JP2020108358A - 標的対象を高感度に検出するための方法 - Google Patents

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優大 川島
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侑希 米川
Yuki Yonekawa
侑希 米川
聡 中澤
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Abstract

【課題】一実施形態において、本発明は、核酸を高感度に検出するための方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、標的対象を高感度に検出するための方法であって、標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を、前記標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに特異的に結合可能な核酸を用いて検出する工程、及び前記複数の標的塩基配列のうちいずれか1つ以上が検出された場合には、その試料中に標的対象が存在していると判定する工程を含み、検出工程において前記標的塩基配列が低コピー数で存在する、方法等に関する。【選択図】図5

Description

本発明は、標的対象を高感度に検出するための方法等に関する。
近年、分析技術の高感度化により、測定対象を分子数単位で測定することが可能となっており、食品、環境検査、及び医療へ、微量核酸を検出する遺伝子検出技術の産業利用が求められている。特に、病原体やウイルス、未承認の遺伝子組み換え食品は、検体試料中に含まれていないことを確認することが多く、高いレベルでの検出、及びその検出結果の判定が要求される。
感染症における病原体検出及び病態の診断や、遺伝子組み換え作物の混入検査、ウイルス否定試験等における遺伝子診断においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が用いられている。PCR法は、DNAを段階的に増幅させる技術で、検体試料から任意の部分塩基配列を特異的に増やすことができることから、標的対象に特異的な高感度検出法として広く遺伝子検査等に応用されている。
検体試料を検査した際、試料のうちで標的とする核酸が検出されない場合には、その検出結果は、陰性と判定される。陰性には、標的核酸が本当に存在しなかった場合(真陰性)と実際には標的核酸が存在したが検出できなかった場合(偽陰性)の2通りが存在する。もし後者であった場合には検出漏れが発生することとなり、検体試料に対して誤った判定を提供し、重大な事故を引き起こす可能性がある。
一方で、最近では検体試料中の核酸濃度を定量する方法として、デジタルPCR法が広く用いられるようになった。デジタルPCR法は、はじめに核酸分子を含む反応溶液を微小区画化し、核酸分子を含むウェル(陽性ウェル)と含まないウェル(陰性ウェル)とに分画する。その後、すべての微小区画に対してPCR反応を行い、陽性ウェルと陰性ウェルとの比を得て、統計的処理を行うことで反応溶液中の核酸濃度を定量する。この定量方法は、これまでのリアルタイムPCRのように、標準物質の検量線を参照する必要がないため、直接検体中の標的核酸の濃度を定量可能な方法として用いられている。しかし、前述のように、標的核酸が存在する微小区画であったにも関わらず、何らかの原因でPCR反応が進行せずに、検出することができなかった場合(偽陰性)には、陽性ウェルと陰性ウェルとの比にまで偏りが生じ、結果として、デジタルPCRによって算出される濃度が不確かなものとなってしまう。
上記の様な検出精度の問題は、PCR反応によって核酸を検出できない場合(非検出)が存在していること、すなわちPCR反応の感度が不十分であることに少なくとも部分的に起因する。
特許文献1(特開2011−223940号公報)には、偽陰性を排除するPCR検査方法として、サンプル中に存在し得る微生物の標的遺伝子配列を増幅する第1のプライマー対、および、前記サンプル中の陽性対照遺伝子配列を増幅する第2のプライマー対を用いてPCR反応を行うことを含む微生物検出方法であって、前記PCR反応における前記標的遺伝子の検出感度と前記陽性対照遺伝子の検出感度が同等である方法が記載されている。
特許文献2(特開平09−224699号公報)には、ある適量の濃度の合成DNAを加える競合的PCR法と合成DNAを加えない通常の(conventional)PCRを行うことによって、従来法の偽陽性、偽陰性の問題を改善できることが記載されている。
しかしながら、上記文献に記載の方法は、いずれも検出感度そのものを向上させるものではない。
上記の通り、PCR法による検出の偽陰性や、デジタルPCR法による濃度測定の精度等の問題は、PCR反応の感度が不十分であることに少なくとも部分的に起因する。本発明者らは、特に核酸が低コピーで存在する場合に、(例えPCR法による検出を妨げ得る変異が核酸に含まれていない場合であっても)PCR法による検出感度が十分でないことを見出した。一実施形態において、本発明は、核酸を高感度に検出するための方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、
標的対象を高感度に検出するための方法であって、
標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を、前記標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに特異的に結合可能な核酸を用いて検出する工程、及び
前記複数の標的塩基配列のうちいずれか1つ以上が検出された場合には、その試料中に
標的対象が存在していると判定する工程を含み、
検出工程において前記標的塩基配列が低コピー数で存在することを特徴とする方法に関する。
本発明により、高感度に標的対象を検出することが可能となる。
図1は、本発明の方法により検出され得る標的対象の一実施形態の模式図を示す。本実施形態では、標的対象は、標的塩基配列1及び2を含む核酸分子である。 図2は、本発明の方法により検出され得る標的対象の一実施形態の模式図を示す。本実施形態では、標的対象は、標的塩基配列1を含む核酸分子1、及び標的塩基配列2を含む核酸分子2を含む担体である。 図3は、DNA600G及びMIR1配列をリアルタイムPCR装置において、duplex測定を行った際の、DNA600G配列についての各ウェルのCt値を示す。 図4は、DNA600G及びMIR1配列をリアルタイムPCR装置において、duplex測定を行った際の、MIR1配列についての各ウェルのCt値を示す。 図5は、図3及び図4の、リアルタイムPCRの結果を重ね合わせたものである。 図6は、DNA600G及びVID28配列をリアルタイムPCR装置において、duplex測定を行った際の、DNA600G配列についての各ウェルのCt値を示す。 図7は、DNA600G及びVID28配列をリアルタイムPCR装置において、duplex測定を行った際の、VID28配列についての各ウェルのCt値を示す。 図8は、図6及び図7の、リアルタイムPCRの結果を重ね合わせたものである。 図9は、各ドロップレットの2種類の蛍光試薬の蛍光強度(DNA600G蛍光強度及びSPS2蛍光強度)をプロットした図である。
本発明者らは、標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を検出することによって、単一の標的塩基配列を検出するよりも高感度に標的対象を検出できることを見出し、本発明を完成させた。
<1.標的対象>
一態様において、本発明は、標的対象を高感度に検出するための方法に関する。
本発明の理解を容易にするために、本発明の方法により検出され得る標的対象の一実施形態の非限定的な模式図を図1〜2に示す。
図1に示す実施形態では、標的対象は、標的塩基配列1及び2を含む核酸分子である。図2に示す実施形態では、標的対象は、標的塩基配列1を含む核酸分子1、及び標的塩基配列2を含む核酸分子2を含む担体である。
一実施形態において、標的対象は、図1で例示される様に、1つの分子内に複数の標的塩基配列を有する核酸である(「標的配列を有する核酸」は、標的配列を含む又はからなる核酸を包含し、本明細書では「標的核酸」とも記載する)。この実施形態では、複数の標的塩基配列がすべて結合していることが望ましい。結合の種類としては、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合、ファンデルワールス力、物理吸着、生物学的結合(例えば、ビオチンと、アビジン又はストレプトアビジンとの結合、抗原と抗体との結合等)によって固定化する方法等、何れの方法で結合していてもよいが、結合力の強い共有結合や生物学的結合がより望ましい。
一実施形態において、標的対象は、図2で例示される様に、複数の標的塩基配列を含む同一もしくは個別の核酸分子を内包又は担持する担体である。この実施形態では、複数の標的塩基配列を有する核酸同士は結合していてもよいし、結合していなくてもよい。結合していない場合には、複数の標的塩基配列が担体に内包もしくは担体に担持されていることが既知である必要がある。
本明細書において「核酸」及び「核酸分子」は互換的に使用され、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、これら核酸のアナログ等も含まれる。核酸は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNA等が挙げられる。また、核酸として、プラスミドも使用することができる。
核酸のアナログとしては、核酸を構成するヌクレオチドの一部の化学構造を変化させたもの(例えば、ハロゲン;メチル等のアルキル;メトキシ等のアルコキシ;チオ、カルボキシメチル等の保護基によるヌクレオチド及び/又は塩基の修飾、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換等を受けたヌクレオチド、及びペプチド核酸等)等が挙げられる。これらは、生物から得られる天然物であっても又はそれらの加工物であってもよく、或いは、遺伝子組換技術を利用して製造されたものでも、また化学的に合成されたものでもよい。核酸は、さらに非核酸成分、例えば蛍光色素や同位元素等の標識剤を結合させて標識されていてもよい。
標的対象が核酸を含む担体である場合、担体としては、標的塩基配列が存在する限り特に制限はなく、例えば、細胞、ウイルス、リポソーム、エクソソーム、マイクロカプセル、及び分散相等が挙げられる。これらの各々について、以下で詳細に説明する。
細胞
本明細書において、細胞は、標的塩基配列を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。細胞としては、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞が挙げられ、真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、藻類、原生動物等が挙げられる。
細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、組織や器官から直接採取した初代細胞を継代させたものでもよい。細胞は、分化した細胞及び未分化の細胞のいずれであってもよい。
分化した細胞としては、特に制限はなく、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞;星細胞;クッパー細胞;血管内皮細胞;類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞;繊維芽細胞;骨芽細胞;砕骨細胞;歯根膜由来細胞;表皮角化細胞等の表皮細胞;気管上皮細胞;消化管上皮細胞;子宮頸部上皮細胞;角膜上皮細胞等の上皮細胞;乳腺細胞;ペリサイト;平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞;腎細胞;膵ランゲルハンス島細胞;末梢神経細胞、視神経細胞等の神経細胞;軟骨細胞;骨細胞等が挙げられる。
未分化の細胞としては、特に制限はなく、例えば、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞;単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞;iPS細胞等が挙げられる。
真菌としては、特に制限はなく、例えば、カビ、酵母菌等が挙げられる。
ウイルス
本明細書において、ウイルスは、標的塩基配列を有し、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造的及び機能的単位を意味する。
ウイルスとしては、DNAウイルス、RNAウイルスを問わず、すべてのウイルスを対象とすることができ、例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、手足口病ウイルス、フラビウイルス(黄熱ウイルス、西ナイルウイルス、本脳炎ウイルス、デングウイルス)、トガウイルス(アルファウイルス、ルビウイルス、アルテリウイルス、ルベラウイルス)、ペスチウイルス(ブタコレラウイルス、ウシ下痢ウイルス)、パラミクソウイルス(パラインフルエンザウイルス1,2,3,4、イヌジステムパ−ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、RSウイルス、リンダペストウイルス、サルパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス)、オルソクソウイルス(ヒトインフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス、ウマインフルエンザウイルス、ブタインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(狂犬病ウイルス、水泡性口内炎ウイルス)、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ウシエンテロウイルス、ブタエンテロウイルス、サルエンテロウイルス、マウス脳脊髄炎ウイルス、ヒトライノウイルス、ウシライノウイルス、ウマライノウイルス、口蹄疫ウイルス、A型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(ヒトコロナウイルス、ニワトリ伝染性気管支炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、豚伝染性胃腸炎ウイルス)、アレナウイルス(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ラサウイルス、韓国型出血熱ウイルス)、レトロウイルス(HTLV:ヒト成人白血病ウイルス、HIV:エイズウイルス、ネコ白血病肉腫ウイルス、牛白血病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス)、レオウイルス(ロタウイルス)、カリシウイルス(ノーウオークウイルス)、ノロウイルス、ブンヤウイルス(腎症候性出血熱ウイルス)、フィロウイルス(エボラウイルス、マールブルグウイルス)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ポックスウイルス(ワクシニアウイルス、アラストリウムウイルス、牛痘ウイルス、天然痘ウイルス)、パルボウイルス(ヒトパルボウイルス、豚パルボウイルス、牛パルボウイルス、犬パルボウイルス、ネコ白血球減少症ウイルス、ミンクアリューシャン病ウイルス)、パポーバウイルス(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス)、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、馬ヘルペスウイルス、ネコヘルペスウイルス、マレック病ウイルス)およびアフリカ豚コレラウイルス等が挙げられる。
リポソーム
本明細書において、リポソームとは、脂質分子を含む脂質二重層から形成される脂質小胞体であり、具体的には、脂質分子の疎水性基と親水性基の極性に基づいて生じる脂質二重層により外界から隔てられた空間を有する脂質を含む小胞体を意味する。
リポソームは、脂質を用いた脂質二重膜で形成される閉鎖小胞体であり、その閉鎖小胞の空間内に水相(内水相)を有する。内水相には、水等が含まれる。リポソームはシングルラメラ(単層ラメラ、ユニラメラ、二重層膜が一重)であっても、多層ラメラ(マルチラメラ、タマネギ状の構造をした多数の二重層膜で、個々の層は水様の層で仕切られている)であってもよい。
リポソームとしては、複数の標的塩基配列を同一もしくは個別の核酸分子内に有し、かつそれらを内包することのできるリポソームが好ましく、その形態は特に限定されない。「内包」とは、リポソームに対して核酸が内水相および膜自体に含まれる形態をとることを意味する。例えば、膜で形成された閉鎖空間内に核酸を封入する形態、膜自体に内包する形態等が挙げられ、これらの組合せでもよい。
リポソームの大きさ(平均粒子径)は、複数の標的塩基配列を同一もしくは個別の核酸分子内に有し、かつそれらを内包することができれば、特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとることが好ましい。
リポソームの脂質二重層を構成する成分(膜成分)は、脂質から選ばれる。脂質として、水溶性有機溶媒及びエステル系有機溶媒の混合溶媒に溶解するものであれば任意に使用することができる。脂質として、具体的には、リン脂質、リン脂質以外の脂質、コレステロール類及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの成分は、単一種又は複数種の成分から構成されてよい。
マイクロカプセル
本明細書において、マイクロカプセルとは、壁材と中空構造とを有する微小な粒体を意味し、中空構造に複数の標的塩基配列を同一もしくは個別の核酸分子内に有し、かつそれらを内包することができる。
マイクロカプセルとしては、特に制限はなく、複数の標的塩基配列を同一もしくは個別の核酸分子内に有し、かつそれらを内包していれば、適宜目的に応じて、壁材、大きさ等を選択することができる。
マイクロカプセルの壁材としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシリ、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ゼラチン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
マイクロカプセルの製造方法としては、例えば、in−situ法、界面重合法、コアセルベーション法等が挙げられる。
分散相
本明細書において、分散相とは、微小な大きさに区分された区画を意味する。
分散相としては、特に制限はなく、複数の標的塩基配列を同一もしくは個別の核酸分子内に有し、かつそれらを内包していれば全て対象とすることができ、例えば、液相の分散相、固相の分散相等が挙げられる。
液相の分散相としては、例えば、水−油系エマルションを形成する油中水滴(W/O型)又はミセル等が挙げられる。
分散相の容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連続相の流量、分散相の流量、流路の幅、流路の高さ、界面活性剤の濃度、溶液の粘性、流路の圧力損失等により、制御することができる。
固相の分散相としては、例えば、核酸を捕捉可能な粒子等が挙げられる。粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、標的対象の複数の標的塩基配列と特異的に結合可能な核酸プローブが表面に修飾された粒子や、カオトロピック物質の存在下で核酸を固層吸着させるシリカ粒子等が挙げられる。これらの固相に標的核酸が固定化されたものも、標的対象であり得る。
複数の標的塩基配列と特異的に結合可能な核酸プローブが表面に修飾された粒子としては、標的対象の複数の標的塩基配列と特異的に結合可能な核酸プローブが表面に修飾されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、白金、チタン、ニッケル等の金属;ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル、ジュラルミン等の合金;シリコン;ガラス、石英ガラス、溶融石英、合成石英、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラス等のガラス材料;ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチック;アガロース、デキストラン、セルロース、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、粒子として磁化された、又は磁性体を内包した、或いは磁化可能な磁気ビーズを用いることによって、本願発明の核酸検出法の前処理について、自動化、効率化、又は迅速化することができる。標的対象の複数の標的塩基配列と特異的に結合可能な核酸プローブが表面に修飾された粒子の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一つの粒子に対して、複数の標的核酸が一分子以下となるような割合であったとしても、本願発明の核酸検出法によってその割合を正確に求めることができる。
標的対象の複数の標的塩基配列と特異的に結合可能な核酸プローブを粒子の表面に修飾する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、共有結合、イオン結合、物理吸着、生物学的結合(例えば、ビオチンと、アビジン又はストレプトアビジンとの結合、抗原と抗体との結合等)によって固定化する方法等が挙げられる。
複数の標的核酸と特異的に結合可能な核酸プローブとしては、スペーサー配列、例えば、1個以上10個以下の炭素原子を含む炭化水素基を介して、粒子に固定してもよい。
共有結合を介した複数の標的核酸と特異的に結合可能な核酸プローブの粒子への固定化としては、例えば、複数の標的核酸と特異的に結合可能な核酸プローブに官能基を導入し、かつ官能基と反応性を有する官能基を粒子表面に導入して両者を反応させることにより実施することができる。例えば、複数の標的核酸と特異的に結合可能な核酸プローブにアミノ基を導入し、粒子に活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基又はイソシアネート基を導入することにより共有結合を形成できる。
また、複数の標的核酸と特異的に結合可能な核酸プローブにメルカプト基を導入し、粒子に活性エステル基、マレイミド基又はジスルフィド基を導入してもよい。活性エステル基としては、例えば、p−ニトロフェニル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボキシイミド基等が挙げられる。
官能基を粒子の表面に導入する方法としては、例えば、所定の官能基を有するシランカップリング剤によって粒子を処理する方法等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−β−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
結合部位となる官能基を粒子に導入する別の方法としては、プラズマ処理等が挙げられる。このようなプラズマ処理により、固相の表面に、水酸基やアミノ基等の官能基を導入することができる。プラズマ処理は、当業者には既知の装置を用いて行うことができる。
物理吸着によって複数の標的核酸と特異的に結合可能な核酸プローブを粒子に固定する方法としては、ポリ陽イオン(ポリリシン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等)により表面処理した粒子に、オリゴ(dT)の荷電を利用して静電結合させる方法等が挙げられる。
また、分散相の形状としては、特に制限はなく、例えば粒子状(略球形)等が挙げられる。
分散相が液相である場合は、連続相により上述した溶液を微小区画に区分した分散相とすることが好ましい。なお、連続相とは、他の液体が分散している分散系中の液体を意味する。ここでは、分散媒と同義であり、溶液を区分して分散相に区分し、区分した分散相を輸送するために用いる液体を意味する。
連続相としては、溶液を区分することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、分散相が水性である場合は、フルオロカーボン系のオイル、ミネラルオイル等が挙げられる。
また、水性の溶液を油性の連続相を用いて分散相に区分する場合、溶液及び連続相のいずれかに界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤を添加することで、区分した分散相の安定性を向上させることができる。
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Triton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズ等)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<2.検出方法>
本発明の方法は、標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を、前記標的核酸のそれぞれに特異的に結合可能な核酸を用いて検出する工程(以下、検出工程とも記載する)、及び前記複数の標的塩基配列のうちいずれか1つ以上が検出された場合には、その試料中に標的対象が存在していると判定する工程(以下、判定工程とも記載する)を含む。本発明の方法に含まれ得る工程について、以下に詳細に記載する。
標的核酸に特異的に結合可能な核酸
本明細書において、標的核酸に「特異的に結合可能な核酸」とは、本明細書において、「検出核酸」とも記載され、例えば核酸プローブ又はプライマーを含む。本明細書において「プローブ」とは、標的塩基配列を有する核酸に特異的に結合し、検出するために使用されるポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。本明細書において「プライマー」とは、標的塩基配列を有する核酸を特異的に認識し、増幅する、連続するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
検出核酸は、標的塩基配列に対して設計し、合成又は調製することができる。本明細書において、「標的塩基配列」は、検出核酸による特異的な検出が可能である限り限定されない。標的塩基配列は、標的対象の検出目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない非天然の塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列等が挙げられる。標的塩基配列は、特定のタンパク質をコードする遺伝子又はその一部であってもよく、又はタンパク質をコードしない塩基配列であってもよい。標的塩基配列の長さは限定されず、例えば15塩基以上、17塩基以上、20塩基以上、25塩基以上、約100塩基以上、約500塩基以上又は約1000塩基以上であることができる。標的塩基配列は、特定の塩基配列に加えて、その相補鎖の塩基配列も包含する。
検出核酸の例として、例えば、標的塩基配列若しくはその相補鎖を含む、又はからなる核酸、その変異体若しくは誘導体(本明細書に記載の核酸アナログを含む)、15以上の連続した塩基を含むその断片、及び標的塩基配列を有する核酸又はその相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが挙げられる。
本明細書において、相補鎖とは、標的塩基配列(「正鎖」とも記載する)に対してA:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズできる程度の相補関係を有するものであってもよい。
本明細書中で使用する「ストリンジェントな条件」とは、核酸が他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的塩基配列に対してハイブリダイズする条件である。
ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションとその後の洗浄によって、規定される。ハイブリダイゼーションの条件は、限定されないが、例えば30℃〜60℃で、SSC、界面活性剤、ホルムアミド、デキストラン硫酸塩、ブロッキング剤等を含む溶液中で1〜24時間の条件であってよい。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.0)であり、界面活性剤はSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、Triton、もしくはTween等を含む。ハイブリダイゼーション条件としては、より好ましくは3〜10×SSC、0.1〜1%SDSを含む。ストリンジェントな条件を規定するもうひとつの条件である、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、例えば、30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した洗浄等の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook、J.& Russel、D.著、Molecular Cloning、A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17等に記載されており、本発明において利用できる。
本明細書において「変異体」とは、元の配列に対して1又は数個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、又は元の配列と約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体が挙げられる。
本明細書において「数個」とは、約10、9、8、7、6、5、4、3又は2個の整数を意味する。
本明細書において「%同一性」は、BLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)やFASTA(http://www.genome.jp/tools/fasta/)によるタンパク質又は遺伝子の検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる(例えば、Altschul、S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p403−410)。
検出核酸は、さらに非核酸成分、例えば蛍光色素や同位元素等の標識剤を結合させて標識されていてもよい(例えば、蛍光色素や放射線同位体で標識されたプライマーやプローブであってもよい)。
検出工程
検出工程では、標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに特異的に結合可能な核酸を用いて検出を行う。標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに対して1つ又は複数の核酸を用いることができる。例えば、プローブであれば、1つの標的塩基配列に対して1つの核酸を用いることができるし、プライマーであれば1つの標的塩基配列に対して2つの核酸(プライマー対)を用いることができる。プライマーとプローブを組み合わせて検出を行うこともできる。
標的塩基配列を検出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、検出対象核酸分子の塩基配列に特異性がある核酸検出法を用いることができる。核酸検出法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、SMAP(Smart Amplification Process)法、RPA(Recombinase Polymerase Amplification)法、HCR(Hybridization Chain Reaction)法からなる群から選択される核酸検出法が挙げられる。また、これらの方法に合わせて、蛍光増幅法や電気泳動法、リン酸定量法、原子吸光法、吸光度測定等によって、別途核酸の増幅を確認することも可能である。これらの方法の詳細は、本分野において公知であり、その通常の方法に従うことができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。一実施形態において、検出工程は、PCR法(例えば、定量PCR又はReal−timePCR法)を用いて行われる。
PCR法では、標的塩基配列を特異的に増幅可能なプライマー対を用いて標的塩基配列を有する核酸の増幅が行われる。
NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法は、逆転写酵素、RNAポリメラーゼおよびRNaseの使用を含むRNA−DNAベースの核酸増幅法である(詳細については、例えば、特許第2650159号公報を参照されたい)。
LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法は、プライマーとして、好ましくは少なくとも4種類のオリゴヌクレオチドを用いる核酸増幅法であり、2本鎖DNA、プライマー、鎖置換型DNA polymerase、基質等を同一容器に入れ、一定温度(65℃付近)で保温することにより、検出までを1ステップの工程で行う(詳細については、例えば、国際特許公開WO00/28082号公報を参照されたい)。
SMAP(Smart Amplification Process)法は、LAMP法と類似する方法であるが、フォールディングプライマーと呼ばれる、5’側が自己相補的な配列、すなわち、相互にハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に有する折り返し配列であるプライマーを用いる点で、LAMP法と主に相違する(詳細については、例えばMitani Y.,et al.,Nature Methods,vol.4,No.3,p.257−262(2007)を参照されたい)。
RCA(Rolling Circle Amplification)法は、特定のDNA又はRNAポリメラーゼ、及び鋳型として環状DNAを用い、短いDNA又はRNAプライマーにより、長い一本鎖DNA又はRNAを増幅する等温酵素反応である(詳細については、例えば、Ali MM.et al.,Chem.Soc.Rev.,2014,21;43(10):3324−41を参照されたい)。
RPA(Recombinase Polymerase Amplification)法は、PCRの通常の熱変性ステップの代わりをする2つの重要なタンパク質:大腸菌RecAリコンビナーゼ及び一本鎖DNA結合蛋白質(SSB)を用いる(詳細については、例えば、Daher RK.et al.,Clin.Chem.,2016,62(7):947−58を参照されたい)。リコンビナーゼは、一本鎖オリゴヌクレオチド・プライマー及びプローブと核タンパク質フィラメントを形成する。このフィラメントは、相同配列を探してターゲットの二重らせん構造のDNA(dsDNA)を走査し、一旦相同性が見つかるとフィラメントはdsDNAに侵入してDNA鎖が局部的に分かれたDループ構造を形成し、そこで相補鎖はSSBによって安定化され、ターゲット鎖はプライマーとハイブリッドする。核タンパク質フィラメントからのリコンビナーゼの分解は、RecAタンパク質を加水分解するATPによって引き起こされ、鎖置換DNAポリメラーゼによるプライマー伸長を可能にする。新しく生成されたDNA鎖は、次のRPAラウンドに使用される。
HCR(Hybridization Chain Reaction)法は、2セットのヘアピン分子間で生じる認識及びハイブリダイゼーションによる連鎖反応に基づく技術であり、特定の核酸配列の迅速な検出について、酵素を使用しない代替法となり得るものである(詳細については、例えば、Daniel Evanko,Nature Methods,2004,volume 1,pages 186〜187を参照されたい)。
核酸検出法の産物、例えば増幅された核酸は、例えば電気泳動又は核酸増幅反応により生ずる蛍光増幅に基づいて検出することができる。
核酸検出法により生ずる蛍光増幅に基づいて検出を行う方法は公知である。例えば、二本鎖DNA結合蛍光色素を加えてPCRを行い、PCRを行うと同時に蛍光の強さを計測し、例えば標準(蛍光色素を加えない)試料と比較することによって二本鎖DNAの濃度を定量することができる。あるいは、蛍光色素及びクエンチャーで修飾した、標的塩基配列に結合可能なプローブを用いることもできる。この場合、伸長反応ステップでプローブが分解されると、蛍光色素がクエンチャーと分離されて蛍光を発するため、核酸増幅反応の進行に従って蛍光が増幅される。二本鎖DNAが増幅される場合、或いはその速度が陰性対照に比べて速い場合、標的塩基配列が存在すると判断することができる。
一実施形態において、複数の標的塩基配列は、個別に検出される。例えば、電気泳動によって検出を行う場合、PCR反応によって生ずる増幅断片の長さが、標的塩基配列ごとに異なるようにプライマーを設計することで、複数の標的塩基配列を個別に検出することができる。例えば、蛍光増幅に基づいて検出を行う場合、標的塩基配列ごとに異なる蛍光を検出することによって、複数の標的塩基配列を個別に検出することができる。これは、標的塩基配列に特異的に結合可能な複数の核酸を、異なる蛍光により標識することによって可能となる。
一実施形態では、検出工程において複数の標的塩基配列を順番に検出する。この実施形態では、例えば一つの標的塩基配列の検出を終えた後に、反応液を加えてさらに別の標的塩基配列の検出を行うことができる。別の実施形態では、検出工程において複数の標的塩基配列を同時に検出する。この実施形態は、短時間で検出工程を行うことができ、また酵素や基質等の試薬の使用量を低減できる点で有利であり得る。
本発明の検出工程において検出される標的塩基配列の数としては、2以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。標的塩基配列の数を増やすほど、検出感度を高めることができ、例えば3以上、4以上、5以上又は10以上あれば、標的塩基配列の検出率が非常に低い場合でも、何れかの標的塩基配列により標的対象を検出することができる。また、検出の簡便さ及び費用の点からは標的塩基配列の数が少ない方が好ましく、標的塩基配列の数は、例えば20以下、15以下、10以下、又は5以下、4以下、又は3以下とすることができる。
検出工程は、標的対象を含む試料に対して行うことができる。試料としては、例えば血液、血漿、血清、唾液、髄液、組織浸出液等の体液、生体組織、尿、乳、及び毛髪;環境サンプル(海、川、土壌、大気等);食品、サプリメント、医薬品(例えばバイオ医薬品)、及びこれらの製造器具;並びに医療器具等が挙げられる。
一実施形態において、複数の標的配列の一つ以上又は全ては、その配列中の検出核酸が結合する領域に、検出核酸による結合を妨げ得る変異を含まない。検出核酸による結合を妨げ得る変異は、その変異を有する配列を含む核酸に対して、所定の条件(例えば本明細書に記載のストリンジェントな条件)で検出核酸が結合するか否かを調べることによって容易に特定することができる。別の実施形態において、複数の標的配列の一つ以上又は全ては、その配列中の検出核酸が結合する領域に変異を含まない。さらなる実施形態において、複数の標的配列の一つ以上又は全ては、その配列中に変異を全く含まない。本明細書において「変異」とは、野生型塩基配列(例えば遺伝子)に生じた塩基配列の物理的又は構造的変化をいう。
「野生型」とは、同種塩基配列のアレル集団内において自然界に最も多く存在し、かつそれがコードするタンパク質又はノンコーディングRNAが機能を有する場合には、その本来の機能を有するアレルをいう。変異の種類には、塩基の置換、欠失、又は付加が挙げられる。
本発明者らは、特に核酸が低コピーで存在する場合に、例え標的配列中の検出核酸が結合する領域に変異が含まれていない場合であっても、検出感度が十分でないことを見出した。本発明者らはさらに、標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を検出することによって、単一の標的塩基配列を検出するよりも高感度に標的対象を検出できることを見出した。一実施形態において、本発明は、従来知られていなかった上記課題を解決するものであり得る。なお、標的配列中の検出核酸が結合する領域に変異が含まれていない場合であっても、検出感度が十分でないことは、本願実施例において、同一の標的対象である酵母を1細胞ずつ分注し、PCRを行った場合に偽陰性が生じたことから推察することができる(これらの酵母は、標的塩基配列に変異を含まないか、或いは含むとしてもその頻度は極めて低いと考えられる)。
本明細書において、「低コピー数」とは、例えば100コピー以下、50コピー以下、40コピー以下、30コピー以下、20コピー以下、例えば10コピー以下、5コピー以下、4コピー以下、3コピー以下、2コピー以下、又は1コピーを指す。
一実施形態において、複数の標的塩基配列は、いずれも内因性のものである。本明細書において、「内因性」とは、標的対象に元々含まれていることを意図し、外部から、例えば遺伝子組み換え等により加えられたものでないことを意図する。内因性の標的配列を検出することによって、他の遺伝子等を標的対象に加えることなく、検出を行うことができる。
判定工程では、前記複数の標的塩基配列のうちいずれか1つ以上が検出された場合には、その試料中に標的対象が存在していると判定することができる。例えば、2つの標的塩基配列を検出対象とした場合には、2つの標的塩基配列のいずれかが検出されれば検出と判定し、いずれの標的塩基配列も検出されない場合には非検出と判定することができる。標的塩基配列の数が増えた場合においても、同様である。
一態様において、本発明は、本明細書に記載の方法を用いて標的対象を検出することを含むデジタルPCR法に関する。
「デジタルPCR法」とは、サンプル中のDNAの絶対量を定量する方法であり、その概要及び工程は公知である。デジタルPCR法では、はじめに核酸分子を含む反応溶液を多数の小液滴(ドロップレット)に分画する。その後、すべての微小区画に対してPCR反応を行い、陽性ウェルと陰性ウェルとの比を得て、統計的処理を行うことで反応溶液中の核酸濃度を定量する。この定量方法は、これまでのリアルタイムPCRのように、標準物質の検量線を参照する必要がないため、直接検体中の標的核酸の濃度を定量可能な方法として用いられている。しかし、核酸分子が存在する微小区画であったにも関わらず、何らかの原因でPCR反応が進行せずに、検出することができなかった場合(偽陰性)には、陽性ウェルと陰性ウェルとの比に誤りが生じ、結果として、デジタルPCRによって算出される濃度が不確かなものとなってしまう。したがって、本発明の方法により高感度に標的塩基配列の検出を行うことで、デジタルPCRによる定量の精度を向上させることができる。
<実施例1>
本実施例では、細胞(酵母)内の別々の染色体(核酸分子)上に存在する2つの標的遺伝子を使って、標的対象である1細胞の酵母を検出した。
<1細胞分注した標的対象のマルチプレックス検出>
細胞の準備
遺伝子組換え酵母
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。
1コピーの特定核酸配列として、DNA600−G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205−a)配列と選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドを、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。プラスミドは、委託合成会社(FASMAC社)に製造及び解析を依頼した。手短には、所望の配列の人工合成核酸を大腸菌に導入して、常法に従い培養、抽出、及び精製して製造した。製造されたプラスミドは、シーケンサーを用いて全長の配列を決定し、プラスミド1分子中に標的塩基配列が1コピーのみ挿入されていることを確認した(データ示さず)。
シーケンサーによるゲノム解析により、酵母ゲノムDNA中の相同組み換えが可能な部位は1コピーのみであることを確認した(データ示さず)。また、プラスミド配列の挿入部位の外側からPCRを行い、その増幅産物をシーケンサーによって読むことで、挿入部位にプラスミド配列が1コピーのみ挿入されたことを確認した(データ示さず)。
培養及び細胞周期制御
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN−630409)で培養した上記遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190−144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1−Mating Factor acetate salt(Sigma−Aldrich社製、T6901−5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次いで、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR−23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。
固定化
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO−50R)に45mL
移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。
得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062−01661)
を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加
して懸濁させることにより、固定化済みの酵母懸濁液を得た。
染色
固定化済み酵母懸濁液を1.5mL遮光チューブ(ワトソン株式会社製、131−915BR)に500μL移し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、1mM EDTA(TOCRIS社製、200−449−4)となるように調製したDPBS(1mM EDTA)を400μL添加し、ピペッティングでよく懸濁した後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去することにより酵母ペレットを得た。得られたペレットに1mg/mLに調製したエバンスブルー水溶液(和光純薬工業株式会社製、054−04061)を1mL添加し、ボルテックスを用いて5分間撹拌後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBS(1mM EDTA)を添加し、ボルテックスで撹拌することにより染色済み酵母懸濁液を得た。
分散
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(装置名:LUH150、ヤマト科学株式会社)を用いて、出力:30%,10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1,000μL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、最後にDPBSで懸濁させて酵母懸濁液を得た。
細胞の充填
酵母懸濁液の個数計測分注
以下のようにして、液滴中の酵母数を計数(カウント)して、既知数の細胞がウェル内に格納されるプレートを作製した。具体的には、充填容器(384wellプレート)にセルソーター(ソニー株式会社製、SH800Z)を用いて、シングルセルモードにより酵母の細胞数が1となるように分注した。
分注酵母からの核酸抽出
Tris−EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312−00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R)100T(ナカライテスク株式会社製、07665−55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を2μL添加し、37℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、1コピーの標的遺伝子を含む核酸試料を調製した。
リアルタイムPCRによる検出
標的対象として上記シングルセルより抽出した核酸を用い、酵母内の別々の染色体上(別の核酸分子上)のDNA600G配列(配列番号1、検出用プライマープローブセット1;フォワードプライマー1(配列番号2);リバースプライマー1(配列番号3);TaqManプローブ1(配列番号4、5’末端FAM、3’末端TAMRA))及びMIR1配列(配列番号5、検出用プライマープローブセット2;フォワードプライマー2(配列番号6);リバースプライマー2(配列番号7);TaqManプローブ2(配列番号8、5’末端HEX、3’末端TAMRA))を標的遺伝子として、マルチプレックスリアルタイムPCR分析を行った。各々の標的遺伝子が検出できた割合を、それぞれDNA600G及びMIR1の検出率とし、どちらか一方でも検出できた割合をMultiの検出率として得た。反応試薬の混合比としては、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems製、TaqMan Universal PCR Master Mix、4304437)及び各々の検出用プライマープローブセット、NFW(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、UltraPure DNase/RNase−Free−Distilled Water、10977−015)を、表1に示す割合で調製し、最後にPCRプレート(Applied Biosystems製、MicroAmpTM Optical 384−Well Reaction Plate with Barcode、4309849)に8μLずつ充填して、分析を行った。
各試薬はTE(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、TE Buffer、12090015)により、表1に記載の濃度に希釈して用いた。なお、PCRプレートの13列目は陰性コントロール用のウェルとし、前述の酵母懸濁液の個数計測分注を行わなかった。熱サイクルは、表2に示す条件で行った。解析は、QuantStudio 12K Flex Softwareを用いて、相対蛍光強度(ΔRn)とサイクル数(増幅曲線)をプロットし、ΔRnの閾値0.02を超えるに至ったサイクル数(Ct値)を得た。DNA600G配列に対する各ウェルのCt値を図3に示した。MIR1配列に対する各ウェルのCt値は図4に示した。
また、DNA600G及びMIR1の測定結果を重ね合わせたものを図5に、そして、それぞれの場合及びMultiの検出率を表3に示した。図3〜5、及び表3によると、1つの標的遺伝子のみを検出した場合には、それぞれの検出率は85%前後の低い値を示したが、2つの標的遺伝子の少なくともどちらか一方が検出された場合には、標的対象が存在しているとすると、その検出率は97.8%と高い値を示した。本結果は、低コピーの標的対象を検出する際には、別々の染色体上に存在する2つの標的遺伝子を組み合わせて検出することにより、その検出感度が顕著に改善することを示している。
<実施例2>
本実施例では、細胞(酵母)内の同一の染色体(核酸分子)上に存在する2つの標的遺伝子を使って、標的対象である酵母を検出した。
配列標的対象として実施例1と同様に調製した上記シングルセルより抽出した核酸を用い、酵母内の同一染色体上(同一核酸分子上)のDNA600G配列(配列番号1、検出用プライマープローブセット1;フォワードプライマー1(配列番号2);リバースプライマー1(配列番号3);TaqManプローブ1(配列番号4、5’末端FAM、3’末端TAMRA))及び、VID28配列(配列番号9、検出用プライマープローブセット3;フォワードプライマー3(配列番号10);リバースプライマー3(配列番号11);TaqManプローブ3(配列番号12、5’末端HEX, 3’末端TAMRA))を標的遺伝子として、マルチプレックスリアルタイムPCR分析を行い、各々の標的遺伝子が検出できた割合をそれぞれDNA600G及びVID28の検出率とし、どちらか一方でも検出できた割合を、Multiの検出率として得た。反応試薬の混合比としては、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems製、TaqMan Universal PCR Master Mix、4304437)及び各々のプライマープローブセット、NFW(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、UltraPure DNase/RNase−Free−Distilled Water、10977−015)を、表4に示す割合で調製し、最後にPCRプレート(Applied Biosystems製、MicroAmpTM Optical 384−Well Reaction Plate with Barcode、4309849)に8μLずつ充填して、分析を行った。
各試薬はTE(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、TE Buffer、12090015)により、表4に記載の濃度に希釈して用いた。なお、PCRプレートの13列目は陰性コントロール用のウェルとし、前述の酵母懸濁液の個数計測分注を行わなかった。熱サイクルと解析は実施例1に従った。DNA600G配列に対する各ウェルのCt値を図6に示した。VID28配列に対する各ウェルのCt値を図7に示した。
また、DNA600G及びVID28の測定結果を重ね合わせたものを図8に、そして、それぞれの場合及びMultiの検出率を表5に示した。
図6〜8、及び表5によると、1つの標的遺伝子のみを検出した場合には、それぞれの検出率は87%前後の低い値を示したが、2つの標的遺伝子の少なくともどちらか一方が検出された場合には、標的対象が存在しているとすると、その検出率は95.7%と高い値を示した。本結果は、低コピーの標的対象を検出する際には、同一の染色体上に存在する2つの標的遺伝子を組み合わせた場合にも、実施例1同様検出感度が顕著に改善することを示している。
<実施例3>
本実施例では、分散相(微小区画・ドロップレット)内の同一の核酸分子上に存在する2つの標的遺伝子を使って、標的対象である核酸分子を検出した。
(標的遺伝子を同一の核酸分子上に複数有する標的対象(線形プラスミド)の調製)
配列の設計・合成
標的遺伝子として、DNA600G配列とSPS2配列を選定し、環状プラスミドへ組み込んだ。環状プラスミドの合成はユーロフィンジェノミクス社に依頼した。
線形プラスミドの調製
環状プラスミドを以下の実験に使用する際には、制限酵素EcoRVにより切断/直鎖化し、電気泳動によって精製した線形プラスミドDNAを用いた。線形プラスミドは配列番号13の配列を有している。
(核酸試料含有分散相の調製)
核酸・核酸検出試薬の混合
標的対象として線形プラスミドを鋳型として用い、線形プラスミド上(同一核酸分子上)のDNA600G配列(配列番号1、検出用プライマープローブセット1;フォワードプライマー1(配列番号2);リバースプライマー1(配列番号3);TaqManプローブ1(配列番号4、5’末端FAM、3’末端TAMRA))及びSPS2配列(配列番号14、検出用プライマープローブセット4;フォワードプライマー4(配列番号15);リバースプライマー4(配列番号16);TaqManプローブ4(配列番号17、5’末端HEX、3’末端BHQ1))を標的遺伝子として、マルチプレックスデジタルPCR分析を行った。
反応試薬は、ddPCRTM Supermix for Probes(no dUTP)(バイオ・ラッド製、ddPCRTM Supermix for Probes(no dUTP)、186−3025)及び各々のプライマープローブセット、NFW(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、UltraPure DNase/RNase−Free−Distilled Water、10977−015)、線形プラスミド溶液(1万倍希釈)を、表6に示す割合で調製し、最後にddPCR用プレート(バイオ・ラッド製、ddPCRTM 96−Well Plates、12001925)に22μLずつ充填して、分析を行った。
各試薬はTE(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、TE Buffer、12090015)により、表6に記載の濃度に希釈して用いた。
微小区画化
微小区画化は、ドロップレットジェネレーター(バイオ・ラッド製、Automated Droplet Generator)及びDG32(バイオ・ラッド製、DG32TM カートリッジ、1864109)により、達成した。移動相の溶媒としては、バイオ・ラッド製、Automated Droplet Generation Oil for Probes、1864110を用いた。作製されたドロップレット懸濁液は、プレートシーラー(バイオ・ラッド製、PX1TM PCR Plate Sealer、1814000J1)及びホイルシール(バイオ・ラッド製、PCR Plate Heat Seal,foil,pierceable、1814040)を用いて、アルミシーリングの後に、直ちに次の標的遺伝子の増幅工程に用いた。
標的遺伝子の増幅
標的遺伝子の増幅は、サーマルサイクラー(バイオ・ラッド製、T100TM サーマルサイクラー、1861096J1)によって、表7に示す熱サイクル過程によって達成された。
標的遺伝子の検出
増幅された標的遺伝子を有する微小区画は、ドロップレットリーダー(バイオ・ラッド製、QX200 Droplet Reader)によって同時に増幅された蛍光を確認することで、検出数を得た。
解析は、QuantaSoftを用いて、各ドロップレットの2種類の蛍光試薬の蛍光強度としてプロットし、特定の領域毎の検出数及びその割合を求めた。蛍光強度のプロットは図9に、各領域の検出数は表8、全ての領域の検出数を100%とした場合の各領域の検出割合を表9にそれぞれ示した。また、2つの標的遺伝子の少なくともどちらかで検出できたドロップレット数を100%として、各領域の割合を表10に示した。最後に、それぞれの標的遺伝子の検出率を表11に示した。
図9及び表11によると、同一の核酸分子上に2つの標的遺伝子を含んでいるにも関わらず、どちらかの標的遺伝子しか検出できないことが、約6%の確率で存在していることが分かった。すなわち、1つの標的遺伝子のみでは、検出することのできない標的対象が多数存在していることを意味している。したがって、少なくとも2つ以上の標的遺伝子を検出することで、1つの標的遺伝子のみの場合には検出できなかった標的対象を検出することが可能となると言える。
また、デジタルPCR法のような、陽性ドロップレットと陰性ドロップレットの比により、標的対象の濃度を測定するような方法の場合、1つの標的遺伝子のみでは検出漏れが発生し、測定結果の濃度が不正確な値を示すと推察される。
また、上記の実施例1〜3は、いずれも同一のサンプルを低コピー数になるように分注し、試験を行った結果である。したがって、これらの結果は、核酸が低コピーで存在する場合、標的塩基配列に含まれ得る変異以外の理由に起因して偽陰性が生じることを示唆している(これらのサンプルでは、標的塩基配列のうちプライマー又はプローブが結合する領域に変異を含まないか、或いは含むとしてもその頻度は極めて低いと考えられる)。また、これらの結果は、標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を検出することによってこのような偽陰性を低減し得ることを示唆している。
限定されるものではないが、本発明は、以下の実施形態を包含する。
(1)標的対象を高感度に検出するための方法であって、
標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を、前記標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに特異的に結合可能な核酸を用いて検出する工程、及び
前記複数の標的塩基配列のうちいずれか1つ以上が検出された場合には、その試料中に標的対象が存在していると判定する工程を含み、
検出工程において前記標的塩基配列が低コピー数で存在する、方法。
(2)検出工程が、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、SMAP(Smart Amplification Process)法、RPA(Recombinase Polymerase Amplification)法、及びHCR(Hybridization Chain Reaction)法からなる群から選択される核酸検出法によって行われる、(1)に記載の方法。
(3)検出工程が、核酸検出法により生ずる蛍光増幅を検出することによって行われる、(2)に記載の方法。
(4)検出工程が、核酸検出法による産物の電気泳動によって行われる、(2)に記載の方法。
(5)検出工程において、前記複数の標的塩基配列を個別に検出する、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記複数の標的塩基配列の個別検出が、標的塩基配列ごとに異なる蛍光を検出することによって行われる、(5)に記載の方法。
(7)検出工程において、前記複数の標的塩基配列を同時に検出する、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記複数の標的塩基配列が、前記標的塩基配列を有する核酸に特異的に結合可能な核酸が結合する領域に変異を含まない、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記標的対象が核酸分子である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記標的対象が核酸分子を含む担体である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の方法を用いて標的対象を検出することを含む、デジタルPCR法。
特開2011−223940号公報 特開平09−224699号公報

Claims (11)

  1. 標的対象を高感度に検出するための方法であって、
    標的対象に含まれる複数の標的塩基配列を、前記標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに特異的に結合可能な核酸を用いて検出する工程、及び
    前記複数の標的塩基配列のうちいずれか1つ以上が検出された場合には、その試料中に標的対象が存在していると判定する工程を含み、
    検出工程において前記標的塩基配列が低コピー数で存在する、方法。
  2. 検出工程が、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、SMAP(Smart Amplification Process)法、RPA(Recombinase Polymerase Amplification)法、及びHCR(Hybridization Chain Reaction)法からなる群から選択される核酸検出法によって行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 検出工程が、核酸検出法により生ずる蛍光増幅を検出することによって行われる、請求項2に記載の方法。
  4. 検出工程が、核酸検出法による産物の電気泳動によって行われる、請求項2に記載の方法。
  5. 検出工程において、前記複数の標的塩基配列を個別に検出する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記複数の標的塩基配列の個別検出が、標的塩基配列ごとに異なる蛍光を検出することによって行われる、請求項5に記載の方法。
  7. 検出工程において、前記複数の標的塩基配列を同時に検出する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記複数の標的塩基配列が、前記標的塩基配列を有する核酸に特異的に結合可能な核酸が結合する領域に変異を含まない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記標的対象が核酸分子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記標的対象が核酸分子を含む担体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を用いて標的対象を検出することを含む、デジタルPCR法。
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