JP2020109889A - 原子発振器および周波数信号生成システム - Google Patents
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Abstract
【課題】構造がより簡単で、アルカリ金属原子に対する温度制御を容易に行うことができる原子発振器および周波数信号生成システムを提供すること。【解決手段】光を発する発光素子と、前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、前記シールドの開口を経由して前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える、原子発振器。【選択図】図2
Description
本発明は、原子発振器および周波数信号生成システムに関する。
ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属原子のエネルギー遷移に基づいて発振する原子発振器が知られている。例えば、特許文献1に記載の光周波数基準セル装置は、原子発振器に利用可能な装置であり、第1のセル部と、第1のセル部から突出した第2のセル部と、第2のセル部を除く全体が収まる保温筒と、を有し、蒸気状態のアルカリ金属原子が第1のセル部と第2のセル部との間を自由に行き来できるようになっている。また、特許文献1に記載の光周波数基準セル装置は、第1のセル部を覆い、第1のセル部の温度を制御するための第1の温度制御手段と、第2のセル部を覆い、第2のセル部の温度を制御するための第2の温度制御手段と、を有している。第2のセル部は第1のセル部より低温下に置かれているため蒸気状態であった金属原子の析出は第2のセル部で先に始まり、第1のセル部両端面への金属膜の付着を防ぐことができる。
しかしながら、特許文献1に記載の光周波数基準セル装置は、第2のセル部が第1のセル部から突出している分、セルの構造が複雑となっている。セルの構造は簡単であることが品質管理上好ましい。そこで、セルの構造がより簡単であっても、セルの一部分の温度を他の部分と異なる温度に制御することができる原子発振器が求められている。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
本適用例に係る原子発振器は、光を発する発光素子と、
前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、
前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、
前記シールドの開口を経由して前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、
前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、
前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える。
前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、
前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、
前記シールドの開口を経由して前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、
前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、
前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える。
本適用例に係る原子発振器では、前記原子セルと前記シールドとの間に配置され、前記原子セルよりも熱伝導率が小さい断熱層を備えることが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記伝熱部材は、前記断熱層を貫通していることが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記原子セルの外側に配置され、螺旋状に巻回されたワイヤーで構成され、通電により磁場を発生させるコイルを備えることが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記コイルは、前記通電により発熱することによって前記原子セルを加熱することが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記原子セルを加熱するヒーターを備えることが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記コイルは、前記原子セルを透過する光の光軸方向において隣り合う前記ワイヤーの部分同士の間に間隙が形成された疎巻き部を有し、
前記伝熱部材は、前記間隙を経由して前記原子セルの一部に接していることが好ましい。
前記伝熱部材は、前記間隙を経由して前記原子セルの一部に接していることが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記伝熱部材は、前記原子セルを透過する光の光軸方向における、前記コイルの開口を経由して前記原子セルに接していることが好ましい。
本適用例に係る原子発振器では、前記原子セルには、固体または液体のアルカリ金属原子が収容されており、
前記固体または液体のアルカリ金属原子は、前記原子セルの中で前記伝熱部材側に偏在していることが好ましい。
前記固体または液体のアルカリ金属原子は、前記原子セルの中で前記伝熱部材側に偏在していることが好ましい。
本適用例に係る周波数信号生成システムは、原子発振器と、
前記原子発振器からの周波数信号を処理する処理部と、を備え、
前記原子発振器は、
光を発する発光素子と、
前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、
前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、
前記シールドの開口を経由して、前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、
前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、
前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える。
前記原子発振器からの周波数信号を処理する処理部と、を備え、
前記原子発振器は、
光を発する発光素子と、
前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、
前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、
前記シールドの開口を経由して、前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、
前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、
前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える。
以下、本発明の原子発振器および周波数信号生成システムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、図2〜図6に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、一例として、X軸が後述する光軸aに平行であるものとする。また、各軸の矢印が指す方向を「正方向」、その反対方向を「負方向」と言う。一例として、X軸正方向を光LLの進行方向とする。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る原子発振器を示す概略図である。図2は、第1実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図1は、第1実施形態に係る原子発振器を示す概略図である。図2は、第1実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図1に示す原子発振器1は、アルカリ金属原子に対して特定の異なる波長の2つの共鳴光を同時に照射したときに、量子干渉効果によって当該2つの共鳴光がアルカリ金属原子に吸収されずに透過する現象が生じることを利用した原子発振器である。なお、この量子干渉効果による現象は、CPT(Coherent Population Trapping)現象または電磁誘起透明化(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象と言う。
この原子発振器1は、図1に示すように、発光素子モジュール10と、原子セルユニット20と、発光素子モジュール10と原子セルユニット20との間に設けられている光学系ユニット30と、発光素子モジュール10および原子セルユニット20の作動を制御する制御回路50と、を備える。以下、まず、原子発振器1の概略について説明する。
発光素子モジュール10は、ペルチェ素子101と、発光素子102と、温度センサー103と、を備える。発光素子102は、周波数の異なる2種の光を含んでいる直線偏光の光LLを出射する。発光素子102としては、光LLを出射するものであれば特に限定されず、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザー等を用いることができる。また、温度センサー103は、発光素子102の温度を検出する。また、ペルチェ素子101は、発光素子102の温度を調節する、すなわち、発光素子102を加熱または冷却する。
光学系ユニット30は、減光フィルター301と、集光レンズ302と、1/4波長板303と、を備え、これらが光LLの光軸aに沿って並んでいる。減光フィルター301は、前述した発光素子102からの光LLの強度を減少させる。また、集光レンズ302は、例えば光LLを平行光に近づける等のように、光LLの放射角度を調整する。また、1/4波長板303は、光LLに含まれる周波数の異なる2種の光を直線偏光から円偏光、すなわち、右円偏光または左円偏光に変換する。
原子セルユニット20は、原子セル3と、受光素子202と、ペルチェ素子212と、温度センサー204と、コイル4と、を備える。
原子セル3は、光LLに対する透過性を有し、原子セル3内には、アルカリ金属原子が封入されている。アルカリ金属原子は、互いに異なる2つの基底準位と励起準位とからなる3準位系のエネルギー準位を有する。原子セル3には、発光素子102からの光LLが減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303を介して入射する。そして、受光素子202は、原子セル3を通過した光LLを受光し、その受光強度に応じた信号を出力する。
ペルチェ素子212は、原子セル3の一部の温度を制御する温度制御素子である。ペルチェ素子212は、供給される電流の向きに応じて加熱または冷却機能を発揮することができる。これにより、原子セル3の一部を所望の温度に調節することができる。
また、温度センサー204は、伝熱部材7の温度を検出する。
また、温度センサー204は、伝熱部材7の温度を検出する。
コイル4は、原子セル3内のアルカリ金属原子に所定方向の磁場を印加し、そのアルカリ金属原子のエネルギー準位をゼーマン分裂させる。このようにアルカリ金属原子のエネルギー準位がゼーマン分裂した状態において、前述したような円偏光の共鳴光対がアルカリ金属原子に照射されると、アルカリ金属原子がゼーマン分裂した複数の準位のうち、所望のエネルギー準位のアルカリ金属原子の数を他のエネルギー準位のアルカリ金属原子の数に対して相対的に多くすることができる。そのため、所望のEIT現象を発現する原子数が増大し、所望のEIT信号、すなわち、EIT現象に伴って受光素子202の出力信号に現れる信号が大きくなり、その結果、原子発振器1の発振特性、特に短期周波数安定度を向上させることができる。
制御回路50は、温度制御回路501と、光源制御回路502と、磁場制御回路503と、温度制御回路504と、を備える。温度制御回路501は、温度センサー204の検出結果に基づいて、原子セル3内が所望の温度となるように、ペルチェ素子212への通電を制御する。また、磁場制御回路503は、コイル4が発生する磁場が一定となるように、コイル4への通電を制御する。また、温度制御回路504は、温度センサー103の検出結果に基づいて、発光素子102の温度が所望の温度となるように、ペルチェ素子101への通電を制御する。
光源制御回路502は、受光素子202の検出結果に基づいて、EIT現象が生じるように、発光素子102からの光LLに含まれる2種の光の周波数を制御する。ここで、これら2種の光が原子セル3内のアルカリ金属原子の2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数差の共鳴光対となったとき、EIT現象が生じる。また、光源制御回路502は、前述した2種の光の周波数の制御に同期して安定化するように発振周波数が制御される電圧制御型水晶発振器(図示せず)を備えており、この電圧制御型発振器(VCO:Voltage controlled Oscillator)の出力信号を原子発振器1の出力信号(クロック信号)として出力する。
以上、原子発振器1の概略について説明した。以下、図2を参照して、原子発振器1のより具体的な構成について説明する。
前述したように、原子セルユニット20は、原子セル3と、受光素子202と、ペルチェ素子212と、温度センサー204と、コイル4と、を備える。また、これらの他に、原子セルユニット20は、図2に示すように、コイル4を支持する支持部材5と、原子セル3、コイル4および支持部材5を収容する第1シールド部材6と、原子セル3とペルチェ素子212とに接する伝熱部材7と、を備える。また、原子発振器1は、原子セルユニット20、発光素子モジュール10および光学系ユニット30を収容する第2シールド部材8を備える。
原子セル3は、気体のアルカリ金属原子を収容するとともに、固体または液体のアルカリ金属原子(以下「補充用金属MR」と言う)を収容している。なお、アルカリ金属としては、特に限定されず、例えば、ルビジウム、セシウム、ナトリウム等とすることができる。また、原子セル3内には、必要に応じて、アルゴン、ネオン等の希ガス、窒素等の不活性ガスが緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。
原子セル3は、X軸と平行な軸を中心軸とする筒状の胴体部33と、胴体部33のX軸方向負側に接合された板状の窓部34と、胴体部33のX軸方向正側に接合された板状の窓部35と、を有し、これらで囲まれた内部空間Sが形成されている。発光素子102から発せられた光LLは、窓部34、内部空間S、窓部35を順に透過する。このとき、光LLは、内部空間S内でアルカリ金属原子を励起することができる。その後、光LLは、受光素子202に至る。なお、内部空間Sの形状としては、特に限定されないが、例えば、直方体、立方体、円柱、球等とすることができる。また、原子セル3の窓部34、35のうち一方は、胴体部33と一体であってもよい。
内部空間Sには、補充用金属MRが収容されている。補充用金属MRは、内部空間S内の気体のアルカリ金属原子が不足したとき、気体となって光LLによって励起される。また、補充用金属MRは、内部空間S内で固体または液体の状態となっており、この状態で胴体部33や窓部35の光LLの主な経路とは異なる位置に付着していることが好ましい。これにより、例えば、補充用金属MRが内部空間S内で移動して、光LLに干渉することを低減することができる。
なお、原子セル3は、仕切り部(図示せず)によって内部空間Sが2つの空間に仕切られていてもよい。この場合、2つの空間は、互いに容積が異なり、容積が小さい方の空間に補充用金属MRを配置することができる。
このような原子セル3は、内部空間Sを構成する面とは反対側の面、すなわち、原子セル3の外面として、3つの面を有している。1つ目の面は、窓部34の外面であり、発光素子102からの光LLが入射する入射面となる第1面311である。2つ目の面は、窓部35の外面であり、第1面311に入射して、内部空間Sを透過した光LLが出射する出射面となる第2面312である。3つ目の面は、胴体部33の外周面であり、第1面311と第2面312とを接続する第3面313である。なお、胴体部33の外形が角柱等であり、複数の面を含む場合は、それらの面を包括的に第3面313と称する。
窓部34および窓部35の構成材料としては、光LLに対する透過性を有していればよく、特に限定されないが、例えば、ガラス材料、水晶等が挙げられる。一方、胴体部33の構成材料としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、シリコン、水晶等が挙げられるが、加工性や、窓部34および窓部35との接合の観点から、ガラス材料、シリコン材料を用いることが好ましい。また、胴体部33と窓部34および窓部35との接合方法としては、これらの構成材料に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、直接接合法、陽極接合法、溶融接合法、オプティカル接合法等を用いることができる。
以上のような構成の原子セル3の第2面312側には、受光素子202が第2面312に対向して配置されている。受光素子202は、原子セル3内を透過して、第2面312から出射した光LL、すなわち、共鳴光対の強度を検出することができる。受光素子202としては、特に限定されず、例えば、フォトダイオード等が挙げられる。
原子セル3の胴体部33の外周側には、筒状をなす支持部材5が胴体部33と同心的に配置されている。支持部材5は、内側で原子セル3を支持するとともに、外側でコイル4を支持する部材である。
なお、支持部材5の内壁間のX軸に沿った長さは、原子セル3のX軸方向に沿った全長よりも長い。これにより、支持部材5の内側に、胴体部33全体を収容することができる。これにより、後述するヒーターからの熱を原子セル3のX軸方向における全体に伝えやすくなるので、原子発振器1にとって好ましい構成となる。
支持部材5の外周面51には、コイル4を螺旋状に巻回することができる。これにより、コイル4は、螺旋状に巻回された状態が維持される。また、支持部材5の外周面51には、その周方向に沿って溝52が螺旋状に形成されていてもよい。これにより、螺旋状のコイル4を形成する際には、コイル4を構成する金属製の1本のワイヤー41を溝52に沿わせることにより、コイル4の形成を容易に行なうことができる。また、溝52により、支持部材5の外周面51上でのコイル4の位置ズレが防止され、よって、コイル4の巻回状態をより強固に維持することができる。
また、支持部材5には、伝熱部材7が挿通する貫通孔53が形成されている。貫通孔53は第1シールド部材6の開口の一例である。これにより、伝熱部材7の位置を規制し、原子セル3の所望の位置に接触させやすくできる。なお、第1シールド部材6が容器本体と蓋とを有する場合、伝熱部材7は容器本体と蓋との隙間、すなわち開口、を経由してもよい。これにより、第1シールド部材6に伝熱部材7を通すための専用の貫通孔を形成しなくても、伝熱部材7と原子セル3とを接続することができる。
支持部材5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、コイル4から原子セル3への磁界を阻害しない材料、例えば、アルミニウム等の非磁性の金属材料や、炭化ケイ素系等の熱伝導性のセラミックス材料を用いることができる。また、コイル4が通電より発熱するよう構成されている場合には、支持部材5の構成材料として、コイル4から原子セル3への磁界を阻害しない機能を有しつつ、熱伝導性に優れた材料を用いることが好ましい。これにより、コイル4で生じた熱を支持部材5を介して胴体部33に伝えることができ、よって、内部空間Sを加熱することができる。
コイル4は、原子セル3の外側で第3面313に沿って、特に本実施形態では、前述したように、支持部材5の外周面51に沿って、螺旋状に巻回されたワイヤー41で構成されている。コイルを構成するワイヤー41は、絶縁材料で覆われている。コイル4は、通電により、内部空間S内に光LLの光軸aに沿った方向の磁場を発生させることができる。なお、コイル4を構成するワイヤー41の本数は、1本に限定されず、例えば、複数本であってもよい。
このように原子発振器1は、原子セル3の外側に配置され、螺旋状に巻回されたワイヤー41で構成され、通電により磁場を発生させるコイル4を備えている。これにより、内部空間S内のアルカリ金属原子の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップをゼーマン分裂により拡げて、分解能を向上させ、EIT信号の線幅を小さくすることができる。なお、コイル4が発生する磁場は、直流磁場または交流磁場のいずれかの磁場であってもよいし、直流磁場と交流磁場とを重畳させた磁場であってもよい。
コイル4は、X軸方向、すなわち、原子セル3を透過する光LLの光軸a方向に隣り合うワイヤー41同士が接する複数の密巻き部42と、光軸a方向に隣り合うワイヤー41同士の間に間隙411が形成された、すなわち、ワイヤー41同士が離間した複数の疎巻き部43と、を有している。このようなコイル4としては、ヘルムホルツ型のコイルや、Lee-Whiting型のコイルを用いることができる。本実施形態のコイルは密巻き部42と疎巻き部43とがX軸方向に沿って交互に配置されたLee-Whiting型のコイルであり、である。
密巻き部42としては、X軸方向正側から順に、第1密巻き部42A、第2密巻き部42B、第3密巻き部42Cおよび第4密巻き部42Dがある。各密巻き部42での巻回数は、特に限定されず、例えば、2以上40以下であることが好ましく、4以上10以下であることがより好ましい。また、各密巻き部42での巻回数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、本実施形態では、第1密巻き部42Aでの巻回数と、第4密巻き部42Dでの巻回数とは、同じ9巻回であり、第2密巻き部42Bでの巻回数と、第3密巻き部42Cでの巻回数とは、同じ4巻回である。この場合、コイル4は、「Lee-Whiting 4-Coil」と呼ばれる。これにより、例えばコイル4がヘルムホルツ型のコイルである場合に比べて、コイル4の小型化に寄与するとともに、均一磁場領域を大幅に拡張することができ、内部空間S内での不均一磁場を2%以下に維持することができる。
疎巻き部43としては、X軸方向正側から順に、第1疎巻き部43A、第2疎巻き部43Bおよび第3疎巻き部43Cがある。各疎巻き部43での間隙411の大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、本実施形態では、第1疎巻き部43Aでの間隙411の大きさと、第3疎巻き部43Cでの間隙411の大きさとは、同じであり、かつ、第2疎巻き部43Bでの間隙411よりも大きい。
なお、密巻き部42の形成数は、4つ、疎巻き部43の形成数は、3つに限定されない。
コイル4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、銅やニッケルクロム合金等のような導電性を有する金属材料を用いることができる。
コイル4の構成材料としてニッケルクロム合金を用いた場合、コイル4は、通電により発熱することによって、支持部材5を介して、原子セル3内を加熱することができる。このように、ニッケルクロム合金のコイル4は、原子セル3を加熱するヒーターとしても機能する。これにより、原子セル3内のアルカリ金属原子を加熱し、そのアルカリ金属原子の少なくとも一部を所望濃度のガス状態とすることができる。また、例えば、原子セル3を加熱するヒーターをコイル4とを別途に設けるのを省略することができ、よって、原子発振器1の構成を簡単なものにすることができる。なお、ヒーター、本実施形態においてはコイル4は、制御回路50によって制御される。
原子発振器1は、原子セル3、支持部材5およびコイル4を収容し、磁気シールド性を有する第1シールド部材6を備えている。これにより、原子セル3に向かう、原子発振器1の使用環境下での磁場を遮蔽することができ、よって、原子セル3内の磁場が変動するのを低減することができる。
第1シールド部材6には、Y軸方向に貫通し、伝熱部材7が挿通する挿通孔61が形成されている。
また、第1シールド部材6のX軸と交差する2つの壁には、X軸に沿って貫通する開口62、63が形成されている。開口62は、開口63に対してX軸の負側に位置しており、原子セル3の第1面311に入射する光LLが通過する。一方、開口63は開口62に対してX軸の正側に位置しており、第2面312から出射した光LLが通過。
第1シールド部材6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、コバール、パーマロイ、ステンレス鋼等の透磁率が比較的高い鉄系合金等を用いることが好ましい。
第1シールド部材6は、単層の板部材を加工したものであってもよいし、積層体で構成された板部材を加工したものであってもよい。
また、第1シールド部材6の挿通孔61は、挿通孔61に対する平面視で、第1当接部73の挿通孔61内に配置される部分も大きく、挿通孔61と第1当接部73との間には、間隙64が形成されている。第1当接部73については後述する。間隙64には、第1シールド部材6と同じ材料で構成された部材が嵌合していてもよい。これにより、間隙64を埋めることができ、よって、間隙64からの磁場の流入を防止することができる。
また、本実施形態では、支持部材5と第1シールド部材6との間に間隙が形成されており、この間隙は、断熱性を有する断熱層70として機能する。
このように、原子発振器1は、原子セル3を内側で支持する支持部材5と、シールドである第1シールド部材6との間に配置され、断熱性を有する断熱層70を備えた構成となっている。これにより、コイル4で生じた熱が第1シールド部材6に放出さにくくなり、すなわち、断熱層70の内側に熱がこもり、よって、原子セル3を迅速に加熱することができる。また、加熱後の原子セル3内の温度の変化を低減することができる。
なお、断熱層70は、本実施形態では空気層で構成されているが、これに限定されず、例えば、各種の断熱性樹脂材料や、ステアタイト系やジルコニア系等の熱伝導率の低いセラミックス材料で構成することもできる。また、断熱層70が空気層で構成され、断熱層70での対流の作用等により断熱性の確保が困難となりそうな場合には、断熱層70を各種樹脂材料やセラミックス材料で構成することが好ましい。また、断熱層70が各種樹脂材料やセラミックス材料で構成されている場合、光LLの光路上からは断熱層70が省略されている。また、断熱層70は、繊維を含んでいてもよいし、発泡材や多孔質材で構成することもできる。また、断熱層70は、気密性が確保された真空断熱構造であってもよい。
第2シールド部材8は、箱状をなし、その内側に原子セルユニット20、発光素子モジュール10および光学系ユニット30を一括して収容することができる。第2シールド部材8は、磁気シールド性を有する。これにより、第1シールド部材6での磁場の遮蔽性を補うことができ、よって、外部磁場の影響で、第2シールド部材8内、特に原子セル3内の磁場が変動するのをより低減することができる。
第2シールド部材8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、第1シールド部材6の構成材料と同様の材料を用いることができる。
第2シールド部材8は、第1シールド部材6と同様に、単層の板部材を加工したものであってもよいし、積層体で構成された板部材を加工したものであってもよい。
なお、第2シールド部材8の内側には、1つのシールド部材、すなわち、第1シールド部材6が配置されているが、第2シールド部材8の内側にあるシールド部材の配置数は、1つに限定されず、例えば、複数であってもよい。例えば、シールド部材の数が2つの場合、第1シールド部材6ともう一つのシールド部材が重なっていることが好ましく、第1シールド部材6が当該もう一つのシールド部材に収容されていることがより好ましい。
第2シールド部材8と原子セル3との間には、ペルチェ素子212と伝熱部材7とが配置されている。ペルチェ素子212は、伝熱部材7に対して第2シールド部材8側に位置し、伝熱部材7は、ペルチェ素子212の原子セル3側の面に接している。また、伝熱部材7には、温度センサー204が支持、固定されている。
このように原子発振器1は、伝熱部材7に接し、原子セル3内の温度を制御する温度制御素子としてのペルチェ素子212を備えている。ペルチェ素子212は、供給される電流の向きに応じて加熱機能または冷却機能が発揮され、よって、伝熱部材7を介して原子セル3内を所望の温度に調節することができる。
また、ペルチェ素子212は、伝熱部材7と反対側で第2シールド部材8に接している。これにより、例えば、ペルチェ素子212が原子セル3を冷却する場合に、ペルチェ素子212から発せられた余剰分の熱を第2シールド部材8を介して放出することができる。
また、原子発振器1では、例えば仮にペルチェ素子212での発熱量が不足する場合、その不足分を、ペルチェ素子212に隣り合って配置された別のヒーター(図示せず)からの熱で補ってもよい。この場合、当該ヒーターとしては、特に限定されず、例えば、セラミックヒーターやパワートランジスタ等の各種ヒーターを用いることができる。
伝熱部材7は、支持部材5および第1シールド部材6を貫通して、原子セル3とペルチェ素子212とに接し、原子セル3の胴体部33よりも熱伝導率が大きい部材である。この伝熱部材7は、Y軸と平行な軸を中心軸とする柱状をなし、原子セル3の第3面313の一部に接する第1当接部73と、ペルチェ素子212に接する第2当接部74と、を有している。第1当接部73の外径は、第2当接部74の外径よりも小さい。なお、第1当接部73は原子セル3に直接接していてもよいし、熱伝導性の接着剤などを介して接していてもよい。同様に、第2当接部74はペルチェ素子212に直接接していてもよいし、熱伝導性の接着剤などを介して接していてもよい。
伝熱部材7の熱伝導率は、原子セル3の胴体部33の熱伝導率の1.1倍以上400倍以下であることが好ましく、10倍以上2000倍以下であることがより好ましい。伝熱部材7の熱伝導率が原子セル3の熱伝導率よりも大きいことで、伝熱部材7を介した熱の移動を効率よく行うことができる。このような伝熱部材7の構成材料としては、例えば、胴体部33がガラス材料で構成されている場合には、銅、アルミニウム等のような金属材料や、グラファイトなどを用いることができる。
なお、伝熱部材7は、1つの母材を加工して得られたものに限定されず、例えば、複数の母材を加工して、これらを連結した連結体で構成されていてもよい。複数の部材が連結されている場合、全ての部材が同じ材料であってもよいし、少なくとも一つの部材の材料が異なっていてもよい。
また、第2当接部74には、温度センサー204が支持、固定されている。温度センサー204は、伝熱部材7の温度を検出する温度検出素子である。温度センサー204としては、特に限定されないが、例えば、サーミスタまたは熱電対等のような各種温度検出素子を用いることができる。なお、温度センサー204の位置は第2当接部74に限定されない。原子セル3の温度を適切に制御できればよく、例えば、伝熱部材7の他の部分、第1シールド部材6、または第2シールド部材8に配置してもよい。
前述したように、原子発振器1では、原子セル3がコイル4によって加熱されることで、原子セル3に収容されているアルカリ金属原子の一部が気体となる。。また、原子セル3には補充用金属MRが収容されている。補充用金属MRは原子セル3において胴体部33などの所定の位置に付着していることが好ましい。
そこで、原子発振器1では、ペルチェ素子212および伝熱部材7によって、原子セル3の一部を、原子セル3の他の部分よりも低い温度に制御する。原子セル3の他の部分は、コイル4によって、伝熱部材7が接している部分よりも高い温度に加熱される。ペルチェ素子212は、伝熱部材7を介して原子セル3の一部を加熱してもよいし、冷却してもよい。
このようにすることで、原子セル3の内壁面および内部空間Sに相対的に高温の部分と低温の部分ができる。相対的に低温の部分の飽和蒸気圧は、相対的に高温の部分の飽和蒸気圧よりも低いため、補充用金属MRは、相対的に低温の部分の内壁面に液体または固体の状態で付着する。これにより、補充用金属MRを原子セル3の所望の位置に付着させることができるので、補充用金属MRが内部空間S内を移動して光LLと緩衝することを低減できる。
また、原子発振器1では、伝熱部材7が第1シールド部材6の開口を経由して原子セル3に接している。これにより、原子セル3に突出した部分を設けなくても、つまり、突出した部分がある原子セルと比較して簡単な形状の原子セル3を用いても、原子セル3の一部を原子セル3の他の部分とは異なる温度に制御できる。
原子セル3の形状が簡単であると、光の入射面である第1面311や光の出射面である第2面312も単純な形状にできる。これにより、光LLが第1面311に入射して、アルカリ金属原子を励起するのに十分な程度に、第1面311の面積を確保しやすい。または、光LLが第2面312から出射して、受光素子202で検出されるのに十分な程度に、第2面312の面積を確保しやすい。これにより、原子発振器1の発振特性、特に周波数安定度を向上させることができる。
伝熱部材7は、第2当接部74のペルチェ素子212に対向する面の面積がペルチェ素子212の第2当接部74に対向する面の面積に近いことが好ましい。また、ペルチェ素子212に対向する面の全体がペルチェ素子212に接していることが好ましい。これにより、ペルチェ素子212と第2当接部74との間での熱の伝達損失を低減できる。
前述したように、原子セル3には、固体または液体のアルカリ金属原子である補充用金属MRが収容されている。そして、補充用金属MRは、原子セル3の中で伝熱部材7側に偏在している。これにより、原子発振器1では、補充用金属MRが内部空間S内を移動して光LLと緩衝することを低減できる。
伝熱部材7は、断熱層70を貫通している。これにより、伝熱部材7は、一部、すなわち、断熱層70を貫通した部分の周囲が断熱状態となるので、、断熱層がない場合と比較して、熱が伝熱部材7から逃げにくい。そのため、伝熱部材7での熱の伝達が迅速に行われ易くなる。
また、原子セル3は、断熱層70の内側に配置されている。断熱層70によって原子セル3の外部の温度が原子セル3に影響しにくくなるので、断熱層70がない場合と比較して、原子セル3の温度をペルチェ素子212やコイル4による温度に安定させやすい。
前述したように、コイル4は、X軸方向、すなわち、原子セル3を透過する光LLの光軸a方向において隣り合うワイヤー41の部分同士の間に間隙411が形成された疎巻き部43を有している。そして、伝熱部材7は、間隙を経由して原子セル3の一部に接している。本実施形態では、伝熱部材7は、3つ以上の疎巻き部43のうちの最も端に位置する疎巻き部43、すなわち、第1疎巻き部43Aを挿通している。
伝熱部材7が疎巻き部43を挿通していることにより、コイル4と伝熱部材7とが物理的に干渉せず、かつ、コイル4で原子セル3を覆うことができる。例えば、2つのソレノイドコイルを間隔を空けて配置し、当該2つのソレノイドコイルの間を通って伝熱部材7が原子セル3に接する構成では、原子セル3の内部の磁場が不均一になってしまう。これに対し、疎巻き部43を有する上述のコイル4によって生じる磁場は原子セル3内において均一である。そのため、磁場に勾配が生じにくい。よって、原子発振器1の周波数安定度を向上させることができる。
なお、本実施形態では、伝熱部材7は、3つの疎巻き部43のうち第1疎巻き部43Aを挿通しているが、これに限定されず、例えば、第2疎巻き部43Bまたは第3疎巻き部43Cを挿通していてもよい。伝熱部材7が第1疎巻き部43Aに配置される場合、原子セル3の相対的に温度が低い部分は、X軸における窓部35寄りの部分となる。伝熱部材7が第3疎巻き部43Cを通る場合と比較して、窓部34の温度が低くなりにくいので、光LLが入射する窓部34にアルカリ金属原子が付着しにくい。そのため、原子セル3に入射する光LLの強度が弱まりにくいので、ライトシフトが起きにくい。したがって、伝熱部材7が第3疎巻き部43Cを通る場合よりも、原子発振器1の周波数安定度を向上させることができる。
以上のように、原子発振器1は、光LLを発する発光素子102と、発光素子102からの光LLが入射する第1面311と、第1面311に入射した光LLが出射する第2面312とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セル3と、原子セル3が収容され、磁気シールド性を有するシールドとしての第1シールド部材6と、第1シールド部材6の開口を経由して原子セル3の一部に接し、原子セル3よりも熱伝導率が大きい伝熱部材7と、伝熱部材7に接し、原子セル3の温度を制御する温度制御素子としてのペルチェ素子212と、第2面312から出射した光LLを受ける受光素子202と、を備えている。
このような構成によれば、前述したように、構造が簡単であっても、原子セル3の一部分の温度を他の温度と異なる温度に制御することができる。
また、コイル4は、伝熱部材7を避けつつ、原子セル3を過不足なく外側から覆った状態となる。これにより、コイル4によって生じる磁場が原子セル3において均一になるので、アルカリ金属原子をゼーマン分裂において所望のエネルギー準位に安定させることができ、よって、原子発振器1の周波数安定度を向上させることができる。また、コイル4がLee-Whiting型のコイルであることにより、コイル4を含めた原子発振器1全体の小型化が図られる。また、原子発振器1では、コイル4が磁場発生機能と発熱機能との双方を兼ね備えたものであることにより、各機能を有する部材を各々設けるのを省略することができる。これにより、原子発振器1を構成する部品点数を軽減することができ、よって、原子発振器1の低コスト化が可能となる。
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図3は、第2実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
以下、図3を参照して本実施形態の原子発振器および周波数信号生成システムの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
図3に示すように、伝熱部材7は屈曲しており、X軸に沿って延びる第1当接部73と、X軸に沿って延びる第2当接部74と、Y軸に沿って延び、第1当接部73と第2当接部74とを連結する連結部75と、を有している。連結部75は、第1当接部73のX軸正側の端部と、第2当接部74のX軸正側の端部と、を連結している。
なお、伝熱部材7は、第1当接部73と第2当接部74と連結部75とが一体的に形成されていてもよいが、一部が別体であってもよい。例えば、第2当接部74と連結部75とが一体的に形成され、第1当接部73が別体で構成されていてもよい。この場合、互いの構成材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、本実施形態では、コイル4は、密巻き部42で構成された、いわゆるソレノイドコイルである。
伝熱部材7は、コイル4を避けるように、原子セル3を透過する光LLの光軸a方向における、コイル4の開口を経由して、本実施形態ではX軸方向正側の開口を経由して、原子セル3に接している。伝熱部材7がコイル4をY軸方向に挿通する必要がないので、コイル4が疎巻き部43を有していなくてもよい。したがって、本実施形態の構成は、コイル4として、密巻き部42で構成されたコイル4を用いたい場合に有効である。
また、本実施形態の伝熱部材7の第1当接部73は、原子セル3の第2面312と第3面313とにまたがって接している。第1当接部73は、第2面312のみに接していてもよいし、光LLと補充用金属MRが干渉しなければ第3面313のみに接していてもよい。
なお、コイル4は、本実施形態では密巻き部42で構成されているが、これに限定されず、例えば、疎巻き部43を有していてもよい。
原子発振器1は、原子セル3を加熱するヒーター203を備えている。これにより、例えばコイル4での発熱量が不足する場合、その不足分をヒーター203からの熱で補うことができる。また、例えばコイル4の構成材料として銅を用いた場合、コイル4は通電による発熱が抑えられるため、原子セル3内を加熱するときには、コイル4に代えて、ヒーター203を用いることができる。
なお、ヒーター203は、本実施形態では第1シールド部材6に囲まれている。これにより、ヒーター203に通電することで発生する磁場が原子セル3の磁場に与える影響を低減できる。ヒーター203の配置箇所は、本実施形態では原子セル3を挟んで伝熱部材7とは反対側である。ヒーター203の配置箇所および配置数はこれに限定されないが、原子セル3を挟んで伝熱部材7とは反対側とすることで、原子セル3に生じる温度勾配を安定させやすい。
ヒーター203としては、特に限定されず、例えば、セラミックヒーターやパワートランジスタ等の各種ヒーターを用いることができる。
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態に係る原子発振器の主要部のY−Z平面に沿った断面図である。
図4は、第3実施形態に係る原子発振器の主要部のY−Z平面に沿った断面図である。
以下、この図を参照して本発明の原子発振器および周波数信号生成システムの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図4に示すように、伝熱部材7は、第1当接部73が、原子セル3に対し、Z軸方向正側から接している。また、第1当接部73は、Z軸方向負側の面731が原子セル3の第3面313に接している。第1当接部73は、立方体に近い形状であり、原子セル3に接する面が第3面313に沿った形をしている。
このような構成によっても、伝熱部材7が疎巻き部43を挿通していることにより、磁場の均一性を向上させ、原子発振器1の周波数安定度を向上させることができる。
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図5は、第4実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
以下、この図を参照して本発明の原子発振器および周波数信号生成システムの第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図5に示すように、伝熱部材7は、板部材を屈曲させて構成されており、X軸方向に沿って延びる第1当接部73と、X軸方向に沿って延びる第2当接部74と、第1当接部73と第2当接部74とを連結する連結部75と、を有している。連結部75は、第1当接部73のX軸方向正側の端部と、第2当接部74のX軸方向負側の端部と、を連結している。伝熱部材7は、Y軸方向に伸縮可能な、すなわち、第1当接部73と第2当接部74とのY軸沿った距離が可変となるよう弾性を有する。
伝熱部材7がY軸方向に伸縮可能であることにより、伝熱部材7を、原子セル3およびペルチェ素子212に押し当てることができる。そのため、例えば、原子発振器1の個体差によって原子セル3とペルチェ素子212との間のY軸方向に沿った距離にバラツキがあっても、伝熱部材7を介して、原子セル3とペルチェ素子212とを熱的に接続することができる。これにより、例えば、原子セル3とペルチェ素子212との間での熱を移動の個体差を低減することができる。
また、伝熱部材7は、第2当接部74が固定部材216を介してペルチェ素子212に固定されている。固定部材216も、伝熱部材7と同様に、熱伝導性に優れた材料で構成されている。
また、本実施形態では、伝熱部材7は、コイル4にある3つの疎巻き部43のうち、中央に位置する疎巻き部43、すなわち、第2疎巻き部43Bを挿通している。これにより、原子セル3の窓部34および窓部35の双方に対する温度の影響を抑制することができる。また、磁場の対称性を乱しにくいと考えられる。また、伝熱部材7が第1疎巻き部43Aまたは第3疎巻き部43Cに配置される場合と比較して、窓部34および窓部35の温度が低下しにくいので、窓部44および窓部45にアルカリ金属原子が付着しにくい。したがって、ライトシフトが起きにくく、かつ、受光素子が受光する光量が減少しにくい。
<第5実施形態>
図6は、第5実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図6は、第5実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
以下、この図を参照して本発明の原子発振器の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図6に示すように、ヒーター203は、第1シールド部材6に囲まれており、この第1シールド部材6が支持部材5に接して、支持部材5と熱的に接続されている。これにより、ヒーター203の熱を支持部材5を介して原子セル3に伝えることができ、よって、例えば、ヒーター203と原子セル3との間に空隙がある場合よりも原子セル3を迅速に加熱することができる。なお、ヒーター203の原子セル3に対向する面とは反対側の面と第1シールド部材6との間には、断熱部材が配置されていてもよい。断熱材がない場合よりも、ヒーター203の熱が第1シールド部材6の原子セル3と接していない部分に伝わりにくくなるので、効率よく原子セル3を加熱することができる。
<第6実施形態>
図7は、第6実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図7は、第6実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
以下、図7を参照して本実施形態の原子発振器および周波数信号生成システムの第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の原子発振器1は、第1シールド部材6を収容している第3シールドとしての第3シールド部材9を有する。第3シールド部材9は、第2シールド部材8に収容されている。
伝熱部材7は、複数の部材から構成されており、第1当接部73は原子セル3の窓部35および胴体部33に接している。第1当接部73は、支持部材5に対して間隔を空けて配置されている。第1当接部73と支持部材5との間は空隙である。また、第1当接部73は、第1シールド部材6に対して間隔を空けて配置されている。第1当接部73と第1シールド部材6との間は空隙である。
連結部75は、第1シールド部材6と第1当接部73とを接続する螺子751と、螺子751と第3シールド部材9とを接続する金属板752と、第3シールド部材9と第2当接部74とを接続する金属板753と、を含む。螺子751は、第1シールド部材6の螺子穴、すなわち第1シールド部材6の開口、を経由して、第1当接部73に接続されている。連結部75の各部材間の接続構造は、伝熱できる構造であればよく、本実施形態では、螺子751と第3シールド部材9との間に金属板752が挟み込まれている。連結部75と第2当接部74との接続箇所、および、第2当接部74とペルチェ素子212とが接する部分は、熱伝導性の接着剤を介して接着されていてもよい。また、第3シールド部材9の一部も、2つの金属板の間での伝熱に寄与することから、第3シールド部材9の一部も伝熱部材7を構成しているということができる。
温度センサー204は、第3シールド部材9に配置されている。温度センサー204と第1当接部73との距離は、温度センサー204と支持部材5との距離よりも小さい。温度センサー204が第3シールド部材9に配置されていることにより、温度センサー204が第2当接部に配置されている場合よりも、原子セル3の実際の温度に近い温度を検出することができる。
本実施形態の原子発振器1は、第3シールド部材9を有するので、第3シールド部材9がない場合と比較して、外部磁場が原子セル3に与える影響を小さくすることができる。第1当接部73は、支持部材5および第1シールド部材6に対して間隔を空けて配置されている。第1当接部73と第1シールド部材6とは接していてもよいが、間隔を空けることで、ヒーター203からの熱が第1当接部73に伝わりにくいので、原子セル3の第1当接部73が接している部分の温度とヒーター203からの温度とが干渉しにくくできる。なお、第1当接部73と第1シールド部材6との間隙には、断熱材を配置してもよい。また、螺子穴にも断熱剤を配置して、螺子751と第1シールド部材6との伝熱を低減してもよい。なお、図7においては連結部75の第3シールド部材9と対向する部分は第3シールド部材9に接しているが、一部が第3シールド部材9から離間していてもよい。
<第7実施形態>
図8は、第7実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
図8は、第7実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。
以下、図8を参照して本実施形態の原子発振器および周波数信号生成システムの第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の原子発振器1は、伝熱部材7の構造が第6実施形態とは異なる。伝熱部材7の連結部75は、第1シールド部材6および第3シールド部材9の開口を経由して第1当接部73に接続された螺子754を含む。図7に示すように金属板752によって螺子751と第3シールド部材9とを接続する場合よりも部品点数が少ないので、熱抵抗を低減し、ペルチェ素子212と原子セル3との間での熱の移動を効率よく行うことができる。
<原子発振器適用例>
以上説明したような原子発振器1は、各種の周波数信号生成システムに組み込むことができる。以下、そのような周波数信号生成システムの実施形態について説明する。
以上説明したような原子発振器1は、各種の周波数信号生成システムに組み込むことができる。以下、そのような周波数信号生成システムの実施形態について説明する。
図7は、GPS(Global Positioning System)衛星を利用した周波数信号生成システムの一例の概略構成を示す図である。
図7に示す測位システム1100は、基地局装置1300と、GPS受信装置1400とで構成されている。ここで、原子発振器1を搭載した電子機器を周波数信号生成システムと呼ぶこともできるし、原子発振器1を搭載した電子機器を含む複数の電子機器からなる各種システムを周波数信号生成システムと呼ぶこともできる。
GPS衛星1200は、測位用情報を含む衛星信号(GPS信号)を送信する。
基地局装置1300は、例えば電子基準点としてのGPS連続観測局に設置されたアンテナ1301を介してGPS衛星1200からの衛星信号を受信する受信装置1302と、受信した衛星信号から受信装置1302が取得した測位情報をアンテナ1303を介して送信する送信装置1304とを備える。
基地局装置1300は、例えば電子基準点としてのGPS連続観測局に設置されたアンテナ1301を介してGPS衛星1200からの衛星信号を受信する受信装置1302と、受信した衛星信号から受信装置1302が取得した測位情報をアンテナ1303を介して送信する送信装置1304とを備える。
ここで、受信装置1302は、基準周波数発振源である原子発振器1と、原子発振器1からの周波数信号を処理する処理部1302aと、を備える。また、受信装置1302で取得された測位情報は、リアルタイムで送信装置1304により送信される。
このように、周波数信号生成システムである受信装置1302は、原子発振器1を含む。このような受信装置1302によれば、原子発振器1の原子セル3周辺の温度勾配を低減することで、受信装置1302の特性を向上させることができる。また、上述した受信装置1302を含むことで、周波数信号生成システムの別の一例である測位システム1100も、の特性を向上させることができる。
GPS受信装置1400は、GPS衛星1200からの測位情報をアンテナ1401を介して受信する衛星受信部1402と、基地局装置1300からの測位情報をアンテナ1403を介して受信する基地局受信部1404とを備える。
以上のように、周波数信号生成システムの一例としての測位システム1100および受信装置1302は、原子発振器1と、原子発振器1からの周波数信号を処理する処理部1302aと、を備えている。そして、原子発振器1は、光LLを発する発光素子102と、発光素子102からの光LLが入射する第1面311と、第1面311に入射した光LLが出射する第2面312とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セル3と、原子セル3が収容され、磁気シールド性を有するシールドとしての第1シールド部材6と、第1シールド部材6の開口を経由して、原子セル3の一部に接し、原子セル3よりも熱伝導率が大きい伝熱部材7と、伝熱部材7に接し、原子セル3の温度を制御する温度制御素子としてのペルチェ素子212と、第2面312から出射した光LLを受ける受光素子202と、を備えている。
このような発明によれば、前述した原子発振器1の利点を生かし、測位システム1100および受信装置1302の特性を向上させることができる。
なお、周波数信号生成システムは、前述したものに限定されず、原子発振器1と、原子発振器1からの周波数信号を処理する処理部とを含むシステムであればよい。例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター)、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS(Point of Sales)端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地上デジタル放送、携帯電話基地局等に適用することができる。また、複数の電子機器等から構成される周波数信号生成システムは、原子発振器1からの信号を処理して信号を生成するシステムであればよく、前述したものに限定されず、例えば、クロック伝送システム等であってもよい。
以上、本発明の原子発振器および周波数信号生成システムを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、原子発振器および周波数信号生成システムを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の原子発振器および周波数信号生成システムは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や特徴を組み合わせたものであってもよい。
前述した各実施形態では、量子干渉効果を利用した原子発振器に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明は、これに限定されず、二重共鳴現象を利用した原子発振器にも適用可能であり、この場合、光源としては、半導体レーザーに限定されず、例えば、発光ダイオード、アルカリ金属原子を封入したランプ等を用いることができる。
1…原子発振器、3…原子セル、311…第1面、312…第2面、313…第3面、33…胴体部、34…窓部、35…窓部、4…コイル、41…ワイヤー、411…間隔、42…密巻き部、42A…第1密巻き部、42B…第2密巻き部、42C…第3密巻き部、42D…第4密巻き部、43…疎巻き部、43A…第1疎巻き部、43B…第2疎巻き部、43C…第3疎巻き部、5…支持部材、51…外周面、52…溝、53…貫通孔、6…第1シールド部材、61…挿通孔、62…開口、63…開口、64…間隙、7…伝熱部材、73…第1当接部、731…面、74…第2当接部、75…連結部、751…螺子、752…金属板、753…金属板、754…螺子、8…第2シールド部材、9…第3シールド部材、10…発光素子モジュール、20…原子セルユニット、30…光学系ユニット、50…制御回路、70…断熱層、101…ペルチェ素子、102…発光素子、103…温度センサー、202…受光素子、203…ヒーター、204…温度センサー、212…ペルチェ素子、213…ペルチェ素子、214…伝熱部材、215…温度センサー、216…固定部材、301…減光フィルター、302…集光レンズ、303…1/4波長板、501…温度制御回路、502…光源制御回路、503…磁場制御回路、504…温度制御回路、1100…測位システム、1200…GPS衛星、1300…基地局装置、1301…アンテナ、1302…受信装置、1302a…処理部、1303…アンテナ、1304…送信装置、1400…GPS受信装置、1401…アンテナ、1402…衛星受信部、1403…アンテナ、1404…基地局受信部、LL…光、MR…補充用金属、S…内部空間、a…光軸
Claims (10)
- 光を発する発光素子と、
前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、
前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、
前記シールドの開口を経由して前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、
前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、
前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える、原子発振器。 - 前記原子セルと前記シールドとの間に配置され、前記原子セルよりも熱伝導率が小さい断熱層を備える、請求項1に記載の原子発振器。
- 前記伝熱部材は、前記断熱層を貫通している、請求項2に記載の原子発振器。
- 前記原子セルの外側に配置され、螺旋状に巻回されたワイヤーで構成され、通電により磁場を発生させるコイルを備える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子発振器。
- 前記コイルは、前記通電により発熱することによって前記原子セルを加熱する、請求項4に記載の原子発振器。
- 前記原子セルを加熱するヒーターを備える、請求項4に記載の原子発振器。
- 前記コイルは、前記原子セルを透過する光の光軸方向において隣り合う前記ワイヤーの部分同士の間に間隙が形成された疎巻き部を有し、
前記伝熱部材は、前記間隙を経由して前記原子セルの一部に接している、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の原子発振器。 - 前記伝熱部材は、前記原子セルを透過する光の光軸方向における、前記コイルの開口を経由して前記原子セルに接している、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の原子発振器。
- 前記原子セルには、固体または液体のアルカリ金属原子が収容されており、
前記固体または液体のアルカリ金属原子は、前記原子セルの中で前記伝熱部材側に偏在している、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の原子発振器。 - 原子発振器と、
前記原子発振器からの周波数信号を処理する処理部と、を備え、
前記原子発振器は、
光を発する発光素子と、
前記発光素子からの光が入射する第1面と、前記第1面に入射した光が出射する第2面とを有し、気体のアルカリ金属原子が収容された原子セルと、
前記原子セルが収容され、磁気シールド性を有するシールドと、
前記シールドの開口を経由して、前記原子セルの一部に接し、前記原子セルよりも熱伝導率が大きい伝熱部材と、
前記伝熱部材に接し、前記原子セルの温度を制御する温度制御素子と、
前記第2面から出射した光を受ける受光素子と、を備える、周波数信号生成システム。
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