途および系統インフラの電力貯蔵用などの産業用に好適である。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極について説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、本実施形態の人造黒鉛材料を含む黒鉛材料と、バインダー(結着剤)と、必要に応じて含有される導電助剤とを含む。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、本実施形態の人造黒鉛材料を含むものであればよく、必要に応じて、黒鉛材料として、本実施形態の人造黒鉛材料だけでなく、公知の黒鉛材料を1種または2種以上含んでいてもよい。
天然黒鉛系材料としては、天然から産出される黒鉛状物、前記黒鉛状物を高純度化したもの、その後、球状にしたもの(メカノケミカル処理を含む)、高純度品や球状品の表面を別の炭素で被覆したもの(例えば、ピッチコート品、CVDコート品等)、プラズマ処理をしたものなどが挙げられる。
本実施形態の人造黒鉛材料以外の人造黒鉛材料および天然黒鉛系材料の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、鱗片状であってもよいし、球状であってもよい。
負極合剤の中のバインダーの含有率は、黒鉛材料100質量部に対して1〜30質量部程度とすることが好ましく、リチウムイオン二次電池の設計上、必要に応じて適宜設定すればよい。
導電助剤の使用量は、黒鉛材料100質量部に対して1〜15質量部とすることが好ましく、リチウムイオン二次電池の設計上、必要に応じて適宜設定すればよい。
例えば、本実施形態の人造黒鉛材料を含む黒鉛材料と、バインダー(結着剤)と、必要に応じて含有される導電助剤と、溶媒とを含む混合物である負極合剤を製造する。その後、負極合剤を所定の寸法に加圧成形する方法が挙げられる。
負極合剤の加圧成形は、例えば、ロール加圧、プレス加圧などの方法を用いて行うことができる。負極合剤の加圧成形は、100〜300MPa程度の圧力で行うことが好ましい。
負極集電体上に形成した乾燥した負極合剤からなる層は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせで用いる方法など公知の方法により、負極集電体と一体化することができる。
負極集電体の形状についても、特に制限なく利用可能である。具体的には、負極集電体の形状として、例えば、箔状、穴開け箔状、メッシュ状であって、全体形状が帯状であるものなどが挙げられる。
また、負極集電体としては、例えば、ポーラスメタル(発泡メタル)、カーボンペーパーなどの多孔性材料を使用してもよい。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池について説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の一例を示した概略断面図である。図1に示すのリチウムイオン二次電池10は、負極集電体12と一体化された負極11と、正極集電体14と一体化された正極13とを有している。図1に示すリチウムイオン二次電池10では、負極11として本実施形態の負極が用いられている。負極11と正極13とは、セパレータ15を介して対向配置されている。図1において、符号16は、アルミラミネート外装を示している。アルミラミネート外装16内には、電解液が注入されている。
活物質としては、リチウムイオン二次電池用正極に用いられる公知のものを用いることができ、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いることができる。具体的には、活物質として、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、及び複酸化物(LiCoXNiYMnZO2、X+Y+Z=1)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物などを挙げることができる。
導電助剤としては、上述した負極11に用いられる導電助剤と同様のものを用いることができる。
正極集電体14としては、上述した負極集電体と同様のものを用いることができる。
なお、リチウムイオン二次電池が、正極と負極とが直接接触しない構造である場合には、セパレータは不要である。
電解液としては、電気伝導性の観点から有機電解液を用いることが好ましい。
例えば、リチウム塩として、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等が挙げられる。
具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池の構造は、図1に示すリチウムイオン二次電池10に限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池の構造は、例えば、帯状に成型された正極と負極とが、セパレータを介して渦巻状に巻回された巻回電極群を、電池ケースに挿入し、封口した構造であってもよい。また、リチウムイオン二次電池の構造は、平板状に成型された正極と負極とが、セパレータを介して順次積層された積層式極板群を外装体中に封入した構造であってもよい。
(実施例1)
脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm3)を流動接触分解し、流動接触分解残油(以下、「流動接触分解残油(A)」と記す。)を得た。得られた流動接触分解残油(A)の初留点は200℃、硫黄分は0.2質量%、窒素分は0.1質量%、アロマ成分は65質量%であった。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が20.3μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、後述する人造黒鉛材料の体積基準表面積と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を窒素ガス気流下1000℃で焼成(か焼)し、か焼コークスを得た。か焼としては、室温から1000℃までの昇温時間を4時間、1000℃の保持時間を4時間、1000℃から400℃までの降温時間を2時間とし、400℃以降は窒素ガスの気流を継続しながら4時間放冷する処理を行った。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が5.1μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、実施例1の人造黒鉛材料を得た。
得られた実施例1の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνGを、以下に示す方法により求めた。また、原料体積基準表面積と人造黒鉛材料の体積基準表面積(黒鉛体積基準表面積)の測定結果から、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を算出した。それらの結果を表1に示す。
人造黒鉛材料に、内部標準としてSi標準試料を10質量%混合し、ガラス製試料ホルダー(窓枠の大きさが16mm×20mm、深さ0.2mm)に詰め、JIS R7651(2007)準拠して広角X線回折法で測定を行い、結晶子の大きさL(112)を算出した。
X線回折装置としては(株)リガク社製のULTIMA IVを用い、X線源としてはCuKα線(KβフィルターNiを使用)を用いた。また、X線管球への印可電圧及び電流を40kV及び40mAとした。
ここで、L:結晶サイズ(nm)
K:形状因子定数(=1.0)
λ:X線の波長(=0.15406nm)
θ:ブラッグ角(補正された回折角度)
β:真の半値幅(補正値)
マイクロトラック・ベル株式会社製のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(MT3300EXII)を使用して、人造黒鉛材料の粒度分布を測定した。測定に使用した分散液は、約0.5gの人造黒鉛材料に、0.1質量%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液(数滴)と界面活性剤(数滴)とを加え、乳鉢で均質となるように十分混ぜ合わせた後、更に0.1質量%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液を40mL加え、超音波ホモジナイザーで分散させることにより作製した。得られた粒度分布の測定結果を、JIS Z 8819−2(2001)の「粒子径測定結果の表現−第2部:粒子径分布からの平均粒子径又は平均粒子直径及びモーメントの計算」のうち「5.5体積基準表面積の計算」に準拠して算出した。
JIS K 5101−13−1(2004)の「吸油量−第一節:精製あまに油法」に準拠して測定し、算出した。具体的には、精秤した人造黒鉛材料を測定板に置き、容量10mLのビュレットから、精製あまに油を滴下し、パレットナイフで精製あまに油を練り込み、完全に混錬するようにして、滴下と練りこみを繰り返した。次に、ペーストが滑らかな硬さになったところを終点とし、最後に以下の式で吸油量を算出した。
O1=100×V/m
ここでO1:吸油量(mL00g)
V:滴下したあまに油の容量(mL)
m:測定板に置いた人造黒鉛材料の質量(g)
光源をAr+レーザー(励起波長514.5nm)としたラマン分光分析を行った。測定はマクロモードで、レーザーのスポット径は約100μmであり、レーザー照射範囲全体からの平均的な情報が得られるように設定した。測定装置としては、Ramanor T−64000(Jobin Yvon/愛宕物産)を使用した。測定配置は60°、レーザーパワーは10mWである。得られたラマンスペクトル図において、1580cm−1±100cm−1の波長領域に存在するピークの半値幅ΔνGを算出した。測定および解析は3回ずつ実施し、その平均値をΔνGとして算出した。
軽質油であるディレードコーキングプロセスで得られた分解軽油(硫黄分0.2質量%、15℃における密度0.92g/cm3、飽和分36容量%、アロマ成分64容量%、アスファルテン成分0質量%、初留点220℃、終留点340℃(以下、「コーカー分解軽油(A)」と記す。))と、重質油である流動接触分解残油(A)および流動接触分解残油(B)とを、質量比で30:50:20の割合で混合し、実施例2の原料油組成物を得た。実施例2の原料油組成物中の軽質油の含有率を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が18.2μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が9.8μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、実施例2の人造黒鉛材料を得た。
得られた実施例2の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
軽油脱硫装置により得られた軽質油である脱硫軽油(15℃における密度0.90g/cm3、アロマ成分25容量%、アスファルテン成分0質量%、初留点180℃、終留点350℃(以下、「脱硫軽油(A)」と記す。))と、重質油である流動接触分解残油(A)および流動接触分解残油(B)を、質量比で15:40:45の割合で混合し、実施例3の原料油組成物を得た。実施例3の原料油組成物中の軽質油の含有率を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が19.6μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が12.1μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、実施例3の人造黒鉛材料を得た。
得られた実施例3の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
重質油である流動接触分解残油(A)とおよび流動接触分解残油(B)と、軽質油であるコーカー分解軽油(A)とを、質量比で75:20:5の割合で混合し、実施例4の原料油組成物を得た。実施例4の原料油組成物中の軽質油の含有率を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が39.3μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、3050℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から3050℃までの昇温時間を130時間、3050℃の保持時間を8時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた実施例4の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
重質油である流動接触分解残油(A)と、軽質油であるコーカー分解軽油(A)とを、質量比で75:25の割合で混合し、実施例5の原料油組成物を得た。実施例5の原料油組成物中の軽質油の含有率を表1に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が52.7μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、3150℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から3150℃までの昇温時間を130時間、3150℃の保持時間を8時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた実施例5の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表1に示す。
重質油である流動接触分解残油(A)のみを、比較例1の原料油組成物として用いた。流動接触分解残油(A)を、実施例1と同様にしてコーキング処理してコークス化し、原料炭組成物を得た。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が28.4μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表2に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が10.2μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、比較例1の人造黒鉛材料を得た。
得られた比較例1の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表2に示す。
軽質油であるコーカー分解軽油(A)と、重質油である流動接触分解残油(A)および流動接触分解残油(B)とを、質量比で35:30:35の割合で混合し、比較例2の原料油組成物を得た。比較例2の原料油組成物中の軽質油の含有率を表2に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が14.3μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表2に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が9.4μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、比較例2の人造黒鉛材料を得た。
得られた比較例2の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表2に示す。
軽質油である脱硫軽油(A)と、重質油である流動接触分解残油(A)および流動接触分解残油(B)とを、質量比で45:20:35の割合で混合し、比較例3の原料油組成物を得た。比較例3の原料油組成物中の軽質油の含有率を表2に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が25.7μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表2に示す。
得られた原料炭粉体を、実施例1と同様にして焼成し、か焼コークスを得た。
得られた黒鉛粉体を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が19.8μmとなるように気流式ジェットミルで粉砕し、比較例3の人造黒鉛材料を得た。
得られた比較例3の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表2に示す。
重質油である流動接触分解残油(A)と、軽質油であるコーカー分解軽油(A)とを、質量比で50:50の割合で混合し、比較例4の原料油組成物を得た。比較例4の原料油組成物中の軽質油の含有率を表2に示す。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が58.6μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表2に示す。
得られた原料炭粉体を、グラファイトからなる坩堝に投入し、アチソン炉のブリーズに埋め込んだ後、3150℃で黒鉛化した。黒鉛化処理としては、室温から3150℃までの昇温時間を130時間、3150℃の保持時間を8時間とし、25日間放冷した後に取り出す処理を行った。
得られた比較例4の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表2に示す。
重質油である流動接触分解残油(B)のみを、比較例5の原料油組成物として用いた。流動接触分解残油(B)を、実施例1と同様にしてコーキング処理してコークス化し、原料炭組成物を得た。
得られた原料炭組成物を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒子径が48.4μmとなるようにハンマー式ミルで粉砕し、原料炭粉体を得た。
原料炭粉体の体積基準表面積(原料体積基準表面積)を、実施例1と同様にして求めた。その結果を表2に示す。
得られた比較例5の人造黒鉛材料について、結晶子の大きさL(112)、体積基準表面積、吸油量、ラマンスペクトルの半価幅ΔνG、原料体積基準表面積と黒鉛体積基準表面積の差を、実施例1と同様の方法により求めた。その結果を表2に示す。
実施例3で得た人造黒鉛材料と、比較例2で得た人造黒鉛材料とを、質量比で50:50の割合で混合した混合物からなる実施例6の人造黒鉛材料を得た。
(実施例7)
実施例3で得た人造黒鉛材料と、比較例2で得た人造黒鉛材料とを、質量比で30:70の割合で混合した混合物からなる実施例7の人造黒鉛材料を得た。
(実施例8)
実施例3で得た人造黒鉛材料と、比較例2で得た人造黒鉛材料とを、質量比で20:80の割合で混合した混合物からなる実施例8の人造黒鉛材料を得た。
以下に示す方法により、評価用電池として図1に示すリチウムイオン二次電池10を作製した。負極11、負極集電体12、正極13、正極集電体14、セパレータ15としては、それぞれ以下に示すものを用いた。
実施例1〜8、比較例1〜5で得た何れかの人造黒鉛材料と、1.5質量%の濃度に調整された結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC(第一工業製薬株式会社製のBSH−6))水溶液と、48質量%の濃度で結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)が分散した水溶液とを、固形分の質量比で98:1:1の割合で混合し、ペースト状の負極合剤を得た。得られた負極合剤を、負極集電体12としての厚さ18μmの銅箔の片面全面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、負極合剤からなる層である負極11が負極集電体12上に形成された負極シートを得た。負極シートにおける負極合剤の単位面積当たりの塗布量は、黒鉛材料の質量として約10mg/cm2となるように調整した。
正極材料である平均粒子径10μmのコバルト酸リチウムLiCoO2(日本化学工業社製のセルシードC10N)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1120)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で89:6:5に混合し、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練し、ペースト状の正極合剤を得た。得られた正極合剤を、正極集電体14としての厚さ30μmのアルミニウム箔の片面全面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、正極合剤からなる層である正極13が正極集電体14上に形成された正極シートを得た。正極シートにおける正極合剤の単位面積当たりの塗布量は、コバルト酸リチウムの質量として、約20mg/cm2となるように調整した。
セパレータ15としては、セルロース系不織布(日本高度紙(株)製のTF40−50)を用いた。
その後、正極リード板および負極リード板がはみ出した状態で、アルミラミネート外装16を熱融着した。
以上の工程により、実施例1〜8、比較例1〜5の密閉型のリチウムイオン二次電池10を得た。
実施例1〜8、比較例1〜5のリチウムイオン二次電池10について、それぞれ以下に示す充放電試験を行った。
先ず、電池の異常を検知するための予備試験を行った。すなわち、電池を25℃の恒温室内に設置し、4mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電し、10分間休止した後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電した。これらの充電、休止、および放電を1つの充放電サイクルとし、同様の条件で充放電サイクルを3回繰り返し、予備試験とした。
この予備試験により、実施例1〜8、比較例1〜5の電池は、全て異常がないことを確認した。その上で、以下の本試験を実施した。なお、予備試験は、本試験のサイクル数には含まない。
次に、電池を0℃に設定された恒温槽の中に設置し、5時間放置した後、初期放電容量を求めた充放電サイクルと同じ条件で、充放電サイクルを100回繰り返した。その後、電池を再度25℃の恒温槽内に設置し、5時間放置した後、初期放電容量を求めた充放電サイクルと同じ条件で、充放電サイクルを3回繰り返し、第3サイクル目の放電容量を「0℃の充放電を繰り返した後の放電容量」とした。
その結果を表1および表2に示す。
このことから、本発明の人造黒鉛材料を含む負極を用いたリチウムイオン二次電池は、0℃以下の温度で充放電サイクルが繰り返されても放電容量が劣化しにくいことが確認された。
Claims (5)
- X線広角回折法によって得られた(112)回折線から算出されるc軸方向の結晶子の大きさL(112)が4〜30nmであり、
レーザー回折式粒度分布測定装置により算出される体積基準表面積が0.22〜1.70m2/cm3であり、
吸油量が67〜147mL/100gであり、
波長514.5nmのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580cm−1±100cm−1の波長領域に存在するピークの半価幅ΔνGが19〜24cm−1であることを特徴とする人造黒鉛材料。 - 請求項1に記載の人造黒鉛材料の製造方法であって、
原料油組成物をディレードコーキングプロセスによってコーキング処理して原料炭組成物を生成する工程と、
前記原料炭組成物を粉砕して原料炭粉体を得る工程と、
前記原料炭粉体を熱処理して黒鉛粉体を得る工程と、
前記黒鉛粉体を粉砕する工程とを、少なくとも含む人造黒鉛材料の製造方法。 - 前記原料油組成物は、終留点が380℃以下でアスファルテン成分が1質量%未満である軽質油と、初留点が200℃以上でアロマ成分が50質量%以上であり、硫黄分が0.5質量%以下、窒素分が0.2質量%以下である重質油とを少なくとも含み、
且つ前記軽質油の含有率が5〜30質量%である請求項2に記載の人造黒鉛材料の製造方法。 - 請求項1に記載の人造黒鉛材料を含むリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項4に記載の負極を有するリチウムイオン二次電池。
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