JP2020109778A - 原子セルおよび原子発振器 - Google Patents

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Abstract

【課題】本体とリッドを接合する際、リッドにクラックが生じることを低減することができる原子セルおよび原子発振器を提供すること。【解決手段】開口を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体と、接合材を介して前記開口を塞ぐように前記本体に接合されており、前記本体の熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッドと、を含む、原子セル。また、前記本体の熱膨張係数と前記リッドの熱膨張係数との差は、5.0×10−7/℃以上、70.0×10−7/℃以下であるのが好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、原子セルおよび原子発振器に関する。
ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属原子のエネルギー遷移に基づいて発振する原子発振器が知られている。原子発振器は、一般的に、アルカリ金属原子が封入された原子セルと、原子セルに励起光を照射する光源と、原子セルを通過した光を受光する受光部とを備えている。
原子セルにアルカリ金属原子を封入する方法として、特許文献1には、開口を有するガスセル本体にシール材を介してリッドを接合する方法が記載されている。接合に際し、まず、開口部を囲む位置にシール材を配置し、シール材に重ねてリッドを配置する。そして、リッドを介してレーザー光を照射してシール材を加熱してガスセル本体にリッドを接合する。
特開2016−23121号公報
レーザー光を照射してシール材を加熱する際、ガスセル本体およびリッドも加熱され、温度上昇によってガスセル本体およびリッドは膨張する。例えば、ガスセル本体とリッドとの材料が同じである場合、ガスセル本体よりも体積が小さいリッドは、加熱前の単位体積を基準に比較すると、ガスセル本体よりも膨張する。この状態で接合がなされると、リッドは、接合材に規制されて膨張したのと同じ量収縮することができない。その結果、収縮しようとする方向の引張応力がリッド内に残ってしまい、リッドにクラックが生じたりするおそれがある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
本発明の適用例に係る原子セルは、開口を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体と、
接合材を介して前記開口を塞ぐように前記本体に接合されており、前記本体の熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッドと、を含む。
本適用例に係る原子セルでは、前記本体の熱膨張係数と前記リッドの熱膨張係数との差は、5.0×10−7/℃以上、70.0×10−7/℃以下であることが好ましい。
本適用例に係る原子セルでは、前記本体の熱膨張係数は、30.0×10−7/℃以上、80.0×10−7/℃以下であり、
前記リッドの熱膨張係数は、3.0×10−7/℃以上、55.0×10−7/℃以下であることが好ましい。
本適用例に係る原子セルでは、前記接合材の熱膨張係数は、50.0×10−7/℃以上、100.0×10−7/℃以下であることが好ましい。
本適用例に係る原子セルでは、前記本体、前記リッドおよび接合材料は、ガラス材料を含むことが好ましい。
本適用例に係る原子セルでは、前記本体は、ホウケイ酸ガラスであり、
前記リッドは、石英ガラスおよびホウケイ酸ガラスのうちのいずれかであることが好ましい。
本発明の適用例に係る原子発振器は、発光素子と、
開口を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体と、接合材を介して前記開口を塞ぐように前記本体に接合されており、前記本体の熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッドと、を含む原子セルと、
前記原子セルを通過した光を受光する受光素子と、を含む。
図1は、実施形態に係る原子発振器を示す概略図である。 図2は、実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。 図3は、図2に示す原子セルを製造する製造方法を説明するための断面図である。 図4は、従来の原子セルの製造方法における原子セルの部分拡大断面図である。 図5は、GPS(Global Positioning System)衛星を利用した周波数信号生成システムの一例の概略構成を示す図である。
以下、本発明の原子セルおよび原子発振器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、図2に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、一例として、X軸が後述する光軸aに平行であるものとする。また、各軸の矢印が指す方向を「正方向」、その反対方向を「負方向」と言う。一例として、X軸正方向を光LLの進行方向とする。
<実施形態>
図1は、実施形態に係る原子発振器を示す概略図である。図2は、実施形態に係る原子発振器の主要部の断面図である。図3は、図2に示す原子セルを製造する製造方法を説明するための断面図である。図4は、従来の原子セルの製造方法における原子セルの部分拡大断面図である。
図1に示す原子発振器1は、アルカリ金属原子に対して特定の異なる波長の2つの共鳴光を同時に照射したときに、量子干渉効果によって当該2つの共鳴光がアルカリ金属原子に吸収されずに透過する現象が生じることを利用した原子発振器である。なお、この量子干渉効果による現象は、CPT(Coherent Population Trapping)現象または電磁誘起透明化(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象と言う。
この原子発振器1は、図1に示すように、発光素子モジュール10と、原子セルユニット20と、発光素子モジュール10と原子セルユニット20との間に設けられている光学系ユニット30と、発光素子モジュール10および原子セルユニット20の作動を制御する制御回路50と、を備える。以下、まず、原子発振器1の概略について説明する。
発光素子モジュール10は、ペルチェ素子101と、発光素子102と、温度センサー103と、を備える。発光素子102は、周波数の異なる2種の光を含んでいる直線偏光の光LLを出射する。発光素子102としては、光LLを出射するものであれば特に限定されず、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザー等を用いることができる。また、温度センサー103は、発光素子102の温度を検出する。また、ペルチェ素子101は、発光素子102の温度を調節する、すなわち、発光素子102を加熱または冷却する。
光学系ユニット30は、減光フィルター301と、集光レンズ302と、1/4波長板303と、を備え、これらが光LLの光軸aに沿って並んでいる。減光フィルター301は、前述した発光素子102からの光LLの強度を減少させる。また、集光レンズ302は、例えば光LLを平行光に近づける等のように、光LLの放射角度を調整する。また、1/4波長板303は、光LLに含まれる周波数の異なる2種の光を直線偏光から円偏光、すなわち、右円偏光または左円偏光に変換する。
原子セルユニット20は、原子セル3と、受光素子202と、ペルチェ素子212と、温度センサー204と、コイル4と、を備える。
原子セル3は、光LLに対する透過性を有し、原子セル3内には、アルカリ金属原子が封入されている。アルカリ金属原子は、互いに異なる2つの基底準位と励起準位とからなる3準位系のエネルギー準位を有する。原子セル3には、発光素子102からの光LLが減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303を介して入射する。そして、受光素子202は、原子セル3を通過した光LLを受光し、その受光強度に応じた信号を出力する。
ペルチェ素子212は、後述する原子セル3の第2室32の一部の温度を制御する温度制御素子である。ペルチェ素子212は、供給される電流の向きに応じて加熱または冷却機能を発揮することができる。これにより、第2室32の一部を所望の温度に調節することができる。
また、温度センサー204は、原子セル3の第2室32の温度を検出する。
コイル4は、原子セル3内のアルカリ金属原子に所定方向の磁場を印加し、そのアルカリ金属原子のエネルギー準位をゼーマン分裂させる。このようにアルカリ金属原子のエネルギー準位がゼーマン分裂した状態において、前述したような円偏光の共鳴光対がアルカリ金属原子に照射されると、アルカリ金属原子がゼーマン分裂した複数の準位のうち、所望のエネルギー準位のアルカリ金属原子の数を他のエネルギー準位のアルカリ金属原子の数に対して相対的に多くすることができる。そのため、所望のEIT現象を発現する原子数が増大し、所望のEIT信号、すなわち、EIT現象に伴って受光素子202の出力信号に現れる信号が大きくなり、その結果、原子発振器1の発振特性、特に短期周波数安定度を向上させることができる。
制御回路50は、温度制御回路501と、光源制御回路502と、磁場制御回路503と、温度制御回路504と、を備える。温度制御回路501は、温度センサー204の検出結果に基づいて、原子セル3内が所望の温度となるように、ペルチェ素子212への通電を制御する。また、磁場制御回路503は、コイル4が発生する磁場が一定となるように、コイル4への通電を制御する。また、温度制御回路504は、温度センサー103の検出結果に基づいて、発光素子102の温度が所望の温度となるように、ペルチェ素子101への通電を制御する。
光源制御回路502は、受光素子202の検出結果に基づいて、EIT現象が生じるように、発光素子102からの光LLに含まれる2種の光の周波数を制御する。ここで、これら2種の光が原子セル3内のアルカリ金属原子の2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数差の共鳴光対となったとき、EIT現象が生じる。また、光源制御回路502は、前述した2種の光の周波数の制御に同期して安定化するように発振周波数が制御される電圧制御型水晶発振器(図示せず)を備えており、この電圧制御型発振器(VCO:Voltage controlled Oscillator)の出力信号を原子発振器1の出力信号(クロック信号)として出力する。
以上、原子発振器1の概略について説明した。以下、図2を参照して、原子発振器1のより具体的な構成について説明する。
前述したように、原子セルユニット20は、原子セル3と、受光素子202と、ペルチェ素子212と、温度センサー204と、コイル4と、を備える。また、これらの他に、原子セルユニット20は、図2に示すように、コイル4を支持する支持部材5と、原子セル3の第1室31、コイル4および支持部材5を収容する第1シールド部材6と、原子セル3の第2室32とペルチェ素子212とに接する伝熱部材7と、を備える。また、原子発振器1は、原子セルユニット20、発光素子モジュール10および光学系ユニット30を収容する第2シールド部材8を備える。
原子セル3は、気体のアルカリ金属が収容された第1室31と、気体のアルカリ金属とともに固体または液体のアルカリ金属(以下「補充用金属MR」と言う)が収容された第2室32と、を備える。なお、アルカリ金属としては、特に限定されず、例えば、ルビジウム、セシウム、ナトリウム等とすることができる。また、原子セル3内には、必要に応じて、アルゴン、ネオン等の希ガス、窒素等の不活性ガスが緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。
第1室31は、X軸と平行な軸を中心軸とする筒状の胴体部33と、胴体部33のX軸方向負側に接合された板状の窓部34と、胴体部33のX軸方向正側に接合された板状の窓部35と、を有し、これらで囲まれた内部空間S1が形成されている。発光素子102から発せられた光LLは、窓部34、内部空間S1、窓部35を順に透過する。このとき、光LLは、内部空間S1内でアルカリ金属原子を励起することができる。その後、光LLは、受光素子202に至る。なお、内部空間S1の形状としては、特に限定されないが、例えば、直方体、立方体、円柱、球等とすることができる。また、原子セル3の窓部34、35のうち一方は、胴体部33と一体であってもよい。
このような原子セル3は、内部空間Sを構成する面とは反対側の面、すなわち、原子セル3の外面として、3つの面を有している。1つ目の面は、窓部34の外面であり、発光素子102からの光LLが入射する入射面となる第1面311である。2つ目の面は、窓部35の外面であり、第1面311に入射して、内部空間Sを透過した光LLが出射する出射面となる第2面312である。3つ目の面は、胴体部33の外周面であり、第1面311と第2面312とを接続する第3面313である。なお、胴体部33の外形が角柱等であり、複数の面を含む場合は、それらの面を包括的に第3面313と称する。
窓部34および窓部35の構成材料としては、光LLに対する透過性を有していればよく、特に限定されないが、例えば、ガラス材料、水晶等が挙げられる。一方、胴体部33の構成材料としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、シリコン、水晶等が挙げられるが、加工性や、窓部34および窓部35との接合の観点から、ガラス材料、シリコン材料を用いることが好ましい。また、胴体部33と窓部34および窓部35との接合方法としては、これらの構成材料に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、直接接合法、陽極接合法、溶融接合法、オプティカル接合法等を用いることができる。
第2室32は、第3面313からY軸方向正側に向かって突出している。第2室32は、開口360を有し、Y軸と平行な軸を中心軸とする管状の胴体部36と、開口360を覆うように、胴体部36に接合材39を介して接合された板状のリッド37と、を有し、これらで囲まれた内部空間S2が形成されている。内部空間S2には、補充用金属MRが収容されている。また、内部空間S2は、内部空間S1に連通路38を介して連通している。これにより、補充用金属MRは、内部空間S1内の気体のアルカリ金属が不足したとき、気体となって内部空間S1内に供給される。このように、第2室32は、補充用金属MRを貯留するリザーバーとして機能する。
このような第2室32は、入射面である第1面311や出射面である第2面312を避けた位置に配置されている。これにより、第1面311および第2面312が複雑な形状となるのを防止することができ、よって、光LLが第1面311に入射して、アルカリ金属原子を励起するのに十分な程度に、第1面311の面積を確保することができるとともに、光LLが第2面312から出射して、受光素子202で検出されるのに十分な程度に、第2面312の面積を確保することができる。これにより、原子発振器1の発振特性、特に周波数安定度を向上させることができる。
また、補充用金属MRは、内部空間S2内で固体または液体の状態となっており、この状態で胴体部36やリッド37の光LLの主な経路とは異なる位置に付着していることが好ましい。これにより、例えば、補充用金属MRが内部空間S2内から移動して光LLに干渉することを低減することができる。
また、連通路38は、胴体部33をY軸方向に貫通する貫通孔で構成され、その内径は、第2室32の内径よりも小さいことが好ましい。これにより、アルカリ金属原子を励起する際、内部空間S1と内部空間S2との間のアルカリ金属原子の流出入、すなわち、クロストークの影響を軽減することができる。
このような胴体部33、窓部34、窓部35および胴体部36が、本体30Aを構成し、本体30Aの開口360が接合材39を介して接合されたリッド37によって塞がれている。
以上のような構成の原子セル3の第2面312側には、受光素子202が第2面312に対向して配置されている。受光素子202は、原子セル3内を透過して、第2面312から出射した光LL、すなわち、共鳴光対の強度を検出することができる。受光素子202としては、特に限定されず、例えば、フォトダイオード等が挙げられる。
原子セル3の胴体部33の外周側には、筒状をなす支持部材5が胴体部33と同心的に配置されている。支持部材5は、内側で原子セル3を支持するとともに、外側でコイル4を支持する部材である。
なお、支持部材5の内壁間のX軸に沿った長さは、原子セル3のX軸方向に沿った全長よりも長い。これにより、支持部材5の内側に、胴体部33全体を収容することができる。
支持部材5の外周面51には、コイル4を螺旋状に巻回することができる。これにより、コイル4は、螺旋状に巻回された状態が維持される。また、支持部材5の外周面51には、その周方向に沿って溝52が螺旋状に形成されていてもよい。これにより、螺旋状のコイル4を形成する際には、コイル4を構成する金属製の1本のワイヤー41を溝52に沿わせることにより、コイル4の形成を容易に行なうことができる。また、溝52により、支持部材5の外周面51上でのコイル4の位置ズレが防止され、よって、コイル4の巻回状態をより強固に維持することができる。
また、支持部材5には、Y軸方向に貫通し、原子セル3の第2室32が挿通する貫通孔53が形成されている。これにより、支持部材5内での原子セル3の向き、すなわち、第2室32をどの方向に向けるのかを規制することができる。
支持部材5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、コイル4から原子セル3への磁界を阻害しない材料、例えば、アルミニウム等の非磁性の金属材料や、炭化ケイ素系等の熱伝導性のセラミックス材料を用いることができる。また、コイル4が通電より発熱するよう構成されている場合には、支持部材5の構成材料として、コイル4から原子セル3への磁界を阻害しない機能を有しつつ、熱伝導性に優れた材料を用いることが好ましい。これにより、コイル4で生じた熱を支持部材5を介して胴体部33に伝えることができ、よって、内部空間S1を加熱することができる。
コイル4は、第1室31の外側で第3面313に沿って、特に本実施形態では、前述したように、支持部材5の外周面51に沿って、螺旋状に巻回されたワイヤー41で構成されている。なお、コイル4を構成するワイヤー41の本数は、1本に限定されず、例えば、複数本であってもよい。
コイル4は、通電により、内部空間S1内に光LLの光軸aに沿った方向の磁場を発生させることができる。これにより、内部空間S1内のアルカリ金属原子の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップをゼーマン分裂により拡げて、分解能を向上させ、EIT信号の線幅を小さくすることができる。なお、コイル4が発生する磁場は、直流磁場または交流磁場のいずれかの磁場であってもよいし、直流磁場と交流磁場とを重畳させた磁場であってもよい。
コイル4は、X軸方向、すなわち、原子セル3を透過する光LLの光軸a方向に隣り合うワイヤー41同士が接する複数の密巻き部42と、光軸a方向に隣り合うワイヤー41同士の間に間隙411が形成された、すなわち、ワイヤー41同士が離間した複数の疎巻き部43と、を有している。このようなコイル4としては、ヘルムホルツ型のコイルや、Lee-Whiting型のコイルを用いることができる。本実施形態のコイルは密巻き部42と疎巻き部43とがX軸方向に沿って交互に配置されたLee-Whiting型のコイルである。
密巻き部42としては、X軸方向正側から順に、第1密巻き部42A、第2密巻き部42B、第3密巻き部42Cおよび第4密巻き部42Dがある。各密巻き部42での巻回数は、特に限定されず、例えば、2以上、20以下であることが好ましく、4以上、10以下であることがより好ましい。
また、各密巻き部42での巻回数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、本実施形態では、第1密巻き部42Aでの巻回数と、第4密巻き部42Dでの巻回数とは、同じ9巻回であり、第2密巻き部42Bでの巻回数と、第3密巻き部42Cでの巻回数とは、同じ4巻回である。この場合、コイル4は、「Lee-Whiting 4-Coil」と呼ばれる。これにより、例えばコイル4がヘルムホルツ型のコイルである場合に比べて、コイル4の小型化に寄与するとともに、均一磁場領域を大幅に拡張することができ、内部空間S内での不均一磁場を2%以下に維持することができる。
疎巻き部43としては、X軸方向正側から順に、第1疎巻き部43A、第2疎巻き部43Bおよび第3疎巻き部43Cがある。各疎巻き部43での間隙411の大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、本実施形態では、第1疎巻き部43Aでの間隙411の大きさと、第3疎巻き部43Cでの間隙411の大きさとは、同じであり、かつ、第2疎巻き部43Bでの間隙411よりも大きい。
なお、密巻き部42の形成数は、4つ、疎巻き部43の形成数は、3つに限定されない。
前述したように、コイル4は、疎巻き部43を3つ以上有している。そして、第2室32は、3つ以上の疎巻き部43のうちの最も端に位置する疎巻き部43、すなわち、第1疎巻き部43Aに配置されている。この場合、原子セル3の第2室32は、第1室31の胴体部33のX軸における端部付近に配置されるので、第2室32が第1室31の胴体部33のX軸における中央付近にある場合よりも原子セル3の製造が容易である。
なお、第2室32は、3つの疎巻き部43のうちの1つの疎巻き部43に配置されており、本実施形態では第1疎巻き部43Aに配置されているが、これに限定されず、例えば、第2疎巻き部43Bまたは第3疎巻き部43Cに配置されていてもよい。
コイル4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、銅やニッケルクロム合金等のような導電性を有する金属材料を用いることができる。
コイル4の構成材料としてニッケルクロム合金を用いた場合、コイル4は、通電により発熱して、支持部材5を介して、第1室31内を加熱することができる。このように、ニッケルクロム合金のコイル4は、第1室31を加熱するヒーターとしても機能する。これにより、第1室31内のアルカリ金属を加熱し、そのアルカリ金属の少なくとも一部を所望濃度のガス状態とすることができる。また、例えば、第1室31を加熱するヒーターをコイル4とを別途に設けるのを省略することができ、よって、原子発振器1の構成を簡単なものにすることができる。なお、ヒーター、本実施形態においてはコイル4、は、制御回路50によって制御される。
原子発振器1は、原子セル3、支持部材5およびコイル4を収容し、磁気シールド性を有する第1シールド部材6を備えている。これにより、原子セル3に向かう、原子発振器1の使用環境下での磁場を遮蔽することができ、よって、原子セル3内の磁場が変動するのを低減することができる。
第1シールド部材6には、Y軸方向に貫通し、原子セル3の第2室32が挿通する挿通孔61が形成されている。これにより、第2室32の少なくとも一部、すなわち、本実施形態ではリッド37側の先端部321は、第1シールド部材6の外側に位置する。これにより、後述する第2室32に対する温度制御を、第1室31よりも優先的に容易に行うことができる。
なお、第2室32は、先端部321が第1シールド部材6の外側に位置しているのに限定されず、例えば、第2室32全体が第1シールド部材6の外側に位置していてもよい。
また、第1シールド部材6のX軸と交差する2つの壁には、X軸に沿って貫通する開口62、開口63が形成されている。開口62は、開口63に対してX軸の負側に位置しており、原子セル3の第1面311に入射する光LLが通過する。一方、開口63は開口62に対してX軸の正側に位置しており、第2面312から出射した光LLが通過する。
第1シールド部材6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、コバール、パーマロイ、ステンレス鋼等の透磁率が比較的高い鉄系合金等を用いることが好ましい。
また、第1シールド部材6の挿通孔61は、挿通孔61に対する平面視で、第2室32の胴体部36の挿通孔61に配置される部分よりも大きく、挿通孔61と胴体部36との間には、間隙64が形成されている。間隙64には、第1シールド部材6と同じ材料で構成された部材が嵌合していてもよい。これにより、間隙64を埋めることができ、よって、間隙64からの磁場の流入を防止することができる。
また、本実施形態では、支持部材5と第1シールド部材6との間に間隙が形成されており、この間隙は、断熱性を有する断熱層70として機能する。
このように、原子発振器1は、原子セル3を内側で支持する支持部材5と第1シールド部材6との間に配置され、断熱性を有する断熱層70を備えた構成となっている。これにより、コイル4で生じた熱が第1シールド部材6に放出さにくくなり、すなわち、断熱層70の内側に熱がこもり、よって、原子セル3を迅速に加熱することができる。また、加熱後の原子セル3内の温度の変化を低減することができる。
なお、断熱層70は、本実施形態では空気層で構成されているが、これに限定されず、例えば、各種の断熱性樹脂材料や、ステアタイト系やジルコニア系等の熱伝導率の低いセラミックス材料で構成することもできる。また、断熱層70が空気層で構成され、断熱層70での対流の作用等により断熱性の確保が困難となりそうな場合には、断熱層70を各種樹脂材料やセラミックス材料で構成することが好ましい。また、断熱層70が各種樹脂材料やセラミックス材料で構成されている場合、光LLの光路上からは断熱層70が省略されている。また、断熱層70は、繊維を含んでいてもよいし、発泡材や多孔質材で構成することもできる。また、断熱層70は、気密性が確保された真空断熱構造であってもよい。
第2シールド部材8は、箱状をなし、その内側に原子セルユニット20、発光素子モジュール10および光学系ユニット30を一括して収容することができる。第2シールド部材8は、磁気シールド性を有する。これにより、第1シールド部材6での磁場の遮蔽性を補うことができ、よって、外部磁場の影響で、第2シールド部材8内、特に原子セル3の第1室31内の磁場が変動するのをより低減することができる。
第2シールド部材8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、第1シールド部材6の構成材料と同様の材料を用いることができる。
なお、第2シールド部材8の内側には、1つのシールド部材、すなわち、第1シールド部材6が配置されているが、第2シールド部材8の内側にあるシールド部材の配置数は、1つに限定されず、例えば、複数であってもよい。例えば、シールド部材の数が2つの場合、第1シールド部材6ともう一つのシールド部材が重なっていることが好ましく、第1シールド部材6が当該もう一つのシールド部材に収容されていることがより好ましい。
第2シールド部材8と原子セル3との間には、ペルチェ素子212と伝熱部材7とが配置されている。ペルチェ素子212は、伝熱部材7に対して第2シールド部材8側に位置し、伝熱部材7は、ペルチェ素子212の原子セル3側の面に接している。また、伝熱部材7には、温度センサー204が支持、固定されている。
このように原子発振器1は、第2室32の温度を制御する温度制御素子としてのペルチェ素子212を備えている。ペルチェ素子212は、供給される電流の向きに応じて加熱機能または冷却機能が発揮され、よって、第2室32内を所望の温度に調節することができる。
また、ペルチェ素子212は、伝熱部材7と反対側で第2シールド部材8に接している。これにより、例えば、ペルチェ素子212が原子セル3を冷却する場合に、ペルチェ素子212から発せられた余剰分の熱を第2シールド部材8を介して放出することができる。
また、原子発振器1では、例えば仮にペルチェ素子212での発熱量が不足する場合、その不足分を、ペルチェ素子212に隣り合って配置された別のヒーター(図示せず)からの熱で補ってもよい。この場合、当該ヒーターとしては、特に限定されず、例えば、セラミックヒーターやパワートランジスタ等の各種ヒーターを用いることができる。
伝熱部材7は、原子セル3の第2室32の先端部321をリッド37側から覆うように配置されている。伝熱部材7は、第2室32のリッド37に接する第1当接部71と、第2室32の胴体部36の一部に接する第2当接部72と、を有している。また、第1当接部71は、リッド37と反対側においてペルチェ素子212にも接する。
伝熱部材7の構成材料としては、特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム等のような熱伝導性に優れた材料を用いることができる。
このような伝熱部材7により、原子セル3の第2室32とペルチェ素子212との間で、熱の行き来が迅速に行われる。
なお、伝熱部材7は、第1当接部71が例えば熱伝導性エポキシ接着剤を介して蓋部37に接着されていてもよい。これにより、例えば原子発振器1の使用中に第2室32と伝熱部材7との接続状態を安定させやすく、よって、これらの間の熱伝導性が向上する。
伝熱部材7の第2当接部72には、温度センサー204が支持、固定されている。温度センサー204は、第2室32付近の温度を第2室32内の温度として検出する温度検出素子である。温度センサー204としては、特に限定されないが、例えば、サーミスタまたは熱電対等のような各種温度検出素子を用いることができる。
さて、前述したように、原子発振器1では、本体30Aの開口360は、接合材39を介して接合されたリッド37によって塞がれている。本体30Aにリッド37を接合する方法に関しては後に詳述するが、簡素に説明すると、まず、開口360の縁部にリング状の接合材39を配置し、接合材39に重ねてリッド37を配置する。そして、リッド37を介して接合材39にレーザーを照射して加熱して接合材39を溶融し、その後に冷却することで本体30Aにリッド37が接合される。
リッド37を介して接合材39にレーザーを照射して加熱する際、リッド37、および本体30A、特に、胴体部36の温度が上昇する。この温度上昇により、胴体部36およびリッド37は膨張する。また、接合材39を溶融した後に冷却する際、胴体部36およびリッド37は収縮する。このような膨張、収縮の程度は、主に本体30Aの構成材料の熱膨張係数およびリッド37の構成材料の熱膨張係数に依存している。
しかしながら、従来では、これらの熱膨張係数の関係は、十分に研究がなされていなかった。本願発明者らは、リッド37の構成材料の熱膨張係数が本体30Aの構成材料の熱膨張係数よりも大きいか、または、同じであると、以下のような問題が発生することを見出した。
図4に示すように、温度上昇によって胴体部36およびリッド37は膨張する。胴体部36よりも体積が小さいリッド37は、後述するようにリッド37側から加熱されると、胴体部36以上の温度になる。そのため、リッド37のほうが胴体部36よりも膨張の程度が大きい。なお、図4では、膨張する前を二点鎖線で示し、膨張後を実線で示している。胴体部36も膨張するが、リッド37と比較して膨張の程度が小さいため、図示を省略している。この膨張した状態で接合がなされると、リッド37は、接合材39に規制されて膨張したのと同じ量収縮することができない。その結果、冷却後に、収縮しようとする方向の引張応力がリッド37内に残ってしまい、リッド37にクラックが生じたりするおそれがある。なお、図4はあくまでクラックの発生を説明するための概念図であり、実際にはリッド37は厚さ方向にも膨張する。しかし、厚さ方向の収縮は制限されないため、残存する応力は主にリッド37の厚さ方向に垂直な面方向の応力となる。
そこで、本実施形態ではこのような課題を解決すべく、本体30Aの熱膨張係数よりもリッド37の熱膨張係数を小さくした。すなわち、本体30Aの熱膨張係数をC1とし、リッド37の熱膨張係数をC2としたとき、C2<C1である。これにより、C2=C1またはC2>C1の場合と比較して、リッド37の膨張の程度を小さくすることができリッド37内に残る上記引張応力を抑制することができる。その結果、リッド37にクラックが生じたりするのを低減することができる。
なお、本明細書中の「熱膨張係数」は、JIS R 3102に記載の平均線膨張係数に相当し、同規格に準拠して測定された値とする。
C2<C1を満足すればリッド37にクラックが生じにくくできるが、C2/C1は、0.05以上、0.8以下であるのが好ましく、0.1以上、0.7以下であるのがより好ましい。これにより、リッド37にクラックがより一層生じにくくなる。また、本体30Aおよびリッド37の構成材料の選定が容易になり、選定の自由度が向上する。C2/C1が小さすぎても大きすぎても、本体30Aおよびリッド37の構成材料の選定の際、選択肢が比較的少なくなる。
本体30Aの熱膨張係数C1は、30.0×10−7/℃以上、80.0×10−7/℃以下であるのが好ましく、32.5×10−7/℃以上、55.0×10−7/℃以下であるのがより好ましい。本体30Aの構成材料としてガラス材料を用いる場合、ガラス材料は熱膨張係数C1が大きいほど軟化点が比低くなる傾向を示すため、熱膨張係数C1が大きすぎると、耐熱性が不十分となるおそれがある。一方、熱膨張係数C1が小さすぎると、C2<C1を満足することを考慮した場合、リッド37の材料の選定が難しくなる。
リッド37の熱膨張係数C2は、3.0×10−7/℃以上、55.0×10−7/℃以下であるのが好ましく、4.5×10−7/℃以上、33.0×10−7/℃以下であるのがより好ましい。熱膨張係数C2が大きすぎると、リッド37の構成材料としてガラス材料を用いる場合、成形の難易度が高く、かつ、コストが上がってしまう傾向がある。一方、熱膨張係数C2が大きすぎると、C2<C1を満足することを考慮した場合、本体30Aの材料の選定が難しくなる。
本体30Aの熱膨張係数C1とリッド37の熱膨張係数C2との差ΔCは、5.0×10−7/℃以上、70.0×10−7/℃以下であるのが好ましく、10.0×10−7/℃以上、30.0×10−7/℃以下であるのがより好ましい。差ΔCが大きすぎると材料の選定が困難であり、差ΔCが小さすぎると、差ΔCが上記範囲である場合と比較してクラックを低減する効果が小さくなる。
本体30Aおよびリッド37の構成材料としては、C2<C1を満たす材料であれば特に限定されず、ガラス材料、水晶等の光透過性を有する材料が挙げられるが、これらの中でもガラス材料を用いることが好ましい。これにより、接合材39を用いた接合に置いて高い接合強度が得られるとともに、接合後の胴体部36およびリッド37の強度を高めることができる。さらに、熱膨張係数C1および熱膨張係数C2を上記数値範囲とするための構成材料の選定が容易となる。
ガラス材料としては、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。これらの中でも、本体30Aの構成材料は、ホウケイ酸ガラスであるのが好ましい。これにより、本体30Aの熱膨張係数C1を上記数値範囲内にすることができるとともに、成形性に優れる。また、リッド37の構成材料は、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスであるのが好ましい。石英ガラスは、不純物が比較的少なく、熱膨張係数が比較的小さい。このため、C2<C1を満足するのが容易となる。さらに、耐熱性にも優れる。
なお、本体30Aおよびリッド37の双方の構成材料をホウケイ酸ガラスとすることもできる。ホウケイ酸ガラスに含まれるナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属の不純物の量によって熱膨張係数が違うので、本体30Aおよびリッド37の双方の構成材料をホウケイ酸ガラスとしてもC2<C1を満足することができる。
また、本体30Aの熱膨張係数C1およびリッド37の熱膨張係数C2に加え、接合材39の熱膨張係数C3も下記のような数値範囲または関係であると、本発明の効果がさらに顕著に得られる。
接合材39の熱膨張係数C3は、50.0×10−7以上、100.0×10−7以下であるのが好ましく、60.0×10−7以上、80.0×10−7以下であるのがより好ましい。これにより、材料の選定が比較的容易となる。
接合材39の構成材料としては、本体30Aとリッド37とを溶融接合可能であれば特に限定されないが、ガラスフリットであるのが好ましい。また、接合材39の融点は、200℃以上、500℃以下であるのが好ましく、380℃以上、450℃以下であるのがより好ましい。低融点ガラスフリットと比較して、融点が上記範囲にあるガラスフリットはアルカリ金属耐性があるものが多い。そのため、このようなガラスフリットを用いることで、低融点ガラスフリットを用いる場合よりも信頼性の高い原子セル3を得ることができる。
以上説明したような原子セル3では、リッド37の体積は、2.0mm以上9.0mm以下であるのが好ましく、本体30Aの体積は、80mm以上3000mm以下であるのが好ましく、接合材39の体積は、0.005mm以上0.05mm以下であるのが好ましい。
次に、原子セル3の製造方法、すなわち、原子セル3の封止方法について図3を参照しつつ説明する。
まず、原子セル3の封止方法に用いる減圧チャンバー80について説明する。
減圧チャンバー80は、排気口811と窓部812とを有するチャンバー本体81を備える。チャンバー本体81は、内部に原子セル3を収納できる程度の大きさを有する。排気口811には、例えば吸引ポンプ等の減圧手段が接続されており、減圧チャンバー80の内部の空気を吸引して排出することにより減圧チャンバー80内の気圧を下げることができる。窓部812は、光透過性を有し、レーザー光Lを透過可能である。また、窓部812の内面には、内側に向かって突出形成されたピン813が形成されている。このピン813は、減圧チャンバー80内に原子セル3を配置した状態において、リッド37を押圧して加圧するものである。
なお、チャンバー本体81の側壁の一部は、その他の部位に対して着脱可能または開閉可能に構成されているのが好ましい。これにより、後述するように、減圧チャンバー80内に原子セル3を配置する工程を容易に行うことができる。
原子セル3の封止方法について説明する。
まず、開口360を有する本体30Aを用意し、開口360を介して第2室32内に前述したような補充用金属MRを供給する。そして、開口360の縁部にリング状の接合材39を配置する。なお、補充用金属MRの供給と接合材39の配置とは、この順に限定されず、同時または逆の順番であってもよい。次いで、接合材39上にリッド37を配置して、開口360を塞ぐ。
そして、この状態の原子セル3を減圧チャンバー80内に配置する。この際、減圧チャンバー80内にスペーサー82を配置し、その上に原子セル3を配置する。スペーサー82の高さを調節することによりピン813が原子セル3を押圧する押圧力を調整することができる。また、ピン813は、リッド37のほぼ中央部に当接して押圧するように原子セル3を配置する。これにより、後述するように、ピン813に阻害されることなくレーザー光Lを照射することができる。
次いで、排気口811を介して空気を吸引して減圧チャンバー80内を減圧状態とする。本明細書中の「減圧状態」とは、大気圧よりも圧力が低い状態であることを言い、特に、真空状態、すなわち、気圧が0Pa以上、10−5Pa以下であるのがより好ましい。
次いで、リッド37の上方から、リッド37を介して接合材39にレーザー光Lを照射する。本実施形態では、レーザー光Lの照射部位を接合材39に沿ってリング状に移動させながらレーザー光Lを照射する。
レーザー光Lの波長は、800nm以上、1200nm以下であるのが好ましく、800nm以上、1000nm以下であるのがより好ましい。これにより、効率よく接合材39を溶融することができる。
レーザー光Lの照射部位の移動速度、すなわち、描画速度は、1.0mm/秒以上、10.0mm/秒以下であるのが好ましく、2.0mm/秒以上、7.0mm/秒以下であるのがより好ましい。これにより、接合材39の溶融をより確実に行うことができる。
また、レーザー光Lの照射時間は、100秒以上、1000秒以下であるのが好ましく、200秒以上、500秒以下であるのがより好ましい。これにより、接合材39全体をより確実かつ迅速に溶融することができる。
このようなレーザー照射により、接合材39が加熱され溶融する。そして、冷却を行うことにより本体30Aとリッド37とが接合される。この際、前述したように、本発明では、C2<C1であるため、リッド37の過剰な膨張、収縮を緩和することができ、リッド37内に残る上記引張応力を抑制することができる。その結果、リッド37にクラックが生じたりするのを防止または抑制することができる。
以上説明したように、原子セル3は、開口360を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体30Aと、接合材39を介して開口360を塞ぐように本体30Aに接合されており、本体30Aの熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッド37と、を含む。これにより、リッド37の過剰な膨張、収縮を緩和することができ、リッド37内に残る上記引張応力を抑制することができる。その結果、リッド37にクラックが生じたりするのを防止または抑制することができる。
また、原子発振器1は、発光素子102と、開口360を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体30Aと、接合材39を介して開口360を塞ぐように本体30Aに接合されており、本体30Aの熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッド37と、を含む原子セル3と、原子セル3を通過した光を受光する受光素子202と、を含む。これにより、上記本発明の効果を享受しつつ、量子干渉効果を利用した原子発振器を得ることができる。
<原子発振器適用例>
以上説明したような原子発振器1は、各種の周波数信号生成システムに組み込むことができる。以下、そのような周波数信号生成システムの実施形態について説明する。
図5は、GPS(Global Positioning System)衛星を利用した周波数信号生成システムの一例の概略構成を示す図である。
図5に示す測位システム1100は、基地局装置1300と、GPS受信装置1400とで構成されている。ここで、原子発振器1を搭載した電子機器を周波数信号生成システムと呼ぶこともできるし、原子発振器1を搭載した電子機器を含む複数の電子機器からなる各種システムを周波数信号生成システムと呼ぶこともできる。
GPS衛星1200は、測位用情報を含む衛星信号(GPS信号)を送信する。
基地局装置1300は、例えば電子基準点としてのGPS連続観測局に設置されたアンテナ1301を介してGPS衛星1200からの衛星信号を受信する受信装置1302と、受信した衛星信号から受信装置1302が取得した測位情報をアンテナ1303を介して送信する送信装置1304とを備える。
ここで、受信装置1302は、その基準周波数発振源である原子発振器1と、原子発振器1からの周波数信号を処理する処理部1302aと、を備える。また、受信装置1302で受信された測位情報は、リアルタイムで送信装置1304により送信される。
このように、周波数信号生成システムである受信装置1302は、原子発振器1を含む。このような受信装置1302によれば、原子発振器1の原子セル3周辺の温度勾配を低減することで、受信装置1302の特性を向上させることができる。また、上述した受信装置1302を含むことで、周波数信号生成システムの別の一例である測位システム1100の特性を向上させることができる。
GPS受信装置1400は、GPS衛星1200からの測位情報をアンテナ1401を介して受信する衛星受信部1402と、基地局装置1300からの測位情報をアンテナ1403を介して受信する基地局受信部1404とを備える。
以上のように、周波数信号生成システムの一例としての測位システム1100の受信装置1302は、原子発振器1と、原子発振器1からの周波数信号を処理する処理部1302aと、を備えている。
このような発明によれば、前述した原子発振器1の利点を生かし、測位システム1100および受信装置1302の特性を向上させることができる。
なお、周波数信号生成システムは、前述したものに限定されず、原子発振器1と、原子発振器1からの周波数信号を処理する処理部とを含むシステムであればよい。例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター)、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS(Point of Sales)端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地上デジタル放送、携帯電話基地局等に適用することができる。また、複数の電子機器等から構成される周波数信号生成システムは、原子発振器1からの信号を処理して信号を生成するシステムであればよく、前述したものに限定されず、例えば、クロック伝送システム等であってもよい。
以上、本発明の原子セルおよび原子発振器を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、原子セルおよび原子発振器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、量子干渉効果を利用した原子発振器に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明は、これに限定されず、二重共鳴現象を利用した原子発振器にも適用可能であり、この場合、光源としては、半導体レーザーに限定されず、例えば、発光ダイオード、アルカリ金属を封入したランプ等を用いることができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]原子セルの製造
(実施例1)
まず、図1〜図3に示すような本体30A、リッド37および接合材39を用意した。
本体30Aは、内部容積が1000mmであり、胴体部36の外径が2.0mmであり、胴体部36の内径、すなわち、開口360の直径が1.0mmであり、ガラス部分の体積が310mmであった。
また、本体30Aの構成材料は、ホウケイ酸ガラスであり、熱膨張係数が51.5×10−7/℃であった。
リッド37は、直径が2.0mmであり、厚さが0.5mmであり、体積が9.0mmであった。また、リッド37の構成材料は、ホウケイ酸ガラスであり、熱膨張係数が32.5×10−7/℃であった。
なお、本体30Aおよびリッド37の熱膨張係数の差異は、19.0×10−7/℃であった。
接合材39は、厚さが0.01mmであり、体積が0.08mmであった。また、接合材39の構成材料は、ガラスフリットであり、熱膨張係数が63×10−7/℃であった。
そして、本体30Aの開口360の縁部に接合材39を配置し、その上にリッド37を配置した。この状態で、図3に示す減圧チャンバー80内に配置し、ピン813がリッド37を押圧するようにセットした。
次いで、減圧チャンバー80内を減圧状態とし、窓部812およびリッド37を順に介してレーザー光Lを接合材39に照射した。なお、減圧チャンバー80内の気圧は、10−5Paであった。また、レーザー光Lの光源強度は、5Wであり、レーザー光Lの波長は980nmであり、描画速度は、3.0mm/秒であり、照射時間は、4.0分とした。
その後、自然冷却を行い、本体30Aとリッド37とが接合材39を介して接合された実施例1の原子セルを得た。
(実施例2〜6)
本体30A、またはリッド37の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして原子セルを製造した。実施例2、3、4、5、6は、いずれもC2<C1を満たす。
(比較例1)
本体30Aおよびリッド37の条件を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして原子セルを製造した。比較例1の本体30Aおよびリッド37の熱膨張係数はともに53.0×10−7/℃であり、C2=C1である。
[2]評価
顕微鏡を用いて倍率100倍でリッド37側の一方の面側からリッド37を観察し、クラックの有無を確認した。
A:クラックが生じていなかった
B:クラックが生じていなかったが若干白色に変色が確認された
C:クラックが生じていた
これらの結果を表1にまとめて示す。
Figure 2020109778
表1から明らかなように、C2=C1を満たす各実施例ではリッド37にクラックが生じるのを防止することができた。これに対し、C2=C1である比較例1では、リッド37にクラックが生じた。
1…原子発振器、3…原子セル、30A…本体、31…第1室、311…第1面、312…第2面、313…第3面、32…第2室、321…先端部、33…胴体部、34…窓部、35…窓部、36…胴体部、360…開口、37…リッド、38…連通路、39…接合材、4…コイル、41…ワイヤー、411…間隔、42…密巻き部、42A…第1密巻き部、42B…第2密巻き部、42C…第3密巻き部、42D…第4密巻き部、43…疎巻き部、43A…第1疎巻き部、43B…第2疎巻き部、43C…第3疎巻き部、5…支持部材、51…外周面、52…溝、53…貫通孔、6…第1シールド部材、61…挿通孔、62…開口、63…開口、64…間隙、7…伝熱部材、71…第1当接部、72…第2当接部、8…第2シールド部材、10…発光素子モジュール、20…原子セルユニット、30…光学系ユニット、50…制御回路、70…断熱層、80…減圧チャンバー、81…チャンバー本体、82…スペーサー、811…排気口、812…窓部、813…ピン、101…ペルチェ素子、102…発光素子、103…温度センサー、202…受光素子、204…温度センサー、212…ペルチェ素子、301…減光フィルター、302…集光レンズ、303…1/4波長板、501…温度制御回路、502…光源制御回路、503…磁場制御回路、504…温度制御回路、1100…測位システム、1200…GPS衛星、1300…基地局装置、1301…アンテナ、1302…受信装置、1302a…処理部、1303…アンテナ、1304…送信装置、1400…GPS受信装置、1401…アンテナ、1402…衛星受信部、1403…アンテナ、1404…基地局受信部、L…レーザー光、LL…光、MR…補充用金属、S1…内部空間、S2…内部空間、a…光軸

Claims (7)

  1. 開口を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体と、
    接合材を介して前記開口を塞ぐように前記本体に接合されており、前記本体の熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッドと、を含む、原子セル。
  2. 前記本体の熱膨張係数と前記リッドの熱膨張係数との差は、5.0×10−7/℃以上、70.0×10−7/℃以下である、請求項1に記載の原子セル。
  3. 前記本体の熱膨張係数は、30.0×10−7/℃以上、80.0×10−7/℃以下であり、
    前記リッドの熱膨張係数は、3.0×10−7/℃以上、55.0×10−7/℃以下である、請求項1または2に記載の原子セル。
  4. 前記接合材の熱膨張係数は、50.0×10−7/℃以上、100.0×10−7/℃以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子セル。
  5. 前記本体、前記リッドおよび接合材料は、ガラス材料を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子セル。
  6. 前記本体は、ホウケイ酸ガラスであり、
    前記リッドは、石英ガラスおよびホウケイ酸ガラスのうちのいずれかである、請求項5に記載の原子セル。
  7. 発光素子と、
    開口を有し、アルカリ金属原子が収容されている本体と、接合材を介して前記開口を塞ぐように前記本体に接合されており、前記本体の熱膨張係数よりも熱膨張係数が小さいリッドと、を含む原子セルと、
    前記原子セルを通過した光を受光する受光素子と、を含む、原子発振器。
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